説明

伝送線路用熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよび伝送線路

【課題】高周波帯域であっても伝送損失を低減することが可能である伝送線路を提供する。
【解決手段】伝送線路は、少なくとも1つの導体と、少なくとも1つの絶縁体とを含む伝送線路であって、前記絶縁体は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムから形成され、この熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、フィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)とこれと直交する方向(以下、TD方向と略す)の1GHz以上の周波数における誘電正接の比(DTD/DMD)が1.02以下であり;前記熱可塑性液晶ポリマーフィルムのTD方向と、前記伝送線路の長手方向とが略同一方向に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波帯域であっても伝送損失を低減することが可能である伝送線路、ならびにこのような伝送線路に対して有用に用いることができる熱可塑性液晶ポリマーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PCなど情報処理分野、携帯電話などの通信機器分野の発展は目覚ましく、このようなエレクトロニクスや通信機器に使用される周波数は、ギガヘルツの領域にシフトしている。しなしながら、一般にこのような高周波帯域では、伝送線路の伝送損失が大きくなることが知られている。
【0003】
そこで、高周波領域での伝送時の損失を小さくして、情報処理速度、すなわち伝播速度を向上させるため、誘電特性に優れる電気絶縁性基板材料が求められている。しかしながら、配線材料の誘電特性は、材料によって固有の値が既に決まっているため、材料段階でその誘電率や誘電損失を制御することは困難であった。
【0004】
このような材料段階での性質を制御するため、例えば、誘電率が1と低い空気を材料に含ませ多孔質化し、材料の誘電特性を制御した多孔質材料が多く報告されている。多孔質材料はその構造により分類され、例えば、小さな空孔が均一に分散したスポンジ構造、上下のフィルム層と内部の構造体で囲まれた空間が空孔となるボイド構造がある。
【0005】
例えば、特許文献1(特開2000−154273号公報)には、ポリイミド系樹脂の乾燥ゲルからなり、みかけ密度が800kg/m以下、平均孔径が1μm以下である多孔質体が開示されている。
【0006】
この文献には、超臨界乾燥処理を行い、連続する微小な孔を有する多孔質体を作製できることが記載され、実施例において得られた多孔質体は、空隙率が高く、ポリイミド系樹脂のバルクと比較して比誘電率を低減できることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−154273号公報(特許請求の範囲、段落番号[0037])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された多孔質体では、気泡が存在するため、強度の点で不十分であり、例えば、屈曲などを繰り返す可能性のある伝送線路では、気泡が破壊されるだけでなく、伝送線路に求められる強度を充足できない。さらに、気泡の分布が不均一になると配線内での静電容量が気泡の分布に応じてばらついてしまう。
【0009】
また、携帯して持ち運ぶ場合、持ち運び先の環境に応じて温度・水分環境が変動する。このような場合、多孔質体では空隙中に水分が発生する虞がある。そして、その水分により絶縁体材料としての誘電率、誘電損失が大きくなってしまうため、このような多孔質体は、絶縁体材料としての安定性を維持できない。そのため、前記多孔質体では電子機器としての安定性に欠けてしまい、民生用電子機器とするために求められる要求を満たすことは困難である。
【0010】
さらに、屋外設置、車載用といった過酷な環境使用状況では、高温および/または高湿となりやすく、前記多孔質体は、このような過酷な条件での使用にも耐えられない虞がある。
【0011】
従って、本発明の目的は、強度的な面で有利であるとともに、高周波で用いられても誘電正接が低く、伝送損失を抑制することができる伝送線路を提供することにある。
本発明の別の目的は、誘電率および誘電特性の双方に優れる伝送線路を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、温度・水分環境が変動した場合や、高温および/または高湿条件下であっても、優れた誘電特性を示す伝送線路を提供することにある。
本発明の他の目的は、このような優れた伝送線路に好適に使用可能である熱可塑性液晶ポリマーフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、(1)従来、材料段階において誘電特性を変化させることは困難であると認識されていたが、(2)剛直な棒状分子鎖で構成されている液晶ポリマーフィルムでは、各棒状分子の長手方向と幅方向のそれぞれの方向において、長手方向の分極より幅方向の分極が小さくなること、(3)そして、フィルム内部の棒状分子の方向性により、誘電体の構成分子の熱振動による抵抗(誘電損)を抑制でき、その結果、誘電正接をフィルムの方向によって制御することが可能であることを見出した。
