説明

他覚的自動聴力検査方法及びその装置

本発明は、聴性誘発電位(auditory evoked potential、AEP)の評価に基づく他覚的聴力検査の自動化方法に関し、検査時間を短縮し、自動化及び時間短縮から不正確さ及び誤りを最小化する。該方法は、予備試験として被験者に基準検査刺激を提示する段階;wave V波のピーク及びSN10ピークを追跡する段階;及び本検査として、各周波数の刺激を提示し、最小強度を追跡し、各周波数の他覚的聴力しきい値を決定する段階;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴性誘発電位(Auditory Evoked Potentials)の測定による他覚的聴力検査を自動化して検査時間を短縮し、自動化及び検査時間短縮による聴力検査結果の不正確性及び誤りを最小化するための方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
他覚的聴力検査において、世界的に最も多く使用される検査方法は、聴性脳幹反応(auditory brainstem response、ABR)聴力検査方法である。
【0003】
ABR聴力検査方法とは、患者の頭部に電極を付着し、検査刺激を最小1500回以上反復提示した後、これを加算平均した時のwave V波の発生有無の判別を通じて患者の聴力状態を診断する検査である。
【0004】
ABR聴力検査方法のような他覚的聴力検査方法を通じて、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz、8000Hzの各周波数に対する患者の細部周波数別聴力しきい値を推定しようとする場合、一般的にABR聴力検査方法で使われるclick刺激は適切でないため、刺激音の持続時間が非常に短く、周波数別提示が可能なtone−pip刺激が主に使用されている。この場合に対して、tone−pip(またはtone−burst)ABR聴力検査方法という用語が国際的に広く通用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のtone−pip ABR聴力検査方法による聴力検査は、患者の細部周波数別聴力しきい値をそれぞれ推定しなければならないため、検査時間が約1.5時間〜2時間程度所要される。また、wave V波のピーク(peak)が、視覚的に識別が可能か否かに基づいて、検査者(結果の解釈者)が患者の聴力しきい値を決定するため、患者の聴力しきい値に近接するほど減少するwave V波の有無判断においては、結局検査者の主観的な判断が介入されざるを得ない。
【0006】
従来のtone−pip ABR聴力検査方法による聴力検査方法の最も大きな問題は、検査に所要される時間が長すぎる点である。各周波数と強度別検査刺激を、それぞれ手動で設定するにおいて多くの時間が所要され、また意味のある信号対雑音比具現のための1500回以上の反復刺激の提示、しきい値に近接するほど減少するwave V波の発生有無に対する主観的な判断などに多くの時間が所要される。
【0007】
上記のような従来技術の問題を解決するために、本発明では、検査者の主観的な判断や、手動操作の手続を必要としない自動化tone−pip ABR聴力検査方法、wave V波とSN10の差値抽出による他覚的聴力しきい値の判別方法、最小の加算平均だけで優れた信号対雑音比を具現できる方法、そしてこれを行なう装置を提案しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するために、検査の開始前、使用者が任意に検査環境を設定する段階(a);検査の直前、被検者の頭部に付着された電極から流入される自発脳電位(EEG:平常脳波)をリアルタイムのグラフィック映像で具現する段階(b);流入される自発脳電位の毎秒単位の周期的雑波成分に対するFFT分析結果を、定量的な表現手段に視角化する段階(c);FFT分析結果に基づいて、顕著に強い周期性雑波を使用者が任意にフィルタリングする段階(d);予備実験段階として、基準検査刺激(例えば、2KHz、90dBHL)を段階(a)で設定したランダム時間間隔の条件に応じて被検者に提示し、wave V波のピーク発生時点を追跡した後、wave V波のピークを含むA区間と、以後誘発されるSN10のピークを含むB区間を設定する段階(e);A区間とB区間の脳電位強度の差が段階(a)で予め設定されたしきい値を超えない最小刺激強度地点を見出して、本検査の検査刺激開始強度を設定する段階(f);本検査の段階として、各周波数別検査刺激を被検者に提示し、A区間がB区間より段階(a)で予め設定された値を超えない最小刺激強度地点を見出して、各周波数別他覚的聴力しきい値を決定する段階(g)を含む他覚的自動聴力検査方法および装置が提供される。
