人工乳首の作成方法及びその作成キット
【課題】 人工乳首の作成が簡易に行えるようにした人工乳首の作成方法及び作成キットを提供することにある。
【解決手段】 人工乳首1の作成方法であって、乳首転写用の第一樹脂53を、半硬化状態で成形容器体内に準備する工程と、第一樹脂53を乳首部に押し付けて凹状に転写して雌型部分800を形成する工程と、乳首近似色に着色した第二樹脂54を凹状に転写された雌型部分800に注入等をする工程と、第二樹脂54が硬化した後、硬化した第二樹脂54を人工乳首1として凹状の雌型部分800から剥離する工程と、を含むことを特徴とする。
【解決手段】 人工乳首1の作成方法であって、乳首転写用の第一樹脂53を、半硬化状態で成形容器体内に準備する工程と、第一樹脂53を乳首部に押し付けて凹状に転写して雌型部分800を形成する工程と、乳首近似色に着色した第二樹脂54を凹状に転写された雌型部分800に注入等をする工程と、第二樹脂54が硬化した後、硬化した第二樹脂54を人工乳首1として凹状の雌型部分800から剥離する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳首喪失時のための人工乳首の作成方法及びその作成キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳がん等において乳房を切除した場合、残る片方の乳房との外観的並びに重量的な左右のバランスなどを補うために外科的な乳房再建が行われている。
【0003】
この乳房再建は、外科手術によって自家組織を移植したり、人工補綴物(インプラント)を乳房欠損個所に埋め込むようにしている。さらに、この乳房再建部位には、乳首(乳輪を含む)を補うために、一例として別体で形成した人工乳首が使用されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10―502007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような人工乳首を製作するには、専門業者に頼まざるを得ないのが現状であって、個人として簡単にその作成が行えるものの提案が望まれている。
【0006】
本発明の課題は、人工乳首の作成が簡易に行えるようにした人工乳首の作成方法及びその作成キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の人工乳首の作成方法は、現存する乳首とその周辺の輪状部からなる乳首部の形態を軟質樹脂で成形する人工乳首の作成方法であって、印象材の印象主剤に印象硬化剤を混合した乳首転写用の第一樹脂を、半硬化状態で成形容器体内に準備する工程と、その成形容器体の容器開口部から露出した前記第一樹脂の露出面を、前記乳首部に押し付けてその第一樹脂が硬化するまで保持して、その露出面に前記乳首部の外形を凹状に転写して雌型部分を形成する工程と、成形材の軟質樹脂を乳首近似色に着色した成形主剤に成形硬化剤を混合した流動性を有する第二樹脂を、前記雌型部分に注入又は積層する工程と、その第二樹脂が硬化した後、その硬化した第二樹脂を人工乳首として前記雌型部分から離型する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記構成とすることにより、成形容器体内での第一樹脂は、自由な流動が制限された半硬化状態(重力によりある程度、流動変形する又は力が加わらないと実質上流動変形しない場合のいずれも含む)で、その取扱いが容易で転写作業がしやすい。
【0009】
また、本発明の人工乳房の作成キットは、現存する乳首とその周辺の輪状部からなる乳首部の形態を軟質樹脂で成形する人工乳首の作成キットであって、印象材における印象主剤を収容する第一容器と、前記印象主剤と混合して使用する印象硬化剤を収容する第二容器と、成形材における成形主剤を収容する第三容器体と、前記成形主剤と混合して使用する成形硬化剤を収容する第四容器体と、前記印象主剤と前記印象硬化剤とを混合して乳首転写用の第一樹脂を収容するカップ型の成形容器体と、を備えることにより、上記の人工乳首の作成方法のための各種機能品を、例えば一つの箱に収容することによって簡易にまとまった作成キットを提供できる。
なお、第一容器又は第二容器が前記成形容器体に兼用されてもよい。
【0010】
また、人工乳首の作成キットにおいて、第一容器及び第二容器を印象材容器類とし、一方、第三容器体及び第四容器体を成形材容器類とし、該成形材容器類と前記印象材容器類とは外観色を異なるものとすることにより、外観色の違いにより印象材と成形材とを容易に識別でき、印象材と成形材との誤使用が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】着用者の乳房欠損個所の乳房再建部位に貼りつける人工乳首を示す図である。
【図2】人工乳首を作成するための作成キットを示す図である。
【図3】作成キットにおける第一容器の形態を示す図である。
【図4】ポットライフ内での半硬化状態を説明する第一容器の姿勢を示す図である。
【図5】カップ型の第一容器を示す図である。
【図6】人工乳首の作成工程を示す図である。
【図7】図6の人工乳首の作成工程の続きの工程を示す図である。
【図8】人工乳首を乳房再建部位に貼りつける状態を示す図である。
【図9】乳房再建部位に貼りつけられた人工乳首を外す状態を示す図である。
【図10】カップ型の第一容器の他の例であるテーパー状の容器による人工乳首の作成例を示す図である。
【図11】カップ型の第一容器の他の例であるボトル状の容器を示す図である。
【図12】第一容器による雌型部分の他の転写例を示す図である。
【図13】図12の雌型部分による人工乳首の作成例を示す図である。
【図14】第一容器による雌型部分の他の転写例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1は着用者の乳房欠損個所100の乳房再建部位200に貼りつける人工乳首1を示す図である。また、図2は人工乳首1を成形するための作成キット2の全体を示す図である。
