説明

交通信号制御機

【課題】交通信号制御機の設定の際の、操作性を向上させる技術を提案する。
【解決手段】交通信号制御機10の操作パネル11は、6桁の数字を表示可能にLEDで構成された表示部20と、各種ボタンから構成された操作部30と、表示部20に表示される数字に対応した設定項目を表す設定内容対応表部21とを備える。操作部30の十字ボタン31は、表示部20に表示される数字を変更するための数値選択ボタン32と、変更する数字を選択するための数字位置選択ボタン34とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号制御機に係り、例えば、表示手段と入力手段とを用いて制御用の所望の定数を設定することが可能な設定用インタフェイスを有する交通信号制御機に関する。
【背景技術】
【0002】
交通信号機を制御する交通信号制御機は、交通流の変動に対応した高度な系統制御や広域制御(面制御)を行うために、さまざまな設定が可能となっている。図4に、従来よりある交通信号制御機の操作パネル例を示す。図示のように、各種設定を入力するための設定ボタン130を操作することで、表示パネル120に表示される数字を所望に変えるようになっている。具体的には、作業者は、表示パネル120に表示される数字を変更するには、各数字の下に配置された設定ボタン130を押下する必要があり、一度の押下で数字が「1」だけ増加するようになっている。表示パネル120の数字の意味は、表示パネル120の上側に設けられた対応表140で把握することができる。また、工事用の簡易交通信号制御機として、同様の操作パネルが設けられた技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−148539号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図4の操作パネルや特許文献1に開示の技術にあっては、各数字に対応してそれぞれボタンが設けられているため、変更したい数字を直接的に操作できるという利点があるものの、上述のように、ボタンの押下に伴って増加の動作しかできず、一回でも押しすぎると、数字が一巡するまで押し続ける必要があるという課題があった。また、隣のボタンを押下しやすいという特徴もあり、誤って押下した場合に、変更対象の数字でもないのに、同様に、手間のかかる操作が必要になるという課題があり、別の技術の導入が求められていた。また、操作ボタンの数が多く、小型化等の観点から少なくして欲しいという要望もあった。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑みなされたもので、交通信号制御機の操作性を向上させる技術を提案することを目的とする。また、別の観点では、操作間違いが発生しにくい操作性を実現するための技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る装置は、交通信号制御機に関する。この交通信号制御機は、複数の数字を表示可能な表示手段と、前記表示手段に表示された設定値を変更する上下左右の4カ所に十字状に配置された4つのボタンを有する変更ボタンと、所定の設定項目を変更可能とするために前記変更ボタンと同時に押下される補助ボタンと、を有する操作パネルを備え、前記変更ボタンのうち、左右のボタンの押下で前記複数の数字のうち、どの数字を変更するかを指定し、上下のボタンの押下で数字を増減させる。
また、前記設定値を既定値から大きく変更する際に、前記変更ボタンの押下が通常とは異なる所定の動作のときに受け付けてもよい。
【発明の効果】
【0007】
以上、本発明によると、交通信号制御機の操作性を向上させる技術を提案することができる。また、別の観点では、操作間違いが発生しにくい操作性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る、操作パネルの外観を示した図である。
【図2】実施形態に係る、交通信号制御機の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】実施形態に係る、交通信号制御機の設定値の変更動作を示すフローチャートである。
【図4】背景技術に係る、操作パネルの外観を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。以下に説明する実施形態では、設定すべき項目及び入力する数字を変更するために、十字(上下左右)に配置され4つのボタンが設けられている。また、所定の操作を行うためには、誤入力等を極力防止するために、別に設けられた補助スイッチの同時の押下が必要とされるようにした。
【0010】
さらに、交通信号制御機は、上述のように、交通流の変動に対応した高度な系統制御や広域制御(面制御)のために、設定値(パラメータ)として、信号現示が一巡する時間であるスプリット、隣接する交差点の青信号開始時間に設けられた差であるオフセット、スプリットの1サイクルの時間のうち各現示に割り当てられる時間であるサイクル長などが設定される。これらを変更する場合は、通常、微調整であることも多いことから、現在の設定値から大きく変更される場合には、必要とされる入力動作を多くすることで、誤入力を防止する。以下、詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る交通信号制御機10の操作パネル11を示した図である。操作パネル11は、6桁の数字を表示可能にLEDで構成された表示部20と、各種ボタンから構成された操作部30と、表示部20に表示される数字に対応した設定項目を表す設定内容対応表部21とを備える。なお、6つのLEDのそれぞれの右下には、小さなランプが設けられており、ランプが点灯している数字が現在設定中の操作対象数字である旨を示している。図示では、「2」と表示されている左から3番目の数字が選択されている。