【0009】
上記段階(a)は、検査の開始前、使用者が任意に検査環境を設定する段階であって、検査周波数の個数を選択する段階;電源から流入される電気雑波を除去するためのノッチフィルタのフィルタリング周波数を設定する段階;加算平均時に、低周波性の脳雑波および高周波性の電源高調波(harmonics)雑波をバンドパスフィルタリングするための、高帯域通過フィルタの周波数値と低帯域通過フィルタの周波数値を設定する段階;加算平均の回数を設定する段階;近接した提示刺激の間の時間間隙をランダム化するための時間範囲を設定する段階;検査中の顕著な突発性の電位変化を雑波とみなすために、突発性の電位変化を含む区間(epoch)を加算平均時に除外させるための電位変化時間および強度しきい値を設定する段階;誘発されたwave V波の正ピーク(positive peak)を含むA区間と、以後誘発されるSN10の負ピーク(negative peak)を含むB区間の意味のある差値のしきい値を設定する段階;ユーザーインターフェース上に視角化される各種の座標およびグラフィック映像の規格を設定する段階を含むことができる。
【0010】
上記段階(b)は、検査の直前、被検者の頭部に付着された電極から流入される自発脳電位(平常脳波)をリアルタイムのグラフィック映像で具現する段階であって、既存の方法と異なるものではない。
【0011】
上記段階(c)は、流入される自発脳電位の毎秒単位の周期的雑波成分に対するFFT分析結果を、定量的な表現手段に視角化する段階であって、現在の脳電位測定時に広く適用されている電源(電気)雑波除去用のノッチフィルタ数個だけでは電源高調波による微細雑波まで完全に除去することが難しいため、電源高調波による雑波まで根本的に遮断するためには多数のノッチフィルタが必要である。電源高調波による雑波を正確にフィルタリングするためには、流入される電位に対するリアルタイムの周波数スペクトル分析が必要であり、このためにはFFT分析を用いることが好ましい。
【0012】
上記段階(d)は、上記段階(c)のFFT分析結果に基づいて顕著に強い周期性雑波を使用者が任意にフィルタリングする段階であって、刻々と微細に変化できる電源高調波雑波の周波数内訳と強度内訳を観察してノッチフィルタを慎重に用いることが好ましく、ノッチフィルタリング周波数は、該当の高調波雑波の周波数値と同一の周波数を適用する。
【0013】
上記段階(e)は、本検査の予備実験段階であって、wave V波のピーク位置を追跡し、wave V波のピークを含むA区間と、SN10のピークを含むB区間を設定する段階である。より詳細には、上記段階(a)で設定したランダム時間間隔条件に応じて基準検査刺激(代表的なものとして2KHz、90dBHLの刺激があるが、これは使用者が任意に設定することができる)を被検者に提示する段階;上記段階(a)で設定した突発性の電位変化の除去条件に応じて、加算平均時に除外されている区間(epoch)と除去されずにいる区間の個数を、リアルタイムでカウントして公知する段階;突発性の電位変化の除去条件に該当しないため突発性の電位変化がなかったとみなされた区間だけを加算平均する段階;加算平均された結果から低周波性の脳雑波および高周波性の電源高調波雑波を除去するために、上記段階(a)で設定した高帯域通過フィルタの周波数値と、低帯域通過フィルタの周波数値を適用してバンドパスフィルタリングする段階;提示された検査刺激の刺激周波数に同調して発生することができる刺激雑波を除去するために、検査刺激周波数と同一の周波数値を適用して刺激雑波をノッチフィルタリングする段階;上記段階(a)で設定した加算平均の回数と座標の規格によって加算平均された脳電位結果を、座標上にリアルタイムで表示する段階;誘発されたwave V波の正ピーク(positive peak)を追跡し、これを含むA区間と以後誘発されるSN10の負ピーク(negative peak)を含むB区間を設定する段階を含むことができる。A、B区間の設定に用いることができる条件文の一例は次の通りである。「加算平均された脳電位区間の6ms〜9ms間のピーク(wave V波)発生時点をXとする時、A区間は(X−0.5)ms〜(X+1.5)ms、B区間は(X+1.5)ms〜(X+3.5)msである。」
【0014】
