説明

人体洗浄装置

【課題】少ない水量で、快適性の高い人体洗浄装置を実現することができる。
【解決手段】 本発明の一態様によれば、給水管と、前記給水管に接続された圧力変動部と、前記圧力変動部を制御する制御部と、前記圧力変動部の下流側に設けられた人体へ洗浄水を吐水するための吐水孔と、を備える人体洗浄装置であって、前記制御部は、前記圧力変動部に圧力の脈動推移を発生させ、前記脈動推移により前記吐水孔から速度の異なる部位を有した脈動流の洗浄水が繰り返し現れるように吐水を制御し、吐水後に前記速度の異なる部位が合体し水塊を間欠的に形成させる制御部であり、前記制御部は、連続して形成される前記水塊の大きさが異なるように前記圧力変動部を制御することを特徴とする人体洗浄装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水を吐水孔から人体に吐水する人体洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の人体洗浄装置は、省エネ意識の高まりの中で、高い圧力を間欠的に発生することで、流量を少なくしても、高い洗浄力を得られる装置の開発がなされている。例えば、特許文献1には、水路容積可変手段が高速かつ周期的に給水管から供給される洗浄水の流れる水路内容積を増減し、さらには逆流防止手段が水路容積可変手段の上流側への水の逆流を防止する構成により、水路容積可変手段が水路内容積を増大させた際には給水管から供給される洗浄水が増大した水路内に引き込まれ、そして、水路内容積が一気に減少する際には、逆流防止手段が水の上流側への逆流を防止するとともに、水路内に蓄えられた洗浄水が一気に吐出手段側へと押し出され、そのため、給水管から供給される給水圧に大幅な圧力が付与され、非常に高圧の洗浄水が実現できると記載されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されるような人体洗浄装置では、少ない洗浄水の量で洗浄力、体感強さに優れた噴流が得られるが、洗浄の快適性に関わり、少ない水量でもあたかも多い水量で洗浄されているような感覚である量感を高めることができないという課題があった。
【0004】
また、特許文献2には、給水源より得られる吐水圧よりも高い圧力が間欠的に発生するような脈動推移を起こす圧力発生手段を備え、圧力の脈動推移により吐水孔から速度の異なる部位を有した脈動流の洗浄水が繰返し現れるように吐水を行ない、吐水後に速度の異なる部位が大きな水塊を人体に着水させると記載されている。
【0005】
これは、速い速度を持つ部位が、その前の遅い流速を持つ部位に追いつくことで、大きな水塊を人体に着水させるので、連続的な洗浄が求められる通常のおしり洗浄やビデ洗浄における洗浄水水量そのものを減少することができると共に、洗浄感や洗浄強度を高めることができる。これに対し、さらに多様性のある洗浄が求められる。特に、あたかも大量の水で洗浄しているかのように感じる量感のある洗浄と、十分な洗浄の強さを備えた洗浄が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−119865号公報(第1図)
【特許文献2】特許第3264274号公報(第20頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、限られた水量で、多くの水量で洗浄されているような量感のある洗浄感と、かつ、強さのある洗浄を両立して実現することで、快適性の高い人体洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、給水管と、前記給水管に接続された圧力変動部と、前記圧力変動部を制御する制御部と、前記圧力変動部の下流側に設けられた人体へ洗浄水を吐水するための吐水孔と、を備える人体洗浄装置であって、前記制御部は、前記圧力変動部に圧力の脈動推移を発生させ、前記脈動推移により前記吐水孔から速度の異なる部位を有した脈動流が繰り返し現れるように吐水を制御し、吐水後に前記速度の異なる部位が合体し、異なる大きさの水塊を連続して形成させることを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、限られた水量で、多くの水量で洗浄されているような量感のある洗浄感と、かつ、強さのある洗浄を両立して実現することで、快適性の高い人体洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における人体洗浄装置の水路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る脈動発生機器の概略構成断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る洗浄水の圧力変動の様子を説明する説明図である。
【図4】本発明における洗浄ノズルの断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る脈動発生機器の脈動発生コイルの励磁の様子を説明する説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る脈動発生機器から流出する洗浄水の流速を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明の洗浄水が吐水孔から吐水した場合、その吐水された洗浄水が脈動流により増幅される過程を示す説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る脈動発生機器から流出する洗浄水が人体に着水するときの荷重の変化を示すタイミングチャートである。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る脈動発生機器から流出する洗浄水の流速と、洗浄水の追付き曲線の関係を説明する説明図である。
【図10】本発明における洗浄の洗浄感と物理量の関係の一例を説明する説明図である。
【図11】本発明におけて生成される水塊の1例を説明する説明図である。
【図12】本発明において生成される異なる水塊の組合せの例を説明する説明図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る脈動発生機器の脈動発生コイルの励磁の様子を説明する説明図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る脈動発生機器から流出する洗浄水の圧力を示すタイミングチャートである。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る脈動発生機器から流出する洗浄水の流速を示すタイミングチャートである。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る脈動発生機器の脈動発生コイルの励磁の様子の変形例を説明する説明図である。
