仮設足場板の支持材およびそれを用いた仮設足場の設置方法
【課題】エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができる仮設足場板の支持材の提供。
【解決手段】仮設足場板が載置され、一端部が相対向する壁体の一方を構築する第1の型枠の桟木上に配置され、他端部が相対向する壁体の他方を構築する第2の型枠の桟木上に配置される棒状支持体と、棒状支持体の一端部に設けられる第1のアンカー支持部と、第1のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第1のコンクリート用アンカーと、棒状支持体の一端部に設けられ、第1の型枠に釘またはネジ止めされる第1の型枠固定部と、棒状支持体の他端部に設けられる第2のアンカー支持部と、第2のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第2のコンクリート用アンカーと、棒状支持体の他端部に設けられ、第2の型枠に釘またはネジ止めされる第2の型枠固定部とを備える。
【解決手段】仮設足場板が載置され、一端部が相対向する壁体の一方を構築する第1の型枠の桟木上に配置され、他端部が相対向する壁体の他方を構築する第2の型枠の桟木上に配置される棒状支持体と、棒状支持体の一端部に設けられる第1のアンカー支持部と、第1のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第1のコンクリート用アンカーと、棒状支持体の一端部に設けられ、第1の型枠に釘またはネジ止めされる第1の型枠固定部と、棒状支持体の他端部に設けられる第2のアンカー支持部と、第2のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第2のコンクリート用アンカーと、棒状支持体の他端部に設けられ、第2の型枠に釘またはネジ止めされる第2の型枠固定部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設足場板の支持材に関し、より詳しくは、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材およびそれを用いた仮設足場の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータが走行する通路であるエレベータシャフトを構築する際の仮設足場の設置は、例えば以下の方法で行われていた。図10〜12は、従来の仮設足場の設置方法の一例を工程順に示す側面図である。
【0003】
エレベータシャフト100を構築する際には、まず、図10に示されるように、壁体101を構成するための型枠103,104と、壁体102を構成するための型枠105,106が設置される。
【0004】
次いで、内側の型枠103,105にそれぞれ、アンカーボルト107,108を挿通するための貫通穴が形成される。次いで、この貫通穴を通じてアンカーボルト107,108が挿通され、これらアンカーボルト107,108が型枠103,105にナットで固定される。なお、複数個のアンカーボルト107が、型枠103の横方向(図9の紙面垂直方向)に沿って固定され、複数個のアンカーボルト108が、型枠105の横方向(図9の紙面垂直方向)に沿って固定される。次いで、壁体101,102を構成するためのコンクリート打設空間にコンクリートが打設される。コンクリートが硬化すると、壁体101,102となる。
【0005】
次いで、図11に示されるように、型枠103〜106が撤去される。次いで、アンカーボルト107,108にそれぞれ溝形鋼109,110がナットで固定される。なお、溝形鋼109,110には、それぞれ、アンカーボルト107,108の配置間隔に等しい間隔で複数個のボルト挿通穴が形成されている。
【0006】
次いで、図12に示されるように、複数本の横架パイプ111を溝形鋼109,110上に相互に間隔をあけて横架する。次いで、複数本の横架パイプ111上に、複数本の足場板112を載置する。以上により、仮設足場の設置が完了する。
【0007】
この方法によれば、アンカーボルト107,108、溝形鋼109,110、横架パイプ111、および足場板112によって、仮設足場を構築することができる。
【0008】
しかしながら、この従来の方法には、以下の課題が存在した。
すなわち、従来は、型枠103,105を撤去し、溝形鋼109,110を設置した後でなければ、足場板112を設置することができなかった。このため、型枠103,105の撤去作業時まで対応階の仮設足場がなく、エレベータシャフト100内における型枠103,105の撤去作業およびその他の作業が難しいという課題があった。また、アンカーボルト107,108の設置位置と、溝形鋼109,110のボルト挿通穴の位置がずれている場合には、溝形鋼109,110にボルト挿通穴を開け直す必要があり、作業効率が良くないという課題があった。また、溝形鋼109,110が必要であるため、その分、経済性で不利であるという課題もあった。また、横架パイプ111を壁体101,102の間隔に合わせて切断する必要があり、建物によって壁体101,102の間隔が異なるため、建物によって切断位置を変える手間が掛るという課題もあった。
【0009】
なお、特許文献1には、仮設足場ユニットに関する発明が開示されている。しかしながら、この仮設足場ユニットは、構造が大掛かりで設置に掛る工数が多い上、各階で躯体工事が完了する毎にウインチ等で当該ユニットを持ち上げる必要がある。このため、この技術では、上記した課題を解決することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−154540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材およびそれを用いた仮設足場の設置方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
第1の発明は、
建設現場で相対向する壁体を構築する際に用いられる仮設足場板の支持材であって、
上記仮設足場板が載置され、一端部が上記相対向する壁体の一方を構築する第1の型枠の桟木上に配置され、他端部が上記相対向する壁体の他方を構築する第2の型枠の桟木上に配置される棒状支持体と、
上記棒状支持体の上記一端部に設けられる第1のアンカー支持部と、
上記第1のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第1のコンクリート用アンカーと、
上記棒状支持体の上記一端部に設けられ、上記第1の型枠に釘止めまたはネジ止めされる第1の型枠固定部と、
上記棒状支持体の上記他端部に設けられる第2のアンカー支持部と、
上記第2のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第2のコンクリート用アンカーと、
