説明

人工抗体ポリペプチド

【課題】本発明は、III型フィブロネクチン(Fn3)分子を提供すること。
【解決手段】本発明のFn3は、安定化変異を含む。本発明はまた、Fn3ポリペプチドモノボディ、モノボディをコードする核酸分子、およびモノボディをコードする多様化核酸分子、ならびにこのようなモノボディをコードする多様化核酸ライブラリーを提供する。Fn3ポリペプチドモノボディを調製する方法、およびこの方法を実施するためのキットもまた、提供される。Fn3は、欠失されたかまたは少なくとも1つの他のアミノ酸残基で置換された、少なくとも1つのアスパラギン酸(Asp)残基および/または少なくとも1つのグルタミン酸(Glu)残基を有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一部は、National Institutes of Healthからの助成(助成番号GM55042)を通じた米国政府の補助により行なわれた。従って、米国政府は、本発明において特定の権利を有し得る。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、該して、分子生物学の方法による結合ポリペプチドおよび触媒ポリペプチドの産生および選択の分野に関する。本発明は特に、改変されたIII型フィブロネクチン(Fn3)分子の分子的足場をコードする核酸ライブラリーおよびポリペプチドライブラリーの両方の作製に関する。本発明はまた、「人工ミニ抗体」または「モノボディ」、すなわち、種々の異なる分子構造(例えば、抗体結合部位)に結合し得るループ領域が移植されたFn3足場を含むポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
(抗体構造)
標準的な抗体(Ab)は、2つの同一の免疫グロブリン(Ig)重鎖および2つの同一の軽鎖からなる四量体構造である。Abの重鎖および軽鎖は、異なるドメインからなる。各々の軽鎖は、1つの可変ドメイン(VL)および1つの定常ドメイン(CL)を有するが、各々の重鎖は、1つの可変ドメイン(VH)および3つまたは4つの可変ドメイン(CH)を有する(Alzariら、1988)。約110アミノ酸残基からなる各々のドメインは、互いに対してパックされた2つのβ−シートから形成される特徴的なβ−サンドイッチ構造(免疫グロブリンフォールド)に折り畳まれる。VHドメインおよびVLドメインの各々は、3つの相補性決定領域(CDR1〜3)を有し、これらはこのドメインの1つの末端のβ鎖に連結されたループまたはターンである(図1:A、C)。軽鎖および重鎖の両方の可変領域は、一般的に、抗原の特異性に寄与するが、特異性に対する個々の鎖の寄与は、必ずしも同じではない。抗体分子は、6つの無作為化ループ(CDR)を使用することにより、多くの分子に結合するよう進化する。しかし、抗体の大きさおよび6つのループの複雑さは、最終結果が比較的小さなペプチドリガンドである場合、大きな設計上の障害となる。
【0004】
(抗体構造)
Abの機能的構造は、タンパク質分解および組換え方法により調製され得る。機能的構造として、Fabフラグメント(単一の鎖間ジスルフィド結合により連結された重鎖のVH−CH1ドメインおよび軽鎖のVL−CL1ドメインを含む)およびFvフラグメント(VHドメインおよびVLドメインのみを含む)が挙げられる。いくつかの場合、単一のVHドメインが、大きな親和性を保持する(Wardら、1989)。特定の単量体κ軽鎖が、その同族抗原に特異的に結合することもまた示された(L.Masatら、1994)。分離された軽鎖または重鎖は、しばしば、ある程度の抗原結合活性を保持することが見出された(Wardら、1989)。これらの抗体フラグメントは、それらの大きさ、低可溶性、またはコンフォメーションの低安定性に起因して、NMRスペクトルを用いた構造分析に適さない。
【0005】
別の機能的構造は、単鎖Fv(scFv)である。scFvは、ペプチドリンカーにより共有結合した免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域からなる(S−z Huら、1996)。これらの小さい(M25,000)タンパク質は、一般的に、単一のポリペプチド中の抗原に対する特異性および親和性を保持し、そしてより大きな抗原特異的分子に対する便利なビルディングブロックを提供し得る。いくつかのグループは、種々の腫瘍抗原に対して反応性のscFvを用いた、異種移植された胸腺欠損マウスにおける体内分布研究を報告した。これらの研究において、特異的な腫瘍局在化が観察された。しかし、循環におけるscFvの短い持続性は、腫瘍細胞のscFvへの曝露を制限し、取り込みのレベルを制限する。結果として、動物研究におけるscFvによる腫瘍の取り込みは、一般的に、インタクトな抗体(30〜40%ID/gで腫瘍に局在し得、そして60〜70%ID/gに相当するレベルに達する)と対照的に、わずか1〜5%ID/gであった。
【0006】
「ミニボディ」と呼ばれる小さなタンパク質の足場を、テンプレートとしてIg VHドメインの一部を用いて設計した(Pessiら、1993)。インターロイキン6に対する高い親和性(解離定数(K)約10−7M)を有するミニボディを、VHのCDR1およびCDR2に対応するループを無作為化し、次いでファージディスプレイ法を用いて変異体を選択することにより同定した(Martinら、1994)。これらの実験は、Ab機能の本質が、より小さな系に移行され得ることを実証した。しかし、このミニボディは、VHドメインの限定された可溶性を受け継いだ(Bianchiら、1994)。
【0007】
ラクダ(Camelus dromedarius)は、それらの血清由来のIgG様物質が分析され、それにより十分な抗体特異性および抗体親和性がVHドメイン(3つのCDRループ)のみに由来し得ることが示唆される場合、可変軽鎖ドメインをしばしば欠損していることが報告されている。DaviesおよびRiechmannは、近年、高い親和性(K約10−7M)および高い特異性を有する「ラクダ化」VHドメインが、CDR3のみを無作為化することにより作製され得ることを実証した。可溶性を改善し、非特異的結合を抑制するために、3つの変異をフレームワーク領域に導入した(Davies & Riechmann、1995)。しかし、ラクダ化は、一般的にVHの可溶性および安定性を改善するために用いられ得ることが、明確に示されていない。
【0008】
「ミニボディ」の代替物は、「ダイアボディ(diabody)」である。ダイアボディは、小さな二価および二特異的な抗体フラグメントである(すなわち、それらは、2つの抗原結合部位を有する)。このフラグメントは、同一のポリペプチド鎖(V−V)上の軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重−軽可変ドメイン(V)を含む。ダイアボディは、大きさにおいて、Fabフラグメントと類似する。同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、このドメインを、別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、そして2つの抗原結合部位を作製する。これらの二量体抗体フラグメントまたは「ダイアボディ」は、二価であり、二特異的である(P.Hollingerら、1993)。
【0009】
モノクローナル抗体技術の発展により、複合体化された状態および/または遊離の状態における多くのAbフラグメントの3D構造が、X線結晶学により解読された(Websterら、1994;Wilson & Stanfield、1994)。Ab構造の分析により、6つのCDRのうちの5つが、限定的な数のペプチド骨格コンフォメーションを有し、それによっていわゆる標準構造を用いてCDRの骨格コンフォメーションを推定することを可能にすることが明らかにされた(Lesk & Tramontano、1992;Reesら、1994)。また、この分析により、VHドメインのCDR3(VH−CDR3)は、通常、最も大きな接触表面を有すること、およびそのコンフォメーションは、規定された標準構造に対して多様すぎることが明らかにされた;VH−CDR3はまた、長さにおいても大きなバリエーションを有することが知られている(Wuら、1993)。従って、Ab−抗原界面の標準的領域の構造はなお、実験的に決定される必要がある。
【0010】
遊離状態と複合体化状態の間の結晶構造の比較により、いくつかの型のコンフォメーションの再配列が明らかにされた。それらの再配列として、側鎖の再配列、セグメントの移動、VH−CDR3の大きな再配列、およびVHドメインおよびVLドメインの相対的な位置の変化が挙げられる(Wilson & Stanfield、1993)。遊離状態において、CDR(特に、結合の際に大きなコンフォメーションの変化を起こすCDR)は、可撓性であると考えられる。X線結晶学は、分子の可撓性部分の特徴付けに適さないので、この溶液状態における構造研究は、抗原結合部位のコンフォメーションの動的な描画を提供できなかった。
【0011】
(抗体結合部位の模倣)
CDRペプチドおよび有機CDR模倣物が作製された(Dougallら、1994)。CDRペプチドは、抗体のCDRループのアミノ酸配列に対応する短い(代表的に環状の)ペプチドである。CDRループは、抗体−抗原相互作用に関与する。有機CDR模倣物は、足場(例えば、小さい有機化合物)に取り付けられた、CDRループに対応するペプチドである。
【0012】
CDRペプチドおよび有機CDR模倣物は、ある程度の結合親和性を保持することが示されている(Smyth & von Itzstein、1994)。しかし、予想通り、それらは十分な親和性および特異性を維持するには小さすぎるし可撓性でありすぎる。マウスCDRは、親和性を喪失することなく、ヒトIgフレームワークに移植された(Jonesら、1986;Riechmannら、1988)が、この「ヒト化」は、溶液研究に特有の上述の問題を解決しない。
【0013】
(Abの自然選択プロセスの模倣)
免疫系において、特定のAbが、大ライブラリーから選択および増幅される(親和性成熟)。このプロセスは、コンビナトリアルライブラリー技術を用いてインビトロで再現され得る。バクテリオファージの表面上でのAbフラグメントの好適なディスプレイは、多くのCDR変異体の生成およびスクリーニングを可能にする(McCaffertyら、1990;Barbasら、1991;Winterら、1994)。ますます多くのFabおよびFv(ならびにそれらの誘導体)が、この技術により生成され、構造研究のための豊富な供給源を提供している。コンビナトリアル技術は、Ab模倣物と組み合わされ得る。
【0014】
潜在的にタンパク質足場として機能し得る多くのタンパク質ドメインは、ファージキャプシドタンパク質との融合物として発現されていた(Clackson & Wells、Trends Biotechnol.12:173−184(1994)において総説されている)。実際、これらのタンパク質ドメインのうちのいくつかは、ランダムペプチド配列(ウシ膵臓トリプシンインヒビター(Robertsら、PNAS 89:2429−2433(1992))、ヒト成長ホルモン(Lowmanら、Biochemistry 30:10832−10838(1991);Venturiniら、Protein Peptide Letters 1:70−75(1994))、およびStreptococcusのIgG結合ドメイン(O’Neilら、Techniques in Protein Chemistry V(Crabb,L,.編)517−524頁、Academic Press、San Diego(1994))が挙げられる)を提示するための足場としてすでに使用されている。これらの足場は、単一の無作為化されたループまたは領域を提示する。
【0015】
研究者は、糸状ファージM13における提示用足場として、小さな74アミノ酸のα−アミラーゼインヒビターTendamistatを使用していた(McConnellおよびHoess、1995)。Tendamistatは、Streptomyces tendae由来のβ−シートタンパク質である。このタンパク質は、このタンパク質をペプチドのための魅力的な足場にする多くの特徴(その小さな大きさ、安定性、および高分解能NMRおよびX線構造データの利用可能性が挙げられる)を有する。Tendamistatの全体的なトポロジーは、免疫グロブリンドメインのトポロジーと類似し、一連のループにより2つのβ−シートが接続されている。免疫グロブリンドメインと対照的に、Tendamistatのβ−シートは、1つのジスルフィド結合ではなく2つのジスルフィド結合により一つに保持されており、これがこのタンパク質の大きな安定性の要因となっている。免疫グロブリンにおいて見出されるCDRループとの相似性により、このループとTendamistatは、類似の機能を発揮し得、そしてインビトロでの変異誘発により容易に無作為化され得る。
【0016】
しかし、Tendamistatは、Streptomyces tendaeから獲得される。従って、Tendamistatは、ヒトにおいて抗原性であり得るが、その小さい大きさは、その抗原性を減少または阻害し得る。また、Tendamistatの安定性は、不確定である。さらに、Tendamistatに関して報告されているその安定性は、2つのジスルフィド結合の存在に起因する。しかし、ジスルフィド結合は、還元性条件下で分解され得、そして有用なタンパク質構造を有するために適切に形成されなければならない点で、このような分子に対する大きな短所である。さらに、Tendamistat中のループの大きさは比較的小さく、従って、足場に含まれ得る挿入の大きさを制限する。さらに、新規に合成されるタンパク質において正確なジスルフィド結合を形成することは簡単ではないことが、周知である。タンパク質が、タンパク質の過剰発現についての最も一般的な宿主細菌であるE.coliの細胞質空間で発現される場合、通常、ジスルフィド結合は形成されず、大量の操作された分子を調製することを潜在的に困難にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、種々の治療適用、診断適用、および触媒適用のための小さな単鎖の人工抗体に対する必要性が存在し続けている。特に、中性pHにおいて構造的に安定な人工抗体に対する必要性が存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要旨)
本発明は、安定な変異を含む、III型フィブロネクチン(Fn3)分子を提供する。安定な変異は、この変更を含まない同一な分子と比較して、融点が0.1℃より大きく上昇したFn3分子のアミノ酸配列における改変または変更(例えば、1つのアミノ酸の、別のアミノ酸への置換)として、本明細書で規定される。あるいは、この変更は、0.5℃より大きくまたは1.0℃より大きくさえも融点を上昇させ得る。Fn3分子の融点を決定するための方法を、以下の実施例19に与える。
【0019】
Fn3は、欠失されたかまたは少なくとも1つの他のアミノ酸残基で置換された、少なくとも1つのアスパラギン酸(Asp)残基および/または少なくとも1つのグルタミン酸(Glu)残基を有し得る。例えば、Asp7および/もしくはAsp23ならびに/またはGlu9は、欠失され得るかまたは少なくとも1つの他のアミノ酸残基と置換され得る。Asp7、Asp23、またはGlu9は、アスパラギン(Asn)残基またはリジン(Lys)残基と置換され得る。本発明はさらに、単離された核酸分子および安定な変異を含むFn3分子をコードする発現ベクターを提供する。
【0020】
本発明は、複数のループ領域配列に連結された複数のIII型フィブロネクチン(Fn3)β−鎖配列を含むFn3ポリペプチドモノボディを提供する。ここで、このFn3は安定な変異を含む。Fn3ポリペプチドの1つ以上のモノボディループ領域配列は、野生型Fn3における対応するループ領域配列由来の少なくとも2つのアミノ酸の欠失、挿入、または置換により変化する。このモノボディのβ−鎖ドメインは、野生型Fn3のβ−鎖ドメイン配列の対応するアミノ酸配列に対して少なくとも約50%の総アミノ酸配列の相同性を有する。好ましくは、このモノボディの1つ以上のループ領域は、以下のアミノ酸残基を含む:
i)ABループに含まれる15〜16;
ii)BCループに含まれる22〜30;
iii)CDループに含まれる39〜45;
iv)DEループに含まれる51〜55;
v)EFループに含まれる60〜66;および
vi)FGループに含まれる76〜87。
【0021】
本発明はまた、安定な変異を含むFn3ポリペプチドモノボディをコードする核酸分子、ならびにこの核酸分子を含む発現ベクターおよびこのベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0022】
本発明はさらに、安定な変異を含むFn3ポリペプチドモノボディを調製する方法を提供する。この方法は、複数のループ領域配列に連結された複数のFn3β−鎖ドメイン配列をコードするDNA配列を提供する工程(ここで、この配列の1つのループ領域は、固有の制限酵素部位を含む)を包含する。このDNA配列は、その固有の制限部位で切断される。次いで、前選択されたDNAセグメントが、この制限部位に挿入される。前選択されたDNAセグメントは、特異的な結合パートナー(SBP)または遷移状態相似化合物(TSAC)に結合し得るペプチドをコードする。前選択されたDNAセグメントのこのDNA配列への挿入は、挿入物を有するポリペプチドモノボディをコードするDNA分子を生成する。次いで、このDNA分子は、このポリペプチドモノボディを生成するように発現される。
【0023】
安定な変異を含むFn3ポリペプチドモノボディを調製する方法であって、複数のループ領域配列に連結された複数のFn3β−鎖ドメイン配列をコードする複製可能なDNA配列を提供する工程を包含する方法(ここで、少なくとも1つのループ領域のヌクレオチド配列が既知である)もまた、提供される。この既知のループ配列に十分に相補的であり、その結果、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)条件下でハイブリダイズ可能なPCRプライマーが、提供または調製される。ここで、このプライマーの少なくとも1つが、DNA配列に挿入される改変された核酸配列を含む。PCRは、複製可能なDNA配列およびこのプライマーを用いて実施される。次いで、PCRの反応産物が発現されて、ポリペプチドモノボディが生成される。
【0024】
本発明は、安定化変異を含むFn3ポリペプチドモノボディを調製するさらなる方法を提供する。この方法は、複数のループ領域配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメイン配列をコードする複製可能なDNA配列を提供する工程を包含し、ここで、少なくとも1つのループ領域のヌクレオチド配列が既知である。挿入変異を作製するように少なくとも1つのループ領域の部位指向型変異誘発を実行する。このようにして、挿入変異を含む生じるDNAが発現される。
【0025】
複数のループ領域配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメイン配列をコードする複数の核酸種を含む、Fn3ポリペプチドモノボディをコードする多様化核酸ライブラリーが、さらに提供され、ここで、1つの以上のモノボディループ領域配列は、野生型Fn3中の対応するループ領域由来の少なくとも2つのアミノ酸の欠失、挿入または置換によって変化し、ここで、モノボディのβ鎖ドメインは、野生型Fn3のβ鎖ドメイン配列の対応するアミノ酸配列に、総アミノ酸配列の少なくとも50%が相同性であり、ここで、Fn3は、安定化変異を含む。本発明はまた、本発明の多様化核酸ライブラリーから誘導されるペプチドディスプレイライブラリーを提供する。好ましくは、ペプチドディスプレイライブラリーのペプチドは、バクテリオファージ(例えば、M13バクテリオファージまたはfdバクテリオファージ)またはウイルスの表面に提示される。
【0026】
本発明はまた、特異的結合パートナー(SBP)と結合して、ポリペプチド:SBP複合体を形成し得るポリペプチド分子のアミノ酸配列を同定する方法を提供し、ここで、ポリペプチド:SBP複合体の解離定数は、10−6モル/リットル未満である。この方法は、以下の工程を包含する:
a)本発明のペプチドディスプレイライブラリーを提供する工程;
b)工程(a)のペプチドディスプレイライブラリーを、固定化SBPまたは分離可能なSBPと接触させる工程;
c)ペプチド:SBP複合体を、遊離ペプチドから分離する工程;
d)工程(c)の分離されたペプチドの複製を引き起こして、より低い多様性を有し、かつ該SBPを結合し得る提示されたペプチドが豊富であることによって、工程(a)のペプチドディスプレイライブラリーと区別される、新規のペプチドディスプレイライブラリーを生じる工程;
e)工程(d)の新規ライブラリーを用いて、必要に応じて、工程(b)、(c)および(d)を反復する工程;ならびに
f)工程(d)由来の種の提示されたペプチドをコードする領域の核酸配列を決定し、それによってSBPに結合し得るペプチド配列を推測する工程。
【0027】
本発明はまた、各々が複数のループ領域を含む複数の核酸種を有する、Fn3ポリペプチドモノボディをコードする多様化核酸ライブラリーを調製する方法を提供し、ここで、種は、複数のループ領域の配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメインの配列をコードし、1つ以上のループ領域配列は、野生型Fn3中の対応するループ領域配列由来の少なくとも2つのアミノ酸の欠失、挿入または置換によって変化し、モノボディのβ鎖ドメイン配列は、野生型Fn3のβ鎖ドメイン配列の対応するアミノ酸配列に、総アミノ酸配列の少なくとも50%が相同性であり、ここで、Fn3は、安定化変異を含む。この方法は、以下の工程を包含する:
a)予め決定された配列を有するFn3ポリペプチドモノボディを調製する工程;
b)ポリペプチドを特異的結合パートナー(SBP)と接触させて、ポリペプチド:SBP複合体を形成させる工程であって、ポリペプチド:SBP複合体の解離定数が10−6モル/リットル未満である、工程;
c)核磁気共鳴分光法またはX線結晶学によって、ポリペプチド:SBP複合体の結合構造を決定する工程;ならびに
d)多様化核酸ライブラリーを調製する工程であって、この多様化は、工程(c)で提供される情報から、SBPに対する結合が改善された1以上のポリペプチドを生じる核酸配列中の位置で実施される、工程。
【0028】
cat/kuncatの比が10より大きくなるような触媒速度定数(kcat)および未触媒速度定数(kuncat)で、化学反応を触媒し得るポリペプチド分子のアミノ酸配列を同定する方法もまた、提供する。この方法は、以下の工程を包含する:
a)本発明のペプチドディスプレイライブラリーを提供する工程;
b)工程(a)のペプチドディスプレイライブラリーを、化学反応の適切な分子遷移状態を示す、固定化遷移状態アナログ化合物(TSAC)または分離可能な遷移状態アナログ化合物(TSAC)と接触させる工程;
c)ペプチド:TSAC複合体を、遊離ペプチドから分離する工程;
d)工程(c)の分離されたペプチドの複製を引き起こして、より低い多様性を有し、かつTSACを結合し得る提示されたペプチドが豊富であることによって、工程(a)のペプチドディスプレイライブラリーと区別される、新規のペプチドディスプレイライブラリーを生じる工程;
e)工程(d)の新規ライブラリーを用いて、必要に応じて、工程(b)、(c)および(d)を反復する工程;ならびに
f)工程(d)由来の種の提示されたペプチドをコードする領域の核酸配列を決定し、それによって、ペプチド配列を推測する工程。
【0029】
本発明はまた、各々が複数のループ領域を含む複数の核酸種を有する、Fn3ポリペプチドモノボディをコードする多様化核酸ライブラリーを調製する方法を提供し、ここで、種は、複数のループ領域の配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメインの配列をコードし、1つ以上のループ領域配列は、野生型Fn3中の対応するループ領域配列由来の少なくとも2つのアミノ酸の欠失、挿入または置換によって変化し、モノボディのβ鎖ドメイン配列は、野生型Fn3のβ鎖ドメイン配列の対応するアミノ酸配列に、総アミノ酸配列の少なくとも50%が相同性であり、ここで、Fn3は、安定化変異を含む。この方法は、以下の工程を包含する:
a)予め決定された配列を有するFn3ポリペプチドモノボディを調製する工程であって、このポリペプチドは、kcat/kuncatの比が10より大きくなるような触媒速度定数(kcat)および未触媒速度定数(kuncat)で、化学反応を触媒し得る、工程;
b)ポリペプチドを、化学反応の適切な分子遷移状態を示す、固定化遷移状態アナログ化合物(TSAC)または分離可能な遷移状態アナログ化合物(TSAC)と接触させる工程;
c)核磁気共鳴分光法またはX線結晶学によって、ポリペプチド:TSAC複合体の結合構造を決定する工程;ならびに
d)多様化核酸ライブラリーを調製する工程であって、多様化は、工程(c)で提供される情報から、TSACに対する結合またはTSACの安定化が改善された1以上のポリペプチドを生じる核酸配列中の位置で実施される、工程。
【0030】
本発明はまた、本発明の方法のいずれかの実行のためのキットを提供する。本発明はさらに、例えば、本発明のキットの使用によって調製されるポリペプチドまたは本発明の方法のいずれかによって同定されるポリペプチドのような組成物を提供する。
【0031】
したがって、本発明は、以下を提供する。
(1) III型フィブロネクチン(Fn3)分子であって、該Fn3は、野生型Fn3と比較して、安定化変異を含む、Fn3分子。
(2) 前記安定化変異が、欠失されているかまたは少なくとも1つの他のアミノ酸残基で置換されている、少なくとも1つのアスパラギン酸(Asp)残基を含む、項目1に記載のFn3。
(3) Asp7もしくはAsp23またはこれら両方が、欠失されているかまたは少なくとも1つの他のアミノ酸残基で置換されている、項目2に記載のFn3。
(4) Asp7もしくはAsp23またはこれら両方が、アスパラギン(Asn)残基またはリジン(Lys)残基で置換されている、項目3に記載のFn3。
(5) 前記安定化変異が、欠失されているかまたは少なくとも1つの他のアミノ酸残基で置換されている、少なくとも1つのグルタミン酸(Glu)残基を含む、項目1に記載のFn3。
(6) Glu9が、欠失されているか、または少なくとも1つの他のアミノ酸残基で置換されている、項目5に記載のFn3。
(7) Glu9が、アスパラギン(Asn)残基またはリジン(Lys)残基で置換されている、項目6に記載のFn3。
(8) Asp7、Asp23およびGlu9が、欠失されているか、または少なくとも1つの他のアミノ酸残基で置換されている、項目2に記載のFn3。
(9) III型フィブロネクチン(Fn3)ポリペプチドモノボディであって、複数のループ領域の配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメインの配列を含み、ここで、
1以上の該モノボディループ領域の配列が、野生型のFn3の対応するループ領域の配列とは、少なくとも2アミノ酸の付加、挿入または置換によって異なり;
該モノボディの該β鎖ドメインが、野生型のFn3のβ鎖ドメインの配列の対応するアミノ酸配列に対して、少なくとも50%の総アミノ酸配列相同性を有し;そして
該Fn3が、安定化変異を含む、Fn3ポリペプチドモノボディ。
(10) 項目9に記載のFn3分子をコードする、単離された核酸分子。
(11) 項目10に記載の核酸分子に作動可能に連結された発現カセットを含む、発現ベクター。
(12) 項目11に記載のベクターを含む、宿主細胞。
(13) 少なくとも1つのループ領域が、特異的結合パートナー(SBP)と結合して、10−6モル/リットル未満の解離定数を有するポリペプチド:SBP複合体を形成し得る、項目9に記載のモノボディ。
(14) 少なくとも1つのループ領域が、Kcat/Kuncatの比が10より大きくなるように、触媒速度定数(Kcat)および非触媒速度定数(Kuncat)で化学反応を触媒し得る、項目9に記載のモノボディ。
(15) 項目9に記載のモノボディであって、前記ループ領域の1以上が、以下のアミノ酸残基:
i)ABループに含まれる、15〜16;
ii)BCループに含まれる、22〜30;
iii)CDループに含まれる、39〜45;
iv)DEループに含まれる、51〜55;
v)EFループに含まれる、60〜66;および
vi)FGループに含まれる、76〜87;
を含む、モノボディ。
(16) 前記モノボディループ領域の配列が、少なくとも2アミノ酸の欠失または置換によって、前記野生型のFn3ループ領域の配列とは異なる、項目9に記載のモノボディ。
(17) 前記モノボディループ領域の配列が、3〜25アミノ酸の挿入によって、前記野生型のFn3ループ領域の配列とは異なる、項目9に記載のモノボディ。
