説明

伝送システム、給電装置、受電装置、及び伝送方法

【課題】位置関係の制約を緩和し、静電界を用いて効率よく電力を伝送すること。
【解決手段】交流信号を生成する交流信号生成部、誘導成分及び/または容量成分を有し、前記交流信号生成部により生成された前記交流信号を共振させる第1共振部、及び共振された前記交流信号を静電界における電位差として外部に放射する給電電極、を備える給電装置と、静電界における電位差を感知して電気信号を生成する受電電極、誘導成分及び/または容量成分を有し、前記受電電極により生成された前記電気信号を共振させる第2共振部、及び共振された前記電気信号を直流信号に変換して直流電力を生成する整流部、を備える受電装置と、を含む伝送システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送システム、給電装置、受電装置、及び伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触で電力を伝送するための技術として、磁界や電波を用いる技術が開発されてきた。こうした磁界や電波による電力伝送技術によれば、電線などを必要とすることなく電力を給電装置から受電装置へと伝送することができる。例えば、下記特許文献1では、電磁波を用いて伝送された電力を受電することのできる、非接触ICカードに適用可能な情報表示装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−21176号公報
【0004】
以下、図1及び図2を用いて、磁界または電波を用いて電力を伝送する手法について説明する。
【0005】
図1は、磁界を用いて電力を伝送するための伝送システム10の構成の一例を示している。図1を参照すると、伝送システム10は、交流信号生成部12、1次コイル14、2次コイル16、及び回路負荷18を含む。
【0006】
伝送システム10では、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいて起電力を生じさせることにより、1次コイル14から2次コイル16へと電力が伝送される。図1において、交流信号生成部12から1次コイル14へと交流信号を与えると、コイル内に時間的に変化する磁束φが生じる。この磁束を2次コイル16内に通過させることにより、磁束φの時間変化に相当する起電力Vを得ることができる。起電力Vは式(1)により与えられる。
【0007】
【数1】

(1)
【0008】
式(1)の起電力Vは、回路負荷18へ供給される。
【0009】
次に、図2は、電波を用いて電力を伝送するための伝送システム20の構成の一例を示している。図2(A)を参照すると、伝送システム20は、給電回路22、給電アンテナ24、受電アンテナ26、受電回路28を含む。また、受電回路28は、共振回路30、整流回路32、回路負荷34を備える。
【0010】
図2において、給電回路22の給電アンテナ24から放射電力Pで電波が空間へ放出される。給電アンテナ24から距離d[m]離れた受電アンテナ26の地点における電界E[V/m]は、次式で与えられる。
【0011】
【数2】

(2)
【0012】
ここで、kは給電アンテナ24及び受電アンテナ26の特性から定まる係数である。受電アンテナ26及び共振回路30は、図2(B)に示した等価回路で表すことができる。図2(B)におけるRは受電アンテナ26の放射抵抗、hは受電アンテナ26の実効高さを示す。受電回路28の有効電力Pは次式で与えられる。
【0013】
【数3】