上記段階(f)は、検査刺激の強度を90、85、80、75dBHL又はdBnHLなどに少しずつ減少しながら、A区間とB区間の脳電位強度の差が、段階(a)で予め設定されたしきい値を超えない最小刺激強度の地点を見出してこれをYとして設定し、本検査の検査刺激開始強度をY+ZdB(Zは5、10、15、30などであり得る。)に設定する段階を含むことができる。
【0015】
最後に、上記段階(g)は、本検査の段階であって、各周波数別の検査刺激を被検者に提示し、A区間とB区間の脳電位強度の差が段階(a)で予め設定されたしきい値を超えない各周波数別の最小刺激強度の地点を見出して、該当の周波数別の他覚的聴力しきい値をそれぞれ決定する段階である。段階(g)に適用される細部方法及び手続は、上記説明した段階(e)の詳細内訳と同一である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の好ましい一実施例によって他覚的自動聴力検査を行う装置の構成図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい一実施例による他覚的自動聴力検査方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、添付された図面を参照して、本発明による他覚的自動聴力検査方法および装置の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0018】
本発明は、検査者の主観的な判断や手動操作の手続を必要としない自動化tone−pip(またはtone−burst)ABR聴力検査方法、wave V波とSN10の差値の抽出による他覚的聴力しきい値判別方法、最小の加算平均だけで優れた信号対雑音比を具現することができる方法、そしてこれを行う装置を提案する。
【0019】
本明細書では、まず他覚的自動聴力検査を行う装置の好ましい例に関して詳察した後、検査者の主観的な判断や手動操作の手続を必要としない自動化tone−pip ABR聴力検査方法とwave V波とSN10の差値の抽出による他覚的聴力しきい値検査、そして最小の加算平均だけで優れた信号対雑音比を具現できる方法を全て満足させることができる好ましい実施例について詳察する。
【0020】
図1は、本発明の好ましい一実施例によって他覚的自動聴力検査を行う装置の構成図である。
【0021】
図1を参照すれば、脳電位の分析結果と聴力しきい値を決定する部分がまず例示される(100)。
【0022】
誘発された脳電位の分析結果、聴力しきい値がまだ決定されていないものとみなされる場合、次の刺激を提示する段階が行われる(102)。
【0023】
刺激を提示する方式において、既存の検査者の操作による手動設定方式とは異なり、本発明では、刺激提示部のランダムプロセシングによって、検査者と被検者ともに予測することのできない刺激が設定されて提示されるようになる。他覚的聴力検査において用いることができるtone−pip(またはtone−burst)刺激の周波数には、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz、8000Hzがよく用いられ、より細分化された周波数間隔を設定することによって、より多くの周波数を刺激として設定することができる。
【0024】
tone−pip刺激の強度は、最大130dBSPLから最小0dBSPLまでの多様な強度の刺激が使用可能である。
【0025】
提示される検査刺激は、スピーカを通じて直ちに被検者の耳に聞こえるものではなく、トリガ部を一度経て被検者に提示される(段階104)。トリガ部は、加算平均時に刺激時点を定義するにおいて、必要な刺激発生時点の同期化信号(114)を脳電位分析部(段階100)に送信しながら、これと同時に被検者にスピーカ(106)を通じて検査刺激を聞かせる。
【0026】
被検者に付着される電極の位置と関連し、他覚的自動聴力検査を行う本発明の好ましい実施例では、前頭葉上部に電極を付着することを勧める。前頭葉は、電極付着の面倒さを最小化できる位置であり、本発明が提案する多様な信号対雑音比の改善方法を適用する場合、前頭葉で何ら劣化なく優れた信号対雑音比の誘発脳電位を抽出することができる。
【0027】
被検者の前頭葉から流入される脳電位は、電極連結部(110)を通じて脳電位抽出部(112)に送信される。
【0028】
脳電位抽出部により抽出された脳電位結果と、トリガ部から入力された刺激発生時点の同期化信号は、脳電位分析部および聴力しきい値判別部(100)に同時送信され、リアルタイムで分析された後、被検者の各周波数別最終聴力しきい値が決定される。
