説明

仮想の温度測定点

本発明は、厚壁または軸における温度分布および積分平均温度および/または軸温度を算出する方法に関し、加熱過程または冷却過程における平均積分壁温度を求めるために、多層モデルにおいて各層の平均温度から平均積分壁温度を算出することを特徴とする。このために、本発明によれば、加熱過程または冷却過程において平均積分壁温度を求めるために各層の平均温度を基礎とする多層モデルが使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば蒸気アキュムレータ、蒸気管、バルブケーシング、タービンケーシングまたはタービン軸などのような厚壁の構成要素の壁または軸における温度分布および平均積分温度および/または軸温度を測定する方法に関する。
【0002】
特に構成要素の壁において、例えば蒸気タービン、バルブケーシング、蒸気管において運転モードの変化時に発生するような加熱および冷却過程では、これらの構成要素の厚い壁において著しい材料応力をもたらし得る温度勾配が生じる。
【0003】
まさに火力発電所への用途におけるこの種の温度勾配の監視のために、従来、少なくとも1つ以上の温度測定点が構成要素の壁の中に挿入された。壁温度および作動媒体温度の求められた測定値から構成要素の壁内部の温度差が評価され、特に付属の平均積分壁温度が求められる。平均積分温度と許容限界値との比較は、熱的な材料応力を許容限界内に保つことを可能にする。しかしながら、この方法は比較的高コストでありかつ障害を受けやすい。
【0004】
代替として、壁内に挿入される高価で障害を受けやすい測定点を回避して、あるいは測定点が実現可能でない構成要素(例えばタービン軸)の場合にも、平均積分壁温度を算出することができる。実現可能な方法は、金属棒における熱伝導に関する、とりわけベッセル方程式に基づく算出数学的な等価モデルによるこの温度の算出である。しかしながら、従来、これに基づいて、例えば蒸気動力管の如き巨大技術設備の計装・制御技術において実現されたシステムは、作動媒体の温度変化周期に応じて発振を起こしやすく、これがそのようなやり方で得られる温度値の信頼できる利用を制限する。
【0005】
本発明の基礎をなす課題は、平均積分壁温度および/または軸温度を求める方法であって、当該壁内における温度測定点を使用することなしに壁温度分布を特別に正確に描出しかつとりわけロバストでありかつ本質的に安定である方法を提供することにある。
【0006】
この課題は、本発明によれば、加熱過程または冷却過程において平均積分壁温度を求めるために、各層の平均温度を基礎とする多層モデルが使用されることによって達成される。
【0007】
多層モデルがこのように使用される場合に、構成要素の壁は、着想的には表面に対して平行な、壁厚に依存した個数の層に分割される。各層のために使用される材料データ(熱容量、熱伝導率)は層ジオメトリに依存しない。各層において流入および流出する熱流の過渡的な収支計算が行なわれる。行なわれた過渡的熱流収支計算から対応する平均層温度が求められる。
【0008】
多層モデルは、好ましくは測定値として、プロセス量の蒸気温度TAM(平均値)および蒸気質量流量mAM(ベクトル値)ならびに平衡のとれた初期状態において壁初期温度TAnf(平均値)によって表わすことができる壁内の初期温度分布だけを使用する。蒸気質量流量測定が存在しない場合には、蒸気流量が、圧力pAMおよびバルブ位置HAVもしくは自由通過断面積を基礎とする予備モデルによって算出される。これらのプロセス量は容易に検出可能であり、一般に巨大技術設備の計装・制御技術においてそうでなくても使用できる。特に、当該壁に挿入される付加的な測定点は必要でない。
【0009】
本発明は、加熱過程および冷却過程における壁内の温度分布、従って平均積分壁温度を、高コストで障害を起こしやすい壁内に挿入される測定点を放棄しながらもかつ直接的な温度測定が可能でない場合にも多層モデルにより十分に正確にかつ安定に算出することが可能であるという考察に基づいている。このために、過渡的な熱流収支計算の関数として瞬時壁温度分布が決定される。原理的には、厚壁の構成要素の内側および外側の壁表面温度により、あるいはその上さらに作動媒体温度および周囲温度または絶縁体温度または(例えば軸の場合に)表面温度のみにより動作することも可能である。
【0010】
しかしながら、厚い壁(厚壁)を多層に区分することが特に有利であることが分かった。これから結果として生じる利点は、壁温度分布の改善された決定、従って平均積分壁温度の正確な算出にある。なぜならば、厚い壁の内部における過渡的な温度分布は強い非線形性を有するからである。これは、特に、材料熱伝導率および材料の比熱容量自体が温度依存性であることに基づいている。多層モデルを使用することの他の利点は、温度依存性の熱伝導率および比熱容量の算出のために十分に細かく壁を多層に区分するならば、前向きの算出構造が使用可能であることであり、すなわち現在の層の代わりに直ぐ前の層の平均温度が使用され、それによって正符号も有し得る帰還結合が回避され、かつ算出回路が著しいロバスト特性を有することである。
【0011】
熱伝達係数αの算出は、蒸気凝縮、湿性蒸気および過熱蒸気の考慮のもとに行なわれることが好ましい。そのためにモジュールにおいて作動媒体状態の識別が行なわれる。相応の蒸気成分および水成分での起こり得る凝縮も過熱蒸気状態も識別される。作動媒体として過熱蒸気のみが存在する場合には、作動媒体から第1の壁層への熱流の移行のための熱伝達係数αAMは蒸気流量mAM(ベクトル値)の関数として形成されることが好ましい。
【0012】
