説明

伝送システム及び分散補償方法

【課題】異なる分散補償誤差の分散補償装置を用いてシステム全体の補償誤差を低減させる。
【解決手段】分散補償誤差が全体を通して小さくなるよう、異なる分散補償誤差の複数の分散補償装置を組合わせて配置する。また、分散補償装置はグループ分けされ、グループ単位の分散補償誤差が小となるように、各分散補償装置を組合わせて、配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを用いた長距離伝送システムにおいて、効率的な分散補償を行なう伝送システム及び分散補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバを用いた伝送システムでは、伝送に伴い波長分散が生じてしまうので、受信器の波長分散耐力を満たすように分散補償器を用いて波長分散を補償する必要があった。
【0003】
しかし、光ファイバが持つ波長分散特性と分散補償器の分散補償は、厳密にミートしない為、信号帯域内において残留分散を生じてしまう。長距離伝送においては、この残留分散が積み上がっていき、受信機の波長分散耐力をオーバーしてしまう問題が起きる。
【0004】
波長多重通信方式では、広波長帯を使用するので、信号帯域内の残留分散の積み上がりは顕著となり、伝送距離の長距離化に伴い残留分散は特に問題となる。
【0005】
残留分散の問題は、受信機の分散耐力を向上させることで解決することが可能である。その他、分散補償器の特性を改善することや、波長毎の分散補償器を受信機に搭載する方法も取られている。
【0006】
しかし、これらの方法は新規部品を必要とするなどコスト増を招くといった課題があった。
【0007】
そこで、例えば特許文献1には、分散補償器の規格を細分化してグループ分けし、それらを組み合わせることにより伝送路全体の残留分散値を小さくする技術について開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、複数種類の分散補償器を用いて設置数及び組み合わせを考慮することによって、光伝送系の伝送特性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−174411号公報
【特許文献2】特開平07−107069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、同一規格の分散補償器においても帯域内補償誤差があるために、一概に規格に応じて組み合わせても、前記誤差の関係で思い通りに残留分散値を低下させることができない。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、分散補償装置の補償誤差を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明における伝送システムは、複数の分散補償装置を有する伝送システムであって、分散補償装置は、分散補償誤差が全体を通して小さくなるよう配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明における分散補償方法は、分散補償誤差が全体を通して小さくなるよう分散補償装置を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、伝送後の残留分散を抑えることで、伝送システムの長距化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る分散補償方法の説明図(その1)である。
【図2】本発明の実施形態に係る分散補償方法の説明図(その2)である。
【図3】本発明の実施形態に係る伝送システムの構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る分散補償方法における手順を示す図である。
【図5】従来の分散補償器(a)と本発明の実施形態における分散補償器(b)の分け方の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る分散補償方法と従来の分散補償方法との比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本発明の実施形態における波長分散補償方法を図1及び図2を参照に詳細に説明する。なお、図1及び図2は、分散補償後の波長−分散特性を示す図である。
【0018】
本波長分散補償方法は、既存の分散補償器や受信機の分散耐力の仕様を用いて、伝送システムの長距離化を実現するものである。具体的には既存の分散補償器を、その波長分散特性毎に複数タイプに分類し、特性が悪い分散補償器は、特性の劣化を打ち消しあう分散補償器同士を組み合わせて使用する。
【0019】
図1(a)において、上下の点線はそれぞれ上限規格、加減規格を示す。各分散補償器において、規格内で均等に分割し、図1(b)に示すようにそれぞれをA〜Eタイプとして定義する。
【0020】
分散補償器Aタイプは、光ファイバのある規定された波長帯域の波長分散の補償を行う。その特性は、図1(b)に示すように規定された補償誤差の上限近い特性を持っている。
【0021】
一方、分散補償器Eタイプは、光ファイバのある規定された波長帯域の波長分散の補償を行う。その特性は、図1(b)に示すように規定された補償誤差の下限に近い特性を持っている。なお、B〜Dタイプについては、それぞれA〜Eタイプの間の特性を有する。
【0022】
図2に示すように、同一の伝送システム内において分散補償器Aタイプと分散補償器Eタイプを、組み合わせて用いた場合、誤差はCタイプ内に落ち着くことになる。これは、分散補償器の仕様を厳しくすることなく、誤差を小さく抑えることが出来ることを示している。
【0023】
本実施形態においては、この特性を用いることにより、長距離伝送においても信号帯域内の残留分散の積み上がりを最小に抑え、伝送距離の長距離化の課題を解決する。
【0024】
図3は、本発明の実施形態における波長多重分割伝送システムの構成図である。本波長多重分割システムでは、±A%の誤差を持った分散補償器を採用しており、誤差特性毎に3タイプに区別して用いている。なお、光増幅器、送受信機、OADM(Optical add−drop multiplexer)は、当事業者にとってよく知られているため、ここではその詳細な構成は省略する。
【0025】
図3において、分散補償器αタイプは、光ファイバのある規定された波長帯域の波長分散の補償を行う。この波長分散補償は、ターゲットとする分散補償量に対して規定誤差+A/2〜+A[%]の精度で行われる。
【0026】
また、分散補償用品βタイプは、光ファイバのある規定された波長帯域の波長分散の補償を行う。この波長分散補償は、ターゲットとする分散補償量に対して規定誤差−A/2〜+A/2[%]の精度で行われる。
【0027】
また、分散補償用品γタイプは、光ファイバのある規定された波長帯域の波長分散の補償を行う。この波長分散補償は、ターゲットとする分散補償量に対して規定誤差−A〜−A/2[%]の精度で行われる。
【0028】
図3において、受信機は、伝送されてきた信号を復号、エラー訂正を行い、クライアント信号として出力を行う。この受信機の波長分散耐力の規格を±Yps/nmとする。また、OADM局1001にてADDされた波長多重信号はOADM局1003にてDROPするとする。
【0029】
OADM局1001から伝送路502へ出力された波長多重信号は、光ファイバ伝送に伴い、波長分散がX[ps/nm]生じるとする。この波長分散は、分散補償器αタイプ201を用いた中継局2001にてX[ps/nm]補償される。
【0030】
その結果、帯域内の残留分散は、(+A/2〜+A)×X[ps/nm]となる。中継局2001から出力した波長多重信号は、光ファイバによって再びX[ps/nm]の波長分散が生じる。これを分散補償器γタイプ401を用いた中継局2002にて、X[ps/nm]分だけ分散補償を行う。その結果、信号帯域内の残留分散は、{(+A/2〜+A)+(−A〜−A/2)}×2X=±(A/2〜A/2)×2X[ps/nm]となる。
【0031】
このようにして、αタイプとγタイプを組み合わせることにより、実質的にβタイプと同等の誤差の分散補償を実施していく。これにより新手法では、βタイプ相当の積み上がりとなり、実質的に1/2とすることが可能となる。
【0032】
図4は、本発明の実施形態における分散補償方法における手順を示す図である。
【0033】
帯域内補償誤差に従って、分散補償器をそれぞれタイプ別に分ける(ステップS11)。
【0034】
回線の分散情報を測定し(ステップS12)、測定した回線の分散に合わせて各スパンの分散補償量を決定する(ステップS13)。
【0035】
各スパンで使用する分散補償器を補償量に従って決定し、各タイプの補償誤差から補償誤差が少なくなるようにタイプを組み合わせて決定する(ステップS14)。
【0036】
図5は、従来の分散補償器(a)と本発明の実施形態における分散補償器(b)の分け方の一例を示す図である。
【0037】
図5(a)に示すように、従来では分散補償器を補償量に従って規格別にタイプを分けていた。一方、本実施形態における分散補償方法では、図5(b)に示すように分散補償器を同一規格内でも補償誤差に応じてタイプを分けている。
【0038】
図6は、本発明の実施形態における分散補償方法と従来の分散補償方法との比較図である。なお、図6に示す分散補償器のタイプは、それぞれ表1に示す補償誤差に従ってタイプ別に分けている。また、ここでは全局の残留分散を0ps/nmにするルールを持つ伝送システムと仮定する。中継ノードの残留分散の値をどのように振るかは伝送システムによって異なる。
【0039】
【表1】

