説明

仮設材連結具

【課題】異なる断面寸法・形状の側桁又は横架材に手摺支柱等の仮設部材を取付けることができる仮設材連結具を提供する。
【解決手段】支持部材(11,18)は、仮設材(2,7)を支持するとともに、横架材又は側桁(3)の上部に接触して仮設材連結具(1,1')に対する横架材又は側桁の上方変位を阻止する。第1側壁部(12,24)の内側面によって形成された側部当接面(32)は、横架材又は側桁の第1側面(3b)に面接触する。揺動部材(14)は、第2側壁部(13,17)に枢動可能に連結され、その下部傾斜当接面(34)は、横架材又は側桁の下端角部(3f)に点接触状態に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設材連結具に関するものであり、より詳細には、上下方向に延びる仮設支柱等の仮設材を仮設横架材又は仮設側桁に解体可能に固定する仮設材連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築・土木工事の工事現場に仮設される枠組足場、単管足場、高所作業用ローリングタワー等の仮設足場は、一般に多層構造を有することから、作業者等が各層又は各階の作業床を移動するための上下方向の連絡通路として、仮設階段が仮設足場の適所に配設される。この種の仮設階段は、例えば、実開平6−62092号公報に記載される如く、側桁、踏板、手摺等を構成する各種の金属製部材(アルミニウム合金製型材)を組立てた構造を有する。このような仮設階段においては、側桁の各端部が上層及び下層の横架材に係止し、踏板の両端が左右の側桁に支持され、手摺支柱が支柱支持具によって側桁に取付けられる。
【0003】
従来の仮設階段においては、支柱支持具は、支柱取付け用ブラケットをボルト等の固定具で側桁側面に固定した構造を有することから、手摺支柱の取付け時には、金属部材の孔明け加工等の加工が必要となる。このため、手摺の組付け作業及び解体作業は、比較的多くの時間・工数を要する煩雑な作業であり、しかも、手摺支柱の取付位置は、手摺を一旦側桁に取付けた後は、その変更、調整等を行うことが極めて困難である。
【0004】
このような仮設階段の手摺支柱の支持構造を改良し、側桁に対する手摺支柱の取付け作業及び解体作業を簡素化することを意図した仮設階段用手摺の取付装置が、特開平10−252258号公報に開示されている。
【0005】
この取付装置は、仮設階段の側桁の上面側部分を把持する上部クランプ部材と、側桁の下面側部分を把持する下部クランプ部材とを有し、上部クランプ部材は手摺支柱の下端部に固定され、下部クランプ部材は上部クランプ部材の下側において手摺支柱の下端部に枢着される。下部クランプ部材は、上部クランプ部材に対して枢動し、上部クランプ部材と協働して方形断面の側桁収容空間を形成する。上下のクランプ部材は、ボルト・ナット等の固定手段によって上下方向に互いに接近するように締付けられ、側桁収容空間内の側桁は、上下のクランプ部材によって強圧される。この結果、側桁、手摺支柱及びクランプ部材は一体化し、手摺支柱は、側桁に固定される。手摺支柱を解体する場合には、上記固定手段を弛緩して上下のクランプ部材を互い開放すれば良い。
【特許文献1】実開平6−62092号公報
【特許文献2】特開平10−252258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような取付装置によれば、金属部材の孔明け加工等を省略し、側桁に対する手摺支柱の取付け作業又は解体作業を簡素化することが可能となり、しかも、側桁に取付けた手摺支柱の位置を取付け後に変更又は調整することができる。
【0007】
しかし、上下のクランプ部材は、一定且つ方形断面の側桁収容空間を画一的に形成し、上下の水平面と左右の垂直面を圧力下に側桁外面に当接せしめるように構成されているにすぎない。即ち、この取付装置は、予め設定された所定断面の側桁に対して使用された場合には所望の如く手摺支柱を側桁に固定し得るかもしれないが、異なる断面寸法・形状の側桁に対して使用された場合、クランプ部材の枢動が側桁によって阻止される結果として、上下のクランプ部材が所望の如く閉鎖せず、或いは、固定手段によるクランプ部材の締付け後にクランプ部材と側桁外面との間に隙間又は遊び空間等が発生し、その結果、手摺支柱を堅固に側桁に固定することができないといった状態が生じる。
