説明

任意に自由に形作られた三次元表面冷間微細鍛造技術の方法及び装置

機械工具やロボットに装備することにより、工具、機械部品、及びその他の部品等の表面を、ハンマーで打撃することで、加工し、平滑化し、また加工硬化させる電気機械的打撃装置及び打撃方法。打撃ヘッド(1a)は、強磁性部分(1c)を持つ支持部(1b)と結合している。磁場(B1)は、決められた静止位置で打撃ヘッド支持部を保持する。打撃ヘッド支持部(1b)では、最初に述べた磁場(B1)または異なる磁場(B2)に有り、その磁場から可変直流電流成分を持った、或いは持たない交流電流またはパルス電流(12)が流れる少なくとも1つのコイル(4)が存在する。その結果、打撃ヘッド(1a)は、決められた打撃頻度、打撃振幅、及び零通過を持つ電気的な揺動を経る。この装置と分析的CAMシステムの組合せにより、任意の三次元製作品の表面を、形状的及び材料に関係した技術データ、並びに局所的な寸法や位置公差精度の余裕を持って単位制御、又は完全自動制御システムとして機械仕上げすることが可能である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具や機械部品その他部品の表面の平滑化や加工硬化を目的として、工作機械やロボットに装備する前記部品の表面に対し、打撃ヘッドで打撃する方法による電気機械的打撃装置及び打撃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置の1つはドイツ公開特許公報197 32 790.7−14号に開示されている。この装置では、回転しない、反対方向に波状に形成された第2円板の上に、円周方向に波状に形成された円板の回転により一定振幅で軸方向にスライダーが動く。製作品表面を打撃する球状のヘッドは、スライダーの製作品端部に位置している。
【0003】
この装置は実際には、重大な欠点を幾つか持つ。この打撃運動は、機械的に連動する方式で行われる。その結果、この装置は、カム円盤若しくは波状円盤に大きな摩耗を与えてしまう。製作品表面に、その表面の位置や形や剛さ、又は硬さに関係なく一定振幅で打撃ヘッドが打撃する。このため、本装置の使用は少ない場合に限定されてしまう。
【0004】
ドイツ公開特許公報 102 43 415 A1号に類似の装置が記載されていて、その装置では打撃ヘッドの動きが、超音波を機械的な運動に変換させることによってなされる。しかしながら、この公開公報では、打撃ヘッドにおける超音波が、どの様にして打撃ヘッドの運動になるのかについては開示されていないし、また打撃の振幅については何一つ語られていない。
【特許文献1】ドイツ公開特許公報197 32 790.7−14号
【特許文献2】ドイツ公開特許公報102 43 415 A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それに対し、本発明で扱う課題は、部品の局所的な形状や肉厚及び硬度に関する、打撃頻度や打撃振幅の可変調整、及び打撃頻度の零位置、又は零通過の可変調整により、摩耗や摩損やエネルギー消費を最小にして、工具、製作品及び機械部品の表面を、平滑且つ硬くすることである。
【0006】
この課題は、本発明による請求項1に主張された特徴により解決される。
【0007】
従属請求項は、本発明の有利な更なる応用を示している。
【0008】
材料面及び形状的パラメータに依存する、打撃頻度及び振幅についての電気的及び電子工学的な制御及び調整に結びついた、可変だが明確に定められた静止位置に於いて打撃ヘッドが磁力により保持されるため、本発明による制作途中製品表面の各部位に対して、打撃ヘッドの最適な打撃頻度と振幅並びに静止位置が、本発明により、最善の結果が非常に短い時間、且つ最少のエネルギー消費で達成される様に、製作品表面の各々の位置に対して決定され、また調整される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
最も簡単な具体例の場合、本発明による装置は、通常、球状で非常に硬い材料から成る打撃ヘッドを持つ。その打撃ヘッドは支持棒に交換可能な様に配置されている。打撃ヘッドは、もう一方に対し、例えば、織り地の様な表面を作るために穿孔機のような形状のヘッドに交換できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
打撃ヘッド用支持棒の少なくとも一部は磁気を帯びており、環状で円筒状の磁気流によって優先的な静止位置に保たれる。該支持棒部は、ラジアル軸受や磁気軸受またはその他の型の軸受により、その静止位置から軸方向から反れることができるように、側面から誘導され保たれる。この最初の磁気流は、打撃ヘッド支持部の帯磁部分を、軸方向に調節可能な様に、その部分を同軸に囲んでいる軸方向に磁気を帯びた永久磁石リングにより作られるか、又は制御電流が流れ、打撃ヘッド支持部の帯磁部分の周りに同軸に配置した円筒状コイルにより作られる。後者の場合、そのコイルは、打撃ヘッドの必要とされる磁場強度と静止位置に応じて、各々が直列巻き、並列巻き、若しくは互いに逆向きに切り替えられ、電流が貫流する多数の部分コイルからできている。
【0011】