【0013】
図1において、乳がん等において乳房を切除した後の胸部における乳房欠損個所100を補うための乳房再建は、外科手術によって自家組織を移植したり、例えばシリコーンゴムからなる人工補綴物(インプラント)を乳房欠損個所100に埋め込むようにして乳房再建部位200とする。このような乳房再建部位200には、一般に乳首がないため、そこに貼り付けられるように、乳首部1a、輪状部(乳輪部)1bを含む人工乳首1を作成する。
【0014】
このための人工乳首1の作成キット2は、図2に示すように、上方開口側に開閉可能に設けられる開閉蓋3aを有する方形箱状等の箱(収納箱)3内に、軟質樹脂であって型取り用の印象材を収容する印象材容器類4と、軟質樹脂である成形材を収容する成形材容器類5と、型取り時に使用する離型剤300を収容する補助材容器6と、スプーンなどの攪拌混合棒7などを収納している。
【0015】
印象材に使用する軟質樹脂は、室温加硫型のシリコーンゴム、いわゆる主剤(ベースポリマー)と硬化剤(キャタリスト)との混合による2液付加反応型RTVシリコーンゴムを使用している。この2液付加反応型RTVシリコーンゴムの印象主剤51と印象硬化剤52のために、印象材容器類4として、第一容器14及び第二容器24がそれぞれ別体形成されており、この第一容器14に印象主剤51が、第二容器24に印象硬化剤52がそれぞれ収められている。
【0016】
印象材容器類4としての第一容器14には、型取り使用前にその中に印象主剤51が収容されるが、型取り時には第一容器14内の印象主剤51に対して第二容器24の印象硬化剤52を所定割合で配合して混合させて得られる第一樹脂53(図4)を準備するカップ型の成形容器体として使用される。なお、第二容器24を成形容器体としてもよく、要するに第一容器14若しくは第二容器24の何れか一方が成形容器体とされる。
ただし、第一容器14又は第二容器24とは別の成形容器体を用意して、これに第一樹脂53を収容してもよい。
【0017】
第一容器14の形態を詳細に説明する。図3に示すように、第一容器14(成形容器体)における容器開口部14aの口径140(言い換えれば開口面積)は、第一容器14の中に準備収容される第一樹脂53の露出面53a(図4)に、図1に示す現存する乳首401とその周辺の輪状部(乳輪部)402からなる乳首部の形態を転写することができる範囲に設定される。例えば現存する乳首部(乳首401及び輪状部402)の外縁とほぼ一致する口径(開口面積)140を有する第一容器14を使用することができる(この場合は現存する乳首部を転写した結果生じる凹部(雌型部分)800の開口縁まで満たすように第二樹脂54が充填される)。あるいは現存する乳首部の外縁より大きな口径(開口面積)140を有する第一容器14を用いることができ、その場合、現存する乳首部を転写した結果、生じる凹部(雌型部分)800の開口縁まで至らないレベルまで第二樹脂54を充填して、現存する乳首部とほぼ同一サイズの人工乳首1を成形することもできるが、その凹部(雌型部分)800の開口縁まで満たすように第二樹脂54を充填すれば、現存する乳首部より大きな外形を有する人工乳首1を作成することができる。
【0018】
このような成形容器体としての第一容器14を使用して、乳首401及び輪状部402からなる乳首部を第一樹脂53に転写可能としている。
【0019】
そして、この転写時での第一樹脂53は、印象主剤51と印象硬化剤52との混合の開始時から、混合物である第一樹脂53がある程度の粘度と流動性を有する状態にあるポットライフ(可使時間)内で使用されている。
【0020】
このポットライフ内においては、図4に示すように、第一容器14の容器開口部14aを、該第一容器14が鉛直方向にそった姿勢から、例えば斜め上方、水平、斜め下方へ姿勢を変更しても、第一容器14内から第一樹脂53がある程度の粘度を有するために流れ出にくく、かつ、第一樹脂53に現存する乳首401とその周辺の輪状部402からなる乳首部を押し当てた状態で、第一樹脂53が、乳首401及び輪状部402からなる乳首部に押されて流動変形し、乳首401及び輪状部402の外形を凹状に転写することができる。この状態が第一樹脂53の半硬化状態の典型例である。
【0021】
また、第一容器14は、例えばポリエチレン、アクリル、ポリスチレン、ポリプロピレン、PET樹脂(透明質)などで成形されたものである。
【0022】
図2に戻って、成形材に使用する軟質樹脂として、2液付加反応型RTVシリコーンゴムを使用している。この2液付加反応型RTVシリコーンゴムの成形主剤61と成形硬化剤62とを収容するために、成形材容器類5として、第三容器35、35a及び第四容器45、45aがそれぞれ別体に形成されており、それら第三容器35、35aに成形主剤61、第四容器45、45aに成形硬化剤62が収められている。
【0023】
第三容器35、35a内のそれぞれの成形主剤61は、予め異なる色の乳首近似色にそれぞれ着色されている。この着色には、一般的な着色剤(付加型液状シリコーンゴム用)としての顔料が使用される。第三容器35、35a(及び硬化のための第四容器45、45a)として異なる乳首近似色のものが用意されているのは、年令や個人差等による残存する乳首部の色の違いを考慮して、できるだけそれに近い色に人工乳首の色を合わせるためである。
【0024】
また、第一容器14、第二容器24、第三容器35、35a、第四容器45、45aの基本形態としては、図5に示すように、有底筒状に形成されるカップ体8の上方開口側の雄ネジ部81に、キャップ体8aの雌ネジ部82がねじ込み式に装着されるカップ型である。
【0025】
また、印象材に使用する軟質樹脂と、成形材に使用する軟質樹脂との誤使用を防止するために、印象材容器類4としての第一容器14及び第二容器24との外観色を同色にし、一方、成形材容器類5としての第三容器35、35a及び第四容器45、45aとの外観色を同色にし、さらに、印象材容器類4と成形材容器類5とは外観色を異なる色として識別可能としている。
