説明

伝送線が備わる管装置の構造及び削孔システム

【課題】管内の空間を有効に利用する、伝送線を備えた管装置の構造を提供する。
【解決手段】各単位管内には保護管22が備えられ、単位管及び保護管22間に伝送線9を通す。また、保護管22に内接する内接部及びこの先方の先方部23Bを有し、この内周面から雌電極24が露出する筒状の雌電極ホルダと、保護管22に内接する内接部及びこの先方の先方部25Bを有し、この外周面から雄電極26が露出する筒状の雄電極ホルダ25とが備える。単位管を軸方向に連結すると雄電極ホルダ先方部25Bが雌電極ホルダ先方部23B内に嵌るとともに雄電極26及び雌電極24が当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力線搬送通信等に用いることができる伝送線が備わる管装置の構造及びこの管装置の構造を利用した削孔システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、電力線を信号線としても利用する技術、すなわち電力線搬送通信(Power Line Communication,Power line Telecommunication)技術が、さまざまな技術分野において利用されている。例えば、削孔管を用いて地盤を削孔する削孔システムの技術分野においては、削孔管内に電力線が通され、この電力線を介して削孔管外に設置された電源装置から削孔管内に設置された計測装置に電力供給が行われると伴に、この計測装置から削孔管外に設置された受信装置に計測情報が電気信号として伝送される。
【0003】
この削孔システムにおいては、削孔に際して単位管を軸方向に順次連結して長尺の削孔管を構築しており、単位管を連結する際に電力線の接続を行っている。この接続の方法としては、例えば、非接触式伝送器やメタルコンセントを用いて電気的に接合する方法が知られている。しかしながら、非接触式伝送器を用いる方法は、両電極が適切に離間するように単位管の連結を行う必要があるため連結に時間がかかるとの問題を有する。また、連結が適切になされないと通信精度が低下するとの問題も有する。一方、メタルコンセントを用いる方法は、メタルコンセントの接続を削孔管の直下で、しかも手作業で行うことになるため、危険を伴うとともに、連結に時間がかかるとの問題を有する。
【0004】
そこで、本出願人は、単位管を連結すると自動的に電力線が接続される電力線搬送通信用の管装置を提案した(特許文献1参照)。この管装置は、以上の問題が全て解決された極めて有用な技術となっており、既に権利化されている。しかしながら、この形態においては、削孔管内の軸心部付近に電力線が通され、また、電極が配置される。したがって、削孔管内に流体以外のもの、例えば挿入式ジャイロ等の他の計測装置を通すことが事実上できない。そこで、削孔管内の空間を有効に利用することができるよう管装置の構造を改良することができないかが模索された。もっとも、この問題は、電力及び信号の伝送を同一の伝送線によって行う電力線搬送通信の用途に限って生じるものではなく、例えば、電力及び信号の伝送を各別の伝送線によって行う場合等にも生じる。したがって、電力線搬送通信の用途であるか否かに関わらず、管装置の構造を改良することによって削孔管内の空間を有効に利用することができるようにならないかが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−269068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする主たる課題は、管内の空間を有効に利用することができる伝送線が備わる管装置の構造及び削孔システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決した本発明は、次の通りである。
〔請求項1記載の発明〕
一の単位管と他の単位管とを軸方向に連結すると、前記一の単位管内を通る伝送線に接続された雄電極と前記他の単位管内を通る伝送線に接続された雌電極とが接続される伝送線が備わる管装置の構造であって、
前記一の単位管内に一の保護管が、前記他の単位管内に他の保護管がそれぞれ備えられ、前記一の単位管と前記一の保護管との間及び前記他の単位管と前記他の保護管との間にそれぞれ前記伝送線が通され、
前記一の保護管に内接する内接部及びこの内接部先方の先方部を有し、この先方部の外周面から前記雄電極が露出する筒状の雄電極ホルダと、前記他の保護管に内接する内接部及びこの内接部先方の先方部を有し、この先方部の内周面から前記雌電極が露出する筒状の雌電極ホルダとが備えられ、