【0008】
これに対し、実際の建設工事では、枠組足場、単管足場、高所作業用ローリングタワー等の異種の仮設足場が適宜使用されており、多くの場合、仮設階段の側桁の断面寸法・形状等は、足場の形式に相応して相違する。また、仮設階段の側桁として、アルミニウム合金製型材が一般に使用されているが、仮設階段の各製造会社が使用する型材の断面寸法・形状は必ずしも一定ではない。このため、上下のクランプ部材によって一定且つ方形断面の側桁収容空間を画一的に形成するように構成された従来の取付装置では、断面寸法・形状が相違する各種の仮設階段の側桁に適応することができない。
【0009】
同様に、水平な仮設作業通路に設置される手摺支柱等を水平な横架材に取付けるための取付装置等においても、断面寸法・形状が相違する横架材に対して手摺支柱等を取付ける際、共通に使用可能な仮設材連結具が存在せず、このような部材の開発が望まれる。
【0010】
即ち、側桁又は横架材の断面寸法・形状の相違に対する仮設材連結具の非適応性は、仮設階段のみならず、側桁又は横架材に仮設材を一体的に連結するための仮設材連結具全般に関し、共通に認識される課題でもある。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、断面寸法・形状が相違する側桁又は横架材の外面に圧力下に当接して該側桁又は横架材に堅固に固着し、異なる断面寸法・形状の側桁又は横架材に手摺支柱等の仮設部材を取付けることができる仮設材連結具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明は、仮設足場又は仮設階段の横架材又は側桁(3)の外面に圧力下に当接して該横架材又は側桁と一体化するとともに、仮設材(2,7)を支持し、該仮設材を横架材又は側桁に一体的に連結する仮設材連結具(1,1')において、
前記仮設材を支持するとともに、前記横架材又は側桁の上部に接触して前記仮設材連結具に対する前記横架材又は側桁の上方変位を阻止する支持部材(11,18)と、
前記支持部材から一体的に下方に延びる第1側壁部(12)の内側面によって形成され、前記横架材又は側桁の第1側面(3b)に面接触する側部当接面(32)と、
前記第1当接面と反対の側に位置する前記横架材又は側桁の第2側面(3c)に沿って前記支持部材から一体的に下方に延びる第2側壁部(13,17)に枢動可能に連結されるとともに、前記第2側面の下端角部(3f)に点接触状態に当接する下部傾斜当接面(34)を形成する揺動部材(14)と、
該揺動部材の先端部に枢動可能に連結されるとともに、前記第1側壁部の下端部に緊締され、前記下部傾斜当接面を前記横架材又は側桁の下端角部に点接触状態に当接せしめる緊締具(15)とを有することを特徴とする仮設材連結具を提供する。
【0013】
一般には、仮設足場又は仮設階段の横架材又は側桁として、角形、チャンネル形、コの字形等の断面を有する金属型材が使用されており、これらの部材は、全体的に概ね方形断面を有するが、本発明の上記構成によれば、横架材又は側桁の下端角部は、連結具の下部傾斜当接面に当接する。緊締具の緊締力は、下部傾斜当接面と下端角部との接点を介して横架材又は側桁に作用する。横架材又は側桁は、その上方移動を支持部材によって規制され、その片側方向への移動を側部当接面によって規制されているので、緊締具の緊締力は、点接触状態の接点を介して上方及び片側方向に適当に分散する。即ち、横架材又は側桁は、緊締力によって支持部材と側部当接面とに押圧され、仮設連結具に固定される。
【0014】
好ましくは、上記支持部材は、横架材又は側桁の上面に面接触する上部当接面と、横架材又は側桁の第2側面の上端角部に点接触状態に当接する上部傾斜当接面とを有する。横架材又は側桁は、緊締具によって上方に押圧されると、その断面寸法・形状に相応して、その上面を支持部材の上部当接面に面接触させるか、或いは、その上端角部を支持部材の上部傾斜当接面に点接触状態に当接させる。
【0015】