【0026】
本例では、箱3の開閉蓋3aを開けた際に直ちに認識できるように各容器におけるキャップ体8aの色を色分けしている。
【0027】
人工乳首1を作成するための印象剤及び成形材の軟質樹脂である合成樹脂としてのシリコーンゴムの例として、「米国、ファクター2社製:VST−30、VST−50、VST−50F、VST−50HD、A−2000」、また、「東レ・ダウコーニング社製:SH9555RTV、9556RTV、MDX4−4210」、また、「モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製:TSE3453、TSE3456T、TSE3475T、TSE3431、YE5626」、また、「信越化学工業社製:KE−1308、KE−1300T、KE−1310ST、KE−1314−2、KE−1316、KE−1310ST、KE−1600、KE−1603(A/B)、KE−1606、SIM―260、SIM―240」、また、「旭化成ワッカーシリコーン社製:DENTAL ADS931 A/B、M4600A/B、M4641A/B、M4644A/B、M4645A/B、P7613A/B、P7664A/B」などを挙げることができる。室温(常温とも言われ、その温度は日本工業規格(JISZ8703)では20℃±15℃とされている)でゴム状に硬化することにより人工乳首1が得られる。
【0028】
また、顔料の例として、「米国、ファクター2社製:FE−235、FE−202、FE−200、FE−228」、「信越化学工業社製:K−COLOR−R20、K−COLOR−W10、K−COLOR−BL70、K−COLOR−Y40」、または、「モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製:ME50−M、ME50−R2、ME50−W、ME50−Y」などを挙げることができる。
【0029】
人工乳首1は次のように製作される。図6に示すように、第一容器14内の印象主剤51に第二容器24の印象硬化剤52を、所定配合で充填し(印象材の充填工程、図6(b))、しかる後、混合攪拌棒7を用いて手動混合して第一容器14内にて第一樹脂53を準備する(印象材の準備工程、図6(c))。この例の第一容器は円筒状に形成される。
【0030】
この準備工程において、混合を始めてから所定時間経って、ポットライフ内で半硬化状態とされる第一樹脂53が、その成形容器体の開口部(容器開口部14a)から露出した状態で、その露出面53aを、現存する乳首401及び輪状部402からなる乳首部に押し付けてポットライフが過ぎるまで保持して第一樹脂53を硬化させることにより、その露出面53aに乳首401と輪状部402からなる乳首部の外形を凹状に転写する工程を行って雌型部分800を形成する(乳首部の転写工程、図6(d)、(e))。なお、第一容器14内の第一樹脂53はポットライフ内である程度の粘度を保持するが流動性を失っていないため、第一容器14を垂直(鉛直)状態から例えば斜め下方へ傾けると第一樹脂53が乳首部の周辺の肌面に沿って広がるように流動し、この際、容器開口部14aが乳首部の表面に押し付けられることにより、第一樹脂53が第一容器14から漏れ出ることがない。
【0031】
次に、図7に示すように、雌型部分800が形成された成形容器体(第一容器14)を乳首部から離脱させ(図7(a))、この成形容器体(第一容器14)内の第一樹脂53の雌型部分800に第二樹脂54を、注入又は積層(肉盛り)する工程を行う。この第二樹脂54は、乳首近似色に着色された第三容器35内の成形主剤61に、第四容器45内の成形硬化剤62を混合し、しかる後、混合攪拌棒7を用いて手動混合して調整される。これによって成形容器体内に第二樹脂54を準備する(成形材の準備工程、図7(b))。
【0032】
その調整された第二樹脂54を凹状に転写された雌型部分800に注入等する。(成形材の注入工程、図7(c))。この注入状態は、第一容器14を縦軸周りに回し動かすようにして、第二樹脂54を周縁部に拡散することにより、薄い外縁部を作るとともに中央部が凹状に湾曲した裏面を備える人工乳首1とする。その後、かかる第二樹脂54が硬化した後に硬化物として取り出すことによって、乳首部1a、輪状部(乳輪部)1bを含む人工乳首1が製作される(成形品の取り出し工程、図7(d))。
【0033】
その後は、図8に示すように、裏面に粘着剤900が塗布された人口乳首1を乳房再建部位200に貼り付ける。また、図9に示すように、剥離剤901を用いて人工乳首1を乳房再建部位200から離脱することが可能となる。なお、粘着剤としては、「東レ・ダウコーニング社製:MD7−4502 SILICONE ADHESIVE、MD7−4602 SILICONE ADHESIVE」、「ホリスター社製:Medical Adhesive Spray」、「ADM Tronics社製:PROS―AIDE」、「Daro社製:Adhesive」などが挙げられる。また、剥離剤としては、「スミス・アンド・ネフュー社製:リムーブ」、「アルケア社製:プロケアリムーバー」、「住友スリーエム社製:皮膚用リムーバー」などが挙げられる。
【0034】
(実施例)
人工乳首1の作成キット2の例としては、第一容器14に、着色のために選択された上述の顔料を予め配合した印象主剤51としてのシリコーンゴム(旭化成ワッカーシリコーン社製:DENTAL ADS931 A剤)を、第二容器24に、印象硬化剤52としてシリコーンゴム(旭化成ワッカーシリコーン社製:DENTAL ADS931 B剤)を、第三容器35、35aに、成形主剤61としてのシリコーンゴム(米国、ファクター2社製:VST−30 主剤)を、第四容器45、45aに、成形硬化剤62としてシリコーンゴム(米国、ファクター2社製:VST−30 硬化剤)を、補助材容器6に離型材300としてのワセリンなどを、所定量充填した状態で、それぞれを箱3内に収納して作成キット2(図2)として準備した。
