説明

仮設階段

【課題】 任意の傾斜角度で設置可能な仮設階段において、仮設階段を何れの傾斜角度で設置した場合でも、常に階段本体の上位に合わせて手摺を配置でき、好適かつ安全な昇降を可能とした仮設階段を提供する。
【解決手段】 階段本体2の両側部に一対の手摺3を対向させて取り付ける。この手摺3には階段本体2とほぼ同じ長さの手摺本体12を階段本体2の長手方向に沿ってスライド自在に備えると共に、任意の位置にスライドさせた手摺本体12を固定する固定ボルト13を備える。そして、設置した階段1の傾斜角度によって階段1の先端付近や後端付近に手摺3のない部分が生じても、手摺本体12を階段本体2の上位に合わせるようにスライド操作することにより、階段1の傾斜角度にかかわらず階段1昇降時の安全を好適かつ確実に確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設足場や、工事現場の法面などに設置される仮設階段に関し、特に任意の傾斜角度にて設置可能な仮設階段に関する。
【背景技術】
【0002】
仮設足場や、工事現場の法面などに設置される仮設階段としては、現場の状況などに応じて任意の傾斜角度で設置できるようにしたものがある。例えば、図4に示すように、両端に係止金具102を固着した一対の平行な傾斜支柱103間に複数の踏み板104の前端両側部を回動自在に軸着すると共に、該踏み板104の後端両側部を一対のリンク材105間に回動自在に軸着し、かつ傾斜支柱103とリンク材105との間に踏み板104の角度を固定する角度固定材106を配設して成る仮設階段101がある(特許文献1参照)。
【0003】
そして、この仮設階段101を、例えば法面などに設置するときには、先ず、法面上に略水平に配置した鋼管などに係止金具102を係止させ、法面に沿って階段101を掛け渡す。次いで、階段101の踏み板104の一つを手で持って水平状態に回動調整し、これに連動させて全ての踏み板104の角度を水平状態に調整させる。そして、昇降時の安全を考慮し、階段101の両側部には一対の手摺107を取り付けて立設させ、仮設階段101の設置作業を終える。このように、この仮設階段101であれば、設置現場の状況によって階段101がどのような傾斜角度になろうとも、簡単な操作で踏み板104を水平に調整することができると共に、階段101の両側には転落防止用の手摺107が備えられるため、作業者は安全で好適な昇降を行うことができる。
【特許文献1】特開2000−145166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の仮設階段101では、階段101中間付近における作業者の安全は左右の手摺107にて確保されているものの、階段101の傾斜角度によっては階段101の先端付近などに手摺のない部分が生じるため、例えば作業者が階段101を登りきって法面の上部側に乗り移ろうとする際などには、作業者によっては多少不安感を憶える場合もあると予想される。そこで、手摺107の両端部を大きく延長し、階段101の傾斜角度にかかわらず階段101の上位に必ず手摺が配置されるようにするといったことも考えられるが、その場合、階段101の傾斜角度を緩くすると、延長した手摺の先端部分が階段101先端部よりも突出してしまい、法面上部側における通行の妨げになるといった別の問題が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑み、任意の傾斜角度で設置可能な仮設階段において、仮設階段を何れの傾斜角度で設置した場合でも、常に階段本体の上位に合わせて手摺を配置でき、好適かつ安全な昇降を可能とした仮設階段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するために、請求項1記載の仮設階段にあっては、任意の傾斜角度で設置可能な仮設階段において、階段本体の両側部に一対の手摺を対向させて取り付け、該手摺には階段本体と略同一長さを有する手摺本体を階段本体の長手方向に沿ってスライド自在に備えると共に、任意の位置にスライドさせた前記手摺本体を固定する固定具を備えたことを特徴としている。
【0007】
