説明

伝動ベルト

【課題】耐久性を損なわずにベルト本体と心線との高い接着性を得る。
【解決手段】伝動ベルトBは、ゴム製のベルト本体10に接着層17を介して心線16が埋設されている。接着層17は、心線を囲うように設けられた1,3-ブタジエンモノマーの20〜90モル%が1,2-付加したポリブタジエンであるを含有する薄層18を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製のベルト本体に接着層を介して心線が埋設された伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の用途に用いられる伝動ベルトでは、ゴム製のベルト本体に心線が埋設され、また、場合によっては表面を被覆する補強布が設けられる。そのため、ゴム材料と繊維材料とを接着させる技術が不可欠である。
【0003】
例えば、特許文献1〜4には、マレイン酸変性又は無水マレイン酸変性液状ポリブタジエンを含有する樹脂系接着剤により心線を接着処理することが開示されている。
【0004】
特許文献5〜9には、ベルト本体と心線との接着力を向上させるために、ベルト本体を構成するゴム組成物にマレイン酸変性液状ポリブタジエンを含有させることが開示されている。
【特許文献1】特開2007−154382号公報
【特許文献2】特開2006−300267号公報
【特許文献3】特開2005−519182号公報
【特許文献4】特開2005−511904号公報
【特許文献5】特開2007−40363号公報
【特許文献6】特開2005−315415号公報
【特許文献7】特開2006−161926号公報
【特許文献8】特開2006−22917号公報
【特許文献9】特開2001−173728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、伝動ベルトはこれまでよりも高温及び高負荷の条件下で使用されることが多く、それに伴い、心線とベルト本体との間に発生する剪断歪みや剪断応力も大きくなり、その結果、心線がベルト本体から剥離して飛び出すといった破損が問題となる。
【0006】
本発明の目的は、耐久性を損なわずにベルト本体と心線との高い接着性を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム製のベルト本体に接着層を介して心線が埋設された伝動ベルトであって、
上記接着層は、上記心線を囲うように設けられた1,3-ブタジエンモノマーの20〜90モル%が1,2-付加したポリブタジエンである1,2-ポリブタジエンを含有する薄層を有する。
【0008】
本発明は、ゴム製のベルト本体に接着層を介して心線が埋設された伝動ベルトであって、
上記心線は、1,3-ブタジエンモノマーの20〜90モル%が1,2-付加したポリブタジエンである1,2-ポリブタジエンを含有するゴム糊に浸漬した後に乾燥させる処理が施されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐久性を損なわずにベルト本体と心線との高い接着性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るVリブドベルトBを示す。このVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動ベルト伝動装置において用いられるものであり、ベルト周長が700〜3000mm、ベルト幅が10〜36mm、及びベルト厚さが4.0〜5.0mmに形成されている。
【0012】
実施形態1に係るVリブドベルトBは、ゴム製のVリブドベルト本体10に、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように心線16が接着層17を介して埋設されている。そして、接着層17は、心線16を囲うように設けられた1,2-ポリブタジエンを含有する薄層18を有する。ここで、本出願において「1,2-ポリブタジエン」とは、1,3-ブタジエンモノマーの20〜90モル%が1,2-付加したポリブタジエンをいう。また、1,2-ポリブタジエンにおける1,2-付加した1,3-ブタジエンモノマーのモル分率を「1,2-ビニル含有量」という。
【0013】
Vリブドベルト本体10は、ベルト外周側の厚さが例えば1.0〜2.5mmに形成された断面横長矩形の帯状に構成された部分とベルト内周側のプーリ接触部分を構成する複数のVリブ13が垂下するように設けられた部分とを有する。複数のVリブ13は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。各Vリブ13は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmに形成されている。また、リブ数は、例えば3〜6個である(図1では、リブ数が6)。Vリブドベルト本体10は、ゴム成分に種々の配合剤が配合されたゴム組成物で形成されている。
【0014】
Vリブドベルト本体10を構成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン・プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマーゴム、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。これらのうち、環境に対する配慮や耐摩耗性、耐クラック性などの性能の観点から、エチレン−α−オレフィンエラストマーゴムが好ましい。ゴム成分は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種がブレンドされて構成されていてもよい。但し、ゴム成分は、1,2-ポリブタジエンを含有しない。