横架材又は側桁の上面が支持部材の上部当接面に面接触した状態では、横架材又は側桁は、二面と一点で圧力下に仮設材連結具と接触する。二面は、上方及び片側方向の相対変位を阻止する。即ち、点接触形態の当接部に作用する斜め上方(上方且つ片側方向)の力の作用を受けた横架材又は側桁は、仮設材連結具に対して二面及び一点でその相対位置を固定される。
【0016】
他方、横架材又は側桁の上端角部が上部傾斜当接面に点接触形態に当接した状態では、横架材又は側桁は、一面及び二点で圧力下に仮設材連結具と接触する。一面は、片側方向の相対変位を阻止し、一点は、上方の相対変位を阻止する。即ち、点接触形態の当接部に作用する斜め上方(上方且つ片側方向)の力の作用を受けた横架材又は側桁は、仮設材連結具に対して一面及び二点でその相対位置を固定される。
【0017】
このように二面一点又は一面二点で横架材又は側桁と仮設連結具とを相対的に固定するように構成された本発明の仮設連結具は、上下のクランプ部材で横架材又は側桁に面接触するにすぎない従来の連結具(特許文献2)の接触形態とは全く異なる接触形態を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の仮設材連結具によれば、断面寸法・形状が相違する側桁又は横架材の外面に圧力下に当接して該側桁又は横架材に堅固に固着し、異なる断面寸法・形状の側桁又は横架材に手摺支柱等の仮設部材を取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好適な実施形態によれば、支持部材は、横架材又は側桁の上面に面接触可能な上部当接面(31)と、横架材又は側桁の第2側面の上端角部に当接可能な上部傾斜当接面(33)とを有する。
【0020】
好ましくは、揺動部材及び緊締具の各枢動軸線は、横架材又は側桁の軸線方向と実質的に平行に配向される。
【0021】
更に好ましくは、揺動部材は、横架材又は側桁の軸線方向に間隔を隔てて配置された複数の板材からなり、下部傾斜当接面は、複数の板材の上縁面によって形成される。
【0022】
本発明の更に好適な実施形態によれば、緊締具は、揺動部材の先端部に基端部を枢着されたボルト(22)と、第1側壁部の下端部に対して締結されたナット(23)とから構成され、ボルトは、第1側壁部の下端に形成された下方開口形凹部(25,26)を貫通して外方に延び、ナットは、第1側壁部の外側(24)からボルトに螺着する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、支持部材は、手摺支柱(2)を支持する支柱支持具(4、5)を有し、或いは、仮設階段又は仮設通路に巾木を形成する板状部材(7)を支持する巾木支持具(8)を有する。
【0024】
所望により、常設構造物の横架材又は側桁の外面に圧力下に当接して該横架材又は側桁と一体化するとともに、常設構造物の付帯機器、付帯装置又は付帯器具を支持し、付帯装置又は付帯器具を横架材又は側桁に一体的に連結する連結具として、本発明の連結具を使用しても良い。
【実施例1】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0026】
図1(A)〜(E)は、本発明の実施例に係る仮設材連結具の構成を示す正面図、右側面図、左側面図、平面図及び底面図であり、図2は、仮設材連結具の使用状態を示す正面図である。
【0027】
仮設材連結具1は、建築工事又は土木工事等の仮設足場において、手摺支柱2を仮設階段の側桁3(図2に仮想線で示す)に取付けるのに使用される。仮設材連結具1は、頂板部11、第1側板部分12、第2側板部分13、揺動部材14及び緊締具15を備える。手摺支柱2の下端部を挿入可能な支持管4が、頂板部11の水平上面から垂直上方に一体的に延出する。上下一対のボルト・ナット組立体5が、支持管4及び手摺支柱2を貫通し、支持管4内に挿入された手摺支柱2の下端部を支持管4に固定する。
【0028】
第1側板部分12は、頂板部11から垂下する。第2側板部分13は、上端傾斜部18を介して頂板部11に連接する。頂板部11及び上端傾斜部18は、手摺支柱2を支持するとともに、側桁3の上部に接触して連結具1に対する側桁3の上方変位を阻止する支持部材を構成する。上端傾斜部18は、頂板部11に対して所定角度(好ましくは30〜60度、本例では45度)をなして傾斜し、第2側板部分13は、上端傾斜部18から垂下する。補強リブ部材17が、第2側板部分13と直交する方向に第2側板部分13の外側面から一体的に突出する。補強リブ部材17の上端部は、支持管4を補強する補強リブ部材16に一体的に連接する。補強リブ部材16は、支持管4の両側に配設され、支持管4と一体化する。
