説明

人工衛星

【課題】ロケットに搭載して打ち上げ時には折り畳んでコンパクトに構成でき、またユーザの要求に応じて機能の拡張・縮減が可能な人工衛星を提供することにある。
【解決手段】複数枚のパネル2〜10をヒンジ機構としての蝶番21aによって回動自在に連結し、ロケットに搭載して打ち上げ時には折り畳み可能で、打ち上げ後、宇宙空間で展開可能であり、前記各パネル2〜10には少なくとも太陽電池パネル、バッテリー、姿勢制御機器、通信機器等の機能要素が分割もしくは一括して搭載され、前記各パネルに搭載された機器相互は電気的に接続され、熱伝導シートにより温度差を小さくしていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロケットに搭載して宇宙空間に打ち上げ、地上と通信したり、地球観測を行うことができる人工衛星に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙開発の草創期には、人工衛星は一つ一つが開発品であり、全ての人工衛星はまったく最初から設計・開発が行われ、ロケットに搭載して打ち上げられていた。そして、当時は、個々のコンポーネントや部品などの打ち上げの実績を見ながら次々に改良が加えられる状態であり、一般の工業製品のように、人工衛星自体やその一部の構成要素を標準化することはできなかった。つまり、一品生産であって、コストの高騰と開発期間の長期化の原因となっていた。
【0003】
1970年代後半になって、通信衛星が人工衛星の主なミッションとしてクローズアップされてきた。通信の需要の高まりや、民間会社が人工衛星を所有する時代となって、多くの通信衛星が打ち上げられるようになった。
【0004】
通信衛星では、人工衛星に対する要求のうち、バス部分と呼ばれる衛星のシステム部分はほとんど共通のものであったため、このバス部分を共通のものとして設計し、ユーザ毎に異なる要求に応じて機能部分(ミッション機器部分)だけを個別に設計・開発することが可能となった。
【0005】
衛星のバス部分がほぼ標準化されたことによって、人工衛星の開発・製造コストの低減化と開発期間は大幅に短縮されることになり、人工衛星のメーカも、そのユーザも大きな恩恵を受けることができるようになった。この方式は、ヒューズエアクラフト社などが大きな成功を収め、この基本的な考え方が現在に至っている。
【0006】
従来、個別に設計・製造された人工衛星の例としては、技術試験衛星6型(日本製)が知られている。これはハニカムサンドイッチパネルからなるミッションパネル及びアクセスパネルからなる箱状の構造体に、太陽電池パネル、アンテナモジュール及び通信機器を搭載した人工衛星である(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
また、モジュール型の人工衛星として、衛星のバス部分と呼ばれる共通機器部分を標準化し、衛星のミッション(目的機能部分)のみを注文に応じて製作する例が知られている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0008】
また、モジュール連結型宇宙構造体及びその姿勢制御方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。モジュール式宇宙船開発方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。モジュール式宇宙船用バックボーンインタフェースが知られている(例えば、特許文献3参照。)。モジュール式宇宙船用構造体が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【非特許文献1】編者…茂原正道・鳥山芳夫「衛星設計入門」株式会社 培風館、2002年6月13日発行、P.82の図3.6
【非特許文献2】編者…社団法人 日本航空宇宙学会「航空宇宙工学便覧」発行所、丸善株式会社 平成4年9月30日発行、P.840の表C1.14及びP.841の図C1.22
【特許文献1】特開2000−264299号公報の特許請求の範囲
【特許文献2】特開平10−226399号公報の特許請求の範囲
【特許文献3】特開平10−210057号公報の特許請求の範囲
【特許文献4】特開平10−203494号公報の特許請求の範囲
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のような方式によって通信衛星をはじめとした人工衛星のバス部分の標準化を通じて大きな成功があったが、その他の地球観測衛星などを含めて人工衛星一般としてみた場合、人工衛星の機能・性能の要求のバライティの多さから標準化は難しく、一品生産であるため、その開発には大きなコストと開発期間がかかることは変わりがない。
【0010】