【0029】
図2は、本発明の好ましい一実施例による他覚的自動聴力検査方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【0030】
図2を参照すれば、他覚的自動聴力検査を行う前に、まず検査環境を設定する(段階200)。
【0031】
検査環境設定段階は、検査周波数の個数を選択する段階;電源から流入される電気雑波を除去するためのノッチフィルタのフィルタリング周波数値を設定する段階;加算平均時に低周波性の脳雑波および高周波性の電源高調波(harmonics)雑波をバンドパスフィルタリングするための、高帯域通過フィルタの周波数値と低帯域通過フィルタの周波数値を設定する段階;加算平均の回数を設定する段階;近接した提示刺激間の時間間隔(即ち刺激間感覚(inter-stimulus interval)、ISI)をランダム化するための時間範囲を設定する段階;検査中の顕著な突発性の電位変化を雑波とみなすために、突発性の電位変化を含む区間(epoch)を加算平均時に除外させるための電位変化時間および強度のしきい値を設定する段階;誘発されたwave V波の正ピーク(positive peak)を含むA区間と、以後誘発されるSN10の負ピーク(negative peak)を含むB区間の意味のある差値のしきい値を設定する段階;ユーザーインターフェース上に視角化される各種の座標およびグラフィック映像の規格を設定する段階を含むことができる。
【0032】
検査環境の設定後、被検者の頭部に付着された電極から流入される自発脳電位(EEG、平常脳波)をリアルタイムのグラフィック映像に具現して見ることができ、これは既存の方法と異ならない(段階202)。
【0033】
検査直前に自発脳電位(EEG)成分に対するFFT分析(段階204)は、流入される自発脳電位(EEG)の毎秒単位の周期的雑波成分に対するFFT分析結果を、定量的な表現手段に視角化する段階である。現在の脳電位測定時に広く適用されている電源(電気)雑波除去用ノッチフィルタ数個だけでは、代表的な周期的雑波である電源高調波(harmonics)雑波まで完全に除去することが難しいため、電源高調波による雑波まで根本的に遮断するための多数のノッチフィルタが必要である。電源高調波による雑波を正確にフィルタリングするためには、流入される電位に対するリアルタイム周波数スペクトル分析が必要であり、このためにはFFT分析を用いることが好ましい。
【0034】
FFT分析結果に基づいて、顕著に強い(予め設定された強度以上の)周期性雑波を使用者が任意にフィルタリング(段階206)することができる。刻々と微細に変化できる電源高調波雑波の周波数内訳と強度内訳を観察してノッチフィルタを慎重に用いることが好ましく、ノッチフィルタリング周波数は、該当の高調波雑波の周波数値と同一の周波数を適用する。
【0035】
本検査に入る前に予備実験段階を置くことによって、検査の正確性及び信頼性を高めることができ、検査開始ボタンを押すと、まず基準検査刺激が提示される(段階208)。基準検査刺激としては、2KHz、90dBHL(又は60dBnHL)tone−pip刺激があるが、これは使用者が任意に設定することができる。基準検査刺激を含む全ての検査刺激は、検査環境設定時に割り当てられたランダム時間間隔条件に応じて提示される。
【0036】
被検者が基準検査刺激を聞いている間、各tone−pip刺激によって誘発され流入される誘発電位の中には、加算平均の最終結果の歪みをもたらす突発性の電位変化が共に流入されることができる。これらは、たった一つの区間(epoch)でも、加算平均時に除外させることが好ましく、突発性の電位変化を含む区間を加算平均時に除外させるために検査環境設定段階で既に設定した電位変化時間及び強度のしきい値条件に応じて、突発性の微細雑波を含む区間を加算平均時に除外させる(段階210)。
【0037】
突発性の微細雑波を含む区間でない残りの区間は、既存の方式通り、正常的に加算平均する(段階212)。
【0038】
加算平均された最終データに適切な帯域通過フィルタリングを適用して、波形を滑らかあるいは細かくすることができ、低周波性脳雑波および高周波性電源高調波雑波を除去することができる(段階214)。
【0039】
そして、加算平均された最終データには、提示された検査刺激の刺激周波数に同調して発生できる刺激雑派が反映され得るため、検査刺激周波数と同一の周波数値を適用して刺激雑波をノッチフィルタリングする段階が含まれることができる(段階216)。