【0015】
Vリブドベルト本体10を構成するゴム組成物の配合剤としては、例えば、架橋剤(例えば、硫黄、有機過酸化物)、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、カーボンブラック(ヨウ素吸着量が40mg/g以下の大粒径カーボンブラックを含む)などの補強材、充填材、超高分子量ポリエチレン粒子(重量平均分子量100万以上)、短繊維14等が挙げられる。
【0016】
Vリブドベルト本体10を構成するゴム組成物には、好ましくはゴム成分100質量部に対して30質量部以下、より好ましくは10質量部以下の1,2-ポリブタジエンが含まれていてもよいものの、5質量部以下で実質的に1,2-ポリブタジエンが含まれていない乃至1,2-ポリブタジエンが全く含まれていないことが最も好ましい。
【0017】
なお、Vリブドベルト本体10を形成するゴム組成物は、ゴム成分に配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたものである。
【0018】
上記のように、Vリブドベルト本体10を形成するゴム組成物には短繊維14が配合されていてもよいが、その短繊維14は、ベルト幅方向に配向するように設けられていることが好ましい。また、短繊維14のうち一部分は、プーリ接触表面、つまり、Vリブ13表面に露出するが、Vリブ13表面に露出した短繊維14は、Vリブ13表面から突出していていることが好ましい。なお、Vリブ13表面に短繊維が植毛された構成であってもよい。
【0019】
短繊維14としては、例えば、ナイロン短繊維、アラミド短繊維、ポリエステル短繊維、ビニロン短繊維、綿短繊維等が挙げられる。
【0020】
短繊維14は、例えば、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液(以下「RFL水溶液」という。)等に浸漬した後に加熱する接着処理が施された長繊維を長さ方向に沿って所定長に切断して製造される。短繊維14は、例えば、長さが0.2〜5.0mm、繊維径が10〜50μmである。
【0021】
短繊維14は、ゴム成分100質量部に対する含有量が例えば5〜25質量部である。
【0022】
心線16は、例えば、撚り糸、組紐等で構成され、太さが2000〜11000dtex、心線径が0.60〜1.25mmである。
【0023】
心線16を構成する繊維材料としては、例えば、ポリエステル繊維(PET)、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ポリケトン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、ビニロン繊維、PBO繊維、綿糸等が挙げられる。
【0024】
心線16は、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するため、成形加工前に接着処理が施されている。
【0025】
接着処理としては、第1処理(下地処理)、第2処理(RFL処理)、及び第3処理(ゴム糊処理)が挙げられる。この接着処理により、図2に示すように、心線16を囲うように接着層17が設けられる。接着層17の層厚さは例えば1〜10μmである。心線16には、少なくとも第3処理が施されており、そのため接着層17は、1,2-ポリブタジエンを含有する薄層18を有する。薄層18の層厚さは例えば0.1〜200μmであることが好ましい。このように接着層17が1,2-ポリブタジエンを含有する薄層18を有することにより、耐久性を損なわずにVリブドベルト本体10と心線16との高い接着性を得ることができる。なお、第3処理は、第1処理及び/又は第2処理を施した心線16に施されることが好ましく、その場合、心線16と薄層18との間に下地及び/又はRFLの層が介在することとなる。
【0026】
以下、第1〜第3処理について説明する。
【0027】
−第1処理(下地処理)−
第1処理は、心線16を下地処理液に浸漬した後に加熱する処理である。
【0028】
下地処理液は、例えば、下地処理剤を溶媒に溶解させた溶液が挙げられる。
【0029】
下地処理剤としては、例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。下地処理剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種が混合されたもので構成されていてもよい。
【0030】
溶媒としては、例えば、水の他、トルエンやメチルエチルケトン(MEK)などの有機溶剤等が挙げられる。
【0031】
下地処理液には、その他に界面活性剤、接着性を向上させる成分等が含まれていてもよい。
【0032】
下地処理液の固形分濃度は、下地処理剤の種類によっても相異するが、例えば3〜25質量%である。下地処理液の粘度は例えば0.5〜50cPである。
【0033】
第1処理における下地処理液への浸漬時間は例えば0.5〜5秒である。第1処理における加熱温度は、下地処理剤の種類によっても相異するが、例えば180〜270℃である。第1処理における加熱時間は、下地処理剤の種類によっても相異するが、例えば30秒〜2分である。第1処理における加熱時の張力は、心線16を構成する繊維材料の種類によっても相異するが、例えば0.002〜0.030N/dtexである。
