説明

仮設用金網枠

【課題】建設工事現場の床開口部(エレベーター用開口部など)の周囲などに仮設して安全対策として活用できる仮設用金網枠を提案する。
【解決手段】外枠(1)と、この外枠(1)の上端に対して外枠長さ方向に一定範囲内で出退移動自在に外枠(1)に嵌合する内枠(2)と、外枠上端から引き出された内枠(2)を固定する固定手段(3)とを備えた仮設用金網枠であって、前記固定手段(3)は、内枠(2)の移動方向適当間隔おきの位置に設けられた係止孔(37)と、外枠(1)の表面側に設けられた係止具(12)とから構成され、この係止具(12)は、外枠(1)に対する内枠(2)の退入移動のみを前記係止孔(37)に付勢力で自動嵌合して阻止する一方向係止ピンと、当該係止ピンを前記係止孔(37)から抜き出し操作するための操作部を備えた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事現場の床開口部の周囲などに安全対策として仮設する仮設用金網枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の仮設用金網枠として、特許文献1に記載されるように、外枠と、この外枠の上端に対して外枠長さ方向に一定範囲内で出退移動自在に外枠に嵌合する内枠と、外枠上端から引き出された内枠を固定する固定手段と、外枠の裏面側に突設されたフック部材を備えた仮設用金網枠が知られている。この特許文献1に記載された従来の仮設用金網枠では、外枠上端から引き出された内枠を固定する固定手段として、内枠の下端部の左右両側部材をハンドル操作により外側に押し出すように変形させ、以て、当該内枠の下端部の左右両側部材を外枠の左右両側辺の溝形部材の内側面に圧接させることにより、外枠に対して内枠を任意の引き出し位置で固定する構成のものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−71904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の仮設用金網枠における固定手段の構成では、内枠を無段階に固定できる利点はあるが、その固定操作に大きな力が必要であるにもかかわらず、内枠の下端部の左右両側部材と外枠の左右両側辺の溝形部材との間の摩擦力だけで内枠を固定しようとするものであるから、固定力が弱く、少しでもハンドルが緩むと固定力が無くなって内枠が重力で降下するという危険性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる仮設用金網枠を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る仮設用金網枠は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、外枠(1)と、この外枠(1)の上端に対して外枠長さ方向に一定範囲内で出退移動自在に外枠(1)に嵌合する内枠(2)と、外枠上端から引き出された内枠(2)を固定する固定手段(3)とを備えた仮設用金網枠であって、前記固定手段(3)は、内枠(2)の移動方向適当間隔おきの位置に設けられた係止孔(37)と、外枠(1)の表面側に設けられた係止具(12)とから構成され、この係止具(12)は、外枠(1)に対する内枠(2)の退入移動のみを前記係止孔(37)に付勢力で自動嵌合して阻止する一方向係止ピン(16)と、当該係止ピン(16)を前記係止孔(37)から抜き出し操作するための操作部(18)を備えた構成になっている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、外枠(1)の裏面側の左右両側辺には、仮設水平鋼管に対して下向きに嵌合するフック部材(19)を設け、これら各フック部材(19)は、その外枠長さ方向に沿った支軸部(19a)の上端側からフック部(19b)が連設された構成として、外枠(1)側に設けられた外枠長さ方向の筒状部材(23)に前記支軸部(19a)を回転自在に挿通し、前記支軸部(19a)の上端側には、前記筒状部材(23)の上端周縁(23a)によって支持される突起(25)を突設し、前記筒状部材(23)の上端周縁(23a)は、外枠(1)側に倒れた倒伏姿勢にある前記フック部(19b)を、重力により外枠(1)に対して略直角に起立する起立姿勢まで回動させる方向に傾斜させることができる。