【0035】
この人工乳首1の作成キット2を使用した例としては、成形容器体としての第一容器14内に、印象主剤51としてのシリコーンゴム(旭化成ワッカーシリコーン社製:DENTAL ADS931 A剤)100重量%に対して、印象硬化剤52としてのシリコーンゴム(旭化成ワッカーシリコーン社製:DENTAL ADS931 B剤)を10〜100重量%として、充填混合して第一樹脂53を調整した。
【0036】
そして、第一容器14内の第一樹脂53に、補助材容器6の離型剤300としてのワセリンを塗った乳首401と輪状部402の外形を凹状に転写して雌型部分800を形成した。
【0037】
つぎに、成形主剤61としてのシリコーンゴム(米国、ファクター2社製:VST−30 主剤)100重量%に対して、成形硬化剤62としてのシリコーンゴム(米国、ファクター2社製:VST−30 硬化剤)を10重量%として、充填混合して第二樹脂54を調整した。
【0038】
その後、雌型部分800にワセリンを塗った後に、第二樹脂54を雌型部分800に注入又は積層(肉盛り)した。そして第二樹脂54の硬化後に硬化物として取り出すことにより人工乳首1を製作した。
【0039】
なお、成形容器体として第一容器14は、円筒状に限定されず、図10(a)に示すようにテーパー筒状に形成されるもの(図示しない蓋で密閉される)でもよい。なお、図10(b)は、このテーパー筒状の第一容器14を使用し、その雌型部分800に成形材を注入した後の人工乳首1の作成状態を示している。この図に示すように、人工乳首1の裏面が凹曲面でなく、平坦面とされてもよく、図8の粘着剤によりその平坦面が乳首再建部位に沿うように変形しつつ接着される。また、カップ型の第一容器14、第二容器24、第三容器35、35a及び第四容器45、45aに代えて、図11に示すように、有底筒状の胴部9a上端から肩部9bを介して雄ネジ筒部91となる口部9cを有するボトル体9と、雌ネジ部92を有するキャップ体9dとから構成される、ボトル体9の口部9cにキャップ体9dがねじ込み式で装着されるボトル型としてもよい。
【0040】
このボトル型の容器形態では、印象主剤51と印象硬化剤52とを混合するための容器としては、乳首401及び輪状部402の外形を凹状に転写可能とする第一樹脂53を準備するために別途、カップ体8と同形状のものを成形容器体として用意するとよい。
【0041】
なお、図12に示すように、乳首401及び輪状部402から構成される乳首部1の外縁より大きな口径を有する第一容器14を乳首部に押し付ける場合、乳首部とその周辺を含む形状が第一樹脂53に転写される。その転写された凹部850に第二樹脂54を注入等することで、乳首部の輪状部より一回り大きな人工乳首1を作成することもできる。
【0042】
更には、図13に示すように、その凹部850の全部を満たすのではなく、周辺部を除く部分に第二樹脂54を注入等することにより、現存する乳首部と同様なサイズの人工乳首1とすることもできる。
【0043】
この際、第二樹脂54を凹部850に注入等した後、第一容器14を縦軸周りに回し動かすようにして、第二樹脂54を周縁部に拡散することにより、薄い外縁部を作るとともに中央部が凹状に湾曲した裏面を備える人工乳首1とすることもできる。
【0044】
更に、図14に示すように、ある程度粘度の高い状態の第一樹脂53(流動性がほとんどない)を乳首部に押し付けて、第一容器14の容器開口部14aの内周側を除く部分に転写凹部851が形成されるようにし、ここに第二樹脂54を注入等して、人口乳首1を作成することも可能である。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、現存する乳首部は着用者自身や他人のものであってもよい。また、各々の実施の形態は、本発明の説明のために一つ実施形態の部分として述べられている構成を、別の実施の形態において利用し、更にこれらを組み合わせて別の実施の形態とすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 人工乳首
2 作成キット
14 第一容器
24 第二容器
35、35a 第三容器
45、45a 第四容器
51 印象主剤
52 印象硬化剤
53 第一樹脂
54 第二樹脂
61 成形主剤
62 成形硬化剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳首喪失時のための人工乳首の作成方法及びその作成キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳がん等において乳房を切除した場合、残る片方の乳房との外観的並びに重量的な左右のバランスなどを補うために外科的な乳房再建が行われている。
【0003】
この乳房再建は、外科手術によって自家組織を移植したり、人工補綴物(インプラント)を乳房欠損個所に埋め込むようにしている。さらに、この乳房再建部位には、乳首(乳輪を含む)を補うために、一例として別体で形成した人工乳首が使用されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10―502007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような人工乳首を製作するには、専門業者に頼まざるを得ないのが現状であって、個人として簡単にその作成が行えるものの提案が望まれている。
【0006】