これに対して蒸気凝縮が生じる場合、有利に、作動媒体の凝縮割合、いわゆる凝縮成分に対して一定の熱伝達係数αWが使用されるように、熱伝達係数αが算出される。この凝縮成分を求めるために、圧力pAMの関数としての飽和温度TS、作動媒体温度TAMおよび加熱および/または冷却された表面の温度T1(第1の層の平均温度)が使用される。
【0013】
両値の大きい方から厚壁の構成要素の第1の層の温度T1が差し引かれ、その結果が可調整の定数Kと比較される。これらの両値の大きい方が2つの商の除数を形成し、これらの商は、被除数において、作動媒体温度と飽和温度との差TAM−TS、ならびに飽和温度と厚壁の構成要素の第1の層の温度との差TS−T1を持つ。第1の商は、これが正であるかぎり、過熱蒸気の熱伝達係数αAMと掛算される。第2の商は、これが正であるかぎり、凝縮を考慮するために水の熱伝達係数αWと掛算される。両積の和が過熱蒸気の熱伝達係数αAMと比較される。両値の大きい方が結果として生じる熱伝達係数αである。
【0014】
平均積分壁温度TInt-(TInt-の“−”はTIntの上に付く“バー”を表わす。以下同じ)は算出が特に有利にn個の個別層に流入および流出する熱流の過渡的な収支計算から得られる。これはn個のいわゆる層モジュールにおいて行なわれる。
【0015】
第1の層モジュールでは、熱伝達係数α、作動媒体温度TAMならびに第1の層の温度T1および第2の層の温度T2により、作動媒体から第1の層への熱流qAM-1(ベクトル値)ならびに第1の層から第2の層への熱流q1-2(ベクトル値)が算出される。当該層における初期温度TAnfにより、作動媒体から第1の層への熱流と第1の層から第2の層への熱流との過渡的な差qAM-1(ベクトル値)−q1-2(ベクトル値)から、時間にわたる積分によって、第1の層の平均温度T1が得られる。
【0016】
k番目の層モジュールでは、(k−1)番目の層からk番目の層への熱流q(k-1)-k(ベクトル値)およびk番目の層から(k+1)番目の層への熱流qk-(k+1)(ベクトル値)の過渡的な熱流収支計算により、k番目の層の平均温度TKが算出される。すなわち、k番目の層の初期温度TAnf-kにより、k番目の層の流入熱流と流出熱流との過渡的な差q(k-1)-k(ベクトル値)−qk-(k+1)(ベクトル値)の時間にわたる積分によって、k番目の層の平均温度Tkが得られる。
【0017】
最後の層モジュールにおいて最終的に、最後のすぐ前の(n−1)番目の層から最後のn番目の層への熱流と最後の層から熱絶縁体への熱流との過渡的な熱流収支q(n-1)-n(ベクトル値)−qn-ISOL(ベクトル値)から、最後の層の平均温度Tnが算出される。
【0018】
k番目の層の熱伝導率λkおよび比熱容量ckは、多項式、特に2次多項式によって近似されるか、あるいは適切な関数によって指定されることが好ましい。
【0019】
最後に、モジュールにおいて平均積分壁温度TInt-が特に有利に層材料重量および等価壁部分の材料重量を考慮した個々の層の平均温度Tkの重み付けによって求められる。
【0020】
方法全体は、特に蒸気原動設備の計装および制御システムにおける特定の機能強化されたデータ処理装置において実施されることが好ましい。
【0021】
本発明により得られる利点は、特に、構成要素の壁内に挿入される測定点を放棄しながら、作動媒体の質量流量および温度としてのプロセスパラメータならびに壁内の初期温度分布だけから、直接の蒸気輸送量測定が存在しないかまたは可能でない場合には付加的に圧力およびバルブ位置もしくは自由通過断面積を用いて、厚壁の構成要素の壁温度分布および平均積分壁温度を確実かつ安定に指定することができることにある。平均積分壁温度および/または軸温度の算出は、層数を多く設定するほど正確になる。
【0022】
3層モデルおよび絶縁考慮(第4の層)を適用した本発明の実施例を図面に基づいて更に詳細に説明する。
【0023】
図1は3つの層に区分された厚い壁の例としての蒸気管の断面図、
図2は熱伝達係数を算出するためのモジュールのブロック図
図3は第1の層の平均温度を算出するためのモジュールのブロック図、
図4は第2の層の平均温度を算出するためのモジュールのブロック図、
図5は第3の層の平均温度を算出するためのモジュールのブロック図、
図6は平均積分壁温度を算出するためのブロック図を示す。
【0024】
全ての図において、同じ部分には同一の符号が付されている。
【0025】
図1は、厚い壁の例として管部分1を断面図で示す。蒸気管の内部空間2には作動媒体(蒸気)が貫流し、この作動媒体(蒸気)から熱流が第1の層4に伝達される。第1の層4には第2の層6および第3の層8が続いている。管部分1は絶縁体10によって被覆されている。
【0026】
図2によれば、蒸気流量mAM(ベクトル値)の測定値が入力信号として関数発生器32に供給される。関数発生器32は、この入力信号から熱伝達係数αAMを、蒸気の場合について作動媒体供給量mAM(ベクトル値)の関数αAM=f(mAM(ベクトル値))として算出する。この関数は多数の補間点によって与えられ、中間値が適切な補間法によって形成される。
【0027】
部分的な凝縮の場合も考慮するために、作動媒体圧力pAMが関数発生器34の入力に与えられる。関数発生器34は飽和関数TS=f(pAM)を摸擬し、したがって、出力においてその都度の圧力に対して飽和温度TSを供給する。この関数は補間点(蒸気テーブルからの圧力および温度)によって与えられ、中間値が適切な補間法によって求められる。
【0028】
作動媒体温度TAMは最大値発生器36により飽和温度TSと比較される。大きい方の値から第1の層の平均温度T1が減算器38により差し引かれる。差が最大値発生器40を介して調整可能な定数Kと比較される。したがって、最大値発生器40の出力には、
【数1】

