説明

付加価値記録媒体の発行/認証システム

【課題】 斬新な興趣に富む方法で、付加価値記録媒体のネットワーク認証を行う。
【解決手段】 モチーフ格納手段10内に画像データとして用意された複数のモチーフの中から、2以上のモチーフを選択してグループを定義し、グループ定義手段20内に、各グループを識別コードに対応づけて登録する。付加価値定義手段30内には、各識別コードごとに付加価値を定義する。媒体発行手段40は、1等賞を示す識別コードID0001をもつ媒体を発行する場合、手段20によって示される対応グループの構成要素であるモチーフM1,M4を、二画面切替式ホログラムとして記録して媒体Cを発行する。媒体Cを入手した利用者は、カメラ付携帯電話Tで、撮影角度を変えて、2つのモチーフM1,M4を撮影し、画像データPを受信手段50へ送る。認識手段60でモチーフM1,M4を認識し、認識手段70で識別コードを認識し、認証手段80で1等賞の認証を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加価値記録媒体の発行/認証システムに関し、特に、種々の特典カード、プリペイドカードなどの付加価値カードを発行するとともに、当該カードを所持する正規の利用者を遠隔地から認証するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の特典を享受できる特典カード(たとえば、景品との引き換え、商品の割引、特定のWebへのアクセス、などの特典を与えるためのカード)や、所定金額を予納することにより発行されるプリペイドカードは、クレジットカードとともに、様々な商用分野で利用されている。この特典カードやプリペイドカードは、所定の付加価値が記録された記録媒体というべきものであり、当該付加価値記録媒体の利用者は、媒体に記録されている付加価値に応じた経済的特典を得る権利を保有することになる。たとえば、「1000円」という付加価値が記録されているプリペイドカードの利用者は、「1000円」分の商品を購入したり、「1000円」分のサービスの提供を受けたりする権利を有する。
【0003】
インターネットの普及により、付加価値記録媒体の利用形態も、ネットワークを経由した形態へと広がりつつある。このように、ネットワークを経由した利用形態では、基本的に、遠隔地にいる利用者からのアクセスに対応する必要があり、当該アクセスが、正規の付加価値記録媒体を所有する利用者からのアクセスであることを認証する必要がある。
【0004】
このように、遠隔地にいる利用者の所有する付加価値記録媒体を、ネットワークを介して認証する方法としては、何らかの識別コードを付加価値記録媒体に記録しておき、利用者に、ネットワーク経由で、この識別コードを送信させる、という手法が採られている。受信側のシステムでは、送信されてきた識別コードが正規の識別コード(付加価値記録媒体の発行時に記録した識別コード)であることを認証した上で、当該利用者に対する付加価値提供サービスを実施することになる。たとえば、下記の特許文献1には、利用者が、プリペイドカードに記録された識別コードを視認して読み取り、これをWebブラウザ画面上で入力する作業を行うことにより、当該プリペイドカードの真偽判定を行うことができるシステムが開示されている。プリペイドカードに記録されている識別コードを、正規の購入者のみに視認させるためには、識別コードの印字部分に、スクラッチ可能な隠蔽層を形成しておき、購入者がこの隠蔽層をスクラッチすると、識別コードが初めて露見するような工夫が施されることが多い。
【特許文献1】特開2003−248857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の付加価値記録媒体では、ネットワークを介した認証を行うために、利用者自身に媒体に記録されている所定の識別コードを視認してもらい、これを端末装置に入力して送信してもらう必要があった。ところが、通常、識別コードは無意味な数字や英字の羅列からなるため、端末装置に識別コードを入力する作業は、興趣に欠けた煩雑な作業であり、誤入力のおそれもあるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、興趣に富む斬新な方法で、遠隔地の付加価値記録媒体を確実に認証することが可能になる付加価値記録媒体の発行/認証システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明の第1の態様は、付加価値記録媒体の発行および認証を行うためのシステムにおいて、
複数のモチーフをそれぞれ画像データとして格納しているモチーフ格納手段と、
この複数のモチーフの中から選択された2以上のモチーフのグループを複数組定義し、個々のグループについてそれぞれ固有の識別コードを対応づけたグループ定義手段と、
この固有の識別コードについて、それぞれ所定の付加価値を定義した付加価値定義手段と、
モチーフ格納手段に格納されている画像データを利用して、グループ定義手段に定義されている1グループを構成する2以上のモチーフが、それぞれ異なる観察角度から観察されるように重畳して記録された記録媒体を、付加価値記録媒体として発行する媒体発行手段と、
所定の送信者から送信されてきた画像データを受信する画像データ受信手段と、
モチーフ格納手段に格納されている画像データを参照することにより、画像データ受信手段が受信した画像データに含まれている2以上のモチーフを認識するモチーフ認識手段と、
グループ定義手段を参照することにより、モチーフ認識手段が認識した2以上のモチーフから構成されるグループを特定し、特定されたグループに対応づけられている識別コードを認識する識別コード認識手段と、
付加価値定義手段を参照することにより、画像データを送信してきた送信者を、識別コード認識手段が認識した識別コードについて定義されている付加価値の正規の利用者として認証する利用者認証手段と、
を設けるようにしたものである。
【0008】
(2) 本発明の第2の態様は、付加価値記録媒体の発行を行うためのシステムにおいて、
複数のモチーフをそれぞれ画像データとして格納しているモチーフ格納手段と、
この複数のモチーフの中から選択された2以上のモチーフのグループを複数組定義し、個々のグループについてそれぞれ固有の識別コードを対応づけたグループ定義手段と、
この固有の識別コードについて、それぞれ所定の付加価値を定義した付加価値定義手段と、
モチーフ格納手段に格納されている画像データを利用して、グループ定義手段に定義されている1グループを構成する2以上のモチーフが、それぞれ異なる観察角度から観察されるように重畳して記録された記録媒体を、付加価値記録媒体として発行する媒体発行手段と、