【0014】
そして、(4)このような液晶フィルムを伝送線路において利用すれば、誘電特性の点で有利であるとともに、強度的な面や低吸湿性の面でも有利に使用できると考え、さらに検討した結果、(5)棒状分子の長手方向を熱可塑性液晶ポリマーフィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)に合わせることにより、MD方向の誘電正接と、MD方向に直交する方向(以下、TD方向と略す)の誘電正接には所定の関係が発生し、このフィルムの方向に由来して発生する誘電特性を利用すると、伝送線路の伝送損失の改善が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、少なくとも1つの導体と、少なくとも1つの絶縁体とを含む伝送線路であって、
前記絶縁体は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムから形成され、この熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、フィルムのMD方向に対するTD方向の1GHz以上の周波数における誘電正接の比(DTD/DMD)が1.02以下であり;
前記熱可塑性液晶ポリマーフィルムのTD方向と、前記伝送線路の長手方向とが略同一方向に配設されている伝送線路である。
【0016】
前記伝送線路で用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、誘電正接だけでなく、誘電率についてもその方向によって所定の関係が生じてもよく、たとえば、熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、フィルムのMD方向に対するTD方向の1GHz以上の周波数における誘電率の比(PTD/PMD)が1.0未満であってもよい。
【0017】
さらに、前記熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、実用上の強度特性を満たす観点から、フィルムのMD方向の破断強度とTD方向の破断強度の比(RMD/RTD)が、1〜3程度であってもよい。
【0018】
このような熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、分子配向度SORが、1.02〜1.20程度である場合が多い。また、熱可塑性液晶ポリマーフィルムは低吸湿性であるため、たとえば、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの平衡水分率が1.5%以下であってもよい。
【0019】
前記特定の誘電特性を有する熱可塑性液晶ポリマーフィルムを有効に利用する観点から、伝送線路の長手方向と幅方向の長さの比は、たとえば2倍以上であるのが好ましい。
【0020】
本発明は、このような伝送線路において、絶縁体として用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルムを包含する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の伝送線路では、絶縁体として用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルムの誘電正接がフィルムのTD方向とMD方向で異なるため、この性質を利用して、高周波領域での伝送時の損失を低減することができる。さらに、絶縁体として、内部が中実である熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いるため、優れた伝送特性と強度とを両立させることが可能である。
【0022】
また、本発明の伝送線路では、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの比誘電率について、フィルムのMD方向とTD方向において特定の関係を有しているため、それを利用することにより、伝送損失だけでなく、信号伝送速度をも向上することが可能である。さらに、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの破断強度比についても、フィルムのMD方向とTD方向において特定の関係を有しているため、伝送特性に優れるとともに、フィルムの強度についても実用上問題のない範囲とすることが可能である。
【0023】
さらに、本発明の伝送線路では、熱可塑性液晶ポリマーフィルムに由来して低吸湿性、耐熱性、耐薬品性にも優れるとともに、誘電特性を従来の熱可塑性液晶ポリマーフィルムよりも向上させることができ、その伝送損失を、また伝送速度を向上することができる。
【0024】