前記一の単位管と前記他の単位管とを連結すると、前記雄電極ホルダの先方部が前記雌電極ホルダの先方部内に嵌るとともに前記雄電極及び前記雌電極が当接する、
ことを特徴とする伝送線が備わる管装置の構造。
【0008】
(主な作用効果)
一の単位管内に一の保護管が、他の単位管内に他の保護管がそれぞれ備えられ、一の単位管と一の保護管との間及び他の単位管と他の保護管との間にそれぞれ伝送線が通されていると、管内(保護管内)に他の計測装置等を通すに際して伝送線が障害になるおそれがない。
また、一の保護管に内接する内接部及びこの内接部先方の先方部を有し、この先方部の外周面から雄電極が露出する筒状の雄電極ホルダと、他の保護管に内接する内接部及びこの内接部先方の先方部を有し、この先方部の内周面から雌電極が露出する筒状の雌電極ホルダとが備えられ、一の単位管と他の単位管とを連結すると、雄電極ホルダの先方部が雌電極ホルダの先方部内に嵌るとともに雄電極及び雌電極が当接する構成とされていると、一の単位管と他の単位管とを連結した際に雄電極及び雌電極が自動的に接続されるとともに、これらの電極が一対の電極ホルダによって覆われるため、管内(保護管内)に他の計測装置等を通すに際して電極が障害になるおそれがない。このようにして本発明によると管内の空間を有効利用することができるようになる。
なお、雄電極及び雌電極を覆う両電極ホルダが保護管に内接すると、一の単位管と他の単位管とを連結した際に両電極及び伝送線が保護管及び電極ホルダによって全て覆われた状態になるため、保護管内に水等の液体を流通させることもできる。
【0009】
〔請求項2記載の発明〕
前記保護管の外周面に軸方向に沿う凹線部が形成され、この凹線部内に前記伝送線が通される、
請求項1記載の伝送線が備わる管装置の構造。
【0010】
(主な作用効果)
保護管の外周面に軸方向に沿う凹線部が形成され、この凹線部内に伝送線が通されると、単位管を回転させても伝送線が周方向にずれることがなく、通信や電力供給を安定的に行うことができる。
【0011】
〔請求項3記載の発明〕
削孔管内に設置された計測装置と前記削孔管外に設置された電源装置及び受信装置とが前記削孔管内を通る伝送線で接続され、この伝送線を介して前記計測装置から前記受信装置への通信及び前記電源装置から前記計測装置への電力供給が行われ、
複数の単位管を軸方向に連結すると前記削孔管が構築されるとともに、相互に隣接する一の単位管内を通る伝送線に接続された雄電極と他の単位管内を通る伝送線に接続された雌電極とが接続される削孔システムであって、
前記一の単位管内に一の保護管が、前記他の単位管内に他の保護管がそれぞれ備えられ、前記一の単位管と前記一の保護管との間及び前記他の単位管と前記他の保護管との間にそれぞれ前記伝送線が通され、
前記一の保護管に内接する内接部及びこの内接部先方の先方部を有し、この先方部の外周面から前記雄電極が露出する筒状の雄電極ホルダと、前記他の保護管に内接する内接部及びこの内接部先方の先方部を有し、この先方部の内周面から前記雌電極が露出する筒状の雌電極ホルダとが備えられ、
前記一の単位管と前記他の単位管とを連結すると、前記雄電極ホルダの先方部が前記雌電極ホルダの先方部内に嵌るとともに前記雄電極及び前記雌電極が当接する、
ことを特徴とする削孔システム。
【0012】
(主な作用効果)
削孔システムにおいて請求項1記載の発明と同様の作用効果が奏せられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、管内の空間を有効に利用することができる伝送線が備わる管装置の構造及び削孔システムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】削孔システムの概要図である。
【図2】単位管装置の正面図である。ただし、両端部は縦断面図である。
【図3】単位管の雌継手部の縦断面図である。
【図4】単位管の雄継手部の縦断面図である。
【図5】一の単位管の雌継手部と他の単位管の雄継手部とを嵌め合わせた状態(連結状態)を示す縦断面図である。
【図6】図5のVI−VI線部分の横断面図である。
【図7】図5のVII−VII線部分の横断面図である。
【図8】伝送線が複数本備えられる場合の形態例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