を設けるようにしたものである。
【0009】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第2の態様に係るシステムによって発行された付加価値記録媒体の認証を行うためのシステムにおいて、
複数のモチーフをそれぞれ画像データとして格納しているモチーフ格納手段と、
この複数のモチーフの中から選択された2以上のモチーフのグループを複数組定義し、個々のグループについてそれぞれ固有の識別コードを対応づけたグループ定義手段と、
この固有の識別コードについて、それぞれ所定の付加価値を定義した付加価値定義手段と、
所定の送信者から送信されてきた画像データを受信する画像データ受信手段と、
モチーフ格納手段に格納されている画像データを参照することにより、画像データ受信手段が受信した画像データに含まれている2以上のモチーフを認識するモチーフ認識手段と、
グループ定義手段を参照することにより、モチーフ認識手段が認識した2以上のモチーフから構成されるグループを特定し、特定されたグループに対応づけられている識別コードを認識する識別コード認識手段と、
付加価値定義手段を参照することにより、画像データを送信してきた送信者を、識別コード認識手段が認識した識別コードについて定義されている付加価値の正規の利用者として認証する利用者認証手段と、
を設けるようにしたものである。
【0010】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1または第2の態様に係るシステムにおいて、
付加価値定義手段に、利用可能金額を付加価値として定義しておくようにし、
媒体発行手段が、プリペイドカードとして機能する付加価値記録媒体を発行するようにしたものである。
【0011】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1または第2の態様に係るシステムにおいて、
媒体発行手段が、複数画面切替式のホログラムとして、2以上のモチーフを重畳して記録する処理を行うようにしたものである。
【0012】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第1または第3の態様に係るシステムにおいて、
モチーフ認識手段に、画像データ受信手段が受信した画像データに含まれている商品コードを認識する機能を更に付加するようにしたものである。
【0013】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第1または第3の態様に係るシステムにおいて、
利用者認証手段が、同一の識別コードについては、最先の送信者のみを正規の利用者として認証する処理を行うようにしたものである。
【0014】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第1〜第7の態様に係るシステムにおいて、
モチーフ格納手段に、フラクタル図形からなるモチーフを画像データとして格納させておき、付加価値記録媒体上に、フラクタル図形からなるモチーフを表示するようにしたものである。
【0015】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第1または第3の態様に係るシステムにおけるモチーフ格納手段、グループ定義手段、付加価値定義手段、モチーフ認識手段、識別コード認識手段、利用者認証手段の各機能をコンピュータに実行させるためのプログラムを用意し、当該プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して配付できるようにしたものである。
【0016】
(10) 本発明の第10の態様は、付加価値記録媒体の発行および認証を行うための方法において、
複数のモチーフの中から選択された2以上のモチーフのグループを複数組定義し、個々のグループについてそれぞれ固有の識別コードを対応づけるグループ定義段階と、
この固有の識別コードについて、それぞれ所定の付加価値を定義する付加価値定義段階と、
グループ定義段階で定義した1グループを構成する各モチーフを、それぞれ異なる観察角度から観察されるように重畳して記録するモチーフ記録段階と、
このモチーフ記録段階により得られた記録媒体を、付加価値記録媒体として発行する媒体発行段階と、
付加価値記録媒体に重畳して記録されている各モチーフについての画像データを送信者から受信する画像データ受信段階と、
この画像データ受信段階で受信した画像データに含まれている各モチーフをそれぞれ認識するモチーフ認識段階と、
グループ定義段階で定義したグループに基づいて、モチーフ認識段階で認識した各モチーフから構成されるグループを特定し、特定されたグループに対応づけられている識別コードを認識する識別コード認識段階と、
画像データの送信者を、識別コード認識段階で認識した識別コードについて定義されている付加価値の正規の利用者として認証する利用者認証段階と、
を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る付加価値記録媒体の発行システムによれば、二画面切替式ホログラムなどの技術を利用することにより、2以上のモチーフが重畳して記録された付加価値記録媒体が発行されることになる。この付加価値記録媒体を入手した利用者は、この媒体を、角度を変えて観察することにより、2以上のモチーフを視認することができる。そこで、カメラ付携帯電話などを利用して、撮影角度を変えた撮影を行えば、これらモチーフの画像を撮影することができ、これを送信することができる。一方、本発明に係る付加価値記録媒体の認証システムでは、送信されてきた画像から複数のモチーフを認識することにより、特定の識別コードに対応する正規の付加価値記録媒体上のモチーフであるとの認証が可能になる。このような利用形態は、利用者の立場から見れば、従来の識別コードを入力する利用形態に比べて、極めて興趣に富む斬新な方法であり、しかも誤入力の少ない方法になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0019】
<<< §1.本発明の基本的な実施形態 >>>