これは、通信衛星の主な搭載物が中継器であり、機能の要求に大差がない状態であるのに対して、一般の人工衛星ではこれよりも大きな電力を使用するレーダやTV放送用の機器類を搭載したりする場合もあり、特別な観測機械を積む人工衛星では姿勢制御系に対する要求が特に厳しくなるものもある。これらの様々な機能要求を持った衛星を開発するには、通信衛星を主な目標として開発された標準化バスは使いずらく、コスト的なメリットが受けられなかった。
【0011】
また、非特許文献1及び2は、構造的に複雑で大型化しており、コンパクトに折り畳むことができないため、小型のロケットに搭載することは不可能である。
【0012】
特許文献1〜4は、いずれもモジュール式構造体やモジュール相互の結合構造であって、異なる機能要素を備えた複数のモジュール(パネル)を組み合わせるという技術思想は開示されていない。
【0013】
本発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ロケットに搭載して打ち上げ時には折り畳んでコンパクトに構成でき、またユーザの要求に応じて機能、性能及び容量の拡張・縮減が可能であり、コストの低減・開発期間の短縮を図ることができる人工衛星を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記目的を達成するために、請求項1は、複数枚のパネルをヒンジ機構によって回動自在に連結し、ロケットに搭載して打ち上げ時には折り畳み可能で、打ち上げ後、宇宙空間で展開可能であり、前記各パネルには少なくともバッテリー、通信機器類が分割もしくは一括して搭載され、前記各パネル相互の機器間は電力及び情報が電送可能であることを特徴とする人工衛星にある。
【0015】
請求項2は、請求項1の前記複数枚のパネルは、当該機器を搭載した通信パネル、CPUパネル、電源パネル、姿勢制御パネル、熱制御パネル及びミッション機器パネルであることを特徴とする。
【0016】
請求項3は、請求項1の前記パネルは、扁平状ボックス構造で、内部にバッテリー、姿勢制御機器、計算機器、通信機器等の機能要素の少なくとも一つが収納され、外表面には太陽電池パネルが装着されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4は、請求項1の前記パネルは、矩形状のパネル本体と、このパネル本体のコーナー部に設けられたコーナーパネルとからなり、コーナーパネルにはパネル相互を連結するヒンジ機構が設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項5は、請求項4の前記コーナーパネルの内部には前記パネル相互を電気的に接続する電源線、信号線のコネクタが設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項6は、請求項1の前記隣り合うパネル相互は、可撓性を有する熱伝導シートによって連結されていることを特徴とする。
【0020】
請求項7は、請求項6の前記可撓性を有する熱伝導シートは、パネルに搭載された機器と接触していることを特徴とする。
【0021】
請求項8は、請求項1の前記パネルの内部の搭載機器が設置されていない空間には、アルミニウムハニカム構造が配置されていることを特徴とする。
【0022】
前記構成によれば、複数枚のパネルがヒンジ機構によって連結されているため、コンパクトに折り畳みでき、ロケットの狭い空間に搭載することができる。また、複数枚のパネルに、ユーザの要求に応じた機器を搭載し、必要なパネルを利用し、パネル数を増減することにより、要求される機能・精度に柔軟に対応することができる。
【0023】
また、パネルの外表面に太陽電池パネルを装着することにより、太陽光線を受ける面積を拡大でき、発生電力の向上が図れる。さらに、パネル相互を可撓性を有する熱伝導シートによって連結することにより、各パネルの温度差を極力ゼロに近くすることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、人工衛星において、ロケットに搭載して打ち上げ時には折り畳んでコンパクトに構成でき、またユーザの要求に応じて機能の拡張・縮減が可能であり、コストの低減・開発期間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を一例としてレンズを用いて光学的観測をする人工衛星の図面に基づいて説明する。
【0026】
図1〜図9は第1の実施形態の人工衛星を示し、図1は展開前の人工衛星の斜視図、図2は展開後の人工衛星の斜視図である。本実施形態においては、略同一サイズの9枚のパネルを後述するヒンジ機構によって折り畳み可能に連結することにより人工衛星1が構成されている。図2の展開状態の人工衛星1について概略的に説明すると、通信パネル2の一端にはミッション機器パネル3が平面的に連結されている。このミッション機器パネル3の他端には第1のCPUパネル4がミッション機器パネル3に対して直角に連結されている。ここで示す人工衛星1の例では、ミッション機器パネル3には、光学的観測をするための装置、例えば焦点距離の長いレンズ等の光学機器が積載されている。