なる信号が現れる。これは2つの割算器42および44の除数入力に与えられる。
【0029】
割算器42は被除数入力に、減算器46を介して形成された差TAM−TSを受け取る。関数発生器48は、
【数2】

なる信号を、それが正である場合にのみ乗算器50の一方の入力に与える。その信号は、気化された作動媒体の百分率割合いわゆる蒸気成分を示す。差TAM−TSが負である場合、つまり作動媒体の温度が飽和温度よりも低い場合には、乗算器50の当該入力に信号「0」が現れる。
【0030】
乗算器50の他方の入力には蒸気に対する熱伝達係数αAMが現れる。したがって、加算器58の一方の入力には蒸気成分により重み付けされた熱伝達係数αpDが与えられる。
【0031】
割算器44は、その被除数入力において、減算器52を介して形成された差TS−T1を得る。関数発生器54が、
【数3】

なる信号を、それが正である場合にのみ乗算器56の一方の入力に与える。その信号は凝縮成分の百分率割合を示す。差TS−T1が負である場合、つまり第1の層の平均温度が飽和温度よりも高い場合には、乗算器56の当該入力に信号「0」が現れる。
【0032】
乗算器56の他方の入力には水についての熱伝達係数αWが現れる。したがって、加算器58の他方の入力には凝縮成分により重み付けされた熱伝達係数αpWが与えられる。
【0033】
最大値発生器60の第1の入力には蒸気の場合についての熱伝達係数αAMが存在し、第2の入力には、加算器58によって形成された部分的凝縮の場合についての
【数4】