したがって、本発明の伝送線路は、たとえば、伝送線路の長手方向と幅方向の比が2倍を越える細長い伝送線路として好適に利用することが可能であり、本発明で得られる熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、伝送線路の絶縁性基板材料として好適な材料である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきでない。この発明の範囲は添付のクレームによって定まる。
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る伝送線路を示す概略断面図であり、(b)はその概略斜視図である。
【図2】(a)は本発明の一実施形態に係る伝送線路を示す概略断面図であり、(b)はその概略斜視図である。
【図3】(a)は本発明の一実施形態に係る伝送線路を示す概略断面図であり、(b)はその概略斜視図である。
【図4】(a)は本発明の一実施形態に係る伝送線路を示す概略断面図であり、(b)はその概略斜視図である。
【図5】(a)は本発明の一実施形態に係る伝送線路を示す概略断面図であり、(b)はその概略斜視図である。
【図6】(a)は本発明の実施例の伝送線路を作製する工程を説明するための概略断面図であり、(b)はこの工程により作製された伝送線路を示す概略断面図であり、(c)は伝送線路の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の伝送線路は、少なくとも1つの導体と、少なくとも1つの絶縁体とを含み、前記絶縁体は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムで形成される。
【0027】
(熱可塑性液晶ポリマーフィルム)
熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、溶融成形できる液晶性ポリマーから形成され、この熱可塑性液晶ポリマーは、溶融成形できる液晶性ポリマーであれば特にその化学的構成については特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性液晶ポリエステル、又はこれにアミド結合が導入された熱可塑性液晶ポリエステルアミドなどを挙げることができる。
【0028】
また熱可塑性液晶ポリマーは、芳香族ポリエステルまたは芳香族ポリエステルアミドに、更にイミド結合、カーボネート結合、カルボジイミド結合やイソシアヌレート結合などのイソシアネート由来の結合等が導入されたポリマーであってもよい。
【0029】
本発明に用いられる熱可塑性液晶ポリマーの具体例としては、以下に例示する(1)から(4)に分類される化合物およびその誘導体から導かれる公知の熱可塑性液晶ポリエステルおよび熱可塑性液晶ポリエステルアミドを挙げることができる。ただし、光学的に異方性の溶融相を形成し得るポリマーを形成するためには、種々の原料化合物の組合せには適当な範囲があることは言うまでもない。
【0030】
(1)芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物(代表例は表1参照)
【表1】

【0031】
(2)芳香族または脂肪族ジカルボン酸(代表例は表2参照)
【表2】

【0032】
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸(代表例は表3参照)
【表3】

【0033】
(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸(代表例は表4参照)
【表4】

【0034】
これらの原料化合物から得られる液晶ポリマーの代表例として表5および6に示す構造単位を有する共重合体を挙げることができる。
【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
これらの共重合体のうち、p―ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸を少なくとも繰り返し単位として含む重合体が好ましく、特に、(i)p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸との繰り返し単位を含む重合体、(ii)p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ヒドロキシカルボン酸と、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびヒドロキノンからなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジオールと、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸との繰り返し単位を含む重合体が好ましい。
【0038】
