説明

人造合成皮革

本発明は人造合成皮革に係り、さらに詳しくは、a)PVC製またはポリウレタン製の表皮と、b)芯糸が織物組織の間に挿入された編織物、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物、または芯糸が織物組織の間に挿入され、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物と、を合布してなる人造合成皮革に関する。
本発明によれば、PVC樹脂表面層、ポリウレタンフォームクッション層および織物層が火炎貼り合わせ工程により積層された人造合成皮革に替えて、ポリウレタンフォームおよび織物の火炎貼り合わせ工程中に発生するポリウレタンの燃焼ガスおよび残留触媒などの不良要因とモノマーによる変色要因を根本的に除去し、縫製後に縫製個所に発生する縫製皺および折り返し現象が改善され、工程短縮による納期短縮および工程ロスが除去可能な人造合成皮革を提供する効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人造合成皮革に係り、さらに詳しくは、PVC樹脂表面層、ポリウレタンフォームクッション層および織物層が火炎貼り合わせ工程により積層された人造合成皮革に替えて、ポリウレタンフォームおよび織物の火炎貼り合わせ工程中に発生するポリウレタンの燃焼ガスおよび残留触媒などの不良要因とモノマーによる変色要因を根本的に除去し、縫製後に縫製個所に発生する縫製皺および折り返し現象が改善され、工程短縮による納期短縮および工程ロスが除去可能な人造合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車シートカバー用の人造合成皮革は、PVCまたはポリウレタン(PU)スキンとテキスタイルまたは編織物を合布した後、用途に応じて、任意の表面処理を施して製造した製品であり、天然皮革の代わりに汎用されている。
【0003】
前記自動車シートカバー用の人造合成皮革は、縫い易さとクッション性を与えるために、一般に、ポリウレタン3T〜7Tスキンと織物とを火炎で貼り合わせて製造する。
【0004】
図1に、従来のPVC樹脂表面層、ポリウレタンフォームクッション層および織物層が火炎貼り合わせ工程により積層された自動車シートカバー用の人造合成皮革を概略的に示す。
【0005】
図1の人造合成皮革は、縫製に際して縫製個所に皺現象、折り返し現象などを引き起こし、火炎貼り合わせ工程時に発生するポリウレタンフォームの燃焼ガスや残留触媒またはポリウレタンフォームそのものの変色によってPVC樹脂表面層を変色させるなどの品質問題を起こし、PVC樹脂表面層の製造およびポリウレタンフォームと織物との火炎貼り合わせ工程などを経た後に縫製工程に供されて製品の納期が延び、大きな工程ロスを生むという問題がある。
【0006】
特に、自動車シートカバー用の人造合成皮革は、一般家具または雑貨に用いられる人造合成皮革に比べて高い機械的強度と耐光/耐熱安定性が求められてその表面の硬さが高く、硬い傾向にあるため、縫製個所の皺よりが激しいという問題がある。
【0007】
この理由から、縫製個所の皺よりが少なく、製品の不良要因および変色要因が根本的に発生しない自動車シートカバー用の人造合成皮革の開発が切望されているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来の技術の問題点を解消するために、本発明は、PVC樹脂表面層、ポリウレタンフォームクッション層および織物層が火炎貼り合わせ工程により積層された人造合成皮革に替えて、ポリウレタンフォームおよび織物の火炎貼り合わせ工程中に発生するポリウレタンの燃焼ガスおよび残留触媒などの不良要因とモノマーによる変色要因を根本的に除去し、縫製後に縫製個所に発生する縫製皺および折り返し現象が改善され、工程短縮による納期短縮および工程ロスが除去可能な人造合成皮革を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記人造合成皮革製の自動車シートカバーを提供することを目的とする。
【0010】
本発明の上記の目的およびその他の目的は、後述する本発明によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、a)PVC製またはポリウレタン製の表皮と、b)芯糸が織物組織の間に挿入された編織物、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物、または芯糸が織物組織の間に挿入され、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物と、を合布してなる人造合成皮革を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記人造合成皮革製の自動車シートカバーを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、PVC樹脂表面層、ポリウレタンフォームクッション層および織物層が火炎貼り合わせ工程により