【図17】本発明の第2の実施形態に係る脈動発生機器の脈動発生コイルに従来どおりに励磁したときの電流を示すタイミングチャートである。
【図18】本発明の第2の実施形態に係る脈動発生機器の脈動発生コイルに励磁したときの電流を示すタイミングチャートである。
【図19】本発明の第3の実施形態に係る脈動発生機器の脈動発生コイルの励磁の様子を示すタイミングチャートである。
【図20】本発明の第3の実施形態に係る脈動発生機器から流出する洗浄水の流速を示すタイミングチャートである。
【図21】本発明の第4の実施形態に係る脈動発生機器の概略構成断面図である。
【図22】本発明の第4の実施形態に係る脈動発生機器の動作を示すタイミングチャートである。
【図23】本発明の第4の実施形態に係る脈動発生機器から流出する洗浄水の圧力を示すタイミングチャートである。
【図24】本発明の第4の実施形態に係る脈動発生機器から流出する洗浄水の流速を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0011】
40 吐水孔
50 給水手段、
60 瞬間式熱交換器(加熱手段)
67 給水管路
70 脈動ユニット
74 脈動発生機器
74b シリンダ
73c プランジャ
74d 脈動発生コイル
74e 緩衝スプリング
74f 復帰スプリング
74g 逆止弁
74k 第2コイル
74m 逆止弁
75 給水管路
81 流量調節兼流路切替弁
82 洗浄ノズル
90 圧力変動機器
91 第一の圧力変動部
92 第二の圧力変動部
910b、920b ピストン
910d、920d シリンダ
910f、920f 逆止弁
910h、920h 逆止弁
911 モータ
912 ギア
913 ギア
914、924 クランクシャフト
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
先ず、本実施例による人体洗浄装置の水路図を図1に示す。図1は、洗浄水の供給系を示す概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、人体洗浄装置の水路系は、人体洗浄装置のケーシングの外部の供給源(図示せず)から給水される入水側弁ユニット50と熱交換ユニット60と、脈動ユニット70とを備える。そして、脈動発生ユニット70から洗浄ノズルユニット80の流量調整件流路切替弁81を経て洗浄ノズル82に、脈動発生ユニット70により付与された脈動を保った洗浄水が導かれ、当該ノズル82から吐水される。これらの各ユニットは、人体洗浄装置のケーシングに収納されている。また、制御器10は電磁弁53、入水温センサ62a、ヒータ61、出水温センサ62b、フロートスイッチ63、脈動発生機器74、流量調節兼流路切替弁81、洗浄ノズル82および制御ボタン(図示せず)に接続されている。なお制御ボタンには強い刺激感のあるハードなおしり洗浄、ソフトなおしり洗浄(以下やわらか洗浄と呼ぶ)、ビデ洗浄(以下ビデ洗浄と呼ぶ)の各洗浄モードを選択する洗浄ボタン、洗浄水の水勢を変化させるための水勢変更ボタン、洗浄水の温度を選択できる温度調整ボタン、洗浄を停止するための停止ボタンが含まれる。
【0014】
これら各ユニットは脈動発生ユニットを挟んでそれぞれ給水管路で接続されている。即ち、入水側弁ユニット50と熱交換ユニット60は、給水管路55で接続され、脈動発生ユニット下流の流量調節兼流路切替弁81は給水管路75で接続されている。
【0015】
給水管路55は給水源(水道管)から洗浄水(水道水)を直接給水すべく入水側弁ユニット50に配管されている。この給水管路55に導かれた洗浄水は、入水側弁ユニット50のストレーナ51でゴミなどが捕捉されて、逆止弁52に流れ込む。そして電磁弁53にて管路が開かれると、洗浄水は調圧弁54に流れ込み、所定の圧力(給水圧:0.110MPa)に調圧された状態で、瞬間式加熱方式の熱交換ユニット60に流入する。このように調圧を受けて流入する洗浄水流量は200〜600cc/min程度となるようにされている。なお、給水管路55を便器洗浄用の洗浄水を貯留する洗浄水タンク(図示省略)から分岐して入水側弁ユニット50に配管することもできる。
【0016】
上記した入水側弁ユニット50の下流の熱交換ユニット60はヒータ61を内蔵する熱交換部62を備える。この熱交換ユニット60は熱交換部62へ流入する洗浄水の温度と熱交換部62から流出する洗浄水の温度と熱交換部62から流出する洗浄水の温度を入水温センサ62aと出水温センサ62bで検出しつつ、その検出温度を基にして洗浄水の設定温度の洗浄水に過熱するようにヒータ61の加熱動作を制御する。そしてこのようにして、温水化された洗浄水は後述する脈動発生ユニット70に流入し、脈動を付加され、流量調節兼流路切替弁81に流入する。なお、脈動とは、脈動発生ユニットによって生じる圧力変動のことであり、圧力変動を起こす装置類を脈動発生ユニットと呼んでいる。したがって、脈動発生機器は圧力変動部と同義である。
【0017】
また、この熱交換ユニット60は熱交換部62内の水位を検出するフロートスイッチ63を有する。このフロートスイッチ63は、ヒータ61が水没する所定の水位以上になるとその旨の信号を出力するように構成されている。そして、制御部10はこの信号を入力している状況下でヒータ61を通電制御するので水没していないヒータ61に通電してしまうというような事態、いわゆるヒータ61の空焚きを防止する。なお、熱交換ユニット60のヒータ61は制御器10にてフィードフォワード制御とフィードバック制御を組合せながら最適に制御される。
【0018】
更に、この熱交換ユニット60は熱交換部62からの洗浄水出口、即ち、熱交換部62下流の管路の熱交換部接続箇所に、バキュームブレーカ64と安全弁65とを備える。バキュームブレーカ64は、負圧となった管路内に大気を導入して、熱交換部下流の管路内の洗浄水を断ち切り、熱交換部下流側から洗浄水の逆流を防止する。また安全弁65は給水管路67内の水圧が所定値を超えると開弁し、捨水配管66へ洗浄水を排出することにより、異常時の機器の破損、ホースの外れ等の不具合を防止している。
【0019】