【0012】
設定内容対応表部21は、図示のように、2段に分かれて設定可能項目が示されている。具体的には、上段の「タイムスイッチ」グループが選択された場合、「項目番号」及び「設定データ」の2種類に関する数字が表示部20で表示されている旨が示されている。また、下段の「パターン設定」が選択された場合、「パターン」「階梯」「経過時間(秒)」の3種類に関する数字が表示部20に表示されている旨が示されている。なお、どちらのグループが選択されているかは、各グループ名の右横に設けられたランプ24a,24bにより明示される。図示では、「パターン設定」が選択されている旨が示されている。また、表示部20に表示されている数字は、「102005」であり、詳しくは、パターンが「1」、階梯が「02」、経過時間が「005」秒であることを意味している。
【0013】
操作部30は、操作パネル11の右側に配置された十字ボタン31と、十字ボタン31より上に配置された補助スイッチ36と、補助スイッチ36の下側に配置された設定・実行ボタン37と、表示部20の左下に配置された設定グループ変更ボタン35とを備えている。
【0014】
十字ボタン31は、表示部20に表示される数字を変更するために上下に二つ配置された数値選択ボタン32と、変更する数字の場所を選択するに左右に二つ配置された数字位置選択ボタン34とを備えている。より具体的には、数値選択ボタン32は、数字を「1」増加させるために上側に設けられた増加ボタン32aと、「1」減少させるために下側に設けられた減少ボタン32bを備えている。また、数字位置選択ボタン34は、変更対象となる数字の選択を左に移動させるために左側に設けられた左移動ボタン34aと、同じく右へ移動させるために右側に設けられた右移動ボタン34bとを備えている。なお、どの場所の数字を選択しているかは、上述の通り各数字の右下のランプの点灯で示される。
【0015】
補助スイッチ36は、特定の設定値を入力するために、誤入力防止用に設けられたスイッチである。具体的には、ある特定のグループ内の項目について変更をする場合には、より慎重を期すために、作業者は、補助スイッチ36を押下しながら十字ボタン31を操作する必要がある。また、設定・実行ボタン37は、交通信号制御機10の各種設定の開始及び終了の際に押下される。
【0016】
設定グループ変更ボタン35は、十字ボタン31で設定可能なグループを2種類から選択するためのボタンである。上述の通り、選択可能なグループ名等は設定内容対応表部21に示されている。
【0017】
なお、上記の他にもボタンや表示ランプが図示されているが、本実施形態の特徴とは関係が無いため説明を省略する。
【0018】
つぎに、図1で示した操作パネル11により操作される交通信号制御機10本体について説明する。図2は、交通信号制御機10の概略構成を示す機能ブロック図である。ここでは、主に、交通信号制御機10への設定動作の制御に着目した機能ブロック図を示している。
【0019】
交通信号制御機10は、当該装置の各構成要素を統括的に制御する主制御部90と、信号機の動作を制御する信号制御部60と、電波時計等と同期して時間を計時する経時部80と、上記の操作部30と、その設定動作を制御する設定操作制御部40と、上記の表示部20とその表示制御を行う表示制御部22と、設定値を記録する設定テーブル70とを備える。設定テーブル70は、各種設定値について製品出荷時の初期値が記録された初期値テーブル72と、ユーザによって所望の値に変更された設定値が記録されたユーザ設定テーブル74とを備える。
【0020】
以上の構成の交通信号制御機10について、設定値の変更動作について図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0021】
作業者が設定・実行ボタン37を押下することで、より具体的には、例えば、設定グループ変更ボタン35の長押しを行うことにより、設定操作制御部40はその押下による指示を受け、各種の設定値が変更可能な定数変更モードを開始する(S12)。なお、定数変更モードを開始するための専用のボタンが設けられてもよい。また、より慎重を期すために、キースイッチ等が使用されてもよい。
【0022】
そして、定数変更モードが開始すると、設定操作制御部40は、ユーザ設定テーブル74を参照し、現在設定されている設定値を取得し、取得した数字を表示制御部22に対して表示するように指示する。表示制御部22は、その指示を受けて表示部20のLEDに設定値を表示する(S14)。このとき、数値選択ボタン32で現在設定中の数字の右下のランプが点灯し、作業者は、変更したい数字位置を数字位置選択ボタン34で選択する。
【0023】
つぎに、設定操作制御部40は、補助スイッチ36が押下されているか否かを確認し(S16)、押下されている場合には(S16のY)、特定操作モードとして、通常では数値選択ボタン32で操作できない項目について変更可能な状態と判断する(S18)。なお、補助スイッチ36が押下されていない場合及び以降の処理の途中で押下が解除された場合には(S16のN)、設定操作制御部40は特定操作モードでないと判断する。
