説明

仮設足場用筋交い

【課題】支柱と筋交いとの連結をより強固にして作業現場の安全性を高めるとともに、筋交いと支柱との取り付けを容易とし、しかも、接続部分を比較的簡単な構造とすることにより重量増加を抑えて現場の作業効率を高めることができる仮設足場用筋交いを提供する。
【解決手段】足場支柱間に傾斜して配設される斜行材11とその両端部に回動ピン14を介して連結された差込部材20を有し、足場支柱に配置された斜行材受け部材30の受穴部31内に差込部材のフック部21を挿入してなる仮設足場用筋交い10であり、差込部材に差込部材貫通孔24が形成され、斜行材の両端部には足場支柱への摺接部15が設けられ、斜行材受け部材の受穴部内に差込部材のフック部を挿入し、斜行材を足場支柱に近接させながら傾斜させて摺接部と足場支柱とを当接させ、同時にフック部の爪部22と受穴部の受圧部32とを圧接させて斜行材を足場支柱に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、仮設足場用筋交いに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物の工事等を行う際には、その外周に仮設足場が設置される。複数本の支柱が所定間隔で配置され、各支柱間に足場板が架設されて一の階層の足場が形成される。上方に支柱を順次継ぎ足して同様に足場板を架設させることにより複数階層の足場が形成される。このような仮設足場にあっては、上方への足場の継ぎ足し作業をする際の安全対策として、足場板を架設させる前に斜行材、水平材、または垂直材等の足場材を手すりとして先行して配置するように構成される。
【0003】
上記の仮設足場において足場材を配置する場合、足場材を支柱のホルダーに取り外し可能に連結するため、緊締金具として本体部材が使用された筋交い、あるいは筋交い手摺り等が知られている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1に開示の筋交いの構造によると、支柱P5のホルダー131に筋交い110を係止させるための本体部材120が筋交いの両端に備えられている。図14に示すとおり、くさび部材125が本体部材120内に収容されている。支柱のホルダー131と筋交いの本体部材120とを固定する場合、はじめにホルダー131に正面視C字状の本体部材120は組み合わされる。双方を貫通させるべく前記のくさび部材125が降下され、ホルダー131に本体部材120は連結される。図中、符号121は本体部材の上片部、122は下片部、126はくさび片部、127はガイド片部である。
【0004】
特許文献1等の筋交いの構造によると、支柱のホルダーにくさび部材を挿入して固定する構造である。そのため、くさび部材が意図せずにホルダーから抜けやすいおそれが指摘されている。そこで、作業現場の安全性確保の観点から支柱と筋交いとの連結をより強固にできる構造体が求められている。
【0005】
また、筋交いの両端に設けられる本体部材は、くさび部材を受け入れ、かつ、くさび部材、筋交い等の荷重を受けることを想定しているため、十分な強度を備えるべくいきおい重量は増加してしまう。筋交いに関係する部材の重量増加は現場における取り扱いやすさを悪くし、作業効率にも影響を与える。
【特許文献1】特開2006−70304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は前記の点に鑑みなされたものであり、支柱と筋交いとの連結をより強固にして作業現場の安全性を高めるとともに、筋交いと支柱との取り付けを容易とし、しかも、接続部分を比較的簡単な構造とすることにより重量増加を抑えて現場の作業効率を高めることができる仮設足場用筋交いを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1の発明は、足場支柱の間に傾斜して配設される斜行材と、前記斜行材の上端部に回動ピンを介して回動可能に連結された差込部材とを有し、前記足場支柱に配置された斜行材受け部材の受穴部内に前記差込部材のフック部を挿入してなる仮設足場用筋交いであって、前記差込部材に前記回動ピンの差込部材貫通孔が形成され、前記斜行材の上端部には前記足場支柱への摺接部が設けられており、前記斜行材受け部材の受穴部内に前記差込部材の前記フック部を挿入し、前記斜行材を前記足場支柱に近接させながら傾斜させることによって前記摺接部と前記足場支柱とを当接させ、同時に前記フック部の爪部と前記受穴部の受圧部とを圧接させて前記斜行材を前記足場支柱に固定することを特徴とする仮設足場用筋交いに係る。