(18) 項目1に記載のポリペプチドモノボディをコードする、単離された核酸分子。
(19) 項目18に記載の核酸分子に作動可能に連結された発現カセットを含む、発現ベクター。
(20) 前記発現ベクターが、M13ファージベースのプラスミドである、項目19に記載の発現ベクター。
(21) 項目19に記載のベクターを含む、宿主細胞。
(22) III型フィブロネクチン(Fn3)ポリペプチドモノボディを調製する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)複数のループ領域の配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメインの配列をコードするDNA配列を提供する工程であって、少なくとも1つのループ領域が、特有の制限酵素部位を含み、そして該複数のFn3 β鎖ドメインの配列の少なくとも1つが、中性のpHで野生型のFn3よりも安定である、工程;
b)該特有の制限部位で該DNA配列を切断する工程;
c)特異的結合パートナー(SBP)または遷移状態アナログ化合物(TSAC)と結合し得るペプチドをコードすることが既知のDNAセグメントを、該制限部位に挿入して、該挿入物および工程(a)のDNA配列を含むDNA分子を得る工程;ならびに
d)該DNA分子を発現して、ポリペプチドモノボディを得る工程、
を包含する、方法。
(23) III型フィブロネクチン(Fn3)ポリペプチドモノボディを調製する方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)複数のループ領域の配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメインの配列をコードする複製可能なDNA配列を提供する工程であって、少なくとも1つのループ領域のヌクレオチド配列が、既知であり、そして該複数のFn3 β鎖ドメインの配列の少なくとも1つが、中性のpHで野生型のFn3よりも安定である、工程;
(b)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)条件下でハイブリダイズ可能であるように、該既知のループ配列に十分相補的なPCRプライマーを調製する工程であって、少なくとも1つの該プライマーが、該DNAに挿入される改変核酸配列を含む、工程;
(c)工程(a)のDNA配列および工程(b)のプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応を実施する工程;
(d)工程(c)の反応産物をアニーリングおよび伸長させて、DNA産物を得る工程;ならびに
(e)工程(d)のDNA産物によってコードされる該ポリペプチドモノボディを発現する工程、
を包含する、方法。
(24) III型フィブロネクチン(Fn3)ポリペプチドモノボディを調製する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)複数のループ領域の配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメインの配列をコードする複製可能なDNA配列を提供する工程であって、少なくとも1つのループ領域のヌクレオチド配列が、既知であり、そして該複数のFn3 β鎖ドメインの配列の少なくとも1つが、中性のpHで野生型のFn3よりも安定である、工程;
b)少なくとも1つのループ領域の部位特異的変異誘発を実施して、挿入変異を含むDNA配列を作製する工程;ならびに
c)該挿入変異を含む該DNA配列によってコードされる該ポリペプチドモノボディを発現する工程、
を包含する、方法。
(25) 項目22〜24のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキットであって、該キットは、複数のループ領域の配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメインの配列をコードする複製可能なDNAを含み、該複数のFn3 β鎖ドメインの配列の少なくとも1つが、中性のpHで野生型のFn3よりも安定である、キット。
(26) 各々が複数のループ領域を含む複数の核酸種を含むFn3ポリペプチドモノボディをコードする、多様化核酸ライブラリーであって、該種が、複数のループ領域の配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメインの配列をコードし、ここで、
1以上の該ループ領域の配列が、野生型のFn3の対応するループ領域の配列とは、少なくとも2アミノ酸の欠失、挿入または置換によって異なり;
該モノボディのβ鎖ドメインの配列が、野生型のFn3のβ鎖ドメインの配列の対応するアミノ酸配列に対して、少なくとも50%の総アミノ酸配列相同性を有し;そして
該Fn3が、中性のpHで、野生型Fn3よりも安定である、多様化核酸ライブラリー。
(27) 項目26に記載の多様化核酸ライブラリーであって、前記ループ領域の1以上が、以下:
i)残基15〜16を含むABアミノ酸ループ;
ii)残基22〜30を含むBCアミノ酸ループ;
iii)残基39〜45を含むCDアミノ酸ループ;
iv)残基51〜55を含むDEアミノ酸ループ;
v)残基60〜66を含むEFアミノ酸ループ;および
vi)残基76〜87を含むFGアミノ酸ループ;
をコードする、多様化核酸ライブラリー。
(28) 前記ループ領域の配列が、少なくとも2アミノ酸の欠失または置換によって、前記野生型のFn3ループ領域の配列とは異なる、項目26に記載の多様化核酸ライブラリー。
(29) 前記モノボディループ領域の配列が、3〜25アミノ酸の挿入によって、前記野生型のFn3ループ領域の配列とは異なる、項目26に記載の多様化核酸ライブラリー。
(30) 多様化核酸配列が、前記種の前記ループ領域のいずれか1つに挿入される6〜75核酸塩基を含む、項目26に記載の多様化核酸ライブラリー。
(31) 前記多様化配列が、システインまたは終止コドンをコードするコドンからなる群より選択される1以上のコドンを回避するように構築される、項目26に記載の多様化核酸ライブラリー。
(32) 前記多様化核酸配列が、BCループ内に位置する、項目26に記載の多様化核酸ライブラリー。
(33) 前記多様化核酸配列が、DEループ内に位置する、項目26に記載の多様化核酸ライブラリー。
(34) 前記多様化核酸配列が、FGループ内に位置する、項目26に記載の多様化核酸ライブラリー。
(35) 前記多様化核酸配列が、ABループ内に位置する、項目26に記載の多様化核酸ライブラリー。
(36) 前記多様化核酸配列が、CDループ内に位置する、項目26に記載の多様化核酸ライブラリー。
(37) 前記多様化核酸配列が、EFループ内に位置する、項目26に記載の多様化核酸ライブラリー。
(38) 項目26に記載の多様化核酸ライブラリーに由来する、ペプチドディスプレイライブラリー。
(39) 前記ペプチドが、バクテリオファージまたはウイルスの表面に提示される、項目38に記載のペプチドディスプレイライブラリー。
(40) 前記バクテリオファージが、M13またはfdである、項目39に記載のペプチドディスプレイライブラリー。
(41) 特異的結合パートナー(SBP)と結合して、ポリペプチド:SBP複合体を形成し得るポリペプチド分子のアミノ酸配列を同定する方法であって、該ポリペプチド:SBP複合体の解離定数は、10−6モル/リットル未満であり、該方法は、以下の工程:
a)項目39に記載のペプチドディスプレイライブラリーを提供する工程;
b)工程(a)のペプチドディスプレイライブラリーを、固定化SBPまたは分離可能なSBPと接触させる工程;
c)該ペプチド:SBP複合体を、遊離ペプチドから分離する工程;
d)工程(c)の分離されたペプチドの複製を引き起こして、より低い多様性を有し、かつ該SBPを結合し得る提示されたペプチドが豊富であることによって、工程(a)のペプチドディスプレイライブラリーと区別される、新規のペプチドディスプレイライブラリーを生じる工程;
e)工程(d)の新規ライブラリーを用いて、必要に応じて、工程(b)、(c)および(d)を繰り返す工程;ならびに
f)工程(d)由来の種の提示されたペプチドをコードする領域の核酸配列を決定し、そして該SBPに結合し得るペプチド配列を推測する工程、
を包含する、方法。
(42) 各々が複数のループ領域を含む複数の核酸種を有するFn3ポリペプチドモノボディをコードする、多様化核酸ライブラリーを調製する方法であって、ここで、該種が、複数のループ領域の配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメインの配列をコードし、1以上の該モノボディループ領域の配列が、野生型のFn3の対応するループ領域の配列とは、少なくとも2アミノ酸の欠失、挿入または置換によって異なり、そして該モノボディの該β鎖ドメインの配列が、野生型のFn3のβ鎖ドメインの配列の対応するアミノ酸配列に対して、少なくとも50%の総アミノ酸配列相同性を有し、そして該Fn3が、安定化変異のβ鎖ドメインを含み、該方法は、以下の工程:
a)予め決定された配列を有するFn3ポリペプチドモノボディを調製する工程;
b)該ポリペプチドを特異的結合パートナー(SBP)と接触させて、ポリペプチド:SBP複合体を形成させる工程であって、該ポリペプチド:SBP複合体の解離定数が10−6モル/リットル未満である、工程;
c)核磁気共鳴分光法またはX線結晶学によって、該ポリペプチド:SBP複合体の結合構造を決定する工程;ならびに
d)該多様化核酸ライブラリーを調製する工程であって、該多様化が、工程(c)で提供される情報から、該SBPに対する改善された結合を有する1以上のポリペプチドを生じる核酸配列中の位置で実施される、工程、
を包含する、方法。
(43) kcat/kuncatの比が10より大きくなるように、触媒速度定数(kcat)および非触媒速度定数(kuncat)で化学反応を触媒し得るポリペプチド分子のアミノ酸配列を同定する方法であって、該方法は、以下:
a)項目39に記載のペプチドディスプレイライブラリーを提供する工程;
b)工程(a)のペプチドディスプレイライブラリーを、該化学反応の適切な分子遷移状態を示す、固定化された遷移状態アナログ化合物(TSAC)または分離可能な遷移状態アナログ化合物(TSAC)と接触させる工程;
c)ペプチド:TSAC複合体を、遊離ペプチドから分離する工程;
d)工程(c)の分離されたペプチドの複製を引き起こして、より低い多様性を有し、かつ該TSACを結合し得る提示されたペプチドが豊富であることによって、工程(a)のペプチドディスプレイライブラリーと区別される、新規のペプチドディスプレイライブラリーを生じる工程;
e)工程(d)の新規ライブラリーを用いて、必要に応じて、工程(b)、(c)および(d)を繰り返す工程;ならびに
f)工程(d)由来の種の提示されたペプチドをコードする領域の核酸配列を決定し、それによって、該ペプチド配列を推測する工程、
を包含する、方法。
(44) 各々が複数のループ領域を含む複数の核酸種を有するFn3ポリペプチドモノボディをコードする、多様化核酸ライブラリーを調製する方法であって、ここで、該種が、複数のループ領域の配列に連結された複数のFn3 β鎖ドメインの配列をコードし、1以上の該ループ領域の配列が、野生型のFn3の対応するループ領域の配列とは、少なくとも2アミノ酸の欠失、挿入または置換によって異なり、そして該モノボディのβ鎖ドメインの配列が、該野生型のFn3のβ鎖ドメインの配列の対応するアミノ酸配列に対して、少なくとも50%の総アミノ酸配列相同性を有し、そして該Fn3が、安定化変異のβ鎖ドメインを含み、該方法は、以下の工程:
a)予め決定された配列を有するFn3ポリペプチドモノボディを調製する工程であって、該ポリペプチドは、kcat/kuncatの比が10より大きくなるように、触媒速度定数(kcat)および非触媒速度定数(kuncat)で化学反応を触媒し得る、工程;
b)該ポリペプチドを、該化学反応の適切な分子遷移状態を示す、固定化された遷移状態アナログ化合物(TSAC)または分離可能な遷移状態アナログ化合物(TSAC)と接触させる工程;
c)核磁気共鳴分光法またはX線結晶学によって、該ポリペプチド:TSAC複合体の結合構造を決定する工程;ならびに
d)該多様化核酸ライブラリーを調製する工程であって、該多様化が、工程(c)で提供される情報から、該TSACに対する改善された結合または該TSACの安定化を有する1以上のポリペプチドを生じる核酸配列中の位置で実施される、工程、
を包含する、方法。
(45) 項目41に記載の方法によって同定される、単離されたポリペプチド。
(46) 項目43に記載の方法によって同定される、単離されたポリペプチド。
(47) 特異的結合パートナー(SBP)と結合して、ポリペプチド:SBP複合体を形成し得るポリペプチド分子のアミノ酸配列を同定するためのキットであって、該ポリペプチド:SBP複合体の解離定数は、10−6モル/リットル未満であり、該キットは、項目39に記載のペプチドディスプレイライブラリーを含む、キット。
(48) kcat/kuncatの比が10より大きくなるように、触媒速度定数(kcat)および非触媒速度定数(kuncat)で化学反応を触媒し得るポリペプチド分子のアミノ酸配列を同定するためのキットであって、該キットは、項目39に記載のペプチドディスプレイライブラリーを含む、キット。
(49) 項目47に記載のキットを使用することによって誘導される、ポリペプチド。
(50) 項目48に記載のキットを使用することによって誘導される、ポリペプチド。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下の略語は、アミノ酸、ペプチド、またはタンパク質を記載する場合に使用される:AlaまたはA、アラニン;ArgまたはR、アルギニン;AsnまたはN、アスパラギン;AspまたはD、アスパラギン酸;CysまたはC、システイン;GlnまたはQ、グルタミン;GluまたはE、グルタミン酸;GlyまたはG、グリシン;HisまたはH、ヒスチジン;IleまたはI、イソロイシン;LeuまたはL、ロイシン;LysまたはK、リジン;MetまたはM、メチオニン;PheまたはF、フェニルアラニン;ProまたはP、プロリン;SerまたはS、セリン;ThrまたはT、トレオニン;TrpまたはW、トリプトファン;TyrまたはY、チロシン;ValまたはV、バリン。
【0033】
以下の略語は、核酸、DAN、またはRNAを記載する場合に使用される:A、アデノシン;T、チミジン;G、グアノシン;C、シトシン。
【0034】
(発明の詳細な説明)
過去10年間にわたって、免疫系は、デノボの触媒の豊富な供給源として、利
用されてきた。触媒性抗体は、化学選択性、エナンチオ選択性、大きな割合の加
速、および化学反応の経路を変更する能力さえも有することが示された。ほとん
どの場合において、これらの抗体は、遷移状態アナログ(TSA)ハプテンに対
して惹起された。これらのTSAハプテンは、エネルギー的に不安定な遷移状態
種(これは、反応物と生成物との間の反応経路に沿って、短時間(およその半減
期10−13秒)出現する)の構造を模倣するように設計された、安定な低分子
量の化合物である。抗TSA抗体は、天然の酵素と同様に、遷移状態を選択的に
結合し、そして安定化させ、これによって、反応物から生成物への経過を容易に
すると考えられる。従って、結合の際に、この抗体は、実際の遷移状態のエネル
ギーを低下させ、そして反応速度を増加させる。これらの触媒は、遷移状態の幾
何学的特徴および静電特徴に結び付くようプログラムされ得、その結果、その反
応経路は、望ましくない電荷を中和すること、エントロピー障壁に打ち克つこと
、およびその反応の静電的特徴に影響を与えることによって、制御され得る。こ
の手段によって、触媒されなければ非常に望ましくない反応でさえも、触媒され
た(Jandaら、1997)。さらに、多くの例において、触媒は、既知の天
然酵素も人工酵素も存在しない反応のために、作製された。
【0035】
任意のコンビナトリアルケミストリーシステムの、特定の機能を得る際の成功
は、ライブラリーの大きさおよびそのメンバーに接近する能力に依存する。最も
しばしば、反応の遷移状態を模倣するハプテンに対して動物において作製される
抗体が、このハプテンへの結合について最初にスクリーニングされ、次いで、触
媒活性について再度スクリーニングされる。改善された方法は、ファージにおけ
る抗体ライブラリーからの触媒の直接的な選択を可能にし、これによって、化学
と複製とを結び付ける。
【0036】
抗体フラグメントのライブラリーは、無作為化抗体遺伝子をそのファージのコ
ートタンパク質をコードする遺伝子に添加することによって、線維状ファージウ
イルスの表面に作製され得る。次いで、各ファージは、単一の抗体フラグメント
の複数のコピーを、その表面に発現し、そしてディスプレイする。各ファージが
、表面にディスプレイされる抗体フラグメントとそのフラグメントをコードする
DNAとの両方を保有するので、標的に結合する抗体フラグメントは、関連する
DNAを増幅することによって、同定され得る。
【0037】
免疫化学者は、抗原として、可能な限り低い化学反応性を有する物質を使用す
る。最終的な抗体がネイティブな構造と相互作用することを望むことは、ほとん
ど常にそうである。反応性の免疫においては、この概念は全く逆になる。高度に
反応性である化合物で免疫し、その結果、誘導プロセスの間のこの抗体分子への
結合の際に、化学反応が起こる。後に、この同じ化学反応は、触媒事象の機構の
一部となる。特定の場合においては、物質それ自体ではなく、化学反応で免疫す
る。反応性の免疫原は、酵素学者が使用する、機構に基づくインヒビターの類似
物として考慮され得る。但しこれらは、これらが機構を阻害するのではなく機構
を誘導する点において、逆の様式で使用される。
【0038】
人工の触媒性抗体は、多くの異なる適用において、かなりの商業的可能性を有
する。触媒性抗体に基づく生成物が、治療用途(例えば、プロドラッグの活性化
およびコカインの不活性化)ならびに非治療用途(例えば、バイオセンサおよび
有機合成)における原型の実験において、首尾よく使用された。
【0039】
触媒性抗体は、理論的には、治療剤として、非触媒性抗体より魅力的である。
なぜなら、触媒であるので、これらはより低い用量で使用され得るからであり、
そしてまた、これらの効果が異常に不可逆であるからである(例えば、結合より
むしろペプチド結合の切断)。治療において、精製された触媒性抗体は、患者に
直接投与され得るか、あるいはその患者自身の触媒性抗体応答が、適切なハプテ
ンでの免疫によって惹起され得る。触媒性抗体はまた、臨床的な診断ツールとし
て、またはファインケミカルの合成における位置選択的触媒もしくは立体選択的
触媒として、使用され得る。
【0040】
(I.Fn3ループの変異およびFn3へのAbループの移植)
CDR移植のための理想的な足場は、高度に可溶性かつ安定である。これは、
構造分析のためには十分に小さいが、緊密な結合および/または高い選択性を達
成するために、複数のCDRに適合するために十分に大きい。
【0041】
既存の非Abタンパク質の骨格で人工Ab系を生じさせるための新規のストラ
テジーが開発された。Ab足場の最小化より優れたこのアプローチの利点は、A
bの所望でない特性の遺伝を回避し得ることである。フィブロネクチンIII型
ドメイン(Fn3)が、足場として使用された。フィブロネクチンは、細胞外マ
トリックスの形成および細胞−細胞相互作用において必須の役割を果たす、大き
なタンパク質である;このタンパク質は、3つの型(I、IIおよびIII)の
小さなドメインの多くの反復から構成される(Baronら、1991)。Fn
3自体が、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)の大きなサブファミ
リー(Fn3ファミリーまたはs型Igファミリー)の典型である。Fn3ファ
ミリーは、細胞接着分子、細胞表面ホルモンおよびサイトカインレセプター、シ
ャペロニン、ならびに炭水化物結合ドメインを含む(総説については、Bork
& Doolittle,1992;Jones,1993;Borkら、1
994;Campbell & Spitzfaden,1994;Harpe
z & Chothia,1994を参照のこと)。
【0042】
最近、結晶学的研究により、転写因子NF−kBのDNA結合ドメインの構造
もまた、Fn3の折り畳みに密接に関連することが明らかとなった(Ghosh
ら、1995;Muellerら、1995)。これらのタンパク質は、全て、
特異的な分子認識に関与し、そしてほとんどの場合において、リガンド結合部位
は、表面ループによって形成され、このことは、Fn3足場が、特異的に結合す
るタンパク質を構築するための優れた骨格であることを示唆する。Fn3の三次
元構造が、NMR(Mainら、1992)およびX線結晶学(Leahyら、
1992;Dickinsonら、1994)によって決定された。その構造は
、Fn3が9つではなく7つのβ鎖を有すること(図1)を除いて、Ab VH
ドメインのものと類似のβサンドイッチであると、最良に記載される。Fn3の
各末端には、3つのループが存在する;BC、DEおよびFGのループの位置は
、それぞれVHドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3の位置におおよ
そ対応する(図1C、D)。
【0043】
Fn3は、小さく(約95残基)、モノマーであり、可溶性であり、そして安
定である。これは、ジスルフィド結合を有さない、IgSFの数少ないメンバー
の1つである;VHは、鎖間ジスルフィド結合を有し(図1A)、そして還元条
件下でわずかな安定性を有する。Fn3は、E.coliにおいて発現された(
Aukhilら、1993)。さらに、17のFn3ドメインは、ヒトフィブロ
ネクチンのみに存在し、保存された残基(これらはしばしば安定性および折り畳
みのために重要である)に関する重要な情報を提供する(例えば、配列整列;M
ainら、1992およびDickinsonら、1994を参照のこと)。配
列分析から、BCループおよびFGループにおいて大きな変化が見られ、このこ
とは、これらのループが安定性のために重要ではないことを示唆する。NMR研
究によって、FGループが高度に可撓性であることが明らかとなった;この可撓
性は、Arg−Gly−Asp(RGD)モチーフを介する、第10のFn3の
αβインテグリンへの特異的結合に関連する。ヒト成長ホルモン−レセプタ
ー複合体の結晶構造(de Vosら、1992)において、このレセプターの
第2のFn3ドメインは、FGループおよびBCループを介してホルモンと相互
作用し、このことは、これら2つのループを使用して結合部位を構築することが
都合がよいことを示唆する。
【0044】
フィブロネクチンの第10のIII型モジュールは、免疫グロブリンドメイン
の折り畳みと類似の折り畳みを有し、7つのβ鎖が、2つの逆平行βシートを形
成しており、これらのβシートは、互いを包んでいる(Mainら、1992)
。II型モジュールの構造は、7つのβ鎖から構成され、これらのβ鎖は、2つ
の逆平行βシートのサンドイッチを形成しており、一方のβシートは3つの鎖(
ABE)を含み、そして他方のβシートは4つの鎖(C’CFG)を含む(Wi
lliamsら、1988)。三本鎖βシートは、残基Glu−9−Thr−1
4(A)、Ser−17−Asp−23(B)、およびThr−56−Ser−
60(E)から構成される。保存された残基の大部分は、疎水性コアに寄与し、
ここで変異していない疎水性残基であるTrp−22およびTry−68は、そ
れぞれこのコアのN末端およびC末端の近くに位置する。これらのβ鎖の可撓性
はかなり低く、そして機能的な可撓性ループが構築される剛性の骨格を提供する
ようである。そのトポロジーは、免疫グロブリンCドメインのトポロジーと類似
している。
【0045】
(遺伝子構築および突然変異誘発)
ヒトフィブロネクチンの第10のFn3に対する合成遺伝子(図2)が設計さ
れた。これは、突然変異誘発を容易にするための好都合な制限部位を含み、そし
て高レベルのタンパク質発現のために、特定のコドンを使用する(Gribsk
ovら、1984)。
【0046】
この遺伝子は、以下のように構築された:(1)遺伝子配列が、設計された制
限部位を境界として、5つの部分に分割された(図2);(2)各部分に対して
、逆の鎖をコードし、そして約15塩基の相補的重なりを有する、一対のオリゴ
ヌクレオチドが合成された;(3)これら2つのオリゴヌクレオチドがアニーリ
ングされ、そして一本鎖領域が、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントを
使用して充填された;(4)二本鎖オリゴヌクレオチドが、フラグメントの末端
における制限酵素部位を使用してpET3aベクター(Novagen)にクロ
ーニングされ、そしてその配列が、Applied Biosystems D
NAシークエンサーによって、製造元により提供されるジデオキシ終結プロトコ
ルを使用して、確認された;(5)工程2〜4が繰り返されて、遺伝子全体(プ
ラスミドpAS25)(図7)が得られた。
【0047】
本発明の方法には、遺伝子を組み立てるために、1工程のポリメラーゼ連鎖反
応(PCR)法(Sandhuら、1992)より長い時間がかかるが、この遺
伝子において変異が起こらない。変異は、Taqポリメラーゼによる低い忠実度
の複製によって導入されたようであり、そして時間を浪費する遺伝子の編集を必
要とした。この遺伝子はまた、pET15b(Novagen)ベクター(pE
W1)にクローニングされた。両方のベクターが、バクテリオファージT7プロ
モーターの制御下で、Fn3遺伝子を発現した(Studlerら、1990)
;pAS25は、96残基のFn3タンパク質のみを発現し、一方でpEW1は
、ポリヒスチジンペプチド(Hisタグ)との融合タンパク質として、Fn3を
発現した。他に言及されない限り、Molecular Cloning(Sa
mbrookら、1989)に従って、組換えDNA操作が実施された。
【0048】
変異は、Fn3遺伝子に、カセット突然変異誘発技術またはオリゴヌクレオチ
ド部位特異的突然変異誘発技術のいずれかを使用して、導入された(Deng
& Nickoloff,1992)。カセット突然変異誘発は、上記遺伝子構
築についてと同じプロトコルを使用して、実施された;新たな配列をコードする
二本鎖DNAフラグメントを、発現ベクター(pAS25および/またはpEW
1)にクローニングした。新たに合成された鎖(変異をコードする)と、この遺
伝子合成のために使用されるオリゴヌクレオチドとを組み合わせることによって
、多くの変異がなされる。得られた遺伝子を配列決定して、突然変異誘発反応に
よって、設計された変異が導入され、そして他の変異は導入されなかったことを
確認した。
【0049】
(抗体CDRを含むFn3変異体の設計および合成)
2つの候補ループ(FGおよびBC)が、移植のために同定された。Fn3に
移植されるループの供給源の候補を同定するために、既知の結晶構造を有する抗
体が試験された。抗ニワトリ卵リボザイム(HEL)抗体D1.3(Bhatら
、1994)が、CDRループの供給源として選択された。この選択の理由は以
下であった:(1)遊離状態および複合体化状態の、高分解能結晶構造が利用可
能である(図4A;Bhatら、1994)、(2)結合反応についての熱力学
的データが利用可能である(Telloら、1993)、(3)D1.3は、A
bの構造的分析およびAbの操作のための原型として使用されている(Verh
oeyenら、1988;McCaffertyら、1990)、(4)部位特
異的突然変異誘発の実験により、重鎖のCDR3(VH−CDR3)が他のCD
Rより大きく親和性に寄与することが示されている(Hawkinsら、199
3)、および(5)結合アッセイが、容易に実施され得る。この試行の目的は、
D1.3のVH−CDR3を、安定性を有意に損失することなくFn3足場に移
植することであった。
【0050】
D1.3構造の分析(図4)により、残基99〜102(「RDYR」)(配
列番号120)のみが、ニワトリ卵白リボザイム(HEL)と直接接触すること
が明らかとなった(図4B)が、VH−CDR3の方が長いと定義される(Bh
atら、1994)。VH−CDR3のC末端の半分(残基101〜104)が
、VLドメインと有意に接触することが、注目されるべきである(図4B)。D
1.3 VH−CDR3(図4C)は、Fn3のFGループ(図4D)より短い
ターンを、F鎖とG鎖との間に有することもまた、明らかとなった。従って、変
異体の配列は、D1.3のRDYR(99〜102)(配列番号120)をコア
として使用することによって設計され、そして異なる境界およびループ長さを作
製した(表1)。より短いループは、より良好にD1.3 CDR3のコンホメ
ーションを模倣し、これによってより高い親和性を生じ得るが、これらはまた、
Fn3の野生型相互作用を除去することによって、安定性が有意に低減し得る。
【0051】
【表1】