また、請求項2記載の仮設階段にあっては、前記手摺は、所定間隔を隔てて平行に立設した複数の支柱と、該支柱に固着したガイド管と、該ガイド管にスライド自在に遊嵌させた手摺本体とから成る一方、前記階段本体の両側部には前記手摺の支柱下端部を着脱自在に支持する支持具を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明に係る請求項1記載の仮設階段によれば、任意の傾斜角度で設置可能な仮設階段において、階段本体の両側部に一対の手摺を対向させて取り付け、該手摺には階段本体と略同一長さを有する手摺本体を階段本体の長手方向に沿ってスライド自在に備えると共に、任意の位置にスライドさせた前記手摺本体を固定する固定具を備えたので、仮設階段の傾斜角度に応じて手摺の手摺本体を適宜スライド操作することにより、常に階段本体の上位に合わせて手摺を配置させることが可能となり、階段昇降時の安全を好適かつ確実に確保することができる。
【0009】
また、請求項2記載の仮設階段によれば、前記手摺は、所定間隔を隔てて平行に立設した複数の支柱と、該支柱に固着したガイド管と、該ガイド管にスライド自在に遊嵌させた手摺本体とから成る一方、前記階段本体の両側部には前記手摺の支柱下端部を着脱自在に支持する支持具を備えたので、構成がごくシンプルで製作容易であり、また手摺を階段本体より着脱することができて搬送や保管に便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る仮設階段にあっては、任意の傾斜角度で設置可能な仮設階段の階段本体両側に設置する手摺として、所定間隔を隔てて一対の支柱を平行に立設し、各支柱には鋼管製のガイド管を支柱に対して直交方向に固着し、このガイド管に階段本体と略同一長さを有する枠体状の手摺本体をスライド自在に遊嵌させ、これによって手摺本体を階段本体の長手方向に沿ってスライド自在としていると共に、前記ガイド管には適宜位置にスライドさせた手摺本体を固定する固定ボルトを備えている。また、階段本体の両側部には、前記手摺の支柱下端部を着脱自在に支持する支持具を備えている。
【0011】
そして、例えば法面に上記仮設階段を設置する場合には、先ず、法面上に略水平に配置した鋼管などに階段両端の係止金具を係止させ、法面に沿って階段を掛け渡した後、踏み板を水平に調整する。次いで、階段本体の両側部に備えた支持具に手摺の支柱下端部を取り付けて固定し、階段両側に一対の手摺を立設させる。このとき、階段の傾斜角度が急であれば階段先端付近に手摺のない部分が生じるが、その場合には、手摺本体を固定する固定ボルトを一旦緩め、手摺本体を階段本体の長手方向に沿って前方へとスライドさせ、階段本体の上位に合わせて手摺本体を配置させた後、再度固定ボルトを締め付けて固定させる。一方、階段の傾斜角度が緩ければ、手摺先端部が階段先端部よりも前方へ突出してしまい法面上部側での通行の妨げとなると共に、階段の後端付近には手摺のない部分が生じるが、その場合には、手摺本体を階段本体の長手方向に沿って後方へとスライドさせ、やはり階段本体の上位に合わせて手摺本体を配置させて固定させる。
【0012】
このように、仮設足場や法面などに対し、任意の傾斜角度にて掛け渡した仮設階段の先端付近や後端付近に手摺のない部分が生じたとしても、階段本体と略同一長さの手摺本体を適宜スライド操作することにより、常に階段本体の上位に合わせて手摺本体を配置させることが可能となり、階段昇降時の安全を好適かつ確実に確保することができる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0014】
図中の1は工事現場などの法面に沿って任意の傾斜角度にて設置される仮設階段であって、階段本体2と、該階段本体2の両側に立設する手摺3とを主体に構成している。
【0015】
前記階段本体2は、両端に係止用クランプ4a、4bを固着した一対の平行な傾斜支柱5間に、複数の踏み板6の前端両側部を回動自在に軸着していると共に、該踏み板6の後端両側部を前記傾斜支柱5と平行に配設した一対のリンク材7に回動自在に軸着し、折り畳み自在としている。また、踏み板6を傾斜支柱5に対して任意の角度位置で固定する角度固定材8を備えていると共に、傾斜支柱5の側部には手摺3を立設させるための筒状の支持具9を所定間隔を隔てて一対配設しており、該支持具9の筒状部分に手摺3の支柱下端部を挿入させて固定用ボルトにて締結固定することによって手摺3を着脱自在に立設可能としている。
【0016】
なお、本実施例においては仮設階段として上記構成のものを採用したが、何らこれに限定するものではなく、その他様々な構成のものを採用することができ、要は任意の傾斜角度で設置可能なものであればよい。
【0017】