この場合、請求項3に記載のように、外枠(1)の裏面側の外枠長さ方向の一端近傍位置には、倒伏姿勢にした前記フック部材(19)よりも高さの高い位置決め用突起(20)を突設し、外枠(1)の裏面側の外枠長さ方向の他端近傍位置には位置決め用孔(21)を設け、前記フック部材(19)を倒伏姿勢にした同一構造の2つの仮設用金網枠を裏面側どうし上下逆向きに重ねたとき、各仮設用金網枠の前記位置決め用突起(20)が相手側の仮設用金網枠の前記位置決め用孔(21)に嵌合するように構成することができる。
【0007】
又、請求項4に記載のように、前記外枠(1)の左右両側辺には、内枠(2)の左右両側辺が摺動自在に嵌合する溝形部材(6,7)を配設し、前記固定手段(3)の係止具(12)は、外枠(1)の前記左右両側溝形部材(6,7)の上端寄り位置それぞれに設け、内枠(2)の前記係止孔(37)は、左右一対の前記係止具(12)の一方向係止ピン(16)が同時に嵌合できるように、当該内枠(2)の左右両側辺それぞれに設けておくことができる。この場合、請求項5に記載のように、外枠(1)の前記左右両側溝形部材(6,7)の下端寄り位置それぞれには、同一構造の2つの仮設用金網枠を表面側どうし上下逆向きに重ねたとき、各仮設用金網枠の左右一対の前記係止具(12)が嵌まり込む状態で相手側の仮設用金網枠の外枠(1)の前記左右両側溝形部材(6,7)の表面に当接する受け座(13)を突設しておくことができる。
【0008】
更に、請求項6に記載のように、内枠(2)を外枠(1)に対して退入限位置まで移動させた状態において、内枠(2)の上端に係合して内枠進出移動を阻止するストッパー(22)を、内枠(2)の進出移動を許す退避姿勢に切換え自在に設けておくことができる。又、請求項7に記載のように、外枠(1)には、下端まで網部材(5)を張設し、内枠(2)には、外枠(1)に対して退入限位置まで移動させたときに外枠(1)の下端部材(8)で受止められる左右両側枠材(31,32)の下端よりも上方に離れた位置に当該左右両側枠材(31,32)どうしを連結する下端横桟(34)を設け、この下端横桟(34)より少なくとも下側には網部材(30)を張設していない構造とすることができる。
【0009】
更に、請求項8に記載のように、内枠(2)には、下端よりも適当距離上方位置に把手(38)を突設し、内枠(2)を外枠(1)に対して退入限位置まで移動させたときの前記把手(38)から外枠下端までの外枠(1)の領域には、内枠(2)よりも正面側において網部材(41)を張設することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の本発明の仮設用金網枠によれば、従来のように引き出した内枠を無段階に固定することはできないが、内枠引き出し時に固定手段の一方向係止ピンが内枠側の係止孔に付勢力で嵌脱動作を繰り返すときの感触で内枠固定位置は容易に確認することができ、この確認に基づいて所定位置まで内枠が引き出されたときに内枠の引き出しを停止するだけで、内枠側の係止孔に対する外枠側の一方向係止ピンの嵌合により確実に内枠の退入移動を阻止させることができる。即ち、特別な固定操作が不要であるにもかかわらず、金網枠の全高を希望通りに確実に設定することができ、しかも係止孔に対する一方向係止ピンの嵌合により内枠の退入移動を阻止するので、一方向係止ピンを係止孔から抜き出さない限り内枠の落下は確実に防止でき、安全に使用することができる。
【0011】