【0052】
さらに、VH8と称される抗HEL単鎖VHドメイン(Wardら、1989
)が、テンプレートとして選択された。VH8は、ライブラリースクリーニング
によって選択され、そしてVLドメインを欠くにもかかわらず、VH8は、27
nMのHELに対して親和性を有する(おそらく、そのより長いVH−CDR3
(表1)に起因する)。従って、そのVH−CDR3が、Fn3に移植された。
より長いループは、Fn3骨格において有利であり得る。なぜなら、より長いル
ープは、より高い親和性を提供し得、そしてまた、野生型Fn3のループ長さに
近いからである。VH8の三次元構造は未知であり、従って、VH8 CDR3
配列は、D1.3 VH−CDR3の配列と整列された;2つのループが設計さ
れた(表1)。
【0053】
(変異体の構築および生成)
設計された配列を得るために、部位特異的変異誘発実験を行なった。2つの変
異体Fn3、D1.3−1およびD1.3−4(表1)を得、そして両方を可溶
性Hisタグ融合タンパク質として発現した。D1.3−4を精製し、そしてH
isタグ部分を、トロンビン切断によって除去した。D1.3−4は、pH7.
2において少なくとも1mMまで可溶性である。タンパク質の凝集は、サンプル
調製およびNMRデータ獲得の間に観察されなかった。
【0054】
(タンパク質の発現および精製)
E.coli BL21(DE3)(Novagen)を、野生型または変異
体についての遺伝子を含む発現ベクター(pAS25、pEW1およびこれらの
誘導体)で形質転換した。細胞を、M9最小培地およびアンピシリン(200μ
g/ml)を含むバクトトリプトン(Difco)を補充したM9培地で増殖さ
せた。同位体標識について、15N NHClおよび/または13Cグルコー
スは、未標識の成分を交換した。2リットルバッフルフラスコ中の500ml培
地を、10mlの一晩の培養物で播種し、そして37℃で撹拌した。イソプロピ
ルチオ−β−ガラクトシド(IPTG)を、1mMの最終濃度で添加し、OD(
600nm)が1に達するときにタンパク質発現を開始する。細胞を、IPTG
の添加3時間後に遠心分離によって収穫し、そして使用まで−70℃で凍結した

【0055】
Hisタグを有さないFn3を以下のように精製した。細胞を、エチレンジア
ミン四酢酸(EDTA;1mM)およびフェニルメチルスルホニルフルオライド
(1mM)を含む5ml/(g細胞)のTris(50mM、pH7.6)に懸
濁した。HELを、0.5mg/mlの最終濃度まで添加した。溶液を37℃で
30分間インキュベートした後、氷上で30秒間、3回超音波処理した。細胞残
渣を遠心分離によって除去した。硫酸アンモニウムを溶液に添加し、そして沈澱
を遠心分離によって回収した。ペレットを、5〜10mlの酢酸ナトリウム(5
0mM、pH4.6)中で溶解し、そして不溶性物質を遠心分離によって除去し
た。溶液を、酢酸ナトリウム緩衝液中に平衡化したSephacryl S10
0HRカラム(Pharmacia)に適用した。次いで、Fn3を含む画分を
、酢酸ナトリウム(50mM、pH4.6)中で平衡化したResourceS
カラム(Pharmacia)に適用し、そして塩化ナトリウムの直線勾配(0
〜0.5M)で溶出した。プロトコルは、異なる表面電荷特性を有する変異タン
パク質を精製するために調整され得る。
【0056】
Hisタグを有するFn3を以下のように精製した。この可溶性画分を、塩化
ナトリウム(100mM)を含むリン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.
6)をTris緩衝液と交換したことを除き、上記のように調製した。この溶液
を、ニッケルで前充填しそしてリン酸緩衝液中で平衡化したHi−Trapキレ
ートカラム(Pharmacia)に適用した。緩衝液でのカラムの洗浄後、H
isタグFn3を、50mM EDTAを含むリン酸緩衝液中で溶出した。Hi
sタグ−Fn3を含む画分をプールし、そしてSephacryl S100−
HRカラムに適用し、高度に純粋なタンパク質を得た。Hisタグ部分を、No
vagenによって提供されるプロトコルを使用して、トロンビンで融合タンパ
ク質を処理することによって切断した。Fn3を、上のプロトコルを使用して、
ResourceSカラムによってHisタグペプチドおよびトロンビンから分
離した。
【0057】
今までに調査された野生型および2つの変異タンパク質は、可溶性タンパク質
として発現される。変異体が封入体(不溶性凝集物)として発現される場合、よ
り低い温度(例えば、25〜30℃)において可溶性タンパク質として発現され
得るか否かが最初に調査される。これが可能でない場合、封入体は、上記のよう
に、細胞溶解後の低速遠心分離によって回収される。ペレットを緩衝液で洗浄し
、超音波処理し、そして遠心分離する。封入体を、塩化グアジニウム(GdnC
l、6M)を含むリン酸緩衝液(50mM、pH7.6)中で可溶化し、そして
Hi−Trapキレートカラムに充填する。タンパク質をGdnClおよび50
mM EDTAを含む緩衝液で溶出する。
【0058】
(変異体Fn3、D1.3−4のコンホメーション)
HisタグD1.3−4融合タンパク質のH NMRスペクトルは、野生型
H NMRスペクトルと密接に類似し、この変異体は、野生型のコンホメー
ションと同様のコンホメーションで折り畳まれていることを示唆する。Hisタ
グペプチドの除去後のD1.3−4のスペクトルは、大きいスペクトル分散を示
した。大きい分散のアミドプロトン(7〜9.5ppm)および多数の低磁場(
5.0〜6.5ppm)Cαプロトンは、βシートタンパク質に特徴的である(
Wuthrich,1986)。
【0059】
D1.3−4の2D NOESYスペクトルは、保存されたコンホメーション
についてさらなる証拠を提供した。スペクトルの領域は、高磁場メチルプロトン
(<0.5ppm)とメチル−メチレンプロトンとの間の相互作用を示した。V
al72γメチル共鳴を、野生型スペクトル(−0.07および0.37ppm
;(Baronら、1992))において十分に分離した。2つのメチルプロト
ンに対応する共鳴は、D1.3−4スペクトル(−0.07および0.44pp
m)において存在する。これらの2つの共鳴間の交差ピークおよび他の保存され
た交差ピークは、D1.3−4スペクトルにおける2つの共鳴がVal72の共
鳴である可能性が非常に高く、そして他のメチルプロトンが野生型Fn3の共鳴
に対する環境とほとんど同一であることを示す。2つのスペクトル間の重要でな
い差異は、変異に起因する小さな構造的かく乱におそらく起因している。Val
72は、F鎖に存在し、ここで、これは、Fn3の中央疎水性コアの一部を形成
する(Mainら、1992)。Val72は、FGループの変異残基からたっ
た4残基のみ離れている(表1)。結果は顕著である。なぜなら、ループ中に7
つの変異および3つの欠失が存在するにも関わらず(総残基の10%を超える;
図12、表2)、D1.3−4は、野生型の3D構造と実質的に同一の3D構造
を保持する(変異したループを除く)。従って、この結果は、FGループがFn
3分子の折り畳みおよび安定性に有意に寄与しておらず、従ってFGループは広
範に変異され得るという強力な支持を提供する。
【0060】
【表2】