図1は、本発明に係る付加価値記録媒体の発行/認証システムの基本構成を示すブロック図である。図示のシステムは、文字通り、付加価値記録媒体の発行処理と認証処理との双方を実行する機能を有するシステムである。ここで、発行処理に関与する構成要素、すなわち、付加価値記録媒体の発行システムを構成する要素は、モチーフ格納手段10、グループ定義手段20、付加価値定義手段30、媒体発行手段40である。この発行システムによって、付加価値記録媒体Cが発行されることになる。一方、認証処理に関与する構成要素、すなわち、付加価値記録媒体の認証システムを構成する要素は、モチーフ格納手段10、グループ定義手段20、付加価値定義手段30(これらは、発行システムを構成する要素でもある)、画像データ受信手段50、モチーフ認識手段60、識別コード認識手段70、利用者認証手段80である。この認証システムによって、付加価値記録媒体Cに対する認証が行われることになる。
【0020】
なお、ここでは説明の便宜上、各構成要素を個々のブロックとして示してあるが、図1に示す各構成要素のうち、モチーフ格納手段10、グループ定義手段20、付加価値定義手段30は、モチーフ認識手段60、識別コード認識手段70、利用者認証手段80は、実用上はコンピュータに所定のデータやプログラムを組み込むことにより実現される構成要素である。また、画像データ受信手段50は、このコンピュータ用の通信装置(たとえば、ネットワーク接続装置)によって実現される手段である。一方、媒体発行手段40は、このコンピュータによって作成されたデータに基づいて、媒体上に物理的に画像を形成する機能をもった構成要素であり、ここで述べる実施形態の場合、物理的なホログラム記録媒体を作成する装置によって構成されている。
【0021】
本発明に係る付加価値記録媒体は、実用上、様々な用途に利用可能であるが、ここでは、商品におまけとして添付される「くじ」に利用した例を、基本的な実施形態として述べることにする。ここでは、より具体的に、菓子のパッケージ内に「くじカード」を封入することとし、この「くじカード」の賞級に応じて、菓子の購入者に種々の特典(たとえば、賞級に応じた景品の送付、特定の有償Webページの閲覧、デジタルコンテンツの配信など)を供与する運用例を考える。
【0022】
本発明は、付加価値記録媒体を遠隔地から認証することを前提としており、実用上は、インターネットなどのネットワーク経由での認証を行うことになる。具体的には、上述した菓子のパッケージに封入されていた「くじカード」が所定の賞級に当選していた場合には、当選者は、所定のサーバーにアクセスして、当選した賞級に応じた特典を取得する手続を行うことになる。従来、このような運用を行う場合、「くじカード」に所定の識別コードを印刷しておき、所定のWebページ上で、当選者に、この識別コードを入力させることにより、当選した「くじカード」の認証を行っていた。入力された識別コードが、正規のコードであった場合には、Webページにアクセスしている当選者は正規の当選者として認証され、所定の特典の供与が行われることになる。しかしながら、このような認証方法をとると、当選者は、無意味な数字や英字の羅列からなる識別コードを入力するという興趣に欠けた煩雑な作業を強いられることになり、また、誤入力を行う可能性もあるという問題があることは、既に述べたとおりである。
【0023】
本発明の特徴は、数字や英字の羅列からなるコードの代わりに、2以上のモチーフを識別コードに代用するという点にある。しかも、本発明では、複数画面切替式ホログラムなどの手法を利用することにより、2以上のモチーフを媒体上に重畳して記録するというユニークな方法をとるため、識別コードの表示方法としては、極めて斬新で興趣に富んだ方法になる。このような方法で2以上のモチーフが重畳記録された媒体を、角度を変えて観察すると、それぞれの観察位置において、所定のモチーフが視認できる。当選者は、カメラ付携帯電話などを利用して、個々のモチーフを撮影し、得られた画像を送信する作業を行えばよいので、コードの誤入力という問題が生じることはない。以下、図1を参照しながら、各構成要素の機能および「くじカード」の発行処理および認証処理の手順を説明する。
【0024】
まず、モチーフ格納手段10には、複数のモチーフが、それぞれ画像データとして格納されている。図1には、説明の便宜上、合計6個のモチーフM1〜M6が格納されている例が示されているが、実用上は、より多数のモチーフを用意するのが好ましい。なお、本願において「モチーフ」とは、何らかの絵柄、図柄、図形、模様、マーク、文字、記号、イラスト等として認識される対象物を広く意味するものであり、人間が視覚的に何らかの対象物として認識できるものであれば、どのようなものを「モチーフ」として用いてもかまわない。図1に示す例では、モチーフM1はハート型、モチーフM2はダイヤモンド、といった比較的単純な図形になっているが、実用上は、より複雑な絵柄や写真を用いてもよい。
【0025】
一方、グループ定義手段20には、モチーフ格納手段10内に用意されている複数のモチーフの中から選択された2以上のモチーフからなるグループが複数組定義されており、個々のグループについてそれぞれ固有の識別コードが対応づけられている。たとえば、図示の例の場合、識別コード「ID0001」に対応づけられたグループは、M1,M4なる2つのモチーフ、すなわち、「ハート型のモチーフ」と「星型のモチーフ」との組み合わせからなるグループである。同様に、識別コード「ID0002」に対応づけられたグループは、M1,M6なる2つのモチーフの組み合わせからなるグループであり、識別コード「ID0003」に対応づけられたグループは、M3,M5なる2つのモチーフの組み合わせからなるグループである。
【0026】
図1に示す例では、いずれのグループも2つのモチーフの組み合わせによって構成されているが、1グループは、2以上のモチーフから構成されていればよいので、3つのモチーフの組み合わせ、4つのモチーフの組み合わせ、といったグループを定義してもかまわない。ここに示す実施形態の場合、1つの固有の識別コードに対して、1組の固有のグループが対応づけられ、識別コードが異なれば、対応するグループを構成するモチーフの組み合わせも異なるようになっている。モチーフ格納手段10内に用意するモチーフの数を増やし、1グループを構成するモチーフの数を増やせば、グループのバリエーションを拡大することができ、多数の識別コードに対応する多数のグループを定義することができる。
【0027】
付加価値定義手段30には、グループ定義手段20内に定義されている固有の識別コードについて、それぞれ所定の付加価値が定義されている。図示の例の場合、識別コード「ID0001」には「1等賞」なる賞級を示す付加価値が定義されており、識別コード「ID0002」には「2等賞」なる賞級を示す付加価値が定義されており、識別コード「ID0003」には「3等賞」なる賞級を示す付加価値が定義されている。図示の実施形態は、「くじカード」に本発明を適用した例であるため、付加価値として、くじの賞級を定義しているが、付加価値定義手段30内に定義される付加価値は、発行される付加価値記録媒体Cの用途に応じて適宜定められることになる。たとえば、付加価値記録媒体Cをプリペイドカードとして利用する場合は、予納金額を示す数値が付加価値として定義される。