尚、この種の仮設用金網枠には、従来周知のように、外枠の裏面側の左右両側辺の上端近傍位置と下端近傍位置のそれぞれに、仮設水平鋼管に対して下向きに嵌合するフック部材が設けられるが、従来のものでは当該フック部材が固定されていて、常に外枠の裏面側に大きく突出していたので、使用していない金網枠を水平に重ねて積み重ねるようなときに前記フック部材が邪魔になり、安定良く積み重ねることができないばかりでなく、フック部材が他物との接触で変形し易い。而るに、請求項2に記載の構成によれば、前記フック部材を外枠の裏面に沿う倒伏姿勢に切り換えることができるので、上記のような従来の種々な問題点を解消できる。しかも、使用するためにこの金網枠を垂直に立てたとき、フック部材に作用する重力で当該フック部材を自動的に起立姿勢に切り換えて、その起立姿勢で保持することができるので、起立姿勢に手作業で切り換えると共に当該起立姿勢に手で保持した状態のフック部材を仮設水平鋼管に嵌合させなければならない場合と比較して、作業性が格段に向上する。
【0012】
上記構成によれば、フック部材を倒伏姿勢に切り換えた状態の2つの仮設用金網枠を、その裏面側どうしを上下逆向きに重ねたとき、倒伏姿勢のフック部材が相手側の仮設用金網枠の外枠側辺に当接するので、安定性が悪く、横滑りして大きくずれる恐れがある。而るに、請求項3に記載の構成によれば、一方の仮設用金網枠の位置決め用突起を他方の仮設用金網枠の位置決め用孔に嵌合させて、上下に重なる2つの仮設用金網枠が横滑りしてずれてしまうのを確実に防止し、積み重ね状態を安定的に維持させることができる。
【0013】
又、請求項4に記載の構成によれば、引き出した内枠を左右一対の係止具により外枠に対し安定良く固定することができ、外枠に対し内枠が不測に傾く恐れがない。この場合、請求項5に記載の構成によれば、2つの仮設用金網枠を、その表面側どうしを上下逆向きに重ねたとき、各仮設用金網枠の左右一対の係止具が相手側の仮設用金網枠の外枠両側辺に直接当接するのを、当該相手側の仮設用金網枠の外枠両側辺に突設された左右一対の受け座により防止することができるので、係止具の損傷も防止できると共に、これら左右一対の受け座を介して上下2つの仮設用金網枠どうしを安定良く重ねることができる。
【0014】
本発明の仮設用金網枠は、外枠に対して内枠を自由に引き出せるものであるから、内枠を外枠に対して退入限位置まで移動させた状態で運搬するようなとき、誤って上下逆向きに持ち上げると、内枠が重力で落下することになり、危険である。而るに、請求項6に記載の構成によれば、使用しないときには、内枠を外枠に対して退入限位置まで移動させた状態でストッパーを内枠進出移動阻止状態に切り換えておけば、上記のような危険な事態を招く恐れがなくなり、安全に取り扱うことができる。
【0015】
又、本発明の仮設用金網枠では、使用状態から内枠を退入限位置まで移動させるために係止具の一方向ピンを内枠側の係止孔から抜き出す操作を行なったとき、内枠が重力で勢い良く降下する恐れがある。このとき外枠の下端内側領域に足先を入れていると、落下する内枠で足先が挟まる事故が考えられる。而るに、請求項7に記載の構成によれば、仮に、外枠の下端内側領域に足先を入れたとしても、内枠を退入限位置まで移動させたときに、その足先よりも上方位置で内枠の下端横桟が停止するように当該下端横桟の位置を設定しておきさえすれば、内枠の構成部材(網部材や横桟など)によって足先が挟まる事故が未然に防止できる。
【0016】
更に、請求項8に記載の構成によれば、内枠を外枠に対して退入限位置まで移動させたときの内枠側の把手から外枠下端までの外枠の領域に、内枠よりも正面側において張設された網部材によって、内枠が落下してくる領域内に足先を入れること自体が阻止されるので、安全性を一層高めることができる。この場合、前記外枠の領域に張設された網部材との間に内枠の退入空間を形成するように、内枠よりも裏面側においても外枠に網部材を張設しておけば、外枠の裏面側から足先を入れることも阻止でき、より一層安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】縮小状態の仮設用金網枠全体を示す正面図である。
【図2】A図は伸長状態の仮設用金網枠全体を示す正面図、B図はその部分拡大図である。
【図3】A図は外枠の左半分の裏面図、B図は外枠の左側面図、C図は外枠の左半分の正面図である。
【図4】A図は内枠の右半分の正面図、B図は内枠の右半分の裏面図、C図は内枠の部分拡大縦断側面図である。
【図5】A図は外枠の平面図、B図は内枠の横断平面図である。
【図6】A図は縮小状態の仮設用金網枠全体を示す平面図、B図は同要部の横断平面図である。