なる熱伝達係数αpが存在する。両値のうち大きい方が現在の熱伝達係数αである。
【0034】
蒸気質量流量測定が存在しない場合に、蒸気質量流量は、例えば次の算出回路により算出される。関数発生器12において、バルブ位置の実際値HAVが自由通過断面積AAVに変換される。自由通過断面積AAVは乗算器14および16を介して適切な換算係数KU1およびKU2を掛けられて他の乗算器18に与えられる。作動媒体圧力pAMが同様に乗算器20を介して適切な換算係数KU4を掛けられて乗算器18の第2の入力に与えられ、乗算器18の結果が乗算器22の第1の入力に与えられる。乗算器24を介して適切な換算係数KU5を掛けられた作動媒体温度TAMが割算器26の分母入力に与えられ、割算器26の分子入力は1を受け取る。出力には逆数の値が生じる。開平器28を介して平方根の値が乗算器22の第2の入力に与えられる。乗算器22の出力における信号に乗算器30を介して適切な換算係数KU3を掛けられた結果が蒸気流量mAM(ベクトル値)を摸擬する。したがって、全体として、蒸気流量の算出に関して、
【数5】

が生じる。
【0035】
図3による第1の層のためのモジュールは、過渡的な熱流収支計算から第1の層の平均温度T1を求める。このために先ず減算器62を介して作動媒体温度TAMおよび第1の層の平均温度T1から温度差TAM−T1が形成され、乗算器64を介して熱伝達係数αを掛けられる。この信号に乗算器66が、等価な第1の表面熱伝達、すなわち作動媒体から構成要素の壁への熱伝達を表わす適切な係数KALを持たせる。乗算器66の出力には作動媒体から第1の層への熱流に関する信号
【数6】

が現われ、これは減算器68の被減数入力に与えられる。
【0036】
この実施例においては、第1の層の熱伝導率λ1および比熱容量c1の温度依存性が、係数W01,W11およびW21ならびにC01,C11およびC21にて表わされる2次多項式よって近似される。この例において使用される多項式は次の形を有する。
【数7】

【0037】
これは回路技術的に、作動媒体温度TAMが3つの乗算器70,72および74の入力に与えられることによって摸擬される。起こり得る(材料特性に応じた)正帰還の回避およびシステム安定性向上のために、ここでは前向き構造が使用され、すなわち第1の層の平均温度T1の代わりに作動媒体温度TAMが使用される。
【0038】
熱伝導率の算出のために乗算器70の第2の入力に多項式定数W11が与えられる。出力は加算器76の第1の入力に接続されている。
【0039】
2乗器として接続されている乗算器72の出力には作動媒体温度の2乗TAM2に相当する信号が生じる。この信号は乗算器78を介して多項式定数W21を掛けられた後に加算器76の第2の入力に与えられる。
【0040】
多項式定数W01は加算器76の第3の入力に接続されている。加算器76の出力には、上記の式によって与えられる温度依存性の熱伝導率λ1が現われる。
【0041】
比熱容量の算出のために、乗算器74の第2の入力に多項式定数C11が与えられる。乗算器74の出力は加算器80の第1の入力に接続されている。加算器80の第2の入力には多項式定数C01が与えられる。乗算器72の出力に生じる作動媒体温度の2乗TAM2が乗算器82により多項式定数C21を掛けられた後に、加算器80の第3の入力に与えられる。加算器80の出力には、上記式によって与えられる温度依存性の比熱容量c1が現われる。
【0042】
減算器84は、第1の層および次の層の平均温度からなる温度差T1−T2を形成する。この温度差は、乗算器86を介して、加算器76の出力からの温度依存性の熱伝導率λ1を掛けられ、更に乗算器88を介して、層厚および等価表面積への依存性を有する定数KW1を掛けられる。乗算器88の出力には第1の層から第2の層への熱流を表わす信号、すなわち、
【数8】

なる信号が現われる。
【0043】
この信号は減算器68の減数入力に与えられる。減算器68の出力には熱流差qAM-1(ベクトル値)−q1-2(ベクトル値)についての信号が現われる。この信号には、乗算器90により、層材料重量に依存する第1の層における熱変化速度を考慮する係数KT1が掛けられる。
【0044】
結果として生じる信号は、割算器92により、加算器80の出力に生じる温度依存性の比熱容量c1の信号によって割算される。
【0045】
第1の層の平均温度は、熱流差の時間tにわたる積分、すなわち
【数9】