【0029】
補強リブ部材17は、第2側板部分13の下方に僅かに延出する。第2側板部分13及び補強リブ部材17は、第2側壁部を構成する。補強リブ部材17の下端部には、揺動部材14の一端がボルト・ナット組立体20によって枢動可能に連結される。図1(C)及び図1(E)に示すように、揺動部材14は、補強リブ部材17の両側に対をなして配設される。揺動部材14の他端部には、緊締具15の基端部がボルト・ナット組立体21によって枢動可能に連結される。ボルト・ナット組立体20、21の軸線は、側桁3の軸線と実質的に平行な方向に配向される。
【0030】
緊締具15は、外螺子を有する螺子部22と、螺子部22に螺着するナット23とから構成される。第1側板部分12は、ナット23が係合可能な支持壁部分24を有する。図1(E)に示す如く、支持壁部分24は、第1側板部分12から外方に一体的に膨出するように形成された壁体からなる。螺子部22は、第1側板部分12及び支持壁部分24の下端に形成された底部開口形の凹所25、26を貫通する。ナット23は、螺子部22に対する締付けトルクによって支持壁部分24の下端部外側面に係合する。支持壁部分24は、第1側板部分12に付随して平行且つ垂直上方に延び、頂板11の外端部に一体的に連接し、頂板11によって支持される。第1側板部分12及び支持壁部分24は、第1側壁部を構成する。支持壁部分24は、凹所26の下端部において局所的に隆起し、外側に僅かに突出する折返し部又は突起29を形成する。折返し部又は突起29は、ナット23が外側壁面から脱落するのを防止し、ナット23の位置を安定させる。
【0031】
図2には、側桁3に対して連結具1を固定する過程が示されている。
【0032】
図2(A)には、ナット23を弛緩して螺子部22を支持壁部分24から解放し、螺子部22及び揺動部材14を下方に枢動させて連結具1の側桁収容空間6を下方に開口させた状態が示されている。連結具1は、空間6内に側桁3を受入れるように側桁3に跨がる。側桁3の上端角部3eが連結具1の内側傾斜面33に点接触状態に当接し、或いは、側桁3の頂面3aが、連結具1の上部当接面31に面接触する。
【0033】
図2(B)に矢印で示す如く、螺子部22及び揺動部材14を上方に枢動させて支持壁部分24に係合させ、ナット23を締結すると、図2(C)に示す如く、連結具1を閉塞して連結具1を側桁3上に固定することができる。側桁3の下端角部3fが連結具1の内側傾斜面34に点接触状態に当接するとともに、側桁3の側面3bが、連結具1の側部当接面32に面接触する。内側傾斜面34は、頂板部11の平面に対して所定角度(好ましくは30〜60度、本例では、概ね45度)をなして傾斜する。
【0034】
かくして、頂板部11の水平な下面は、側桁3の頂面3aに面接触可能な上部当接面31を構成し、第1側板部分12の垂直な側壁面は、側桁3の側面3bに面接触可能な側部当接面32を構成する。上端傾斜部18の内側傾斜面33は、側桁3の側面3c側の上端角部3e(頂面3aと側面3cとの角部)に当接可能な上部傾斜当接面を構成し、揺動部材14の内側傾斜面34は、側桁3の側面3cの下端角部3f(底面3dと側面3cとの角部)に当接可能な下部傾斜当接面を構成する。なお、第2側板部分13の内側面35は、側桁3に接触せず、側桁3の側面3cから離間する。
【0035】
図3は、異なる断面寸法・形状の側桁3に連結具1を装着した状態を例示する連結具1の正面図である。
【0036】
図3(A)には、幅寸法Dが比較的大きい角形金属管101からなる側桁3が示されている。角形金属管101の幅寸法Dは、空間6の最大幅W1(側部当接面32と内側面35との間の距離)よりも小さく、上部当接面31の幅W2よりも大きい。角形金属管101の高さLは、空間6の最大高さH1よりも小さく、内側傾斜面33、34の間の最小の高さ方向間隔H2よりも大きい。角形金属管101の角部101e、101fは内側傾斜面33、34に点接触状態に当接し、角形金属管101の側面101bは側部当接面32に面接触する。