【0008】
請求項2の発明は、前記摺接部が、前記斜行材の上端部の折り曲げ部によって形成されている請求項1に記載の仮設足場用筋交いに係る。
【0009】
請求項3の発明は、前記斜行材に水平手摺り材が配置されており、前記水平手摺り材には前記回動ピンが挿入される貫通長穴が該水平手摺り材の水平方向に形成され、前記回動ピンを介して前記斜行材及び前記差込部材と回動可能に連結されている請求項1又は2に記載の仮設足場用筋交いに係る。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項において、さらに、前記斜行材の下端部に回動ピンを介して回動可能に連結された下側本体部材と、前記下側本体部材に上下動可能に配置され前記斜行材受け部材の対角下側に位置する他の斜行材受け部材の受穴部内に挿入されるくさび部を有する下側くさび部材とからなる下側連結構造体が設けられており、前記下側本体部材は、前記足場支柱側に前記他の斜行材受け部材の受穴部を収容する水平方向の開口部を有していて、前記開口部内に前記他の斜行材受け部材の受穴部を収容した後に該受穴部に対して前記下側くさび部材の前記くさび部が挿入されるように構成されていることを特徴とする仮設足場用筋交いに係る。
【0011】
請求項5の発明は、前記下側くさび部材に下部に係合突部を有する長脚部が形成されており、前記下側本体部材には前記下側くさび部材を上方へ移動したときに前記係合突部が係着する抜け止め係着部が設けられている請求項4に記載の仮設足場用筋交いに係る。
【0012】
請求項6の発明は、前記下側本体部材に前記下側くさび部材をそのくさび部が前記受穴部に挿入しない位置で保持するくさび部材保持部が設けられている請求項4又は5に記載の仮設足場用筋交いに係る。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明に係る仮設足場用筋交いによると、足場支柱の間に傾斜して配設される斜行材と、前記斜行材の上端部に回動ピンを介して回動可能に連結された差込部材とを有し、前記足場支柱に配置された斜行材受け部材の受穴部内に前記差込部材のフック部を挿入してなる仮設足場用筋交いであって、前記差込部材に前記回動ピンの差込部材貫通孔が形成され、前記斜行材の上端部には前記足場支柱への摺接部が設けられており、前記斜行材受け部材の受穴部内に前記差込部材の前記フック部を挿入し、前記斜行材を前記足場支柱に近接させながら傾斜させることによって前記摺接部と前記足場支柱とを当接させ、同時に前記フック部の爪部と前記受穴部の受圧部とを圧接させて前記斜行材を前記足場支柱に固定するため、支柱と筋交いとの連結をより強固にして作業現場の安全性を高め、筋交いと支柱との取り付けを容易とし、しかも、接続部分の構造を比較的簡単とすることにより重量増加を抑えて現場の作業効率を高めることができる
【0014】
請求項2の発明に係る仮設足場用筋交いによると、請求項1の発明において、前記摺接部が、前記斜行材の上端部の折り曲げ部によって形成されているため、足場支柱側への接触面が増して斜行材と足場支柱との固定安定性をより向上することができる。
【0015】
請求項3の発明に係る仮設足場用筋交いによると、請求項1又は2の発明において、前記斜行材に水平手摺り材が配置されており、前記水平手摺り材には前記回動ピンが挿入される貫通長穴が該水平手摺り材の水平方向に形成され、前記回動ピンを介して前記斜行材及び前記差込部材と回動可能に連結されているため、斜行材と水平手摺り材との接続に要する部品数増加を抑えることができる。また、斜行材と水平手摺り材は接続されているため、双方を接続するための別途の作業も必要ない。さらに、斜行材を足場支柱に組み付ける際の位置ずれも吸収され、現場における使い勝手も向上する。
【0016】