によって得られる。割算器92の出力に現われる信号は積分器94に導かれ、積分器94は初期条件として第1の層の初期温度TAnf1を使用する。
【0046】
図4による第2の層のためのモジュールは、過渡的な熱流収支計算から第2の層の平均温度T2を求める。このために、先ず減算器96を介して第3の層の温度T3および第2の層の平均温度T2から差T2−T3が形成され、乗算器98を介して第2の層の温度依存性の熱伝導率λ2を掛算される。この信号に乗算器100が適切に設定された係数KW2を掛ける。この係数は層厚および表面積への熱伝導率の依存性を含む。乗算器100の出力には、第2の層から第3の層への熱流を表わす信号、すなわち
【数10】

が現われ、この信号は減算器102の減数入力に与えられる。
【0047】
減算器102の被減数入力には第1の層から第2の層への熱流q1-2に相当する信号が与えられている。減算器102の出力は熱流差q1-2(ベクトル値)−q2-3(ベクトル値)を供給する。この信号に、乗算器104が、層材料重量に依存した第2の層における温度変化速度を考慮する可調整の係数KT2を掛ける。続いて、信号は割算器106を介して第2の層の温度依存性熱容量c2によって割算され、それから積分器108の入力に与えられる。積分器108は初期条件として第2の層の初期温度TAnf2を使用する。積分器108の出力には、
【数11】

なる第2の層の平均温度T2が生じる。
【0048】
第2の層の熱伝導率λ2および比熱容量c2の温度依存性が、ここでも、係数W02,W12およびW22ならびにC02,C12およびC22を有する2次多項式よって近似される。多項式は次のとおりである。
【数12】

【0049】
これは回路技術的に、第1の層の平均温度T1が3つの乗算器110,112および114の入力に与えられることによって摸擬される。起こり得る(材料特性に応じた)正帰還の回避およびそれにともなうシステム安定性向上のために、前向きの構造が使用され、すなわち第2の層の平均温度T2の代わりに第1の層の平均温度T1が使用される。
【0050】
熱伝導率の算出のために乗算器110の第2の入力に多項式定数W12が与えられる。出力は加算器116の第1の入力に接続されている。
【0051】
2乗器として接続されている乗算器112の出力には第1の層の平均温度の2乗T12に相当する信号が生じる。この信号は乗算器118を介して多項式定数W22を掛けられた後に加算器116の第2の入力に与えられる。
【0052】
多項式定数W02は加算器116の第3の入力に接続されている。加算器116の出力には、上記の式によって与えられる温度依存性の熱伝導率λ2が現われる。
【0053】
温度依存性の比熱容量の算出のために、乗算器114の第2の入力に多項式定数C12が与えられる。乗算器114の出力は加算器120の第1の入力に接続されている。加算器120の第2の入力には多項式定数C02が与えられる。乗算器112の出力に生じる第1の層の平均温度の2乗T12が乗算器122により多項式定数C22を掛けられた後に、加算器120の第3の入力に与えられる。加算器120の出力には、上記式によって与えられる温度依存性の比熱容量c2が現われる。
【0054】
図5による第3の層のためのモジュールは熱流収支計算から第3の層の平均温度T3を求める。このために先ず減算器124を介して絶縁材の温度TISOLおよび第3の層の平均温度T3から温度差(T3−TISOL)が形成され、乗算器126を介して、絶縁材の熱損失量を表わす適切な可調整定数KISOLを掛けられる。乗算器126の出力には、第3の層から絶縁材への熱流に相当する信号、すなわち、
【数13】

なる信号が現われ、この信号は減算器128の減数入力に与えられる(絶縁材の熱損失の直接指定の可能性も存在する)。
【0055】
減算器128の被除数入力には第2の層から第3の層への熱流q2-3(ベクトル値)に相当する信号が存在する。減算器128の出力は熱流差q2-3(ベクトル値)−q3-ISOL(ベクトル値)を供給する。乗算器130がこの信号に、層材料重量に依存した第3の層における温度変化速度を考慮する可調整係数KT3を掛ける。続いて、信号は割算器132を介して第3の層の温度依存性の比熱容量c3によって割算され、その後積分器134の入力に与えられる。積分器134は初期条件として第3の層の初期温度TAnf3を使用する。積分器138の出力には、
【数14】

なる第3の層の平均積分温度が現われる。
【0056】
第3の層の比熱容量c3の温度依存性が、係数C03,C13およびC23を有する多項式よって近似される。多項式は次のとおりである。
【数15】