(3)
【0014】
ここで、共振回路30と放射抵抗Rとのマッチングが取れているとすると、共振回路30に生じる電圧Vは次式で与えられる。
【0015】
【数4】

(4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、例えば磁界を用いて電力を伝送しようとする場合、コイルを通る磁束の大きさが起電力に直接的に影響するため、給電装置と受電装置との間の位置関係の制約を取り除くことが難しかった。また、例えば電波を用いて電力を伝送しようとする場合、アンテナを小型化するにつれて消費電力の高い高周波の電波を用いることが必要となるため、エネルギーの利用効率が低下していた。
【0017】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、位置関係の制約を緩和し、静電界を用いて効率よく電力を伝送することのできる、新規かつ改良された伝送システム、給電装置、受電装置、及び伝送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、交流信号を生成する交流信号生成部、誘導成分及び/または容量成分を有し、前記交流信号生成部により生成された前記交流信号を共振させる第1共振部、及び共振された前記交流信号を静電界における電位差として外部に放射する給電電極、を備える給電装置と、静電界における電位差を感知して電気信号を生成する受電電極、誘導成分及び/または容量成分を有し、前記受電電極により生成された前記電気信号を共振させる第2共振部、及び共振された前記電気信号を整流する整流部、を備える受電装置と、を含む伝送システムが提供される。
【0019】
かかる構成によれば、交流信号生成部は交流信号を生成し、給電装置の第1共振部と受電装置の第2共振部とにより形成される共振回路の誘導成分及び/または容量成分によって、生成された交流信号は共振される。共振された交流信号は、静電界における電位差として給電電極から放射され、受電電極によって静電界における電位差として感知される。そして、受電電極は感知した電位差から電気信号を生成し、生成された電気信号は整流部により整流される。
【0020】
また、前記受電装置は、前記整流部により前記電気信号が整流されて生じる電力の電力値を測定する電力測定部と、前記電力測定部により測定された前記電力値に基づいて前記第2共振部の誘導成分及び/または容量成分を制御する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0021】
また、前記制御部は、前記第2共振部の有するバリキャップ素子に印加される電圧を変化させることにより前記第2共振部の容量成分を制御してもよい。
【0022】
また、前記制御部は、コイルの内部を少なくとも部分的に貫通するように把持された制御材を制動することにより前記第2共振部の誘導成分を制御してもよい。
【0023】
また、前記給電装置は、前記給電装置から供給される電力の電力値を測定する電力測定部と、前記電力測定部により測定された前記電力値に基づいて前記第1共振部の誘導成分及び/または容量成分を制御する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0024】
また、前記制御部は、前記第1共振部の有するバリキャップ素子に印加される電圧を変化させることにより前記第1共振部の容量成分を制御してもよい。
【0025】
また、前記制御部は、コイルの内部を少なくとも部分的に貫通するように把持された制御材を制動することにより前記第1共振部の誘導成分を制御してもよい。
【0026】
また、前記給電装置は、前記給電装置から供給される電力の電力値を測定する電力測定部と、前記電力測定部により測定された前記電力値に基づいて前記交流信号生成部の生成する交流信号の角周波数を制御する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0027】
また、前記制御部は、前記電力測定部により測定された前記電力値が所定の閾値よりも小さい場合には前記交流信号生成部の生成する交流信号の出力を低下させてもよい。
【0028】
また、前記給電電極の大きさと前記受電電極の大きさとが異なってもよい。
【0029】
また、前記受電電極は、複数の電極を含み、前記受電装置は、前記複数の電極の中から指定された電極をそれぞれ選択可能な第1選択部及び第2選択部と、前記複数の電極からそれぞれ出力される電気信号の信号強度に基づいて、前記複数の電極を第1の集合と第2の集合とに分類し、前記第1選択部に前記第1の集合に属する電極を選択することを指定し、及び前記第2選択部に前記第2の集合に属する電極を選択することを指定する選択判定部と、をさらに備えてもよい。
【0030】
また、前記受電装置は、前記整流部により前記電気信号が整流されて生じる電力の電力値を測定する電力測定部と、前記電力測定部により測定された前記電力値を前記受電電極を介して無線信号により送信する第1通信部と、をさらに備え、前記給電装置は、前記受電装置から送信された前記電力値を前記給電電極を介して受信する第2通信部と、前記第2通信部により受信された前記電力値に基づいて前記交流信号生成部の生成する交流信号の角周波数を制御する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0031】
また、前記受電装置は、前記受電電極を介して前記給電装置との間で無線通信を行う第1通信部と、前記第1通信部に接続された2次電源部と、前記整流部により前記電気信号が整流されて生じる電力の電力値を測定する電力測定部と、前記電力測定部により測定された前記電力値が所定の閾値よりも大きい場合には、前記整流部から前記第1通信部へ電力を供給させ、前記電力測定部により測定された前記電力値が所定の閾値よりも小さい場合には、前記2次電源部から前記第1通信部へ電力を供給させる電源選択部と、をさらに備えてもよい。
【0032】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、交流信号を生成する交流信号生成部と、誘導成分及び/または容量成分を有し、前記交流信号生成部により生成された前記交流信号を共振させる共振部と、共振された前記交流信号を静電界における電位差として外部に放射する給電電極と、を備える給電装置が提供される。
【0033】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、静電界における電位差を感知して電気信号を生成する受電電極と、誘導成分及び/または容量成分を有し、前記受電電極により生成された前記電気信号を共振させる共振部と、共振された前記電気信号を整流する整流部と、を備える受電装置が提供される。
【0034】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、交流信号を生成するステップと、給電装置の共振部と受電装置の共振部とにより形成される共振回路の誘導成分及び/または容量成分によって、生成された前記交流信号を共振させるステップと、共振された前記交流信号を静電界における電位差として前記給電装置から放射するステップと、前記受電装置において静電界における電位差を感知して電気信号を生成するステップと、生成された前記電気信号を整流するステップと、を含む伝送方法が提供される。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明に係る伝送システム、給電装置、受電装置、及び伝送方法によれば、位置関係の制約を緩和し、静電界を用いて効率よく電力を伝送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0037】
〔1〕関連技術における技術的な課題
まず、磁界または電波を用いて電力を伝送する関連技術における技術的な課題について、図3〜図5を用いてあらためて説明する。
【0038】
図3は、図1に示した伝送システム10において、1次コイル14の中心位置と2次コイル16の中心位置がずれた様子を示している。
【0039】
図3において、交流信号生成部12から1次コイル14へと供給された交流信号によって生じた磁束φ及び磁束φは、2次コイル16上の微小長dlから見ると、2つのコイルがずれたことにより、互いに打ち消しあう方向を向いている。そのため、図3の状況において、2次コイル16上の微小長dlに起電力は発生しない。
【0040】
そのため、磁界を用いて電力を伝送する磁界方式の場合には、給電装置と受電装置を位置関係の制約を満たすように最適に配置して利用することが求められる。
【0041】
また、磁束方式の場合、図4に示したように、給電側の1次コイル14の近傍に導体40をおいたとき、1次コイル14が発する磁界φによって導体内に渦電流42が生じる。そして、1次コイル14の発する磁界φが強い場合には、渦電流42による発熱が利用者へ火傷などの危険性をもたらす可能性もある。
【0042】
加えて、図1及び図3ではコイルを構成するための導線の巻き数を1巻きとして示しているが、実際には十分な起電力を得るために多数の巻き数を必要とし、一定のコストを要する。
【0043】
図5は、図2に示した伝送システム20における給電アンテナ24及び受電アンテナ26を、半波長ダイポールアンテナ44として構成した様子を示す模式図である。
【0044】
電波を用いて電力を伝送する電波方式の場合には、アンテナの効率性と搬送波の周波数との間の関係が課題となる。アンテナから効率よく電波を放射し、または放射された電波を効率よく受け取るためには、アンテナ上に定在波を形成するために、搬送波の周波数λに対してアンテナ長Lをλ/2とする必要がある。
【0045】
そこで、昨今の電子機器の小型化を考慮し、例えばアンテナ長L=λ/2=5[cm]とすると、共振周波数fは次式により導かれる。
【0046】
【数5】

(5)
【0047】
即ち、5[cm]程度のアンテナの場合、共振により効率よくアンテナを機能させるためには3[GHz]もの高い周波数を搬送波として使用しなければならず、従って回路の消費電力は高くなり、エネルギーの利用効率は低下する。また、高周波回路の設計は一般的に周波数が高いほどより困難となり、実機を用いた回路の調整も必要となる。
【0048】
このように、磁界または電波を用いて電力を伝送する関連技術にはいくつかの課題があるのに対し、以下に説明する本発明の一実施形態に係る静電界を用いた手法によれば、より効率的に電力を伝送することができる。
【0049】
〔2〕静電界を用いた電力伝送の基本的な原理
まず、図6〜図10を用いて、静電界を用いた電力伝送の基本的な原理について説明する。これらの説明は、後述する本発明の第1〜第6の実施形態の前提となる。
【0050】
図6は、静電界を用いて電力を伝送する伝送システム50の基本的な構成の一例を示すブロック図である。
【0051】
図6を参照すると、伝送システム50は、給電装置52及び受電装置54を含む。また、給電装置52は、交流信号生成部60、共振部62、第1の給電電極64、及び第2の給電電極66を備える。受電装置54は、第1の受電電極80、第2の受電電極82、共振部84、整流部86、及び回路負荷88を備える。
【0052】
給電装置52において、交流信号生成部60は、共振部62と接続される。また、共振部62は、並列的に配置された第1の給電電極64及び第2の給電電極66と接続される。
【0053】
交流信号生成部60は、伝送される電力源となる交流信号を生成し、共振部62へ送出する。共振部62は、送出された交流信号を第1の給電電極64及び第2の給電電極66へ中継する。そして、第1の給電電極64及び第2の給電電極66は、当該交流信号を静電界における電位差として外部へ放射する。
【0054】
受電装置54において、第1の受電電極80及び第2の受電電極82は、共振部84とそれぞれ接続される。共振部84は、整流部86と接続される。また、整流部86は、回路負荷88と接続される。
【0055】
なお、図6では、第1の受電電極80は第1の給電電極64と、第2の受電電極82は第2の給電電極66とそれぞれ対向するように配置されているが、後述する本発明の各実施形態において、各電極は厳密に対向するように配置されなくてもよい。
【0056】
第1の受電電極80及び第2の受電電極82は、静電界における電位差を感知して電気信号を生成し、生成した電気信号を共振部84へ出力する。共振部84は、第1の受電電極80及び第2の受電電極82から出力された電気信号を整流部86へ中継する。そして、整流部86は、中継された電気信号を直流信号に変換して直流電力を生成し、生成した直流電力を回路負荷88に供給する。
【0057】
図6に示した伝送システム50において、給電装置52の共振部62及び受電装置54の共振部84は、システム全体として共振条件を充足するように構成される。伝送システム50における共振については後により詳しく説明する。
【0058】
ここで、給電電極及び受電電極は、典型的には、それぞれ導電性を有する物質により形成される。具体的には、例えば銅、金、銀などの導体やそれらの化合物を、各電極に用いることができる。そうした導電性を有する電極を互いに静電結合が生じる位置に配置すると、電極間に静電容量が生じる。
【0059】
図7は、平板の形状をした導体を用いた2つの電極90、92が静電結合する様子を示している。図7において、2つの電極90、92の表面積をS[m]、電極間の距離をd[m]とすると、電極間に生じる静電容量C[F]は次式により与えられる。
【0060】
【数6】