【図7】起立姿勢の1つのフック部材とストッパーを含む部分の一部縦断正面図である。
【図8】倒伏姿勢の1つのフック部材と位置決め用突起を含む部分の正面図である。
【図9】起立姿勢の1つのフック部材と位置決め用突起を含む部分の縦断側面図である。
【図10】固定手段を示す要部の縦断側面図である。
【図11】使用しない縮小状態の仮設用金網枠を積み重ねるときの状況を説明する側面図である。
【図12】変形例を示す要部の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図に基づいて本発明の一実施例を説明すると、本発明の仮設用金網枠は、外枠1と内枠2、及び固定手段3から構成されている。外枠1は、図3及び図5Aに示すように、矩形枠組み構造体4と、この矩形枠組み構造体4に張設されたエキスパンドメタルなどから成る網部材5から構成されている。矩形枠組み構造体4は、凹溝部の開放側が互いに対面するように配置された左右一対の溝形部材6,7、この両溝形部材6,7の下端どうしを連結すると共に各溝形部材6,7の凹溝部の下端を閉じる下端横桟8、両溝形部材6,7の長さ方向中間2箇所を裏面側で連結する帯状板から成る中間横桟9,10、及び両溝形部材6,7の上端どうしを裏面側で連結する帯状板から成る上端横桟11から構成され、網部材5は、各横桟8〜11の垂直内側面と両溝形部材6,7の裏面側の溝側板の内側面に接するように張設されている。
【0019】
又、外枠1の正面側には、固定手段3を構成する左右一対の係止具12と左右一対の受け座13とが設けられている。左右一対の係止具12は、両溝形部材6,7の上端寄りの位置(中間横桟9が架設された位置)の正面側の溝側板に取り付けられ、左右一対の受け座13は、左右一対の係止具12と外枠長さ方向に関して上下対称となる位置の正面側の溝側板に取り付けられている。これら受け座13は、帯状板を台形状に曲げ加工したもので、その凹部が互いに対面する向きに取り付けられ、その高さは、前記係止具12の高さより少し高い。各係止具12は、図10にも示すように、溝形部材6,7の正面側の溝側板6a,7aの外側に固着された固定ナット14にネジ結合されてロックナット15により固定されたもので、溝側板6a,7aに対して直角方向にスライド自在に内装された一方向係止ピン16と、この一方向係止ピン16の先端16aを前記溝側板6a,7aの内側へ突出させるように内装されたコイルバネ17と、一方向係止ピン16の外端に連設されたフランジ状操作部18とから構成され、一方向係止ピン16の先端16aは、その端面が斜め下向きに面するように斜めにカットされている。而して、操作部18により一方向係止ピン16をコイルバネ17の付勢力に抗して後退移動させることにより、その先端16aを溝側板6a,7aの内側から退出させることができる。
【0020】
外枠1の裏面側には、4つのフック部材19、1つの位置決め用突起20、1つの位置決め用孔21、及び1つのストッパー22が設けられている。4つのフック部材19は、両溝形部材6,7の上端近傍位置と、下端から適当距離上方に離れた位置の裏面側の溝側板に取り付けられ、位置決め用突起20は、片側の溝形部材7の上端の裏面側の溝側板に取り付けられ、位置決め用孔21は、前記溝形部材7の下端の裏面側の溝側板とこれに重なる下端横桟8の垂直板部とにわたって穿設され、1つのストッパー22は、反対側の溝形部材6の上端の裏面側の溝側板に取り付けられている。
【0021】
各フック部材19は、図7〜図9に示すように、1本の丸棒材を曲げ加工して、外枠長さ方向に沿った支軸部19aと、この支軸部19aの上端側から連なるフック部19bとを形成したもので、溝形部材6,7の裏面側の溝側板6b,7bの外側に固着された外枠長さ方向の筒状部材23に前記支軸部19aが回転自在に挿通され、この支軸部19aの下端側面に抜け止め用ネジ24が取り付けられている。又、支軸部19aの上端側には、前記筒状部材23より上側でフック部19bのある側に突出する突起25が設けられ、筒状部材23の上端は、フック部19bが外枠1に対して直角に起立した起立姿勢にあるときに前記突起25が最も下降した位置で支持されるように斜めにカットされて、V字形の上端傾斜周縁23aを構成している。