図1に本形態の削孔システムの概要を示した。この削孔システムには、ベースマシン1Bを有する公知の削孔機1が備えられている。ベースマシン1Bは地盤G上に設置されており、ベースマシン1Bによって先端部に削孔ビット2Bが備わる削孔管2が保持されている。削孔に際しては回転駆動源1Mによって削孔管2が軸心回りに回転させられ、この回転に伴って回転する削孔ビット2Bによって地盤Gが掘削される。
【0016】
削孔管2の先端部内には傾斜計、ジャイロ等が備わる計測装置3が設置されており、削孔管2外であるベースマシン1Bの近傍には受信装置4及び電源装置5が設置されている。この受信装置4及び電源装置5と計測装置3とは、以下詳説するように削孔管2の基端部に備わるスリップリング4S及び削孔管2内を通る伝送線9(図6,7等参照)を介してそれぞれ接続されている。
【0017】
電源装置5は、計測装置3に直流電力を供給する装置であり、例えば鉛蓄電池等によって構成される。電源装置5にはプラス端子及びマイナス端子が備えられており、プラス端子はケーブル5cを介して、マイナス端子はケーブル5eを介して電力線モデム6に接続されている。この電力線モデム6は、電力と通信用信号の重ね合わせや分離を行う装置であり、プラス端子がケーブル6cを介してスリップリング4Sに接続されている。このスリップリング(の電路)4Sは削孔管2内を通る伝送線9と導通状態(電気的に接続された状態)とされており、ケーブル5c、ケーブル6c、スリップリング4S及び伝送線9によって電源装置5から計測装置3への電力供給路が構成されている。
【0018】
他方、電力線モデム6のマイナス端子は、ケーブル6eを介してベースマシン1Bに接続されている。このベースマシン1Bは削孔管2と導通状態とされており、削孔管2、ベースマシン1B、ケーブル6e及びケーブル5eによって計測装置3から電源装置5へのアース電路が構成されている。この形態によると、削孔管2内に伝送路の一種であるアース電路を設ける必要がなく、削孔管2の構造や削孔システムの電気系統をシンプルにすることができる。
【0019】
一方、受信装置4は、計測装置3で計測した情報を受信する装置である。この受信装置4には、プラス端子及びマイナス端子が備えられており、プラス端子はケーブル4cを介して、マイナス端子はケーブル4eを介して電力線モデム6に接続されている。この電力線モデム6は、前述したようにプラス端子がケーブル6cを介してスリップリング4Sに接続されており、このスリップリング4Sが削孔管2内を通る伝送線9と導通状態とされている。したがって、ケーブル4c、ケーブル6c、スリップリング4S及び伝送線9によって計測装置3及び受信装置4間の送受信路が構成される。
【0020】
本形態においては、通信の方式として電力線搬送通信が採用され、通信及び電力の供給が1本の電力線たる伝送線9によって行われる。したがって、削孔管2内の構造や削孔システムの電気系統をシンプルにすることができる。ただし、本発明は、通信線を電力線とは別に通す場合や、削孔管2内にアース線を通す場合等にも、つまり伝送線を複数本通す場合にも適用することができる。
【0021】
本形態において、電力線搬送通信を行うための変調の方式としては、例えば、直交周波数分割多重方式やスペクトラム拡散変調方式等を採用することができる。この変調のために、電力線モデム6や計測装置3、受信装置4にはインピーダンスマッチング回路や変復調回路等の公知の機器が備えられる。変調の方式としてスペクトラム拡散変調方式を採用した場合は耐ノイズ性に優れるため、通信精度が向上する。
【0022】
削孔管2は、複数の単位管21が軸方向に順次連結されて構築される。相互に隣接する一の単位管21(21A)と他の単位管21(21B)とを連結すると、一の単位管21内を通る伝送線9と他の単位管21内を通る伝送線9とが自動的に接続される。したがって、単位管21の連結を迅速に行うことができる。なお、一の単位管とは「相互に隣接する単位管の一方」を意味し、他の単位管とは「当該相互に隣接する単位管の他方」を意味する。
【0023】
次に、この単位管21(21A,21B)の連結構造や伝送線9の接続構造等について詳説する。
図2に、本形態の単位管装置20を示した。この単位管装置20は単位管(管要素)21を構成要素としており、この単位管21の一端部が管状の雌継手部21Xとされ、他端部が管状の雄継手部21Yとされている。図3に拡大して示すように、雌継手部21Xの先端部(紙面左側)内周面には雌ネジ21Mが形成されており、図4に拡大して示すように、雄継手部21Yの先端部(紙面右側)外周面には雄ネジ21Nが形成されている。相互に隣接する単位管21を連結するにあたっては、一方又は両方の単位管21を軸心回りに回転させながら雌継手部21Xの先端部内21Xaに雄継手部21Yの先端部を嵌め入れる。これにより、図5に示すように、雌ネジ21M及び雄ネジ21Nが螺合し、相互に隣接する単位管21(21A,21B)が連結される。
