説明

伝熱フィンおよび熱交換器

【課題】有機高分子の収着剤を用いた場合であっても、剥離を生じにくくさせることが可能な伝熱フィンおよび熱交換器を提供する。
【解決手段】伝熱フィンは、アルミ基材、耐食膜、収着剤およびバインダを備えている。アルミ基材は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金により構成されている。耐食膜は、アルミ基材の表面に設けられ、アルミ基材の腐食を抑制する。収着剤は、吸放湿性を有する有機高分子である。バインダは、収着剤と付着し、かつ、耐食膜とも付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱フィンおよび熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1(特開2005−111425号公報)に記載されているように、調湿装置の熱交換器が有する伝熱フィンにおいて、無機系の吸着剤としてのゼオライトが用いられているものが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献1(特開2005−111425号公報)に記載されているような無機系の吸着剤は、水分子との結合が強いため放湿する際に高いエネルギが必要になる(高温が必要となる)ため、用途によっては、十分な性能を得ることができない場合がある。
【0004】
これに対して、発明者らは、吸湿することによって膨潤し、放湿することで収縮するという吸放湿性を有する有機高分子の収着剤の採用を試みた。
【0005】
ところが、このような有機高分子の収着剤は、無機系の吸着剤と比較して、吸湿および放湿の際に生じる体積変化が大きいため、基材に安定的に付着させることが難しく、吸放湿を繰り返すうちに、熱交換器のフィンからの剥離が生じてしまうおそれがある。また、有機高分子の収着剤との付着性が良好なバインダを特定できたとしても、そのバインダが基材の耐食膜に対しても良好な付着力を示すことができるとは限らず、バインダと耐食膜との付着性が不十分である場合には、結局、バインダと耐食膜との界面で剥離が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、有機高分子の収着剤を用いた場合であっても、剥離を生じにくくさせることが可能な伝熱フィンおよび熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の伝熱フィンは、アルミ基材、耐食膜、収着剤およびバインダを備えている。アルミ基材は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金により構成されている。耐食膜は、アルミ基材の表面に設けられ、アルミ基材の腐食を抑制する。収着剤は、吸放湿性を有する有機高分子である。バインダは、収着剤と付着し、かつ、耐食膜とも付着する。
【0008】
この伝熱フィンは、耐食膜が設けられていることで、アルミ基材を水分から保護することができている。また、収着剤として、吸放湿性を有する有機高分子を用いているため、吸湿および放湿を効果的に行うことができる。ここで、バインダとして、収着剤だけでなく耐食膜とも付着するものが選定されている。これにより、吸放湿性を有する有機高分子を収着剤として用いた場合であっても、剥離を生じにくくさせることが可能になっている。
【0009】
第2の観点の伝熱フィンは、第1の観点の伝熱フィンにおいて、収着剤は、親水性の極性基を有し、かつ、架橋構造を有している。
【0010】
この伝熱フィンは、吸湿機能および放湿機能を良好にすることが可能になる。
【0011】
第3の観点の伝熱フィンは、第2の観点の伝熱フィンにおいて、収着剤は、ポリアクリル系の樹脂を主成分として含有している。
【0012】
この伝熱フィンは、吸湿機能および放湿機能をより良好にすることが可能になる。
【0013】
第4の観点の伝熱フィンは、第3の観点の伝熱フィンにおいて、耐食膜は、エポキシ樹脂を主成分として含有している。バインダは、水性ウレタン樹脂を主成分として含有している。
【0014】
この伝熱フィンは、吸放湿性を有する有機高分子の収着剤を用いた場合において、耐食膜を変質させるほどの高温の加熱を行わなくても、バインダを介して良好な付着性を確保することが可能になる。
【0015】
第5の観点の伝熱フィンは、第1の観点から第4の観点のいずれか1つの伝熱フィンにおいて、収着剤100重量部に対して、バインダを15〜35重量部の割合で含有している。
【0016】