【0037】
図3(B)には、幅寸法Dが比較的小さいチャンネル形金属材102からなる側桁3が示されている。金属材102の幅寸法Dは、頂面3aの幅W2と実質的に同じ寸法に設定される。金属材102の高さLは、空間6の最大高さH1よりも小さく、内側傾斜面33、34の間の最小の高さ方向間隔H2よりも大きい。金属材102の下端角部102fは内側傾斜面34に点接触状態に当接する。金属材102の側面102bは側部当接面32に面接触する。金属材102の頂面102aは上部当接面31に面接触する。
【0038】
図3(C)には、幅寸法Dが比較的小さい角形金属管103からなる側桁3が示されている。金属管103の幅寸法Dは、頂面3aの幅W2と同一又は幅W2よりも小さい。金属材102の高さLは、空間6の最大高さH1よりも小さく、内側傾斜面33、34の間の最小の高さ方向間隔H2よりも大きい。金属管103の103fは内側傾斜面34に点接触状態に当接する。金属管103の側面103bは側部当接面32に面接触する。金属管103の頂面103aは上部当接面31に面接触する。
【0039】
図3(D)には、幅寸法Dが比較的大きいチャンネル形金属材104からなる側桁3が示されている。金属材104の幅寸法Dは、空間6の最大幅W1よりも小さく、頂面3aの幅W2よりも大きい。金属材104の高さLは、空間6の最大高さH1よりも小さく、内側傾斜面33、34の間の最小の高さ方向間隔H2よりも大きい。金属材104の角部104e、104fは内側傾斜面33、34に点接触状態に当接し、金属材104の側面104bは側部当接面32に面接触する。なお、金属材104の側面104bは、点接触状態に接触する複数の局所的拡大部104gによって形成される仮想の平面である。本明細書においては、このように複数点又は多点で接触した状態であって、全体的に面接触として考慮し得る状態のものについても、「面接触」に含めるものとする。
【0040】
図4(A)〜(E)は、上記連結具1の変形例に係る仮設連結具1’の構成を示す正面図、右側面図、左側面図、平面図及び底面図である。図4において、前述の仮設連結具1の各構成要素又は構成部材と実質的に同じ構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
【0041】
仮設連結具1’は、仮想線で示す階段用巾木7を仮設階段に取付けるためのものであり、支持管4に換えて巾木支持具8を備える。巾木支持具8は、頂板部11に立設された支柱81と、金属製帯板の曲げ加工品からなる枠体82とから構成され、枠体82の上端部及び下端部は、支柱81に固定される。支柱81と枠体82との間には、巾木7を挿通可能な中空部83が形成される。巾木7は、仮設足場用の足場板からなり、中空部83に挿通され、巾木固定用のボルト・ナット組立体84によって支柱81に固定される。
【0042】
連結具1’は、その他の構造、殊に、頂板部11、第1側板部分12、第2側板部分13、揺動部材14及び緊締具15等の構造において、前述の連結具1と全く同じ構成のものであるので、説明の重複を回避すべく、更なる詳細な説明を省略する。
【0043】
図5は、図1〜図3に示す連結具1を取付けた階段直付け手摺50を示す正面図、底面図及び側面図である。
【0044】
手摺50は、手摺支柱部分52を一体化した山形形態の手摺部材51と、手摺部材51に連結された水平手摺部材53とから構成される。手摺支柱部分52は、図1〜図3に示す手摺支柱2として支持管4に挿入され、ボルト・ナット組立体5によって支持管4に固定される。
【0045】
図6及び図7は、仮設階段40を設置した枠組足場60を例示する正面図である。
【0046】
図6に示す如く、仮設階段40は、上下階の横架材61の間に斜めに掛け渡された側桁41と、左右の側桁41に支持された多数の踏板42と、連結具1、1’によって側桁41に取付けられた階段直付け手摺50及び巾木70とから構成される。
【0047】
仮設階段40は、図7に示すように枠組足場60と周辺地盤面等との間に斜めに掛け渡しても良く、また、階段直付け手摺50は、図7に示すように手摺桟62によって枠組足場60の建て枠63等に連結しても良い。
【0048】
図8は、仮設階段40を設置したローリングタワー90を示す正面図である。