続いて、脈動発生ユニット70の構造について説明する。脈動発生ユニット70は、アキュームレータ73、脈動発生機器74から構成されている。図2は脈動発生機器74の概略構成断面図である。なお、ここでいう脈動発生機器は、圧力変動を起こす圧力変動部のことである。図2に示すように給水管路67、75に接続されるシリンダ74bにプランジャ74cを摺動自在に備える。そして、このプランジャ74cを脈動発生コイル74dの励磁を制御することにより上流側・下流側に進退させる。プランジャ74cは脈動発生コイル74dの励磁により図示する原位置(プランジャ原位置)から下流側74hに移動する。そして、コイルの励磁が消えると、復帰スプリング74fの付勢力によって、原位置に復帰する。この際、緩衝スプリング74eによってプランジャ74cの復帰の動作が緩衝される。プランジャ74cはその内部にダックビル式の逆止弁74gを備え、上流側への逆流を防止している。したがって、プランジャ原位置から下流側へ移動の際にはシリンダ74b内の洗浄水を加圧して給水管路75に押し流せるようになっている。この際、プランジャ原位置と、下流側に移動した位置は常に一定であることから、プランジャーが動作する際に給水管路75に送られる洗浄水の量は一定である。その後、原位置に復帰する際には逆止弁74gを経てシリンダ74b内に洗浄水が流れ込むので次回のプランジャ74cの下流側移動により、改めて、一定量の洗浄水が給水管路75に送られることになる。
【0020】
この場合、脈動発生機器74には給水管路55を経て、上記給水圧の洗浄水が給水されている。よって上記したようにプランジャの原位置復帰の間に逆止弁74gを経てシリンダ74b内に流れ込んだ洗浄水は逆止弁74gによる圧力損失や下流側の洗浄水の引き込みの影響を受けて1次圧のままではないものの、給水管路75に送られる。この様子を図でもって表すと、図3に示す様に、洗浄水は、脈動発生機器74への導入水圧Pin(給水圧)を基準に脈動した圧力で脈動発生機器74から給水管路75、ひいては洗浄ノズルユニット80に送られて局部に吐水される。なお、図3に示す圧力波形は、吐水孔40の直近で測定した結果であり、オリフィス401もしくは402直前の洗浄渦室301もしくは302の圧力を応答性の高い圧力計によって高いサンプリング周期で測定した結果である。
【0021】
次に、アキュームレータ73について説明する(図示せず)。アキュームレータ73は、ハウジング73ハウジング内のダンパ室とこのダンパ室に配置されたダンパを有する。よって、アキュームレータ73は脈動発生ユニット70の上流側の給水管路67にかかる水撃を低減する。このため熱交換部62の洗浄水温度分布に及ぼす水撃の影響を緩和でき、洗浄水の温度を安定化することができる。この場合、アキュームレータ73は脈動発生機器74に近接配置したり当該機器と一体的に配置することが、脈動発生機器74で発生された脈動を上流側に伝播することを速やかにかつ効果的に回避できる観点から好ましい。
【0022】
次に洗浄ノズルユニット80について説明する。洗浄ノズルユニット80に流量調節兼流路切替弁81が配設されており、給水管路86で洗浄ノズル82に接続される。そして、脈動発生ユニット70から送られた脈動流の洗浄水の供給先を、洗浄ノズル82の各流路83、84、85に切替、かつその流路を調節する。
【0023】
次に、洗浄ノズル82について説明する。図4(a)、(b)に洗浄ノズルの構造図を示す。洗浄ノズル82内にある複数の洗浄流路83、84、85はそれぞれ洗浄ノズル先端近傍にあるおしりに向って洗浄水を吐出するおしり洗浄用吐水孔401とビデ洗浄用吐水孔402に連通する。吐水孔401、402の上流には洗浄流路83、85を通水する洗浄水を旋回させながら旋回流として吐水孔から吐水させるために洗浄水渦室301、302を設けてある。なお、洗浄流路84は洗浄渦室301の下方に連通し、吐水孔401と連通している。また、吐水孔401、402の径は、φ0.5からφ1.8程度の範囲であり、流量によって最適な径を選択している。たとえば、流量430ml/minの場合、おしり洗浄用吐水穴401の径は、φ0.9程度であり、ビデ洗浄用吐水孔402の径はφ1.4程度に設定されている。
【0024】
ここで、本実施形態における洗浄水吐水の様子について説明する。図5は、洗浄水吐水に際して脈動を発生させる脈動発生機器74の脈動発生コイル74dの励磁の様子を示す電圧波形の図であり、図6は、脈動発生機器74から流出する洗浄水の流速を示すタイミングチャート、図7は、吐水孔401からの洗浄水吐水の様子を模式的に説明する説明図である。
【0025】
制御部10は、脈動発生コイル74dを励磁して、脈動発生機器74にて脈動を発生させるに当たり、パルス状の信号を出力する。そして、このパルス信号を、脈動発生コイル74dに接続されこれをオンさせるためのスイッチングトランジスタ(図示せず)に出力する。よって、脈動発生コイル74dは、パルス信号に従ったスイッチングトランジスタのON・OFFにより繰返し励磁し、上記したようにプランジャ74cを周期的に往復動させる。これにより、脈動発生機器74から吐水孔401には、圧力が周期的に上下変動する脈動流の状態で洗浄水が供給され、この脈動流の洗浄水が各吐水孔から吐水される。
【0026】
なお、脈動発生コイル74dに印加されるパルス信号は、図5に、また、それによって、脈動発生機器74から流出する洗浄水の流速のタイミングチャートを図6に示す。なお、図6は、図3の圧力値を基に、流速V=C√ΔPの式に基いて算出された波形である。図5より、脈動発生機器に印加されるパルス信号は、1周期中において、ON時間の異なる2つの矩形派が組み合わさった電圧波形となっている。この制御によって起る、脈動発生機器74から流出する洗浄水の流速変化について、脈動発生機器74のプランジャ74cの動作に基いて説明する。脈動発生機器74には、図5に示す電圧波形が印加されている。T1において、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dに電圧がかかり電流が流れると、コイルが励磁されて、プランジャ74cは磁化され、下流側へ引き付けられる。この下流側への引き付けによって、復帰スプリング74fが圧縮されてエネルギーを蓄えると同時に、洗浄水を加圧し、最も高い圧力P4に達するその際、吐水孔401から吐水される洗浄水の流速は最も高くなる(V4)。その後、T2において電圧が切れるとコイルの励磁が消えて、復帰スプリング74fの付勢力を受けて、原位置へ復帰しする。同時に圧力は低下し、最低圧力P1に達する。その際、吐水孔401から吐水される洗浄水の流速も低くなり、最も低い流速域V1まで下降する。その後、給水圧Pinまで復帰しようとし、流速も給水圧時の流速Vinまで復帰しようとするが、この復帰のタイミングにT1よりも短いON時間のT3の矩形波を加えることにより、コイルを励磁させ、プランジャー74cが下流側へ引き付けることで、洗浄水を再度加圧する。このとき、水圧が復帰途中であることと、T3の時間がT1よりも短いことにより、洗浄水は最高圧P4までは高まらないものの、給水圧よりも高い第二のピーク圧力P2まで達する。したがって、流速も給水圧時の流速よりも高い第二のピーク流速V2が現れることになる。また、第二のピーク流速V2と、再度プランジャーが励磁されるタイミングV3までには、入水圧時の流速Vin付近で吐水される期間が一定時間生じることになる。
【0027】