本発明の課題は、人工乳首の作成が簡易に行えるようにした人工乳首の作成方法及びその作成キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の人工乳首の作成方法は、現存する乳首とその周辺の輪状部からなる乳首部の形態を軟質樹脂で成形する人工乳首の作成方法であって、印象材の印象主剤に印象硬化剤を混合した乳首転写用の第一樹脂を、半硬化状態で成形容器体内に準備する工程と、その成形容器体の容器開口部から露出した前記第一樹脂の露出面を、前記乳首部に押し付けてその第一樹脂が硬化するまで保持して、その露出面に前記乳首部の外形を凹状に転写して雌型部分を形成する工程と、成形材の軟質樹脂を乳首近似色に着色した成形主剤に成形硬化剤を混合した流動性を有する第二樹脂を、前記雌型部分に注入又は積層する工程と、その第二樹脂が硬化した後、その硬化した第二樹脂を人工乳首として前記雌型部分から離型する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記構成とすることにより、成形容器体内での第一樹脂は、自由な流動が制限された半硬化状態(重力によりある程度、流動変形する又は力が加わらないと実質上流動変形しない場合のいずれも含む)で、その取扱いが容易で転写作業がしやすい。
【0009】
また、本発明の人工乳房の作成キットは、現存する乳首とその周辺の輪状部からなる乳首部の形態を軟質樹脂で成形する人工乳首の作成キットであって、印象材における印象主剤を収容する第一容器と、前記印象主剤と混合して使用する印象硬化剤を収容する第二容器と、成形材における成形主剤を収容する第三容器体と、前記成形主剤と混合して使用する成形硬化剤を収容する第四容器体と、前記印象主剤と前記印象硬化剤とを混合して乳首転写用の第一樹脂を収容するカップ型の成形容器体と、を備えることにより、上記の人工乳首の作成方法のための各種機能品を、例えば一つの箱に収容することによって簡易にまとまった作成キットを提供できる。
なお、第一容器又は第二容器が前記成形容器体に兼用されてもよい。
【0010】
また、人工乳首の作成キットにおいて、第一容器及び第二容器を印象材容器類とし、一方、第三容器体及び第四容器体を成形材容器類とし、該成形材容器類と前記印象材容器類とは外観色を異なるものとすることにより、外観色の違いにより印象材と成形材とを容易に識別でき、印象材と成形材との誤使用が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】着用者の乳房欠損個所の乳房再建部位に貼りつける人工乳首を示す図である。
【図2】人工乳首を作成するための作成キットを示す図である。
【図3】作成キットにおける第一容器の形態を示す図である。
【図4】ポットライフ内での半硬化状態を説明する第一容器の姿勢を示す図である。
【図5】カップ型の第一容器を示す図である。
【図6】人工乳首の作成工程を示す図である。
【図7】図6の人工乳首の作成工程の続きの工程を示す図である。
【図8】人工乳首を乳房再建部位に貼りつける状態を示す図である。
【図9】乳房再建部位に貼りつけられた人工乳首を外す状態を示す図である。
【図10】カップ型の第一容器の他の例であるテーパー状の容器による人工乳首の作成例を示す図である。
【図11】カップ型の第一容器の他の例であるボトル状の容器を示す図である。
【図12】第一容器による雌型部分の他の転写例を示す図である。
【図13】図12の雌型部分による人工乳首の作成例を示す図である。
【図14】第一容器による雌型部分の他の転写例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1は着用者の乳房欠損個所100の乳房再建部位200に貼りつける人工乳首1を示す図である。また、図2は人工乳首1を成形するための作成キット2の全体を示す図である。
【0013】
図1において、乳がん等において乳房を切除した後の胸部における乳房欠損個所100を補うための乳房再建は、外科手術によって自家組織を移植したり、例えばシリコーンゴムからなる人工補綴物(インプラント)を乳房欠損個所100に埋め込むようにして乳房再建部位200とする。このような乳房再建部位200には、一般に乳首がないため、そこに貼り付けられるように、乳首部1a、輪状部(乳輪部)1bを含む人工乳首1を作成する。
【0014】
このための人工乳首1の作成キット2は、図2に示すように、上方開口側に開閉可能に設けられる開閉蓋3aを有する方形箱状等の箱(収納箱)3内に、軟質樹脂であって型取り用の印象材を収容する印象材容器類4と、軟質樹脂である成形材を収容する成形材容器類5と、型取り時に使用する離型剤300を収容する補助材容器6と、スプーンなどの攪拌混合棒7などを収納している。
【0015】
印象材に使用する軟質樹脂は、室温加硫型のシリコーンゴム、いわゆる主剤(ベースポリマー)と硬化剤(キャタリスト)との混合による2液付加反応型RTVシリコーンゴムを使用している。この2液付加反応型RTVシリコーンゴムの印象主剤51と印象硬化剤52のために、印象材容器類4として、第一容器14及び第二容器24がそれぞれ別体形成されており、この第一容器14に印象主剤51が、第二容器24に印象硬化剤52がそれぞれ収められている。
【0016】
印象材容器類4としての第一容器14には、型取り使用前にその中に印象主剤51が収容されるが、型取り時には第一容器14内の印象主剤51に対して第二容器24の印象硬化剤52を所定割合で配合して混合させて得られる第一樹脂53(図4)を準備するカップ型の成形容器体として使用される。なお、第二容器24を成形容器体としてもよく、要するに第一容器14若しくは第二容器24の何れか一方が成形容器体とされる。
ただし、第一容器14又は第二容器24とは別の成形容器体を用意して、これに第一樹脂53を収容してもよい。
【0017】