【0061】

【0062】
制限酵素部位を下線で示す。NおよびKは、それぞれ、A、T、GおよびCの等
モル混合物ならびにGおよびTの等モル混合物を示す。
【0063】
(構造および安定性の測定)
Absの構造を、AbsおよびFn3の鎖−ループ−鎖構造を重ね合わせるた
めに、定量的方法(例えば、DSSP(KabschおよびSander,19
83)およびPDBfit(D.McRee,The Scripps Res
earch Insititute))ならびにコンピューターグラフィックス
(例えば、Quanta(Molecular Simulations)およ
びWhat if(G.Vriend,European Molecular
Biology Laboratory))を使用して分析した。
【0064】
モノボディー(monobody)の安定性を、温度および化学的な変性剤誘
導性アンフォールディング反応を測定することによって決定した(Paceら、
1989)。温度誘導性アンフォールディング反応を、円偏光二色性(CD)偏
光計を使用して測定した。サンプル温度がゆっくりと上昇させるにつれて、22
2および215nmにおける楕円率を、記録した。10〜50μMの間のサンプ
ル濃度を使用した。アンフォールディング基線が確立された後、アンフォールデ
ィング反応の可逆性を調査するために温度を低下させた。アンフォールディング
の自由エネルギーを、二状態転移(two−state transition
)の式に適合させることによって決定した(BecktelおよびSchell
man,1987;Paceら、1989)。非線形の最小二乗適合を、マッキ
ントッシュコンピューター上でプログラムIgor(WaveMetrics)
を使用して行なった。
【0065】
2つの選択された変異体Fn3の構造および安定性を研究した;第1の変異体
はD1.3−4であり(表2)、そして第2の変異体は、BCループ中に4つの
変異(A26272829→TQRQ)を含むAS40と呼ばれる変異体
であった。AS40は、上記のBCループライブラリーからランダムに選択され
た。両方の変異体は、E.coli中で可溶性タンパク質として発現され、そし
て少なくとも1mMに濃縮され、NMR研究を可能にする。
【0066】
両方の変異体についての熱変性の中間点は、野生型タンパク質の約79℃と比
較して、約69℃であった。結果は、2つの表面ループにおける広範な変異は、
Fn3の安定性を劇的に減少させないことを示し、従って両方のループに多数の
変異を導入する可能性を実証した。
【0067】
安定性はまた、塩化グアニジウム(GdnCl)アンフォールディング反応お
よび尿素誘導性アンフォールディング反応によって決定された。予備的なアンフ
ォールディング曲線を、モーター駆動のシリンジを備えた蛍光光度計を使用して
記録した;GdnClまたは尿素を、キュベット中のタンパク質溶液に連続的に
添加した。予備的なアンフォールディング曲線に基づいて、種々の濃度の変性剤
を含む別々のサンプルを調製し、そして蛍光(290nmにおける励起、300
〜400nmにおける発光)またはCD(222および215nmにおける楕円
率)を、サンプルを少なくとも1時間測定温度で平衡化した後、測定した。曲線
は、二状態モデルの式に最小二乗法を適合させた(SantoroおよびBol
en,1988;Koideら、1993)。タンパク質濃度における変化を、
必要な場合補正した。
【0068】
一旦、熱アンフォールディング反応の可逆性が確立されると、このアンフォー
ルディング反応は、Microcal MC−2示差的走査カロリーメーター(
DSC)によって測定される。セル(約1.3ml)を、FnAb溶液(0.1
〜1mM)で満たし、そしてΔCp(=ΔH/ΔT)を、温度がゆっくり上昇す
るにつれて記録する。T(アンフォールディングの中点)、アンフォールディ
ングのΔHおよびアンフォールディングのΔGを、Microcalによって提
供されたOriginソフトウェアを用いて移行曲線を適合することによって決
定する(PrivalovおよびRotekhin,1986)。
【0069】
(熱アンフォールディング)
Fn3に関する温度誘導性アンフォールディング実験を、二次構造における変
化をモニターするために、円偏光二色性(CD)分光法を使用して行なった。ネ
イティブなFn3のCDスペクトルは、222nmに近く弱いシグナルを示し(
図3A)、このことは、Fn3の優勢なβ構造と一致する(Perczelら、
1992)。共同的なアンフォールディング移行は、80〜90℃で観察され、
これは、Fn3の高い安定性を示す(図3B)。アンフォールディングの自由エ
ネルギーは、移行後基線の欠如に起因して決定され得ない。結果は、ヒトフィブ
ロネクチンの第1のFn3ドメインの高い安定性と一致しており(Litvin
ovichら、1992)、従ってFn3ドメインが一般に高度に安定性である
ことを示す。
【0070】
(結合アッセイ)
モノボディーの結合反応を、等温性滴定熱量計(ITC)および蛍光分光法を
使用して定量的に特徴付けた。
【0071】
結合のエンタルピー変化(ΔH)を、Microcal Omega ITC
(Wisemanら、1989)を使用して測定した。サンプルセル(約1.3
ml)をモノボディー溶液(≦100μM、Kに従って変化する)で満たし、
そして参照セルを、蒸留水で満たした;システムを、安定な基線が得られるまで
、所定の温度で平衡化した;5〜20μlのリガンド溶液(≦2mM)を、平衡
化の遅延(4分)後に続く短い期間(20秒)内で、モーター駆動シリンジによ
って注射した;注射を繰り返し、そして各注射について熱生成/熱吸収を測定し
た。リガンドの濃度の関数としての観察された熱変化における変化より、ΔHお
よびKを決定した(Wisemanら、1989)。結合反応のΔGおよびΔ
Sを、2つの直接測定したパラメーターより推定した。理論的曲線からの逸脱を
、非特異的(複数部位)結合を評価するために、調査した。実験をまた、リガン
ドをセル中に配置しそしてFnAbで力価決定することによって、行なった。I
TCのみがΔHの直接的な測定を与え、それにより、結合エネルギーに対するエ
ンタルピーおよびエントロピーの寄与を評価することを可能にすることが強調さ
れるべきである。ITCを首尾良く使用して、D1.3Abの結合反応をモニタ
ーする(Telloら、1993;Bhatら、1994)。
【0072】
内因性の蛍光をモニターして、ITCによるKの決定が困難である、μM範
囲以下のKを有する結合反応を測定する。Fn3変異体溶液(≦10μM)は
リガンド溶液(≦100μM)で滴定されるので、Trp蛍光(約290nmに
おける励起、300〜350nmにおける発光)およびTyr蛍光(約260n
mにおける励起、約303nmにおける発光)を、モニターする。反応のK
、二分子結合式の非線形最小二乗適合によって決定する。二次結合部位の存在は
、Scatchard分析によって調査される。全ての結合アッセイにおいて、
コントロール実験は、目的のモノボディーの代わりに野生型Fn3(または無関
係のモノボディー)を使用することによって行う。
【0073】
(II.高い親和性および高い特異性を有するFn3変異体の生成)
(モノボディー)
特異的なリガンドに結合するモノボディーを選択するために、ライブラリース
クリーニングを行なった。これは、上に記載されたモデリングアプローチに対し
て相補的である。コンビナトリアルスクリーニングの利点は、多数の改変体(≧
10)を容易に生成およびスクリーニングし得ることであり、これは、特異的
な変異誘発(「合理的設計」)アプローチを用いて可能ではない。ファージディ
スプレイ技術(Smith,1985;O’NeilおよびHoess,199
5)を使用して、スクリーニングプロセスを行なう。Fn3をファージコートタ
ンパク質(pIII)に融合し、そして糸状ファージの表面上に提示する。これ
らのファージは、Fn3融合タンパク質をコードする遺伝子を含む一本鎖DNA
ゲノムを保有する。規定の領域のFn3のアミノ酸配列を、縮重ヌクレオチド配
列を使用してランダム化し、それによりライブラリーを構築する。所望の結合能
力を有するFn3変異体を提示するファージを、インビトロで選択し、回収し、
そして増幅する。選択されたクローンのアミノ酸配列は、選択されたファージの
Fn3遺伝子を配列決定することによって容易に同定され得る。Smithのプ
ロトコル(SmithおよびScott,1993)は、少しの改変を伴う。
【0074】
この目的は、小さいタンパク質リガンドに対して高い親和性を有するモノボデ
ィを生成することであった。staphylococcalのプロテインG(本
明細書において以降はプロテインGと呼ぶ)のHELおよびB1ドメインをリガ
ンドとして用いた。プロテインGは、小さく(56アミノ酸)そして高度に安定
である(Minor&Kim,1994;Smithら、1994)。その構造
は、4つのβシート鎖に対してパックされたヘリックスであることが、NMR分
光光度計(Gronenbornら、1991)によって、決定された。得られ
たFnAb−プロテインG複合体(約150残基)は、直接NMR方法の十分に
範囲内で、今日までに生成された最小のタンパク質−タンパク質複合体のうちの
1つである。両方の成分のこの小さいサイズ、高い安定性および可溶性、ならび
に安定な同位体(13Cおよび15N;プロテインGについて以下を参照のこと
)で各々を標識する能力によって、この複合体は、タンパク質−タンパク質相互
作用に対するNMR研究のために理想的なモデル系になる。
【0075】
Fn3の首尾よいループ置換体(変異体D1.3−4)は、少なくとも10の
残基が、全体的な折り畳みの損失なしに変異され得ることを実証する。これに基
づいて、FGループにおける最初の残基が無作為化されているライブラリーを、
最初に構築した。BCループにおけるループ置換実験の結果が得られた後、BC
ループおよび他の部位を含む変異部位を伸ばした。
【0076】
(Fn3ファージディスプレイシステムの構築)
M13ファージに基づく発現ベクターpASM1を、以下のとおり構築した:
OmpTのシグナルペプチドをコードするオリゴヌクレオチドをFn3遺伝子の
5’末端でクローニングした;M13pIIIのC末端ドメインをコードする遺
伝子フラグメントを、PCRを用いてM13mp18の野生型遺伝子III遺伝
子から調製し(Coreyら、1993)、そしてこのフラグメントをOmpT
−Fn3遺伝子の3’末端に挿入した;スペーサー配列をFn3とpIIIとの
間に挿入した。得られたフラグメント(OmpT−Fn3−pIII)をM13
mp18のマルチクローニング部位にクローニングした。ここでこの融合遺伝子
は、lacプロモーターの制御下である。このシステムは、Fn3−pIII融
合タンパク質ならびに野生型pIIIタンパク質を生成する。野生型pIIIの
同時発現は、融合pIIIタンパク質の数を減らし、これによってファージの感
染性を増大することが期待される(Coreyら、1993)(pIIIの5つ
のコピーが、ファージ粒子に存在する)。さらに、より少数の融合pIIIタン
パク質が、緊密に結合するタンパク質を選択するのに有利であり得る。なぜなら
、マルチクローニング部位に起因するキレート化効果は、融合pIIIの5つ全
てのコピーの効果よりも小さいはずであるからである(Bassら、1990)
。このシステムは、セリンプロテアーゼトリプシンを首尾よく提示した(Cor
eyら、1993)。ファージ粒子を第二ポリエチレングリコール沈殿および酸
沈殿によって精製した以外は、標準的な方法(Sambrookら、1989)
に従って、E.coli K91kan(SmithおよびScott,199
3)を用いてファージを生成して精製した。
【0077】
融合ファージ上でのFn3の首尾よい提示は、フィブロネクチンに対するAb
(Sigma)を用いてELISAによって確認した。これによって、このシス
テムが、このシステムを用いてライブラリーを構築するために適していることが
示される。
【0078】
fUSE5を用いる別のシステム(Parmley&Smith,1988)
がまた用いられ得る。Fn3遺伝子を、Fn3遺伝子PCRの5’末端および3
’末端に導入されたSfiI制限部位を用いてfUSE5に挿入する。このシス
テムは、ファージの表面上で融合pIIIタンパク質のみ(5コピーまで)しか
提示しない。ファージは、記載のように(Smith&Scott,1993)
、生成され、そして精製される。このシステムは、多くのタンパク質を提示する
ために用いられており、そして強力である。fUSE5の利点は、毒性が低いこ
とである。これは、宿主において複製形態(RF)のコピー数が低いことに起因
する。これによって、次に、ライブラリー構築のために十分な量のRFを調製す
ることが困難になる(SmithおよびScott,1993)。
【0079】
(ライブラリーの構築)
最初のライブラリーは、M13ファージの表面において提示されたFnドメイ
ンから構築された。ここで、FGループにおける7つの残基(77〜83)(図
4D)を無作為化した。縮重したヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドの
使用によって無作為化を達成する。二本鎖オリゴヌクレオチドを、一本の鎖が変
異部位で(NNK)(NNG)配列を有すること以外は、遺伝子合成(上記参
照)についてと同じプロトコールによって調製した。ここでは、Nは、A、T、
GおよびCの等モル混合物に相当し、そしてKは、GおよびTの等モル混合物に
相当する。残基83の(NNG)コドンは、SacI制限部位(図2)を保存す
るために必要であった。この(NNK)コドンは、20のアミノ酸全てをコード
するが、NNGコドンは14をコードする。従って、このライブラリーは、約1
の独立した配列を含んでいた。このライブラリーは、二本鎖ヌクレオチドを
野生型ファージベクターであるpASM1に連結すること、およびエレクトロポ
レーションを用いてE.coli XL1ブルー(Stratagene)をト
ランスフェクトすることによって構築された。XL1ブルーは、lacI表現
型を有し、従ってlac誘導物質の非存在においてFn3−pIII融合タンパ
ク質の発現を抑制する。毒性のFn3−pIIIクローンに対する選択を回避す
るために最初のライブラリーをこの方法で増殖させた。宿主としてK91kan
を有するファージを増殖することによって、無作為化されたFn3−pIII融
合タンパク質を提示するライブラリーを調製した。K91kanは、lacI
を有さないので、融合タンパク質の生成を抑制しない。BCループ(残基26−
20)が無作為化された別のライブラリーがまた生成される。
【0080】
(提示されたモノボディの選択)
Fn3ファージライブラリーのスクリーニングをバイオパンニングプロトコー
ルを用いて実施した(Smith&Scott,1993);リガンドをビオチ
ン化して強力なビオチン−ストレプトアビジン相互作用を用いてストレプトアビ
ジンでコートしたディッシュ上にリガンドを固定した。実験は室温で実施した(
約22℃)。ライブラリーからのファージの最初の回収のために、10μgのビ
オチン化リガンドをストレプトアビジンでコートしたポリスチレンのディッシュ
(35mm,Falcon 1008)上に固定し、次いでファージ溶液(約1
11pfu(プラーク形成単位)を含有)を添加した。適切な緩衝液(代表的
には、TBST、Tris−HCl(50mM,pH7.5)、NaCl(15
0mM)およびTween20(0.5%))でこのディッシュを洗浄した後、
結合したファージを以下の条件の1つまたは組み合わせによって溶出した:低p
H、遊離のリガンドの添加、尿素(6Mまで)、そして、抗プロテインGモノボ
ディの場合、トロンビンによるプロテインG−ビオチンリンカーの切断。宿主と
してK91kanを用いる標準的なプロトコール(Sambrookら、198
9)を用いて、回収されたファージを増幅した。選択プロセスを、3〜5回反復
して陽性のクローンを濃縮した。二回目から、リガンドの量を徐々に減少させ(
〜約1μgまで)、そしてビオチニル化リガンドを、ディッシュへ移す前に、フ
ァージ溶液と混合した(G.P.Smith,私信)。最終回の後、10〜20
のクローンをピックアップし、そしてそれらのDNA配列を決定する。このクロ
ーンのリガンド親和性をファージELISA方法によって最初に測定した(以下
参照)。
【0081】
リガンドに対するFn3フレームワークの潜在的な結合(バックグラウンド結
合)を抑制するため、野生型Fn3を緩衝液中の競合物として添加し得る。さら
に、関連のないタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン、チトクロムcおよび
RNaseA)を、高度に特異的なモノボディを選択するための競合物として使
用し得る。
【0082】
(結合アッセイ)
ファージ表面上のモノボディの結合親和性は、ファージELISA技術を用い
て半定量的に特徴付けられる(Liら、1995)。マイクロタイタープレート
(Nunc)のウェルを、リガンドタンパク質(またはストレプトアビジンその
後のビオチン化リガンドの結合によって)でコートし、そしてBlotto溶液
(Pierce)でブロックする。単一プラーク(M13)/コロニー(fUS
E5)に由来する精製ファージ(約1010pfu)を、各ウェルに添加し、そ
して4℃で一晩インキュベートする。適切な緩衝液でのウェルの洗浄後(上記参
照)、抗M13Ab(ウサギ、Sigma)および抗ウサギIgペルオキシダー
ゼ結合体(Pierce)を用いて、または抗M13Ab−ペルオキシダーゼ結
合体(Pharmacia)を用いて、標準的なELISAプロトコールによっ
て、結合したファージを検出する。TMB(3,3’,5,5’−テトラメチル
ベンジジン,Pierce)を用いて、比色アッセイを実施する。免疫グロブリ
ンに対するプロテインGの高い親和性は、特別な問題を呈す;Abは、検出にお
いて用いられ得ない。従って、抗プロテインGモノボディを検出するため、融合
ファージをウェル中に固定し、次いで、ビオチン化プロテインG、続いてストレ
プトアビジンペルオキシダーゼ結合体を用いた検出によって結合を測定する。
【0083】
(可溶性モノボディの生成)
ファージELISAを用いる変異Fn3の予備的な特徴付けの後、変異体遺伝
子を発現ベクターpEW1にサブクローニングする。変異タンパク質をHis・
tag融合タンパク質として生成して、精製しそしてそのコンフォメーション、
安定性、およびリガンド親和性を特徴付ける。
【0084】
(III.Fn3足場の安定性の増大)
タンパク質の「さらに高い安定性」の定義は、タンパク質がさらに高温(熱分
解の場合)での、およびさらに高濃度の変性化学試薬(例えば、塩酸グアニジン
)の存在下での機能に必要な3次元構造を保持する能力である。このタイプの「
安定性」は、一般に「コンフォメーション的な(立体配座的な)安定性」と呼ば
れる。コンフォメーション的な安定性は、タンパク質分解性変性(すなわち、身
体中のタンパク質の崩壊)に対する耐性に関連することが示されている(Kam
tekarら、1993)。
【0085】
コンフォメーション的な安定性を改善することは、タンパク質操作の主要な目
的である。ここで、変異は、フィブロネクチンIII型ドメイン(Fn3)の安
定性を増強する本発明者らによって開発された。本発明者らは、Fn3が人工的
な結合タンパク質を操作するための足場として用いられる技術を開発した(Ko
ideら、1998)。Fn3の表面ループ領域における多くの残基はFn3分
子の全体的構造を破壊することなく変異され得ること、および新規の結合機能を
有するFn3の改変体はコンビナトリアルライブラリースクリーニングを用いて
操作され得ることが示されている(Koideら、1998)。本発明者らは、
Fn3は優れた足場であるが、多数の変異体を含むFn3改変体は、野生型Fn
3タンパク質に比べて、化学的変性に対して不安定であることを見出した(Ko
ideら、1998)。従って、変異した位置の数が、新しい結合機能を操作す
るために変異される場合、このようなFn3改変体の安定性はさらに減少し、最
終的にわずかに安定なタンパク質をもたらす。人工的な結合タンパク質は、その
3次元構造が機能的であるように維持しなければならないので、安定性は、この
足場に導入され得る変異の数を制限する。従って、安定性を増大するFn3足場
の改変は、有用である。すなわち、その改変によって、さらによい機能のために
さらに変異を導入することが可能になり、そしてさらに広い範囲の適用において
Fn3に基づいて操作されたタンパク質を用いることが可能になる。
【0086】
本発明者らは、野生型Fn3が中性のpHよりも酸性のpHでさらに安定であ
ることを見出した(Koideら、1998)。Fn3安定性のpH依存性は、
図18で特徴付けられる。このpH依存性曲線は、pH4付近で見かけの遷移中
点を有する(図18)。これらの結果は、Fn3おける不安定化相互作用の同定
および除去によって、中性のpHでのFn3の安定性を改善することが可能であ
ることを示唆する。操作されたFn3のほとんどの適用(例えば、診断、治療、
および触媒)は、中性付近のpHで用いられると予期され、従って中性のpHで
安定性を改善することが重要であることに注目すべきである。他の研究者らによ
る研究によって、表面静電特性の至適化が、タンパク質安定性における実質的な
増大を導きうることが実証された(Perlら、2000,Spectorら、
1999、Loladzeら、1999,Grimsleyら、1999)。
【0087】
Fn3安定性のpH依存性は、4付近のpKを有するアミノ酸が、観察され
た遷移に関与していることを示唆する。アスパラギン酸(Asp)およびグルタ
ミン酸(Glu)のカルボキシル基は、この範囲のpKを有する(Creig
hton,T.E.1993)。カルボキシル基がタンパク質中で望ましくない
(すなわち、不安定化する)相互作用を有する場合、そのpKは、その標準的
な落ち着いた値からより高値にシフトする(YangおよびHonig 199
2)。従って、以下に示すように、異常なpKを有するカルボキシル基を同定
するため、核磁気共鳴(NMR)分光光度計を用いて、Fn3中の全てのカルボ
キシル基のpK値を決定した。
【0088】
第一に、各AspおよびGlu残基のカルボキシル炭素の13C共鳴を割り当
てた(図19)。次に、これらの群について13C共鳴のpH滴定を実施した(
図20)。これらの残基についてのpKを表3に列挙する。
【0089】
【表3】

【0090】
これらの結果は、Asp7および23、ならびにGlu9が、その落ち着いたp
(約4.0)に関して上方に偏向したpKを有していることを示す。この
ことは、これらの残基が望ましくない相互作用に関与していることを示す。対照
的に、他のAsp残基およびGlu残基は、それぞれの落ち着いた値に近いpK
を有する。このことは、これらの残基のカルボキシル基がFn3の安定性に有
意に寄与しないことを示す。
【0091】
Fn3の3次元構造において(Mainら、1992)、Asp7および23
、ならびにGlu9は、表面上にパッチを形成し(図21)、ここでAsp7は
このパッチの中央に位置する。これらの負に荷電した残基の空間的近接によって
、これらの残基がFn3において好ましくない相互作用を有する理由が説明され
る。これらの残基がプロトン化および中性化される低いpHでは、好ましくない
相互作用はほとんど緩和されることが期待される。同時に、この構造は、中性の
pHでのFn3の安定性が、これらの3つの残基の間の静電的反発力が除去され
る場合、改善され得ることを示唆する。Asp7は、3つの残基のなかの中心に
位置するので、それはAsp7を変異することが決定された。2つの変異体、D
7NおよびD7K(すなわち、アミノ酸残基数7のアスパラギン酸を、それぞれ
アスパラギン残基またはリジン残基で置換したもの)を調製した。前者は、事実
上同じサイズの中性の残基で負の電荷を置換している。後者は残基7に正の電荷
を配置している。
【0092】
変異タンパク質の安定性の程度を温度および化学の変性測定において特徴付け
た。熱変性測定において、Fn3タンパク質の変性を、227nmの波長で環状
二色性分光光度計を用いてモニターした。全てのタンパク質は、協同的遷移を受
けた(図22)。遷移曲線から、野生型、D7NおよびD7Kについての遷移の
中点(T)は、0.1M塩化ナトリウムおよび6.2M尿素を含有する0.0
2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中で、62℃、69℃および70℃
であることが決定された。従って、この変異は、野生型Fn3のTmを7〜8℃
上昇させた。
【0093】
Fn3タンパク質の化学的変性を、Fn3の単一Trp残基からの蛍光発光を
用いてモニタリングした(図23)。グアニジンHClの非存在下におけるアン
フォールディング(unfolging)の自由エネルギー(ΔG)を、野生
型、D7NおよびD7Kについてそれぞれ、7.4、8.1および8.0kca
l/molと決定した(より大きいΔGがより高い安定性を示す)。再度、こ
れら2つの変異が、野生型タンパク質よりも安定であることを見出した。
【0094】
これらの結果は、表面上の点変異が、Fn3の安定性を有意に増加させ得るこ
とを示している。これらの変異は表面上に存在するので、それらは、Fn3の構
造を最小限にしか変更させず、そしてそれらは、他の操作されたFn3タンパク
質に容易に導入され得る。さらに、Glu9および/またはAsp23における
変異もまた、Fn3の安定性を増加させる。さらに、これら3つの残基の1つ以
上における変異は、組み合わされ得る。
【0095】
従って、Fn3は、単量体免疫グロブリン様骨格の4つ目の例であり、この骨
格は、結合タンパク質を操作するために使用され得る。新規の結合タンパク質の
首尾よい選択はまた、ミニボディ、テンダミスタット(tendamistat
)および「ラクダ化」免疫グロブリンVHドメイン骨格に基づいている(Mar
tinら、1994;Davies & Riechmann,1995;Mc
Connell & Hoess,1995)。Fn3骨格は、これらのシステ
ムに対して有益である。Bianchiらは、ミニボディの安定性が2.5kc
al/molであり、Ubi4−Kの安定性よりも有意に低いことを報告してい
る。ミニボディの詳細な構造特性は、今のところ報告されていない。テンダミス
タットおよびVHドメインは、ジスルフィド結合を含み、従って、正確に折り畳
まれたタンパク質の調製は、困難であり得る。DaviesおよびRiechm
annは、それらのラクダ化VHドメインの収率が培地1リットルあたり1mg
未満であることを報告した(Davies & Riechmann,1996
)。
【0096】
従って、Fn3のフレームワークは、分子認識のための骨格として使用され得
る。その小さいサイズ、安定性および十分に特徴付けられた構造は、Fn3を魅
力的なシステムにしている。リガンド結合に関与する、広範な種々の天然タンパ
ク質におけるFn3の遍在的な存在を考慮して、標的の異なるクラスに対して、
Fn3に基づく結合タンパク質を操作し得る。
【0097】
以下の実施例は、例示することを意図するが、本発明を限定することを意図し
ない。
【0098】
(実施例I)
(Fn3遺伝子の構築)
フィブロネクチンの10番目のFn3(図1)についての合成遺伝子を、ヒト
フィブロネクチンのアミノ酸残基1416〜1509(Kornblihttら
、1985)およびそれら3つの三次元構造(Mainら、1992)に基づい
て設計した。この遺伝子を、変異誘発のために都合のよい制限部位を含むように
操作し、そして高いレベルのタンパク質発現のための、いわゆる「優先コドン」
(Gribskovら、1984)を使用した。さらに、グルタミン残基を、N
末端メチオニンの後に挿入し、しばしばNMRスペクトルを分解するN末端メチ
オニンの部分プロセシングを回避した(Smithら、1994)。化学試薬は
、分析用等級以上のものであり、そして他に記載が無ければ、Sigma Ch
emical CompanyおよびJ.T.Bakerから購入した。組換え
DNA手順を、他に記載が無ければ、「Molecular Cloning」
(Sambrookら、1989)に記載されるように行った。カスタムオリゴ
ヌクレオチドを、Operon Technologiesから購入した。制限
酵素および改変酵素は、New England Biolabsから購入した