請求項4の発明に係る仮設足場用筋交いによると、請求項1ないし3のいずれか1項において、さらに、前記斜行材の下端部に回動ピンを介して回動可能に連結された下側本体部材と、前記下側本体部材に上下動可能に配置され前記斜行材受け部材の対角下側に位置する他の斜行材受け部材の受穴部内に挿入されるくさび部を有する下側くさび部材とからなる下側連結構造体が設けられており、前記下側本体部材は、前記足場支柱側に前記他の斜行材受け部材の受穴部を収容する水平方向の開口部を有していて、前記開口部内に前記他の斜行材受け部材の受穴部を収容した後に該受穴部に対して前記下側くさび部材の前記くさび部が挿入されるように構成されているため、支柱と筋交いとの連結をより強固にして作業現場の安全性を高めることができる。また、筋交いと支柱との取り付けも容易となる。しかも、接続部分の構造を比較的簡単とすることができる。
【0017】
請求項5の発明に係る仮設足場用筋交いによると、請求項4の発明において、前記下側くさび部材に下部に係合突部を有する長脚部が形成されており、前記下側本体部材には前記下側くさび部材を上方へ移動したときに前記係合突部が係着する抜け止め係着部が設けられているため、下側くさび部材が下側本体部材から外れて紛失してしまうおそれを無くすことができる。
【0018】
請求項6の発明に係る仮設足場用筋交いによると、請求項4又は5の発明において、前記下側本体部材に前記下側くさび部材をそのくさび部が前記受穴部に挿入しない位置で保持するくさび部材保持部が設けられているため、下側の斜行材受け部材に下側連結構造体を連結させようとするとき、開口部に下側くさび部材のくさび部が下がらないことから、開口部に斜行材受け部材の連結部を受け入れる際の邪魔とならない。よって、下側連結構造体と斜行材受け部材との接続を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係る仮設足場用筋交いの正面図、図2は差込部材の全体正面図、図3が斜行材の部分斜視図、図4は水平手摺り材の端部付近の拡大図、図5は仮設足場用筋交いの差込部材の接続状態を表す主要部斜視図、図6は仮設足場用筋交いの差込部材の接続前の概略断面図、図7は仮設足場用筋交いの差込部材の接続後の概略断面図、図8は他の例の差込部材を用いた接続後の概略断面図、図9は仮設足場用筋交いの下側連結構造体の接続状態を表す主要部斜視図、図10は仮設足場用筋交いの下側連結構造体の接続前の概略断面図、図11は仮設足場用筋交いの下側連結構造体の接続後の概略断面図、図12は下側連結構造体における下側くさび部材の位置関係を示す概略図、図13は他の例の下側連結構造体を用いた接続後の概略断面図である。
【0020】
実施例の図1の正面図に示される仮設足場用筋交い10は、左右対称である第1足場用筋交い10aと第2足場筋交い10bを含んでなる。互いに対称であるため、第1足場用筋交い10aに基づいて本発明の仮設足場用筋交いを説明する。各図において同一符号は共通する部材を示すものとする。
【0021】
すなわち、請求項1の発明に規定するように、第1足場用筋交い10aには、足場支柱P1,P2の間に傾斜して配設される斜行材11と、この斜行材11の両端部である上端部12及び下端部13のそれぞれに回動ピン14を介して差込部材20が回動可能に連結される。足場支柱P1,P2には斜行材受け部材30が複数溶接等により接続され、各斜行材受け部材30とも連結部35が備えられ、該連結部35に受穴部31が形成されている。差込部材20にはフック部21が備えられ、フック部21が斜行材受け部材30の受穴部31に挿入される。このことによって足場支柱P1,P2に斜行材11は接続され、当該仮設足場用筋交い10(第1足場用筋交い10a並びに第2足場筋交い10b)は構成される。
【0022】
図示において斜行材受け部材として鍔状のフランジ部材を用いた例を説明する。また、符号50は下側連結構造体、60は下側くさび部材であり図9以降に説明する。斜行材受け部材30のうち、符号30pは足場支柱P1,P2の上部側に位置し第1足場用筋交い10aまたは第2足場用筋交い10bの差込部材20と連結に用いられ、30qは足場支柱P1,P2の下部側に位置し第1足場用筋交い10aまたは第2足場用筋交い10bの連結構造体50と連結に用いられる。
【0023】