この伝熱フィンでは、収着剤の表面をバインダが覆い過ぎて機能が発揮されなくなってしまうことを抑制しつつ、耐食膜と収着剤の間および収着剤間の付着力を良好にすることが可能になる。
【0017】
第6の観点の伝熱フィンは、第1の観点から第5の観点のいずれか1つの伝熱フィンにおいて、収着剤とバインダによって構成される層の平均膜厚は、20〜300μmである。
【0018】
この伝熱フィンでは、熱交換器として用いられた場合における通風抵抗を小さく抑えつつ、収着剤の吸湿機能および放湿機能を十分に発揮させることが可能になる。
【0019】
第7の観点の熱交換器は、第1の観点から第6の観点のいずれか1つの伝熱フィンを複数と、伝熱フィンの板厚方向に貫通するようにして設けられた伝熱管と、を備えている。
【0020】
この熱交換器は、吸放湿性を有する有機高分子を収着剤として用いた場合であっても、剥離を生じにくくさせることが可能になっている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の伝熱フィンおよび熱交換器は、吸放湿性を有する有機高分子を収着剤として用いた場合であっても、剥離を生じにくくさせることが可能になっている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の伝熱フィンを備えた熱交換器は、換気装置や空気調和装置において、高温の冷媒を送り込むことで放湿させて対象空間へ供給する空気を加湿すること、および、吸湿により対象空間へ供給する空気を除湿すること、の少なくともいずれか1つの用途で用いることができる。
【0023】
例えば、本発明の伝熱フィンを備えた熱交換器が、圧縮要素と凝縮器と膨張機構と蒸発器とが四路切換弁によって逆サイクル運転可能に接続されて構成された冷凍サイクルで用いられると、蒸発器として機能させる熱交換器においては吸湿動作を行わせ、凝縮器として機能させる熱交換器においては放湿動作を行わせることができる。
【0024】
そして、冷媒流れを逆サイクルに切り換えることで、蒸発器と凝縮器の機能を熱交換器において切り換えることが可能になるため、蒸発器として機能することで水分を吸湿した状態の熱交換器を凝縮器として機能させることで放湿を行うことができ、凝縮器として機能することで吸湿機能が再生された熱交換器を蒸発器として機能させることで再度吸湿することが可能になる。ここで、対象空間へと送られる空気流れに対して放湿した場合には対象空間を加湿することが可能になり、屋外へ排出される空気流れに対して放湿した場合には、対象空間の湿度を上げることなく熱交換器の吸湿能力を再生することが可能になる。なお、いずれの空気流れにおいて吸湿または放湿を行うかは、ダンパ等の流路切換機構を備えたダクトの流路構成を切り換え制御することで調節できる。
【0025】
以上のようにして用いられる本発明の伝熱フィンを備えた熱交換器について、以下説明する。
【0026】
(1)熱交換器の構成
本発明の熱交換器は、1.0mmから2.0mmの間のフィンピッチ(例えば、1.4mmもしくは1.6mm)で板厚方向に並んだ伝熱フィンに対して、伝熱管が貫通するようにして構成されている。なお、フィンピッチは、板厚方向に並ぶ伝熱フィンの繰り返し単位の長さ(伝熱フィン自体の板厚を含む)である。
【0027】
この伝熱フィンは、(A)アルミ基材、(B)耐食膜、(C)バインダ、および、(D)収着剤から構成されている。なお、(B)耐食膜は(A)アルミ基材の両面に設けられており、(C)バインダおよび(D)収着剤については(A)アルミ基材の片面側だけに設けられていてもよいし両面に設けられていてもよい。以下、伝熱フィンの各構成要素について順に説明する。
【0028】
(A)アルミ基材
本発明では、熱交換効率を上げるために、熱伝導性の良好な金属として、アルミ基材を用いている。このアルミ基材は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金が用いられる。
【0029】
(B)耐食膜
耐食膜は、アルミ基材に腐食が生じにくいように、アルミ基材の表面全体を覆うようにして設けられている。
【0030】
この耐食膜は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、および、フェノール樹脂からなる群より選ばれる一種の成分もしくはこれらの組み合わせによって構成されている。なかでも、本実施形態においては、バインダおよびアルミ基材との関係により、熱硬化性であるエポキシ樹脂が好ましい。
【0031】
また、アルミ基剤と耐食膜との合計の膜厚が90〜150μmである場合に、耐食膜の膜厚は、アルミ基材の腐食を十分に抑制するために1μm以上であることが好ましい。