【0057】
起こり得る(材料特性に応じた)正帰還の回避およびそれにともなうシステム安定性向上のために、前向き構造が使用され、すなわち第3の層の平均温度T3の代わりに第2の層の平均温度T2が使用される。
【0058】
これは回路技術的に、第2の層の平均温度T2が2つの乗算器136および138の入力に与えられることによって摸擬される。乗算器136の第2の入力には係数C13が与えられる。乗算器136の出力は加算器140の第1の入力に接続されている。加算器140の第2の入力には多項式定数C03が与えられる。乗算器138の出力に生じる第2の層の平均温度の2乗T22が乗算器142により多項式定数C23を掛けられた後に、加算器140の第3の入力に与えられる。加算器140の出力には、上記式によって与えられる温度依存性の比熱容量c3が現われる。
【0059】
図6によれば、平均積分壁温度TInt-が個々の層の平均温度T1,T2,T3の平均温度から求められる。3つの乗算器144,146および148が温度信号に適切な重み付け係数KG1,KG2およびKG3を与える。重み付け係数KG1,KG2およびKG3は個々の層の平均温度に層材料重量に応じた重み付けをする。重み付けされた温度信号は加算器150の入力に達する。加算器150の出力信号は、乗算器152により、等価壁部分の全体材料重量の影響を考慮する係数KGを掛けられる。乗算器152の出力には平均積分壁温度TInt-が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】3つの層に区分された厚い壁の例としての蒸気管の断面図
【図2】熱伝達係数を算出するためのモジュールのブロック図
【図3】第1の層の平均温度を算出するためのモジュールのブロック図
【図4】第2の層の平均温度を算出するためのモジュールのブロック図
【図5】第3の層の平均温度を算出するためのモジュールのブロック図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚壁または軸における温度分布および積分平均温度および/または軸温度を算出する方法において、加熱過程または冷却過程における平均積分壁温度を求めるために、多層モデルにおいて各層の平均温度から平均積分壁温度を算出することを特徴とする方法。
【請求項2】
算出のために作動媒体の温度および質量流量なる変量ならびに厚壁における初期温度が使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
作動媒体の圧力および温度ならびに自由バルブ通過断面積から蒸気流量が求められることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
作動媒体から構成要素の壁への熱伝達についての熱伝達係数が、専ら過熱蒸気の場合において、蒸気流量の関数として求められることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の方法。
【請求項5】
作動媒体から厚壁の構成要素への熱伝達についての熱伝達係数が、凝縮が存在する場合において、凝縮成分に依存して求められることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の方法。
【請求項6】
各層の平均温度が当該層に関する過渡的な熱流収支計算から算出されることを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載の方法。
【請求項7】
各層の熱伝導率の温度依存性が多項式、特に2次多項式によって近似されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
各層の比熱容量の温度依存性が多項式、特に2次多項式によって近似されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
平均積分壁温度が、個々の層の材料重量および等価壁部分の全重量の考慮のもとに、層の平均温度から算出されることを特徴とする請求項1乃至8の1つに記載の方法。

【図4】平均積分壁温度を算出するためのブロック図
【符号の説明】
【0061】
1 管部分
2 内部空間
4 第1の層
6 第2の層
8 第3の層
10 絶縁材
12 関数発生器
14 乗算器
16 乗算器
18 乗算器
20 乗算器
22 乗算器
24 乗算器
26 割算器
28 開平器
30 乗算器
32 関数発生器
34 関数発生器
36 最大値発生器
38 減算器
40 最大値発生器
42 割算器
44 割算器
46 減算器
48 関数発生器
50 乗算器
52 減算器
54 関数発生器
56 乗算器
58 乗算器
60 最大値発生器
62 減算器
64 乗算器
66 乗算器
68 減算器
70 乗算器
72 乗算器
74 乗算器
76 加算器
78 乗算器
80 加算器
82 乗算器
84 減算器
86 乗算器
88 乗算器
90 乗算器
92 割算器
94 積分器
96 減算器
98 乗算器
100 乗算器
102 減算器
104 乗算器
106 割算器
108 積分器
110 乗算器
112 乗算器
114 乗算器
116 加算器
118 乗算器
120 加算器
122 乗算器
124 減算器
126 乗算器
128 減算器
130 乗算器
132 割算器
134 積分器
136 乗算器
138 乗算器
140 加算器
142 乗算器
144 乗算器
146 乗算器
148 乗算器
150 加算器
152 乗算器
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−512842(P2009−512842A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536004(P2008−536004)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066704
【国際公開番号】WO2007/045546
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】