【0027】
第1のCPUパネル4の他端には電源パネル5、第1の姿勢制御パネル6及び第2のCPUパネル7がこの順序で平面的に連結されている。また、第2のCPUパネル7の他端にはイメージセンサ・メモリパネル8が第2のCPUパネル7に対して直角に連結されている。
【0028】
さらに、イメージセンサ・メモリパネル8の他端には第2の姿勢制御パネル9が平面的に連結されている。そして、イメージセンサ・メモリパネル8及び第2の姿勢制御パネル9は、前記通信パネル2及びミッション機器パネル3と平行状態にある。また、第2の姿勢制御パネル9の一側には第3の姿勢制御パネル10が直角に連結されている。第1、第2、第3の姿勢制御パネル6,9,10は直交する3つの方向を向いており、3つの軸回りの姿勢制御力を発生することができる。従って、人工衛星1は展開時には略コ字形をなしており、各パネル2〜10はジグザグ状に折り畳み、結束紐1aによって結束することにより、図1に示すように、積層されてロケットに搭載できるようになっている。ここで示した人工衛星1が略コ字形をしているのは、ミッション機器パネル3のレンズを通った光をイメージセンサ・メモリパネル8で撮像して光学的観測をするものであるからである。
【0029】
各パネル2〜10は、基本的には同一形状、同一サイズであり、一例として第1の姿勢制御パネル6について説明すると、図3〜図9に示すように構成されている。すなわち、軽金属材料あるいはCFRPのような軽量で高強度の複合材料によって形成されたパネル本体11は、平面視で正方形の四隅を三角形状にカットした八角形状をなしている。そして、パネル本体11の四隅には三角形状のコーナーパネル12が結合されている。
【0030】
パネル本体11は、底板13と、周壁を構成する側板14及び蓋板15とによって構成される扁平ボックス形状であり、側板14の四辺には切欠部16が設けられている。また、コーナーパネル12も、底板17と、周壁を構成する側板18及び蓋板19とによって構成される扁平ボックス形状である。そして、コーナーパネル12の底板17と蓋板19がパネル本体11の底板13と蓋板15にそれぞれボルト20によって固定され、パネル本体11に対してコーナーパネル12が連結されている。
【0031】
コーナーパネル12の底板17と側板18との角部にはヒンジ機構を構成する蝶番21aが取付けられ、この蝶番21aによって隣り合うパネル相互を回動自在に連結している。この蝶番21aは付勢ばね等によってパネル相互の連結が展開する方向に付勢されている。なお、蝶番21aに限らず、隣り合うパネル相互を回動自在に連結できるヒンジ機構であればどのような構造のものでもよい。また、蝶番21aと反対側の側板18にはラッチ機構21bが設けられ、パネルを展開したときに、ラッチ機構21bによって展開状態を保持するようになっている。
【0032】
パネル本体11の外表面で太陽光線が当る面、例えば底板13及び蓋板15の外表面には太陽電池パネル22が貼り付けられている。この太陽電池パネル22は、パネル本体11の内部に設置されたバッテリー23に電気的に接続され、バッテリー23にはバッテリー制御部24が設けられている。
【0033】
さらに、パネル本体11の内部には制御器25、LANカード26、無線LANのアンテナ27及び機能要素28が設置され、機能要素28はバッテリー23と電気的に接続されているとともに、制御器25と信号線によって接続されている。機能要素28は、パネルが第1の姿勢制御パネル6である場合には、姿勢制御機器、姿勢を変更するための機器(リアクションホイールという角運動量を保存・放出するデバイス等)であり、通信パネル2である場合には地上との通信用機器であり、各パネル2〜10は機能要素28のみが異なり、他の構成は共通している。
また、隣り合うパネルのパネル本体11は、その内部を通過して切欠部16から導出された可撓性を有するテープ状の熱伝導シート29によって接続されている。この熱伝導シート29は接着剤(図示しない)によってパネル本体11の一部または機器に接着されている。この熱伝導シート29は、高熱伝導性シートであり、各パネル間の温度差を極力「0」に近づけるように機能する。すなわち、各パネルは太陽光線の当り具合や、パネル本体11の内部の制御機器等の放熱等によって温度差が出るが、熱伝導シート29によってパネル相互を接続することにより、温度の高い方のパネルから低いパネルの方へ速やかに熱伝導して全体の温度差を略均一に保つことができる。
【0034】
また、人工衛星1全体で熱の発生や熱入力が過剰で、温度が上がりすぎる場合には、パネル本体11にラジエータを設けてもよい。このラジエータによって熱を宇宙空間に逃すことができ、熱伝導シート29においても放熱させることができる。
【0035】