【0022】
従って、外枠1が垂直に立てられているとき、重力によって降下しようとするフック部材19は、その突起25が筒状部材23の上端傾斜周縁23aの傾斜下方に滑動することにより支軸部19aの周りに回転して、図7及び図9に示すように、フック部19bが外枠1に対して直角に起立した起立姿勢に自動的に切り換えられ、且つその起立姿勢に保持されることになる。又、この状態の外枠1をフック部材19が上になる向きで水平に倒すと、筒状部材23の上端傾斜周縁23aに沿った突起25の滑動を伴って、フック部材19は重力により支軸部19aの周りに回転して、図8に示すように、フック部19bが外枠1に沿った倒伏姿勢に切り換わる。
【0023】
位置決め用突起20は、図8及び図9に示すように、溝形部材7の裏面側の溝側板7bに内側から挿通されてナット26bにより固定されたボルト26aから構成されたもので、その高さは、外枠1に沿った倒伏姿勢にあるフック部材19の高さ、具体的には筒状部材23の高さよりの少し高い。位置決め用孔21は、フック部材19のある側を対面させるように2つの外枠1を上下逆向きに重ねたとき、相手側の外枠1の前記位置決め用突起20(ボルト26aの軸端部)が嵌合できるように配設されている。
【0024】
ストッパー22は、図5A、図6A、及び図7に示すように、溝形部材6の裏面側の溝側板6bの外側に蝶ボルト27により取り付けられる取付け板部28aと、この取付け板部28aの先端から直角に折曲された制止板部28bとを備えたL形板から構成され、取付け板部28aの蝶ボルト27が貫通する取付け孔は、この取付け板部28aの長さ方向に長い長孔となっており、蝶ボルト27を弛めてストッパー22を蝶ボルト27の周りで回すと共に蝶ボルト27に対して出し入れすることにより、図6A及び図7に実線で示すように、制止板部28bが溝形部材6の凹溝部の上端を塞ぐ制止姿勢と、図5A及び図7の仮想線で示すように、制止板部28bが溝形部材6の凹溝部の上端から横側方に退避した退避姿勢とに切り換えることができ、蝶ボルト27の締め付けにより、それぞれの姿勢においてストッパー22を固定することができる。
【0025】
内枠2は、図4及び図5Bに示すように、矩形枠組み構造体29とこの矩形枠組み構造体29に張設されたエキスパンドメタルなどの網部材30から構成されている。矩形枠組み構造体29は、アングル材から成る左右一対の側枠31,32、この両側枠31,32の上端どうしを連結するアングル材から成る上端横桟33、下端から適当距離上方の位置で両側枠31,32を連結する下端横桟34、この下端横桟34より適当距離上方の位置で両側枠31,32を連結する把手取付け用横桟35、この把手取付け用横桟35と上端横桟33との中間位置で両側枠31,32を連結する中間横桟36から構成され、網部材30は、側枠31,32間で上端横桟33と把手取付け用横桟35との間の領域に、各部材の正面側の内側に接するように張設されている。
【0026】
内枠2の側枠31,32には、その正面板部31a,32aにおいて、矩形の係止孔37が側枠31,32の下端から等間隔おきに穿設され、これら係止孔37と外枠1側の左右一対の係止具12とで固定手段3が構成されている。又、把手取付け用横桟35の中央位置には、正面側に突出するように丸棒材を門形に曲げ加工した把手38が、把手取付け用横桟35の裏面側から螺合されるナット39a,39bにより取り付けられている。尚、この把手38は、内枠2を後述するように外枠1に組み込んだ後に取り付けられるものであるから、図2B及び図5Bに示すように、把手取付け用横桟35の下側辺には、把手38を固定するナット39a,39bを表側から容易に操作できるように、各ナット39a,39bの位置に合わせて切欠き凹部40a,40bが形成されている。又、図4Cに示すように、下端横桟34と把手取付け用横桟35の下半部は、内側へ斜めに折曲して、この内枠2が不測に降下したときに作業者の手指を傷つけ難いようにしている。
【0027】