例えば、(i)の重合体では、熱可塑性液晶ポリマーが、少なくともp−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸との繰り返し単位を含む場合、繰り返し単位(A)のp−ヒドロキシ安息香酸と、繰り返し単位(B)の6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸とのモル比(A)/(B)は、液晶ポリマー中、(A)/(B)=10/90〜90/10程度であるのが望ましく、より好ましくは、(A)/(B)=50/50〜85/15程度であってもよく、さらに好ましくは、(A)/(B)=60/40〜80/20程度であってもよい。
【0039】
また、(ii)の重合体の場合、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ヒドロキシカルボン酸(C)と、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびヒドロキノンからなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジオール(D)と、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸(E)の、液晶ポリマーにおける各繰り返し単位のモル比は、芳香族ヒドロキシカルボン酸(C):前記芳香族ジオール(D):前記芳香族ジカルボン酸(E)=30〜80:35〜10:35〜10程度であってもよく、より好ましくは、(C):(D):(E)=35〜75:32.5〜12.5:32.5〜12.5程度であってもよく、さらに好ましくは、(C):(D):(E)=40〜70:30〜15:30〜15程度であってもよい。
【0040】
また、芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位と芳香族ジオールに由来する繰り返し構造単位とのモル比は、(D)/(E)=95/100〜100/95であることが好ましい。この範囲をはずれると、重合度が上がらず機械強度が低下する傾向がある。
【0041】
なお、本発明にいう溶融時における光学的異方性とは、例えば試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を観察することにより認定できる。
【0042】
熱可塑性液晶ポリマーとして好ましいものは、融点(以下、Mpと称す)が260〜360℃の範囲のものであり、さらに好ましくはMpが270〜350℃のものである。なお、Mpは示差走査熱量計((株)島津製作所DSC)により主吸熱ピークが現れる温度を測定することにより求められる。
【0043】
前記熱可塑性液晶ポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲内で、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性ポリマーを添加してもよい。
【0044】
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーを押出成形して得られる。熱可塑性液晶ポリマーの剛直な棒状分子の方向を制御できる限り、任意の押出成形法が適用できるが、周知のTダイ法、ラミネート体延伸法、インフレーション法などが工業的に有利である。特にインフレーション法やラミネート体延伸法では、フィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)だけでなく、これと直交する方向(以下、TD方向と略す)にも応力が加えられ、MD方向とTD方向における誘電特性を制御したフィルムが得られる。
【0045】
押出成形では、配向を制御するために、延伸処理を伴うのが好ましく、例えば、Tダイ法による押出成形では、Tダイから押出した溶融体シートを、フィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)だけでなく、これと直交する方向(以下、TD方向と略す)の双方に対して同時に延伸してもよいし、またはTダイから押出した溶融体シートを一旦MD方向に延伸し、ついでTD方向に延伸してもよい。
【0046】
また、インフレーション法による押出成形では、リングダイから溶融押出された円筒状シートに対して、所定のドロー比(MD方向の延伸倍率に相当する)およびブロー比(TD方向の延伸倍率に相当する)で延伸してもよい。
【0047】
このような押出成形の延伸倍率は、MD方向の延伸倍率(またはドロー比)として、例えば、1.0〜10程度であってもよく、好ましくは1.2〜7程度、さらに好ましくは1.3〜7程度であってもよい。また、TD方向の延伸倍率(またはブロー比)として、例えば、1.5〜20程度であってもよく、好ましくは2〜15程度、さらに好ましくは2.5〜14程度であってもよい。
【0048】
そして、MD方向とTD方向とのそれぞれの延伸倍率の比(TD方向/MD方向)は、例えば、2.6以下、好ましくは0.4〜2.5程度であってもよい。
【0049】
さらに、ダイから溶融押出する際に熱可塑性ポリマーがダイ領域で受けるダイ剪断速度(単に、剪断速度と称する場合がある)は、製膜する厚みなどに応じて、200秒−1以上(例えば、200〜5000秒−1程度)、好ましくは210〜4000秒−1程度から選択することができる。
【0050】