上記棒状支持体の上記他端部に設けられ、上記第2の型枠に釘止めまたはネジ止めされる第2の型枠固定部と、を備えた仮設足場板の支持材である。
【0013】
第1の発明によれば、仮設足場板の支持材は、型枠設置状態では棒状支持体の両端部が型枠の桟木に支持され、型枠撤去後はコンクリート用アンカーがコンクリート壁体に支持される。つまり、型枠設置と同時に仮設足場を設置することができる。また、仮設足場を設置する際に、溝形鋼をコンクリート用アンカーに取り付けるという面倒な工程は不要である。よって、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材を提供することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
上記棒状支持体は、伸縮可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
第2の発明によれば、相対向する壁体の間隔に応じて棒状支持体の長さを調節することができる。よって、大きさが異なるエレベータシャフト等の躯体工事に幅広く対応することができる。
【0016】
第3の発明は、第1または第2の発明に係る仮設足場板の支持材を用いて仮設足場を設置する方法であって、
上記第1の型枠を設置するとともに当該第1の型枠を貫通して上記第1のコンクリート用アンカーをコンクリート打設空間内に配置するステップと、
上記第1の型枠に上記第1の型枠固定部を釘またはネジにより固定し、上記第1の型枠の桟木上に上記棒状支持体の一端部を配置するステップと、
上記第2の型枠を設置するとともに当該第2の型枠を貫通して上記第2のコンクリート用アンカーをコンクリート打設空間内に配置するステップと、
上記第2の型枠に上記第2の型枠固定部を釘またはネジにより固定し、上記第2の型枠の桟木上に上記棒状支持体の他端部を配置するステップと、
上記第1の型枠と上記第2の型枠の間に掛け渡された複数本の上記仮設足場板の支持材の上に足場板を載置するステップと、を備えた仮設足場の設置方法である。
【0017】
第3の発明によれば、仮設足場板の支持材は、型枠設置状態では棒状支持体の両端部が型枠の桟木に支持され、型枠撤去後はコンクリート用アンカーがコンクリート壁体に支持される。つまり、型枠設置と同時に仮設足場を設置することができる。また、仮設足場を設置する際に、溝形鋼をコンクリート用アンカーに取り付けるという面倒な工程は不要である。よって、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場の設置方法を提供することができる。
【0018】
第4の発明は、第3の発明において、
上記棒状支持体を、上記相対向する壁体の間隔に応じて伸縮させるステップをさらに備えたことを特徴とする。
【0019】
第4の発明によれば、相対向する壁体の間隔に応じて棒状支持体の長さが調節される。よって、大きさが異なるエレベータシャフト等の躯体工事に幅広く対応することができる。
【0020】
第5の発明は、第3または第4の発明において、
上記一方の型枠には、上記第1のアンカー支持部を挿通可能な挿通用切欠部と、当該一方の型枠を撤去する際に当該一方の型枠を上記仮設足場板の支持材に干渉させないための干渉防止用切欠部が形成され、
上記他方の型枠には、上記第2のアンカー支持部を挿通可能な挿通用切欠部と、当該他方の型枠を撤去する際に当該他方の型枠を上記仮設足場板の支持材に干渉させないための干渉防止用切欠部が形成され、
上記第1のコンクリート用アンカーを上記コンクリート打設空間内に配置する際、上記第1のアンカー支持部を上記挿通用切欠部内に位置させ、
上記第2のコンクリート用アンカーを上記コンクリート打設空間内に配置する際、上記第2のアンカー支持部を上記挿通用切欠部内に位置させることを特徴とする。
【0021】
第5の発明によれば、仮設足場板の支持材を設置する際、各アンカー支持部は型枠に直接固定されない。また、干渉防止用切欠部があるので、各型枠を撤去する際に当該型枠を仮設足場板の支持材に干渉させないで済む。よって、型枠固定部の釘止めまたはネジ止めを解除すれば、仮設足場板の支持材を壁体に固定した状態のまま、型枠を容易に撤去することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材およびそれを用いた仮設足場の設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る仮設足場板の支持材を設置する様子を示す斜視図
【図2】図1に示される仮設足場板の支持材が固定される型枠を、上側型枠と下側型枠に分離した状態で示す斜視図
【図3】図1に示される仮設足場板の支持材を設置した状態を示す斜視図
【図4】図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側の型枠を撤去した状態を示す斜視図
【図5】図1に示される仮設足場板の支持材を設置した状態を示す側面図
【図6】図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側の型枠を撤去した状態を示す側面図
【図7】図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側と下側の型枠を撤去した状態を示す側面図
【図8】図1に示される仮設足場板の支持材を用いた仮設足場の設置方法を示すフローチャート
【図9】本発明の他の実施形態を示す斜視図
【図10】従来の仮設足場の設置方法の一例を工程順に示す側面図
【図11】従来の仮設足場の設置方法の一例を工程順に示す側面図
【図12】従来の仮設足場の設置方法の一例を工程順に示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る仮設足場板の支持材について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る仮設足場板の支持材を設置する様子を示す斜視図である。図2は、図1に示される仮設足場板の支持材が固定される型枠を示す斜視図である。図3は、図1に示される仮設足場板の支持材を設置した状態を示す斜視図である。図4は、図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側の型枠を撤去した状態を示す斜視図である。図5は、図1に示される仮設足場板の支持材を設置した状態を示す側面図である。図6は、図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側の型枠を撤去した状態を示す側面図である。図7は、図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側と下側の型枠を撤去した状態を示す側面図である。
【0025】
本実施形態に係る仮設足場板の支持材1(以下、支持材1と称する)は、建設現場で相対向する壁体2(図5参照)を構築する際に用いられるものである。
【0026】