上記構成の内枠2は、把手38が取り付けられる前に、外枠1に組み込まれる。即ち、外枠1のストッパー22を図5Aに示すように退避姿勢に切り換えてある状態で、外枠1の上端側から内枠2を、その両側枠31,32が外枠1の両溝形部材6,7の凹溝部内に嵌合するように挿入する。この内枠2の下端、即ち、両側枠31,32の下端が外枠1の下端横桟8で支持される退入限位置まで内枠2が挿入されたとき、当該内枠2の上端横桟33の上端面は、外枠1の上端横桟11の上端縁と略面一の状態にある。従って、この状態で外枠1側のストッパー22を図6Aに示すように制止姿勢に切り換えて固定することにより、外枠1を上下逆向きにしても、内枠2はストッパー22で受止められて外枠1から落下することはない。尚、外枠1に内枠2を上記のように組み込むとき、固定手段3の両係止具12は、そのフランジ状操作部18により一方向係止ピン16を後退させて、先端16aが内枠2の両側枠31,32と干渉しない状態にしておくことは勿論である。
【0028】
上記のように外枠1に内枠2を組み込んだならば、内枠2の把手取付け用横桟35に把手38を取り付ける。このとき、作業者は工具を把手取付け用横桟35の下側から当該把手取付け用横桟35の内側へ差し込んでナット39a,39bを操作しなければならないが、把手取付け用横桟35に設けられた切欠き凹部40a,40bがその操作を容易にする。
【0029】
図1に示すように、内枠2が外枠1に対して退入限位置まで挿入された縮小状態において、この仮設用金網枠を使用現場まで運搬するが、このとき、ストッパー22の存在により、内枠が外枠1内から不測に突出したり、脱落することはないので、安全に運搬作業を行なえる。現場では、先に示した特許文献1によって周知なように、床に設けられた開口部の周囲に前以って上下2段に鋼管が水平に仮設されているので、この上下2段の仮設水平鋼管に外枠1の裏面側の4つのフック部材19を上から下向きに嵌合させ、仮設用金網枠1を垂直に配置する。このようにして床開口部の周囲を取り囲むように仮設用金網枠を配置したならば、天井側構造物と仮設用金網枠との間の空間を塞ぐように、各仮設用金網枠の内枠2を外枠1に対して上方に引き上げる。
【0030】
フック部材19を仮設水平鋼管に嵌合させるときは、仮設用金網枠(外枠1)は垂直に立てられているので、先に説明した通り、当該フック部材19は重力で自動的にフック部19bが外枠1に対して起立する起立姿勢に切り換えられると共に当該起立姿勢に保持されるので、手先でフック部材19の向きを起立姿勢に保持しなくとも、当該フック部材19のフック部19bを容易に仮設水平鋼管に嵌合させることができる。
【0031】
外枠1に対して内枠2を引き出して仮設用金網枠を伸長させるときは、ストッパー22を制止姿勢から図5Aに示す退避姿勢に切り換えて固定し、外枠1から正面側に突出している把手38を利用して内枠2を持ち上げ、上昇させる。このとき、左右一対の係止具12の一方向係止ピン16は、コイルバネ17の付勢力で内枠2の両側枠31,32の表面上を相対的に摺動し、係止孔37がこの係止具12の位置を上方に通過するときには、当該一方向係止ピン16がコイルバネ17の付勢力で一時的に係止孔37内に嵌合するが、その先端16aの傾斜により再び押し出される。従って、内枠2を押し上げる作業者は、係止具12の一方向係止ピン16が係止孔37に嵌合した時期を感触及び動作音で確認できるので、内枠2が所定高さ(内枠2の上端が天井側構造物との空間を塞ぐ高さ)に達して且つ係止具12の一方向係止ピン16が係止孔37に嵌合したときに、内枠2の押し上げ操作を停止することにより、所定高さまで押し上げた内枠2を外枠1に対して落下不能な状態に固定することができる。図2は、内枠2が外枠1に対する進出限位置まで引き上げられて、固定手段3により外枠1に固定された状態を示している。
【0032】
現場から仮設用金網枠を回収するときは、先ず、固定手段3により伸長状態で固定されている仮設用金網枠を縮小させる。即ち、固定手段3の左右一対の係止具12の一方向係止ピン16を、フランジ状操作部18によりコイルバネ17の付勢力に抗して後退移動させ、その先端16aを内枠2側の左右一対の係止孔37から離脱させる。この結果、重力で内枠2は外枠1に対して降下し、図1に示す退入限位置に達して、仮設用金網枠は縮小状態になる。このとき、仮に作業者の足先が外枠1の下端横桟8の上に乗っていたとしても、退入限位置に達した内枠2の下端横桟34は、外枠1の下端横桟8より上方に離れているので、当該内枠2の下端横桟34が作業者の足先を直撃する恐れはない。