【0040】
従来の方法では、分散補償器の補償誤差は考慮されないため、ここでは補償量によらず一律に±5%とすれば、補償誤差の積み上がりにより最終的な補償誤差は、±610(ps/nm)となる。
【0041】
一方、本実施形態による分散補償方法を用いて、補償誤差が小さくなるように各タイプの分散補償器を平均的に備えることによって、最大80(ps/nm)、最小−168(ps/nm)として補償誤差を抑えることが可能となる。
【0042】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、以下に記載するような効果を奏する。
【0043】
第1の効果は、伝送後の残留分散を抑えているので、光ファイバを用いた伝送システムの長距化を実現できる。
【0044】
第2の効果は、従来の分散補償器をそのまま用いているので、新規部品や従来品の歩留まり悪化を招かずに効率的に波長分散を補償できる。
【0045】
第3の効果は、分散補償の規定誤差を緩和できるので、分散補償用品の品種削減が可能になる。
【0046】
第4の効果は、分散補償の規定誤差を緩和できるので、可変分散補償用品の設定可能ステップが削減できる。
【0047】
以上、実施の形態を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら実施の形態や具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
11 光増幅器
100 OADM部
201,202 分散補償器αタイプ
301,302,303 分散補償器βタイプ
401,402 分散補償器γタイプ
501 伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分散補償装置を有する伝送システムであって、
前記分散補償装置は、分散補償誤差が全体を通して小さくなるよう配置されていることを特徴とする伝送システム。
【請求項2】
前記分散補償装置は、分散補償誤差の範囲毎にグループ分けされ、前記グループ単位の分散補償誤差を考慮して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の伝送システム。
【請求項3】
前記分散補償装置は、グループ単位で平均的に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の伝送システム。
【請求項4】
分散補償誤差が全体を通して小さくなるよう分散補償装置を配置することを特徴とする分散補償方法。
【請求項5】
前記分散補償装置を分散補償誤差の範囲毎にグループ分けし、前記グループ単位の分散補償誤差を考慮して配置することを特徴とする請求項4に記載の分散補償方法。
【請求項6】
前記分散補償装置をグループ単位で平均的に配置することを特徴とする請求項5に記載の分散補償方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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