【0040】
最終加算平均されたデータからwave V波のピークを見出す(段階218)。
【0041】
wave V波のピークが決まると、wave V波のピークを含むA区間と、SN10のピークを含むB区間を設定する(段階220)。誘発されたwave V波の正ピーク(positive peak)を追跡し、これを含むA区間と以後誘発されるSN10の負ピーク(negative peak)を含むB区間を設定する方法の一例は次の通りである。 「加算平均された脳電位区間の6ms〜9ms間のピーク(wave V波)発生時点をXとする時、A区間は(X−0.5)ms〜(X+1.5)ms、B区間は(X+1.5)ms〜(X+3.5)msである。」
【0042】
予備実験(段階208〜220)の基準検査刺激(例、2KHz、90dBHL)の強度を90、85、80、75dBHLなどに少しずつ減少させるかあるいは95、100、105dBHLなどに少しずつ増加させながら、A区間とB区間の脳電位強度の差が既に設定されたしきい値を超えない最小刺激強度の地点を見出して、これをYと設定し、本検査の検査刺激開始強度をY+ZdBに設定する(段階222)。
【0043】
本検査(段階224〜232)は、各周波数別検査刺激を被検者に提示し、A、B区間の脳電位強度の差が既に割り当てられたしきい値を超えない各周波数別の最小刺激強度の地点を見出して、他覚的聴力しきい値を各周波数別に最終決定する段階であって、本検査の細部方法及び手続は、検査刺激の周波数だけを多様化したもので予備実験のそれと異ならない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上で説明したように、本発明による他覚的自動聴力検査方法およびその装置によれば、検査者は自身の主観的な判断や手動操作の手続を必要としないtone−pip(またはtone−burst)ABR検査を各周波数別に自動的に施行して、検査時間を大幅に節約することができ、wave V波とSN10の差値抽出による他覚的聴力しきい値判別方法が適用されることによって、最小の加算平均だけでも優れた信号対雑音比が適用された良質の誘発反応聴力検査結果を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査の開始前、使用者が任意に検査環境を設定する段階(a);
検査の直前、被検者の頭部に付着された電極から流入される自発脳電位(EEG:平常脳波)をリアルタイムのグラフィック映像で具現する段階(b);
流入される自発脳電位の毎秒単位の周期的雑波成分に対するFFT分析結果を、定量的な表現手段に視角化する段階(c);
FFT分析結果に基づいて、顕著に強い周期性雑波を使用者が任意にフィルタリングする段階(d);
予備実験段階として、基準検査刺激(例えば、2KHz、90dBHL)を段階(a)で設定したランダム時間間隔の条件に応じて被検者に提示し、wave V波のピーク発生時点を追跡した後、wave V波のピークを含むA区間と、以後誘発されるSN10のピークを含むB区間を自動設定する段階(e);
A区間とB区間の脳電位強度の差が段階(a)で予め設定されたしきい値を超えない最小刺激強度地点を見出して、本検査の検査刺激開始強度を設定する段階(f);
本検査の段階として、各周波数別検査刺激を被検者に提示し、A区間がB区間より段階(a)で予め設定された値を超えない最小刺激強度地点を見出して、各周波数別他覚的聴力しきい値を決定する段階(g)
を含むことを特徴とする他覚的自動聴力検査方法およびその装置。
【請求項2】
上記段階(a)は、
検査周波数の個数を選択する段階;
電源から流入される電気雑波除去用のノッチフィルタのフィルタリング周波数を設定する段階;
加算平均時に、低周波性の脳雑波および高周波性の電源高調波(harmonics)雑波をバンドパスフィルタリングするための、高帯域通過フィルタの周波数値と低帯域通過フィルタの周波数値を設定する段階;
加算平均の回数を設定する段階;
近接した提示刺激の間の時間間隙をランダム化するための時間範囲を設定する段階;
検査中の突発性の電位変化を含む区間(epoch)を加算平均時に除外させるための電位変化時間および強度しきい値を設定する段階;
誘発されたwave V波の正ピーク(positive peak)を含むA区間と、以後誘発されるSN10の負ピーク(negative peak)を含むB区間の意味のある差値のしきい値を設定する段階;
ユーザーインターフェース上に視角化される各種の座標およびグラフィック映像の規格を設定する段階