【0028】
媒体発行手段40は、物理的な付加価値記録媒体Cを実際に発行する機能をもった構成要素であり、グループ定義手段20内に定義されている個々の識別コードに対応した付加価値記録媒体Cを作成する処理を行う。すなわち、媒体発行手段40は、モチーフ格納手段10に格納されている画像データを利用して、グループ定義手段20に定義されている1グループを構成する2以上のモチーフを、同一の媒体上に記録することにより、付加価値記録媒体Cを作成する処理を実行する。このとき、1グループを構成する2以上のモチーフが、それぞれ異なる観察角度から観察されるような重畳記録が行われる。
【0029】
図1の左上に示す付加価値記録媒体Cには、「ハート型のモチーフ」と「星型のモチーフ」とが重畳して記録された例が示されているが、これは、グループ定義手段20に定義されている識別コード「ID0001」に対応するグループを構成するモチーフM1,M4を記録したものである。
【0030】
もっとも、実際には、図示のように、付加価値記録媒体C上に、2つのモチーフM1,M4が同時に観察されるような記録が行われるわけではない。図2は、図1に示すシステムで発行された付加価値記録媒体Cの観察時の視認特性を説明する図である。付加価値記録媒体C上には、2つのモチーフM1,M4が重畳して記録されているものの、モチーフM1は、所定の観察角度(観察方向)から観察した場合に観察され、モチーフM4は、別な観察角度(観察方向)から観察した場合に観察される。
【0031】
このように、2つの異なるモチーフを、それぞれ異なる観察角度から見たときに観察されるように重畳記録する方法は、ホログラムを利用した手法として広く知られている。図2に示す例のように、2つのモチーフを記録したホログラムは、一般に、二画面切替型ホログラムと呼ばれている。もちろん、3つ以上のモチーフを、それぞれ各モチーフが異なる観察角度から観察されるように記録することも可能であり、そのような記録媒体は、複数画面切替型ホログラムと呼ばれる。このような複数画面切替型ホログラムは、現在、クレジットカードの偽造防止用などで広く利用されており、その作成方法も広く知られた技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0032】
なお、付加価値記録媒体上に複数のモチーフを重畳して記録する方法は、必ずしもホログラムの手法に限定されるものではない。要するに、付加価値記録媒体を手にした者が、異なる角度(方向)から観察することにより、異なるモチーフを視認できるようになっていれば、どのような手法で重畳記録を行ってもかまわない。
【0033】
こうして、媒体発行手段40によって作成された記録媒体は、所定の付加価値を記録した付加価値記録媒体Cとして発行される。上述の例の場合は、たとえば、ボール紙からなる媒体上に、二画面切替型ホログラム記録層を形成して複数のモチーフを重畳して記録したものを、「くじカード」として発行すればよい。この場合、必要に応じて、当該「くじカード」の当たりはずれや賞級を示す文字を印刷するようにする。たとえば、前述した例では、識別コード「ID0001」に対応する「ハート型のモチーフ」と「星型のモチーフ」とが重畳して記録された付加価値記録媒体Cは、「1等賞」なる付加価値が定義された「くじカード」である。
【0034】
なお、図示の「くじカード」には、モチーフとは別に、「1等賞」なる文字が描かれているが、これは、この「くじカード」が「1等賞」に当選したことを明記するためのものである。この実施例では、視認性を向上させるため、この「1等賞」の文字を、通常の印刷(ホログラムではない印刷)により形成しており、図2に示すとおり、いずれの角度から観察しても視認することができる。もちろん、この「1等賞」の文字も、モチーフと一緒にホログラムとして記録するようにしてもかまわない。
【0035】
さて、上述の例の場合、こうして発行された付加価値記録媒体C、すなわち、「くじカード」は菓子のパッケージに封入されることになる。識別コードのバリエーションが十分確保できる場合は、発行したすべての「くじカード」がそれぞれ異なる識別コードを有しているようにすることも可能であるが、菓子の販売数量に比べて、識別コードのバリエーションが足りない場合には、同一の識別コードに対応する「くじカード」を複数枚発行してもかまわない。
【0036】
以上が、本発明に係る発行システムによる付加価値記録媒体Cの発行プロセスである。こうして発行された付加価値記録媒体C、すなわち、「くじカード」は、菓子のパッケージに封入された状態で市場に出荷され、菓子の購入者の手に渡る。購入者は、「くじカード」に印刷されている「1等賞」なる文字を目にして、「1等賞」に当選したことを認識することができる。実用上は、この「くじカード」の裏面や、菓子のパッケージに、各賞級に当選した場合の特典とその取得方法を明記しておくのが好ましい。当選者は、この取得方法に従って、特典取得の手続(たとえば、景品引換の申し込み)を行うことになる。
【0037】
具体的には、当選者は、所定のサーバ−(図1に示す例の場合、画像データ受信手段50)にアクセスして、当選した賞級に応じた特典を取得する手続を行うことになるが、従来のように、文字や数字の羅列からなる識別コードを入力し、これを当該サーバーに送信する、という手続を行う代わりに、「くじカード」に重畳して記録されている複数のモチーフを撮影し、これを画像データとして当該サーバーに送信する、という手続を行うことになる。したがって、特典の取得方法の説明には、当該サーバーのアドレスを明記して、当該サーバー宛てに、モチーフの画像を送信するよう、手順を指示しておくようにする。必要なら、当選者の住所/氏名なども併せて送信してもらうようにする。もちろん、観察角度を変えることにより複数のモチーフが観察できることと、この複数のモチーフをそれぞれ別個の画像として撮影して送信することも、明記しておくようにする。
【0038】