また、必要に応じて、押出成形された原反シートに対して、公知または慣用の熱処理(例えば、液晶ポリマーの融点(Mp)以上(例えば、Mp〜Mp+30℃程度、好ましくはMp+10〜Mp+20℃程度)で熱処理を行い、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点や熱膨張係数を調整してもよい。
【0051】
また、熱可塑性液晶ポリマーフィルムには、押出成形した後に、必要に応じて延伸を行ってもよい。延伸方法自体は公知であり、二軸延伸、一軸延伸のいずれを採用してもよいが、分子配向度を制御することがより容易であることから、二軸延伸が好ましい。また、延伸は、公知の一軸延伸機、同時二軸延伸機、逐次二軸延伸機などが使用できる。
【0052】
(熱可塑性液晶ポリマーフィルム)
このようにして得られた本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムでは、その誘電正接がフィルムのMD方向およびTD方向に応じて高度に制御されており、フィルムのMD方向とTD方向の1GHz以上(例えば、10GHz)、好ましくは1〜300GHzの周波数における誘電正接(dielectric loss)の比(DTD/DMD)が1.02以下である。好ましくは、前記誘電正接の比(DTD/DMD)は、0.50〜1.01程度、さらに好ましくは0.55〜1.00程度であってもよい。
【0053】
また、熱可塑性液晶ポリマーフィルムのMD方向とTD方向の1GHz以上の周波数における誘電率(permittivity)の比(PTD/PMD)は、1.0未満であってもよく、好ましくは0.8〜0.99程度、さらに好ましくは0.85〜0.97程度であってもよい。
【0054】
より具体的には、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの1GHzにおけるTD方向の誘電正接は、0.0021以下(例えば、0.0001〜0.0021程度)、好ましくは0.0010〜0.0020程度であってもよい。このような誘電正接を有することにより、低電力化や低ノイズ化が可能となる。
【0055】
また、熱可塑性液晶ポリマーフィルムのTD方向の比誘電率は、フィルムの厚みに応じて異なるが、例えば、10GHzにおける熱可塑性液晶ポリマーフィルムのTD方向の比誘電率は、3.25以下(例えば、1.8〜3.23程度)、好ましくは2.5〜3.20程度であってもよい。なお、一般的に、誘電率は、比誘電率に対して真空の誘電率(=8.855×10−12(F/m))を乗じることにより算出できる。
【0056】
このような誘電特性を有するフィルムでは、剛直な棒状分子の方向性が制御された結果、分子配向度を示すSOR(Segment Orientation Ratio)が、例えば、SOR≦1.20(例えば、1.02〜1.20程度)であってもよく、好ましくは1.05〜1.19、さらに好ましくは1.07〜1.19であってもよい。ここで、分子配向度SORとは、分子配向の度合いを与える指標をいい、従来のMOR(Molecular Orientation Ratio)とは異なり、物体の厚さを考慮した値である。本発明で使用する熱可塑性液晶ポリマーフィルムのSORは、MD方向の誘電特性を改善し且つMD方向とTD方向との間における機械的性質および熱的性質のバランスが良好を考慮する必要があり、SORは、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
【0057】
本発明において使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、実際の使用に耐えうる強度を示すため、たとえば、そのMD方向の破断強度とTD方向の破断強度の比(RMD/RTD)が、1〜3程度であってもよく、好ましくは1.1〜2.8程度、さらに好ましくは1.2〜2.5程度であってもよい。なお、ここでいう破断強度は、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
【0058】
また、本発明において使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムは吸湿性が低く、その平衡水分率は、例えば1.5%以下(例えば、0.01〜1.4%)、好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは1.0%以下であってもよい。なお、ここでいう平衡水分率は、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
【0059】
本発明において使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、任意の厚みであってもよく、そして、5mm以下の板状またはシート状のものをも包含する。ただし、高周波伝送線路に使用する場合は、厚みが厚いほど伝送損失が小さくなるので、できるだけ厚みを厚くする必要がある。しかしながら電気絶縁層として熱可塑性液晶ポリマーフィルムを単独で用いる場合、そのフィルムの膜厚は、10〜500μmの範囲内にあることが好ましく、15〜200μmの範囲内がより好ましい。フィルムの厚さが薄過ぎる場合には、フィルムの剛性や強度が小さくなることから、フィルム膜厚10〜200μmの範囲のフィルムを積層させて任意の厚みを得る方法を使用してもよい。