【0034】
心線16に対する下地処理剤の固形分付着量は、心線16の乾燥質量に対して例えば1.0〜7.0質量%の量である。
【0035】
この第1処理は、単数回施してもよく、また、複数回繰り返して施してもよい。
【0036】
−第2処理(RFL処理)−
第2処理は、未接着処理の心線16或いは第1処理を施した心線16をRFL水溶液に浸漬した後に加熱する処理である。
【0037】
RFL水溶液は、レゾルシン(R)及びホルマリン(F)の初期縮合物と、ラテックス(L)との混合水溶液である。
【0038】
ラテックス(L)としては、例えば、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、クロロスルフォン化ポリエチレンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、水素添加アクリロニトリルゴムラテックス、エピクロルヒドリンゴムラテックス、スチレンブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、塩素化ブタジエンゴムラテックス、オレフィン−ビニルエステル共重合体ゴムラテックス、天然ゴムラテックス等が挙げられる。ラテックス(L)は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種が混合されたもので構成されていてもよい。
【0039】
R/L(モル比)は、例えば1/1〜1/4である。RF/L(質量比)は、例えば1/1.5〜1/20である。
【0040】
RFL水溶液には、その他に界面活性剤、ZnO、ブロックドイソシアネート等が含まれていてもよい。
【0041】
RFL水溶液の固形分濃度は例えば3〜25質量%である。RFL水溶液の粘度は例えば1〜200cPである。
【0042】
第2処理におけるRFL水溶液への浸漬時間は例えば1〜25秒である。第2処理における加熱温度は例えば150〜280℃である。第2処理における加熱時間は例えば30秒〜2分である。第2処理における加熱時の張力は、心線16を構成する繊維材料の種類によっても相異するが、例えば0.002〜0.040N/dtexである。
【0043】
心線16に対するRFLの固形分付着量は、心線16の乾燥質量に対して例えば0.5〜8質量%の量である。
【0044】
この第2処理は、単数回施してもよく、また、複数回繰り返して施してもよいが、均一な付着を得るためには2〜3回繰り返すことが好ましい。
【0045】
−第3処理(ゴム糊処理)−
第3処理は、未接着処理の心線16或いは第1処理及び/又は第2処理を施した心線16をゴム糊に浸漬した後に乾燥させる処理である。
【0046】
ゴム糊は、1,2-ポリブタジエンをトルエンやメチルエチルケトン(MEK)などの有機溶剤に溶解させた溶液である。
【0047】
1,2-ポリブタジエンは、1,2-ビニル含有量が20〜90モル%のポリブタジエンであるが、1,2-ビニル含有量が60〜90モル%であることがより好ましい。
【0048】
1,2-ポリブタジエンは、マレイン酸変性部分を含むマレイン酸変性1,2-ポリブタジエンであってもよく、また、無水マレイン酸変性部分を含む無水マレイン酸変性1,2-ポリブタジエンであってもよく、さらに、それらの両方を含むものであってもよい。この場合、酸モノマーの含有量(酸含有量)は4〜25質量%であることが好ましい。
【0049】
1,2-ポリブタジエンとしては、具体的には、例えば、Sartomer Technology Company社製のRicon(登録商標)シリーズ及びRicobond(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0050】
ゴム糊における1,2-ポリブタジエンの含有量は例えば10〜100質量%である。
【0051】
ゴム糊には、その他にゴム組成物等が含まれていてもよい。
【0052】
ゴム糊の固形分濃度は例えば3〜25質量%である。ゴム糊の粘度は例えば0.5〜100cPである。
【0053】
第3処理におけるゴム糊への浸漬時間は例えば0.2〜5秒である。第3処理における乾燥温度は例えば55〜120℃である。第3処理における乾燥時間は例えば30秒〜21分である。第3処理における乾燥時の張力は、心線16を構成する繊維材料の種類によっても相異するが、例えば0.002〜0.030N/dtexである。
【0054】
心線16に対するゴム糊による固形分付着量は、心線16の乾燥質量に対して例えば0.5〜10質量%の量である。
【0055】
次に、実施形態1に係るVリブドベルトBの製造方法を、図3(a)及び(b)に基づいて説明する。
【0056】
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造では、外周に、ベルト背面を所定形状に形成する成形面を有する内金型と、内周に、ベルト内側を所定形状に形成する成形面を有するゴムスリーブとを用いる。
【0057】
まず、内金型の外周をVリブドベルト本体10の心線16よりも外側部分を形成するための未架橋ゴムシート10a’を巻き付け、次いで、その上に、心線16となる接着処理済糸16’を螺旋状に巻き付けた後、さらにその上に、心線16よりも内側部分を形成するための未架橋ゴムシート10b’を巻き付ける。なお、未架橋ゴムシート10a’,10b’が短繊維14を含む場合、巻付方向に直交する方向に短繊維14が配向したものを用いる。