ここで、脈動コイル74dに印加する電圧波形のタイミングは、脈動の周波数50Hzであり、T1を4.8msec、T2を7msec、T3を1msecにで設定してある。ただし、周波数、T1、T2、T3の時間幅はこの限りではなく、5Hz以上の不感帯周波数の繰返し周波数であって、T1からT3の時間巾もその周期に基いて設定されてもよい。
【0028】
続いて、上記によって作られた流速波形によって得られる洗浄水の状態について説明する。図7は、脈動流の洗浄水を仮定の吐水孔40から吐水した場合、その吐水された洗浄水が脈動流に増幅される仮定を説明する説明図である。ここで、図3と図6の図を用いて、圧力変動と流速変化の関係について説明する。脈動発生機器74により圧力が脈動になると、流速Vも同様に変動して脈動となる。すなわち、吐水される洗浄水は、圧力変動がPmaxになると、流速も最大速度Vmaxになり、瞬間の流速が時間とともに変動する。また、図3の脈動流の洗浄水の圧力波形における各部位をP1、P2、P3、P4、P5とすると、流速も図6上のV1、V2、V3、V4、V5がそれぞれの番号同士で対応する。よって、吐水直後から図7の(A)〜(D)へと移行するにつれて、V2はV1より速度が大きいから、V3はV2と合体し、大きな水塊となる。ここで、圧力Pと流速Vの関係は、V=C√ΔPの関係となっている。
【0029】
このように、流速波形の立ち上がりの勾配において、早い流速がその前の遅い流速に順次合体することにより、大きな塊となって、人体局部(洗浄面)に着水することになる。ここで、図7の(A)、(B)に示すように、低い側の流速域での流速の立ち上がり勾配では、全体の流速が遅いので、人体局部に着水する前に、V2がV1と合体して大きな水塊を作ることができる。この洗浄水は、人体局部に当たるときには、衝突エネルギ(洗浄強度)が大きい水塊状態になっている。一方で、図7の(C)、(D)の示すように、V3、およびV4の高い側の流速域での流速の立ち上がり勾配では、全体の流速が速いので、人体局部に着水するまでの短い時間では、距離が縮まりにくいため、人体局部に着水する時点では、V4はV3とほとんど合体せずに速く小さい水塊として着水することになる。この洗浄水は、人体局部に当たるときには、衝突エネルギ(洗浄強度)は速度が大きい状態になっている。また、このとき、V2とV4のタイミングに十分開きがある、言い換えれば、V2とV3にピークが現れるように制御することで、V2によって生成される水塊と、V4によって生成される水塊は、V4が吐水された段階で十分な時間の開きが生じる。その結果、流速V2で生成された大きく遅い水塊とは、流速V4で生成された小さく速い水塊は、お互いに干渉することなく、人体局部に異なる流速をもって独立して着水することができる。また、V4からV1に移行するタイミングでは、流速が減速していくため、水塊は生成されず、洗浄感には寄与しない領域となる。したがって、この領域を減らすことは、洗浄感を高めることにも繋がる。なお、ここでいう水塊とは、吐水孔から吐水される洗浄水の進行方向に対し直角に切断したときの断面積が、吐水後に追付くことにより、吐水孔から吐水された直後の断面積よりも大きくなれば、水塊という。
【0030】
ここkで、吐水後に洗浄水が追い付くことにより、吐水の断面積が増え、水塊が形成されると、人体局部に当たるときの荷重は、吐水の断面積が増えない(水塊が形成されない)吐水と比べ、人体局部で当たるときの荷重は大きくなる。図8は、本実施例における吐水が、人体局部で当たるときの荷重の変化を示したタイミングチャートである。これより、一つの周期において、2つのタイミング荷重が大きくなっていることがわかる。これより、1つの周期において、2つ水塊が形成され、それが独立して当たっていることがわかる。この場合、先に大きく遅い水塊があたり、あとから小さくて速い水塊が当たっている。したがって、使用者は、流速と大きさの異なる2つの水塊を独立して感じることができ、この場合、大きく遅い水玉で量感を感じ、小さく速い水玉で強さを感じることができる。なお、この荷重の変化について、それぞれの山で積分した値がM・Vすなわち衝撃力となるが、この値が十分大きくなることで、当たる感覚を得ることができる。また、ここでいう水塊とは、ある衝撃力を持って人体に着水することをいい、見た目上は水の塊(水玉状)でなくても、水塊と呼んでいる。ここで、脈動流で吐水された洗浄水は、この場合の流速波形では、速度V2の遅く大きい水塊と、速度V4の速く小さい水塊がそれぞれ脈動周期MTごとに現れるので、遅く大きい水塊と、速く小さい水塊が交互に現れる、つまり脈動周期MTの半分の間隔で現れることになる。したがって、周期が長くても、より連続感のある快適な洗浄感をえることができ、断続感がきらいな人にとってもより快適な洗浄を提供できる。しかも、このそれぞれの水塊は、V4にそれぞれ遅れて吐水されたV5およびV1で繋がれたような状態となる。
【0031】
次に、このような吐水の状態により得られる効果について説明する。低い側の流速の立ち上がりで合体してできた大きな水塊は、低い側の流速の変動量が、高い側の流速の変動量より大きくなっているため、より大きな水塊になっている。ここで、流速の低い側で水塊が生成される過程について説明する。水塊は、洗浄水が吐水孔40から吐水され、人体の局部に当たるまでの時間間隔で、速度の速い洗浄水が、速度の遅い洗浄水に追いつくことで生成される。このとき、流速が速い領域で水塊を生成しようとすると、吐水孔から人体局部に到着するまでの時間は短い。たとえば、流速が15m/secのときに、60mm先の人体局部に到達する時間は、4msecである。一方、遅い流速域で考えた場合、吐水孔から人体局部に到着するまでの時間は、速い流速域の場合と比べ、長くなる。たとえば、流速が7.5m/secの時には、人体局部に到達する時間は、8msecである。このときに、同じ量の速度差がある場合には、人体に到達するまでの時間が長いほうが、追いつける量は多いことになる。すなわち、洗浄水の流速の低い側で水塊を生成したほうが、効率よくより大きな水塊を生成することが可能である。このように生成した水塊は、より大きな水塊となっているため、水塊の断面積Sは通常よりも大きくなる。したがって、洗浄水量が少ないにもかかわらず、断面積の大きな吐水が当たっており多い流量で洗浄されているような洗浄感、すなわち量感がある。また、この水塊では、速度は遅いが、水塊の量は多くなっているため、洗浄の強さ(洗浄強度)に関わる衝撃力は大きくなる。一方で、速く小さい水塊は、速い流速V4は先にでた洗浄水になかなか追いつくことができず、水塊が大きくなる前に人体局部に着水するため、断面積が小さく、量感は乏しくなる。しかし、先にでた洗浄水に追いつかないということは、遅い流速にエネルギーを吸収されることなく人体局部に着水できるので、強さを維持したまま着水することができる。このときの洗浄の強さ(洗浄強度)に関わる衝撃力は、流速が大きくなるため、衝撃力も大きくなる。したがって、大きく遅い水塊で量感を出し、小さく速い水塊で強さをだすことで、量感と強さを両立した快適性の高い洗浄を実現することができる。なお、大きく遅い水塊および小さく速い水塊はそれぞれ十分な衝撃力を持っているため、脈動周期MTに対して、約半分の周期の脈動に感じることができ、この感覚は、人間が識別できる感覚にくらべ十分短いため、強さと量感を連続感のある洗浄として実感することができる。