【0099】
遺伝子を、以下の様式において構築した。最初に、遺伝子配列(図5)を、設
計した制限部位における境界を用いて、5つの部分に分けた:フラグメント1、
NdeI−PstI(オリゴヌクレオチドFN1FおよびFN1R(表2));
フラグメント2、PstI−EcoRI(FN2FおよびFN2R);フラグメ
ント3、EcoRI−SalI(FN3FおよびFN3R);フラグメント4、
SalI−SacI(FN4FおよびFN4R);フラグメント5、SacI−
BamHI(FN5FおよびFN5R)。第二に、各部分について、向かい合う
鎖をコードし、かつ約15塩基の相補的な重複を有するオリゴヌクレオチドの対
を合成した。これらのオリゴヌクレオチドを、FN1F−FN5Rと表し、表2
に示す。第三に、各対(例えば、FN1FおよびFN1R)をアニールし、そし
て一本鎖領域を、DNAポリメラーゼのKlenowフラグメントを使用して、
充填した。第四に、二本鎖オリゴヌクレオチドを、フラグメントの末端において
、関連する制限酵素で消化し、フラグメントのために使用されるものと同じ酵素
で消化されたpBlueScript SKプラスミド(Srtatagene
)にクローニングした。挿入したフラグメントのDNA配列を、Applied
Biosystems DNAシーケンサーおよび製造業者によって提供され
るジデオキシ末端プロトコルを使用するDNA配列決定によって確認した。最後
に、工程2〜4を遺伝子全体が得られるまで繰り返した。
【0100】
この遺伝子をまた、pET3aおよびpET15b(Novagen)ベクタ
ー中にクローニングした(それぞれ、pAS45およびpAS25)。プラスミ
ドのマップを図6および7に示す。これらのベクターを含むE.coli BL
21(DE3)(Novagen)は、バクテリオファージT7プロモーターの
制御下でFn3遺伝子を発現した(Studierら、1990);pAS24
は、96残基のFn3タンパク質のみを発現するが、pAS45は、ポリ−ヒス
チジンペプチド(His・タグ)を有する融合タンパク質としてFn3を発現す
る。E.coliにおける、Fn3タンパク質およびその誘導体の高い発現レベ
ルを、CBBで染色したSDS−PAGEにおいて、強力なバンドとして検出し
た。
【0101】
モノボディの結合反応は、精製した可溶性モノボディを使用する蛍光分光器に
よって定量的に特徴付けられる。
【0102】
内因性蛍光をモニタリングして、結合反応を測定した。Trp蛍光(約290
nmで励起、300〜350nmで発光)およびTyr蛍光(約260nmで励
起、約303nmで発光)を、Fn3変異溶液(≦100μM)をリガンド溶液
で滴定しながら、モニタリングした。リガンドが蛍光(例えば、フルオレセイン
)である場合、リガンドからの蛍光を使用し得る。この反応のKを、二分子結
合式の非線形最小自乗フィッティングによって決定した。
【0103】
内因性蛍光を使用して結合反応をモニタリングすることが出来ない場合、モノ
ボディを、フルオレセイン−NHS(Pierce)で標識化し、そして蛍光分
極を使用して結合反応をモニタリングする(Burkeら、1996)。
【0104】
(実施例II)
(Fn3遺伝子において制限部位を含むための改変)
制限部位を、アミノ酸配列Fn3を変化することなく合成Fn3遺伝子に組み
込んだ。遺伝子構築を、長いオリゴヌクレオチド(>60塩基)を合成すること
なく完了し得、そして2つのループ領域を、カセット変異誘発方法(すなわち、
変異を含む別の合成フラグメントでフラグメントをスワッピングする)によって
変異させ得る(無作為化を含む)ように制限部位の位置を選択した。さらに、フ
ァージディスプレイのために、ほとんどの部位がベクター中で特有であるように
、制限部位を選択した。特有な制限部位によって、大きな配列空間を供給するた
めに、すでに選択されたモノボディクローンを組換えることが可能になった。
【0105】
(実施例III)
(M13ファージディスプレイライブラリーの構築)
ファージディスプレイのためのベクターであるpAS38(そのマップについ
ては、図8参照)を、以下のように構築した。OmpTのシグナルペプチドをコ
ードするpET12aのXbaI−BamHIフラグメントを、Fn3遺伝子の
5’末端にクローニングした。Fn3遺伝子のC末端領域(FN5FおよびFN
5Rオリゴヌクレオチド由来、表2参照)を、FN5FおよびFN5R’オリゴ
ヌクレオチド(表2)からなる新規のフラグメントで置き換えた。このオリゴヌ
クレオチドは、バクテリオファージM13のpIIIタンパク質との融合タンパ
ク質を作製するために、MluI部位およびリンカー配列を導入する。M13
pIIIのC末端ドメインをコードする遺伝子フラグメントを、PCRを使用し
てM13mp18の野生型遺伝子IIIから調製し(Coreyら、1993)
、そしてこのフラグメントをMluI部位およびHindIII部位を使用して
、OmpT−Fn3融合遺伝子の3’末端に挿入した。
【0106】
ファージ分子が二次ポリエチレングリコール沈殿によって精製されるのを除い
ては、標準的な方法(Sambrookら、1989)に従って、ヘルパーファ
ージ(M13K07)を使用して、ファージを生成および精製した。融合ファー
ジ上のFn3の首尾よいディスプレイを、フィブロネクチンに対する抗体(Si
gma)およびカスタム抗−Fn3抗体(Cocalico Biologic
als,PA,USA)を使用するELISAによって確認した(Harlow
& Lane,1988)。
【0107】
(実施例IV)
(ABループにおけるループ多様化(variegation)を含むライブ
ラリー)
ABループにおける多様化を有する核酸ファージディスプレイライブラリーを
、以下の方法によって調製した。無作為化を、縮退したヌクレオチド配列を含む
オリゴヌクレオチドを使用することによって行った。多様化されるべき残基を、
Fn3のX線構造およびNMR構造(それぞれ、タンパク質データバンク登録番
号、1FNAおよび1TTF)を試験することによって同定した。多様化した残
基についてNNK(本明細書中で、NおよびKは、それぞれ、A、T、Gおよび
Cの等モル混合物、ならびにGおよびTの等モル混合物を示す)を含むオリゴヌ
クレオチドを合成した(例えば、表2における、オリゴヌクレオチドBC3、F
G2、FG3およびFG4を参照のこと)。NNK混合物は、20個のアミノ酸
全ておよび1つの停止コドン(TAG)をコードする。しかし、TAGは、E.
coli XL−1 blueにおいて抑制される。pAS38の一本鎖DNA
(およびその誘導体)を、標準的なプロトコルを使用して調製した(Sambr
ookら、1989)。
【0108】
部位特異的変異誘発を、Muta−Geneキット(BioRad)を使用す
る、公開された方法に従って行った(例えば、Kunkel、1985を参照の
こと)。ライブラリーを、BTXエレクトロセルマニピュレータECM 395
1mmギャップキュベットを使用して、1μgのプラスミドDNAを用いる、
E.coli XL−1 Blueエレクトロポーションコンピテント細胞(2
00μl;Stratagene)のエレクトロポーションによって構築した。
形質転換した細胞の一部を、アンピシリン(100μg/ml)を含むLB寒天
プレート上にプレートして、形質転換の効率を決定した。代表的には、3×10
の形質転換体を、1μgのDNAにより得た。従って、ライブラリーは、10
〜10の独立したクローンを含む。ファージミド粒子を上記のように調製し
た。
【0109】
(実施例V)
(BC、CD、DE、EFまたはFGループにおけるループ多様化)
BCループにおいて5つの多様化残基(残基番号26〜30)を有する核酸フ
ァージディスプレイライブラリー、およびFGループにおいて7つの多様化残基
(残基番号78〜84)を有する核酸ファージディスプレイライブラリーを、上
記実施例IVにおいて記載される方法を使用して調製した。CD、DE、EFル
ープにおいて多様化を有する他の核酸ファージディスプレイライブラリーを、類
似の方法によって調整し得る。
【0110】
(実施例VI)
(FGおよびBCループにおけるループ多様化)
FGループにおいて7つの多様化残基(残基番号78〜84)を有し、そして
BCループにおいて5つの多様化残基(残基番号26〜30)を有する、核酸フ
ァージディスプレイライブラリーを調製した。BCループにおける多様化を、表
1において記載されるBC3オリゴヌクレオチドを使用して、部位特異的変異誘
発によって調製した(Kunkelら)。FGループにおける多様化を、出発材
料としてBCループライブラリーを使用して、部位特異的変異誘発を使用して導
入し、それによって、BCおよびFGループの両方における多様化を含むライブ
ラリーを生じた。オリゴヌクレオチドFG2は、多様化残基78〜84を有し、
オリゴヌクレオチドFG4は、多様化残基77〜81および残基82〜84の欠
失を有する。
【0111】
FGループにおいて5つの多様化残基(残基78〜84)、FGループにおい
て3つの残基欠失(残基82〜84)、およびBCループにおいて5つの多様化
残基(残基番号26〜30)を有する核酸ファージディスプレイライブラリーを
、調製した。より短いFGループを、FGループの可動性を減少する試みにおい
て作製した;このループは、Mainら(1992)のNMR研究により、Fn
3において高度に可動性であることが示された。高度に可動性のループは、高い
親和性を有する結合部位を形成するのに不利であり得る(大きなエントロピー損
失がリガンド結合において予測される。なぜなら、可動性ループがより剛性でな
ければならないからである)。さらに、(ヒトに加えて)他のFn3ドメインは
、より短いFGループを有する(配列整列について、Dickinsonら(1
994)における図12を参照のこと)。
【0112】
無作為化を、縮退したヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドを使用する
ことによって行った(BCループを多様化するためのオリゴヌクレオチドBC3
、ならびにFGループを多様化するためのオリゴヌクレオチドFG2およびFG
4)。
【0113】
部位特異的変異誘発を、公開された方法に従って行った(例えば、Kunke
l、1985を参照のこと)。ライブラリーを、E.coli XL−1 Bl
ue(Stratagene)を電気形質転換することによって構築した。代表
的には、ライブラリーは、10〜10の独立したクローンを含む。ライブラ
リー2は、BCループにおいて5つの多様化残基、およびFGループにおいて7
つの多様化残基を含む。ライブラリー4は、BCおよびFGループの各々におい
て5つの多様化残基を含み、そしてFGループの長さは、3残基だけ短い。
【0114】
(実施例VII)
(ループ多様化を用いて構築されたfdファージディスプレイライブラリー)
ファージディスプレイライブラリーを、遺伝子ベクターとしてfdファージを
使用して構築した。Fn3遺伝子を、PCRを使用してFn3遺伝子の5’末端
および3’末端に導入されたSfiI制限部位を使用して、fUSE5に挿入し
た(Parmley & Smith,1988)。このファージの発現は、f
dファージの表面上の融合pIIIタンパク質のディスプレイを生じる。Fn3
ループにおける多様化を、本明細書上記のような部位特異的変異誘発を使用する
か、またはM13ファージにおいてfUSE5ベクター中に構築されたFn3ラ
イブラリーをサブクローニングすることによって、導入した。
【0115】
(実施例VIII)
(他のファージディスプレイライブラリー)
T7ファージライブラリー(Novagen,Madison,WI)および
細菌線毛発現システム(Invitrogen)もまた、Fn3遺伝子を発現す
るのに有用である。
【0116】
(実施例IX)
(高分子構造に結合するポリペプチドの単離)
ファージディスプレイしたモノボディの選択を、Barbasおよび共同研究
者のプロトコルに従って行った(Rosenblum & Barbas,19
95)。簡潔には、炭酸ナトリウム緩衝液(100mM、pH8.5)中の約1
μgの標的分子(「抗原」)を、4℃にて気密容器内で一晩インキュベートする
ことによって、マイクロタイタープレート(Maxisorp,Nunc)のウ
ェル中に固定化した。この溶液を除去した後、次いでウェルを、37℃にて1時
間プレートをインキュベートすることによって、TBS中のBSAの3%溶液(
Sigma,Fraction V)でブロックした。約1012のファージミ
ドのコロニー形成ユニット(cfu)を含むファージミドライブラリー溶液(5
0μl)を、37℃にて1時間各ウェルに吸収させた。次いで、このウェルを、
適切な緩衝液(代表的には、TBST、50mM Tris−HCl(pH7.
5)、150mM NaClおよび0.5% Tween20)で3回(最初の
ラウウンドに1回)洗浄した。結合したファージを、酸性溶液(代表的には、0
.1M グリシン−HCl、pH2.2;50μl)によって溶出し、回収した
ファージを、3μlのTris溶液を用いて直ちに中和した。あるいは、結合し
たファージを、抗原(1〜10μM)を含む50μlのTBSと共にウェルをイ
ンキュベートすることによって溶出した。回収したファージを、宿主としてXL
1 Blue細胞を用いる標準的なプロトコルを使用して増幅した(Samb
rookら)。選択プロセスを、5〜6回繰返して、ポジティブなクローンを濃
縮した。最終ラウンドの後、個々のクローンを拾い上げ、それらの結合親和性お
よびDNA配列を決定した。
【0117】
ファージ表面におけるモノボディの結合親和性を、ファージELISA技術(
Liら,1995)を使用して特徴付けた。マイクロタイタープレート(Nun
c)のウェルを、抗原で被覆し、そしてBSAでブロックした。単一のコロニー
起源の精製したファージ(10〜1011cfu)を、各ウェルに添加し、3
7℃で2時間インキュベートした。適切な緩衝液(上記を参照のこと)でウェル
を洗浄した後に、結合したファージを、抗M13抗体(ウサギ、Sigma)お
よび抗ウサギIg−ペルオキシダーゼ結合体(Pierce)を使用する標準的
なELISAプロトコルによって検出した。比色分析アッセイを、Turbo−
TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン,Pierce)を基質
として使用して実施した。
【0118】
このファージ表面におけるモノボディの結合親和性を、競合的ELISA法(
Djavadi−Ohanianceら,1996)を使用してさらに特徴付け
た。この実験において、ファージELISAを、上記と同じ様式で実施した。但
し、このファージ溶液は、様々な濃度でリガンドを含んでいる。このファージ溶
液を、マイクロタイタープレートウェル中で固定化したリガンドの結合の前に、
4℃で、1時間インキュベートした。ファージディスプレイされたモノボディの
親和性を、遊離リガンド濃度が増加するにつれて、ELISAシグナルが減少す
ることによって評価する。
【0119】
ファージELISAを使用する、ファージの表面にディスプレイされたモノボ
ディの主要な特徴づけ後に、陽性クローンについての遺伝子を、発現ベクターp
AS45にサブクローン化した。E.coli BL21(DE3)(Nova
gen)を、発現ベクター(pAS45およびその誘導体)で形質転換した。細
胞を、M9最小培地およびアンピシリン(200μg/ml)を含有する、Ba
ctotryptone(Difco)を補充したM9培地において増殖させた
。同位体標識のために、15N NHClおよび/または13Cグルコースで
非標識成分を置換した。適切な同位体をIsotec and Cambrid
ge Isotope Labsから購入した。2リットルバッフルフラスコ中
の500mlの培地に、10mlの一晩の培養物を播種し、そして約140rp
m、37℃で攪拌した。OD(600nm)が約1.0に達したときに、IPT
Gを、最終濃度1mMで添加し、タンパク質発現を誘導した。この細胞を、IP
TG添加して3時間後に、遠心分離によって収集し、そして使用するまで−70
℃で凍結させておいた。
【0120】
Fn3およびヒスチジンタグを有するモノボディを、以下のように精製した。
細胞を、1mMのフッ化フェニルメチルスルホニルを含有する50mM Tri
s(pH7.6)の5ml/(g細胞)中に懸濁した。HEL(Sigma,3
×結晶化)を、最終濃度0.5mg/mlで添加した。この溶液を37℃で30
分間インキュベートした後に、これを、細胞破壊を生じるように氷上で30秒間
で3回、超音波処理した。細胞残屑を、SS−34ローターを使用するSorv
al RC−2B遠心分離機中で15,000rpmの遠心分離によって除去し
た。濃縮した塩化ナトリウムをこの溶液に添加し、最終濃度0.5Mとした。次
いで、この溶液を、塩化ニッケル(0.1M,1ml)をプレロードした1ml
のHisTrapTMキレート化カラム(Pharmacia)にアプライし、
そして0.5M塩化ナトリウムを含有するTris緩衝液(50mM,pH8.
0)中で平衡化した。この緩衝液でカラムを洗浄後、この結合したタンパク質を
0.5Mイミダゾールを含有するTris緩衝液(50mM,pH8.0)で溶
出した。このヒスチジンタグ部分を、必要である場合、この融合タンパク質を、
Novagen(Madison,WI)によって提供されたプロトコルを使用
してトロンビンで処理することによって、切り離した。Fn3を、ヒスチジンタ
グペプチドおよびトロンビンから分離し、酢酸ナトリウム緩衝液(20mM,p
H5.0)中の塩化ナトリウム(0〜0.5M)の線形勾配を使用するReso
urces(登録商標)カラム(Pharmacia)によって分離した。
【0121】
少量の可溶性モノボディを、以下のように調製した。pAS38誘導体(Fn
3−pIII融合タンパク質をコードするプラスミド)を含むXL−1 Blu
e細胞を、OD(600nm)が約1.0に到達するまで激しく振盪しながら3
7℃にてLB培地で増殖した;IPTGを、最終濃度が1mMとなるまでこの培
養物に添加し、そしてこの細胞を、37℃でさらに一晩増殖した。細胞を、遠心
分離によってこの培地から取り出し、そしてこの上清を、リガンドで被覆したマ
イクロタイターウェルに適用した。pAS38およびその誘導体を含むXL−l
Blue細胞は、FN3−pIII融合タンパク質を発現するが、可溶性タン
パク質はまた、E.coliのタンパク質分解活性によって、Fn3領域とpI
II領域との間のリンカーの切断に起因して産生される(Rosenblum
& Barbas,1995)。このリガンドに対するモノボディの結合を、F
n3に対するカスタム抗体(Cocalico Biologicals,Re
amstown,PAから購入した)を使用して標準的なELISAプロトコル
によって調べた。標準的な浸透圧ショック法を使用してE.coli細胞のペリ
プラスム画分から得られた可溶性モノボディをまた、使用した。
【0122】
(実施例X)
(ユビキチン結合モノボディ)
ユビキチンは、真核生物の分解経路に関与する小さな(76残基)タンパク質
である。これは、単一ドメインの球状タンパク質である。酵母ユビキチンを、S
igma Chemical Companyから購入し、そしてさらなる精製
をすることなしに使用した。
【0123】
上記の実施例VIに記載のライブラリー2およびライブラリー4を使用して、
ユビキチン結合モノボディを選択した。ユビキチン(50μl炭酸水素ナトリウ
ム緩衝液(100mM、pH8.5)中に1μg)を、マイクロタイタープレー
ト中のウェルの中に固定化し、その後BSA(TBS中3%)でブロックした。
上記のように、パニングを実施した。最初の2ラウンドにおいて、1μgのユビ
キチンを、ウェル毎に固定し、そして結合したファージを酸性溶液で溶出した。
第3から第6のラウンドまで、0.1μgのユビキチンをウェル毎に固定し、そ
してこのファージを、酸性溶液または10μMのユビキチン含有するTBSのい
ずれかを使用することによって溶出した。
【0124】
選択されたクローンの結合を、ポリクローナル様式で(すなわち、個々のクロ
ーンを単離する前に)最初に選択した。全てのライブラリーから選択されたクロ
ーンは、ユビキチンに対する有意な結合を示した。これらの結果を、図9に示す
。このクローンの固定化されたユビキチンに対する結合を、競合ELISA実験
において30μM未満の可溶性ユビキチンによってほとんど完全に阻害した(図
10を参照のこと)。ユビキチン結合モノボディのBCループおよびFGループ
の配列を、表4に示す。
【0125】
【表4】

【0126】
411クローン(これは、最も富化されたクローンである)を、ファージEL
ISAを使用して特徴付けた。この411クローンは、溶液中の約10μMのユ
ビキチンの存在下で、選択的な結合および結合の阻害を示した(図11)。
【0127】
(実施例XI)
(低分子の固定化のための方法)
標的分子を、本明細書中の以下に記載のように、マイクロタイタープレート(
Maxisorp,Nunc)のウェル中に固定化し、そしてこのウェルをBS
Aでブロックした。以下に記載のような、キャリアタンパク質の使用に加え、ビ
オチンと標的分子の結合体を、作製し得る。次いで、ビオチン化リガンドを、ス
トレプトアビジンで被覆したマイクロタイタープレートウェルに固定化し得る。
【0128】
以下に記載のような、キャリアタンパク質の使用に加え、標的分子とビオチン
(Pierce)との結合体を作製し得、そしてビオチン化リガンドを、ストレ
プトアビジンで被覆したマイクロタイタープレートウェルに固定化し得る(Sm
ith and Scott,1993)。
【0129】
低分子は、キャリアタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA、Si
gma))と結合し得、そして、マイクロタイタープレートウェルに受動的に吸
着される。あるいは、化学結合体化の方法をまた、使用し得る。さらに、マイク
ロタイタープレート以外の固相支持体を、容易に使用し得る。
【0130】
(実施例XII)
(フルオレセイン結合モノボディ)
フルオレセインを、コンビナトリアルライブラリーからの抗体選択のための標
的として使用し得た(Barbasら、1992)。NHS−フルオレセインを
、Pierceから入手し、そして、BSA(Sigma)との結合体を調製す
る際に、製造者指示書に従って使用した。2つの型のフルオレセイン−BSA結
合体を、おおよその分子量比(17(フルオレセイン)対1(BSA))で調製
した。
【0131】
この選択プロセスを、5〜6回反復し、陽性クローンを濃縮した。この実験に
おいて、このファージライブラリーを、リガンドで被覆したウェルに添加する前
に、タンパク質混合物(BSA,シトクロムC(Sigma,ウマ)およびRN
aseA(Sigma,ウシ),各々1mg/ml)と共に、室温で30分間イ
ンキュベートした。結合したファージを、酸溶出液の代わりに、10μMの可溶
性フルオレセインを含有するTBSで溶出した。最終ラウンド後に、個々のクロ
ーンを、選別し、そして結合親和性(以下を参照のこと)およびDNA配列を、
決定した。
【0132】
【表5】

【0133】
選択されたクローンの結合親和性の予備的な特徴づけを、ファージELISA
および競合ファージELISAを使用して実施した(図12(フルオレセイン−
1)および図13(フルオレセイン−2)を参照のこと)。試験された4つのク
ローンは、リガンド被覆ウェルに対する特異的な結合を示し、そしてこの結合反
応は、可溶性フルオレセインによって阻害される(図13を参照のこと)。
【0134】
(実施例XIII)
(ジゴキシゲニン結合モノボディ)
ジゴキシゲニン−3−O−メチル−カルボニル−ε−アミノカプロン酸−NH
S(Boenringer Mannheim)を使用して、ジゴキシゲニン−
BSA結合体を調製する。このカップリング反応を、製造者指示書に従って実施
する。このジゴキシゲニン−BSA結合体を、マイクロタイタープレートのウェ
ルにおいて固定化し、そしてパニングのために使用する。パニングを、5〜6回
反復し、結合クローンを富化する。ジゴキシゲニンが、水溶液にはやや溶けにく
いので、結合したファージを、酸性溶液を使用してウェルから溶出する。実施例
XIVを参照のこと。
【0135】
(実施例XIV)
(TSAC(遷移状態アナログ化合物)結合モノボディ)
カーボネート加水分解モノボディを、以下のように選択する。カーボネート加
水分解についての遷移状態アナログ(4−ニトロフェニルホスホネート)を、以
前に記載されたように(JacobsおよびSchultz,1987)Arb
uzov反応によって合成する。次いで、このホスホネートを、カルボジイミド
を使用してキャリアタンパク質(BSA)とカップリングし、続いて徹底的な透
析を行う(JacobsおよびSchultz,1987)。ハプテン−BSA
結合体を、マイクロタイタープレートのウェル中に固定し、そしてモノボディ選
択を上記のように行う。選択されたモノボディの触媒活性を、基質として4−ニ
トロフェニルカーボネートを使用して試験する。
【0136】
触媒的モノボディを生成するために有用な他のハプテンは、H.Suzuki
(1994)およびN.R.Thomas(1994)に要約される。
【0137】
(実施例XV)
(Fn3のNMR特徴付け、および酵母によって分泌されるFn3とE.co
liによって分泌されるFn3との比較)
核磁気共鳴(NMR)実験を、FnAbと標的分子(例えば、フルオレセイン
、ユビキチン、RNaseAおよびジゴキシゲニンの可溶性誘導体に対するモノ
ボディ)との間の接触表面を同定するために行う。次いで、この情報を、このモ
ノボディの親和性および特異性を改善するために使用する。精製したモノボディ
サンプルを、YM−3膜を備えるAmicon限外濾過セルを使用して、NMR
分光法のための適切な緩衝液中に溶解する。緩衝液を、90%HO/10%D
O(蒸留等級、Isotec)または100%DOを用いて作製する。重水
素化した化合物(例えば、アセテート)を、それらからの強力なシグナルを除去
するために使用する。
【0138】
NMR実験を、4つのRFチャネルおよびパルスフィールド勾配能力を有する
三重共鳴プローブを備えるVarian Unity INOVA600分光計
で行う。NMRスペクトルを、UNIX(登録商標)ワークステーション上で、
Felix(Molecular Simulations)、nmrPipe
、PIPP、およびCAPP(Garrettら、1991;Delaglio
ら、1995)のような処理プログラムを使用して分析する。三重共鳴実験のセ
ット(CBCA(CO)NHおよびHNCACB)を使用し、十分に確立された
ストラテジーを使用して、配列特異的共鳴の割当てを行う(Grzesiek&
Bax,1992;Wittenkind&Mueller,1993)。
【0139】
約5Åよりも近いH核間に、核オーバーハウザー効果(NOE)が観察され
、これにより、プロトン間距離の情報を入手することが可能である。一連の二重
共鳴実験および三重共鳴実験(表6;これらの技術の最近の総説については、B
ax&Grzesiek,1993およびKay,1995を参照のこと)を行
い、距離(すなわち、NOE)および二面角(Jカップリング)束縛を得る。同
位体フィルタした実験を行って、結合したリガンドの共鳴割当てを決定し、そし
てリガンド内の距離束縛およびFnAbとこのリガンドとの間の距離束縛を得る
。配列特異的共鳴の割当ておよびNOEピークの割当ての詳細は、他で詳細に記
載されている(Clore&Gronenborn,1991;Pascalら
,1994b;Metzlerら,1996)。
【0140】
【表6】