【0058】
しかる後、内金型上の成形体にゴムスリーブを被せてそれを成形釜にセットし、内金型を高熱の水蒸気などにより加熱すると共に、高圧をかけてゴムスリーブを半径方向内方に押圧する。このとき、ゴム成分が流動すると共に架橋反応が進行し、加えて、接着処理済糸16’のゴムへの接着反応も進行する。そして、これによって、筒状のベルトスラブ(ベルト本体プリフォーム)が成形される。
【0059】
そして、内金型からベルトスラブを取り外し、それを長さ方向に数個に分割した後、それぞれの外周を研磨切削してVリブ13、つまり、プーリ接触部分を形成する。このとき、プーリ接触表面に露出する短繊維14は、プーリ接触表面、つまり、Vリブ13表面から突出した形態となっていてもよい。
【0060】
最後に、分割されて外周にVリブ13が形成されたベルトスラブを所定幅に幅切りし、それぞれの表裏を裏返すことにより実施形態1に係るVリブドベルトBが得られる。
【0061】
次に、上記VリブドベルトBを用いた自動車のエンジンルームに設けられる補機駆動ベルト伝動装置40について説明する。
【0062】
図4は、その補機駆動ベルト伝動装置40のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置40は、4つのリブプーリ及び2つの平プーリの6つのプーリに巻き掛けられたサーペンタインドライブ方式のものである。
【0063】
この補機駆動ベルト伝動装置40のレイアウトは、最上位置のパワーステアリングプーリ41、そのパワーステアリングプーリ41の下方に配置されたACジェネレータプーリ42、パワーステアリングプーリ41の左下方に配置された平プーリのテンショナプーリ43と、そのテンショナプーリ43の下方に配置された平プーリのウォーターポンププーリ44と、テンショナプーリ43の左下方に配置されたクランクシャフトプーリ45と、そのクランクシャフトプーリ45の右下方に配置されたエアコンプーリ46とにより構成されている。これらのうち、平プーリであるテンショナプーリ43及びウォーターポンププーリ44以外は全てリブプーリである。そして、VリブドベルトBは、Vリブ13側が接触するようにパワーステアリングプーリ41に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面が接触するようにテンショナプーリ43に巻き掛けられた後、Vリブ13側が接触するようにクランクシャフトプーリ45及びエアコンプーリ46に順に巻き掛けられ、さらに、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ44に巻き掛けられ、そして、Vリブ13側が接触するようにACジェネレータプーリ42に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ41に戻るように設けられている。
【0064】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係るVリブドベルトBを示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は実施形態1と同一符号で示す。
【0065】
実施形態2に係るVリブドベルトBでは、Vリブドベルト本体10は、ベルト外周側の接着ゴム層11とベルト内周側の圧縮ゴム層12との二重層に構成されており、そのVリブドベルト本体10のベルト外周側表面に補強布15が貼設され、また、接着ゴム層11に、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように心線16が接着層17を介して埋設されている。そして、接着層17は、心線16を囲うように設けられた1,2-ポリブタジエンを含有する薄層18を有する。
【0066】
接着ゴム層11は、断面横長矩形の帯状に構成され、厚さが例えば1.0〜2.5mmに形成されている。接着ゴム層11は、ゴム成分に種々の配合剤が配合されたゴム組成物で形成されている。
【0067】
接着ゴム層11を構成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン・プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマーゴム、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。これらのうち、環境に対する配慮や耐摩耗性、耐クラック性などの性能の観点から、エチレン−α−オレフィンエラストマーゴムが好ましい。ゴム成分は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種がブレンドされて構成されていてもよい。
【0068】
接着ゴム層11を構成するゴム組成物の配合剤としては、例えば、架橋剤(例えば、硫黄、有機過酸化物)、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、カーボンブラック(ヨウ素吸着量が40mg/g以下の大粒径カーボンブラックを含む)などの補強材、充填材等が挙げられる。
【0069】
なお、接着ゴム層11を形成するゴム組成物は、ゴム成分に配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたものである。
【0070】