(6)
【0061】
ここで、εは真空中の誘電率であり、ε=8.854×10−12[F/m]である。また、εは電極間の比誘電率であり、例えば空気中ではε=1と考えてよい。
【0062】
図6に示した共振部62及び共振部84として直列共振回路を想定すると、伝送システム50を図8に示した等価回路に置き換えることができる。
【0063】
図8を参照すると、共振部62は、誘導素子Lt1及び容量素子Ct1を有する。共振部84は、誘導素子Lr1及び容量素子Cr1を有する。また、第1の給電電極64は第1の受電電極80との間で静電容量Ce1を、第2の給電電極66は第2の受電電極82との間で静電容量Ce2を有する。
【0064】
整流部86は、整流素子としてのダイオードD〜D、及び容量素子Cを有する。共振部84から出力される交流電流は、ダイオードD〜Dが形成するダイオードブリッジによって脈流に変換され、容量素子Cによって平滑化されて直流電力を生じ、回路負荷88に供給される。
【0065】
図8に示した伝送システム50の等価回路に着目すると、系全体を誘導素子及び容量素子からなる直列共振回路と考えることができる。即ち、誘導素子Lt1及びLr1を合成した合成誘導素子L、容量素子Ct1、Cr1、Ce1及びCe2を合成した合成容量素子C、並びに整流部86及び回路負荷88を負荷成分Rとすると、伝送システム50の等価回路は、さらに図9のように簡略化される。
【0066】
図9の回路全体のインピーダンスは次式で与えられる。
【0067】
【数7】

(7)
【0068】
上式より、インピーダンスZの大きさは次式のように導かれる。
【0069】
【数8】

(8)
【0070】
式(8)に示したインピーダンスZの大きさ|Z|を最小とするω=ωを求めると、ωは次式のように導かれる。
【0071】
【数9】

(9)
【0072】
ω=ωのとき、回路に流れる電流|I|は、最大値|I|maxとなる。交流信号生成部60の電圧をVとすると、|I|maxは次式で与えられる。
【0073】
【数10】

(10)
【0074】
角周波数に着目すると、角周波数ωの関数としての回路に流れる電流|I(ω)|は、図10のグラフに表した特性を示す。
【0075】
図10から理解されるように、|I(ω)|はω=ωにおいて最大値を示し、このとき回路は共振状態となる。そして、合成誘導素子Lの両端電圧をV、合成容量素子Cの両端電圧をVとすると、共振状態においては次式が成立し、回路が純抵抗Rに見える。
【0076】
【数11】

(11)
【0077】
また、図9の回路のQ値、即ち共振の強さの程度は次式により表される。
【0078】
【数12】

(12)
【0079】
よって、交流信号生成部60の角周波数ω=ωであるとき、式(12)に基づいて合成誘導素子Lまたは合成容量素子Cを制御することにより、回路負荷88に最大の電力を供給することができる。
【0080】
〔3〕第1の実施形態
以下、図11〜図14を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る伝送システム100について説明する。第1の実施形態に係る伝送システム100では、受電装置の有する誘導素子または容量素子を制御することにより供給電力の最大化を図る。
【0081】
図11は、第1の実施形態に係る伝送システム100の有する機能を概念的に示したブロック図である。図11を参照すると、伝送システム100は、交流信号生成部60、可変誘導素子L、可変容量素子C、負荷成分R、電力測定部120、及びインピーダンス制御部130を含む。
【0082】
伝送システム100において、交流信号生成部60、可変誘導素子L、可変容量素子C、及び負荷成分Rは、図8に示した伝送システム50の等価回路と同様の直列共振回路を形成する。また、電力測定部120は、負荷成分Rの両端に接続される。そして、電力測定部120は、負荷成分Rの両端電圧を検出して負荷成分Rに現在供給されている電力値を測定し、測定した電力値をインピーダンス制御部130へ出力する。
【0083】
インピーダンス制御部130は、電力測定部120と接続される。インピーダンス制御部130は、電力測定部120から出力される電力値が最大となるように、伝送システム100の誘導成分である可変誘導素子L、または容量成分である可変容量素子Cのいずれか一方または両方を制御する。
【0084】
可変容量素子Cとしては、例えばバリキャップ素子を用いることができる。バリキャップ素子とは、入出力端子間に印加する電圧に応じて静電容量が変化するダイオードの一種である。図12は、バリキャップ素子の回路記号(図12(A))と特性曲線(図12(B))を示している。
【0085】
バリキャップ素子の静電容量は、アノード側の端子Aよりも高い逆バイアス電圧をカソード側の端子Kに印加することで、印加された逆バイアス電圧に応じて図12(B)の特性曲線のように変化する。こうしたバリキャップ素子を可変容量素子Cに使用し、バリキャップ素子の両端電圧をインピーダンス制御部130によって制御することで、例えば式(12)に示した回路の共振条件を満たすことができる。
【0086】
また、可変誘導素子Lとしては、例えば図13に示す構成を用いることができる。図13を参照すると、可変誘導素子Lは、コイル134、アクチュエータ136、及び、コイル134の内部を少なくとも部分的に貫通するようにアクチュエータ136によって把持され左右に制動可能な制御材138を有する。制御材138は、例えば鉄やフェライトなど、透磁率の高い材料を用いて構成され得る。
【0087】
コイル134のインダクタンスLは、コイル134内を錯交する磁束の量によって変化する。コイル134の内側の半径及び制御材138の半径を共にr[m]と仮定すると、コイル134のインダクタンスLは次式で与えられる。
【0088】
【数13】