【0141】

【0142】
モノボディについての骨格のH、15Nおよび13C共鳴割当てを、この変
異体における構造的変化を評価するために、野生型Fn3の共鳴割当てと比較す
る。一旦、この変異体が全体的構造を保持することをこれらのデータが証明する
と、構造の洗練は、実験的NOEデータを使用して行われる。モノボディの構造
的差異はわずかであることが予想されるので、野生型の構造は、アミノ酸配列の
改変後の最初のモデルとして使用され得る。これらの変異は、相互作用的分子モ
デリングによって野生型構造へと導入され、次いでこの構造は、Quanta(
Molecular Simulations)のような分子モデリングプログ
ラムを使用してエネルギー最小化される。溶液の構造を、プログラムX−PLO
R(Brunger,1992)において、動力学的シュミレートアニーリング
(Nilgesら,1988)のサイクルを使用して洗練する。代表的には、5
0の構造の集合が計算される。洗練された構造の正当性を、YASAPプロトコ
ル(Nilgesら,1991)を使用して、X−PLORにおいてランダムに
生成された最初の構造から少数の構造を計算することによって確認する。モノボ
ディ−リガンド複合体の構造を、まず、分子内NOEを使用して両方の成分を個
別に洗練し、次いで分子間NOEを使用してこの2つをドッキングすることによ
って、計算する。
【0143】
例えば、フルオレセイン結合モノボディLB25.5についてのH,15
−HSQCスペクトルを、図14に示す。このスペクトルは、良好な分散を示し
(ピークが広がっている)、これはLB25.5が球状の構造に折り畳まれてい
ることを示す。さらに、このスペクトルは、野生型Fn3についてのスペクトル
と似ており、LB25.5の全体的な構造がFn3の構造と同様であることを示
す。これらの結果は、リガンド結合モノボディが、Fn3骨格の全体的な折り畳
みを変化することなく獲得され得ることを実証する。
【0144】
同位体標識したFnAbと非標識リガンドとの間に複合体を形成することによ
って、化学シフトの摂動実験を行う。化学量論的な複合体の形成後、HSQCス
ペクトルを記録する。化学シフトが核の環境に極度に感受性であるため、複合体
の形成は、通常、界面におけるアミノ酸残基の共鳴についてのかなりの化学シフ
ト変化を生じる。同位体変更したNMR実験(2D HSQCおよび3D CB
CA(CO)NH)を使用して、この複合体の標識された成分(すなわち、モノ
ボディ)において摂動された共鳴を同定する。長距離の構造変化に起因する人為
的な結果の可能性を常に考慮しなければならないが、連続的な表面上でクラスタ
ー形成した残基についての実質的な差異は、おそらく直接的な接触から生じる(
Chenら,1993;Gronenborn&Clore,1993)。
【0145】
相互作用面をマッピングするための代替的な方法は、アミド水素交換(HX)
測定を利用する。各アミドプロトンについてのHXの割合を、遊離およびリガン
ドと複合体化した15N標識したモノボディの両方について測定する。リガンド
の結合は、2つのタンパク質の間の界面におけるモノボディ残基についてのアミ
ドHXの割合を減少すると予期され、従って、結合面を同定する。この複合体に
おけるモノボディについてのHXの割合を、この複合体をDOへと移した後に
、種々の時間にわたってHXを生じさせることによって、測定する;この複合体
は、pHを低下することによって解離し、そしてアミドHXが遅い低pHでHS
QCスペクトルが記録される。Fn3は、低pHで安定かつ可溶性であり、この
実験についての必要条件を満たす。
【0146】
(実施例XVI)
(ユビキチンに特異的なFn3ディスプレー系の構築および分析)
Fn3ディスプレー系を設計および合成し、ユビキチン結合クローンを単離し
、そしてこれらのクローン中の主要なFn3変異体を生物物理学的に特徴付けた

【0147】
Fn3の遺伝子構築およびファージディスプレーを、上記の実施例IおよびI
Iのように行った。このFn3ファージpIII融合タンパク質をファージミド
ディスプレーベクターから発現させ、その間、M13ファージの他の成分(野生
型pIIIを含む)を、ヘルパーファージを使用して生成した(Bassら,1
990)。したがって、この系によって生成されるファージは、表面上に提示さ
れるFn3の1つ未満のコピーを含むはずである。ファージ上でのFn3の表面
提示を、抗Fn3抗体を使用してELISAによって検出した。Fn3−pII
I融合ベクターを含むファージのみが、この抗体と反応した。
【0148】
このファージ表面がFn3を提示することを確認した後、Fn3のファージデ
ィスプレーライブラリーを実施例IIIにおけるように構築した。ランダムな配
列をBCおよびFGループに導入した。最初のライブラリーにおいて、5残基(
77〜81)を無作為化し、そして3残基(82〜84)をFGループから欠失
させた。この欠失は、可撓性を減少し、そしてFGループの結合親和性を改善す
ることが意図された。標的分子とのより大きな接触面を提供するために、5残基
(26〜30)をまた、BCループにおいて無作為化した。従って、得られるラ
イブラリーは、BCおよびFGループの各々において5つの無作為化残基を含む
(表7)。このライブラリーは、約10の独立したクローンを含んだ。
【0149】
(ライブラリーのスクリーニング)
標的分子としてユビキチンを使用して、ライブラリーのスクリーニングを行っ
た。パニングの各回において、ユビキチンでコーティングした表面にFn3−フ
ァージを吸収させ、そして結合したファージを可溶性ユビキチンと競合的に溶出
した。回収率は、第2回目での4.3×10−7から第5回目での4.5×10
−6へと改善し、結合したクローンの富化を示唆する。5回のパニングの後、個
々のクローンのアミノ酸配列を決定した(表7)。
【0150】
(表7.富化したクローンの変化したループにおける配列)
【0151】
【表7】

【0152】
Nは、A、T、GおよびCの等モル混合物を示す;Kは、GおよびTの等モル
混合物を示す。
【0153】
Ubi4とよばれるクローンは、Fn3改変体の富化プールにおいて優勢であ
った。従って、さらなる調査をこのUbi4クローンに集中させた。Ubi4は
、BCループに4つの変異(BCループのArg30が保存された)、ならびに
FGループにおける5つの変異および3つの欠失を含む。従って、残基のうち1
3%(94のうち12)が、Ubi4において野生型の配列から変化した。
【0154】
図15は、Ubi4のファージELISA分析を示す。Ubi4ファージは、
標的分子であるユビキチンに、有意な親和性で結合し、一方、野生型Fn3ドメ
インを示すファージまたは示された分子を有さないファージは、ユビキチンに対
する検出可能な結合をほとんど示さない(図15a)。さらに、Ubi4ファー
ジは、ユビキチンコーティングを欠くコントロール表面に対する幾分か上昇した
レベルのバックグラウンド結合を示した。競合ELISA実験は、結合反応のI
50(結合の50%の阻害を生じる遊離リガンドの濃度)は、約5μMである
ことを示す(図15b)。BSA(ウシリボヌクレアーゼA)およびシトクロム
Cは、Ubi4−ユビキチン結合反応の阻害をほとんど示さず(図15c)、こ
のことは、ユビキチンへのUbi4の結合反応が特異的結合から生じることを示
す。
【0155】
(変異Fn3タンパク質の特徴付け)
発現系は、培養物1lあたり50〜100mgのFn3タンパク質を生じた。
同様のレベルのタンパク質発現は、Ubi4クローンおよび他の変異Fn3タン
パク質について観察された。
【0156】
Ubi4−Fn3は、独立性タンパク質として発現された。Ubi4の大部分
は、E.coliにおいて可溶性タンパク質として発現されたが、その溶解度は
、野生型Fn3の溶解度と比較して有意に減少していることが見出された。Ub
i4は、低いpHにおいて約20μMまで可溶性であり、中性のpHにおいてよ
り低い溶解度を有した。この溶解度は、NMR分光法またはX線結晶学を使用す
る詳細な構造的特徴付けのためにそれほど十分に高くはなかった。
【0157】
Ubi4タンパク質の溶解度を、溶解度テール、GKKGK(配列番号109
)をC末端伸長物として添加することによって改善した。Ubi4−Fn3の遺
伝子を、PCRを使用して、発現ベクターpAS45にサブクローニングした。
C末端可溶化タグ、GKKGK(配列番号109)を、この工程で組み込んだ。
E.coli BL21(DE3)(Novagen)を、発現ベクター(pA
Ss45およびその誘導体)で形質転換した。細胞を、M9最小培地およびアン
ピシリン(200μg/ml)を含むBactotryptone(Difco
)を補充したM9培地中で増殖させた。同位体標識のために、15N NH
lを、この培地中の未標識のNHClと置換した。2lのバッフルフラスコ中
の500mlの培地を、10mlの一晩培養物と共にインキュベートし、そして
37℃で撹拌した。OD(600nm)が1に達した時に、IPTGを、1mM
の最終濃度で添加して、タンパク質発現を開始させた。IPTGの添加の3時間
後に遠心分離によってこの細胞を収集し、そして使用するまで−70℃で凍結保
存した。
【0158】
タンパク質を以下のように精製した。細胞を、フッ化フェニルメチルスルホニ
ル(1mM)を含むTris(50mM、pH7.6)5ml/(g細胞)に懸
濁した。鶏卵リゾチーム(Sigma)を、0.5mg/mlの最終濃度になる
まで添加した。この溶液を37℃で30分間インキュベートした後、氷上で30
秒間、3回超音波処理した。細胞細片を遠心分離によって除去した。濃塩化ナト
リウムを、0.5Mの最終濃度までこの溶液に添加した。この溶液を、ニッケル
を予め負荷し、そして塩化ナトリウム(0.5M)を含むTris緩衝液中で平
衡化したHi−Trapキレートカラム(Pharmacia)に適用した。こ
のカラムを緩衝液で洗浄した後、ヒスタグ−Fn3を、500mM イミダゾー
ルを含む緩衝液で溶出した。このタンパク質を、ResourceSカラム(P
harmacia)を使用して、酢酸ナトリウム緩衝液(20mM、pH4.6
)中のNaCl勾配を用いて、さらに精製した。
【0159】
GKKGK(配列番号109)テールを用いる場合、Ubi4タンパク質の溶
解度は、低いpHにおいて、1mMを越え、そして中性のpHにおいては、約5
0μMまで増加した。従って、このC末端伸長を有するUbi4(本明細書中以
下でUbi4−Kと呼ぶ)について、さらなる分析を行った。ミニボディ(mi
nibody)の溶解度は、N末端またはC末端に3つのLys残基を付加する
ことによって、有意に改善され得ることが報告されている(Bianchiら、
1994)。タンパク質Ropの場合において、非構造的C末端テールは、その
溶解度の維持において重要である(Smithら、1995)。
【0160】
Ubi4タンパク質のオリゴマー化状態を、サイズ排除カラムを使用して決定
した。野生型Fn3タンパク質は、低いpHおよび中性のpHにおいて、モノマ
ーであった。しかし、Ubi4−Kタンパク質のピークは、野生型Fn3のピー
クより有意に幅広く、そして野生型タンパク質の後に溶出した。このことは、U
bi4−Kとカラム材料との間の相互作用を示唆し、Ubi4のオリゴマー状態
を決定するためのサイズ排除クロマトグラフィーの使用を不可能にする。NMR
研究は、このタンパク質が、低いpHにおいてモノマーであることを示唆する。
【0161】
Ubi4−Kタンパク質は、ELISAによって判断されるように、ユビキチ
ンに対する結合親和性を保持した(図15d)。しかし、バイオセンサ(Aff
inity Sensors,Cambridge,U.K.)を使用して解離
定数を決定する試みは、センサマトリクスに対するUbi4−K−Fn3の高い
バックグラウンド結合のために、失敗した。このマトリクスは、主にデキストラ
ンからなり、Ubi4−Kが、サイズ排除カラムの架橋デキストランと相互作用
するという観察と一致する。
【0162】
(実施例XVII)
(モノボディーの安定性の測定)
グアニジン塩酸塩(GuHCl)誘導性のアンフォールディング反応および再
折り畳み反応を、トリプトファン蛍光を測定することによって追跡した。モータ
ー駆動式シリンジ(Hamilton Co.)を備えたSpectronic
AB−2分光蛍光計で、実験を行った。キュベットの温度を、30℃に保った
。この分光蛍光計およびシリンジを、手製のインターフェースを使用して1つの
コンピューターによって制御した。このシステムは、GuHCl滴定後に一連の
スペクトルを、自動的に記録する。実験は、5μMのタンパク質を含む1.5m
lの緩衝溶液を用いて開始した。発光スペクトル(300〜400nm;290
nmで励起)を、GuHClを含む緩衝溶液の各注入(50μlまたは100μ
l)後の遅れ(3〜5分)に続いて記録した。これらの工程を、溶液の容積がキ
ュベットの全容量(3.0ml)に達するまで繰り返した。蛍光強度を、別個の
実験で決定した等蛍光点(isofluorescent point)におけ
る強度に対する割合として正規化した。アンフォールディング曲線を、非線形最
小2乗ルーチンを使用して、2状態モデルにフィッティングした(Santor
o & Bolen,1988)。2分および10分の遅れ時間(注入とスペク
トル取得の開始との間)を用いる実験の間に、有意な差違は観察されず、このこ
とは、アンフォールディング/再折り畳み反応が、使用した遅れ時間内の各濃度
点において、平衡に近づいたことを示す。
【0163】
Ubi4−Kの構造的安定性を、上記のGuHCl誘導性アンフォールディン
グ方法を使用して測定した。この測定は、以下の2セットの条件下で行った:第
1に、300mM 塩化ナトリウムの存在下、pH3.3(ここで、Ubi4−
Kは、非常に可溶性である)、および第2に、TBS中(これは、ライブラフィ
ーのスクリーニングのために使用した)。両方の条件下で、アンフォールディン
グ反応は可逆性であり、そして本発明者らは、凝集の徴候も不可逆性のアンフォ
ールディングの徴候も検出しなかった。図16は、Ubi4−K、ならびにN末
端(his)タグおよびC末端溶解性タグを有する野生型Fn3のアンフォー
ルディング遷移を示す。野生型Fn3の溶解度は、これらのタグの付加に有意に
は影響されなかった。アンフォールディング遷移を特徴付けるパラメーターを、
表8に列挙する。
【0164】
(表8.GuHCl誘導性アンフォールディングにより決定される、Ubi4
および野生型Fn3の安定性パラメーター)
【0165】
【表8】

【0166】
ΔGは、変性剤の非存在下におけるアンフォールディングの自由エネルギーで
ある;mは、GuHCl濃度に対するアンフォールディングの自由エネルギー
の依存性である。溶液の条件については、図4の説明文を参照のこと。
【0167】
2つのループ内の導入された変異は、野生型Fn3に対するUbi4−Kの安
定性を確かに減少したが、Ubi4の安定性は、「代表的な」球状タンパク質の
安定性に匹敵したままである。野生型およびUbi4−Kタンパク質の安定性は
、pH7.5におけるよりpH3.3におけるほうが大きかったことに留意しな
ければならない。
【0168】
Ubi4タンパク質は、野生型Fn3の溶解度と比較して有意に減少した溶解
度を有するが、この溶解度は、溶解性テールの付加によって改善された。2つの
変異ループは、野生型とUbi4タンパク質との間の差異のみを含むが、これら
のループは、減少した溶解度の原因であるに違いない。現時点で、Ubi4−K
の凝集が、これらのループ間の相互作用によって引き起こされるのか、ループと
Fn3骨格の不変領域との間の作用によって引き起こされるのかは明らかではな
い。
【0169】
Ubi4−Kタンパク質は、Fn3の折り畳み全体を維持し、このことは、こ
の骨格が、試験された2つのループにおける多数の変異に適応し得ることを示す
。Ubi4−Kタンパク質の安定性は、野生型Fn3タンパク質の安定性より有
意に低いが、Ubi4タンパク質はなお、小さな球状タンパク質の安定性に匹敵
する構造安定性を有する。骨格として非常に安定なドメインを使用することは、
この骨格の折り畳み全体に影響を与えることなく、変異を導入するために明らか
に有利である。さらに、Ubi4タンパク質のGuHCl誘導性アンフォールデ
ィングは、ほとんど完全に可逆性である。これにより、Fn3変異体が、封入体
の場合のように、誤って折り畳まれた形態で発現される場合でさえ、正しく折り
畳まれたタンパク質の調製が可能となる。ライブラリーのスクリーニングのため
に使用される条件におけるUbi4の穏やかな安定性は、Fn3改変体がファー
ジ表面上で折り畳まれることを示す。このことは、Fn3クローンが、変性形態
ではなく、折り畳まれた形態で、その結合親和性によって選択されることを示す
。Dickinsonらは、BCループ中のVal29およびArg30が、F
n3を安定化することを提唱した。Val29は、疎水性コアと接触し、そして
Arg30は、Gly52およびVal75と水素結合を形成する。Ubi4−
Fn3において、Val29は、Argで置換され、一方、Arg30は保存さ
れる。FGループはまた、ライブラリーにおいて変異された。このループは、野
生型構造において可撓性であり、そしてヒトFn3ドメインの間で長さの大きな
変動を示す(Mainら、1992)。これらの観察は、FGループにおける変
異が、安定性に対する影響をそれほど有し得ないことを示唆する。さらに、Fn
3のN末端テールは、BCループおよびFGループによって形成される分子表面
に隣接し(図1および17)、そして十分に規定された構造を形成しない。N末
端テールにおける変異は、安定性に対する強力な悪影響を有さないと予測された
。従って、N末端テール中の残基は、さらなる変異の導入のために良好な部位で
あり得る。
【0170】
(実施例XVIII)
(Ubi4−Fn3のNMR分光法)
Ubi4−Fn3を、Amicon限外濾過ユニットを使用して、NaCl(
300mM)を含む[H]−Gly HCl緩衝液(20mM、pH3.3)
に溶解した。タンパク質の最終濃度は、1mMであった。パルスフィールド勾配
を有する三重共鳴プローブを備えるVarian Unity INOVA 6
00分光計を用いて、NMR実験を行った。プローブ温度は、30℃に設定した
。HSQC、TOCSY−HSQCおよびNOESY−HSQCスペクトルを、
公開された手順(Kayら、1992;Zhangら、1994)を使用して記
録した。NMRスペクトルを処理し、そしてNMRPipeおよびNMRVie
wソフトウエア(Johnson & Blevins、1994;Delag
lioら、1995)を使用して、UNIX(登録商標)ワークステーションで
分析した。配列特異的共鳴アサインメントを、標準的な手順(Wuthrich
,1986;CloreおよびGronenborn、1991)を使用して行
った。野生型Fn3についてのアサインメント(Baronら、1992)を、
30℃の酢酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH4.6)中に溶解した15N標
識タンパク質を使用して確認した。
【0171】
Ubi4−Kの三次元構造を、この異核NMR分光法を使用して特徴付けた。
低いpHにおいて、15N標識Ubi4(図17a)の1mM溶液について、良
質のスペクトルを収集し得た。Ubi4−Kのアミドピークの線幅は、野生型F
n3の線幅と類似しており、このことは、Ubi4−Kが使用した条件下でモノ
マーであることを示唆する。骨格H核および15N核の完全なアサインメント
を、N末端(His)タグ中の一列のHis残基を除いて、標準的なH,
N二重共鳴技術を使用して達成した。HSQCスペクトル中に数個の弱いピー
クが存在し、これはN末端Met残基を含む小数の種由来であると考えられる。
質量分光分析は、大部分のUbi4−Kは、N末端Met残基を含まないことを
示した。図17は、Ubi4−Kと野生型Fn3との間の、HNおよび15
の化学シフトにおける差違を示す。変異BCループおよびFGループの中または
その付近を除く化学シフトにおいて、小さな差異のみが観察される。これらの結
果は、2つのループにおける広範な変異にもかかわらず、Ubi4−Kが、Fn
3の折り畳み全体を保持することを明確に示す。N末端領域中の数個の残基(こ
れは、2つの変異ループに接近している)はまた、2つのタンパク質間の有意な
化学的差異を示す。HSQCスペクトルをまた、TBS中のUbi4−Kの50
μMのサンプルについて記録した。このスペクトルは、低いpHにおいて収集し
たスペクトルと類似しており、このことは、Ubi4の構造全体が、pH7.5
とpH3.3との間で維持されていることを示す。
【0172】
(実施例XIX)
(タンパク質表面上の不利な静電的相互作用を除去することによる、Fn3ド
メインの安定化)
(導入)
変異によるタンパク質の構造安定性の増加は、タンパク質設計およびバイオテ
クノロジーにおいて大きな関心がもたれる。タンパク質の三次元構造は、異なる
型の力の組み合わせによって安定化される。疎水性効果、ファンデルワールス相
互作用、および水素結合は、折り畳まれた状態のタンパク質の安定化に寄与する
ことが知られている(Kauzmann,W.(1959)Adv.Prot.
Chem.14,1−63;Dill,K.A.(1990)Biochemi
stry 29,7133−7155;Pace,C.N.,Shirley,
B.A.,McNutt,M.& Gajiwala,K.(1996)Fas
eb J 10,75−83)。これらの安定化力は、主に、タンパク質中に十
分に充填されている残基(例えば、疎水性コアを構成する残基)に由来する。タ
ンパク質コアにおける変化は、隣接する部分の再配置を誘導するため、大量計算
なしでこれらの力を増大することによってタンパク質の安定性を改善することは
困難である(Malakauskas,S.M.およびMayo,S.L.(1
998)Nat Struct Biol 5,470−475)。荷電基間の
イオン対は、通常、タンパク質表面上に見出され(Creighton,T.E
.(1993)Proteins:structures and molec
ular properties,Freeman,New York)、イオ
ン対は、小さな構造的摂動を伴ってタンパク質に導入され得た。しかし、多数の
研究は、タンパク質表面における誘引性静電相互作用(例えば、イオン対)の導
入は、安定性に対して小さな影響を有することを実証した(Dao−pin,S
.,Sauer,U.,Nicholson,H.およびMatthews,B
.W.(1991)Biochemistry 30,7142−7153;S
ali,D.,Bycroft,M.およびFersht,A.R.(1991
)J.Mol.Biol.220,779−788)。大きな脱溶媒和ペナルテ
ィーおよびアミノ酸側鎖の構造エントロピーの損失は、有利な静電的寄与に対抗
する(Yang,A.−S.およびHonig,B.(1992)Curr.O
pin.Struct.Biol.2,40−45;Hendsch,Z.S.
およびTidor,B.(1994)Protein Sci.3,211−2
26)。最近の研究により、タンパク質表面上の斥力的静電相互作用は、対照的
に、タンパク質を有意に不安定化し得ること、および表面静電相互作用を最適化
することによってタンパク質の安定性を改善することが可能であることが実証さ
れた(Loladze,V.V.,Ibarra−Molero,B.,San
chez−Ruiz,J.M.およびMakhatadze,G.I.(199
9)Biochemistry 38,16419−16423;Perl,D
.,Mueller,U.,Heinemann,U.およびSchmid,F
.X.(2000)Nat Struct Biol 7,380−383;S
pector,S.,Wang,M.,Carp,S.A.,Robblee,
J.,Hendsch,Z.S.,Fairman,R.,Tidor,B.お
よびRaleigh,D.P.(2000)Biochemistry 39,
872−879;Grimsley,G.R.Shaw,K.L.,Fee,L
.R.,Alston,R.W.,Huyghues−Despointes,
B.M.,Thurlkill,R.L.,Scholtz,J.M.およびP
ace,C.N.(1999)Protein Sci 8,1843−184
9)。現在の実験において、本発明者らは、表面静電相互作用を改変することに
よって、タンパク質の安定性を改善した。
【0173】
モノボディーの特徴付けをしている間に、これらのタンパク質(ならびに野生
型FNfn10)が、低pHにおいて、中性pHよりも有意に安定であることが
見出された(Koide,A.,Bailey,C.W.,Huang,X.&
Koide,S.(1998)J.Mol.Biol.284,1141−11
51)。これらの観察は、FNfn10中のいくつかの部分のイオン化状態の変
化が、そのタンパク質のコンホメーションの安定性を調整することを示し、そし
て中性pHでそのタンパク質の静電的特性を調節することによって、FNfn1
0のコンホメーションの安定性を増強することが可能であり得ることを示唆する
。FNfn10のコンホメーションの安定性を改善することはまた、バイオテク
ノロジーへの応用における足場としてのFNfn10の使用における実践的な重
要性を有する。
【0174】
以下に記載するのは、FNfn10の安定性のpH依存性の特徴付けを詳述し
、側鎖カルボキシル基の間の望ましくない相互作用を同定し、そして表面上での
点変異によるFNfn10のコンホメーションの安定性を改善した実験である。
その結果は、表面の静電相互作用が、タンパク質の安定性に有意に寄与すること
、およびこれらの相互作用を合理的に調整することによってタンパク質の安定性
を増強することが可能であることを示す。
【0175】
(実験手順)
(タンパク質発現および精製)
NMR研究のために使用される野生型タンパク質は、FNfn10の残基1〜
94(残基の番号付けは、Koideら(Koide,A.,Bailey,C
.W.,Huang,X.&Koide,S.(1998)J.Mol.Bio
l.284,1141−1151)の図2(a)に従う)、およびN末端でのさ
らなる2つの残基(Met−Gln)(これらの2つの残基は、−2および−1
とそれぞれ番号付けされる)を含んでいた。そのタンパク質をコードする遺伝子
を、pET3a(Novagen,WI)に挿入した。発現ベクターで形質転換
されたEschericha coli BL21(DE3)を、13Cグルコ
ースおよび15N塩化アンモニウム(Cambridge Isotopes)
をそれぞれ単独の炭素および窒素源として補充したM9最小培地において増殖し
た。タンパク質発現を、以前に記載されたように(Koide,A.Baile
y,C.W.,Huang,X.&Koide,S.(1998)J.Mol.
Biol.284,1141−1151)誘導した。遠心分離によってこれらの
細胞を回収した後、その細胞を記載されたように(Koide,A.Baile
y,C.W.,Huang,X.&Koide,S.(1998)J.Mol.
Biol.284,1141−1151)溶解した。遠心分離後、上清を10m
M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に対して透析し、そしてそのタンパク質
溶液をSP−Sepharose FastFlowカラム(Amersham
Pharmacia Biotech)にかけ、そしてFN3を塩化ナトリウ
ムの勾配によって溶出した。そのタンパク質を、Amicon濃縮器を使用し、
YM−3メンブレン(Millipore)を使用して濃縮した。
【0176】
安定性測定のために使用される野生型タンパク質は、N−末端のhistag
(MGSSHHHHHHSSGLVPRGSH)(配列番号114)およびFN
fn10の残基2〜94を含んでいた。上記のFN3の遺伝子を、pET15b
(Novagen)に挿入した。そのタンパク質を、記載されるように(Koi
de,A.Bailey,C.W.,Huang,X.&Koide,S.(1
998)J.Mol.Biol.284,1141−1151)発現し、そして
精製した。図22に示されるpH依存性の測定のために使用されるその野生型タ
ンパク質は、Arg6のThrへの変異を含んでおり、これは元々、二次トロン
ビン切断部位を除去するために導入された(Koide,A.Bailey,C
.W.,Huang,X.&Koide,S.(1998)J.Mol.Bio
l.284,1141−1151)。Asp7(これはArg6の隣にある)が
、(結果)のところに詳述されるようにFN3の安定性のpH依存性に重要であ
ることが見出されたため、その後の研究を、野生型のArg6バックグラウンド
を使用して行った。D7NおよびD7K変異体についての遺伝子を、標準的なポ
リメラーゼ連鎖反応を使用して構築し、そしてpET15bに挿入した。これら
のタンパク質を、野生型タンパク質についてと同じ様式で調製した。pK測定
のための13C、15N標識タンパク質を、上記のように調製し、そしてhis
tag部分はこれらのタンパク質からは除去しなかった。
【0177】
(化学的変性測定)
タンパク質を、100mM塩化ナトリウムを含有する種々のpHの10mMの
クエン酸ナトリウム緩衝液中、5μMの最終濃度まで溶解した。グアニジンHC
l(GuHCl)誘導アンフォールディング実験を、以前に記載されたように行
った(Koide,A.Bailey,C.W.,Huang,X.&Koid
e,S.(1998)J.Mol.Biol.284,1141−1151;K
oide,S.,Bu,Z.,Risal,D.,Pham,T.−N.,Na
kagawa,T.,Tamura,A.&Engelman,D.M.(19
99)Biochemistry 38,4757−4767)。GuHCl濃
度を、記載されたように(Pace,C.N.&Sholtz,J.M.(19
97)Protein structure.A practical app
roach(Creighton,T.E.,編)Vol.pp299−321
,IRL Press,Oxford)、Abbe屈折計(Spectroni
c Instruments)を使用して決定した。データを2状態モデルに従
って、記載されたように(Koide,A.Bailey,C.W.,Huan
g,X.&Koide,S.(1998)J.Mol.Biol.284,11
41−1151;Santoro,M.M.&Bolen,D.W.(1988
)Biochemistry 27,8063−8068)分析した。
【0178】
(熱変性測定)
タンパク質を、0.1Mもしくは1M塩化ナトリウムを含有する20mMリン
酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)中、または0.1Mもしくは1M塩化ナトリ
ウムを含有する20mMグリシンHCl緩衝液(pH2.4)中、5μMの最終
濃度まで溶解した。さらに6.3Mの尿素を、全ての溶液に含め、熱変性反応の
可逆性を確実にした。尿素の非存在下では、変性FNfn10がクウォーツ表面
に接着すること、および熱変性反応が非可逆的であることが見出された。円偏光
2色性測定を、Peltier温度制御装置(Aviv Instrument
s)を備えたModel 202分光光度計を使用して行った。0.5cmの光
路長のキュベットを使用した。227nmでの楕円率を、サンプルの温度が1分
間当たり約1℃の割合で上昇するにつれ、測定した。高温での尿素の分解のため
、タンパク質溶液のpHは、実験の間に上方にシフトする傾向があった。タンパ
ク質溶液のpHを、各熱変性測定の前および後に測定し、各測定において生じる
シフトが0.2pH単位を超えてシフトしないことを確実にした。pH2.4に
おいて、熱変性曲線の2つの部分(30〜65℃および60〜95℃)を、別々
のサンプルから取得し、大きなpHシフトを回避した。熱変性データを、標準的
な2状態モデル(Pace,C.N.&Sholtz,J.M.(1997)P
rotein structure.A practical approac
h(Creighton,T.E.,編)Vol.pp299−321,IRL
Press,Oxford)):
【0179】
【数1】