【0032】
(C)バインダ
バインダは、耐食膜との付着力および収着剤との付着力を有しており、収着剤を耐食膜に対して密着させ、収着剤同士を密着させるものである。バインダは耐食膜の表面に直接付着するようにして、バインダと耐食膜との間に親水性皮膜等の他の層が介在しないように設けられていることが好ましい。
【0033】
このバインダは、収着剤において吸湿時および放湿時に生じる体積変化に追従できる程度の伸縮性を有している樹脂が好ましい。このようなバインダとしては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エチレンビニルアルコール(EVA)樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、および、熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる一種もしくはこれらの組み合わせによって構成されるものが挙げられる。なかでも、耐食膜との付着力および収着剤との付着力が良好であり、かつ、収着剤の体積変化に追従する程度に良好な伸縮性を有している点で、水性ウレタン樹脂(ウレタン樹脂エマルション)が特に好ましい。なお、水性ウレタン樹脂としては、ウレタン結合およびカルボキシル基等の極性基を有しているものが、密着性を良好にできる点で好ましい。
【0034】
バインダは、収着剤100重量部に対して、15〜35重量部の割合であることが好ましい。バインダの比率が多すぎると、収着剤の表面をバインダが覆いすぎてしまうことで、収着剤の機能を十分に発揮させることが困難になる。また、バインダの比率が少なすぎると、耐食膜と収着剤の間および収着剤間の付着力が低下し剥離しやすくなってしまう。
【0035】
(D)収着剤
本実施形態の収着剤は、空気中の水蒸気を吸湿することによって膨潤し、空気中へ水蒸気を放湿することで収縮する、吸放湿性の有機高分子である。この吸放湿性の有機高分子を用いることで、調湿装置の熱交換器の伝熱フィンとして用いられた場合における吸湿速度および放湿速度を良好なものとすることができる。
【0036】
この収着剤は、分子中に親水性の極性基を有しており、複数の高分子主鎖が互いに架橋されることで構成された三次元構造体であることが好ましい。この極性基は、吸湿性能が良好である点で、塩型カルボキシル基であることが好ましい。また、架橋による三次元構造体は、吸湿時における形状安定性を有する程度に架橋されているものが好ましい。
【0037】
このような収着剤が多くの水蒸気を収着するメカニズムとして以下のものが考え得られるが、本発明の収着剤は、このメカニズムのものに限定されない。
【0038】
すなわち、収着剤が吸湿する際には、分子中の親水基が周囲の水蒸気を吸着し、親水基と水蒸気が反応することで分子中にイオン化した基が生じる。このイオン化した基が、分子中において相互に静電反発することで、高分子主鎖が変形して、複数の高分子主鎖からなる三次元構造体が膨らむことで体積が増大する(膨潤する)。そして、水蒸気は、膨潤することで生じた高分子主鎖同士の隙間へ、毛細管力によって取り込まれた状態になる。このように、収着剤では、互いに架橋された複数の高分子主鎖からなる三次元構造体の表面付近に水蒸気が吸着される現象と、この三次元構造体の内部まで水蒸気が吸収される現象と、の両方が起こる。つまり、収着剤には、水蒸気が収着される。このため、収着剤には、表面に水蒸気を吸着するだけのゼオライト等の無機吸着剤に比べ、多量の水蒸気を捕捉することができる。また、収着剤は、水蒸気を放出(即ち、放湿)することによって収縮する。つまり、収着剤が放湿する際には、高分子主鎖同士の隙間に捕捉された水の量が減少してゆき、複数の高分子主鎖で構成された三次元構造体の形状が元に戻ってゆくため、収着剤の体積が減少する。なお、以上のように吸放湿が行われる際に、収着剤が水に溶け出すことはない。
【0039】
なお、収着剤として用いられる材料は、吸湿することによって膨潤して放湿することによって収縮するものであれば上述した材料に限定されず、例えば吸放湿性を有するイオン交換樹脂であってもよい。
【0040】
吸湿剤は、100℃未満の温度、特に40〜60℃程度の低温で放湿することができるものが、調湿装置としての用途において特に好ましい。
【0041】
収着剤は、バインダを介して耐食膜に担持される。なお、この収着剤の表面の一部が、耐食膜と接触していてもかまわない。
【0042】
収着剤は、吸湿時と放湿時における体積変化の程度をできるだけ小さくすることで剥離抑制効果が高いために、ポリアクリル系の樹脂であることが好ましく、体積変化の程度は吸湿時の体積が放湿時の体積の1.5倍〜3.0倍程度であることが好ましい。