【0049】
枠組足場60と同様、階段直付け手摺50及び巾木70を連結具1、1’によって仮設階段40の側桁41に取付けられることができる。
【0050】
図9は、本発明に係る仮設材連結具1、1’の原理を概念的に示す概略断面図である。
【0051】
連結具1、1’は、幅が大きく且つ高さが小さい側桁3に装着される場合、図9(A)に示す如く、側部当接面32に対する側桁3の側面3bの面接触と、傾斜面33、34に対する角部3e、3fの点接触状態の当接(線接触、単一且つ局所的な面接触を含む)とによって連結具1に支持される。連結具1、1’は、比較的幅が小さく且つ高さが大きい側桁3に装着される場合、図9(B)に示す如く、当接面32、31に対する側面3b及び頂面3aの面接触と、傾斜面34に対する角部3fの点接触状態の当接とによって連結具1に支持される。角部3fに作用する緊締具15の締付け力Fは、側桁3の対角線方向に作用する。鉛直方向の反力Rvが、傾斜面33又は当接面31に対する角部3e又は頂面3aの接触部分に作用する。水平方向の反力Rhが、側部当接面32と側桁3の側面3bとの接触部に作用する。連結具1、1’は、緊締具15の締付け力Fと、各接触部の反力Rv、Rhとの力の釣り合いにより、力学的に安定する。
【0052】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0053】
例えば、上記実施例は、仮設手摺又は仮設巾木を仮設階段の側桁に取付ける仮設材連結具に関するものであるが、本発明は、仮設足場の水平な横架材に対して仮設手摺、仮設巾木等の仮設部材又は仮設器具を取付けるための連結具に適用し得るものである。
【0054】
また、本発明の連結具の構造は、仮設材のみならず、常設構造物の設備等を比較的長期間に亘って実質的に恒常的に取付け又は支持する連結具に適用し得るものである。
【0055】
更には、連結具1の上部当接面31及び側部当接面32は、必ずしも平滑な面である必要はなく、凹凸又はセレーション等を有するものであっても良い。
【0056】
また、上記実施例においては、手摺取付用の仮設連結具と、巾木取付け用の仮設連結具とは、横架材又は側桁に係合する部分の構造に関して同一の構成を有するものとして説明したが、これらの仮設連結具は、必ずしも同一の係合構造を有するものである必要はなく、その用途・機能等に相応して適宜設計変更し又は最適化した各部構造のものであれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の仮設材連結具は、建築工事・土木工事の仮設足場等に配設され、仮設手摺、仮設巾木等の仮設部材又は仮設器具を仮設階段又は仮設足場の側桁、横架材等に着脱可能に取付ける仮設材連結又は支持手段として好ましく使用し得る。本発明の仮設材連結具の構造は、異なる断面寸法・形状の側桁又は横架材に適応するので、連結具の汎用性又は適応性を向上する上で実用的に極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】仮設手摺の手摺支柱を仮設階段の側桁に取付けるための仮設材連結具の構成を示す正面図、右側面図、左側面図、平面図及び底面図である。
【図2】仮設材連結具の使用状態を示す正面図である。
【図3】異なる断面寸法・形状の側桁に仮設材連結具を装着した状態を例示する正面図である。
【図4】仮設巾木を仮設階段の側桁に取付けるための仮設材連結具の構成を示す正面図、右側面図、左側面図、平面図及び底面図である。
【図5】図1〜図3に示す仮設材連結具を有する階段直付け手摺の構成を示す正面図、底面図及び側面図である。
【図6】仮設階段を設置した枠組足場の正面図であり、仮設手摺及び仮設巾木を仮設階段の側桁に取付けた状態が示されている。
【図7】仮設階段を設置した枠組足場の正面図であり、枠組足場と周囲地盤面との間に斜めに掛け渡した仮設階段の側桁に仮設手摺を取付けた状態が示されている。
【図8】仮設階段を設置したローリングタワーの正面図であり、仮設手摺及び仮設巾木を仮設階段の側桁に取付けた状態が示されている。
【図9】仮設材連結具の原理を概念的に示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1、1’ 仮設材連結具