また、逆に熱の発生が少なく、人工衛星1全体の温度が下がりすぎた場合には、従来の衛星と同様にヒータを用い、ヒータの熱を熱伝導シート29によって伝導するようにしてもよい。このように熱伝導シート29によってパネル相互を連絡することにより、各パネル毎にヒータを設ける必要はなく、ヒータ及びその制御器の数を削減できる。
【0036】
さらに、コーナーパネル12の内部には電源コネクタ30及びフレキシブルコード31が内蔵されており、パネル相互の電気的接続は、コーナーパネル12の電源コネクタ30及びフレキシブルコード31を介して接続される。各パネルの太陽電池で発生した電力は、そのパネル内の機器で使用する他、そのパネル内のバッテリーの充電に使われるが、さらに余剰の電力は、この電気的接続を介して電力が不足している別のパネルに送られる。
【0037】
ここで、本発明者が行った熱伝導シート29及び接着剤の熱伝導確認試験について説明する。熱伝導シート29は、品名:PGSグラファイトシート(Panasonic製)、熱伝導率:800W/mK、厚さ0.15mmである。接着剤は、品名:6030HK(テクノアルファ製)、熱伝導率60W/mKである。
【0038】
パネル間の温度差を最小にするために、熱伝導シートが最も多くの熱量を輸送しなければならない状況(最悪の条件)は、3枚のパネルが直角に接続され、一方のパネルの面は太陽光が直角に入射し、他方のパネルにはまったく太陽光が入射しない場合である。
【0039】
このようなコンフィギュレーションにおいて、熱伝導シートによって輸送せねばならない熱量Qは最悪のケースで、
Q=WsS
=1358×0.3×0.3=120[W]……(1)式
と見積もることができる。Wsは太陽定数、Sはパネルの面積である。パネル間熱輸送は、
・ 熱伝導シートを通る熱の流れ
・ 接着剤を通る熱の流れ
によって行われる。それぞれの熱の流れにおいて、(1)式の120Wを輸送するために必要な温度差について評価したところ、表1及び表2の結果が得られた。
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表1及び表2から分かるように、パネル本体→接着剤→熱伝導シート→接着剤→パネル本体、の順に隣り合うパネルに熱が流れるとしてパネル間の温度差は約5℃となり、温度均一性が実現できると考えられる。
【0042】
図10は熱伝導シートの適用方法に関する第2の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。本実施形態は、パネル本体11の内部に設置された搭載機器32以外の空間にアルミニウムハニカムパネル33を設けるとともに、搭載機器32の上面に熱伝導シート29を接合して設けたものである。
【0043】
アルミニウムハニカムパネル33によってパネル本体11の厚み方向の温度の不均一を防止することができる。また、搭載機器32の上面に熱伝導シート29を接合した状態で、パネル本体11の内部を熱伝導シート29によって通過させることにより、搭載機器32から発生する熱を熱伝導シート29によって隣り合うパネルに熱伝導でき、温度差を少なくすることができる。
【0044】
第1及び第2の実施形態に示す、人工衛星1は、図1に示すようにコンパクトに折り畳んだ状態で、図11に示すようなロケット34に搭載される。図11に示すロケット34は、ロケット本体35の下部にメインエンジン36及び推力増強固定燃料ロケットモータ37が設けられている。ロケット本体35の中間には各種燃料タンク38及び第2段エンジン39が設けられている。ロケット本体35の上部には搭載物接続構造体40がノーズフェアリング41によって囲撓された状態に設けられている。そして、搭載物接続構造体40の上部空間42に人工衛星1が搭載される。あるいは図11に示すように、ロケットが十分に大きい時には、非常に大きな人工衛星を打ち上げるついでに、搭載物接続構造40の脇などに第2番目あるいは第3番目として搭載することができる。この人工衛星1はスプリング等の反発力によってノーズフェアリング41の分割の後、ロケットエンジンの燃焼終了後に宇宙空間に放出され、人工衛星1は図2に示すように、展開されるようになっている。
【0045】
なお、前記実施形態においては、複数枚の矩形状のパネルをヒンジ機構によって回動自在に連結し、ロケットに搭載して打ち上げ時には折り畳み可能で、打ち上げ後、宇宙空間で展開可能に構成したが、パネルの形状及び枚数は一例を示したものであり、限定されるものではなく、展開状態の形態もパネルの枚数の増減や接続の仕方によって変化するものである。どの機能を持つパネルを使用するか、また、パネルに搭載する機器も、ユーザの要求によって適宜変更可能であり、前述した実施形態に限定されるものではない。
【0046】
本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(a)低コスト、信頼性の向上
基本機能を持ったパネルを大量生産することにより、1枚のパネルの低コスト化、信頼性の向上を図ることができる。
【0047】
(b)開発の簡素化