図2の差込部材20の正面図から把握されるように、この差込部材20は正面視略J字状をしており、本体部26と、本体部から伸びフランジ部材である斜行材受け部材30(30p)の受穴部31と当接する爪部22と、爪部の先端に形成され斜行材受け部材30(30p)の受穴部31との抜け止めのためのフック部21が設けられている。本体部26には、回動ピン14が挿入される差込部材貫通孔24が形成されている。
【0024】
図3の斜視図は斜行材11の上端部12を示す。同図及び図1からわかるように、斜行材11の上端部12には、足場支柱へ当接するための摺接部15が設けられている。特に図3(a)に示し、請求項2の発明に規定するように、摺接部15は斜行材11の上端部12の折り曲げ部15sに形成されている。図示のとおりの摺接部15とすることにより、足場支柱側への接触面が増すため、斜行材と足場支柱との固定安定性をより向上することができる。この他に、図3(b)のように、折り曲げ部を省略して摺接部15kを形成した斜行材11kとすることもできる。図示の上端部12に端部挿入孔16が貫通形成され、回動ピン14が挿入される。斜行材11(11k)は図示のとおりの棒状金属とする他、金属パイプとすることもできる。回動ピン14は公知のボルト、リベット等の部材からなる。
【0025】
図4は水平手摺り材の正面図を表している。図1からも把握されるように、前記の斜行材11に水平手摺り材40が配置されている。水平手摺り材を備えることにより、足場支柱間の左右方向の安全性を高めることができる。斜行材と水平手摺り材とは図示しないクランプ等の適宜の金具を用いて接続することもできる。しかし、斜行材と水平手摺り材との接続に要する部品数が増したり、これらの接続のために他の作業を要することがある。
【0026】
そこで、請求項3の発明に規定するように、水平手摺り材40には貫通長穴44が形成され、ここに回動ピン14が挿通される。貫通長穴44は、回動ピン14が水平手摺り材の水平方向、つまり長さ方向に移動可能な形状に形成され、水平手摺り材の一側端部42に設けられる。図1及び後出の図5ないし7に示されるように、水平手摺り材40は、回動ピン14を介して斜行材11及び差込部材20と連結される。従って、水平手摺り材40、斜行材11及び差込部材20は、互いに回動ピン14を軸として回動可能となる。
【0027】
当該図4に開示した構造の水平手摺り材とすることにより、斜行材と水平手摺り材との接続に要する部品数増加は抑えられる。はじめから、斜行材と水平手摺り材は接続されているため、双方を接続する別途の作業も必要ない。さらに、斜行材を足場支柱に組み付ける際の位置ずれも吸収され、現場における使い勝手も向上する。
【0028】
図5は足場支柱に斜行材を取り付けた状態の概略斜視図である。同図の実施例の位置関係においては、紙面手前側から奥側にかけて、斜行材11、差込部材20、水平手摺り材40の順に配置され1本の回動ピン14により連結されている。実施例の回動ピン14はナット19により固定される。なお、斜行材、差込部材、水平手摺り材の連結の順番は図示の場合に限られない。また、水平手摺り材の設置も適宜である。
【0029】
図5の斜視図並びに図6,7の正面図を用い、足場支柱と斜行材の取り付けの様子を説明する。図6及び図7は特に第1足場用筋交い10aにおける斜行材11の上端部12付近を示す。はじめに図5と図6に図示のとおり、足場支柱P1に斜行材11を取り付けようとする場合、まず、フランジ部材の斜行材受け部材30(30p)の連結部35に設けられた受穴部31内に差込部材20のフック部21が挿入される。このとき、斜行材11は水平面に対して角度θの傾斜を維持したままである。
【0030】
差込部材20と斜行材11は回動ピン14により回動可能に一体化され、しかも、回動ピン14は差込部材20の長穴形状の差込部材貫通孔24内に挿入されている。このため、斜行材11と差込部材20は、回動自在であるとともに多少の左右方向の移動も自在である。よって、差込部材20のフック部21を斜行材受け部材30(30p)の受穴部31内に差し込もうとする場合の位置合わせが容易となる。既に図4にて開示のとおり、水平手摺り材40の一側端部42に貫通長穴44が設けられているため、斜行材を足場支柱に取り付ける際、水平手摺り材自体の左右方向の位置移動も容易となる。
【0031】