圧縮ゴム層12は、プーリ接触部分を構成する複数のVリブ13がベルト内周側に垂下するように設けられている。これらの複数のVリブ13は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。各Vリブ13は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmに形成されている。また、リブ数は、例えば3〜6個である(図5では、リブ数が6)。圧縮ゴム層12は、実施形態1のVリブドベルト本体10を形成するゴム組成物と同様のゴム組成物で形成されている。
【0071】
補強布15は、例えば、綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の糸で形成された平織、綾織、朱子織等に製織した織布で構成されている。補強布15は、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理及び/又はVリブドベルト本体10側となる表面にゴム糊をコーティングして乾燥させる接着処理が施されている。なお、補強布15の代わりにベルト外周側表面部分がゴム組成物で構成されていてもよい。また、補強布15は、編物で構成されていてもよい。
【0072】
次に、実施形態2に係るVリブドベルトBの製造方法を、図6(a)及び(b)に基づいて説明する。
【0073】
実施形態2に係るVリブドベルトBの製造では、外周に、ベルト背面を所定形状に形成する成形面を有する内金型と、内周に、ベルト内側を所定形状に形成する成形面を有するゴムスリーブとを用いる。
【0074】
まず、内金型の外周を補強布15となる接着処理済布15’で被覆した後、その上に、接着ゴム層11の外側部分11bを形成するための未架橋ゴムシート11b’を巻き付け、次いで、その上に、心線16となる接着処理済糸16’を螺旋状に巻き付けた後、その上に、接着ゴム層11の内側部分11aを形成するための未架橋ゴムシート11a’を巻き付け、さらにその上に、圧縮ゴム層12を形成するための未架橋ゴムシート12’を巻き付ける。なお、圧縮ゴム層12を形成する未架橋ゴムシート12’が短繊維14を含む場合、巻付方向に直交する方向に短繊維14が配向したものを用いる。
【0075】
しかる後、内金型上の成形体にゴムスリーブを被せてそれを成形釜にセットし、内金型を高熱の水蒸気などにより加熱すると共に、高圧をかけてゴムスリーブを半径方向内方に押圧する。このとき、ゴム成分が流動すると共に架橋反応が進行し、加えて、接着処理済糸16’及び接着処理済布15’のゴムへの接着反応も進行する。そして、これによって、筒状のベルトスラブ(ベルト本体プリフォーム)が成形される。
【0076】
そして、内金型からベルトスラブを取り外し、それを長さ方向に数個に分割した後、それぞれの外周を研磨切削してVリブ13、つまり、プーリ接触部分を形成する。このとき、プーリ接触表面に露出する短繊維14は、プーリ接触表面、つまり、Vリブ13表面から突出した形態となっていてもよい。
【0077】
最後に、分割されて外周にVリブ13が形成されたベルトスラブを所定幅に幅切りし、それぞれの表裏を裏返すことにより実施形態2に係るVリブドベルトBが得られる。
【0078】
その他の構成、作用・効果は実施形態1と同一である。
【0079】
(その他の実施形態)
上記実施形態1及び2では、VリブドベルドベルトBとしたが、特にこれに限定されるものではなく、ローエッジ型のVベルト、歯付ベルト、平ベルト等であってもよい。
【実施例】
【0080】
(接着処理液)
以下の接着処理液を調製した。各配合を表1にも示す。
【0081】
<下地処理液>
イソシアネート(住化バイエルウレタン社製 商品名:スミジュール44V20)160に対してトルエン840の質量割合で混合して得た溶液を下地処理液として調整した。この下地処理液は、固形分濃度が16質量%であり、粘度が0.84cPであった。
【0082】
<RFL水溶液>
レゾルシン(R)9.2、37%ホルマリン(F)13.5、水酸化ナトリウム(NaOH)0.5、2,3-ジクロロブタジエン(2,3-DCB)ゴムラテックス(東ソー社製 商品名:LH430)266.7、及び水710.1の質量割合で混合したRFL水溶液を調整した。このRFL水溶液は、固形分濃度が10質量%であり、粘度が10cPであった。
【0083】
なお、RFL水溶液の調整の際には、レゾルシン(R)、ホルマリン(F)及び水酸化ナトリウム(NaOH)を水に溶解させて水溶液を調整し、それを2時間攪拌して縮合反応させ、それを2,3-ジクロロブタジエン(2,3-DCB)ゴムラテックスに残りの水を混合したものに添加した。
【0084】
<ゴム糊1>
マレイン酸変性1,2-ポリブタジエン(Sartomer Technology Company社製 商品名:Ricobond1756、1,2-ビニル含有量70モル%、酸含有量17質量%)150に対してトルエン850の質量割合で混合して得た溶液をゴム糊1として調整した。このゴム糊1は、固形分濃度が15質量%であり、粘度が1.2cPであった。
【0085】
<ゴム糊2>
1,2-ポリブタジエン(Sartomer Technology Company社製 商品名:Ricon130、1,2-ビニル含有量28モル%、酸含有量0質量%)150に対してトルエン850の質量割合で混合して得た溶液をゴム糊2として調整した。このゴム糊2は、固形分濃度が15質量%であり、粘度が1.5cPであった。
【0086】
<ゴム糊3>