【0024】
特に図示はしないが、両端部が雌継手部21Xで構成された単位管21と両端部が雄継手部21Yで構成された単位管21とを用意し、これらの単位管21を交互に連結して削孔管2を構築することもできる。この形態においても、以下の説明から明らかになるように、本発明に係る管装置の構造を適用することができる。また、相互に隣接する単位管21を螺合以外の方法によって連結することもでき、この場合も本発明に係る管装置の構造を適用することができる。さらに、相互に隣接する単位管21は、継手部21X,21Y以外の部位が同じ構造でなければならないというものではなく、本発明の趣旨を害さない範囲で相違する構造とすることもできる。
【0025】
一方、単位管21内には、図6,7にも示すように、塩ビ管等の絶縁性材料からなる管状の保護管22が備えられている。なお、本明細書においては、相互に隣接する一の単位管21(21A)内に備えられている保護管22を「一の保護管」と表現し、他の単位管21(21B)内に備えられている保護管22を「他の保護管」と表現することもある。
【0026】
この保護管22は、単位管21とともに単位管装置20の構成要素とされており、一の単位管21Aと一の保護管22との間、及び他の単位管21Bと他の保護管22との間には、同じく単位管装置20の構成要素とされている伝送線9がそれぞれ通されている。この形態によると、保護管22内に挿入式ジャイロ等の他の計測装置等を挿入する(通す)に際して伝送線9が障害になるおそれがない。
【0027】
特に本形態においては、保護管22の外周面に軸方向に沿って直線状に延びる凹線部22Rが形成されており、この凹線部22R内に伝送線9が通されている。したがって、削孔に際して単位管装置20(削孔管2)を軸心回りに回転させても伝送線9が周方向にずれることがなく、通信や電力供給を安定的に行うことができる。この通信や電力供給の安定性は、伝送線9が通された凹線部22R内を金属やプラスチック、石膏等を材料とするモールドや接着剤等で埋めることによってより向上させることができる。ただし、単位管21をアース電路として利用する本形態においては、ショート等を防止するために当該モールドや接着剤等の材料として絶縁性の材料を使用するのが好ましい。
【0028】
また、特に図示はしないが、凹線部22Rが曲線状やジグザグ状等の直線状以外の形状に形成された形態、凹線部22Rが単位管21の内周面に形成された形態、凹線部22Rが形成されることなく保護管22の外周面上(単位管21の内周面内)に伝送線9が通された形態、等の種々の変形例を考えることもできる。また、図示例では凹線部22Rが形成されていない部位において保護管22の外周面が単位管21の内周面に内接(当接)しているが、両者を離間させ、この離間部(空間)に空気、水等の流体を流すこともできる。さらに、当該離間部に他の管体を通したり、単位管21や保護管22と同軸の他の管体を配置したりすることもできる。
【0029】
本形態においては、図3に示すように、単位管21の雌継手部21X内に単位管装置20の構成要素である筒状の雌電極ホルダ23が備えられている。この雌電極ホルダ23は、保護管22の先端部に内接する内接部23Aと、この内接部23Aから先方(紙面左側)に延出する先方部23Bとを有する。
【0030】
雌電極ホルダ23の先方部23Bは、雌継手部21Xの内周面から離間しており、この離間部23Cには、図5に示すように、相互に隣接する単位管21A,21Bの連結時において雄継手部21Yの先端部が挿入される。
【0031】
雌電極ホルダ先方部23Bの内周面には、周方向に沿う凹線溝が一周にわたって形成されており、この凹線溝内には雌電極24が埋め込まれている。この雌電極24は、雌電極ホルダ先方部23Bの内周面から露出しており、相互に隣接する単位管21A,21Bを連結した際に後述する雄電極26と当接する状態とされている。
【0032】
他方、図4に示すように、単位管21の雄継手部21Y内には、単位管装置20の構成要素である筒状の雄電極ホルダ25が備えられている。この雄電極ホルダ25は、保護管22の先端部に内接する内接部25Aと、この内接部25Aから先方(紙面右側)に突出する先方部25Bとを有する。
【0033】
雄電極ホルダ25の先方部25Bは、雄継手部21Yの内周面から離間しており、この離間部25Cには、図5に示すように、相互に隣接する単位管21A,21Bの連結時において雌電極ホルダ23の先方部23Bが挿入される。