を含むことを特徴とする請求項1に記載の他覚的自動聴力検査方法およびその装置。
【請求項3】
上記段階(c)および(d)は、
検査前に予め自発脳電位(EEG)の毎秒単位の周期的雑波成分に対するFFT分析結果を、定量的な表現手段に視角化する段階;
自発脳電位(EEG)のリアルタイムのFFT分析結果から表れる顕著に強い周期性雑波を、該当の周期性雑波の周波数値と同一のリアルタイムノッチフィルタを用いて使用者が任意にフィルタリングする段階を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の他覚的自動聴力検査方法およびその装置。
【請求項4】
上記段階(e)は、
上記段階(a)で設定したランダム時間間隔条件に応じて基準検査刺激(代表的なものとして2KHz、90dBHLの刺激があるが、これは使用者が任意に設定することができる)を被検者に提示する段階;
上記段階(a)で設定した突発性の電位変化の除去条件に応じて、加算平均時に除外されている区間(epoch)と除去されずにいる区間の個数を、リアルタイムでカウントして公知する段階;
突発性の電位変化の除去条件に該当しないため突発性の電位変化がなかったとみなされた区間だけを加算平均する段階;
加算平均された結果から低周波性の脳雑波および高周波性の電源高調波雑波を除去するために、上記段階(a)で設定した高帯域通過フィルタの周波数値と、低帯域通過フィルタの周波数値を適用してバンドパスフィルタリングする段階;
提示された検査刺激の刺激周波数に同調して発生することができる刺激雑波を除去するために、検査刺激周波数と同一の周波数値を適用して刺激雑波をノッチフィルタリングする段階;
上記段階(a)で設定した加算平均の回数と座標の規格によって加算平均された脳電位結果を、座標上にリアルタイムで表示する段階;
誘発されたwave V波の正ピーク(positive peak)を追跡し、これを含むA区間と以後誘発されるSN10の負ピーク(negative peak)を含むB区間を設定する段階
を含むことを特徴とする他覚的聴力検査方法およびその装置であって、特に、A、B区間を設定する条件文形式が、「加算平均された脳電位区間の6ms〜9ms間のピーク(wave V波)発生時点をXとする時、A区間は(X−0.5)ms〜(X+1.5)ms、B区間は(X+1.5)ms〜(X+3.5)msである。」と同一または類似している請求項1に記載の他覚的自動聴力検査方法およびその装置。
【請求項5】
上記段階(f)は、予備実験の基準検査刺激(例えば、2KHz、90dBHL)の強度を85、80、75dBHLなどに少しずつ減少させるかあるいは90、95、100、105dBHLなどに少しずつ増加させながら、A区間とB区間の脳電位強度の差が、既に設定されたしきい値を超えない最小刺激強度の地点を見出してこれをYとして設定し、本検査の検査刺激開始強度をY+ZdBに設定することを特徴とする請求項1に記載の他覚的自動聴力検査方法およびその装置。
【請求項6】
上記段階(g)は、各周波数別の検査刺激を多様な強度で被検者に提示し、A区間とB区間の脳電位強度の差が、既に割り当てられたしきい値を超えない各周波数別の最小刺激強度の地点を見出して、他覚的聴力しきい値を各周波数別に最終決定する段階を含む請求項1に記載の他覚的聴力検査方法およびその装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−504139(P2010−504139A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529098(P2009−529098)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003661
【国際公開番号】WO2008/035850
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508098729)株式会社イアロジック コリア (2)
【住所又は居所原語表記】7F Miji Bidg., 141−4 Changjeon−Dong, Mapo−Gu, Seoul 121−881, Pepublic of Korea
【出願人】(509081779)
【住所又は居所原語表記】7F Miji Bldg.,141−4 Changjeon−Dong, Mapo−Gu, Seoul 121−881, Republic of Korea
【Fターム(参考)】