各パネルは、機能は異なっても機械的、電気的、及びデータ上のインタフェースが共通化されているため、製造時の検査か地上試験において検査装置や検査手順の大幅な共通化が可能となる。特に、検査装置の共通化はコストや開発期間の短縮に貢献する。
【0048】
(c)開発作業への小規模企業の参入の促進
インタフェースの共通化はパネル内部にも言うことができる。搭載機器部(機能要素28)が人工衛星内部で接するインタフェースは、今回の考案では標準化されているため、機能要素28を開発する際の条件が予め統一されているので設計目標が立てやすい。従来型の人工衛星の開発では、機能要素28が多種多様にあって、それぞれが相互にインタフェースを形成するために、全ての機器を同時に開発することも多く、機能要素28を開発するための総合力のある大企業にしか取り組むことが難しかった。
【0049】
しかし、内部的なインタフェースがある程度確定していれば、個別の技術に特化した企業が機能要素28を開発するのが容易である。
【0050】
(d)形状の自由度の増加
従来の小さい人工衛星では、展開構造物を搭載することが難しく、今回の実施形態のように長い焦点距離を必要とするような目的を持つ人工衛星を製作することが難しかった。しかし、パネルの展開により人工衛星本体の形状が広がりを持つようにすることができるため、従来の小型衛星では幾何学的に制約があったミッションを達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態の人工衛星を示し、展開前の斜視図。
【図2】同実施形態の人工衛星を示し、展開状態の斜視図。
【図3】同実施形態のパネルの概略的な平面図。
【図4】同実施形態のパネルの折り畳み形態を示す斜視図。
【図5】同実施形態を示し、パネルの内部構造を示す斜視図。
【図6】同実施形態を示し、パネルの分解斜視図。
【図7】同実施形態を示し、コーナーパネルの斜視図。
【図8】同実施形態を示し、コーナーパネルの斜視図。
【図9】同実施形態を示し、コーナーパネルの内部構造を示す斜視図。
【図10】本発明の第2の実施形態を示し、(a)は概略的な平面図、(b)は縦断側面図。
【図11】ロケットに人工衛星を搭載した状態の図。
【符号の説明】
【0052】
1…人工衛星
2〜10…パネル
11…パネル本体
12…コーナーパネル
21a…蝶番(ヒンジ機構)
22…太陽電池パネル
23…バッテリー
25…制御器
29…熱伝導シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のパネルをヒンジ機構によって回動自在に連結し、ロケットに搭載して打ち上げ時には折り畳み可能で、打ち上げ後、宇宙空間で展開可能であり、前記各パネルには少なくともバッテリー、通信機器類が分割もしくは一括して搭載され、前記各パネル相互の機器間は電力及び情報が電送可能であることを特徴とする人工衛星。
【請求項2】
前記複数枚のパネルは、当該機器を搭載した通信パネル、CPUパネル、電源パネル、姿勢制御パネル、熱制御パネル及びミッション機器パネルであることを特徴とする請求項1記載の人工衛星。
【請求項3】
前記パネルは、扁平状ボックス構造で、内部にバッテリー、姿勢制御機器、計算機器、通信機器等の機能要素の少なくとも一つが収納され、外表面には太陽電池パネルが装着されていることを特徴とする請求項1記載の人工衛星。
【請求項4】
前記パネルは、矩形状のパネル本体と、このパネル本体のコーナー部に設けられたコーナーパネルとからなり、コーナーパネルにはパネル相互を連結するヒンジ機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の人工衛星。
【請求項5】
前記コーナーパネルの内部には前記パネル相互を電気的に接続する電源線、信号線のコネクタが設けられていることを特徴とする請求項4記載の人工衛星。
【請求項6】
前記隣り合うパネル相互は、可撓性を有する熱伝導シートによって連結されていることを特徴とする請求項1記載の人工衛星。
【請求項7】
前記可撓性を有する熱伝導シートは、パネルに搭載された機器と接触していることを特徴とする請求項6記載の人工衛星。
【請求項8】
前記パネルの内部の搭載機器が設置されていない空間には、アルミニウムハニカム構造が配置されていることを特徴とする請求項1記載の人工衛星。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−132983(P2008−132983A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9601(P2008−9601)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【分割の表示】特願2002−309645(P2002−309645)の分割
【原出願日】平成14年10月24日(2002.10.24)
【出願人】(502386857)
【出願人】(502386868)さくら技術開発株式会社 (1)