当選者は、このような指示に基づいて、付加価値記録媒体C上に重畳して記録されている複数のモチーフの撮影画像を、画像データ受信手段50へと送信する手続を行う。モチーフの撮影は、一般的には、デジタルカメラを利用して行ってもらえばよい。最近は、デジタルカメラを内蔵した携帯電話が普及しており、実用上、当選者は、このカメラ付携帯電話を図1に示す利用者端末Tとして利用し、モチーフの撮影と画像送信の作業を実行することができる。現在市販されているカメラ付携帯電話は、ボタン1つの操作で撮影が可能なものが多く、また、撮影した画像を簡単な操作で所定のアドレスへと送信する機能を有している。したがって、図2に示す2通りの角度から付加価値記録媒体C上のモチーフを撮影し、これを画像データPとして、画像データ受信手段50へと送信する作業は、比較的簡単なボタン操作で行うことができる。このような方法は、付加価値記録媒体の認証を行うための方法としては、極めて斬新で興趣に富む方法である。
【0039】
もっとも、利用者端末Tは、必ずしもカメラ付携帯電話に限定されるものではなく、付加価値記録媒体C上に重畳して記録されている複数のモチーフをそれぞれ別個に画像データとして取り込む機能と、取り込んだ画像データを画像データ受信手段50へと送信する機能と、を有している装置であれば、どのような装置を用いてもかまわない。このような機能をもった装置の典型例は、上述したようなカメラ付携帯電話であるが、たとえば、一般のデジタルカメラとパソコンとの組み合わせを、利用者端末Tとして用いることも可能である。この他、撮影/通信機能をもったPDAなどを用いてもかまわない。
【0040】
なお、賞級特典として、物理的な景品の提供を行う場合には、景品の郵送先などの情報(住所や氏名)も送信してもらう必要があるが、いわゆる「着メロ」の配信など、コンテンツデータの提供を行う場合には、利用者端末Tに対する認証ができれば十分なので、住所や氏名などの情報入力は不要である。すなわち、当選者が、利用者端末Tから、2つのモチーフの画像を送信する作業を行えば、景品としてのコンテンツデータが当該利用者端末Tに、たとえば、電子メールを利用して送付されてくることになる。
【0041】
続いて、本発明に係る認証システムによる付加価値記録媒体Cの認証プロセスの手順を説明する。ここでは、「くじカード」として発行された付加価値記録媒体Cを入手した当選者が、上述したように、利用者端末Tを用いて、2つのモチーフ(図示の例では、「ハート型のモチーフ」と「星型のモチーフ」)の画像を画像データ受信手段50宛てに送信してきた場合を考える。画像データ受信手段50は、このように、所定の送信者から送信されてきた画像データPを受信する機能をもった構成要素であり、送信元である利用者端末Tを特定する機能も有している。たとえば、利用者端末Tとして、カメラ付携帯電話が用いられた場合であれば、当該携帯電話の電話番号もしくはメールアドレスを認識する機能を有している。
【0042】
モチーフ認識手段60は、画像データ受信手段50が受信した画像データPに含まれているモチーフを認識する処理を行う。この認識処理は、モチーフ格納手段10に格納されている画像データを参照することにより行われる。具体的には、画像データPとして与えられた2つの画像に対して、所定のアルゴリズムに基づくパターン認識を行い、モチーフ格納手段10内に格納されている個々のモチーフの画像に対して、所定の精度で近似するか否かの判定が行われる。このようなパターン認識の技術は、既に公知の技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。図示の例の場合、画像データPには、「ハート型のモチーフ」と「星型のモチーフ」とが含まれており、モチーフ格納手段10に格納されている画像データを参照したパターン認識により、これらのモチーフが、モチーフM1,M4であることが認識されることになる。
【0043】
識別コード認識手段70は、グループ定義手段20を参照することにより、モチーフ認識手段60が認識した複数のモチーフから構成されるグループを特定し、特定されたグループに対応づけられている識別コードを認識する機能を果たす。上述の例の場合、モチーフ認識手段60によって、2つのモチーフM1,M4が認識されているので、グループ定義手段20を参照することにより、この2つのモチーフM1,M4から構成されるグループは、識別コード「ID0001」に対応するグループであることが認識できる。結局、送信されてきた画像データPは、識別コード「ID0001」を示すデータであることが認識できる。
【0044】
最後に、利用者認証手段80によって、画像データPを送信してきた送信者を、「識別コード認識手段70が認識した識別コードについて定義されている付加価値の正規の利用者」として認証する処理が行われる。この処理は、付加価値定義手段30を参照することにより行われる。上述の例の場合、識別コード認識手段70によって、識別コード「ID0001」が認識されているので、付加価値定義手段30を参照することにより、「1等賞」なる付加価値が対応することが確認できる。そこで、利用者認証手段80は、当該送信者を、「1等賞」なる付加価値を享受すべき正規の利用者として認証することになる。
【0045】
図1に示すシステムは、付加価値記録媒体Cを発行し、これを認証するシステムである。したがって、利用者の認証が完了した後、当該利用者に、付加価値を提供するための構成要素は、図1には記載されていないが、実用上は、利用者認証手段80による認証結果に基づき、付加価値の提供プロセスが実行されることになる。たとえば、利用者端末T宛てに、電子メールを利用してデジタルコンテンツを配信したり、画像データPとともに送信されてきた住所宛てに、景品を郵送したりするプロセスが実行される。
【0046】
<<< §2.本発明の変形例に係る実施形態 >>>
以上、§1では、本発明の基本的な実施形態を述べたが、ここでは、本発明の変形例に係る実施形態をいくつか述べておく。
【0047】
(1) プリペイドカード等への応用
上述の実施形態では、付加価値記録媒体Cを、菓子に添付する「くじカード」として発行した例を述べたが、本発明に係る付加価値記録媒体は、何らかの付加価値が付帯された媒体であれば、どのようなものであってもかまわない。すなわち、景品との引き換え、商品の割引、特定のWebへのアクセスやコンテンツデータの取得など、所有者に何らかの特典を与えるための媒体を利用する用途であれば、様々な用途に利用することが可能である。
【0048】
特に、本発明に係る付加価値記録媒体は、プリペイドカードとしての利用にも適している。図1に示すシステムを、プリペイドカードの発行/認証システムとして利用する場合、付加価値定義手段30には、利用可能金額を付加価値として定義しておくようにすればよい。この場合、プリペイドカードを利用して所定金額の支払いを行うたびに、当該支払金額が利用者認証手段80へと伝達されるようにし、付加価値定義手段30に記録されている利用可能金額から当該支払金額を減算する処理が行われるようにすれば、利用可能金額を順次更新することができる。