【0032】
次に、水塊生成の現象について説明する。図9は、第1の実施形態の流速波形と、追付き曲線を示したタイミングチャートである。まず、追付き曲線について説明する。追付き曲線とは、吐水されたタイミングと吐水された流速がそれぞれ異なる洗浄水であっても、この曲線上に載っていれば60mm先の人体に同時に着水することを示している。ここで、v1の流速を持つ洗浄水がt1のタイミングで吐水されたとする。そしてそのΔt後、
v2の流速を持つ洗浄水が吐水されるとする。このとき、ノズルから人体までの距離をdとすると、あとから出たv2の流速を持つ洗浄水が人体に着水するまでにかかる時間Tは、T=d/v2である。ここで、先にでたv1の流速を持つ洗浄水を考えると、v1の流速を持つ洗浄水は、v2の流速を持つ洗浄水よりもΔt先に出ているため、あらかじめΔt・v1先に進んでいる。この状態で、v2の流速を持つ洗浄水が人体に着水するまでにかかる時間T後に人体に丁度人体に着水する速度を持っていれば、v1とv2は同時に着水することになる。したがって、同時に着水するための追付き曲線のTとVの関係は、v2=(d・v1)/(Δt・v1+60)の関係式で表される。そして、この曲線よりも遅い流速を持つ洗浄水は、後から来る速い流速の洗浄水に追付かれ、合体して同時に人体に着水することになる。したがって、流速波形において、v2の流速を基点として追付き曲線を重ねると、この追付き曲線よりも遅い流速の領域は、v2の流速を持つ洗浄水に全て追付かれることになり、積分した値が体積となる水塊が生成され人体に着水することになる。この場合、水塊の速度は、12m/secであり、水塊量は、21μリットルと大きな水塊となる。一方、v4を基点にひかれた追付き曲線とその付近の流速波形では、追付き曲線よりも勾配が寝ていて、遅い領域(右斜線部)が非常に少なくなっている。この場合、水塊量は少ないものの、その分、追付く量が少ないため、遅い流速に速度が吸収されて遅くなることがなくなる、つまり、小さいが速い水塊が生成される。この場合、水塊の速度は14m/secであり、水塊量は6μリットルである。これらのことより、つまり、強さが減衰せずに人体に着水することになる。これらのことより、大きい水塊では、水塊の量が多くなるため多い水量で洗っているのと同じ感覚を得ることができ、小さく速い水塊では、減速せずに人体に着水するために、強さを感じることができる。かつ、この水塊を速い周波数で人体に当てることによって、強さと量感を同時に感じることができる。ここで、大きな水塊で量感を感じさせるためには、19μリットル以上の水塊量が必要であり、また、速い水塊で強さを感じさせるためには、13m/sec以上の流速が必要であることが分かっている。さらに、5Hz以上の不感帯周波数域において、それぞれの水塊が少なくとも1回着水することで、強さと量感を同時に感じさせることができる。すなわち、脈動周波数は5Hz以上であればよい。
【0033】
次に、本発明における洗浄感について説明する。図10には、洗浄感と物理量の関係の一例を示している。図10に示すように、洗浄感は、強さと量感とからなる。強さとは速吐水が人体に当たることで、痛みに近い刺激を感じることであり、流速Vに依存する。一方、量感は、吐水断面積の大きな吐水が十分な力を持って当たることで、太い水流が当たっていると感じる感覚であり、吐水断面積が大きいという点で、吐水断面積S(重さM)、十分な力を持つという点で衝撃力M・Vに依存する。これらの物理量を全て達成することで、快適な洗浄を実現可能であるが、省エネの観点から、現在主流となる瞬間式熱交換器による温水生成で、洗浄水量が500ml/min以下になると、全て達成することは困難である。そこで、これら全てを達成するため、水塊の生成を検討した。図11には、脈動推移の流速波形と生成される水塊の形状の一例を示す。なお、その関係は一例であり、流速域の違いなどで、必ずしもこの関係で生成されるものではない。Iの速い水塊は、流速の立ちあがり勾配を追付き曲線よりも勾配を緩やかにすることで、追付く量を少なくした水塊であり、速度は速いが水塊の量が小さい、すなわち、強さはあるが、量感の少ない水塊が生成される。IIの大きい水塊は、圧力の立ち上がり勾配を追付き曲線に近い勾配にすることで、徐々に追付くことでまとまる水塊であり、速度は、減速し、強さはあまりないが、水塊の量が大きく、衝撃力も大きい水塊が生成される。IIIの分散した水塊は、圧力の立ち上がり勾配を追付き曲線よりも急勾配にすることで、遅い流速と速い流速の速度差が大きい状態で追付かせ、速い流速の吐水が先にある遅い流速の吐水を弾き飛ばすように吐水を分散させる水塊であり、面積の広くなることで量感の多い水塊が生成される。以上のように、異なる脈動流の生成によって、異なる種類の水塊で異なる特徴を持った吐水を生成することができるが、一方で、強さ・量感にかかわる物理量のいずれかがかけることになっていた。そこで、この種類の異なる水塊を、人が意図的な繰返し吐水に基く振に知覚が追従できなくなる約5Hz以上の不感帯周期内において、少なくとも1回ずつ人体に着水させることで、それぞれの水塊で独立して、それぞれ物理量、感覚を作りだし、それぞれが水塊として独立して当たるが、それが不感帯周期内で着水するため、全ての物理量を備える、すなわち、強さと量感がある吐水を感じさせることができる。
【0034】
以上のように、われわれは、水塊の大きさや、速さ、追付き量を変えることにより、異なる物理量の水塊を形成し、感覚の異なる水塊を生成して、それらの水塊を独立させながら、短時間で人体に着水することで、複数の感覚を備える吐水を実現している。ここで、その組合せの例について説明する。図12には、水塊の組合せの例の模式図を示している。図12(a)には、t1の時に、大きい水塊が、t2の時に速い水塊を交互に生成し、独立して人体に着水する様子を示している。このような吐水では、まず、吐水の追付く量を多くすることで、大きい水塊が生成される。この場合、速い速度は追付くことで減衰し、速さが少なくなるので、強さは乏しくなるが、水塊の大きさが大きくなり、ある程度の面積を持ち、かつ衝撃力が大きくなっているので、量感を感じさせることができる。そのあとから、追付く量を小さくすることで、水塊の大きさは小さいものの、吐水の速さの減速がない分、強さを維持した吐水で強さを感じさせることができる。この2種類の水塊を不感帯周期5Hz内でそれぞれが少なくとも1回ずつ着水することで、一つの吐水で強さと量感を兼ね備えた吐水と感じさせることができる。図12(b)には、分散した吐水と、大きい吐水が交互に生成される様子を示している。