続いて図5と併せて図7から把握されるように、斜行材受け部材30(30p)の受穴部31内に差込部材20のフック部21が挿入された後、斜行材11は足場支柱P1に近接させながら傾斜される(矢印D1参照)。このときの斜行材のもたれ掛かりにより、斜行材11は水平面に対して角度φの傾斜となる(角度φ<角度θである。)。そこで、斜行材11の上端部12にある摺接部15は足場支柱P1に当接される。
【0032】
次に、斜行材11の傾斜に連動して回動ピン14も移動することから、差込部材20は差込部材貫通孔24内に挿入された回動ピン14に引きずられて位置が変化する。図6と図7の比較のとおり、紙面右方向、つまり、差込部材20が足場支柱P1から離れる方向に移動する。この結果、差込部材20のフック部21も同様に移動するため、差込部材20のフック部21の側面部分に形成された爪部22は、フランジ部材の斜行材受け部材30(30p)の受穴部31にある受圧部32に圧接される。
【0033】
従って、足場支柱P1に対する斜行材11の固定に際し、斜行材11の摺接部15における摩擦力、及び斜行材受け部材30(30p)の受穴部31と差込部材20のフック部21との間の押圧力が同時に作用する。両作用により足場支柱と斜行材の固定は強固となる。実施例のとおり、差込部材のフック部は斜行材受け部材(フランジ部材)の連結部にある受穴部に挿入されるため、差込部材のフック部は足場支柱の円周方向(図5中の矢印D参照)に振れることは無くなる。結果的に足場支柱に対する斜行材の傾斜位置のずれを回避することができる。
【0034】
図8は、斜行材受け部材として箱状のホルダー30aを備えた足場支柱P3に本発明の仮設足場用筋交いを接続したときの様子を示す。斜行材受け部材のホルダー30aにおいて、符号31aは受穴部、32aは受圧部、35aは連結部である。ホルダー30aの形状に合わせて差込部材20Aのフック部21aの側面部分に形成された爪部22aも上下に長く形成される。図8の例においても、足場支柱と斜行材の取り付けの態様、作用は前掲図6,7等に開示して説明と同様に斜行材11の摺接部15における摩擦力、及び斜行材受け部材30aの受穴部31aと差込部材20Aのフック部21a(爪部22a)との間の押圧力が同時に作用していることによる。
【0035】
図1の正面図に加えて、図9の斜視図、図10,図11の概略図から把握されるように、仮設足場用筋交い10においては、さらに、下側連結構造体50が設けられる。第1足場用筋交い10aは、足場支柱P1の斜行材受け部材30pと差込部材20により連結固定されるとともに、足場支柱P2の斜行材受け部材30qと下側連結構造体50により連結固定される。第2足場用筋交い10bも同様である。これより、第1足場用筋交い10aに基づいて説明する。
【0036】
図示し、請求項4の発明に規定するように、下側連結構造体50には、下側本体部材51と下側くさび部材60が設けられる。下側本体部材51は斜行材11の下端部13に回動ピン14を介して回動可能に連結される。下側くさび部材60は、下側本体部材51に上下動可能に配置され、差込部材20により連結固定される斜行材受け部材30(30p)の対角下側(斜行材11の配置参照)に位置する他の斜行材受け部材30(30q)の連結部35に形成された受穴部31に挿入されるくさび部61を有する。また、図9以降に図示の符号54はくさび部材保持部、55は抜け止め係着部、62は長脚部、63はくさび部と長脚部とをつなぐくさび梁部、65は係合突部である。
【0037】
下側本体部材51は、第1板状部材53と第2板状部材54の2枚の板状部材により下側くさび部材60を収容し、両板状部材53,54は保持部52によりつながっている。下側本体部材51には、図示の足場支柱P2の側に他の斜行材受け部材30(30q)の受穴部31を収容する水平方向の開口部59が形成される。開口部59内に他の斜行材受け部材30(30q)の受穴部31が収容された後、当該受穴部31に対して下側くさび部材60のくさび部61が挿入される構成である。
【0038】
図9と合わせて図10,11において、下側本体部材51の開口部59の上側に位置する上板部57、下側本体部材51の開口部59の下側に位置する下板部58が形成されていることから、下側本体部材51は正面視コ字形状を成している。そのため、下側の斜行材受け部材30(特に30q)に下側連結構造体50を連結させようとする場合、下側本体部材51を斜行材受け部材30(30q)の水平方向側から同斜行材受け部材に開口部59を接近させることができる。このため、斜行材受け部材と下側本体部材との位置合わせと連結が容易となる。