(13)
【0089】
ここで、μは真空の透磁率、μは制御材138の比透磁率、nは制御材138の周囲に巻かれているコイルの巻き数である。
【0090】
このような可変誘導素子Lの構成において、例えばインピーダンス制御部130から出力される制御信号を受け取ったアクチュエータ136が制御材138を左右に動かすことにより、コイル134のインダクタンスを変化させることができる。
【0091】
なお、可変容量素子Cまたは可変誘導素子Lの構成は、図12または図13に示した例に限定されない。可変容量素子Cとしては、例えば電極間の距離を変化させて静電容量を制御する可変容量素子を用いてもよい。また、可変誘導素子Lとしては、例えば複数のコイルの結合係数を変化させる可変誘導素子を用いてもよい。
【0092】
前述の図11の説明では、伝送システム100の動作原理を説明するために、給電装置と受電装置とを等価的な直列共振回路に置き換えて説明した。しかしながら、実際には、伝送システム100は、給電装置と受電装置に分けて構成される。
【0093】
図14は、伝送システム100の実質的な構成の一例を示すブロック図である。図14を参照すると、伝送システム100は、給電装置152及び受電装置154を含む。
【0094】
給電装置152は、図6に示した伝送システム50の給電装置52と同様に構成される。
【0095】
受電装置154は、第1の受電電極80、第2の受電電極82、共振部184、整流部86、回路負荷88、電力測定部120、及びインピーダンス制御部130を備える。また、共振部184は、可変容量素子Cv1及び可変誘導素子Lv1を有する。
【0096】
受電装置154において、電力測定部120は、回路負荷88の両端電圧を検出して回路負荷88に現在供給されている電力値を測定し、測定した電力値をインピーダンス制御部130へ出力する。
【0097】
インピーダンス制御部130は、電力測定部120から出力される電力値に基づいて、例えばバリキャップ素子を用いた可変容量素子Cv1の両端電圧、または可変誘導素子Lv1のインダクタンスを制御し、供給されている電力値を最大化させる。
【0098】
なお、図14ではインピーダンス制御部130がCv1及びLv1を制御するように説明したが、Cv1及びLv1のいずれか一方を固定値とし、他方のみをインピーダンス制御部130によって制御してもよい。また、図14に示した伝送システム100の構成例において、給電装置152の誘導素子Lt1及び容量素子Ct1は省略されてもよい。
【0099】
また、図14では受電装置154の共振部184の有する容量素子と誘導素子とを制御する例について説明した。しかしながら、その代わりに受電装置154の共振部184の有する容量成分と誘導成分とを固定値とし、給電装置152の有する容量成分と誘導成分とを供給電力値に基づいて制御するように伝送システム100を構成してもよい。
【0100】
ここまで、図11〜図14を用いて、本発明の第1の実施形態について説明を行った。第1の実施形態に係る伝送システム100によれば、給電装置152の交流信号生成部60は交流信号を生成し、生成された交流信号は、第1の給電電極64及び第2の給電電極66から静電界における電位差として外部に放射される。そして、受電装置154の第1の受電電極80及び第2の受電電極82は、静電界における電位差を感知して電気信号を生成する。そして、整流部86は、生成された電気信号を整流して直流電力を生成し、回路負荷88へ供給する。
【0101】
このとき、第1の共振部(給電装置152の共振部62)及び第2の共振部(受電装置154の共振部184)の有する誘導成分と容量成分によって、給電装置152から受電装置154へ伝送される交流信号は共振する。かかる構成により、給電装置152から受電装置154へ、静電界を用いて効率よく電力が伝送される。
【0102】
また、受電装置154は、整流部86から回路負荷88へ供給されている電力値を測定する電力測定部120と、電力測定部120により測定された電力値に基づいて共振部184の誘導成分及び/または容量成分を制御するインピーダンス制御部130とをさらに備えてもよい。かかる構成により、給電装置152と受電装置154の間の共振の程度を制御し、回路負荷88へ供給される電力の最大化を図ることができる。
【0103】
〔4〕第2の実施形態
次に、図15及び図16を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る伝送システム200について説明する。本実施形態に係る伝送システム200では、給電装置において生成される交流信号の角周波数を制御することにより供給電力の最大化を図る。
【0104】
図15は、第2の実施形態に係る伝送システム200の有する機能を概念的に示したブロック図である。図15を参照すると、伝送システム200は、誘導素子L、容量素子C、負荷成分R、電力測定部220、インピーダンス制御部230、及び交流信号生成部260を含む。
【0105】
伝送システム200において、誘導素子L、容量素子C、負荷成分R、及び交流信号生成部260は、図8に示した伝送システム50の等価回路と同様に直列共振回路を形成する。また、電力測定部220は、負荷成分Rの両端に接続される。そして、電力測定部220は、負荷成分Rの両端電圧を検出して現在供給されている電力値を測定し、測定した電力値をインピーダンス制御部230へ出力する。
【0106】
インピーダンス制御部230は、電力測定部220から出力される電力値が最大となるように、交流信号生成部260によって生成される交流信号の角周波数ωを制御する。
【0107】
図15では、伝送システム200の動作原理を説明するために、給電装置と受電装置とを等価的な直列共振回路に置き換えて説明した。しかしながら、実際には、伝送システム200は、給電装置と受電装置に分けて構成される。
【0108】
図16は、伝送システム200の実質的な構成の一例を示すブロック図である。図16を参照すると、伝送システム200は、給電装置252及び受電装置254を含む。
【0109】
受電装置254は、図6に示した伝送システム50の受電装置54と同様に構成される。なお、受電装置254の誘導素子Lr1及び容量素子Cr1は省略されてもよい。
【0110】
給電装置252は、共振部62、第1の給電電極64、第2の給電電極66、電力測定部220、インピーダンス制御部230、及び交流信号生成部260を備える。また、共振部62は、容量素子Ct1及び誘導素子Lt1を有する。
【0111】
電力測定部220は、給電装置252から供給されている電力値を測定し、測定された電力値をインピーダンス制御部230へ出力する。
【0112】
インピーダンス制御部230は、電力測定部220から出力される電力値に基づいて、例えば図10に示した電流|I(ω)|を最大化させるように、交流信号生成部260の生成する交流信号の角周波数ωを制御する。
【0113】
なお、本実施形態において、給電装置252に対向する受電装置254が存在しない場合、第1の給電電極64及び第2の給電電極66から見える負荷が極めて小さくなり、電力測定部220によって検出される電力値はほぼゼロに等しくなる。そこで、例えば電力測定部220により測定された電力値が予め決定された所定の閾値よりも小さい場合には、交流信号生成部260の生成する交流信号の動作電力を必要最低限の電力に抑制してもよい。そうすることにより、伝送システム200の省電力化を図ることができる。
【0114】