1,2-ポリブタジエン(Sartomer Technology Company社製 商品名:Ricon157、1,2-ビニル含有量70モル%、酸含有量0質量%)150に対してトルエン850の質量割合で混合して得た溶液をゴム糊3として調整した。このゴム糊3は、固形分濃度が15質量%であり、粘度が1.1cPであった。
【0087】
<ゴム糊4>
マレイン酸変性1,2-ポリブタジエン(Sartomer Technology Company社製 商品名:Ricobond1031、1,2-ビニル含有量25モル%、酸含有量10質量%)150に対してトルエン850の質量割合で混合して得た溶液をゴム糊4として調整した。このゴム糊4は、固形分濃度が15質量%であり、粘度が1.6cPであった。
【0088】
<ゴム糊5>
1,4−ポリブタジエン(JSR社製 商品名:BR01、1,2-ビニル含有量4モル%以下、酸含有量0質量%)150に対してトルエン850の質量割合で混合して得た溶液をゴム糊5として調整した。このゴム糊5は、固形分濃度が15質量%であり、粘度が4.0cPであった。
【0089】
【表1】

【0090】
(ゴム組成物)
以下のゴム組成物A〜Cを調製した。各配合を表2にも示す。
【0091】
<ゴム組成物A>
EPDM(JSR社製 商品名:EP24)をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対して、酸化亜鉛(堺化学工業社製 商品名:亜鉛華1号)5質量部、ステアリン酸(日油社製 商品名:ビーズステアリン酸 椿)1質量部、老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラックMB)1質量部、FEFカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)60質量部、オイル1(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)10質量部、オイルサルファー(鶴見化学工業社製 商品名:オイル硫黄)0.5質量部、有機過酸化物架橋剤(日油社製 商品名:パークミルD)4質量部、共架橋剤(精工化学社製 商品名:ハイクロスM)2質量部、及び短繊維(帝人社製 商品名:テクノーラ、繊維長3mm、接着処理済)10質量部を配合・混練し、それをゴム組成物Aとした。
【0092】
<ゴム組成物B>
メタクリル酸亜鉛補強H−NBR(日本ゼオン社製 商品名:ゼオフォルテZSC2295CX)とH−NBR(日本ゼオン社製 商品名:Zetpol2020)とを前者/後者=70/30の質量割合で混合したブレンドゴムをゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対して、酸化亜鉛(堺化学工業社製 商品名:亜鉛華1号)5質量部、ステアリン酸(日油社製 商品名:ビーズステアリン酸 椿)1質量部、老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラックMB)1質量部、FEFカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)40質量部、オイル2(旭電化工業社製 商品名:アデカサイザーRS107)10質量部、オイルサルファー(鶴見化学工業社製 商品名:オイル硫黄)0.5質量部、有機過酸化物架橋剤(日油社製 商品名:パークミルD)4質量部、及び共架橋剤(精工化学社製 商品名:ハイクロスM)2質量部を配合・混練し、それをゴム組成物Bとした。
【0093】
<ゴム配合C>
ゴム成分100質量部に対してマレイン酸変性1,2-ポリブタジエン(Sartomer Technology Company社製 商品名:Ricobond1756)40質量部を配合し、且つ短繊維を配合していないことを除いてゴム組成物Aと同一のゴム組成物を配合・混練し、それをゴム組成物Cとした。
【0094】
【表2】

【0095】
(試験評価用心線)
以下の実施例1〜8並びに比較例1〜4の心線を作製した。各構成を表3にも示す。
【0096】
<実施例1>
芳香族ポリアミド繊維(帝人社製 商品名:テクノーラ)の1100dtex/1×3(下撚り数20回/10cm及び上撚り数20回/10cm)構成の撚り糸の心線に、上記下地処理液を用いた第1処理(下地処理)、上記RFL水溶液を用いた第2処理(RFL処理)、及び上記ゴム糊1を用いた第3処理(ゴム糊処理)の接着処理を施したものを実施例1とした。
【0097】
第1処理では、下地処理液への浸漬時間を1.2秒、加熱温度を245℃、加熱時間を60秒、及び加熱時の張力を0.005N/dtexとした。心線に対する下地処理剤の固形分付着量は心線の乾燥質量に対して3.4質量%の量であった。
【0098】
第2処理では、RFL水溶液への浸漬時間を8秒、加熱温度を230℃、加熱時間を60秒、及び加熱時の張力を0.006N/dtexとした。また、第2処理の処理回数を2回とした。心線に対するRFLの固形分付着量は心線の乾燥質量に対して5.4質量%の量であった。
【0099】
第3処理では、ゴム糊1への浸漬時間を1.2秒、乾燥温度を100℃、乾燥時間を60秒、及び乾燥時の張力を0.006N/dtexとした。心線に対するゴム糊1による固形分付着量は心線の乾燥質量に対して2.5質量%の量であった。
【0100】
<実施例2>
第3処理においてゴム糊2を用いたことを除いて実施例1と同一の接着処理を施した心線を作製し、それを実施例2とした。心線に対するゴム糊2による固形分付着量は心線の乾燥質量に対して3.0質量%の量であった。
【0101】