積層された人造合成皮革に替えて、ポリウレタンフォームおよび織物の火炎貼り合わせ工程中に発生するポリウレタンの燃焼ガスおよび残留触媒などの不良要因とモノマーによる変色要因を根本的に除去し、縫製後に縫製個所に発生する縫製皺および折り返し現象が改善され、工程短縮による納期短縮および工程ロスが除去可能な人造合成皮革を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の自動車シートカバー用の人造合成皮革を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明に従い芯糸が織物組織の間に挿入された編織物が適用された人造合成皮革の一例を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明に従い弾性糸が一緒に編み込まれた編織物が適用された人造合成皮革の一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳述する。
【0016】
本発明に係る人造合成皮革は、a)PVC製またはポリウレタン製の表皮と、b)芯糸が織物組織の間に挿入された編織物、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物、または芯糸が織物組織の間に挿入され、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物と、を合布してなることを特徴とする。
【0017】
前記PVC製の表皮は、可塑剤がPVCの総100重量部を基準として50〜140重量部にて含まれているものであってもよく、好ましくは、80〜120重量部にて含まれているものであるが、この範囲内において、前記PVC製の表皮が十分な柔軟性を有し、縫製に際しての縫製個所の皺よりが低減される効果がある。
【0018】
前記PVC製またはポリウレタン製の表皮は、自動車メーカーが要求する品質を満たすために、選択的に、各種の顔料、乳化剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、静電気防止剤、潤滑剤などよりなる群から選ばれる1種以上が適度な配合量にて配合されたものであってもよい。
【0019】
前記芯糸が織物組織の間に挿入された編織物、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物、または芯糸が織物組織の間に挿入され、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物は、製造される人造合成皮革に優れたクッション性などを与える効果がある。
【0020】
前記編織物は、丸編機、経編み機または平編機を用いて製織された製織組織の織物を意味するが、軽くて伸縮性のあるメリヤス織物であることが好ましい。
【0021】
前記芯糸は、編織物の組織内に芯として挿入される糸を意味し、編織物を構成する糸よりも太いポリエステル糸であることが好ましい。
【0022】
前記芯糸は、人造合成皮革の加工上の圧力(エンボスまたは合布など)が加えられる条件でも編織物のボリューム感を維持する効果があり、さらに、その太さを調整して最終的な人造合成皮革製品のボリューム感および太さを調節することができる。
【0023】
前記弾性糸が一緒に編み込まれた編織物は、弾性糸が編織物の長手方向に沿って千鳥状に製織されたものであってもよく、好ましくは、弾性糸が編織物の複層構造の上下に連結される方式により編み込まれたものであるが、この場合、上下に連結された弾性糸が織物を支持してボリューム感がアップするという効果がある。
【0024】
前記弾性糸は、編織物を構成する糸よりも弾性が高い糸であり、編織物の他の糸よりも太く、フィラー数が少ないポリエステル糸であることが好ましいが、最終的な人造合成皮革製品に優れたボリューム感を与える。
【0025】
前記合布は、接着剤または熱圧着工程によることが好ましい。
【0026】
前記接着剤は、ポリウレタン若しくはPVC系のゾル型の接着剤であることが好ましく、前記熱圧着工程は、1次的にPVC製またはポリウレタン製の表皮と前記編織物を、前記PVC製またはポリウレタン製表皮(シート)の製造時に発生する潜熱を用いて熱圧着した後、後続する発泡およびエンボス工程において発泡およびエンボス作業条件で加えられた熱を用いて2次的に熱圧着することが好ましいが、この場合、織物がPVC製若しくはポリウレタン製の表皮に含浸されて剥離強度が大幅に上がるという効果がある。
【0027】
前記人造合成皮革は、前記a)PVC製またはポリウレタン製の表皮の上に必要に応じて表面処理層がさらに形成されたものであってもよい。
【0028】
前記表面処理層は、自動車シートカバーが要求する耐光性および耐候性などの長期信頼性と表面タッチ感を決める表面摩擦計数などを満たすために所定の表面処理を施して形成された塗膜であり、通常、人造合成皮革の表面処理層に適用可能な物質および方法である場合に特に制限されない。
【0029】