第一容器14の形態を詳細に説明する。図3に示すように、第一容器14(成形容器体)における容器開口部14aの口径140(言い換えれば開口面積)は、第一容器14の中に準備収容される第一樹脂53の露出面53a(図4)に、図1に示す現存する乳首401とその周辺の輪状部(乳輪部)402からなる乳首部の形態を転写することができる範囲に設定される。例えば現存する乳首部(乳首401及び輪状部402)の外縁とほぼ一致する口径(開口面積)140を有する第一容器14を使用することができる(この場合は現存する乳首部を転写した結果生じる凹部(雌型部分)800の開口縁まで満たすように第二樹脂54が充填される)。あるいは現存する乳首部の外縁より大きな口径(開口面積)140を有する第一容器14を用いることができ、その場合、現存する乳首部を転写した結果、生じる凹部(雌型部分)800の開口縁まで至らないレベルまで第二樹脂54を充填して、現存する乳首部とほぼ同一サイズの人工乳首1を成形することもできるが、その凹部(雌型部分)800の開口縁まで満たすように第二樹脂54を充填すれば、現存する乳首部より大きな外形を有する人工乳首1を作成することができる。
【0018】
このような成形容器体としての第一容器14を使用して、乳首401及び輪状部402からなる乳首部を第一樹脂53に転写可能としている。
【0019】
そして、この転写時での第一樹脂53は、印象主剤51と印象硬化剤52との混合の開始時から、混合物である第一樹脂53がある程度の粘度と流動性を有する状態にあるポットライフ(可使時間)内で使用されている。
【0020】
このポットライフ内においては、図4に示すように、第一容器14の容器開口部14aを、該第一容器14が鉛直方向にそった姿勢から、例えば斜め上方、水平、斜め下方へ姿勢を変更しても、第一容器14内から第一樹脂53がある程度の粘度を有するために流れ出にくく、かつ、第一樹脂53に現存する乳首401とその周辺の輪状部402からなる乳首部を押し当てた状態で、第一樹脂53が、乳首401及び輪状部402からなる乳首部に押されて流動変形し、乳首401及び輪状部402の外形を凹状に転写することができる。この状態が第一樹脂53の半硬化状態の典型例である。
【0021】
また、第一容器14は、例えばポリエチレン、アクリル、ポリスチレン、ポリプロピレン、PET樹脂(透明質)などで成形されたものである。
【0022】
図2に戻って、成形材に使用する軟質樹脂として、2液付加反応型RTVシリコーンゴムを使用している。この2液付加反応型RTVシリコーンゴムの成形主剤61と成形硬化剤62とを収容するために、成形材容器類5として、第三容器35、35a及び第四容器45、45aがそれぞれ別体に形成されており、それら第三容器35、35aに成形主剤61、第四容器45、45aに成形硬化剤62が収められている。
【0023】
第三容器35、35a内のそれぞれの成形主剤61は、予め異なる色の乳首近似色にそれぞれ着色されている。この着色には、一般的な着色剤(付加型液状シリコーンゴム用)としての顔料が使用される。第三容器35、35a(及び硬化のための第四容器45、45a)として異なる乳首近似色のものが用意されているのは、年令や個人差等による残存する乳首部の色の違いを考慮して、できるだけそれに近い色に人工乳首の色を合わせるためである。
【0024】
また、第一容器14、第二容器24、第三容器35、35a、第四容器45、45aの基本形態としては、図5に示すように、有底筒状に形成されるカップ体8の上方開口側の雄ネジ部81に、キャップ体8aの雌ネジ部82がねじ込み式に装着されるカップ型である。
【0025】
また、印象材に使用する軟質樹脂と、成形材に使用する軟質樹脂との誤使用を防止するために、印象材容器類4としての第一容器14及び第二容器24との外観色を同色にし、一方、成形材容器類5としての第三容器35、35a及び第四容器45、45aとの外観色を同色にし、さらに、印象材容器類4と成形材容器類5とは外観色を異なる色として識別可能としている。
【0026】
本例では、箱3の開閉蓋3aを開けた際に直ちに認識できるように各容器におけるキャップ体8aの色を色分けしている。
【0027】
人工乳首1を作成するための印象剤及び成形材の軟質樹脂である合成樹脂としてのシリコーンゴムの例として、「米国、ファクター2社製:VST−30、VST−50、VST−50F、VST−50HD、A−2000」、また、「東レ・ダウコーニング社製:SH9555RTV、9556RTV、MDX4−4210」、また、「モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製:TSE3453、TSE3456T、TSE3475T、TSE3431、YE5626」、また、「信越化学工業社製:KE−1308、KE−1300T、KE−1310ST、KE−1314−2、KE−1316、KE−1310ST、KE−1600、KE−1603(A/B)、KE−1606、SIM―260、SIM―240」、また、「旭化成ワッカーシリコーン社製:DENTAL ADS931 A/B、M4600A/B、M4641A/B、M4644A/B、M4645A/B、P7613A/B、P7664A/B」などを挙げることができる。室温(常温とも言われ、その温度は日本工業規格(JISZ8703)では20℃±15℃とされている)でゴム状に硬化することにより人工乳首1が得られる。
【0028】
また、顔料の例として、「米国、ファクター2社製:FE−235、FE−202、FE−200、FE−228」、「信越化学工業社製:K−COLOR−R20、K−COLOR−W10、K−COLOR−BL70、K−COLOR−Y40」、または、「モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製:ME50−M、ME50−R2、ME50−W、ME50−Y」などを挙げることができる。
【0029】
人工乳首1は次のように製作される。図6に示すように、第一容器14内の印象主剤51に第二容器24の印象硬化剤52を、所定配合で充填し(印象材の充填工程、図6(b))、しかる後、混合攪拌棒7を用いて手動混合して第一容器14内にて第一樹脂53を準備する(印象材の準備工程、図6(c))。この例の第一容器は円筒状に形成される。
【0030】