<実施例3>
第3処理においてゴム糊3を用いたことを除いて実施例1と同一の接着処理を施した心線を作製し、それを実施例3とした。心線に対するゴム糊3による固形分付着量は心線の乾燥質量に対して2.8質量%の量であった。
【0102】
<実施例4>
第3処理においてゴム糊4を用いたことを除いて実施例1と同一の接着処理を施した心線を作製し、それを実施例4とした。心線に対するゴム糊4による固形分付着量は心線の乾燥質量に対して4.5質量%の量であった。
【0103】
<実施例5>
第2処理を施していないことを除いて実施例1と同一の接着処理を施した心線を作製し、それを実施例5とした。心線に対するゴム糊1による固形分付着量は心線の乾燥質量に対して3.6質量%の量であった。
【0104】
<実施例6>
第1及び第2処理を施していないことを除いて実施例1と同一の接着処理を施した心線を作製し、それを実施例6とした。心線に対するゴム糊1による固形分付着量は心線の乾燥質量に対して5.8質量%の量であった。
【0105】
<実施例7>
ポリエステル繊維(帝人社製 商品名:テトロン)の1100dtex/1×3(下撚り数12回/10cm及び上撚り数12回/10cm)構成の撚り糸の心線を用いたことを除いて実施例5と同一の接着処理を施した心線を作製し、それを実施例7とした。心線に対する下地処理剤の固形分付着量は心線の乾燥質量に対して3.1質量%の量であった。心線に対するゴム糊1による固形分付着量は心線の乾燥質量に対して2.3質量%の量であった。
【0106】
<実施例8>
ナイロン6,6繊維(旭化成社製 商品名:レオナ)の1400dtex/1×3(下撚り数15回/10cm及び上撚り数15回/10cm)構成の撚り糸の心線を用いたことを除いて実施例5と同一の接着処理を施した心線を作製し、それを実施例8とした。心線に対する下地処理剤の固形分付着量は心線の乾燥質量に対して4.2質量%の量であった。心線に対するゴム糊1による固形分付着量は心線の乾燥質量に対して4.1質量%の量であった。
【0107】
<比較例1>
第3処理を施していないことを除いて実施例1と同一の接着処理を施した心線を作製し、それを比較例1とした。
【0108】
<比較例2>
第3処理の代わりに第2処理を施したことを除いて実施例7と同一の接着処理を施した心線を作製し、それを比較例2とした。心線に対するRFLの固形分付着量は心線の乾燥質量に対して4.8質量%の量であった。
【0109】
<比較例3>
第3処理の代わりに第2処理を施したことを除いて実施例8と同一の接着処理を施した心線を作製し、それを比較例3とした。心線に対するRFLの固形分付着量は心線の乾燥質量に対して5.5質量%の量であった。
【0110】
<比較例4>
第3処理においてゴム糊5を用いたことを除いて実施例1と同一の接着処理を施した心線を作製し、それを比較例4とした。心線に対するゴム糊5による固形分付着量は心線の乾燥質量に対して4.0質量%の量であった。
【0111】
【表3】

【0112】
(試験評価方法)
<動的接着性評価>
実施例1〜8並びに比較例1〜4のそれぞれの接着処理を施した心線について、ゴム組成物Aを被着ゴムとして、図7に示すような1cm×1cm×2cmの直方体状のゴムブロック71の長尺側面の中心に心線72を貫通状態に設けて接着した試験片70をプレス成形した。
【0113】
実施例1〜4並びに比較例1及び4のそれぞれの接着処理を施した心線について、ゴム組成物Bを被着ゴムとして、同様の試験片をプレス成形した。
【0114】
実施例1の接着処理を施した心線について、ゴム組成物Cを被着ゴムとして、同様の試験片をプレス成形した。なお、この実施例1の心線とゴム組成物Cとの組合せを比較例5とする。
【0115】
そして、図8に示すように、上方に設けられたロードセル81に下向きに開口するように取り付けられたC字状のゴム固定治具82に、開口から心線が垂下するようにゴムブロック71を固定すると共に、下方に設けられたチャック83に心線72の先端を固定して試験片70をセットした。130℃の温度雰囲気下で、チャック83により心線72に対して荷重幅0〜58.8N及び周波数10Hzの荷重振動を与え、心線72がゴムブロック71から抜けるまでの振動回数を計測した。
【0116】
<ベルト走行評価>
実施例1〜6並びに比較例1及び4のそれぞれの心線を用い、Vリブドベルト本体をゴム組成物Aで形成した実施形態1と同様の構成のVリブドベルトを作製した。なお、ベルト周長を1000mm、ベルト幅を10.68mm、及びベルト厚さを4.8mmとし、そして、リブ数を3個とした。
【0117】
実施例1の心線を用い、接着ゴム層をゴム組成物C及び圧縮ゴム層をゴム組成物Aでそれぞれ形成し、補強布を設けない態様の実施形態2と同様の構成のVリブドベルトを作製した(比較例5)。なお、ベルト周長を1000mm、ベルト幅を10.68mm、及びベルト厚さを4.8mmとし、そして、リブ数を3個とした。
【0118】
図9は、ベルト走行試験機90のプーリレイアウトを示す。
【0119】
このベルト走行試験機90は、最下部に設けられたプーリ径120mmの駆動リブプーリ91と、その上方に設けられたプーリ径120mmの従動リブプーリ92と、それらの上下方向の中間に設けられたプーリ径70mmのアイドラー平プーリ93と、そのアイドラー平プーリ93の右側方に設けられた左右に可動なプーリ径55mmのテンションリブプーリ94と、を備えている。
【0120】