ここまで、図15及び図16を用いて、本発明の第2の実施形態について説明を行った。第2の実施形態に係る伝送システム200によれば、給電装置252の交流信号生成部260は交流信号を生成し、生成された交流信号は、第1の給電電極64及び第2の給電電極66から静電界における電位差として外部に放射される。そして、受電装置254の第1の受電電極80及び第2の受電電極82は、静電界における電位差を感知して電気信号を生成する。また、整流部86は、生成された電気信号を直流信号に変換して直流電力を生成し、回路負荷88へ供給する。
【0115】
このとき、第1の共振部(給電装置252の共振部62)及び第2の共振部(受電装置254の共振部84)の有する誘導成分と容量成分によって、給電装置252から受電装置254へ伝送される交流信号は共振する。かかる構成により、給電装置252から受電装置254へ、静電界を用いて効率よく電力が伝送される。
【0116】
また、給電装置252は、交流信号生成部260の生成する交流信号の電力値を測定する電力測定部220、及び、電力測定部220により測定された電力値に基づいて交流信号生成部260の生成する交流信号の角周波数ωを制御するインピーダンス制御部230を、さらに備える。かかる構成により、給電装置252と受電装置254の間の共振の程度を制御し、受電装置254の回路負荷88へ供給される電力の最大化を図ることができる。
【0117】
なお、第1及び第2の実施形態に係る伝送システム100、200(並びに後述する他の実施形態に係る伝送システム)において、給電/受電電極の大きさ及び位置関係は、前述の共振条件を満たしている限り、自由に設定され得る。即ち、図14または図16に示した静電容量Ce1または静電容量Ce2を形成する電極の大きさは、例えば相互に非対称であってもよく、または一方が他方よりも大きくてもよい。
【0118】
図3を用いて説明したように、磁界を用いて電力を伝送するシステムでは、磁束とその向きが正しい状態で1次コイル及び2次コイルを通過する必要があり、そうした位置ずれを許容しない位置関係の制約がシステムの使い勝手を阻害する要因となっていた。
【0119】
図17は、図14または図16に示した静電容量Ce1を形成する第1の給電電極64及び第1の受電電極80、並びに静電容量Ce2を形成する第2の給電電極66及び第2の受電電極82の位置関係について概念的に示した模式図である。
【0120】
図17(A)において、静電容量Ce1を形成する第1の給電電極64と第1の受電電極80とは、互いに四隅が重なるように配置されている。静電容量Ce2を形成する第2の給電電極66と第2の受電電極82もまた、互いに四隅が重なるように配置されている。
【0121】
これに対し、図17(B)では、第1の給電電極64及び第2の給電電極66が左方向に移動した結果、対向する面積が減少している(網掛け部参照)。このとき、静電容量Ce1及びCe2は、対向する電極の面積に比例して低下する。しかしながら、ここまでに説明した第1または第2の実施形態に従って伝送システム内の共振状態を維持することにより、位置ずれが生じても効率的に電力を供給することができる。
【0122】
〔5〕第3の実施形態
次に、本発明の第3の実施形態として、静電界を用いて電力を伝送するシステムの位置ずれに対する耐性をさらに向上させる伝送システム300について説明する。
【0123】
本発明の第3の実施形態に係る伝送システム300は、図18に示す給電装置352、及び図19に示す受電装置354を含む。
【0124】
図18は、給電装置352の構成の一例を示すブロック図である。図18を参照すると、給電装置352は、交流信号生成部60、共振部62、第1の給電電極364、及び第2の給電電極366を備える。
【0125】
前述したように、交流信号生成部60は、伝送される電力源となる交流信号を生成し、共振部62へ送出する。共振部62は、送出された交流信号を第1の給電電極364及び第2の給電電極366へ中継する。そして、第1の給電電極364及び第2の給電電極366は、当該交流信号を静電界における電位差として外部へ放射する。
【0126】
図19は、受電装置354の構成の一例を示すブロック図である。図19を参照すると、受電装置354は、複数の受電電極340、第1選択部342、第2選択部344、選択判定部346、共振部184、整流部86、回路負荷88、電力測定部120、及びインピーダンス制御部130を備える。また、本実施形態において、受電電極340は、一例として16個の受電電極ER1〜ER16を有する。
【0127】
受電電極ER1〜ER16は、静電界における電位差を感知して電気信号を生成し、生成した電気信号を第1選択部342及び第2選択部344へ出力する。第1選択部342及び第2選択部344は、後述する選択判定部346から選択信号を受け取って指定された電極を選択し、選択した電極から入力される電気信号を選択判定部346を介して共振部184へ出力する。
【0128】
選択判定部346は、以下に説明するように、受電電極ER1〜ER16から出力される電気信号の信号強度に基づいて、受電電極ER1〜ER16を第1の集合と第2の集合とに分類する。そして、選択判定部346は、第1の集合に属する電極の選択を指定する選択信号を第1選択部342へ出力し、及び第2の集合に属する電極の選択を指定する選択信号を第2選択部344へ出力する。
【0129】
例えば、図20に示したように、給電装置352の第1及び第2の給電電極364、366と受電装置354の受電電極ER1〜ER16とが重なっている場合を想定する。この場合、受電電極ER1〜ER8は、第1の給電電極364から放射された電位を感知する。また、受電電極ER9〜ER16は、第2の給電電極366から放射された電位を感知する。このとき、例えば受電電極ER1の電位を基準電位とすると、受電電極ER2〜ER8の電位は基準電位に等しいため、受電電極ER2〜ER8からは電気信号が出力されない。一方、ER9〜ER16の電位は第1の給電電極364と第2の給電電極366の電位差に相当し、ER9〜ER16から当該電位差に応じた電気信号が出力される。
【0130】
選択判定部346は、かかる電気信号を検知し、受電電極ER1〜ER16のうち受電電極ER1〜ER8を第1の集合、受電電極ER9〜ER16を第2の集合として分類する。そして、選択判定部346は、第1選択部342へ第1の集合に属する受電電極ER1〜ER8の選択を指定し、及び第2選択部344へ第2の集合に属する受電電極ER9〜ER16の選択を指定する。
【0131】
また、図20とは異なる例として、例えば図21に示したように、給電装置352の第1及び第2の給電電極364、366と受電装置354の受電電極ER1〜ER16とが重なっている場合を想定する。このとき、例えば受電電極ER2の電位を基準電位とすると、ER2と同様に第1の給電電極364から放射された電位を感知する受電電極ER3、ER4、ER7、ER8及びER12からは、電気信号が出力されない。また、第1の給電電極364と第2の給電電極366の中間位置に重なる受電電極ER6、ER11及びER16、並びに第1の給電電極364または第2の給電電極366に重なる位置から外れた受電電極ER1及びER13からは、弱い電気信号が出力される。また、第2の給電電極366から放射された電位を感知する受電電極ER5、ER9、ER10、ER14及びER15からは、強い電気信号が出力される。
【0132】
選択判定部346は、かかる電気信号を検知し、受電電極ER2、ER3、ER4、ER7、ER8及びER12を第1の集合、受電電極ER5、ER9、ER10、ER14及びER15を第2の集合として分類する。そして、選択判定部346は、第1選択部342へ第1の集合に属する受電電極ER2、ER3、ER4、ER7、ER8及びER12の選択を指定し、並びに第2選択部344へ第2の集合に属する受電電極ER5、ER9、ER10、ER14及びER15の選択を指定する。