【0043】
収着剤は、平均粒子径が、10〜200μmであることが好ましく、30〜100μmであることがより好ましい。ここで、アルミ基材に対して担持させる前の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置によって測定した粒度分布において、積算値が50%での粒径とする。なお、アルミ基材に対して担持させた後の平均粒子径は、電子顕微鏡を用いて評価した際の平均値とする。
【0044】
収着剤は、後述するように、バインダとともにスラリー状になって塗布されるが、耐食膜の上に形成される収着剤とバインダを含んだ層の平均膜厚は、フィンピッチが1.4mmの場合には100〜200μmであることが好ましく、フィンピッチが1.6mmの場合には200〜300μmであることが好ましい。ここでの膜厚の上限を超えてしまうと、最終的に熱交換器を構成した場合に、伝熱フィンの間を通過する空気流れに対する通風抵抗が増大してしまうし、層内部の収着剤が捕らえた水分を表層まで移動させるのに長時間要するため吸放湿の迅速性を良好にすることができなくなる。また、膜厚の下限を下回ってしまうと、水蒸気を収着する能力を十分に確保することが困難となる。
【0045】
なお、(C)バインダと(D)収着剤とは、アルコール系の溶剤を用いて(B)耐食膜に対して塗布することが好ましい。アルコール系の溶剤としては、例えば、エタノールおよびプロピルアルコールからなる群より選ばれる1種もしくはこれらの組み合わせから構成されていることが好ましい。なお、アルコール系の溶剤の混合重量比率は、(D)収着剤を100重量部とした場合に、150〜230重量部であることが好ましく、170重量部程度であることが特に好ましい。なお、この溶媒としてのアルコールは、例えば、日本アルコール販売株式会社製のソルミックス(登録商標)AP−7(組成:エタノール85.5wt%、ノルマルプロピルアルコール9.6wt%、イソプロピルアルコール4.9wt%、水0.2wt%)が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
上述した(A)アルミ基材の表面に(B)耐食膜としてのエポキシ樹脂の膜が形成されたものとして、住友軽金属工業株式会社製の高耐食表面処理フィン、CC121(商品名)を用意した。
【0048】
上述した(C)バインダとしては、第一工業製薬株式会社製の水性ウレタン樹脂である、スーパーフレックスE―2000(商品名)を用いた。
【0049】
上述した(D)収着剤としては、日本エクスラン工業株式会社製のタフチック(登録商標)HU−750P(商品名)を用いた。
【0050】
まず、(D)収着剤としてのタフチックHU−750Pを100重量部に対して、(C)バインダとしてのスーパーフレックスE―2000を20重量部の比率で混合した塗料を得た。なお、各物質に予め含まれている水以外には水は加えなかった。
【0051】
以上のようにして得られた塗料を、上述の住友軽金属工業株式会社製の高耐食表面処理フィンに対して塗布し、装置を用いて遠心力を作用させ余分な原料液を飛散させた後、乾燥させる処理(100℃以上にはしない)を繰り返すことで膜厚を上げていき、150μmの塗膜を形成した。このようにして、伝熱フィンを得た。
【0052】
(付着力の評価について)
<付着力評価のための本発明の実施例に対応するサンプル>
なお、上述の伝熱フィンのうち、(C)バインダと(B)耐食膜との界面の付着力を評価するために、本発明の実施例に対応するサンプルとして以下のものを用意した。
【0053】
すなわち、(A)アルミ基材の表面に(B)耐食膜としてのエポキシ樹脂の膜が形成された基材として、上記と同様の、住友軽金属工業株式会社製の高耐食表面処理フィン、CC121(商品名)を用意した。次いで、(C)バインダとしてのスーパーフレックスE―2000を塗布し、90℃の雰囲気下に5分間放置することで溶媒を気化させ、乾燥させたサンプルを得た。この際の(C)バインダの膜厚は、およそ5μmであった。
【0054】
このようにして得られたサンプルにおける(C)バインダと(B)耐食膜との界面の付着力を評価するために、日本工業規格のJIS−K5600−5−6に規定された付着力(クロスカット法)による試験を行った。試験は、得られたサンプルを600時間浸水させた直後の状態で行った。ここで、剥離率としては、クロスカット試験片のマス目を拡大鏡で観察し、各マス目の方形面積と剥離面積とを目測し、マス目全体である25(5×5)マスの面積に対する剥離面積の割合の平均値(%)を用いた。