このベルト走行試験機90に、VリブドベルトBを、リブ部が接触するように駆動リブプーリ91、従動リブプーリ92、及びテンションリブプーリ94のそれぞれに巻き掛け、また、ベルト背面が接触するようにアイドラー平プーリ93に巻き掛け、そして、従動リブプーリ92に11.8kWの負荷をかけると共に、テンションリブプーリ94に左方に834Nの張力を負荷して固定し、130℃の温度雰囲気下で、駆動リブプーリ91を4900rpmの回転数で回転させてVリブドベルトBを走行させ、心線がVリブドベルト本体から剥離して飛び出すまでの走行時間をベルト走行寿命として計測した。なお、比較例5のみは接着ゴム層にクラックが発生した時点の走行時間をベルト走行寿命とした。
【0121】
また、未走行のVリブドベルトの初期強度を測定すると共に、上記と同様の走行試験で200時間(比較例4については72時間)ベルト走行したVリブドベルトの強度を測定し、そして、Vリブドベルトの初期強度に対するベルト走行後の強度の強度維持率を算出した。
【0122】
(試験評価結果)
試験評価結果を表4に示す。
【0123】
【表4】

【0124】
表4によれば、動的接着性は、被着ゴムがゴム組成物Aの場合、実施例1が20980回、実施例2が15230回、実施例3が16570回、実施例4が17420回、実施例5が16730回、実施例6が14170回、実施例7が58640回、及び実施例8が35120回であり、一方、比較例1が2460回、比較例2が9860回、比較例3が9080回、及び比較例4が4110回であった。また、被着ゴムがゴム組成物Bの場合、実施例1が46200回、実施例2が23340回、実施例3が27110回、及び実施例4が30190回であり、一方、比較例1が6050回、及び比較例4が4920回であった。さらに、被着ゴムがゴム組成物Cの場合、比較例5が25110回であった。
【0125】
ベルト走行寿命は、実施例1が1000時間、実施例2が513時間、実施例3が502時間、実施例4が678時間、実施例5が606時間、及び実施例6が453時間であり、一方、比較例1が192時間、比較例4が72時間、及び比較例5が514時間であった。
【0126】
強度維持率は、実施例1が91%、実施例2が83%、実施例3が88%、実施例4が84%、実施例5が85%、及び実施例6が80%であり、一方、比較例1が61%、比較例4が63%、及び比較例5が55%であった。
【0127】
薄層の層厚さは、実施例1が2.1μm、実施例2が1.5μm、実施例3が1.1μm、実施例4が1.8μm、実施例5が1.8μm、及び実施例6が2.3μmであり、一方、比較例1が1.9μm、及び比較例4が1.7μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、ゴム製のベルト本体に接着層を介して心線が埋設された伝動ベルトについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】実施形態1に係るVリブドベルトの斜視図である。
【図2】Vリブドベルトの横断面の部分拡大図である。
【図3】(a)及び(b)は実施形態1に係るVリブドベルトの製造方法を示す説明図である。
【図4】補機駆動ベルト伝動装置のプーリレイアウトを示す図である。
【図5】実施形態2に係るVリブドベルトの斜視図である。
【図6】(a)及び(b)は実施形態2に係るVリブドベルトの製造方法を示す説明図である。
【図7】動的接着性評価の試験片を示す斜視図である。
【図8】動的接着性評価の試験方法を示す説明図である。
【図9】ベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す図である。
【符号の説明】
【0130】
B Vリブドベルト
10 Vリブドベルト本体
16 心線
17 接着層
18 薄層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム製のベルト本体に接着層を介して心線が埋設された伝動ベルトであって、
上記接着層は、上記心線を囲うように設けられた1,3-ブタジエンモノマーの20〜90モル%が1,2-付加したポリブタジエンである1,2-ポリブタジエンを含有する薄層を有する伝動ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
上記薄層の層厚さが0.1〜200μmである伝動ベルト。
【請求項3】
ゴム製のベルト本体に接着層を介して心線が埋設された伝動ベルトであって、
上記心線は、1,3-ブタジエンモノマーの20〜90モル%が1,2-付加したポリブタジエンである1,2-ポリブタジエンを含有するゴム糊に浸漬した後に乾燥させる処理が施されている伝動ベルト。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
上記1,2-ポリブタジエンがマレイン酸変性1,2-ポリブタジエン又は無水マレイン酸変性1,2-ポリブタジエンである伝動ベルト。
【請求項5】
請求項4に記載された伝動ベルトにおいて、
上記1,2-ポリブタジエンは、酸モノマーの含有量が4〜25質量%である伝動ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−275781(P2009−275781A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126267(P2008−126267)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】