【0133】
図19の説明に戻ると、受電装置354の共振部184は、このように分類された第1の集合と第2の集合にそれぞれ属する受電電極ER1〜ER16から入力された電気信号を、共振部184の有する誘導成分及び/または容量成分によって共振させる。そして、共振部184による共振は、前述の第1の実施形態に関連して説明した手法に従い、電力測定部120及びインピーダンス制御部130によって制御される。
【0134】
ここまで、図17〜図21を用いて、本発明の第3の実施形態について説明を行った。第3の実施形態に係る伝送システム300によれば、給電装置352と受電装置354の位置関係にずれが生じても、給電装置352の2つの給電電極間の電位差が、受電装置354の共振部184に鈍化することなく伝えられ、共振状態において効率よく電力を供給することができる。
【0135】
〔6〕第4の実施形態
ここまでに説明した第1〜第3の実施形態においては、給電電極及び受電電極を共に2枚以上備える例について説明を行った。しかしながら、対向する1対の給電電極及び受電電極によって静電界を用いて電力を伝送することも可能である。その場合、導電体とその導電体が設置された空間との間に形成される静電容量が、共振に寄与する。
【0136】
図22は、対向する1対の給電電極及び受電電極によって電力を伝送する、本発明の第4の実施形態に係る伝送システム400の構成を示すブロック図である。
【0137】
図22を参照すると、伝送システム400は、給電装置452及び受電装置454を含む。また、給電装置452は、交流信号生成部60、共振部62、給電電極464、及び導電体466を備える。受電装置454は、受電電極480、導電体482、共振部84、整流部86、及び回路負荷88を備える。
【0138】
伝送システム400において、給電装置452の給電電極464は受電装置454の受電電極480と静電結合し、静電容量Cを形成する。一方、給電装置452の導電体466と受電装置454の導電体482は互いに離れた位置にあるため、強く静電結合しない。その代わりに、給電装置452の導電体466は、空間と静電結合し、静電容量Cを形成する。同様に、受電装置454の導電体482もまた、空間と静電結合し、静電容量Cを形成する。よって、空間という仮想的な共通点を介して、給電電極464→受電電極480→共振部84→導電体482→導電体466→共振部62→給電電極464という共振回路としての閉回路が形成される。それにより、給電装置452から受電装置454へ、静電界を用いて効率よく電力が伝送される。
【0139】
なお、図22を用いて説明した第4の実施形態を、例えば前述の第1の実施形態に係る誘導成分及び/または容量成分の制御、または前述の第2の実施形態に係る交流信号の角周波数の制御と組み合わせてもよい。
【0140】
〔7〕第5の実施形態
ここまでに説明した第1〜第4の実施形態においては、給電装置から受電装置へ電力のみを伝送する例について説明を行った。しかしながら、電力の伝送に用いられる周波数とは異なる周波数を利用して、給電装置と受電装置との間でさらに無線通信を行うことも可能である。かかる無線通信により、例えば第2の実施形態において説明した給電装置における角周波数の制御を、受電装置にて測定した情報に基づいて行うことができる。
【0141】
図23は、本発明の第5の実施形態に係る伝送システム500の構成を示すブロック図である。
【0142】
図23を参照すると、伝送システム500は、給電装置552及び受電装置554を含む。また、給電装置552は、交流信号生成部560、共振部62、第1の給電電極64、第2の給電電極66、第2通信部592、及び角周波数制御部530を備える。受電装置554は、第1の受電電極80、第2の受電電極82、共振部84、整流部86、電力測定部520、回路負荷88、及び第1通信部590を備える。
【0143】
受電装置554において、電力測定部520は、整流部86と回路負荷88との間に接続される。そして、電力測定部520は、回路負荷88の両端電圧を検出して現在供給されている電力値を測定し、測定した電力値を第1通信部590へ出力する。
【0144】
第1通信部590は、電力測定部520から出力された電力値を、第2の受電電極82を介して無線信号として給電装置552へ送信する。即ち、本実施形態において、第2の受電電極82では、給電装置552から伝送される電力と給電装置552へ送信される無線信号が重畳される。このとき、無線信号が電力伝送に影響を与えないために、給電装置552へ送信される無線信号の周波数Fを給電装置552から伝送される交流信号の周波数Fよりも十分に高い周波数とし、且つ無線信号の電力レベルを十分小さく設定することが好適である。
【0145】
給電装置552において、第2通信部592は、受電装置554から送信された無線信号を第2の給電電極66を介して受信する。第2通信部592は、例えば前述の周波数Fの周辺の周波数の信号のみを通過させる帯域通過フィルタを用いて、受電装置554から送信された無線信号のみを抽出することができる。そして、第2通信部592は、受電装置554の電力測定部520によって測定された前述の電力値を取得し、取得した電力値を角周波数制御部530へ出力する。
【0146】
角周波数制御部530は、第2通信部592から出力される電力値に基づいて、第2の実施形態に係るインピーダンス制御部230と同様、例えば当該電力値が最大となるように交流信号生成部560によって生成される交流信号の角周波数ωを制御する。
【0147】
また、角周波数制御部530は、第2通信部592から出力される電力値に基づいて、受電装置554の回路負荷88が動作するための必要最小限の電力のみが供給されるように、交流信号生成部560によって生成される交流信号の角周波数ωを制御してもよい。それにより、余剰の電力を生成または伝送することなく、効率的に電力が伝送される。
【0148】
なお、第1通信部590と第2通信部592との間で送受信される無線信号としては、例えば位相偏移変調、振幅偏移変調、直交振幅変調などの任意の変調方式に従って変調された無線信号を用いることができる。また、第1通信部590と第2通信部592との間の無線通信は、IEEE802.11a、b、g、nなどの任意の無線通信の標準規格を用いて行われる。
【0149】
〔8〕第6の実施形態
第5の実施形態においては、給電装置と受電装置が共に電力伝送と無線通信の両方に対応した例について説明を行った。これに対し、例えば受電装置に補助的な電源を備えて、給電装置が電力伝送の仕組みを有していない場合にも動作可能な受電装置を実現してもよい。
【0150】
図24〜図26は、本発明の第6の実施形態に係る伝送システム600の構成の一例を示すブロック図である。
【0151】
図24を参照すると、伝送システム600は、給電装置652及び受電装置654を含む。また、給電装置652は、交流信号生成部60、共振部62、第1の給電電極64、第2の給電電極66、及び第2通信部692を備える。受電装置654は、第1の受電電極80、第2の受電電極82、共振部84、整流部86、電力測定部620、回路負荷88、第1通信部690、電源選択部694、及び2次電源部696を備える。
【0152】
伝送システム600において、受電装置654の第1通信部690と送電装置652の第2通信部692は、第5の実施形態に係る第1通信部590及び第2通信部592と同様、第2の受電電極82及び第2の給電電極66を介して無線通信を行う。
【0153】