同一磁場に有るか、又は同一磁場の、例えば外部流などの第2の磁場に有るコイルによる第2の分枝に有り、直流電流成分を持つか又は持たない、制御された、且つ/又はパルス的な電流の流れにより励磁され、該コイルが打撃ヘッド支持部に結びつき、同軸的にそれに配置している場合、その打撃ヘッドは、決まった頻度と振幅で打撃振動の中間位置や零通過が任意に制御されるように軸方向に振動する。この様な方法で、打撃頻度、打撃振幅、及び打撃振動の中間位置や零通過は、製作品の形状的な関係や機械的性質に適合される。
【0012】
本発明のもう1つの有利な形態として、永久磁石リングの代わりに、打撃ヘッド支持部の磁石部分の周りの円筒の上に、相互に並列に配置された多数のより小さな円筒形状の永久磁石に置き換えることを考慮している。同様な方法で、小さな永久磁石を直流電流が流れるコイルで代用することもできる。このような永久磁石、若しくはコイルの配置によって、2つの異なる磁気流、即ち内部磁気流と外部磁気流が生成する。内部磁気流は、打撃ヘッド支持部が決まった位置を取ることを確実にする。この場合、励磁コイルの巻きは内部磁気流に有るか、外部磁気流に有るか、或いは両方の磁気流にある。後者の場合、それらの磁気流の方向が反対方向なので、両者のコイルの巻きは反対方向に巻かれる。
【0013】
このように考案された装置は、工具や製作品の表面を部分的に異なる方法で、加工し、打撃し、平滑化し、また加工硬化させることができる。打撃振動中間位置と製作品表面との距離に関するプログラム制御された、且つ電子工学的な調整によって、装置の効果が最適化され、それ故、電力ロスは最小化される。例えば、端部は、その部分の形状とデザインを維持し、また穿孔サイズを狭めない様にするために、より高い頻度と、より小さな振幅で加工される。
【0014】
本発明に基づく装置を利用するもう1つの長所は、この電子機械的装置と、特別に発展した分析的CAMシステムとを結びつけて新しい方法を提供することをも含む。
【0015】
商業ベースの入手可能なCAMシステムは、製作品表面を、所謂「オフセット法」と呼ばれる方法を用いて、所望の製作品表面に平行に工具を常に誘導して加工する。それに対し、本発明による方法は、分析的CAMシステムにより加工される。形状データを用いて所望の三次元表面の分析した後に、平面の最小曲率半径が決定され、工具の最大球半径として特定される。工具半径を選択した後、同一半径の球が所望の全表面を転がりながら移動し、球の中心点の形状的な位置が、工具中心をガイドするための新たな三次元表面として確定することにより、本発明によるCAMシステムは、球状型フライス切断機及び打撃工具の中心点の軌跡を計算する。それに引き続いて新たな三次元表面の曲率が計算され、又解析されて、それに基づき工具中心点の最適移動進路が、フライス加工時の溝堀りや打撃時の環状膨らみ形成が最小になる様に決定される。
【0016】
それ故、本発明による分析的CAMシステムは、いつでも工具が製作品表面と接触する瞬間的な位置を識別することができ、それに対応して動作することが可能である。平らな行路は、もっと強く曲がった行路や、穿孔や、隅や、溝や製作品などの端部とは異なる方法で加工される。
【0017】
本発明による装置の、機械的、若しくは例えば機械加工時の製作品表面のレーザー測定法などの非接触式表面分析を含むか、又は含まない上述した鍛造加工中の分析的CAMシステムとの連動及び電子工学的な連結は、制御工学で必要とされる知能的且つ自律的なフライス方法及び打撃方法を結果としてもたらす。所望の三次元表面形状、寸法及び位置的な公差、更には部分的な表面粗さ及び材料強度が、作成されたプログラムから取り入れられ、知能システムにより自動的に実施される。
【0018】
この知能システムは全ての端部や、製作品のより薄い肉厚など他の際どい箇所を認識し、これらに対し適切に注意を払い、処理する。
【0019】
打撃工具と製作品の接触の実際の瞬間位置が既知なので、装置の縦軸は常に製作品への接触点で表面の正接面に垂直に向き、且つ動く。このことによって打撃を最適化し、且つ現時点で達成可能な最善の結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付図は下記を示す;
【図1】枠に固定磁石として取り付けられたコイルと、軸方向に転置可能な打撃ヘッドの励磁コイルを持つ本発明による装置の断面図。
【図2】枠に取り付けられた永久磁石リング、若しくは固定磁石として環形状に打撃ヘッド支持部の周りに並んだ多数のより小さな永久磁石リング又はコイル、及び1つ又は2つの軸方向に転置可能な打撃ヘッド励磁コイルを持つ本発明による装置の断面図。
【0021】
同一部分は、同一の数字若しくは文字で記してある。異なる添え字は同じ部品の異なる部位、又は異なる物、又は種々の装置部分を示す。
【0022】
図1において、打撃ヘッド(1a)は軽い非磁性支持部(1b)に取替え可能に固定されている。支持部(1b)は、縦軸(A)の方向にのみ動けるように、枠(2)に放射状に取り付けられている。枠(2)はフライス機械やロボットや六脚歩行機械の様な機械工具に対応する受け部に固定されている。打撃ヘッドの支持部(1b)は、ケーブルや測定用探針又は光束が、その中空部の中心を通れるように、全長に亘って中空でもよい。磁場(B1)において静止位置として特別の位置を取る強磁性の鞘(1c)は、支持部(1b)に同軸に固定されている。