2 手摺支柱(仮設材)
3 側桁
4 支持管
7 階段用巾木(仮設材)
8 巾木支持具
11 頂板部
12 第1側板部分
13 第2側板部分
14 揺動部材
15 緊締具
16、17 補強リブ部材
18 上端傾斜部
20、21 ボルト・ナット組立体
24 支持壁部分
31 上部当接面
32 側部当接面
33、34 内側傾斜面
3a 頂面
3b 側面
3c 側面
3d 底面
3e 上端角部
3f 下端角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設足場又は仮設階段の横架材又は側桁の外面に圧力下に当接して該横架材又は側桁と一体化するとともに、仮設材を支持し、該仮設材を横架材又は側桁に一体的に連結する仮設材連結具において、
前記仮設材を支持するとともに、前記横架材又は側桁の上部に接触して前記仮設材連結具に対する前記横架材又は側桁の上方変位を阻止する支持部材と、
前記支持部材から一体的に下方に延びる第1側壁部の内側面によって形成され、前記横架材又は側桁の第1側面に面接触する側部当接面と、
前記第1当接面と反対の側に位置する前記横架材又は側桁の第2側面に沿って前記支持部材から一体的に下方に延びる第2側壁部に枢動可能に連結されるとともに、前記第2側面の下端角部に点接触状態に当接する下部傾斜当接面を形成する揺動部材と、
該揺動部材の先端部に枢動可能に連結されるとともに、前記第1側壁部の下端部に緊締され、前記下部傾斜当接面を前記横架材又は側桁の下端角部に点接触状態に当接せしめる緊締具とを有することを特徴とする仮設材連結具。
【請求項2】
前記支持部材は、前記横架材又は側桁の上面に面接触可能な上部当接面を有することを特徴とする請求項1に記載の仮設材連結具。
【請求項3】
前記支持部材は、前記横架材又は側桁の第2側面の上端角部に点接触状態に当接する上部傾斜当接面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の仮設材連結具。
【請求項4】
前記揺動部材及び前記緊締具の各枢動軸線は、前記横架材又は側桁の軸線方向と実質的に平行に配向されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の仮設材連結具。
【請求項5】
前記揺動部材は、前記横架材又は側桁の軸線方向に間隔を隔てて配置された複数の板材からなり、前記下部傾斜当接面は、複数の前記板材の上縁面によって形成されることを特徴とする請求項4に記載の仮設材連結具。
【請求項6】
前記緊締具は、前記揺動部材の先端部に基端部を枢着されたボルトと、前記第1側壁部の下端部に対して締結されるナットとから構成され、前記ボルトは、前記第1側壁部の下端に形成された下方開口形凹部を貫通して外方に延び、前記ナットは、前記第1側壁部の外側から前記ボルトに螺着することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の仮設材連結具。
【請求項7】
前記支持部材は、手摺支柱を支持する支柱支持具を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の仮設材連結具。
【請求項8】
前記支持部材は、仮設階段又は仮設通路に巾木を形成する板状部材を支持する巾木支持具を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の仮設材連結具。
【請求項9】
常設構造物の横架材又は側桁の外面に圧力下に当接して該横架材又は側桁と一体化するとともに、常設構造物の付帯機器、付帯装置又は付帯器具を支持し、該付帯装置又は付帯器具を横架材又は側桁に一体的に連結することを特徴とする請求項1乃至8に記載の仮設材連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−264028(P2009−264028A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116315(P2008−116315)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(591195189)株式会社杉孝 (22)