電力測定部620は、回路負荷88の両端電圧を検出して現在供給されている電力値を測定し、測定した電力値を電源選択部694へ出力する。
【0154】
電源選択部694は、整流部86と2次電源部696に接続され、電力測定部620から出力された電力値に基づいて、整流部86または2次電源部696のいずれかから出力される電力を第1通信部690へ供給させる。例えば、電源選択部694は、電力測定部620により測定された電力値が所定の閾値よりも大きい場合には、整流部86により生成された直流電力を第1通信部690へ供給させる。また、電源選択部694は、電力測定部620により測定された電力値が所定の閾値よりも小さい場合には、2次電源部696から第1通信部690へ電力を供給させる。
【0155】
2次電源部696は、電源選択部694に接続される。2次電源部696からの電力は、電源選択部694による選択に応じて、第1通信部60へ供給される。2次電源部696は、例えば商用電源に接続される電源装置またはAC(Alternating Current)アダプタ、蓄電池や乾電池などの電池などであってもよい。
【0156】
一方、図25を参照すると、伝送システム600は、図24に示した給電装置652の代わりに、通信装置653を含む。通信装置653は、通信電極667と第2通信部692を含む。
【0157】
図25において、受電装置654の第1通信部690と通信装置653の第2通信部692は、第2の受電電極82及び通信電極667を介して無線通信を行う。
【0158】
また、図26を参照すると、図25に示した通信装置653と受電装置654との間に媒体665が介在している。媒体665は、例えば人体のほか、銅、鉄等の金属に代表される導電体、純水、ガラス等に代表される誘電体、またはこれらの複合体などであってもよい。伝送システム600において、通信装置653と受電装置654は、このように媒体665が介在した場合にも相互に無線通信を行うことができる。
【0159】
図25または図26に示した状況では、通常、受電装置654の電力測定部620から出力される電力値は微量となる。そうした場合には、電源選択部694において、当該電力値が前述した所定の閾値を下回るため、2次電源部696から第1通信部690へ電力が供給される。
【0160】
ここまで、図24〜図26を用いて、本発明の第6の実施形態について説明を行った。第6の実施形態に係る受電装置654によれば、通信相手となる装置が給電機能を有しているかどうかに関わらず、無線通信を行うことができる。
【0161】
なお、本明細書において説明した制御処理または選択処理などの一連の処理をハードウェアで実現するかソフトウェアで実現するかは問わない。一連の処理をソフトウェアで実行させる場合には、ソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれたコンピュータ、または例えば図27に示した汎用コンピュータなどを用いて実行される。
【0162】
図27において、CPU(Central Processing Unit)902は、汎用コンピュータの動作全般を制御する。ROM(Read Only Memory)904には、一連の処理の一部または全部を記述したプログラムまたはデータが格納される。RAM(Random Access Memory)906には、CPU902が演算処理に用いるプログラムやデータなどが一時的に記憶される。
【0163】
CPU902、ROM904、及びRAM906は、バス908を介して相互に接続される。バス908にはさらに、入出力インタフェース910が接続される。
【0164】
入出力インタフェース910は、CPU902、ROM904、及びRAM906と、入力部912、出力部914、記憶部916、通信部918、及びドライブ920とを接続するためのインタフェースである。
【0165】
入力部912は、例えばボタン、スイッチ、レバー、マウスやキーボードなどの入力装置を介して、利用者からの指示や情報入力を受け付ける。出力部914は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)、液晶ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)などの表示装置、またはスピーカーなどの音声出力装置を介して利用者に対して情報を出力する。
【0166】
記憶部916は、例えばハードディスクドライブまたはフラッシュメモリなどにより構成され、プログラムまたはプログラムデータなどを記憶する。通信部918は、LAN(Local Area Network)またはインターネットなどのネットワークを介する通信処理を行う。ドライブ920は、必要に応じて汎用コンピュータに設けられ、例えばドライブ920にはリムーバブルメディア922が装着される。
【0167】
一連の処理をソフトウェアで実行する場合には、例えば図27に示したROM904、記憶部916、またはリムーバブルメディア922に格納されたプログラムが、実行時にRAM906に読み込まれ、CPU902によって実行される。
【0168】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0169】
例えば、ここまで説明した第1〜第6の実施形態では、給電電極及び受電電極の形状を平板の形で示したが、給電電極及び受電電極の形状は平板でなくてもよい。また、給電電極または受電電極を複数備える場合に、複数の給電電極または受電電極は必ずしも図示したように同一平面上に配置されなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】磁界を用いて電力を伝送する伝送システムの一例を示す模式図である。
【図2】電波を用いて電力を伝送する伝送システムの一例を示す模式図である。
【図3】磁界を用いて電力を伝送する伝送システムの位置の制約について説明するための模式図である。
【図4】磁界を用いて電力を伝送する伝送システムによって生じる渦電流の一例を示す模式図である。
【図5】電波を用いて電力を伝送する伝送システムにおけるアンテナと波長の関係を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る伝送システムの基本的な構成の一例を示すブロック図である。
【図7】2つの電極が静電結合する様子を示す模式図である。
【図8】図6に示した伝送システムの等価回路を示すブロック図である。
【図9】図8に示した伝送システムの等価回路を簡略化して示すブロック図である。
【図10】図9に示した等価回路の特性の一例を示すブロック図である。
【図11】第1の実施形態に係る伝送システムの有する機能を概念的に示したブロック図である。
【図12】バリキャップ素子の回路記号と特性曲線を示す説明図である。
【図13】可変誘導素子の構成の一例を示す模式図である。
【図14】第1の実施形態に係る伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図15】第2の実施形態に係る伝送システムの有する機能を概念的に示したブロック図である。
【図16】第2の実施形態に係る伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図17】給電電極及び受電電極の位置関係について概念的に示す模式図である。
【図18】第3の実施形態に係る給電装置の構成を示すブロック図である。
【図19】第3の実施形態に係る受電装置の構成を示すブロック図である。
【図20】給電装置と受電装置の位置関係の一例を示す模式図である。
【図21】給電装置と受電装置の位置関係の他の例を示す模式図である。