【0023】
枠(2)に固定され、そこを通して直流電流(I1a)が流れる中央に位置するコイル(3a)は、磁場(B1a)を作るために鞘(1c)の周りに同軸に配置している。コイル(3a)は、打撃ヘッドを一定位置に保つ力や打撃ヘッドの静止位置を変化させるために、必要に応じて電子工学的に並列、又は直列、若しくは両者の混合状態で、1つのコイル又は多数のより小さなコイルから形成されていても良い。また、コイル(3a)は、打撃ヘッドの静止位置を手動式、又は電動式、若しくは電磁式に変化させるために、機械的に軸方向に置き換え可能に設計しても良い。
【0024】
打撃ヘッド支持部(1b)では、その線巻きが磁場(B1a)の磁力線に垂直な方向に走る第2のコイル(4a)が有る。直流電流成分を持った、或いは持たない交流電流(I2a)及び/又はパルス電流(I2a)は、制御された頻度と振幅を持ってコイル(4a)を通る。このことにより、打撃ヘッドは一定頻度と振幅で上下運動を行う。打撃頻度は、パルス頻度や、パルス振幅及びパルス幅による打撃力により決められる。
【0025】
図2において、装置の機械的構造が実質的に図1のものと似ているが、磁場(B1a)が、軸方向に磁力を帯びた1つの永久磁石リング(3)により、又は鞘(1c)の周りに同軸に配置し、単コイル(3b,3c、…)で置き換え可能な多数のより小さな円筒状永久磁石により発生する点で異なる。この永久磁石リング又は永久磁石又はコイルの配置により、2つの環状円筒磁気流を生じる結果となり、それらは、それぞれ内部磁気流(B1b)、及び外部磁気流(B2)と云う。鞘(1c)との結合で、内部磁気流(B1b)は、打撃ヘッドがその静止位置に戻ることを確実にし、一方、交流電流又はパルス電流(I2b)を運ぶコイル(4b)は外部磁気流(B2)に位置し、打撃ヘッドの上下運動を起こさせる。
【0026】
磁場(B1b、B2)の配置において、打撃ヘッド支持部(1b)に位置する追加の励磁コイル(4c)は、内部磁場(B1b)の中に置くことができる。しかしながら、その電流(I2c)の流れの方向は、磁場が異なる方向を持つために、最初の励磁コイル(4b)における電流(I2b)の流れの方向と逆方向である。
【0027】
詳細な説明、図、及び特許請求の範囲において開示された特徴は、共に独立に、そしてそれらのいかなる組合せにおいても本発明を実現するための題材になり得る。開示された特徴の全てが本発明に関連している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械工具やロボットに搭載する工具や機械部品や他の部品の表面を打撃ヘッドで打撃することによって加工し、平滑化し、及び加工硬化させる電気機械的装置及び方法であって、
励磁電流(I2)の無い打撃ヘッドは磁気流(B1)によって静止位置に保たれ、打撃頻度と打撃振幅は、交流電流若しくはパルス励磁電流(I2)の流れにより、打撃頻度の零通過の製作品表面との距離が励磁電流(I2)により可変となることができるように、可変の直流電流成分が有るか、無い状態で、同じ磁場流(B1)又は異なる磁場流(B2)に位置する少なくとも1つのコイル(4)の巻きによって可変となる様に作られることを特徴とする電気機械的装置及び方法。
【請求項2】
磁場(B1、B2)は、軸方向に磁化したリング(3)により生成されるか、若しくは多数の円筒状永久磁石により中空円筒に配置されることを特徴とする請求項1に記載の装置及び方法。
【請求項3】
磁場(B1a)は、コイル(3a)によって形成され、磁場(B1b、B2)は、各々のコイルが電子工学的に並列及び/又は直列に切り替えることが可能な多数のコイルから成る、軸Aに同軸で配置された多数のコイル(3b、3c、…)によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置及び方法。
【請求項4】
打撃装置が、機械工具又はロボットにおいて分析的CAMシステムにより制御されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の装置及び方法。
【請求項5】
打撃装置及び/又は打撃ヘッドの磁気による保持力、及び/又は打撃振動の励磁電流及び励磁頻度が、分析的CAMに結びついて制御され、又は後者の場合形状データに基づいて調整されることを特徴とする請求項4に記載の装置及び方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−504405(P2009−504405A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525385(P2008−525385)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【国際出願番号】PCT/DE2006/001393
【国際公開番号】WO2007/016919
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508042043)
【Fターム(参考)】