この準備工程において、混合を始めてから所定時間経って、ポットライフ内で半硬化状態とされる第一樹脂53が、その成形容器体の開口部(容器開口部14a)から露出した状態で、その露出面53aを、現存する乳首401及び輪状部402からなる乳首部に押し付けてポットライフが過ぎるまで保持して第一樹脂53を硬化させることにより、その露出面53aに乳首401と輪状部402からなる乳首部の外形を凹状に転写する工程を行って雌型部分800を形成する(乳首部の転写工程、図6(d)、(e))。なお、第一容器14内の第一樹脂53はポットライフ内である程度の粘度を保持するが流動性を失っていないため、第一容器14を垂直(鉛直)状態から例えば斜め下方へ傾けると第一樹脂53が乳首部の周辺の肌面に沿って広がるように流動し、この際、容器開口部14aが乳首部の表面に押し付けられることにより、第一樹脂53が第一容器14から漏れ出ることがない。
【0031】
次に、図7に示すように、雌型部分800が形成された成形容器体(第一容器14)を乳首部から離脱させ(図7(a))、この成形容器体(第一容器14)内の第一樹脂53の雌型部分800に第二樹脂54を、注入又は積層(肉盛り)する工程を行う。この第二樹脂54は、乳首近似色に着色された第三容器35内の成形主剤61に、第四容器45内の成形硬化剤62を混合し、しかる後、混合攪拌棒7を用いて手動混合して調整される。これによって成形容器体内に第二樹脂54を準備する(成形材の準備工程、図7(b))。
【0032】
その調整された第二樹脂54を凹状に転写された雌型部分800に注入等する。(成形材の注入工程、図7(c))。この注入状態は、第一容器14を縦軸周りに回し動かすようにして、第二樹脂54を周縁部に拡散することにより、薄い外縁部を作るとともに中央部が凹状に湾曲した裏面を備える人工乳首1とする。その後、かかる第二樹脂54が硬化した後に硬化物として取り出すことによって、乳首部1a、輪状部(乳輪部)1bを含む人工乳首1が製作される(成形品の取り出し工程、図7(d))。
【0033】
その後は、図8に示すように、裏面に粘着剤900が塗布された人口乳首1を乳房再建部位200に貼り付ける。また、図9に示すように、剥離剤901を用いて人工乳首1を乳房再建部位200から離脱することが可能となる。なお、粘着剤としては、「東レ・ダウコーニング社製:MD7−4502 SILICONE ADHESIVE、MD7−4602 SILICONE ADHESIVE」、「ホリスター社製:Medical Adhesive Spray」、「ADM Tronics社製:PROS―AIDE」、「Daro社製:Adhesive」などが挙げられる。また、剥離剤としては、「スミス・アンド・ネフュー社製:リムーブ」、「アルケア社製:プロケアリムーバー」、「住友スリーエム社製:皮膚用リムーバー」などが挙げられる。
【0034】
(実施例)
人工乳首1の作成キット2の例としては、第一容器14に、着色のために選択された上述の顔料を予め配合した印象主剤51としてのシリコーンゴム(旭化成ワッカーシリコーン社製:DENTAL ADS931 A剤)を、第二容器24に、印象硬化剤52としてシリコーンゴム(旭化成ワッカーシリコーン社製:DENTAL ADS931 B剤)を、第三容器35、35aに、成形主剤61としてのシリコーンゴム(米国、ファクター2社製:VST−30 主剤)を、第四容器45、45aに、成形硬化剤62としてシリコーンゴム(米国、ファクター2社製:VST−30 硬化剤)を、補助材容器6に離型材300としてのワセリンなどを、所定量充填した状態で、それぞれを箱3内に収納して作成キット2(図2)として準備した。
【0035】
この人工乳首1の作成キット2を使用した例としては、成形容器体としての第一容器14内に、印象主剤51としてのシリコーンゴム(旭化成ワッカーシリコーン社製:DENTAL ADS931 A剤)100重量%に対して、印象硬化剤52としてのシリコーンゴム(旭化成ワッカーシリコーン社製:DENTAL ADS931 B剤)を10〜100重量%として、充填混合して第一樹脂53を調整した。
【0036】
そして、第一容器14内の第一樹脂53に、補助材容器6の離型剤300としてのワセリンを塗った乳首401と輪状部402の外形を凹状に転写して雌型部分800を形成した。
【0037】
つぎに、成形主剤61としてのシリコーンゴム(米国、ファクター2社製:VST−30 主剤)100重量%に対して、成形硬化剤62としてのシリコーンゴム(米国、ファクター2社製:VST−30 硬化剤)を10重量%として、充填混合して第二樹脂54を調整した。
【0038】
その後、雌型部分800にワセリンを塗った後に、第二樹脂54を雌型部分800に注入又は積層(肉盛り)した。そして第二樹脂54の硬化後に硬化物として取り出すことにより人工乳首1を製作した。
【0039】
なお、成形容器体として第一容器14は、円筒状に限定されず、図10(a)に示すようにテーパー筒状に形成されるもの(図示しない蓋で密閉される)でもよい。なお、図10(b)は、このテーパー筒状の第一容器14を使用し、その雌型部分800に成形材を注入した後の人工乳首1の作成状態を示している。この図に示すように、人工乳首1の裏面が凹曲面でなく、平坦面とされてもよく、図8の粘着剤によりその平坦面が乳首再建部位に沿うように変形しつつ接着される。また、カップ型の第一容器14、第二容器24、第三容器35、35a及び第四容器45、45aに代えて、図11に示すように、有底筒状の胴部9a上端から肩部9bを介して雄ネジ筒部91となる口部9cを有するボトル体9と、雌ネジ部92を有するキャップ体9dとから構成される、ボトル体9の口部9cにキャップ体9dがねじ込み式で装着されるボトル型としてもよい。
【0040】
このボトル型の容器形態では、印象主剤51と印象硬化剤52とを混合するための容器としては、乳首401及び輪状部402の外形を凹状に転写可能とする第一樹脂53を準備するために別途、カップ体8と同形状のものを成形容器体として用意するとよい。
【0041】
なお、図12に示すように、乳首401及び輪状部402から構成される乳首部1の外縁より大きな口径を有する第一容器14を乳首部に押し付ける場合、乳首部とその周辺を含む形状が第一樹脂53に転写される。その転写された凹部850に第二樹脂54を注入等することで、乳首部の輪状部より一回り大きな人工乳首1を作成することもできる。