【0024】
そして上記の特定操作モードであるか否かを判断した上で、設定操作制御部40は、ユーザの操作が数値選択ボタン32の押下であるかそれとも数字位置選択ボタン34の押下であるかを判断する(S20)。数字位置選択ボタン34の押下である場合(S20のN)、設定操作制御部40は、設定項目の対象を数字位置選択ボタン34の押下に応じてシフトするように表示制御部22に指示し、表示制御部22はその指示を表示部20の表示に反映させる(S22)。つまり、左移動ボタン34aの押下であれば、選択対象の数字位置が左へ一つ移動し、右移動ボタン34bの押下であれば、選択対象の数字位置が右へ一つ移動する。
【0025】
S20の処理において数値選択ボタン32の押下であると判断された場合(S20のY)、設定操作制御部40は、その押下を反映した場合の数字が既定値より所定値以上離れているか否かを判断する(S24)。所定値以上離れていると判断した場合(S24のY)、設定操作制御部40は、慎重モードに移行する(S26)。この慎重モードでは、例えば、設定作業開始前に設定されていた数字が「5」であるのに対して、「4」以上増減させる場合に、大きな変更であるとして、以下の処理の通り、2回の連続押下で数字が変更されるようになる。より具体的には、慎重モードにはいると、まず、設定操作制御部40は、数字の増減が、既定値に対して離れる方向であるか、それとも近づく方向であるかを判断する(S28)。離れる方向であると判断した場合(S28のY)、設定操作制御部40は、所定時間内に連続2回の押下であるか否かを判断する(S30)。連続2回の押下でないと判断した場合(S30のN)、設定操作制御部40は作業者の数値選択ボタン32の押下を受け付けず、S16の処理に戻る。なお、このとき、エラー出力がなされてもよい。
【0026】
連続2回の押下であると判断した場合(S30のY)、設定操作制御部40は作業者の数値選択ボタン32の押下を適正な操作であると判断し、その変更操作を反映させるとともに、表示制御部22に対して反映後の数字、つまり1だけ増減した数字を表示するように指示し、表示制御部22はその指示を受けて表示部20に表示する(S32)。
【0027】
また、S24の処理で、既定値から所定値以上離れていないと判断した場合(S24のN)についても、設定操作制御部40は、変更操作を反映させる(S32)。
【0028】
S32の処理によって、作業者の操作が反映されると、設定操作制御部40は、設定・実行ボタン37の押下による定数変更モードの終了指示があるか否かを判断し(S34)、終了指示がない場合には(S34のN)、処理はS16へ戻り、終了指示がある場合(S34のY)、本フローによる処理は終了する。
【0029】
以上、本実施形態の交通信号制御機10によると、操作パネル11の設定値の変更の為のボタンを、十字ボタン31の4つにすることで、ボタン数を少なくすることができる。また、表示部20の直下に配置する必要も無くなる。これらによって、操作パネル11の各ボタン等のレイアウトの設計の自由度が大きくなる。一方で、誤入力等への対策もなされているため、作業者の作業効率の低下が防止できる。
【0030】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、交通信号制御機10は、設定値を大きく変更する際に、数値選択ボタン32を連続2回所定時間に押下することを要求したが、大きく変更することを作業者に認識させるという観点では、反応速度を遅くして素早い連続押下を受け付けないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 交通信号制御機
11 操作パネル
20 表示部
21 設定内容対応表部
22 表示制御部
30 操作部
31 十字ボタン
32 数値選択ボタン
32a 増加ボタン
32b 減少ボタン
34 数字位置選択ボタン
34a 左移動ボタン
34b 右移動ボタン
35 設定グループ変更ボタン
36 補助スイッチ
37 設定・実行ボタン
40 設定操作制御部
60 信号制御部
70 設定テーブル
72 初期値テーブル
74 ユーザ設定テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の数字を表示可能な表示手段と、
前記表示手段に表示された設定値を変更する上下左右の4カ所に十字状に配置された4つのボタンを有する変更ボタンと、
所定の設定項目を変更可能とするために前記変更ボタンと同時に押下される補助ボタンと、
を有する操作パネルを備え、
前記変更ボタンのうち、左右のボタンの押下で前記複数の数字のうち、どの数字を変更するかを指定し、上下のボタンの押下で数字を増減させる
ことを特徴する交通信号制御機。
【請求項2】
前記設定値を既定値から大きく変更する際に、前記変更ボタンの押下が通常とは異なる所定の動作のときに受け付けることを特徴とする請求項1に記載の交通信号制御機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−224631(P2010−224631A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68189(P2009−68189)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】