図1に示されるように、支持材1は、棒状支持体3と、第1のアンカー支持部4と、第1のコンクリート用アンカー5と、第1の型枠固定部6と、第2のアンカー支持部7と、第2のコンクリート用アンカー8と、第2の型枠固定部9とを備えている。
【0027】
本実施形態において使用される第1のコンクリート用アンカー5は、第1のアンカー支持部4に対して着脱可能なものであれば、その種類は限定されない。例えば、図1に例示される如く、第1のコンクリート用アンカー5は、雌ねじアンカーとすることができる。雌ねじアンカーは、雌ねじを有するナット部51を備えている。ナット部51には、ボルト42を螺合させることができる。第2のコンクリート用アンカー8も、同様の構成とすることができる。なお、図示はしないが、第1のコンクリート用アンカー5、第2のコンクリート用アンカー8は、雄ねじアンカー(アンカーボルト)とすることも可能である。この場合、雄ねじアンカーには、ナットが螺合される。
以下の説明では、第1のコンクリート用アンカー5、第2のコンクリート用アンカー8を雌ねじアンカーとした場合を例にとって説明する。
【0028】
棒状支持体3の上には、仮設足場板10(図5参照)が載置される。棒状支持体3の一端部は、相対向する壁体2の一方を構築する第1の型枠12の桟木12a上に配置される(図1,3,5参照)。棒状支持体3の他端部は、相対向する壁体2の他方を構築する第2の型枠14の桟木14a上に配置される(図5参照)。
【0029】
ここで、支持材1を支持する型枠について説明する。相対向する壁体2の一方を構築する型枠は、図1、2に例示されるように、第1の型枠(上側)11と、第1の型枠(下側)12とを有している。第1の型枠(下側)12は、通常の型枠である。第1の型枠(上側)11は、第1の型枠(下側)12の上に配置される型枠である。第1の型枠(上側)11の型枠パネル11bの下端部が開口するように、右側縦桟木11aまたは左側縦桟木11aの少なくともいずれか一方に沿って、第1のアンカー支持部4を挿通させるための挿通用切欠部121が形成されている。また、第1の型枠11の下側桟木11aは、挿通用切欠部121に対応する位置が切り欠かれて干渉防止用切欠部122が形成されている。このように構成することで、第1の型枠(上側)11aの設置の際、挿通用切欠部121内に第1のアンカー支持部4を配置した状態で第1のコンクリート用アンカー5をコンクリート打設空間内に突出させ、第1の型枠固定部6を右側縦桟木12aまたは左側縦桟木12aの少なくともいずれか一方に釘止めまたはネジ止めすることができる。また、第1の型枠固定部6を釘止めまたはネジ止めした状態で、棒状支持体3を第1の型枠(下側)12の桟木12a上に載置することができる。さらに、型枠の撤去時には、支持材1を壁体2に固定したまま、第1の型枠(上側)11を上方に持ち上げて当該第1の型枠(上側)11を撤去することができる。なお、図1に示される二点鎖線は、型枠の間隔を規定するセパレータを示している。
【0030】
相対向する壁体2の他方を構築する型枠は、第2の型枠(上側)13と、第2の型枠(下側)14とを有している。第2の型枠(下側)14は、通常の型枠である。第2の型枠(上側)13は、第2の型枠(下側)14の上に配置される型枠である。第2の型枠(上側)13は、第1の型枠(上側)11と同様の構造であり、第2の型枠(下側)14は、第1の型枠(下側)12と同様の構造である。
【0031】
棒状支持体3は、管状部材であって、例えば、断面四角形状の鋼管で構成されている。棒状支持体3は、図1に例示されるように、伸縮可能に構成されていることが好ましい。図1に示される例では、棒状支持体3は、太管部31と細管部32とを有している。太管部31の一端側に細管部32の一端側が出し入れ自在に挿入されている。太管部31には、複数のボルト挿通穴(図1に示される例では、太管部31の一側面に2箇所、下面に2箇所)が形成されており、このボルト挿通穴の位置にナット33が取り付けられている。ナット33の穴はボルト挿通穴と連通している。太管部31に対して細管部32を出し入れして棒状支持体3の長さを壁体2,2の間隔に合わせて調節し、ボルト34をナット33に螺合させてボルト34の先端を細管部32の側面および下面に押し付けることにより、太管部31に対して細管部32が固定される。
【0032】
第1のアンカー支持部4は、棒状支持体3の一端部に設けられる。第1のアンカー支持部4は、図1に示される例では、長方形状の板部材であり、ボルト挿通穴41が形成されている。ボルト挿通穴41を介して、第1のアンカー支持部4の外側に第1のコンクリート用アンカー5を配置するとともに第1のアンカー支持部4の内側にボルト42を配置し、ボルト42を第1のコンクリート用アンカー5のナット部51に螺合させることにより、第1のコンクリート用アンカー5が第1のアンカー支持部4に着脱可能に固定される。第2のコンクリート用アンカー8も、同様にして、第2のアンカー支持部7に固定される。
【0033】
第1の型枠固定部6は、棒状支持体3の一端部に設けられ、第1の型枠11の桟木11aに釘止めまたはネジ止めされる。第1の型枠固定部6には、釘穴またはネジ穴(図1に示される例では釘穴61)が形成されている。
【0034】
第2のアンカー支持部7は、棒状支持体3の他端部に設けられる。第2のアンカー支持部7は、第1のアンカー支持部4と同様の構造である。第2のコンクリート用アンカー8は、第1のコンクリート用アンカー5と同様の構造であり、第2のアンカー支持部7に着脱可能に設けられる。
【0035】
第2の型枠固定部9は、棒状支持体3の他端部に設けられる。第2の型枠固定部9は、第1の型枠固定部6と同様の構造であり、第2の型枠13に釘止めまたはネジ止めされる。
【0036】
次に、支持材1を用いた仮設足場の設置方法について、図8等を参照しつつ説明する。図8は、仮設足場の設置方法を示すフローチャートである。
【0037】
まず、図1,5に示されるように、一方の壁体2を構築するための第1の型枠(下側)12の上に第1の型枠(上側)11を設置するとともに、他方の壁体2を構築するための第2の型枠(下側)14の上に第2の型枠(上側)13を設置する(ステップS1)。次いで、棒状支持体3を、一方の壁体2と他方の壁体2の間隔に合わせて長さ調節し、適切な長さになったらボルト34によって長さを固定する(ステップS2)。次いで、第1の型枠11を貫通して第1のコンクリート用アンカー5をコンクリート打設空間内に配置する。第1のコンクリート用アンカー5は、第1のアンカー支持部4にこのステップよりも前に予め固定しておいてもよいし、或いは第1のアンカー支持部4にこのステップにおいて固定してもよい(ステップS3)。なお、第1のコンクリート用アンカー5をコンクリート打設空間内に配置する際、第1のアンカー支持部4を第1の型枠(上側)11の挿通用切欠部121内に位置させる。次いで、図3,5に示されるように、第1の型枠(上側)11の縦桟木11aに第1の型枠固定部6を釘62またはネジにより固定し、第1の型枠(下側)12の桟木12a上に棒状支持体3の一端部を配置する(ステップS4)。