【0049】
(2) 特典の重複取得の阻止
本発明に係る付加価値記録媒体C上に記録されたモチーフは、何度でも繰り返して撮影することが可能であり、また、撮影により得られた画像データは、自由にコピーすることも可能である。したがって、現実的には、付加価値として付帯された特典を重複して取得する不正行為が行われる可能性が十分にある。
【0050】
たとえば、図1に示す例の場合、「ハート型のモチーフ」と「星型のモチーフ」とを含む画像データPは、付加価値記録媒体Cを撮影することにより何度でも生成することができるし、画像データP自体をコピーすることも可能である。したがって、上述の例の場合、「1等賞」の特典を繰り返し取得することが可能になる。もちろん、実用上は、菓子におまけとして添付する「くじカード」のようなものであれば、特典の重複取得を許したとしても、大きな支障は生じないであろう。すなわち、くじの景品が、いわゆる「着メロ」のダウンロード権のような経済的価値が比較的低いものであれば、画像データPのコピーが流布され、不正に景品を入手する者が現れたとしても、経済的には、黙認しうる範囲と言えよう。しかしながら、景品として物理的な商品を郵送するような場合や、上述したプリペイドカードの場合、特典の重複取得を許すことはできない。
【0051】
このような重複取得を阻止するには、利用者認証手段80が、同一の識別コードについては、最先の送信者のみを正規の利用者として認証するようにすればよい。たとえば、図1に示す例の場合、「ハート型のモチーフ」と「星型のモチーフ」とを含む画像データPが最初に送信されてきた場合、上述したプロセスにより、識別コード「ID0001」の認識が行われ、送信者が「1等賞」なる付加価値を享受できる正規の利用者である旨の認証がなされる。これは、当該送信者が、識別コード「ID0001」についての最先の送信者であると認定されたためである。利用者認証手段80は、この時点で、識別コード「ID0001」についての特典提供処理は完了した旨の記録を行うようにする。具体的には、付加価値定義手段30内の識別コード「ID0001」について、「済」を示すフラグを設定すればよい。このような処理を行っておけば、万一、画像データPがコピーされ、再び同一の画像データPが画像データ受信手段50へ送信されてきたとしても、識別コード「ID0001」については「済」フラグが設定されているので、特典の提供が再度行われることはない。
【0052】
プリペイドカードの場合は、前述したように、プリペイドカードによる支払金額を、利用可能金額から減算する処理を行い、利用可能金額を順次更新することになるが、利用可能金額が0になるまでは、最先の送信者からの送信であると認定すればよい。もちろん、正規の利用者が、プリペイドカードを紛失したような場合は、不正取得者による送信も最先の送信者からの送信と認定され、不正取得者が正規の利用者として認定されてしまうことになるが、これは紛失した者の自己責任となるべき問題である。
【0053】
(3) 商品コードの送信
本発明の特徴は、従来の文字や数字の羅列からなる識別コードを送信する代わりに、識別コードとして機能するモチーフを撮影して、これを画像データとして送信する点にある。この特徴を利用すれば、識別コードだけではなく、商品コードも併せて送信することが可能になる。
【0054】
図3は、商品コード透明シートを利用して、識別コードとともに商品コードの送信を行う実施形態を示す図である。図示する商品コード透明シート91〜93は、それぞれ商品コード「S123」,「S456」,「S789」が印刷された透明なシートである。これらの商品コードは、特定の商品を示すコードとなっている。実用上は、これら商品コードだけでは、利用者が個々の商品との対応関係を把握することができないので、商品名なども印刷しておくのが好ましい。
【0055】
これら商品コード透明シート91〜93は、透明であるため、付加価値記録媒体Cのモチーフ記録部分に重ねて撮影することが可能である。図3に「C+92」なる符号で示された図は、付加価値記録媒体Cの上に商品コード透明シート92を重ねて置いた状態を示している。この例では、商品コード透明シート91〜93上の商品コードを、シートの下辺位置に印刷するようにしてあるので、付加価値記録媒体Cの上に重ねた場合でも、モチーフと商品コードとが重ならないように配慮されている。こうして、付加価値記録媒体Cの上に商品コード透明シート92を重ねた状態で、2方向から撮影すると、図3の下段に示されているような画像データPPを得ることができる。一方の画像には、「ハート型のモチーフ」と商品コード「S456」とが含まれており、他方の画像には、「星型のモチーフ」と商品コード「S456」とが含まれている。
【0056】
このような画像データPPが画像データ受信手段50へ送信されてきた場合、2つのモチーフに基づいて、識別コード「ID0001」の認識が行われる点は、前述の基本的な実施形態と全く同様である。ここに示す変形例では、更に、モチーフ認識手段60が、画像データPPに含まれている商品コードを認識する機能を有している。図3に示す例では、画像の下辺近傍にある絵柄を文字列として解読する処理を実行すれば、商品コードの認識が可能になる。このような文字列認識の手法は、OCR装置などで広く利用されている技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。もちろん、商品コード透明シートに印刷しておく商品コードは、文字列に限定されるものではなく、バーコードなどで表示してもかまわない。
【0057】
図3に示す商品コード透明シート91〜93を利用すると、たとえば、次のような具体的な運用形態が可能になる。まず、プリペイドカードとして機能する付加価値記録媒体Cを利用者に発行しておく。そして、この利用者に対して、商品コード透明シートとして機能する通販カタログを送付する。たとえば、名刺大の透明カードを50枚ほど束にした1組のトランプのような形態の通販カタログを送付したものとしよう。各カードの上半分には、商品写真や説明が印刷されており、下半分は、図3に示すような商品コード透明シート91として機能するよう構成されているものとしよう。このような通販カタログを手にした利用者は、購入希望の商品がある場合、当該商品が印刷された透明カードの下半分(商品コードが印刷されている部分)を、プリペイドカードの上に重ね、プリペイドカード上のモチーフと商品コードとの双方が写るようにして、2方向から撮影すればよい。そうすれば、図3の画像データPPのように、商品コードを含む画像が得られるので、これを画像データ受信手段50へと送信すれば、モチーフとともに、購入希望の商品を示す商品コードを伝えることが可能になる。