【0034】
雄電極ホルダ先方部25Bの外周面には、周方向に沿う凹帯溝が一周にわたって形成されており、この凹帯溝内に雄電極26が埋め込まれている。この雄電極26は、雄電極ホルダ先方部25Bの外周面から露出しており、相互に隣接する単位管21A,21Bを連結した際に前述した雌電極24と当接する状態とされている。
【0035】
より詳細には、相互に隣接する単位管21A,21Bを連結すると、図5に示すように、雄電極ホルダ25の先方部25Bが雌電極ホルダ23の先方部23B内に嵌り、雄電極ホルダ先方部25Bの外周面と雌電極ホルダ先方部23Bの内周面とが当接する(内接・外接関係)。したがって、雄電極ホルダ先方部25Bの外周面から露出する雄電極26と雌電極ホルダ先方部23Bの内周面から露出する雌電極24も自動的(必然的)に当接し、両電極24,26が電気的に接続される。しかも、この当接(接続)は雄電極ホルダ先方部25Bの外方(外周面上)で行われ、両電極24,26が雄電極ホルダ先方部25Bによって覆われた状態になるため、保護管22内に他の計測装置等を挿入する(通す)に際して両電極24,26が障害になるおそれがない。特に図示例では、雌電極ホルダ23の内周面と雄電極ホルダ25の内周面とが面一になっているため、他の計測装置等を挿入するに際して雌電極ホルダ23や雄電極ホルダ25が障害になるおそれもない。
【0036】
特に図示はしないが、雌電極24及び雄電極26の一方のみが周方向に一周にわたって備えられている形態、雌電極24及び雄電極26の両方が周方向に一周にわたって備えられているものではない形態、雌電極24が帯状に備えられ、雄電極26が線状に備えられている形態(なお、本形態においては雌電極24が線状とされ、雄電極26が帯状とされている)等の種々の変形例を考えることもできる。ただし、本形態においては、雌電極24及び雄電極26の両方が周方向に一周にわたって備えられているため、連結にあたって相互に隣接する単位管21A,21Bの一方又は双方を回転等させたとしても、雌電極24及び雄電極26が確実に当接する。
【0037】
図4に示すように、雄電極ホルダ先方部25Bの外周面には、周方向に一周にわたるOリング等からなるシールリング25Sが埋め込まれている。このシールリング25Sは同じく雄電極ホルダ先方部25Bの外周面に備えられた雄電極26よりも先方側(紙面右側)に位置しており、しかも、図5に示すように、相互に隣接する単位管21A,21Bを連結すると雌電極ホルダ先方部23Bの内周面に当接する。したがって、シールリング25Sによって雌電極ホルダ23及び雄電極ホルダ25間の止水が図られ、例えば、削孔水等の電気伝導性を有する液体を保護管22内に流通させることができる。
【0038】
ところで、雌電極24及び雄電極26は、それぞれ単位管21と保護管22との間を通る伝送線9の先端部に、はんだ付け等によって接続されている。この接続のために伝送線9を各電極24,26までどのように導くかは特に限定されないが、本形態においては次の通りとされている。
まず、雌継手部21X側においては、図3に示すように、雌電極ホルダ先方部23Bの外周面が雌継手部21Xの内周面から離間しており、この離間部23Cに凹線部22Rの先端開口が臨んでいる。したがって、伝送線9は、凹線部22R内を通された後、雌電極ホルダ先方部23Bの外周面上を先端部まで通され、先方部23Bを径方向に貫く貫通孔に通された後、凹線溝内に埋め込まれた雌電極24に対して電気的に接続される。
【0039】
また、雄継手部21Y側においては、図4に示すように、雄電極ホルダ先方部25Bの外周面が雄継手部21Yの内周面から離間しており、この離間部25Cに凹線部22Rの先端開口が臨んでいる。したがって、伝送線9は、凹線部22R内を通された後、直接雌電極26の外周面へ導かれ、電気的に接続される。
【0040】
〔その他〕
削孔管2の先端部に設置された計測装置3には傾斜計やジャイロ等の測定機器が備えられ、この測定機器は防塵、防水等の観点からケースに収納される。このケースとして一般的には、上下開口が蓋材等によって閉じられた円筒が使用され、図1はこの場合を想定して示している。しかしながら、当該ケースを二重管構造とし、内管と外管との間に測定機器を備えることもできる。この形態においては、内管内の空間を有効利用することができるため、削孔管2内の空間を先端部まで有効利用することができる。
【0041】