【0038】
次いで、第2の型枠(上側)13を貫通して第2のコンクリート用アンカー8をコンクリート打設空間内に配置する。第2のコンクリート用アンカー8は、第2のアンカー支持部7にこのステップよりも前に予め固定しておいてもよいし、或いは第2のアンカー支持部7にこのステップにおいて固定してもよい(ステップS5)。なお、第2のコンクリート用アンカー8をコンクリート打設空間内に配置する際、第2のアンカー支持部7を挿通用切欠部内に位置させる。次いで、図3,5に示されるように、第2の型枠(上側)13の縦桟木13aに第2の型枠固定部9を釘またはネジにより固定し、第2の型枠(下側)14の桟木14a上に棒状支持体3の他端部を配置する(ステップS6)。ステップS2〜S6を繰り返して、第1の型枠11,12と第2の型枠13,14の間に所定本数(複数本)の支持材1を掛け渡す。所定本数の支持材1の設置が完了したら、ステップS7を経て、所定本数の支持材1の上に、当該支持材1と直交するように複数本の足場板10を載置する(ステップS8。図5参照)。ステップS8により、型枠の構築段階で仮設足場が完成する。
【0039】
次いで、各コンクリート打設空間内にコンクリートを打設する(ステップS9)。コンクリートが硬化したら、壁体2が完成する(図5参照)。次いで、第1の型枠固定部6,9において釘またはネジを抜く(ステップS10)。次いで、図4,6に示されるように、第1の型枠(上側)11および第2の型枠(上側)13を上方に持ち上げて撤去する(ステップS11)。第1の型枠(上側)11および第2の型枠(上側)13には挿通用切欠部121および干渉防止用切欠部122が形成されているので、ステップS11において支持材1は型枠に干渉せず、第1の型枠(上側)11および第2の型枠(上側)13をスムーズに撤去することができる。次いで、図7に示されるように、第1の型枠(下側)12および第2の型枠(下側)14を撤去する(ステップS12)。型枠の撤去後も、仮設足場は維持されている。以上が、仮設足場の設置方法である。
仮設足場を必要とする作業が全て完了したら、第1のコンクリート用アンカー5および第2のコンクリート用アンカー8を壁体2内に存置したまま、当該第1のコンクリート用アンカー5および第2のコンクリート用アンカー8のナット部からボルトを抜くことで、容易に支持材1のコンクリート用アンカー5,8以外の部分を撤去することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、仮設足場板の支持材1は、型枠設置状態では棒状支持体3の両端部が型枠12,14の桟木12a,14aに支持され、型枠撤去後はコンクリート用アンカー5,8がコンクリート壁体2,2に支持される。つまり、型枠設置と同時に仮設足場を設置することができる。また、仮設足場を設置する際に、溝形鋼をコンクリート用アンカーに取り付けるという面倒な工程は不要である。よって、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材を提供することができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、挿通用切欠部121を形成する際に切り取った木片を用いていないが、図9に例示されるように、当該木片113を第1の型枠固定部6の外側に一体的に取り付けて使用してもよい。第2の型枠固定部9についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材およびそれを用いた仮設足場の設置方法等に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 仮設足場板の支持材
2 壁体
3 棒状支持体
31 太管部
32 細管部
4 第1のアンカー支持部
5 第1のコンクリート用アンカー
6 第1の型枠固定部6
7 第2のアンカー支持部
8 第2のコンクリート用アンカー
9 第2の型枠固定部
10 仮設足場板
11 第1の型枠(上側)
11a,12a,13a,14a 桟木
11b 型枠パネル
12 第1の型枠(下側)
121 挿通用切欠部
122 干渉防止用切欠部
13 第2の型枠(上側)
14 第2の型枠(下側)
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設足場板の支持材に関し、より詳しくは、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材およびそれを用いた仮設足場の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータが走行する通路であるエレベータシャフトを構築する際の仮設足場の設置は、例えば以下の方法で行われていた。図10〜12は、従来の仮設足場の設置方法の一例を工程順に示す側面図である。
【0003】
エレベータシャフト100を構築する際には、まず、図10に示されるように、壁体101を構成するための型枠103,104と、壁体102を構成するための型枠105,106が設置される。
【0004】
次いで、内側の型枠103,105にそれぞれ、アンカーボルト107,108を挿通するための貫通穴が形成される。次いで、この貫通穴を通じてアンカーボルト107,108が挿通され、これらアンカーボルト107,108が型枠103,105にナットで固定される。なお、複数個のアンカーボルト107が、型枠103の横方向(図9の紙面垂直方向)に沿って固定され、複数個のアンカーボルト108が、型枠105の横方向(図9の紙面垂直方向)に沿って固定される。次いで、壁体101,102を構成するためのコンクリート打設空間にコンクリートが打設される。コンクリートが硬化すると、壁体101,102となる。
【0005】
次いで、図11に示されるように、型枠103〜106が撤去される。次いで、アンカーボルト107,108にそれぞれ溝形鋼109,110がナットで固定される。なお、溝形鋼109,110には、それぞれ、アンカーボルト107,108の配置間隔に等しい間隔で複数個のボルト挿通穴が形成されている。
【0006】
次いで、図12に示されるように、複数本の横架パイプ111を溝形鋼109,110上に相互に間隔をあけて横架する。次いで、複数本の横架パイプ111上に、複数本の足場板112を載置する。以上により、仮設足場の設置が完了する。
【0007】
この方法によれば、アンカーボルト107,108、溝形鋼109,110、横架パイプ111、および足場板112によって、仮設足場を構築することができる。
【0008】
しかしながら、この従来の方法には、以下の課題が存在した。