本発明に係る人造合成皮革の具体例を図2および図3に示す。図2および図3の人造合成皮革100は、表面処理層111と、PVC製の表皮112と、接着層113と、編織物114と、芯糸115および弾性糸116を備えている。
【0030】
本発明の自動車シートカバーは、前記人造合成皮革製のものであることを特徴とする。
【0031】
以下、本発明の理解への一助となるために好適な実施例を挙げるが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内において種々の変更および修正が可能であるということは当業者にとって自明であり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属するということも言うまでもない。
【0032】
[実施例]
実施例1
ポリエステル材質の300D高弾性芯糸が挿入された編織物と、PVC製の柔らかな表皮とを、ポリウレタン系接着剤を用いて合布することにより、厚さが0.8〜1.3mmである本発明に係る人造合成皮革を製造した。
【0033】
製造された人造合成皮革を縫製し、且つ、シートカバー張り作業を経て自動車シートカバーを完成した。
【0034】
用いられたPVC製の表皮は、厚さが0.3〜0.8mmであり、可塑剤がPVC100重量部を基準として80〜120重量部にて含まれてなるものであり、用いられた編織物は、目付けが300〜330g/mであり、適用された芯糸が、編み込まれた糸と比較して、フィラー数が少なくて太く、しかも、硬いポリエステル糸であるものであった。
【0035】
実施例2
芯糸(ポリエステル糸)が挿入された編織物の代わりに、一緒に編み込まれた糸と比較してフィラー数が少なくて太く、しかも、硬いポリエステル150D弾性糸が千鳥状に一緒に編み込まれた目付け390g/mの編織物を用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にして本発明に係る人造合成皮革を製造した。
【0036】
[試験例]
前記実施例1および2に従い製造された人造合成皮革および自動車シートカバーを検査したところ、従来品に比べて、縫製工程の便宜性と製造された自動車シートカバーの皺よりおよび折り返しの度合いが大幅に低減されていることを確認することができた。
【符号の説明】
【0037】
11:PVC樹脂表面層、
12:ポリウレタンフォームクッション層、
13:織物層、
20:従来の人造合成皮革、
100:本発明の人造合成皮革、
111:表面処理層、
112:PVC製の表皮、
113:接着層、
114:編織物、
115:芯糸、
116:弾性糸、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)PVC製またはポリウレタン製の表皮と、b)芯糸が織物組織の間に挿入された編織物、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物、または芯糸が織物組織の間に挿入され、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物と、を合布してなる人造合成皮革。
【請求項2】
前記合布に際しては、接着剤が用いられることを特徴とする請求項1に記載の人造合成皮革。
【請求項3】
前記PVC製の表皮には、可塑剤が、PVCの総100重量部を基準として50〜140重量部にて含まれていることを特徴とする請求項1に記載の人造合成皮革。
【請求項4】
前記弾性糸は、編織物の長手方向に沿って千鳥状に編み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の人造合成皮革。
【請求項5】
前記芯糸および弾性糸はポリエステル糸であり、前記編織物の他の糸よりも太く、フィラー数が少ないことを特徴とする請求項1に記載の人造合成皮革。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の人造合成皮革製の自動車シートカバー。
【請求項7】
a)PVC製またはポリウレタン製の表皮と、b)芯糸が織物組織の間に挿入された編織物、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物、または芯糸が織物組織の間に挿入され、弾性糸が一緒に編み込まれた編織物と、を合布するステップを含むが、
前記合布は、接着剤または熱圧着工程によることを特徴とする人造合成皮革の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−510964(P2013−510964A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539800(P2012−539800)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007375
【国際公開番号】WO2011/062375
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(510244710)エルジー・ハウシス・リミテッド (17)
【Fターム(参考)】