【0180】
(ここで、ΔG(T)は、温度Tでのアンフォールディングのギブスの自由エネ
ルギー、ΔHは、遷移の中点Tでのアンフォールディングの際のエンタルピ
ー変化であり、そしてΔCは、アンフォールディングの際の熱容量変化である
。)にフィットさせた。ΔCの値を、Myersら(Myers,J.K.,
Pace,C.N.&Scholtz,J.M.(1995)Protein
Sci.4,2138−2148)の近似にしたがって、1.74kcalmo
−1−1に固定した。1M NaClの存在下で取得したデータセットのほ
とんどは、アンフォールディング状態についての十分な基線を有しておらず、し
たがって、1M NaClの存在下でのアンフォールディングした基線の勾配は
、0.1M NaClの存在下で決定されたものと同一であると仮定した。
【0181】
(NMR分光法)
NMR実験を30℃でINOVA600分光光度計(Varian Inst
ruments)上で行った。C(CO)NH実験(Grzesiek、S.A
nglister,J.&Bax,A.(1993)J.Magn.Reson
.B101,114−119)およびCBCACOHA実験(Kay,L.E.
(1993)J.Am.Chem.Soc.115,2055−2057)を、
5%(v/v)重水を含有する50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.6)
中に溶解した[13C,15N]−野生型FNfn10サンプル(1mM)上に
、Varianの5mm三重共鳴プローブを、パルスフィールド勾配を用いて使
用して回収した。カルボキシル13C共鳴を、FNfn10のバックボーンの
H、13C、および15N共鳴割当(Baron,M.,Main,A.L.,
Driscoll,P.C.,Mardon,H.J.,Boyd,J.&Ca
mpbell,I.D.(1992)Biochemistry 31,206
8−2073)に基づいて、割り当てた。カルボキシル共鳴のpH滴定を、10
0mMの塩化ナトリウムおよび5%(v/v)重水を含有する10mM クエン
酸ナトリウム中に溶解した0.3mMのFNfn10サンプル上で行った。8m
mの三重共鳴、パルスフィールド勾配プローブ(Nanolac Corpor
ation)を、pH滴定のために使用した。2次元H(C)COスペクトルを
、以前に記載されたCBCACOHAパルス配列(McIntosh,L.P.
,Hand,G.,Johnson,P.E.,Joshi,M.D.,Koe
rner,M.,Plesniak,L.A.,Ziser,L.,Wakar
chuk,W.W.&Withers,S.G.(1996)Biochemi
stry 35,9958−9966)を使用して回収した。サンプルpHを、
塩酸の小アリコートを添加することによって変化させ、そしてpHをNMRデー
タをとる前および後に測定した。H、15N−HSQCスペクトルを以前に記
載されたように取得した(Kay,L.E.,Keifer,P.&Saari
nen,T.(1992)J.Am.Chem.Soc.114,10663−
10665)。NMRデータを、NMRPipeパッケージ(Delaglio
,F.,Grzesiek,S.,Vuister,G.W.,Zhu,G.,
Pfeifer,J.&Bax,A.(1995)J.Biomol.NMR
6,277−293)を使用して処理し、そしてNMRViewソフトウェア(
Johnson,B.A.&Blevins,R.A.(1994)J.Bio
mol.NMR 4,603−614)を使用して分析した。
【0182】
カルボキシル13C共鳴のNMR滴定曲線を、Henderson−Hass
elbalch式にフィットさせて、pK’sを決定した:
【0183】
【数2】

【0184】
ここで、δは、測定した化学シフトであり、δは、プロトン化した状態に関連
する化学シフトであり、δ塩基は、脱プロトン化した状態に関連する化学シフト
であり、そしてpKは、その残基のpK値である。データはまた、2つのイ
オン化可能基を有する式:
【0185】
【数3】

【0186】
にフィットさせた。ここで、δAH2、δAHおよびδは、完全にプロトン化
した状態、単数だけプロトン化した状態および脱プロトン化した状態にそれぞれ
関連する化学シフトであり、そしてpKa1およびpKa2は、2つのイオン化
段階に関連するpKである。データのフィッティングを、マッキントッシュコ
ンピュータ上でIgor Pro(WaveMetrix、OR)プログラムに
おける非線形最小2乗回帰分析法を使用して行った。
【0187】
(結果)
(FNfn10安定性のpH依存性)
以前に、FNfn10が酸性pHで中性pHよりも安定であることが見出され
た(Koide,A.Bailey,C.W.,Huang,X.&Koide
,S.(1998)J.Mol.Biol.284,1141−1151)。本
実験において、その安定性のpH依存性は、さらに特徴付けられた。その高い安
定性のために、FNfn10は、尿素中で30℃で十分に変性され得なかった。
したがって、GuHCl誘導性化学変性(図18)を使用した。その変性反応は
、試験された全ての条件下で完全に可逆的であった。外挿により生じた誤差を最
小化するために、4M GuHClでのアンフォールディングのその自由エネル
ギーを比較のために使用した(図18)。その安定性はpHが低下するにつれて
増大し、pH範囲の両端で見かけ上プラトーになった。pH依存性曲線は、pH
4付近に見かけ上の遷移中点を有する。さらに、m値(アンフォールディング自
由エネルギーの変性物濃度に対する依存性)の漸増が観察された。Paceらは
、barnaseについてのm値の同様のpH依存性を報告した(Pace,C
.N.,Laurents,D.V.&Erickson,R.E.(1992
)Biochemistry 31,2728−2734)。これらの結果は、
FNfn10が、低pHでタンパク質を安定化させる相互作用、または中性pH
でそれを不安定化させる相互作用を含むことを示す。その結果はまた、pH依存
性を生じる相互作用を同定および変化させることによって、当業者が、中性pH
で、低pHで見出される安定性と同様な程度までFNfn10の安定性を改善し
得ることを示唆する。
【0188】
(野生型FNfn10における側鎖カルボキシル基のpKの決定)
FNfn10安定性のpH依存性は、4付近のpKaを有するアミノ酸が、観
察された遷移に関与することを示唆する。AspおよびGluのカルボキシル基
は、一般に、この範囲でpKを有する(Creighton,T.E.(19
93)Proteins:structures and molecular
properties,Freeman,New York)。カルボキシル
基が、折り畳まれた状態で不利な(すなわち、不安定化する)相互作用を有する
場合、そのpKは、その非摂動値からより高い値にシフトすることは周知であ
る(Yang,A.-S.&Honig,B.(1992)Curr.Opin
.Struct.Biol.2,40−45)。カルボキシル基が、折り畳まれ
た状態において有利な相互作用を有する場合、それは、より低いpKを有する
。したがって、異核NMR分光法を使用したFNfn10における全てのカルボ
ン酸塩のpK値を、カルボキシル基を包含する安定化および不安定化相互作用
を同定するために決定した。
【0189】
第1に、FN3における各AspおよびGlu残基のカルボキシルの炭素につ
いての13C共鳴を、割り当てた(図19)。次に、これらの基についての13
C共鳴のpH滴定を行った(図20)。Asp3、67、80、およびGlu3
8および47についての滴定曲線は、単一のpKを用いてHenderson
−Hasselbalch式と良くフィットし得た。これらの残基についてのp
値(表9)は、それらのそれぞれの非摂動値に近いかまたはそれよりわずか
に低いかのいずれかであり(Aspについて3.8〜4.1、そしてGluにつ
いて4.1〜4.6(Kuhlman,B.,Luisi,D.L.,Youn
g,P.&Raleigh,D.P.(1999)Biochemistry
38,4896−4903))、これは、これらのカルボキシル基が、折り畳ま
れた状態で、中性かまたはわずかに有利な静電相互作用に関与していることを示
す。
【0190】
【表9】

【0191】
Asp7および23、ならびにGlu9についての滴定曲線は、2つのpK
値を使用してHenderson−Hasselbalch式とより良くフィッ
トし、そして各々についての2つのpK値のうちの1つは、それぞれの非摂動
値よりも高くシフトした(図19B)。これらのカルボキシル基の見かけのpK
値を有するその滴定曲線は、近傍のイオン化基の影響に起因し得る。FNfn
10の三次元構造(Main,A.L.,Harvey,T.S.,Baron
,M.、Boyd,J.&Campbell,I.D.(1992)Cell
71,671−678)において、Asp7および23、ならびにGlu9は、
表面上にパッチを形成し(図21)、Asp7は、パッチの中央に位置している
。したがって、これらの残基が互いのイオン化プロフィールに影響を及ぼすこと
が予想されることは合理的である。3つの残基のどれが高度にシフトしていない
pKを有するかを同定するために、次いで、pH5.0(pHメーターの直
接の読み)での99%DO緩衝液中のそのタンパク質のH(C)COスペクト
ルを回収した。Asp23およびGlu9は、Asp7(0.18ppm)より
も大きい重水同位体のシフトを示した(それぞれ、0.33および0.32pp
m)。これらの結果は、Asp23およびGlu9が、Asp7よりも大きい程
度までプロトン化していることを示す。したがって、本発明者らは、Asp23
およびGlu9が、Asp7の強い影響のために高度にシフトしたpKを有す
ると結論した。
【0192】
(変異分析)
Asp7およびAsp23、ならびにGlu9の空間的な近さによって、この
研究において同定された、FNfn10における不利な静電気的相互作用が説明
される。これらの残基がプロトン化され、そして中性である低いpHにおいて、
反発的な相互作用が、最も開放されると期待される。従って、これら3つの残基
の間の静電気的反発を除去することによって、中性のpHでFNfn10の安定
性を改善することが可能であるはずである。Asp7は3つの残基の間で中心に
配置されるので、Asp7を変異させることが決定された。二つの変異体、D7
NおよびD7Kが調製された。前者は、実質的に同じサイズの残基で陰性の荷電
を中和する。後者は、残基7に陽性の荷電を配置し、そして側鎖のサイズを増加
する。
【0193】
2つの変異タンパク質のH、15N−HSQCスペクトルは、野生型タンパ
ク質のスペクトルとほぼ同じであり、これは、これらの変異が、大きな構造的混
乱を引き起こさなかったことを示す(データは示さない)。次いで、変異タンパ
ク質の安定性の程度は、熱的および化学的変性の測定を使用して特徴付けられた
。熱変性の測定は、最初に、100mM塩化ナトリウムで実行され、そして6.
3M尿素を、可逆な変性を保証し、そして熱遷移の温度を減少させるために含ん
だ。全てのタンパク質が、6.3M尿素中、室温で優勢に折り畳まれた。全ての
タンパク質が協同的な遷移を起こし、そして2つの変異体が、中性のpHで野生
型よりも有意に安定であることが見出された(図22および表10)。さらに、
これらの変異は、FNfn10のコンフォメーションの安定性のpH依存性をほ
とんど除去した。これらの結果は、中性のpHにおける野生型FNfn10のA
sp7に関係する不安定化の相互作用が、pH依存性の主な原因であることを確
認した。
【0194】
【表10】