【0039】
図10,図11は、ともに下側連結構造体50の下側本体部材51の開口部59に下側の斜行材受け部材30(30q)が受け入れられている状態である。図10では斜行材受け部材30(30q)の連結部35にある受穴部31の直上にくさび部61を位置するように下側くさび部材60が持ち上げられる。続く図11からよくわかるように、下側くさび部材60が下ろされて受穴部31内にくさび部61が挿通される。受穴部31の受圧部32はくさび部61により圧接される。くさび部61は受圧部32と保持部52に挟持され固定される。そして、下側の斜行材受け部材30(30q)に下側連結構造体50が連結される。図示にあっては、くさび梁部63が連結部35上に位置しており、また、くさび梁部の凸部66が保持部52と当接しているため、くさび部61が受穴部31から抜け落ちることはない。実施例から把握されるように、支柱と筋交いとの連結をより強固にして作業現場の安全性を高めることができ、筋交いと支柱との取り付けも容易である。しかも、接続部分の構造は比較的簡単である。
【0040】
図12を用い下側連結構造体50における下側くさび部材60の可動位置に関し説明する。図12(a)から理解され、請求項5の発明に規定するように、下側くさび部材60には長脚部62が備えられ、同長脚部62の下部に係合突部65が設けられる。また、下側本体部材51の下部に抜け止め係着部55が切り欠いて形成される。図示のように下側くさび部材60を下側本体部材51から上方へ移動したとき、同長脚部62の係合突部65が抜け止め係着部55に填り込み係着する。このような係着となることりより、下側くさび部材が下側本体部材から外れて紛失してしまうおそれを無くすことができる。
【0041】
図12(b)は、下側の斜行材受け部材30(30q)に下側連結構造体50を連結させようとするときの下側本体部材51内部を示す。請求項6の発明に規定するように、下側本体部材51には、下側くさび部材60のくさび部61が下側の斜行材受け部材30(30q)の受穴部31(図10,11参照)に挿入しない位置で当該下側くさび部材60を保持するくさび部材保持部54が設けられている。くさび部材保持部54の設置位置は下側の斜行材受け部材30(30q)に下側連結構造体50を連結させるときに、下側本体部材51の開口部59に下側くさび部材60のくさび部61の先端61eが露出しない位置である。そこで、下側くさび部材60にはくさび部材保持部54と係合するくさび係合部67が設けられる。このため、下側の斜行材受け部材に下側連結構造体を連結させようとするとき、開口部に下側くさび部材のくさび部が下がらないことから、開口部に斜行材受け部材の連結部を挿入する際の邪魔とはならず、開口部への連結部の挿入が円滑になる。
【0042】
図13は、斜行材受け部材として箱状のホルダー30aを備えた足場支柱P4に本発明の仮設足場用筋交いに備えられた下側連結構造体50Bを接続したとき様子である。箱状のホルダー30aの上下長に合わせて下側本体部材51Bの開口部59bも上下方向に大きく形成される。下側くさび部材60Bには、くさび部61bとともに下側本体部材51Bの開口部59bに合わせて長くされた長脚部62bが備えられる。符号57bは下側本体部材51Bの上板部、58bは下側本体部材51Bの下板部である。図示の例においてもホルダー30aと、下側くさび部材60Bを介して行われる下側連結構造体50Bとの連結態様は前記の図11等の場合と同様である。下側くさび部材60Bが下ろされて受穴部31a内にくさび部61bが挿通され、受穴部31aの受圧部32aはくさび部61bにより圧接される。結果、下側の斜行材受け部材30(30q)に下側連結構造体50Bが連結される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例に係る仮設足場用筋交いの正面図である。
【図2】差込部材の全体正面図である。
【図3】斜行材の部分斜視図である。
【図4】水平手摺り材の端部付近の拡大図である。
【図5】仮設足場用筋交いの接続状態を表す主要部斜視図である。
【図6】仮設足場用筋交いの接続前の正面図である。
【図7】仮設足場用筋交いの接続後の正面図である。