【0033】
仮設用金網枠を縮小したならば、当該仮設用金網枠を安全に運搬できるように、ストッパー22を制止姿勢に切り換えて固定しておく。そして運搬や格納保管のために、縮小状態の仮設用金網枠を水平に倒して積み重ねることになるが、このとき、図11に示すように、倒伏姿勢のフック部材19を上側にした仮設用金網枠Aの上に、倒伏姿勢のフック部材19を下側にすると共に仮設用金網枠Aに対して外枠1の長さ方向の上下を逆向きにした仮設用金網枠Bを重ね、この仮設用金網枠Bの上に、倒伏姿勢のフック部材19を上側にすると共に仮設用金網枠Bに対して外枠1の長さ方向の上下を逆にした仮設用金網枠、即ち、前記仮設用金網枠Aを重ねるというように、A,B,A,B……の順番に積み重ねることにより、それぞれの倒伏姿勢のフック部材19を間に挟む状態の仮設用金網枠Aと仮設用金網枠Bとの間では、それぞれの位置決め用突起20を相手側の仮設用金網枠の位置決め用孔21に嵌合させて、仮設用金網枠A,B間の相対的な水平方向の滑りを防止することができ、それぞれの係止具12を間に挟む状態の仮設用金網枠Bと仮設用金網枠Aとの間では、それぞれの係止具12を相手側の仮設用金網枠の受け座13の内側に嵌合させると共にそれぞれの受け座13を相手側の仮設用金網枠の外枠1の両溝形部材6,7の表面に当接させて、仮設用金網枠B,A間の相対的な水平方向の滑りを防止することができる。又、係止具12が相手側の仮設用金網枠と直接接触してその重量を受けることもない。
【0034】
即ち、縮小状態の仮設用金網枠を上記のように積み重ねることにより、横滑りによる荷崩れを防止できると共に、機能部品である各係止具12も保護できる。尚、仮設用金網枠Aの上に仮設用金網枠Bを重ねるとき、それぞれのフック部材19が相手側の仮設用金網枠のフック部材19と直接重ならないで、外枠長さ方向に互いに位置がずれるように、上側左右一対のフック部材19は外枠1の上端近傍位置とし、下側左右一対のフック部材19は、外枠1の上端から上側のフック部材19の下端までの距離以上の距離だけ、外枠1の下端から上方に離れた位置に配設している。
【0035】
尚、上記構成では、外枠1の網部材5は、内枠2より裏面側にのみ張設されているが、図12に示すように、外枠1に対して内枠2を退入限位置まで移動させて、仮設用金網枠を縮小状態にしたとき、内枠2側の把手38(把手取付け用横桟35)より下側の領域で内枠2より正面側に網部材41を張設することにより、作業者の足先が内枠2の昇降経路内に入り込むのを完全に防止することができる。具体的には、前記網部材41は、内枠2側の把手38(把手取付け用横桟35)より少し下側で外枠1の両溝形部材6,7における正面側の溝側板6a,7a間に架設した帯状板から成る横桟42、外枠1の下端において両溝形部材6,7における正面側の溝側板6a,7a間に架設した帯状板から成る横桟43(下端横桟8にこの横桟43に相当する部分を設けても良い)、及び両溝形部材6,7における正面側の溝側板6a,7aで囲まれた領域に張設すれば良い。この場合、内枠2より裏面側において外枠1の全域に張設された前記網部材5は、そのまま残しても良いし、前記網部材41と重なる領域の網部材5を無くしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の仮設用金網枠は、建設工事現場の床開口部(エレベーター用開口部など)の周囲などに安全対策として仮設する仮設用金網枠として活用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 外枠
2 内枠
3 固定手段
4,29 矩形枠組み構造体
5,30,41 網部材
6,7 溝形部材
6a,7a 正面側の溝側板
6b,7b 裏面側の溝側板
8〜11,33〜36,42,43 横桟
12 係止具
13 受け座
16 一方向係止ピン
17 コイルバネ
18 フランジ状操作部