すなわち、従来は、型枠103,105を撤去し、溝形鋼109,110を設置した後でなければ、足場板112を設置することができなかった。このため、型枠103,105の撤去作業時まで対応階の仮設足場がなく、エレベータシャフト100内における型枠103,105の撤去作業およびその他の作業が難しいという課題があった。また、アンカーボルト107,108の設置位置と、溝形鋼109,110のボルト挿通穴の位置がずれている場合には、溝形鋼109,110にボルト挿通穴を開け直す必要があり、作業効率が良くないという課題があった。また、溝形鋼109,110が必要であるため、その分、経済性で不利であるという課題もあった。また、横架パイプ111を壁体101,102の間隔に合わせて切断する必要があり、建物によって壁体101,102の間隔が異なるため、建物によって切断位置を変える手間が掛るという課題もあった。
【0009】
なお、特許文献1には、仮設足場ユニットに関する発明が開示されている。しかしながら、この仮設足場ユニットは、構造が大掛かりで設置に掛る工数が多い上、各階で躯体工事が完了する毎にウインチ等で当該ユニットを持ち上げる必要がある。このため、この技術では、上記した課題を解決することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−154540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材およびそれを用いた仮設足場の設置方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
第1の発明は、
建設現場で相対向する壁体を構築する際に用いられる仮設足場板の支持材であって、
上記仮設足場板が載置され、一端部が上記相対向する壁体の一方を構築する第1の型枠の桟木上に配置され、他端部が上記相対向する壁体の他方を構築する第2の型枠の桟木上に配置される棒状支持体と、
上記棒状支持体の上記一端部に設けられる第1のアンカー支持部と、
上記第1のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第1のコンクリート用アンカーと、
上記棒状支持体の上記一端部に設けられ、上記第1の型枠に釘止めまたはネジ止めされる第1の型枠固定部と、
上記棒状支持体の上記他端部に設けられる第2のアンカー支持部と、
上記第2のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第2のコンクリート用アンカーと、
上記棒状支持体の上記他端部に設けられ、上記第2の型枠に釘止めまたはネジ止めされる第2の型枠固定部と、を備えた仮設足場板の支持材である。
【0013】
第1の発明によれば、仮設足場板の支持材は、型枠設置状態では棒状支持体の両端部が型枠の桟木に支持され、型枠撤去後はコンクリート用アンカーがコンクリート壁体に支持される。つまり、型枠設置と同時に仮設足場を設置することができる。また、仮設足場を設置する際に、溝形鋼をコンクリート用アンカーに取り付けるという面倒な工程は不要である。よって、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材を提供することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
上記棒状支持体は、伸縮可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
第2の発明によれば、相対向する壁体の間隔に応じて棒状支持体の長さを調節することができる。よって、大きさが異なるエレベータシャフト等の躯体工事に幅広く対応することができる。
【0016】
第3の発明は、第1または第2の発明に係る仮設足場板の支持材を用いて仮設足場を設置する方法であって、
上記第1の型枠を設置するとともに当該第1の型枠を貫通して上記第1のコンクリート用アンカーをコンクリート打設空間内に配置するステップと、
上記第1の型枠に上記第1の型枠固定部を釘またはネジにより固定し、上記第1の型枠の桟木上に上記棒状支持体の一端部を配置するステップと、
上記第2の型枠を設置するとともに当該第2の型枠を貫通して上記第2のコンクリート用アンカーをコンクリート打設空間内に配置するステップと、
上記第2の型枠に上記第2の型枠固定部を釘またはネジにより固定し、上記第2の型枠の桟木上に上記棒状支持体の他端部を配置するステップと、
上記第1の型枠と上記第2の型枠の間に掛け渡された複数本の上記仮設足場板の支持材の上に足場板を載置するステップと、を備えた仮設足場の設置方法である。
【0017】
第3の発明によれば、仮設足場板の支持材は、型枠設置状態では棒状支持体の両端部が型枠の桟木に支持され、型枠撤去後はコンクリート用アンカーがコンクリート壁体に支持される。つまり、型枠設置と同時に仮設足場を設置することができる。また、仮設足場を設置する際に、溝形鋼をコンクリート用アンカーに取り付けるという面倒な工程は不要である。よって、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場の設置方法を提供することができる。
【0018】
第4の発明は、第3の発明において、
上記棒状支持体を、上記相対向する壁体の間隔に応じて伸縮させるステップをさらに備えたことを特徴とする。
【0019】
第4の発明によれば、相対向する壁体の間隔に応じて棒状支持体の長さが調節される。よって、大きさが異なるエレベータシャフト等の躯体工事に幅広く対応することができる。
【0020】
第5の発明は、第3または第4の発明において、
上記一方の型枠には、上記第1のアンカー支持部を挿通可能な挿通用切欠部と、当該一方の型枠を撤去する際に当該一方の型枠を上記仮設足場板の支持材に干渉させないための干渉防止用切欠部が形成され、
上記他方の型枠には、上記第2のアンカー支持部を挿通可能な挿通用切欠部と、当該他方の型枠を撤去する際に当該他方の型枠を上記仮設足場板の支持材に干渉させないための干渉防止用切欠部が形成され、
上記第1のコンクリート用アンカーを上記コンクリート打設空間内に配置する際、上記第1のアンカー支持部を上記挿通用切欠部内に位置させ、
上記第2のコンクリート用アンカーを上記コンクリート打設空間内に配置する際、上記第2のアンカー支持部を上記挿通用切欠部内に位置させることを特徴とする。
【0021】
第5の発明によれば、仮設足場板の支持材を設置する際、各アンカー支持部は型枠に直接固定されない。また、干渉防止用切欠部があるので、各型枠を撤去する際に当該型枠を仮設足場板の支持材に干渉させないで済む。よって、型枠固定部の釘止めまたはネジ止めを解除すれば、仮設足場板の支持材を壁体に固定した状態のまま、型枠を容易に撤去することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材およびそれを用いた仮設足場の設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る仮設足場板の支持材を設置する様子を示す斜視図
【図2】図1に示される仮設足場板の支持材が固定される型枠を、上側型枠と下側型枠に分離した状態で示す斜視図
【図3】図1に示される仮設足場板の支持材を設置した状態を示す斜視図