【図22】第4の実施形態に係る伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図23】第5の実施形態に係る伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図24】第6の実施形態に係る伝送システムの第1の構成例を示すブロック図である。
【図25】第6の実施形態に係る伝送システムの第2の構成例を示すブロック図である。
【図26】第6の実施形態に係る伝送システムの第3の構成例を示すブロック図である。
【図27】汎用コンピュータの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0171】
100、200、300、400、500、600 伝送システム
152、252、352、452、552、652 給電装置
154、254、354、454、554、654 受電装置
60、260、560 交流信号生成部
62 第1共振部
64、66、364、366、464 給電電極
80、82、340、480 受電電極
84、184 第2共振部
86 整流部
120、220、520、620 電力測定部
130、230、530 制御部
342 第1選択部
344 第2選択部
346 選択判定部
590、690 第1通信部
592、692 第2通信部
694 電源選択部
696 2次電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流信号を生成する交流信号生成部;
誘導成分及び/または容量成分を有し、前記交流信号生成部により生成された前記交流信号を共振させる第1共振部;
及び共振された前記交流信号を静電界における電位差として外部に放射する給電電極;
を備える給電装置と:
静電界における電位差を感知して電気信号を生成する受電電極;
誘導成分及び/または容量成分を有し、前記受電電極により生成された前記電気信号を共振させる第2共振部;
及び共振された前記電気信号を整流する整流部;
を備える受電装置と:
を含む伝送システム。
【請求項2】
前記受電装置は、
前記整流部により前記電気信号が整流されて生じる電力の電力値を測定する電力測定部と;
前記電力測定部により測定された前記電力値に基づいて前記第2共振部の誘導成分及び/または容量成分を制御する制御部と;
をさらに備える、請求項1に記載の伝送システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2共振部の有するバリキャップ素子に印加される電圧を変化させることにより前記第2共振部の容量成分を制御する、請求項2に記載の伝送システム。
【請求項4】
前記制御部は、コイルの内部を少なくとも部分的に貫通するように把持された制御材を制動することにより前記第2共振部の誘導成分を制御する、請求項2に記載の伝送システム。
【請求項5】
前記給電装置は、
前記給電装置から供給される電力の電力値を測定する電力測定部と;
前記電力測定部により測定された前記電力値に基づいて前記第1共振部の誘導成分及び/または容量成分を制御する制御部と;
をさらに備える、請求項1に記載の伝送システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1共振部の有するバリキャップ素子に印加される電圧を変化させることにより前記第1共振部の容量成分を制御する、請求項5に記載の伝送システム。
【請求項7】
前記制御部は、コイルの内部を少なくとも部分的に貫通するように把持された制御材を制動することにより前記第1共振部の誘導成分を制御する、請求項5に記載の伝送システム。
【請求項8】
前記給電装置は、
前記給電装置から供給される電力の電力値を測定する電力測定部と;
前記電力測定部により測定された前記電力値に基づいて前記交流信号生成部の生成する交流信号の角周波数を制御する制御部と;
をさらに備える、請求項1に記載の伝送システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記電力測定部により測定された前記電力値が所定の閾値よりも小さい場合には前記交流信号生成部の生成する交流信号の出力を低下させる、請求項8に記載の伝送システム。
【請求項10】
前記給電電極の大きさと前記受電電極の大きさとが異なる、請求項1に記載の伝送システム。
【請求項11】
前記受電電極は、複数の電極を含み;
前記受電装置は、
前記複数の電極の中から指定された電極をそれぞれ選択可能な第1選択部及び第2選択部と;
前記複数の電極からそれぞれ出力される電気信号の信号強度に基づいて、前記複数の電極を第1の集合と第2の集合とに分類し、前記第1選択部に前記第1の集合に属する電極を選択することを指定し、及び前記第2選択部に前記第2の集合に属する電極を選択することを指定する選択判定部と;
をさらに備える、
請求項1に記載の伝送システム。
【請求項12】
前記受電装置は、
前記整流部により前記電気信号が整流されて生じる電力の電力値を測定する電力測定部と;
前記電力測定部により測定された前記電力値を前記受電電極を介して無線信号により送信する第1通信部と;
をさらに備え、
前記給電装置は、
前記受電装置から送信された前記電力値を前記給電電極を介して受信する第2通信部と;
前記第2通信部により受信された前記電力値に基づいて前記交流信号生成部の生成する交流信号の角周波数を制御する制御部と;
をさらに備える、
請求項1に記載の伝送システム。
【請求項13】
前記受電装置は、
前記受電電極を介して前記給電装置との間で無線通信を行う第1通信部と;
前記第1通信部に接続された2次電源部と;
前記整流部により前記電気信号が整流されて生じる電力の電力値を測定する電力測定部と;
前記電力測定部により測定された前記電力値が所定の閾値よりも大きい場合には、前記整流部から前記第1通信部へ電力を供給させ、前記電力測定部により測定された前記電力値が所定の閾値よりも小さい場合には、前記2次電源部から前記第1通信部へ電力を供給させる電源選択部と;
をさらに備える、
請求項1に記載の伝送システム。
【請求項14】
交流信号を生成する交流信号生成部と;
誘導成分及び/または容量成分を有し、前記交流信号生成部により生成された前記交流信号を共振させる共振部と;
共振された前記交流信号を静電界における電位差として外部に放射する給電電極と;
を備える給電装置。
【請求項15】
静電界における電位差を感知して電気信号を生成する受電電極と;
誘導成分及び/または容量成分を有し、前記受電電極により生成された前記電気信号を共振させる共振部と;
共振された前記電気信号を整流する整流部と;
を備える受電装置。
【請求項16】
交流信号を生成するステップと;
給電装置の共振部と受電装置の共振部とにより形成される共振回路の誘導成分及び/または容量成分によって、生成された前記交流信号を共振させるステップと;
共振された前記交流信号を静電界における電位差として前記給電装置から放射するステップと;
前記受電装置において静電界における電位差を感知して電気信号を生成するステップと;
生成された前記電気信号を整流するステップと;
を含む伝送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2009−296857(P2009−296857A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150911(P2008−150911)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】