【0058】
なお、本願にいう「商品コード」とは、単に、販売対象となる商品を特定するコードだけでなく、景品として提供する商品を示すコードや、デジタルコンテンツの配信権、保険契約権といった種々のサービスの利用権を示すコードも含む広い意味で用いている。別言すれば、本願にいう「商品」とは、有体物だけではなく、無体物をも含む広い概念である。
【0059】
(4) フラクタル図形からなるモチーフ
図1に示す実施形態では、モチーフ格納手段10内に用意するモチーフ(付加価値記録媒体上に重畳して記録されるモチーフ)として、比較的単純な図形を用いているが、本発明を実施するにあたり、フラクタル図形からなるモチーフを用いると、実用上、より円滑な運用が可能になる。フラクタル図形は、自己相似性をもった図形であり、任意の一部を取り出しても、その形状は、常に全体の形状に似ているという特徴を有している。別言すれば、ある特定のフラクタル図形をパターン認識する場合、必ずしもその全体が必要になるわけではなく、その一部分であっても、当該図形が特定のフラクタル図形であることを認識することが可能になる。理論的には、完全なフラクタル図形であれば、どんなに細かい一部分領域を抽出しても、当該フラクタル図形の認識が可能になる。もちろん、実用上は、解像度の問題から、完全なフラクタル図形を通常の画像データとして用意することはできないが、少なくともモチーフの一部分が欠けたような場合であっても、当該モチーフがフラクタル図形であれば、正しい認識が可能になる可能性は高い。
【0060】
このようなフラクタル図形の性質は、本発明におけるモチーフとして利用する上で極めて有利である。上述したとおり、付加価値記録媒体C上に記録されたモチーフは、利用者自身がカメラ付携帯電話などで撮影することになる。したがって、画像内のどの位置に、どの程度の大きさで、どのような向きにモチーフが写っているか、ということは、すべて利用者の撮影状況に依存する問題ということになる。また、撮影時の不手際により、モチーフの一部が欠けてしまうような事態も発生しかねない。たとえば、「ハート型のモチーフ」の場合、上部が欠けてしまうと、モチーフ認識手段60におけるパターン認識処理のプロセスにおいて、「ダイヤ型のモチーフ」と誤認されてしまうおそれがある。
【0061】
フラクタル図形からなるモチーフは、このような弊害に対応する上で非常に有利である。フラクタル図形に対する認識は、「フラクタル次元」というパラメータを利用して行うことができる。この「フラクタル次元」は、いわばフラクタル図形の複雑さの程度を示すパラメータというべきものであり、同一のフラクタル図形であれば、全体をとっても、その一部をとっても、フラクタル次元の値は同じになる。これは、全体も一部も、同じ複雑さをもった図形であるというフラクタル図形の特徴を考えれば当然である。したがって、利用者の撮影時の不手際により、モチーフの一部が欠けてしまったとしても、当該モチーフがフラクタル図形から構成されていれば、モチーフ認識手段60において正しい認識が可能になる。同様の理由により、フラクタル図形からなるモチーフは、画像内のどの位置に、どのような大きさで、どのような向きに写っていたとしても、正しい認識を行うことが可能である。
【0062】
モチーフとしてフラクタル図形を用いる例は、図3で説明した商品コードを重ねて撮影する実施形態と組み合わせると、特にその効果を発揮する。図3に示す例では、モチーフと商品コードとが同一位置に重ならないような配慮を行っていたが、モチーフとして、フラクタル図形を用いれば、そのような配慮は不要になる。たとえば、地模様として機能するフラクタル図形を用いれば、モチーフは付加価値記録媒体の地模様として表現されることになる。その上に、商品コードが文字やバーコードとして印刷された商品コード透明シートを重ねると、地模様の上に商品コードが表示された画像を得ることができる。この地模様からなるモチーフは、フラクタル図形から構成されているので、商品コードと重ならない一部の領域だけを抽出しても、モチーフの認識が可能になる。モチーフと商品コードとが異なる色で観察されるようにしておけば、モチーフ認識手段60は、色に基づいてモチーフのみの部分を抽出することが可能になる。したがって、商品コード透明シートを付加価値記録媒体上に重ねて撮影する利用者は、シートを重ねる際の位置などを細かく気にする必要はなくなる。
【0063】
(5) 付加価値記録媒体の形態
これまで述べた例では、付加価値記録媒体Cが、カード状の形態を有する媒体となっていたが、本発明を実施する上で、付加価値記録媒体Cは、必ずしもカード状である必要はない。たとえば、菓子におまけとして添付する「くじカード」の場合であれば、カード状の媒体を菓子のパッケージ内に封入するという手法をとる代わりに、菓子のパッケージの表面にモチーフを記録する、という手法をとることも可能である。この場合、菓子のパッケージの一部の領域が、付加価値記録媒体Cとして機能することになる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る付加価値記録媒体の発行/認証システムの基本構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すシステムで発行された付加価値記録媒体Cの観察時の視認特性を説明する図である。
【図3】図1に示すシステムの応用例として、商品コード透明シートを利用する実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
10…モチーフ格納手段
20…グループ定義手段
30…付加価値定義手段
40…媒体発行手段
50…画像データ受信手段
60…モチーフ認識手段
70…識別コード認識手段
80…利用者認証手段
91〜93…商品コード透明シート
C…付加価値記録媒体
M1〜M6…モチーフ
P,PP…画像データ
T…利用者端末(カメラ付携帯電話)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモチーフをそれぞれ画像データとして格納しているモチーフ格納手段と、
前記複数のモチーフの中から選択された2以上のモチーフのグループを複数組定義し、個々のグループについてそれぞれ固有の識別コードを対応づけたグループ定義手段と、
前記固有の識別コードについて、それぞれ所定の付加価値を定義した付加価値定義手段と、