【図4】図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側の型枠を撤去した状態を示す斜視図
【図5】図1に示される仮設足場板の支持材を設置した状態を示す側面図
【図6】図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側の型枠を撤去した状態を示す側面図
【図7】図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側と下側の型枠を撤去した状態を示す側面図
【図8】図1に示される仮設足場板の支持材を用いた仮設足場の設置方法を示すフローチャート
【図9】本発明の他の実施形態を示す斜視図
【図10】従来の仮設足場の設置方法の一例を工程順に示す側面図
【図11】従来の仮設足場の設置方法の一例を工程順に示す側面図
【図12】従来の仮設足場の設置方法の一例を工程順に示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る仮設足場板の支持材について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る仮設足場板の支持材を設置する様子を示す斜視図である。図2は、図1に示される仮設足場板の支持材が固定される型枠を示す斜視図である。図3は、図1に示される仮設足場板の支持材を設置した状態を示す斜視図である。図4は、図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側の型枠を撤去した状態を示す斜視図である。図5は、図1に示される仮設足場板の支持材を設置した状態を示す側面図である。図6は、図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側の型枠を撤去した状態を示す側面図である。図7は、図1に示される仮設足場板の支持材を設置し、コンクリート打設後に上側と下側の型枠を撤去した状態を示す側面図である。
【0025】
本実施形態に係る仮設足場板の支持材1(以下、支持材1と称する)は、建設現場で相対向する壁体2(図5参照)を構築する際に用いられるものである。
【0026】
図1に示されるように、支持材1は、棒状支持体3と、第1のアンカー支持部4と、第1のコンクリート用アンカー5と、第1の型枠固定部6と、第2のアンカー支持部7と、第2のコンクリート用アンカー8と、第2の型枠固定部9とを備えている。
【0027】
本実施形態において使用される第1のコンクリート用アンカー5は、第1のアンカー支持部4に対して着脱可能なものであれば、その種類は限定されない。例えば、図1に例示される如く、第1のコンクリート用アンカー5は、雌ねじアンカーとすることができる。雌ねじアンカーは、雌ねじを有するナット部51を備えている。ナット部51には、ボルト42を螺合させることができる。第2のコンクリート用アンカー8も、同様の構成とすることができる。なお、図示はしないが、第1のコンクリート用アンカー5、第2のコンクリート用アンカー8は、雄ねじアンカー(アンカーボルト)とすることも可能である。この場合、雄ねじアンカーには、ナットが螺合される。
以下の説明では、第1のコンクリート用アンカー5、第2のコンクリート用アンカー8を雌ねじアンカーとした場合を例にとって説明する。
【0028】
棒状支持体3の上には、仮設足場板10(図5参照)が載置される。棒状支持体3の一端部は、相対向する壁体2の一方を構築する第1の型枠12の桟木12a上に配置される(図1,3,5参照)。棒状支持体3の他端部は、相対向する壁体2の他方を構築する第2の型枠14の桟木14a上に配置される(図5参照)。
【0029】
ここで、支持材1を支持する型枠について説明する。相対向する壁体2の一方を構築する型枠は、図1、2に例示されるように、第1の型枠(上側)11と、第1の型枠(下側)12とを有している。第1の型枠(下側)12は、通常の型枠である。第1の型枠(上側)11は、第1の型枠(下側)12の上に配置される型枠である。第1の型枠(上側)11の型枠パネル11bの下端部が開口するように、右側縦桟木11aまたは左側縦桟木11aの少なくともいずれか一方に沿って、第1のアンカー支持部4を挿通させるための挿通用切欠部121が形成されている。また、第1の型枠11の下側桟木11aは、挿通用切欠部121に対応する位置が切り欠かれて干渉防止用切欠部122が形成されている。このように構成することで、第1の型枠(上側)11aの設置の際、挿通用切欠部121内に第1のアンカー支持部4を配置した状態で第1のコンクリート用アンカー5をコンクリート打設空間内に突出させ、第1の型枠固定部6を右側縦桟木12aまたは左側縦桟木12aの少なくともいずれか一方に釘止めまたはネジ止めすることができる。また、第1の型枠固定部6を釘止めまたはネジ止めした状態で、棒状支持体3を第1の型枠(下側)12の桟木12a上に載置することができる。さらに、型枠の撤去時には、支持材1を壁体2に固定したまま、第1の型枠(上側)11を上方に持ち上げて当該第1の型枠(上側)11を撤去することができる。なお、図1に示される二点鎖線は、型枠の間隔を規定するセパレータを示している。
【0030】
相対向する壁体2の他方を構築する型枠は、第2の型枠(上側)13と、第2の型枠(下側)14とを有している。第2の型枠(下側)14は、通常の型枠である。第2の型枠(上側)13は、第2の型枠(下側)14の上に配置される型枠である。第2の型枠(上側)13は、第1の型枠(上側)11と同様の構造であり、第2の型枠(下側)14は、第1の型枠(下側)12と同様の構造である。
【0031】
棒状支持体3は、管状部材であって、例えば、断面四角形状の鋼管で構成されている。棒状支持体3は、図1に例示されるように、伸縮可能に構成されていることが好ましい。図1に示される例では、棒状支持体3は、太管部31と細管部32とを有している。太管部31の一端側に細管部32の一端側が出し入れ自在に挿入されている。太管部31には、複数のボルト挿通穴(図1に示される例では、太管部31の一側面に2箇所、下面に2箇所)が形成されており、このボルト挿通穴の位置にナット33が取り付けられている。ナット33の穴はボルト挿通穴と連通している。太管部31に対して細管部32を出し入れして棒状支持体3の長さを壁体2,2の間隔に合わせて調節し、ボルト34をナット33に螺合させてボルト34の先端を細管部32の側面および下面に押し付けることにより、太管部31に対して細管部32が固定される。
【0032】
第1のアンカー支持部4は、棒状支持体3の一端部に設けられる。第1のアンカー支持部4は、図1に示される例では、長方形状の板部材であり、ボルト挿通穴41が形成されている。ボルト挿通穴41を介して、第1のアンカー支持部4の外側に第1のコンクリート用アンカー5を配置するとともに第1のアンカー支持部4の内側にボルト42を配置し、ボルト42を第1のコンクリート用アンカー5のナット部51に螺合させることにより、第1のコンクリート用アンカー5が第1のアンカー支持部4に着脱可能に固定される。第2のコンクリート用アンカー8も、同様にして、第2のアンカー支持部7に固定される。