【0195】
0.1M NaClデータについての中点の誤差は、±0.5℃である。1M
NaClデータの大部分が変性状態について十分なベースラインを有さなかっ
たので、これらのデータについての中点の誤差は、±2℃と推定した。
【0196】
野生型タンパク質および2つの変異タンパク質のコンフォメーションの安定性
に対する、増加した塩化ナトリウム濃度の効果を次に調査した。全てのタンパク
質が、0.1Mの塩化ナトリウムにおけるよりも1Mの塩化ナトリウムにおいて
より安定であった(図22)。塩化ナトリウム濃度の増加は、酸性のpHおよび
中性のpHの両方において、約10℃、変異タンパク質のTを上昇させた(表
10)顕著に、野生型タンパク質がまた両方のpHにおいて等しく安定であった
。しかし、野生型タンパク質が、中性pHにおいてカルボキシ基間に不利な相互
作用を含むが、酸性pHでは含まない。
【0197】
Fnfn10タンパク質の化学的変性は、FNfn10の単一のTrp残基か
らの蛍光放出を使用してモニターされた(図23)。pH6.0および4M G
uHClで広がる(unfolding)自由エネルギーは、野生型、D7Nお
よびD7Kについて、それぞれ、1.1(±0.3)、1.7(±0.2)およ
び1.4(±0.1)kcal/molであることを決定した。これは、2つの
変異体がまた、化学的な変性に対してコンフォメーショナルな安定性を増加した
ことを示す。
【0198】
(変異タンパク質における側鎖カルボニル基のpKの決定)
2つの変異体タンパク質におけるカルボキシル基のイオン化特性を調査した。
pH滴定の高い端および低い端(それぞれ、pH約7および約1.5)における
変異タンパク質の2D H(C)COスペクトルは、Asp7についての交差ピ
ークの損失を除いて、野生型のそれぞれのスペクトルとほぼ同一であった(デー
タは示さない)。この類似性は、野生型FNfn10のアサインメントに基づい
て、変異体の共鳴の明白なアサインメントを可能にする。pH滴定実験は、Gl
u9およびAsp23を除いて、AspおよびGluカルボキシル基の挙動が、
野生型タンパク質のそれらの対応物に非常に近いことを明かにし(図24パネル
A、C、D、F、およびG、ならびに表9)、これは、2つの変異がこれらのカ
ルボキシレートに対して静電気的環境に対して周縁の(marginal)効果
を有することを示す。対照的に、E9およびD23についての滴定曲線は、変異
についての有意な変化を示す(図24パネルBおよびE)。D23のpKは、
D7NおよびD7K変異体において、それぞれ、1.6および1.4より大きな
pH単位で低下した。これらの結果は、明らかに、D7とD23との間の反発性
の相互作用が野生型タンパク質におけるAsp23のpKにおける増加に寄与
すること、そしてこれは、残基7における陰性の電荷の中和によって除去された
ことを示す。Glu9のpKは、D7N変異体によって0.4pH単位だけ減
少し、一方、D7K変異体では0.8pH単位だけ減少した。D7K変異体によ
るGlu9のpKのより大きな減少は、この変異タンパク質におけるLys7
とGlu9との間に好ましい相互作用があることを示唆する。
【0199】
(考察)
本発明者らは、FNfn10における不利な静電気的相互作用を同定し、そし
てタンパク質表面の変異によってそのコンフォメーショナルな安定性を改善した
。この結果は、タンパク質表面上の類似の電荷の間の反発的な相互作用がタンパ
ク質を有意に不安定化することを示す。この結果はまた、他のグループ(Lol
adze,V.V.,Ibarra−Molero,B.,Sanchez−R
uiz,J.M.& Makhatadze,G.1.(1999)Bioch
emistry 38,16419−16423;Perl,D.,Muell
er,U.,Heinemann,U.& Schmid,F.X.(2000
)Nat Struct Biol 7,380−383;Spector,S
.,Wang,M.,Carp,S.A.,Robblee,J.,Hends
ch,Z.S.,Fairman,R.,Tidor,B.& Raleigh
,D.P.(2000)Biochemistry 39,872−879;G
rimsley,G.R.,Shaw,K.L.,Fee,L.R.,Alst
on,R.W.,Huyghues−Despointes,B.M.,Thu
rlkill,R.L.,Scholtz,J.M.& Pace,C.N.(
1999)Protein Sci 8,1843−1849)による最近の報
告と一致し、ここで、タンパク質の安定性は、表面上の不利な静電気的相互作用
を除くことによって改善された。これらの研究において、変異の候補は、静電気
的計算によって(Loladze,V.V.,Ibarra−Molero,B
.,Sanchez−Ruiz,J.M.& Makhatadze,G.I.
(1999)Biochemistry 38,16419−16423;Sp
ector,S.,Wang,M.,Carp,S.A.,Robblee,J
.,Hendsch,Z.S.,Fairman,R.,Tidor,B.&
Raleigh,D.P.(2000)Biochemistry 39,87
2−879;Grimsley,G.R.,Shaw,K.L.,Fee,L.
R.,Alston,R.W.,Huyghues−Despointes,B
.M.,Thurlkill,R.L.,Scholtz,J.M.& Pac
e,C.N.(1999)Protein Sei 8,1843−1849)
か、または異なる安定性を有する相同なタンパク質の配列比較によって(Per
l,D.,Mueller,U.,Heinemann,U.&Schmid,
F.X.(2000)Nat Struct Biol 7,380−383)
、同定された。NMRを使用するpK決定を使用する本戦略は、他の戦略に対
して利益および不利益の両方を有する。本方法は、タンパク質を不安定化する残
基を直接的に同定する。また、本方法は、目的のタンパク質の高い解像度の構造
の入手可能性に依存しない。静電気的計算は、表面におけるアミノ酸側鎖の可動
性、タンパク質表面およびタンパク質内部における比誘電率の不確実さに起因し
て大きな誤差を有し得る。例えば、FNfn10のNMR構造において(Mai
n,A.L.,Harvey,T.S.,Baron,M.,Boyd,J.&
Campbell,I.D.(1992)Cell 71,671−678)
、Glu残基のOε原子についての16のモデル構造の間の根二乗平均偏差は、
1.2〜2.4Åであり、そしてLys Nζ原子についての根二乗平均偏差は
、1.5〜3.1Åである。原子位置のこの不確かさは、計算結果における大き
な差異を潜在的に生じ得る。他方、本戦略は、カルボキシル残基についてのNM
Rアサインメント、および幅広いpH範囲にわたるNMR測定を必要とする。N
MRスペクトロスコピーにおける最近の進歩が、小さなタンパク質についての共
鳴アサインメントを得ることを簡単にしているが、いくつかのタンパク質が、所
望のpH範囲にわたって十分に可能性でなくあり得る。さらに、変性状態におけ
るイオン化可能な基のpKa値の知識が、個々の残基の安定性に対する寄与を正
確に評価するのに必要である(Yang,A.−S.& Honig,B.(1
992)Curr.Opin.Struct.Biol 2,40−45)。K
uhlmanら(Kuhlman,B.,Luisi,D.L.,Young,
P.& Raleigh,D.P.(1999)Biochemistry 3
8,4896−4903)は、変性状態のカルボキシレートのpKが、小さな
モデル化合物から得られるpKよりもかなり大きな範囲を有することを示した
。これらの限定にも関わらず、本方法は、多くのタンパク質に適用可能である。
【0200】
本発明者らは、Asp7、Glu9およびAsp23のカルボキシル基に関係
する不利な相互作用は、これらの基が低いpHでプロトン化される場合、または
Asp7がAsnまたはLysで置換された場合、もはや存在しなかったことを
示した。低いpHにおける変異体および野生型の測定される安定性における類似
性(表10)は、FNfn10安定性のpH依存性に有意に寄与する他の因子が
ないこと、そしてその変異が最小の構造的混乱を引き起こしたことを示唆する。
構造的混乱がほとんどないことが期待される。なぜなら、これら3つの残基のカ
ルボキシル基は、NMR構造における溶媒アクセス可能表面領域計算に基づいて
、溶媒に少なくとも50%曝露されるからである(Main,A.L.,Har
vey,T.S.,Baron,M.,Boyd,J.& Campbell,
I.D.(1992)Cell 71,671−678)。
【0201】
酸性pHと中性pHとの間の野生型タンパク質の熱的安定性における差異が、
1M塩化ナトリウムにおいて持続する(表10)。同様に、野生型タンパク質は
、4M GuHClにおいて、安定性について大きなpH依存性を示した(図1
8)。さらに、0.1〜1.0Mへの塩化ナトリウム濃度の増加において、野生
型タンパク質および変異タンパク質のTは、すべて約10℃増加し、これは、
pHシフトによる野生型のTにおける変化と同じ大きさである。これらのデー
タは、本研究において同定された不利な相互作用が、1M NaClまたは4M
GuHClにおいて効果的に遮蔽されなかったことを示す。増加した塩化ナト
リウム濃度の効果が均一であったので、この塩化ナトリウムの安定化効果は、同
様に、非特異的な塩析効果に起因する(Timasheff,S.N.(199
2)Curr.Op.Struct.Biol.2,35−39)。他のグルー
プはまた、静電気的相互作用に対して塩の効果をほとんど遮蔽しないことを報告
した(Perutz,M.F.,Gronenbom,A.M.,Clore,
G.M.,Fogg,J.H.& Shih,D.T.(1985)J Mol
Biol 183,491−498;Hendsch,Z.S.,Jonss
on,T.,Sauer,R.T.& Tidor,B.(1996)Bioc
hemistry 35,7621−7625)。静電気的相互作用は、しばし
ば、特に相互作用の部位が高度に露出される場合、イオン強度の増加とともに減
少すると考えられる。従って、野生型と変異体との間の塩感受性において差を示
さない中性pHの本データ(表10)は、Asp7が静電気的相互作用を不安定
化することの原因ではないと解釈される。この塩の不感受性についての理由はま
だ明かではないが、本結果は、塩濃度依存性にのみに基づいて、静電気的相互作
用の存在および非存在を結論づける際に警告的な注記を提供する。
【0202】
3つ組みのカルボキシル(Asp7およびAsp23、ならびにGlu9)は
、National Center for Biotechnology I
nformation(www.ncbi.nlm.nih.gov)における
タンパク質配列データバンクにおいて入手可能であった9つの異なる生物由来の
Fnfn10において、高度に保存されている。これらのFNfn10配列にお
いて、Asp9は、Asnに置換された一例を除いて保存され、そしてGlu9
は、完全に保存される。位置23は、AspまたはGluのいずれかであり、陰
性の電荷を保存する。本研究において発見されたように、これらの残基の間の相
互作用は、不安定化している。従って、それらの高い保存は、それらの安定性に
対する負の効果にも関わらず、これらの残基が、フィブロネクチンの生物学にお
いて機能的な重要性を有することを示唆する。ヒトフィブロネクチンの4つのF
N3セグメントの構造(Leahy,D.J.,Aukhil,I.& Eri
ckson,H.P.(1996)Cell 84,155−164)において
、これらの残基は、隣接ドメインとの相互作用に直接関与しない、また、これら
の残基は、FGループのインテグリン結合RGD配列からFNfn10の反対面
に位置する(図21)。従って、なぜこれらの不安定化残基がFNfn10にお
いてほとんど完全に保存されるか明かではない。対照的に、ヒトフィブロネクチ
ンにおける他のFN3ドメインは、この3つ組みのカルボキシルを有さない(配
列アライメントについて、参考文献、Main,A.L.,Harvey,T.
S.,Baron,M.,Boyd,J.& Campbell,I.D.(1
992)Cell 71,671−678を参照のこと)。FNfn10の3つ
組みのカルボキシルは、現在同定されていない重要な相互作用に関与し得る。
【0203】
Clarkeら(Clarke,J.,Hamill,S.J.& John
son,C.M.(1997)J Mol Biol 270,771−778
)は、ヒトテネイシンの第3のFN3(TNfn3)の安定性が、pHが7から
5に減少するときに増加することを報告した。これらは、タンパク質凝集に起因
して、pH5より下で安定性の測定を実行し得なかったけれども、TNfn3の
pH依存性は、図18に示されるFNfn10のpH依存性に似ている。TNf
n3は、位置7、9および23に3つ組みのカルボキシレートを含まず(Lea
hy,D.J.,Hendrickson,W.A.,Aukhil,I.&
Erickson,H.P.(1992)Science 258,987−9
91)、これは、中性pHにおいてTNfn3の不安定化が、FNfn10の不
安定化とは異なる機構によって引き起こされることを示す。TNfn3構造の視
覚的検査によって、これが多数のカルボキシル基を有し、そしてGlu834お
よびAsp850(参考文献、Leahy,D.J.,Hendrickson
,W.A.,Aukhil,I.&Erickson,H.P.(1992)S
cience 258,987−991に従う、番号付け)が、交差鎖対を形成
することを明かにした。この対を変更することがTNfn3の安定性を増加し得
るか否かを試験することは興味深い。
【0204】
結論として、タンパク質表面の不利な静電気的相互作用を実験的に同定し、そ
してこのような相互作用を軽減することによってタンパク質安定性を改善する戦
略が記載された。本結果は、カルボキシル基間に反発的相互作用を形成すること
が、タンパク質を有意に不安定化することを実証した。これは、溶媒に露出され
るイオン対を形成する小さな寄与とは対照的である。表面における不利な静電気
的相互作用は、天然のタンパク質において非常に一般的であるようである。従っ
て、表面の静電気的特性の最適化は、タンパク質安定性を増加するための一般的
に適用可能な戦略を提供する(Loladze,V.V.,Ibarra−Mo
lero,B.,Sanchez−Ruiz,J.M.& Makhatadz
e,G.I.(1999)Biochemistry 38,16419−16
423;Perl,D.,Mueller,U.,Heinemann,U.&
Schmid,F.X.(2000)Nat Struct Biol 7,
380−383;Spector,S.,Wang,M.,Carp,S.A.
,Robblee,J.,Hendsch,Z.S.,Fairman,R.,
Tidor,B.&Raleigh,D.P.(2000)Biochemis
try 39,872−879;Grimsley,G.R.,Shaw,K.
L.,Fee,L.R.,Alston,R.W.,Huyghues−Des
pointes,B.M.,Thurlkill,R.L.,Scholtz,
J.M.& Pace,C.N.(1999)Protein Sci 8,1
843−1849)。さらに、カルボキシレート間の反発的相互作用は、タンパ
ク質設計において望ましくない代替のコンフォメーション不安定化するために開
発され得る(「ネガティブ設計」)。
【0205】
(実施例XX)
(モノボディー足場のカルボキシル末端の伸長)
安定性測定に使用される野生型タンパク質は、実施例19に記載される。モノ
ボディー足場のカルボキシル末端は、4つのアミノ酸残基(すなわち、Glu−
Ile−Asp−Lys)(配列番号119))によって伸長され、これは、ヒ
トフィブロネクチンのFNfn10にすぐに続く残基である。標準的PCR方法
を使用してFNfn10遺伝子に伸長が導入される。安定性の測定は、実施例1
9に記載されるように実施された。伸長されたタンパク質を広げる自由エネルギ
ーは、pH6.0および30℃で7.4kcalmol−1であり、野生型タン
パク質の自由エネルギー(7.7kcalmol−1)と非常に近い。これらの
結果は、モノボディー足場のC末端がその安定性を減少することなく伸長される
ことを実証した。
【0206】
本明細書中に引用される全ての特許、特許文書および刊行物の完全な開示は、
個々に組み込まれるかのように、参考として援用される。上記の詳細な説明およ
び実施例は、理解を明瞭するためのみに与えられた。それらから不必要な制限が
理解されるべきではない。本発明は、示され、そして記載された実際の詳細に制
限されず、当業者に明らかな変更は、特許請求の範囲によって規定される本発明
に含まれる。
【0207】
【化1】

【0208】

【0209】

【0210】

【0211】

【0212】

【0213】

【0214】

【0215】

【0216】

【0217】

【0218】

【0219】
(配列表)
【0220】
【表1】

【0221】
【表2】

【0222】
【表3】

【0223】
【表4】

【0224】
【表5】

【0225】
【表6】

【0226】
【表7】

【0227】
【表8】

【0228】
【表9】

【0229】
【表10】

【0230】
【表11】

【0231】
【表12】

【0232】
【表13】

【0233】
【表14】

【0234】
【表15】

【0235】
【表16】

【0236】
【表17】

【0237】
【表18】

【0238】
【表19】

【0239】
【表20】

【0240】
【表21】

【0241】
【表22】

【0242】
【表23】

【0243】
【表24】

【0244】
【表25】

【0245】
【表26】

【0246】
【表27】

【0247】
【表28】

【0248】
【表29】

【0249】
【表30】

【0250】
【表31】

【0251】
【表32】

【0252】
【表33】

【0253】
【表34】

【0254】
【表35】

【0255】
【表36】

【0256】
【表37】

【0257】
【表38】

【図面の簡単な説明】
【0258】
【図1】抗リゾチーム免疫グロブリンD1.3(A、C;Bhatら、1994)およびヒトフィブロネクチンの10番目のIII型ドメイン(B、D;Mainら、1992)の、β鎖およびループトポロジー(A、B)およびMOLSCRIPT表示(C、D;Kraulis、1991)。相補性決定領域(CDR、超可変領域)およびインテグリン結合Arg−Gly−Asp(RGD)配列の位置を示す。
【図2】合成Fn3遺伝子のアミノ酸配列(配列番号110)および制限部位。残基の番号付けは、Mainら(1992)に従う。設計した制限酵素部位を、アミノ酸配列の上部に示す。β鎖を、下線で示す。N末端「mq」配列は、発現ベクターへの引続くクローニングのために添加した。His・tag(Novagen)融合タンパク質は、上記に示されるFn3配列の前に、さらなる配列(MGSSHHHHHHSSGLVPRGSH(配列番号14))を有する。
【図3】A、25℃および90℃での野生型Fn3のFar UV CDスペクトル。Fn3(50μM)を、酢酸ナトリウム(50mM、pH4.6)に溶解した。B、215nmにおいてモニターした、Fn3の熱変性。温度は、1℃/分の速度で上昇させた。
【図4】A、リゾチーム(HEL)および抗鶏卵白色リゾチーム(抗HEL)抗体D1.3のFvフラグメントの複合体の結晶構造のCαトレース(Bhatら、1994)。VH CDR3の残基99〜102の側鎖(HELと接触する)もまた、示す。B、D1.3 VHの残基数に対してプロットした、D1.3 VH−HELおよびVH−VL相互作用の各残基についての接触表面積。表面積および二次構造を、プログラムDSSP(KabshおよびSander、1983)を用いて決定した。CおよびD、D1.3 VH(C)およびFn3(D)の、F鎖−ループ−G鎖部分のβシート構造の模式図。四角は、β鎖中の残基を示し、そして楕円型は、鎖の中にない残基を示す。影をつけた四角は、側鎖が有意に埋没している残基を示す。破線は、水素結合を示す。
【図5】DNA配列(配列番号111)およびアミノ酸配列(配列番号112)を示す、設計されたFn3遺伝子。アミノ酸の番号付けは、Mainら(1992)に従う。コンビナトリアルライブラリー中で無作為化された2つのループを、四角で囲む。
【図6】プラスミドpAS45のマップ。プラスミドpAS45は、His・tag−Fn3の発現ベクターである。
【図7】プラスミドpAS25のマップ。プラスミドpAS25は、Fn3の発現ベクターである。
【図8】プラスミドpAS38のマップ。pAS38は、Fn3の表面提示のためのファージミドベクターである。
【図9】(ユビキチン−1)ファージ酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)を用いた、富化されたクローンのリガンド特異的結合の特徴付け。マイクロタイタープレートのウェルを、ユビキチン(1μg/ウェル;「リガンド(+)」)でコーティングし、次いで、BSAを用いてブロックした。約1010のコロニー形成単位(cfu)を含むTBS中のファージ溶液を、ウェルに添加し、そしてTBSを用いて洗浄した。結合したファージを、Turbo−TMB(Pierce)を基質として抗ファージ抗体−POD結合体(Pharmacia)を用いて検出した。吸光度を、Molecular Devices SPECTRAmax 250マイクロプレート分光光度計を用いて測定した。コントロールについて、リガンドを固定化させないウェルを使用した。2−1および2−2は、それぞれ、遊離のリガンドおよび酸を用いて溶出したライブラリー2からの富化されたクローンを示す。4−1および4−2は、それぞれ、遊離のリガンドおよび酸を用いて溶出したライブラリー4からの富化されたクローンを示す。
【図10】(ユビキチン−2)富化されたクローンの競合ファージELISA。約10cfuを含むファージ溶液を、リガンドでコーティングしたウェルに結合させる前に、、遊離のユビキチンと共に4℃で1時間まずインキュベートした。ウェルを洗浄し、そしてファージを上記のように検出した。
【図11】ユビキチン結合モノボディ411の競合ファージELISA。実験条件は、上記のユビキチンについて記載した条件と同じである。結合溶液中、遊離のユビキチンの存在下で、ELISAを実行した。実験を、同じクローンの4つの異なる調製物を用いて実行した。
【図12】(フルオレセイン−1)4つのクローン(Plb25.1(配列番号115を含む)、Plb25.4(配列番号116を含む)、pLB24.1(配列番号117を含む)およびpLB24.3(配列番号118を含む))のファージELISA。実験条件は、上記のユビキチン−1について記載した条件と同じである。
【図13】(フルオレセイン−2)4つのクローンの競合ELISA。実験条件は、上記のユビキチン−2について記載した条件と同じである。
【図14】蛍光結合モノボディLB25.5のH,15N−HSQCスペクトル。約20μMのタンパク質を、100mM 塩化ナトリウムを含む10mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に溶解した。スペクトルは、Varian Unity INOVA 600 NMR分光計で30℃において収集した。
【図15】標的であるユビキチンに対するUbi4−Fn3の結合反応の特徴付け。 (a)ユビキチンに対するUbi4−Fn3結合のファージELISA分析。ユビキチンでコーティングされたウェルに対するUbi4−ファージの結合を測定した。コントロール実験を、ユビキチンを含まないウェルを用いて実行した。 (b)Ubi4−Fn3の競合ファージELISA。Ubi4−Fn3−ファージを、示された濃度の可溶性ユビキチンとともにプレインキュベーションさせ、次いで、ユビキチンコーティングしたウェル中でファージELISA検出を行った。 (c)Ubi4クローンの特異性を試験する競合ファージELISA。Ubi4ファージを、250μg/mlの可溶性タンパク質とともにプレインキュベーションさせ、次いで、(b)のようにファージELISAを行った。 (d)遊離タンパク質を用いるELISA。
【図15C】標的であるユビキチンに対するUbi4−Fn3の結合反応の特徴付け。 (a)ユビキチンに対するUbi4−Fn3結合のファージELISA分析。ユビキチンでコーティングされたウェルに対するUbi4−ファージの結合を測定した。コントロール実験を、ユビキチンを含まないウェルを用いて実行した。 (b)Ubi4−Fn3の競合ファージELISA。Ubi4−Fn3−ファージを、示された濃度の可溶性ユビキチンとともにプレインキュベーションさせ、次いで、ユビキチンコーティングしたウェル中でファージELISA検出を行った。 (c)Ubi4クローンの特異性を試験する競合ファージELISA。Ubi4ファージを、250μg/mlの可溶性タンパク質とともにプレインキュベーションさせ、次いで、(b)のようにファージELISAを行った。 (d)遊離タンパク質を用いるELISA。
【図16】Ubi4−Fn3(黒い符号)および野生型Fn3(白い符号)についての平衡未フォールディング曲線。四角は、TBS(NaCl(150mM)を含むTris−HCl緩衝液(50mM、pH7.5))中で測定したデータを示す。丸は、NaCl(300mM)を含むGly HCl緩衝液(20mM、pH3.3)中で測定したデータを示す。曲線は、2状態モデルに基づく転移曲線のベストフィットを示す。転移を特徴付けるパラメーターを、表8に列挙する。
【図17A】(a)[15N]−Ubi4−K Fn3のH,15N−HSQCスペクトル。(b)残基数に対してプロットした、H(b)および15N(c)化学シフトの差異(δwild−type−δUbi4)。Ubi4−Kで欠失する残基82〜84(黒丸で示す)の値を、0に設定する。白丸は、Ubi4−Kタンパク質中で変異される残基を示す。β鎖の位置を、矢印で示す。
【図17B】(a)[15N]−Ubi4−K Fn3のH,15N−HSQCスペクトル。(b)残基数に対してプロットした、H(b)および15N(c)化学シフトの差異(δwild−type−δUbi4)。Ubi4−Kで欠失する残基82〜84(黒丸で示す)の値を、0に設定する。白丸は、Ubi4−Kタンパク質中で変異される残基を示す。β鎖の位置を、矢印で示す。
【図17C】(a)[15N]−Ubi4−K Fn3のH,15N−HSQCスペクトル。(b)残基数に対してプロットした、H(b)および15N(c)化学シフトの差異(δwild−type−δUbi4)。Ubi4−Kで欠失する残基82〜84(黒丸で示す)の値を、0に設定する。白丸は、Ubi4−Kタンパク質中で変異される残基を示す。β鎖の位置を、矢印で示す。
【図18】(A)Trp蛍光によってモニターした、グアニジン塩酸塩(GuHCl)で誘導されたFNfn10の変性。355nmにおける蛍光発光強度を、GuHCl濃度の関数として示す。線は、2状態変移モデルに対するデータのベストフィットを示す。(B)pHの関数としてプロットした、4M GuHClにおけるFN3の安定性。(C)m値のpH依存性。
【図19】それぞれ、カルボキシル炭素の13C化学シフト(縦軸)およびAspのβHシフト(横軸)、またはカルボキシル炭素の13C化学シフト(縦軸)およびGluのγHシフト(横軸)を示す、FNfn10の二次元H(C)COスペクトル。交差するピークを、それぞれの残基数と共に標識する。
【図20】FNfn10中のAsp残基およびGlu残基のカルボキシル炭素の13C化学シフトのpH依存性シフト。パネルAは、Asp3、67および80、ならびにGlu38および47についてのデータを示す。線は、1つのイオン化基を用いたHenderson−Hasselbalch式(McIntosh,L.P.,Hand,G.,Johnson,P.E.,Joshi,M.D.,Koerner,M.,Plesniak,L.A.,Ziser,L.,Wakarchuk,W.W.& Withers,S.G.(1996)Biochemistry 35,9958−9966)に対するデータのベストフィットである。パネルBは、Asp7および23ならびにGlu9についてのデータを示す。連続線は、2つのイオン化基を用いたHenderson−Hasselbalch式に対するベストフィットを示すが、点線は、単一のイオン化基を用いたこの式に対するベストフィットを示す。
【図21】(A)そのトポロジーに従って示されるFNfn10(配列番号121)のアミノ酸配列(Main,A.L.,Harvey,T.S.,Baron,M.,Boyd,J.,& Campbell,I.D.(1992)Cell 71,671−678)。Asp残基およびGlu残基を灰色の丸を用いて強調する。丸につながる細い線および矢印は、バックボーン水素結合を示す。(B)Asp7および23ならびにGlu9の位置を示すFN3のCPKモデル。
【図22】6.3M 尿素および0.1Mまたは1.0M NaClの存在下、pH7.0およびpH2.4における、野生型FNfn10および変異FNfn10の熱変性。227nmにおける円偏光二色性シグナルを、温度の関数としてプロットする。黒丸は、1M NaClの存在下でのデータを示し、そして白丸は、0.1M NaClの存在下でのデータである。左の列は、pH2.4で取ったデータを示し、右の列はpH7.0でのデータを示す。タンパク質の同一性を、パネル中で示す。
【図23】蛍光を用いてモニターした、FNfn10変異体のGuHCl誘導変性。蛍光データを、2状態転移モデル(Loladze,V.V.,Ibarra−Molero,B.,Sanchez−Ruiz,J.M.& Makhatadze,G.I.(1999)Biochemistry 38,16419−16423)に従って、折り畳まれていないタンパク質の分画に変換し、GuHClの関数としてプロットした。
【図24】D7N(白丸)FNfn10およびD7K(黒丸)FNfn10におけるAsp残基およびGlu残基のカルボキシル13C共鳴のpH滴定。比較のために、野生型(+)についてもデータもまた示す。残基名を、個々のパネルに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図15C】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−45065(P2009−45065A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238701(P2008−238701)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【分割の表示】特願2002−509385(P2002−509385)の分割
【原出願日】平成13年7月11日(2001.7.11)
【出願人】(594063278)リサーチ コーポレイション テクノロジーズ,インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Research Corporation Technologies, Inc.
【Fターム(参考)】