手摺3は、前記支持具9と同じ間隔にて一対の支柱10を平行に立設し、各支柱10の上端部及び中央部にはそれぞれ鋼管製のガイド管11を支柱10に対して直交方向に固着していると共に、該ガイド管11に階段本体2と略同一長さを有する枠体状の手摺本体12をスライド自在に遊嵌して構成している。また、前記ガイド管11には適宜位置にスライドさせた手摺本体12を締め付けて固定する固定ボルト13を備えている。
【0018】
しかして、法面などに仮設階段1を設置する場合には、先ず、法面上に略水平に配置した鋼管などに、階段本体2両端部の係止用クランプ4a、4bをそれぞれ係止させ、階段本体2を法面に沿って掛け渡した後、踏み板6を手で水平に調整する。次いで、階段本体2の両側部に備えた支持具9に手摺3の支柱10下端部を取り付けて固定し、階段本体2の両側に手摺3を立設させて仮設階段1と成す。
【0019】
このとき、階段1が、例えば図3の(b)に示されるような傾斜角度(図中では44°)であれば、階段本体2の上位には手摺3のないような部分は生じず、安全上特に問題はないが、例えば図3の(c)に示されるような傾斜角度(図中では70°)ともなると、階段1の先端付近には手摺3のない部分が生じてくる。そして、そのような場合には、ガイド管11の固定ボルト13を一旦緩め、手摺本体12を階段本体2の長手方向に沿って前方へとスライドさせ、階段本体2の上位に合わせて配置させた後、再度固定ボルト13を締め付けて固定させる。なお、図示していないが、階段1が急角度のときには、手摺本体12の高さも調整をすると良い。一方、階段1が、例えば図3の(a)に示されるような傾斜角度(図中では15°)まで緩やかになると、今度は階段1の先端部よりも前方へ手摺本体12が突出してしまい法面上部側での通行に支障が出ると共に、階段1の後端付近には手摺3のない部分が生じてくる。そして、そのような場合には、前記同様に、手摺本体12を階段本体2の長手方向に沿って後方へとスライドさせ、階段本体2の上位に合わせて配置させて固定させる。
【0020】
このように、階段1の傾斜角度に応じて階段1の先端付近、或いは後端付近に手摺3のない部分が生じても、階段本体2と略同一長さの手摺本体12を適宜スライド操作することにより、常に階段本体2の上位に合わせて手摺本体12を配置させることが可能となり、階段1の傾斜角度にかかわらず階段1昇降時の安全を好適かつ確実に確保することができる。また、手摺3はごくシンプルな構成であるために製作しやすく、また階段本体2に対して着脱自在としているため搬送や保管に便利である。
【0021】
なお、本実施例では、階段1を工事現場の法面に設置した場合を示しているが、特にこれに限定するものではなく、仮設足場などに設置するような場合にも好適に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る仮設階段の正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】法面に設置した仮設階段が、(a)緩やかな傾斜角度の場合、(b)中程度の傾斜角度の場合、(c)急な傾斜角度の場合、を示す説明図である。
【図4】従来の仮設階段の図1に相当する図である。
【符号の説明】
【0023】
1…仮設階段 2…階段本体
3…手摺 9…支持具
10…支柱 11…ガイド管
12…手摺本体 13…固定ボルト(固定具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の傾斜角度で設置可能な仮設階段において、階段本体の両側部に一対の手摺を対向させて取り付け、該手摺には階段本体と略同一長さを有する手摺本体を階段本体の長手方向に沿ってスライド自在に備えると共に、任意の位置にスライドさせた前記手摺本体を固定する固定具を備えたことを特徴とする仮設階段。
【請求項2】
前記手摺は、所定間隔を隔てて平行に立設した複数の支柱と、該支柱に固着したガイド管と、該ガイド管にスライド自在に遊嵌させた手摺本体とから成る一方、前記階段本体の両側部には前記手摺の支柱下端部を着脱自在に支持する支持具を備えたことを特徴とする請求項1記載の仮設階段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−9472(P2007−9472A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189613(P2005−189613)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【出願人】(598104436)日工セック株式会社 (18)