この場合、分散した水塊で非常に高い量感が得られると共に、かつ、あとから、追付く量の多い大きい水塊が生成されることで、衝撃力を十分もった水塊が当たることで、体積を持ちある程度の流速を持つので、吐水の重さを感じることができる。図12(c)には、分散した水塊と速い水塊が交互に生成されているようすを示している。分散した吐水で大きな量感を得るとともに、速い吐水で強さを感じることができる。なお、これらの水塊は、3つが組み合わさって生成されてもよく、それによって、非常に量感を高く、かつ強さの吐水が実現できる。また、この場合、順番はこれ以外の順番でも良いし、毎回順番が変わっても良い。また、水塊が人体に着水するタイミングもかならずしも規則的である必要もなく、水塊の間隔が異なってもよい。この場合、例えば、あらかじめ、脈動周期が変化するような周波数のテーブルを用意しておき、不感帯周波数以上で、周波数を変動させてもよい。また、不感帯周波数以上でランダムに変動してもよい。また、散発的に脈動を発生させてもよい。このように、本発明では、異なる水塊により異なる感覚を生成し、不感帯周期内で複数の水塊を当てて、異なる感覚をそれぞれの水塊で生成することができる。なお、これらは、水塊の一例であり、組合せも一例にすぎず、異なる水塊により、異なる感覚作り、足らない感覚、物理量を補うことで高い洗浄感を実現させる点が肝要である。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図13は、脈動発生機器に印加される電圧波形を、図14には、脈動発生機器によって生じるノズル先端の圧力変動のタイミングチャートを、図15には、圧力変動によって生じる吐水の流速変化のタイミングチャートを示す。なお、上記以外の構成は、第1の実施例とほぼ同じであり、第2の実施形態における前述の第1の実施形態と同じ構成要素の詳細な説明は省略する。
【0036】
脈動発生機器74の脈動発生コイル74dには、図13に示すように、1周期中にプラス側の電圧と、そのあと、マイナスの電圧が加わる電圧波形が印加されている。次に、この電圧波形によって生じる吐水の状態について説明する。図15には、脈動発生機器74から流出する洗浄水の流速のタイミングチャートを示しており、図14の圧力値を基に、流速V=C√ΔP(Cは流量係数)の式に基いて算出されたものである。図15に示す流速の変化の様子を、脈動発生機器74のプランジャ74cの動作に従って説明する。図10のT1において、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dにプラス側の電圧がかかり電流が流れると、コイルが励磁されて、プランジャ74cは磁化され、下流側へ引き付けられる。この下流側への引き付けによって、復帰スプリング74fが圧縮されてエネルギーを蓄えると同時に、洗浄水を加圧し、最も高い圧力P4に達する。その際、吐水孔401から吐水される洗浄水の流速は最も高くなる(V4)。その後、T2において電圧が切れるとコイルの励磁が消えて、復帰スプリング74fの付勢力を受けて、原位置方向へ復帰しする。同時に圧力は低下する。その際、吐水孔401から吐水される洗浄水の流速は低くなる。さらにその後、T3において、マイナス側の電圧をかけることによって、プランジャ74cの復帰速度が速くなり、その結果、プランジャーは原位置を越えて、上流側まで達し、緩衝スプリング74eを圧縮させる。このとき、復帰速度が速まったことで、ピーク流速V4からボトム流速V1に達するまでの時間を短くすることができるとともに、原位置を越えて上流側まで達するため、ボトム流速V1もさらに低くなる。なお、復帰速度が速くなる原理とその効果については、後述する。その後、緩衝スプリング74eの付勢力を受けて、原位置に向って再度復帰する。このとき、緩衝スプリング74eの付勢力および洗浄水の流入により、通常であれば給水圧まで復帰するだけだが、給水圧を超えて、第2のピ−ク圧力P2まで達する。したがって、流速も給水圧時よりも高い第2のピーク流速V2が現れることになる。また、第二のピーク流速V2と、再度プランジャーが励磁されるタイミングV3までには、入水圧時の流速付近で吐水される期間が一定時間生じることになる。ここで、脈動コイル74dに印加する電圧波形のタイミングは、例えば、脈動の周波数50Hzとした場合、周期は20msecであり、その場合、T1を4.8msec、T2を1msec、T3を1msecにで設定してある。ただし、周波数、T1、T2、T3の時間幅はこの限りではい。また、加える電圧波形は矩形波だけでなく、図16に示すようなSin波形でもよく、その際、位相制御で、マイナス側の途中まで印加することにより、上述した効果を得ることも可能である。
【0037】
ここで、マイナス側の電圧を印加したことにより、得られる効果のメカニズムについて説明する。プランジャ74cは、脈動発生コイル74dに電流が流れることにより、コイル励磁する。それにより、プランジャ74cは磁化され、復帰スプリング74fを圧縮しつつ、下流側へ引き付けられる。その後、電流が切れると脈動発生コイル74dのコイル励磁は消え、プランジャ74cの磁力は小さくなるので、復帰スプリング74fの付勢力により、原位置まで復帰する。その際、コイル励磁が消えても、プランジャ74cの磁力が残り残留磁気が発生する。この残留磁気により、復帰スプリング74fの付勢力とは逆の方向(下流側)に力が発生する、すなわち、残留磁気の影響で、原位置までの復帰を妨げる方向に力が発生することになる。図17は、残留磁気が発生している場合の脈動発生コイル74dに加わる電流の時間変化を示している。図17に示すように、電圧が0Vになっても、電流はすぐには0にならず、電流がだらだらと流れていることがわかる。これは、脈動発生コイル74d内に残留電荷が蓄えられ、それが放出されることで起っている。この残留電荷によって、残留磁気が生じ、その結果、プランジャー74cの復帰時に逆方向に力を発生させていたことがわかる。この状態で、マイナス側の電圧を印加することにより、脈動発生コイル74dには逆の電流がながれ、コイル励磁されたときには、逆磁界が発生し、残留磁気を即座に小さくすることができる。このときの脈動発生コイル74dに流れる電流の様子を示した図を図18に示す。図18より、脈動発生コイル74dに加わる電圧が0Vになったのとほぼ同時に電流も0になっていることが分かる。その結果、残留磁気の影響を少なくすることができ、プランジャ74cの原位置までの復帰速度を高めることができる。結果、ピーク流速V4からボトム流速V1までに移行する時間を短縮し、かつ、ボトム流速V1を低くすることができ、ボトム流速V1から給水圧時の流速V2まで戻る際に反動により、第二のピーク流速V2を生成することができる。また、さらに、ピーク流速V4からボトム流速V1への時間間隔を短縮することは、圧力の下降(流速の下降)は、水塊が生成されないため、洗浄にはあまり寄与しない領域となるが、その領域を短縮させることができる。また、ボトム流速V1から第2のピーク流速V2に達する領域を早く作ることができ、第2のピーク流速V2と次の加圧のタイミングである流速V3の間に十分な空き時間をつくることができ、大きさの異なる水塊のできる感覚を十分に広げることにも繋がる。これは、1つの周期の間で異なる水塊を均等なタイミングでつくることに繋がり、これは、低い周波数でも断続感の少ない快適な洗浄も実現することが可能にもなる。