【0055】
この本発明の実施例に対応するサンプルの評価結果としては、剥離率が0.0%であり、剥離は観察されなかった。
【0056】
<付着力評価のための参考例>
なお、本発明の実施例に対応するサンプルと比較するために、従来より、一般に用いられている親水性皮膜が形成された基材に対して、上記サンプルと同じバインダを塗布した参考例を得た。なお、参考例の親水性皮膜としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、および、これらの誘導体などを用いて構成されているものを想定した。
【0057】
すなわち、(A)アルミ基材および(B)耐食膜については本発明の実施例に対応するサンプルと同様であり、(B)耐食膜の上にさらに親水性皮膜が形成されている基材として、住友軽金属工業株式会社製の高耐食表面処理フィン、CC432(商品名)を2つ用意した。次いで、(C)バインダとしてのスーパーフレックスE―2000を基材それぞれに塗布した。そして、90℃の雰囲気下に5分間放置することで溶媒を気化させ、乾燥させた参考例1と、150℃の雰囲気下に30分間放置することで硬化を促進させ、親水性能を実質的に消滅させた参考例2と、をそれぞれ得た。この際の(C)バインダの膜厚は、参考例1および参考例2のいずれについても、およそ5μmであった。
【0058】
得られた参考例1および参考例2について、それぞれ、上記本発明の実施例に対応するサンプルと同様に、600時間浸水させた直後の状態で試験を行った。
【0059】
参考例1の剥離率は、92.3%であり、参考例2の剥離率は0.5%であった。
【0060】
なお、参考例1では、親水性皮膜が残存していると考えられるため、(C)バインダと親水性皮膜との界面の付着力が評価されているものと思われる。また、参考例2では、親水性皮膜を実質的に消滅させているため、(C)バインダと(B)耐食膜との界面の付着力が評価されているものと思われる。
【0061】
(検討)
以上の参考例1および参考例2との比較により、(C)バインダと(B)耐食膜との界面の付着力が良好であることが確認され、(C)バインダと(B)耐食膜との間に他の層を有していない本発明の実施例に対応するサンプルが剥離を良好に防止できることが確認された。また、本発明の実施例に対応するサンプルでは、参考例2に示すような150℃程度の高温での乾燥処理を行わなくても付着性を十分に確保することができるとともに、150℃程度の高温下に(B)耐食膜や(D)収着剤がさらされることで生じる変質を防止できている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2005−111425号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムもしくはアルミニウム合金により構成されたアルミ基材と、
前記アルミ基材の表面に設けられ、前記アルミ基材の腐食を抑制する耐食膜と、
吸放湿性を有する有機高分子である収着剤と、
前記収着剤と付着し、かつ、前記耐食膜とも付着するバインダと、
を備えた伝熱フィン。
【請求項2】
前記収着剤は、親水性の極性基を有し、かつ、架橋構造を有している、
請求項1に記載の伝熱フィン。
【請求項3】
前記収着剤は、ポリアクリル系の樹脂を主成分として含有している、
請求項2に記載の伝熱フィン。
【請求項4】
前記耐食膜は、エポキシ樹脂を主成分として含有しており、
前記バインダは、水性ウレタン樹脂を主成分として含有している、
請求項3に記載の伝熱フィン。
【請求項5】
前記収着剤100重量部に対して、前記バインダを15〜35重量部の割合で含有している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の伝熱フィン。
【請求項6】
前記収着剤と前記バインダによって構成される層の平均膜厚は、20〜300μmである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の伝熱フィン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の伝熱フィンを複数と、
前記伝熱フィンの板厚方向に貫通するようにして設けられた伝熱管と、
を備えた熱交換器。

【公開番号】特開2012−77987(P2012−77987A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222921(P2010−222921)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)