【0042】
更には、図13に示すように、その凹部850の全部を満たすのではなく、周辺部を除く部分に第二樹脂54を注入等することにより、現存する乳首部と同様なサイズの人工乳首1とすることもできる。
【0043】
この際、第二樹脂54を凹部850に注入等した後、第一容器14を縦軸周りに回し動かすようにして、第二樹脂54を周縁部に拡散することにより、薄い外縁部を作るとともに中央部が凹状に湾曲した裏面を備える人工乳首1とすることもできる。
【0044】
更に、図14に示すように、ある程度粘度の高い状態の第一樹脂53(流動性がほとんどない)を乳首部に押し付けて、第一容器14の容器開口部14aの内周側を除く部分に転写凹部851が形成されるようにし、ここに第二樹脂54を注入等して、人口乳首1を作成することも可能である。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、現存する乳首部は着用者自身や他人のものであってもよい。また、各々の実施の形態は、本発明の説明のために一つ実施形態の部分として述べられている構成を、別の実施の形態において利用し、更にこれらを組み合わせて別の実施の形態とすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 人工乳首
2 作成キット
14 第一容器
24 第二容器
35、35a 第三容器
45、45a 第四容器
51 印象主剤
52 印象硬化剤
53 第一樹脂
54 第二樹脂
61 成形主剤
62 成形硬化剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現存する乳首とその周辺の輪状部からなる乳首部の形態を軟質樹脂で成形する人工乳首の作成方法であって、
印象材の印象主剤に印象硬化剤を混合した乳首転写用の第一樹脂を、半硬化状態で成形容器体内に準備する工程と、
その成形容器体の容器開口部から露出した前記第一樹脂の露出面を、前記乳首部に押し付けてその第一樹脂が硬化するまで保持して、その露出面に前記乳首部の外形を凹状に転写して雌型部分を形成する工程と、
成形材の軟質樹脂を乳首近似色に着色した成形主剤に成形硬化剤を混合した流動性を有する第二樹脂を、前記雌型部分に注入又は積層する工程と、
その第二樹脂が硬化した後、その硬化した第二樹脂を人工乳首として前記雌型部分から離型する工程と、
を含むことを特徴とする人工乳首の作成方法。
【請求項2】
現存する乳首とその周辺の輪状部からなる乳首部の形態を軟質樹脂で成形する人工乳首の作成キットであって、
印象材における印象主剤を収容する第一容器と、
前記印象主剤と混合して使用する印象硬化剤を収容する第二容器と、
成形材における成形主剤を収容する第三容器体と
前記成形主剤と混合して使用する成形硬化剤を収容する第四容器体と、
前記印象主剤と前記印象硬化剤とを混合して乳首転写用の第一樹脂を収容するカップ状の成形容器体と、を備えたことを特徴とする人工乳首の作成キット。
【請求項3】
前記第一容器及び第二容器を印象材容器類とし、一方、前記第三容器体及び第四容器体を成形材容器類とし、該成形材容器類と前記印象材容器類とは外観色が異なるものとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の人工乳首の作成キット。
【請求項1】
現存する乳首とその周辺の輪状部からなる乳首部の形態を軟質樹脂で成形する人工乳首の作成方法であって、
印象材の印象主剤に印象硬化剤を混合した乳首転写用の第一樹脂を、半硬化状態で成形容器体内に準備する工程と、
その成形容器体の容器開口部から露出した前記第一樹脂の露出面を、前記乳首部に押し付けてその第一樹脂が硬化するまで保持して、その露出面に前記乳首部の外形を凹状に転写して雌型部分を形成する工程と、
成形材の軟質樹脂を乳首近似色に着色した成形主剤に成形硬化剤を混合した流動性を有する第二樹脂を、前記雌型部分に注入又は積層する工程と、
その第二樹脂が硬化した後、その硬化した第二樹脂を人工乳首として前記雌型部分から離型する工程と、
を含むことを特徴とする人工乳首の作成方法。
【請求項2】
現存する乳首とその周辺の輪状部からなる乳首部の形態を軟質樹脂で成形する人工乳首の作成キットであって、
印象材における印象主剤を収容する第一容器と、
前記印象主剤と混合して使用する印象硬化剤を収容する第二容器と、
成形材における成形主剤を収容する第三容器体と
前記成形主剤と混合して使用する成形硬化剤を収容する第四容器体と、
前記印象主剤と前記印象硬化剤とを混合して乳首転写用の第一樹脂を収容するカップ状の成形容器体と、を備えたことを特徴とする人工乳首の作成キット。
【請求項3】
前記第一容器及び第二容器を印象材容器類とし、一方、前記第三容器体及び第四容器体を成形材容器類とし、該成形材容器類と前記印象材容器類とは外観色が異なるものとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の人工乳首の作成キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−333(P2013−333A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134319(P2011−134319)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(311002045)株式会社池山メディカルジャパン (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(311002045)株式会社池山メディカルジャパン (4)
【Fターム(参考)】
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