【0033】
第1の型枠固定部6は、棒状支持体3の一端部に設けられ、第1の型枠11の桟木11aに釘止めまたはネジ止めされる。第1の型枠固定部6には、釘穴またはネジ穴(図1に示される例では釘穴61)が形成されている。
【0034】
第2のアンカー支持部7は、棒状支持体3の他端部に設けられる。第2のアンカー支持部7は、第1のアンカー支持部4と同様の構造である。第2のコンクリート用アンカー8は、第1のコンクリート用アンカー5と同様の構造であり、第2のアンカー支持部7に着脱可能に設けられる。
【0035】
第2の型枠固定部9は、棒状支持体3の他端部に設けられる。第2の型枠固定部9は、第1の型枠固定部6と同様の構造であり、第2の型枠13に釘止めまたはネジ止めされる。
【0036】
次に、支持材1を用いた仮設足場の設置方法について、図8等を参照しつつ説明する。図8は、仮設足場の設置方法を示すフローチャートである。
【0037】
まず、図1,5に示されるように、一方の壁体2を構築するための第1の型枠(下側)12の上に第1の型枠(上側)11を設置するとともに、他方の壁体2を構築するための第2の型枠(下側)14の上に第2の型枠(上側)13を設置する(ステップS1)。次いで、棒状支持体3を、一方の壁体2と他方の壁体2の間隔に合わせて長さ調節し、適切な長さになったらボルト34によって長さを固定する(ステップS2)。次いで、第1の型枠11を貫通して第1のコンクリート用アンカー5をコンクリート打設空間内に配置する。第1のコンクリート用アンカー5は、第1のアンカー支持部4にこのステップよりも前に予め固定しておいてもよいし、或いは第1のアンカー支持部4にこのステップにおいて固定してもよい(ステップS3)。なお、第1のコンクリート用アンカー5をコンクリート打設空間内に配置する際、第1のアンカー支持部4を第1の型枠(上側)11の挿通用切欠部121内に位置させる。次いで、図3,5に示されるように、第1の型枠(上側)11の縦桟木11aに第1の型枠固定部6を釘62またはネジにより固定し、第1の型枠(下側)12の桟木12a上に棒状支持体3の一端部を配置する(ステップS4)。
【0038】
次いで、第2の型枠(上側)13を貫通して第2のコンクリート用アンカー8をコンクリート打設空間内に配置する。第2のコンクリート用アンカー8は、第2のアンカー支持部7にこのステップよりも前に予め固定しておいてもよいし、或いは第2のアンカー支持部7にこのステップにおいて固定してもよい(ステップS5)。なお、第2のコンクリート用アンカー8をコンクリート打設空間内に配置する際、第2のアンカー支持部7を挿通用切欠部内に位置させる。次いで、図3,5に示されるように、第2の型枠(上側)13の縦桟木13aに第2の型枠固定部9を釘またはネジにより固定し、第2の型枠(下側)14の桟木14a上に棒状支持体3の他端部を配置する(ステップS6)。ステップS2〜S6を繰り返して、第1の型枠11,12と第2の型枠13,14の間に所定本数(複数本)の支持材1を掛け渡す。所定本数の支持材1の設置が完了したら、ステップS7を経て、所定本数の支持材1の上に、当該支持材1と直交するように複数本の足場板10を載置する(ステップS8。図5参照)。ステップS8により、型枠の構築段階で仮設足場が完成する。
【0039】
次いで、各コンクリート打設空間内にコンクリートを打設する(ステップS9)。コンクリートが硬化したら、壁体2が完成する(図5参照)。次いで、第1の型枠固定部6,9において釘またはネジを抜く(ステップS10)。次いで、図4,6に示されるように、第1の型枠(上側)11および第2の型枠(上側)13を上方に持ち上げて撤去する(ステップS11)。第1の型枠(上側)11および第2の型枠(上側)13には挿通用切欠部121および干渉防止用切欠部122が形成されているので、ステップS11において支持材1は型枠に干渉せず、第1の型枠(上側)11および第2の型枠(上側)13をスムーズに撤去することができる。次いで、図7に示されるように、第1の型枠(下側)12および第2の型枠(下側)14を撤去する(ステップS12)。型枠の撤去後も、仮設足場は維持されている。以上が、仮設足場の設置方法である。
仮設足場を必要とする作業が全て完了したら、第1のコンクリート用アンカー5および第2のコンクリート用アンカー8を壁体2内に存置したまま、当該第1のコンクリート用アンカー5および第2のコンクリート用アンカー8のナット部からボルトを抜くことで、容易に支持材1のコンクリート用アンカー5,8以外の部分を撤去することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、仮設足場板の支持材1は、型枠設置状態では棒状支持体3の両端部が型枠12,14の桟木12a,14aに支持され、型枠撤去後はコンクリート用アンカー5,8がコンクリート壁体2,2に支持される。つまり、型枠設置と同時に仮設足場を設置することができる。また、仮設足場を設置する際に、溝形鋼をコンクリート用アンカーに取り付けるという面倒な工程は不要である。よって、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材を提供することができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、挿通用切欠部121を形成する際に切り取った木片を用いていないが、図9に例示されるように、当該木片113を第1の型枠固定部6の外側に一体的に取り付けて使用してもよい。第2の型枠固定部9についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、エレベータシャフト等の躯体工事において、少ない工数で型枠の設置と同時に仮設足場を設置することができ、これにより工事を容易かつ速やかに行うことができるとともに安全に行うことができ、経済性も良好な、仮設足場板の支持材およびそれを用いた仮設足場の設置方法等に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 仮設足場板の支持材
2 壁体
3 棒状支持体
31 太管部
32 細管部
4 第1のアンカー支持部
5 第1のコンクリート用アンカー
6 第1の型枠固定部6
7 第2のアンカー支持部
8 第2のコンクリート用アンカー
9 第2の型枠固定部
10 仮設足場板
11 第1の型枠(上側)
11a,12a,13a,14a 桟木
11b 型枠パネル
12 第1の型枠(下側)
121 挿通用切欠部
122 干渉防止用切欠部
13 第2の型枠(上側)
14 第2の型枠(下側)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場で相対向する壁体を構築する際に用いられる仮設足場板の支持材であって、