【0038】
なお、残留磁気を低減させる方法は、マイナス電圧をかける方法に限ったものではなく、脈動発生コイル74dに電圧を印加する回路と、それとは別に、スイッチングトランジスタによって、脈動発生コイル74dの電圧がOFFになったタイミングで切り替わり、コンデンサによって残留電荷を消費する残留電荷消費回路(図示せず)によっても同様の効果をえることができる。その他、スナバ回路や、ブリッジ回路によって、電圧OFF時の電流値を抑えるようにしてもよい。
【0039】
また、プランジャー74cの復帰速度を速める方法としては、残留磁気を低減する方法に限ったものではない。図16には、プランジャー74cの復帰速度を速めるための脈動発生機器の変形例を示している。
【0040】
図16に示すように、脈動発生機器70の脈動発生コイル74dに対して、上流側に第2コイル74kを設ける。第1コイル75dおよび第2コイル75kには、図17に示す位相の異なる単純な矩形波が印加される。これによって、プランジャー74cが復帰するタイミングで第2コイル74kに電圧が印加されるため、プランジャー74cは、第2コイル74kに吸引されることになり、プランジャー74cの復帰速度を速め、その結果、同様の効果を得ることができる。
【0041】
なお、第2の実施例で説明したプランジャーの復帰速度を速める方法と、第1の実施例で説明した2つのパルスの生成は、組合せて用いてもよく、その場合、大きな水塊をより大きく、速い水塊をより速くすることに繋がり、強さと量感をより高めることが可能となる。
【0042】
次に、第3の実施形態について説明する。図19には、脈動発生機器74に印加される電圧波形を、図20には、脈動発生機器74の圧力変動によって生じる吐水の流速変化のタイミングチャートを示す。上記以外の構成は、第1の実施例とほぼ同じであり、第3の実施形態において、前述の第1の実施形態と同じ構成要素の詳細な説明は省略する。
【0043】
図19に示すように、脈動発生機器74の脈動発生コイル74dには、1周期中にON時間で断続的加える領域Ta1と、その後、一定期間OFFするTa2と、さらにその後ONする領域Ta3の領域を持つパルス波形が加わっている。このときの全体の周期はMTである。これによって生じる流速の変動のタイミングチャートが図20でる。なお、図20には、前述した60mm地点での追付き曲線(点線)が引かれている。次に吐水の様子について、図20に基いて、説明する。図20において、ON時間が断続的に加わる領域Ta1においては、ON時間が断続的となるため、プランジャー74cは、通常のONするTa3のパルスと比べ、ややゆっくりとした速度で吸引される、その結果、第1のボトム流速Va1からの流速の上昇はややなだらかに、第1のピーク流速Va2まで到達する。このとき、流速の立ちあがり勾配は、追付き曲線よりも勾配は緩やかとなり、ほとんど追付かないが、追付きによる減速がほとんど起らないため、速い水塊が生成される(第一の水塊)。一方、一定期間をONする領域Ta2では、一気に吸引されるため、流速は、第2のボトム流速Va3から、急激に上昇し第2のピーク流速Va4に到達する。このときの流速の立ちあがり勾配は、追付き曲線と同等もしくは、急な勾配となっており、追付きが起ることによって大きな水塊が生成される(第2の水塊)。このとき、第2の水塊は多く追付くことによって大きな水塊を生成するが、その時、追付きによって若干減速される。ここで、流速波形において、第2のピークVa4は、第1のピークVa2よりもやや高くなっているため、水塊の速度はほぼ同等でありながら、大きさの異なる2種類の水塊が生成される。これによって、大きい水塊と小さい水塊が交互に人体に当たることになる。ここで、第1の速い水塊は、流速は速く、面積が小さいため、当たるときの圧が大きくなり、強さを感じる。一方、第2の大きい水塊は、面積が大きくなるので、圧は分散して弱くなるが、面積が大きいため、量感を感じる。このように、大きさの異なる水塊を生成し、不感帯周波数内に、少なくとも1回人体に当てることで強さと量感を両立することができる。
【0044】
なお、大きさの異なる水塊は、必ずしも交互に規則的に生成する必要はなく、5Hz以上の不感帯周波数において、少なくともそれぞれ1回人体に着水すればよい。また、生成される周波数は変動してもよい。
【0045】
次に、第4の実施形態について説明する。図21は、モータ式レシプロタイプの脈動発生機器90を示す概略構成断面図である。脈動発生機器以外は、第1の実施形態と同等であり、第4の実施形態において、前述の第1の実施形態と同じ構成要素の詳細な説明は省略する。
【0046】
脈動発生機器90は、第一の脈動発生部91と第二の脈動発生部92が併設した2連で構成されている。脈動発生部91と92は、それぞれ円柱状の空間でシリンダ910a、920aが形成されている。シリンダ910a、920a内には、ピストン910b、920bが設けられている。ピストン910b、920bには、Oリング910c、920cが装着されている。ピストン910b、920bとシリンダ910a、920bで区切られたそれぞれの空間に加圧室910d、920dが形成される。加圧室910d、920dには、洗浄水入り口910e、920eが給水管67から分岐されて洗浄水が流入するようになっている。その際、アンブレラパッキン910f、920fによって、逆流しないようになっている。また、洗浄水出口910g、920gがそれぞれ設けられ、途中で合流して、加圧された洗浄水が出水する。その際、アンブレラパッキン910h、920hによって、こちらも逆流を防止している。
【0047】
脈動発生部91(92)は、モータ911(921)の回転軸にギア912(922)が取り付けられ、ギア912(922)とギア913(923)がかみ合っている。また、ギア913(923)にはクランクシャフト914(924)が取り付けられ、ピストン保持部915(925)を介してピストン910b(920b)が取り付けられる。なお、第二の脈動発生部92のピストン920bのストロークは、第一の脈動発生部91のピストン910bのストロークよりも短くなるように、クランクシャフト924とギア923の接合半径が、第一の脈動発生部91のそれよりも短くなっている。
【0048】