19 フック部材
19a 支軸部
19b フック部
20 位置決め用突起
21 位置決め用孔
22 ストッパー
23 筒状部材
23a V形の上端傾斜周縁
31,32 側枠
37 係止孔
38 把手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠と、この外枠の上端に対して外枠長さ方向に一定範囲内で出退移動自在に外枠に嵌合する内枠と、外枠上端から引き出された内枠を固定する固定手段とを備えた仮設用金網枠であって、前記固定手段は、内枠の移動方向適当間隔おきの位置に設けられた係止孔と、外枠の表面側に設けられた係止具とから構成され、この係止具は、外枠に対する内枠の退入移動のみを前記係止孔に付勢力で自動嵌合して阻止する一方向係止ピンと、当該係止ピンを前記係止孔から抜き出し操作するための操作部を備えている、仮設用金網枠。
【請求項2】
外枠の裏面側の左右両側辺には、仮設水平鋼管に対して下向きに嵌合するフック部材が設けられ、これら各フック部材は、その外枠長さ方向に沿った支軸部の上端側からフック部が連設されたもので、外枠側に設けられた外枠長さ方向の筒状部材に前記支軸部が回転自在に挿通され、前記支軸部の上端側には、前記筒状部材の上端周縁によって支持される突起を突設し、前記筒状部材の上端周縁は、外枠側に倒れた倒伏姿勢にある前記フック部を、重力により外枠に対して略直角に起立する起立姿勢まで回動させる方向に傾斜させてある、請求項1に記載の仮設用金網枠。
【請求項3】
外枠の裏面側の外枠長さ方向の一端近傍位置には、倒伏姿勢にした前記フック部材よりも高さの高い位置決め用突起が突設され、外枠の裏面側の外枠長さ方向の他端近傍位置には位置決め用孔を設け、前記フック部材を倒伏姿勢にした同一構造の2つの仮設用金網枠を裏面側どうし上下逆向きに重ねたとき、各仮設用金網枠の前記位置決め用突起が相手側の仮設用金網枠の前記位置決め用孔に嵌合するように構成された、請求項2に記載の仮設用金網枠。
【請求項4】
前記外枠の左右両側辺には、内枠の左右両側辺が摺動自在に嵌合する溝形部材が配設され、前記固定手段の係止具は、外枠の前記左右両側溝形部材の上端寄り位置それぞれに設けられ、内枠の前記係止孔は、左右一対の前記係止具の一方向係止ピンが同時に嵌合できるように、当該内枠の左右両側辺それぞれに設けられている、請求項1〜3の何れか1項に記載の仮設用金網枠。
【請求項5】
外枠の前記左右両側溝形部材の下端寄り位置それぞれには、同一構造の2つの仮設用金網枠を表面側どうし上下逆向きに重ねたとき、各仮設用金網枠の左右一対の前記係止具が嵌まり込む状態で相手側の仮設用金網枠の外枠の前記左右両側溝形部材の表面に当接する受け座が突設されている、請求項4に記載の仮設用金網枠。
【請求項6】
内枠を外枠に対して退入限位置まで移動させた状態において、内枠の上端に係合して内枠進出移動を阻止するストッパーが、内枠の進出移動を許す退避姿勢に切換え自在に設けられている、請求項1〜5の何れか1項に記載の仮設用金網枠。
【請求項7】
外枠には、下端まで網部材が張設され、内枠は、外枠に対して退入限位置まで移動させたときに外枠の下端部材で受止められる左右両側枠材よりも上方に離れた位置に当該左右両側枠材どうしを連結する下端横桟が設けられ、この下端横桟より少なくとも下側には網部材が張設されていない、請求項1〜6の何れか1項に記載の仮設用金網枠。
【請求項8】
内枠には、下端よりも適当距離上方位置に把手が突設され、内枠を外枠に対して退入限位置まで移動させたときの前記把手から外枠下端までの外枠の領域には、内枠よりも正面側において網部材が張設されている、請求項1〜7の何れか1項に記載の仮設用金網枠。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−169008(P2011−169008A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33038(P2010−33038)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000143558)株式会社国元商会 (64)