前記モチーフ格納手段に格納されている画像データを利用して、前記グループ定義手段に定義されている1グループを構成する2以上のモチーフが、それぞれ異なる観察角度から観察されるように重畳して記録された記録媒体を、付加価値記録媒体として発行する媒体発行手段と、
所定の送信者から送信されてきた画像データを受信する画像データ受信手段と、
前記モチーフ格納手段に格納されている画像データを参照することにより、前記画像データ受信手段が受信した画像データに含まれている2以上のモチーフを認識するモチーフ認識手段と、
前記グループ定義手段を参照することにより、前記モチーフ認識手段が認識した2以上のモチーフから構成されるグループを特定し、特定されたグループに対応づけられている識別コードを認識する識別コード認識手段と、
前記付加価値定義手段を参照することにより、前記送信者を、前記識別コード認識手段が認識した識別コードについて定義されている付加価値の正規の利用者として認証する利用者認証手段と、
を備えることを特徴とする付加価値記録媒体の発行/認証システム。
【請求項2】
複数のモチーフをそれぞれ画像データとして格納しているモチーフ格納手段と、
前記複数のモチーフの中から選択された2以上のモチーフのグループを複数組定義し、個々のグループについてそれぞれ固有の識別コードを対応づけたグループ定義手段と、
前記固有の識別コードについて、それぞれ所定の付加価値を定義した付加価値定義手段と、
前記モチーフ格納手段に格納されている画像データを利用して、前記グループ定義手段に定義されている1グループを構成する2以上のモチーフが、それぞれ異なる観察角度から観察されるように重畳して記録された記録媒体を、付加価値記録媒体として発行する媒体発行手段と、
を備えることを特徴とする付加価値記録媒体の発行システム。
【請求項3】
複数のモチーフをそれぞれ画像データとして格納しているモチーフ格納手段と、
前記複数のモチーフの中から選択された2以上のモチーフのグループを複数組定義し、個々のグループについてそれぞれ固有の識別コードを対応づけたグループ定義手段と、
前記固有の識別コードについて、それぞれ所定の付加価値を定義した付加価値定義手段と、
所定の送信者から送信されてきた画像データを受信する画像データ受信手段と、
前記モチーフ格納手段に格納されている画像データを参照することにより、前記画像データ受信手段が受信した画像データに含まれている2以上のモチーフを認識するモチーフ認識手段と、
前記グループ定義手段を参照することにより、前記モチーフ認識手段が認識した2以上のモチーフから構成されるグループを特定し、特定されたグループに対応づけられている識別コードを認識する識別コード認識手段と、
前記付加価値定義手段を参照することにより、前記送信者を、前記識別コード認識手段が認識した識別コードについて定義されている付加価値の正規の利用者として認証する利用者認証手段と、
を備えることを特徴とする付加価値記録媒体の認証システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
付加価値定義手段に、利用可能金額が付加価値として定義されており、
媒体発行手段が、プリペイドカードとして機能する付加価値記録媒体を発行することを特徴とする付加価値記録媒体の発行/認証システムもしくは付加価値記録媒体の発行システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
媒体発行手段が、複数画面切替式のホログラムとして、2以上のモチーフを重畳して記録することを特徴とする付加価値記録媒体の発行/認証システムもしくは付加価値記録媒体の発行システム。
【請求項6】
請求項1または3に記載のシステムにおいて、
モチーフ認識手段が、画像データ受信手段が受信した画像データに含まれている商品コードを認識する機能を更に有することを特徴とする付加価値記録媒体の発行/認証システムもしくは付加価値記録媒体の認証システム。
【請求項7】
請求項1または3に記載のシステムにおいて、
利用者認証手段が、同一の識別コードについては、最先の送信者のみを正規の利用者として認証することを特徴とする付加価値記録媒体の発行/認証システムもしくは付加価値記録媒体の認証システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のシステムにおいて、
モチーフ格納手段が、フラクタル図形からなるモチーフを画像データとして格納していることを特徴とする付加価値記録媒体の発行/認証システム、発行システム、認証システム。
【請求項9】
請求項1または3に記載のシステムにおけるモチーフ格納手段、グループ定義手段、付加価値定義手段、モチーフ認識手段、識別コード認識手段、利用者認証手段の各機能をコンピュータに実行させるためのプログラムもしくは当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】
複数のモチーフの中から選択された2以上のモチーフのグループを複数組定義し、個々のグループについてそれぞれ固有の識別コードを対応づけるグループ定義段階と、
前記固有の識別コードについて、それぞれ所定の付加価値を定義する付加価値定義段階と、
前記グループ定義段階で定義した1グループを構成する各モチーフを、それぞれ異なる観察角度から観察されるように重畳して記録するモチーフ記録段階と、
前記モチーフ記録段階により得られた記録媒体を、付加価値記録媒体として発行する媒体発行段階と、
前記付加価値記録媒体に重畳して記録されている各モチーフについての画像データを送信者から受信する画像データ受信段階と、
前記画像データ受信段階で受信した画像データに含まれている各モチーフをそれぞれ認識するモチーフ認識段階と、
前記グループ定義段階で定義したグループに基づいて、前記モチーフ認識段階で認識した各モチーフから構成されるグループを特定し、特定されたグループに対応づけられている識別コードを認識する識別コード認識段階と、
前記送信者を、前記識別コード認識段階で認識した識別コードについて定義されている付加価値の正規の利用者として認証する利用者認証段階と、
を有することを特徴とする付加価値記録媒体の発行/認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2005−292889(P2005−292889A)
【公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−102706(P2004−102706)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】