以上では、通信の方式として電力線搬送通信を採用する場合を示しており、削孔管2内に伝送線9が1本のみ備えられている。しかしながら、本発明に係る管装置の構造は、電力線搬送通信以外の用途にも適用することができ、削孔管2内に伝送線を複数本通すこともできる。図8には、伝送線が3本備えられた例を示しており、図8の(b)に示すように、各伝送線9A,9B,9Cが周方向に適宜の間隔をおいて図示しない単位管と保護管との間に通されている。この形態においては、電極も複数(多極)とされており、図8の(a)に示すように、3つの雌電極24A,24B,24C及び3つの雄電極26A,26B,26Cが軸方向に適宜の間隔をおいて電極ホルダ23,25に備えられている。特に図示はしないが、雄電極26A,26B,26Cに接続される伝送線は、単位管と保護管との間を通した後、例えば、雄電極ホルダ25内を貫通する孔に通し、もって雄電極26A,26B,26Cまで導くことができる。
【0042】
以上では、本発明に係る管装置の構造を削孔システムに適用する場合を示したが、本発明に係る管装置の構造は削孔システム以外の技術分野にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、伝送線が備わる管装置の構造及び削孔システムとして適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…削孔機、1B…ベースマシン、2…削孔管、3…計測装置、4…受信装置、5…電源装置、9…伝送線、20…管装置、21…単位管、21A…一の単位管、21B…他の単位管、21M…雌ネジ、21N…雄ネジ、21X…雌継手部、21Y…雄継手部、22…保護管、22R…凹線部、23…雌電極ホルダ、24…雌電極、25…雄電極ホルダ、26…雄電極、G…地盤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の単位管と他の単位管とを軸方向に連結すると、前記一の単位管内を通る伝送線に接続された雄電極と前記他の単位管内を通る伝送線に接続された雌電極とが接続される伝送線が備わる管装置の構造であって、
前記一の単位管内に一の保護管が、前記他の単位管内に他の保護管がそれぞれ備えられ、前記一の単位管と前記一の保護管との間及び前記他の単位管と前記他の保護管との間にそれぞれ前記伝送線が通され、
前記一の保護管に内接する内接部及びこの内接部先方の先方部を有し、この先方部の外周面から前記雄電極が露出する筒状の雄電極ホルダと、前記他の保護管に内接する内接部及びこの内接部先方の先方部を有し、この先方部の内周面から前記雌電極が露出する筒状の雌電極ホルダとが備えられ、
前記一の単位管と前記他の単位管とを連結すると、前記雄電極ホルダの先方部が前記雌電極ホルダの先方部内に嵌るとともに前記雄電極及び前記雌電極が当接する、
ことを特徴とする伝送線が備わる管装置の構造。
【請求項2】
前記保護管の外周面に軸方向に沿う凹線部が形成され、この凹線部内に前記伝送線が通される、
請求項1記載の伝送線が備わる管装置の構造。
【請求項3】
削孔管内に設置された計測装置と前記削孔管外に設置された電源装置及び受信装置とが前記削孔管内を通る伝送線で接続され、この伝送線を介して前記計測装置から前記受信装置への通信及び前記電源装置から前記計測装置への電力供給が行われ、
複数の単位管を軸方向に連結すると前記削孔管が構築されるとともに、相互に隣接する一の単位管内を通る伝送線に接続された雄電極と他の単位管内を通る伝送線に接続された雌電極とが接続される削孔システムであって、
前記一の単位管内に一の保護管が、前記他の単位管内に他の保護管がそれぞれ備えられ、前記一の単位管と前記一の保護管との間及び前記他の単位管と前記他の保護管との間にそれぞれ前記伝送線が通され、
前記一の保護管に内接する内接部及びこの内接部先方の先方部を有し、この先方部の外周面から前記雄電極が露出する筒状の雄電極ホルダと、前記他の保護管に内接する内接部及びこの内接部先方の先方部を有し、この先方部の内周面から前記雌電極が露出する筒状の雌電極ホルダとが備えられ、
前記一の単位管と前記他の単位管とを連結すると、前記雄電極ホルダの先方部が前記雌電極ホルダの先方部内に嵌るとともに前記雄電極及び前記雌電極が当接する、
ことを特徴とする削孔システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−7241(P2013−7241A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141976(P2011−141976)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)