制御部10により与えられる制御信号に基いて、モータ911(921)の回転軸が回転すると、ギア912(922)、913(923)、クランクシャフト914(924)、ピストン保持部915(925)を介して、ピストン910b(920b)が往復動し、加圧室の容積が変化することにより圧力変動すなわち、脈動が発生する。このとき、ピストン910b、920bのストロークは、図22に示すように動作する。すなわち、ピストン920bのストロークは、ピストン910bのストロークの約半分となり、かつ、180°位相がずれるように設定されている。なお、周期は、同一である。
【0049】
次に、脈動発生機器90によって生成される流速の変化の様子を図24に基いて説明する。図24は、脈動発生機器90によって生成された圧力と流速の変化の様子を示したタイミングチャートである。図24において、S1のタイミングで脈動発生部92(ピストンB)が上死点までストロークすると、加圧部920d内の洗浄水は加圧され、図24に示す流速Vm1まで加速される。その際、第一のピーク流速が生成されるその後、ピストンBが下がると、流速も落込み、S2のタイミングで、流速はVm2まで下がる。そしてその後、脈動発生部91のピストン910b(ピストンA)が上死点に到達するタイミングで、流速は、第二のピーク流速Vm3に到達する。そして、ピストンAが下降すると共に、流速もVm4まで下降する。
【0050】
このような流速変動を起こすことにより、流速Vm1を持った洗浄水は、それよりも先にでた洗浄水に追いつきながら、第一の水塊を形成する。また、流速Vm3を持った洗浄水は、それよりも先にでた洗浄水に追いつきながら、第二の水塊を形成する。その際、Vm1とVm3が生成されるタイミングには、十分な時間間隔がある。したがって、第二の水塊が生成されるときには、第一の水塊は十分進んだ位置にあり、人体に着水する際には、それぞれ独立して、着水する。よって、流速の異なる水塊が連続して着水するので、それぞれの水塊で異なる感覚を得ることができる。
【0051】
なお、この場合、給水圧よりも高い圧力、すなわち、圧力変動の最小値が給水圧よりも高い圧力で圧力変動が起っている。これによって、給水源の水圧が低い地域であっても、高い洗浄感を実現することができる。また、脈動発生機器90において、加圧部910d、920dの下流側にあるアンブレラパッキン910h、920hを設けない構成にしてもよい。それによって、給水圧を中心とした圧力変動が生成される。それによって、より簡単な構成で、水塊生成が可能である。また、第1の実施形態で説明した電磁ポンプについても、加圧室の下流側に逆止弁を設けて、給水圧よりも高い領域で圧力変動を起こしても良い。
【0052】
なお、この場合、シリンダ数は1つで、加圧室を円筒方向に2つ設け、それぞれ、ストロークが異なるように設定してもより。また、シリンダを3つ設け、それぞれ位相差を設けることにより、3つもピーク流速をもつ流速変動を起こしてもよい。その際、3つの感覚を持つ吐水を生成でき、多様な洗浄感を実現することができる。また、図2に示す脈動発生機器を並列に配置してもよい。また、これらの実施例は、発明の一例に過ぎず適宜応用可能である。
【0053】
また、変形例として、洗浄ノズル82の先端部(図4中の旋回渦室301、302)から空気が混入するように空気混入部が設けられていても良い。空気混入部は、強制的に空気を導入するエアポンプによって加圧された空気が、ノズル先端に連結されたチューブから混入するようになっていて、脈動発生機器によって生じる圧力変動(図6)に合わせ、エアポンプによって加圧し空気が混入されるタイミングを合わせている。そのタイミングは流速の低い領域での立ちあがり勾配の範囲で空気が混入されるように、脈動発生機器に加わる電圧波形と、エアポンプを同期して制御している。これによって、大きい水塊のタイミングで空気が混入すると、水塊は分散されて、広範囲に広がる。つまり、空気によって見かけの断面積が増大し、結果、量感が大きくなる。一方、流速の高い領域では、空気は混入されないため、速い流速が分散されることなく吐水され、強さを維持したまま人体に着水する。これによっても、より量感の高い状態で、強さと量感を両立することができる。なお、空気混入部をノズル先端に持ってきているため、空気を効率よく混入させることが可能であると同時に、流速の速い領域では、必要以上に空気が混入しないため、空気のダンパー効果によって強さが減衰するということを防ぐことができる。なお、空気混入部は、ノズル先端に限ったものではなく、ノズル手前の配管で合流させてもよい。また、空気混入部は、必ずしも強制混入である必要はなく、自然吸入を用いても良い。この場合は、洗浄水内に気泡として混入することになり、それによって、水塊の体積を増大させることが可能となり、結果量感をより高めた状態で、強さと量感を両立することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管と、
前記給水管に接続された圧力変動部と、
前記圧力変動部を制御する制御部と、
前記圧力変動部の下流側に設けられた人体へ洗浄水を吐水するための吐水孔と、
を備える人体洗浄装置であって、
前記制御部は、前記圧力変動部に圧力の脈動推移を発生させ、前記脈動推移により前記吐水孔から速度の異なる部位を有した脈動流が繰り返し現れるように吐水を制御し、吐水後に前記速度の異なる部位が合体し、異なる大きさの水塊を連続して形成させることを特徴とする人体洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記大きさの異なる水塊が不感帯周期内に少なくとも1回ずつ生成されるように圧力変動部を制御することを特徴とする請求項1に記載の人体洗浄装置。
【請求項3】
前記制御部は、形成された前後の水塊で水塊の速度が異なるように前記圧力変動部を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の人体洗浄装置。
【請求項4】
前記圧力変動部は、
前記給水管に接続され、
給水管路の一部をなすシリンダと、
シリンダ内を往復運動し、シリンダ内の洗浄水を下流に圧送する加圧部と、
前記加圧部を駆動する駆動部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の人体洗浄装置。
【請求項5】
前記圧力変動部は、前記給水管に接続され、給水管路の一部をなすシリンダと、ゼンキシリンダ内を往復動し、シリンダ内の洗浄水をシリンダ下流に圧送するプランジャと、前記プランジャを往復動させる電磁ソレノイドを有したことを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の人体洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−222856(P2010−222856A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71826(P2009−71826)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】