前記仮設足場板が載置され、一端部が前記相対向する壁体の一方を構築する第1の型枠の桟木上に配置され、他端部が前記相対向する壁体の他方を構築する第2の型枠の桟木上に配置される棒状支持体と、
前記棒状支持体の前記一端部に設けられる第1のアンカー支持部と、
前記第1のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第1のコンクリート用アンカーと、
前記棒状支持体の前記一端部に設けられ、前記第1の型枠に釘またはネジ止めされる第1の型枠固定部と、
前記棒状支持体の前記他端部に設けられる第2のアンカー支持部と、
前記第2のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第2のコンクリート用アンカーと、
前記棒状支持体の前記他端部に設けられ、前記第2の型枠に釘またはネジ止めされる第2の型枠固定部と、を備えた仮設足場板の支持材。
【請求項2】
前記棒状支持体は、伸縮可能に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の仮設足場板の支持材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の仮設足場板の支持材を用いて仮設足場を設置する方法であって、
前記第1の型枠を設置するとともに当該第1の型枠を貫通して前記第1のコンクリート用アンカーをコンクリート打設空間内に配置するステップと、
前記第1の型枠に前記第1の型枠固定部を釘またはネジにより固定し、前記第1の型枠の桟木上に前記棒状支持体の一端部を配置するステップと、
前記第2の型枠を設置するとともに当該第2の型枠を貫通して前記第2のコンクリート用アンカーをコンクリート打設空間内に配置するステップと、
前記第2の型枠に前記第2の型枠固定部を釘またはネジにより固定し、前記第2の型枠の桟木上に前記棒状支持体の他端部を配置するステップと、
前記第1の型枠と前記第2の型枠の間に掛け渡された複数本の前記仮設足場板の支持材の上に足場板を載置するステップと、を備えた仮設足場の設置方法。
【請求項4】
前記棒状支持体を、前記相対向する壁体の間隔に応じて伸縮させるステップをさらに備えたことを特徴とする、仮設足場の設置方法。
【請求項5】
前記一方の型枠には、前記第1のアンカー支持部を挿通可能な挿通用切欠部と、当該一方の型枠を撤去する際に当該一方の型枠を前記仮設足場板の支持材に干渉させないための干渉防止用切欠部が形成され、
前記他方の型枠には、前記第2のアンカー支持部を挿通可能な挿通用切欠部と、当該他方の型枠を撤去する際に当該他方の型枠を前記仮設足場板の支持材に干渉させないための干渉防止用切欠部が形成され、
前記第1のコンクリート用アンカーを前記コンクリート打設空間内に配置する際、前記第1のアンカー支持部を前記挿通用切欠部内に位置させ、
前記第2のコンクリート用アンカーを前記コンクリート打設空間内に配置する際、前記第2のアンカー支持部を前記挿通用切欠部内に位置させることを特徴とする、請求項3または4に記載の仮設足場の設置方法。
【請求項1】
建設現場で相対向する壁体を構築する際に用いられる仮設足場板の支持材であって、
前記仮設足場板が載置され、一端部が前記相対向する壁体の一方を構築する第1の型枠の桟木上に配置され、他端部が前記相対向する壁体の他方を構築する第2の型枠の桟木上に配置される棒状支持体と、
前記棒状支持体の前記一端部に設けられる第1のアンカー支持部と、
前記第1のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第1のコンクリート用アンカーと、
前記棒状支持体の前記一端部に設けられ、前記第1の型枠に釘またはネジ止めされる第1の型枠固定部と、
前記棒状支持体の前記他端部に設けられる第2のアンカー支持部と、
前記第2のアンカー支持部に着脱可能に設けられる第2のコンクリート用アンカーと、
前記棒状支持体の前記他端部に設けられ、前記第2の型枠に釘またはネジ止めされる第2の型枠固定部と、を備えた仮設足場板の支持材。
【請求項2】
前記棒状支持体は、伸縮可能に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の仮設足場板の支持材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の仮設足場板の支持材を用いて仮設足場を設置する方法であって、
前記第1の型枠を設置するとともに当該第1の型枠を貫通して前記第1のコンクリート用アンカーをコンクリート打設空間内に配置するステップと、
前記第1の型枠に前記第1の型枠固定部を釘またはネジにより固定し、前記第1の型枠の桟木上に前記棒状支持体の一端部を配置するステップと、
前記第2の型枠を設置するとともに当該第2の型枠を貫通して前記第2のコンクリート用アンカーをコンクリート打設空間内に配置するステップと、
前記第2の型枠に前記第2の型枠固定部を釘またはネジにより固定し、前記第2の型枠の桟木上に前記棒状支持体の他端部を配置するステップと、
前記第1の型枠と前記第2の型枠の間に掛け渡された複数本の前記仮設足場板の支持材の上に足場板を載置するステップと、を備えた仮設足場の設置方法。
【請求項4】
前記棒状支持体を、前記相対向する壁体の間隔に応じて伸縮させるステップをさらに備えたことを特徴とする、仮設足場の設置方法。
【請求項5】
前記一方の型枠には、前記第1のアンカー支持部を挿通可能な挿通用切欠部と、当該一方の型枠を撤去する際に当該一方の型枠を前記仮設足場板の支持材に干渉させないための干渉防止用切欠部が形成され、
前記他方の型枠には、前記第2のアンカー支持部を挿通可能な挿通用切欠部と、当該他方の型枠を撤去する際に当該他方の型枠を前記仮設足場板の支持材に干渉させないための干渉防止用切欠部が形成され、
前記第1のコンクリート用アンカーを前記コンクリート打設空間内に配置する際、前記第1のアンカー支持部を前記挿通用切欠部内に位置させ、
前記第2のコンクリート用アンカーを前記コンクリート打設空間内に配置する際、前記第2のアンカー支持部を前記挿通用切欠部内に位置させることを特徴とする、請求項3または4に記載の仮設足場の設置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−241473(P2012−241473A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115050(P2011−115050)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(511011746)株式会社ダイフジ (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(511011746)株式会社ダイフジ (4)
【Fターム(参考)】
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