【図8】他の例の差込部材を用いた接続後の概略断面図である。
【図9】仮設足場用筋交いの下側連結構造体の接続状態を表す主要部斜視図である。
【図10】仮設足場用筋交いの下側連結構造体の接続前の概略断面図である。
【図11】仮設足場用筋交いの下側連結構造体の接続後の概略断面図である。
【図12】下側連結構造体における下側くさび部材の位置関係を示す概略図である。
【図13】他の例の下側連結構造体を用いた接続後の概略断面図である。
【図14】従来の仮設足場用筋交いにおける固定構造の正面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 仮設足場用筋交い
10a 第1足場用筋交い
10b 第2足場用筋交い
11 斜行材
12 上端部
13 下端部
14 回動ピン
20 差込部材
21 フック部
22 爪部
24 差込部材貫通孔
30 斜行材受け部材
30p 上側の斜行材受け部材
30q 下側の斜行材受け部材
31 受穴部
32 受圧部
35 連結部
40 水平手摺り材
44 手摺り貫通孔
50 下側連結構造体
51 下側本体部材
54 くさび部材保持部
55 抜け止め係着部
59 開口部
60 下側くさび部材
61 くさび部
62 長脚部
65 係合突部
P1,P2 足場支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場支柱の間に傾斜して配設される斜行材と、前記斜行材の上端部に回動ピンを介して回動可能に連結された差込部材とを有し、前記足場支柱に配置された斜行材受け部材の受穴部内に前記差込部材のフック部を挿入してなる仮設足場用筋交いであって、
前記差込部材に前記回動ピンの差込部材貫通孔が形成され、前記斜行材の上端部には前記足場支柱への摺接部が設けられており、
前記斜行材受け部材の受穴部内に前記差込部材の前記フック部を挿入し、前記斜行材を前記足場支柱に近接させながら傾斜させることによって前記摺接部と前記足場支柱とを当接させ、同時に前記フック部の爪部と前記受穴部の受圧部とを圧接させて前記斜行材を前記足場支柱に固定する
ことを特徴とする仮設足場用筋交い。
【請求項2】
前記摺接部が、前記斜行材の上端部の折り曲げ部によって形成されている請求項1に記載の仮設足場用筋交い。
【請求項3】
前記斜行材に水平手摺り材が配置されており、前記水平手摺り材には前記回動ピンが挿入される貫通長穴が該水平手摺り材の水平方向に形成され、前記回動ピンを介して前記斜行材及び前記差込部材と回動可能に連結されている請求項1又は2に記載の仮設足場用筋交い。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、さらに、前記斜行材の下端部に回動ピンを介して回動可能に連結された下側本体部材と、前記下側本体部材に上下動可能に配置され前記斜行材受け部材の対角下側に位置する他の斜行材受け部材の受穴部内に挿入されるくさび部を有する下側くさび部材とからなる下側連結構造体が設けられており、
前記下側本体部材は、前記足場支柱側に前記他の斜行材受け部材の受穴部を収容する水平方向の開口部を有していて、前記開口部内に前記他の斜行材受け部材の受穴部を収容した後に該受穴部に対して前記下側くさび部材の前記くさび部が挿入されるように構成されていることを特徴とする仮設足場用筋交い。
【請求項5】
前記下側くさび部材に下部に係合突部を有する長脚部が形成されており、前記下側本体部材には前記下側くさび部材を上方へ移動したときに前記係合突部が係着する抜け止め係着部が設けられている請求項4に記載の仮設足場用筋交い。
【請求項6】
前記下側本体部材に前記下側くさび部材をそのくさび部が前記受穴部に挿入しない位置で保持するくさび部材保持部が設けられている請求項4又は5に記載の仮設足場用筋交い。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−138671(P2010−138671A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318486(P2008−318486)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(503400053)KRH株式会社 (28)