【0060】
(伝送線路)
本発明の伝送線路は、少なくとも1つの導体と、少なくとも1つの絶縁体とを含んでおり、上記熱可塑性液晶ポリマーフィルムを絶縁体として用いる限り、その形態は特に限定されず、長手方向に伸びる各種伝送線路、例えば、同軸線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレナー線路、平行線路などの公知または慣用の伝送線路とすることが可能である。
【0061】
いずれの伝送線路においても、絶縁体として用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、そのTD方向と伝送線路の長手方向とを略同一方向にするように、伝送線路において配設されている。なお、TD方向と長手方向とが略同一方向であるとは、TD方向と長手方向とで形成される角度が、−10°〜+10°の範囲(好ましくは−5°〜+5°の範囲)にあることを意味している。
【0062】
伝送線路は、一般に長手方向と幅方向の長さが異なっており、本発明で用いられる液晶ポリマーフィルムの誘電特性を有効に利用する観点から、たとえば、伝送線路の長手方向と幅方向の長さの比が2倍以上であってもよく、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上であってもよい。なお、伝送線路の長手方向と幅方向の長さの比は、実用上の観点から20倍以下である場合が多い。
【0063】
例えば、図1〜図5には、各種伝送線路の概略断面図および概略斜視図が示されている。まず、図1に示すように、長手方向に伸びる同軸線路10の場合、その基本構造は、軸断面が略円形である線状の内部導体13と、その外周に同心円状に配設された絶縁体12と、この絶縁体の外周に同心円状に配設された外部導体14で構成されている。ここで、絶縁体12を構成する液晶ポリマーフィルムのTD方向は、同軸線路10の長手方向(X方向)と同一方向に向けられている。
【0064】
また、図2に示すように、ストリップ線路20の場合、その基本構造は、軸断面が略長方形状の絶縁体22と、絶縁体22の内部に配設された信号ラインとしてのストリップ状の中心導体23と、絶縁体22を挟んで両側に配設された面状接地導体24,24で構成されている。ここで、絶縁体22を構成する液晶ポリマーフィルムのTD方向は、ストリップ線路20の長手方向(X方向)と同一方向に向けられている。
【0065】
また、図3に示すように、マイクロ・ストリップ線路30の場合、その基本構造は、軸断面が略長方形状の絶縁体32と、その上面に配設された信号ラインとしての中心導体33と、その下面に配設された面状接地導体34とで構成されている。ここで、絶縁体32を構成する液晶ポリマーフィルムのTD方向は、マイクロ・ストリップ線路30の長手方向(X方向)と同一方向に向けられている。
【0066】
さらに、図4に示すように、コプレナー線路40の場合、その基本構造は、軸断面が略長方形状の絶縁体42と、その上面に配設されたストリップ状の中心導体43と、その両側に一定幅の間隙を介して中心導体43と平行に配設された面状接地導体44,44とで構成されている。ここで、絶縁体42を構成する液晶ポリマーフィルムのTD方向は、コプレナー線路40の長手方向(X方向)と同一方向に向けられている。
【0067】
また、図5に示すように、平行線路50の場合、その基本構造は、軸断面が略長方形状の絶縁体52と、その上面に配設された複数の導体53,53とで構成されている。ここで、絶縁体52を構成する液晶ポリマーフィルムのTD方向は、平行線路50の長手方向(X方向)と同一方向に向けられている。
【0068】
なお、図示はしていないが、本発明の伝送線路は、上述した基本構造に加え、例えば、伝送線路の基本構造を覆うためのジャケットや、信号ラインと接続するための端子などを有していてもよい。
【0069】
導体(または導電体)は、前記熱可塑性液晶ポリマーフィルムの一方の面に形成され、所定のパターンの信号ラインやグラウンドプレーンラインを構成している。このような導体の形成は、公知又は慣用の方法により行なわれ、スパッタリング法、メッキ法などを用いてもよい。また、例えば、前記熱可塑性液晶ポリマーフィルムに対して、導体シートを熱圧着などの公知又は慣用の方法により貼り付けた後、感光性レジスト処理、露光、エッチング加工を経て、所定のパターンの信号ラインやグラウンドプレーンラインを、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの一方の面に形成してもよい。
【0070】
なお、導体としては、電気的接続に使用されるような金属が好適であり、銅のほか金、銀、ニッケル、アルミニウムなどを挙げることができる。銅箔は圧延法、電気分解法などによって製造される何れのものでも用いることができるが、表面粗さの大きい電気分解法によって製造されるものが好ましい。金属箔には、銅箔に対して通常施される酸洗浄などの化学的処理が施されていてもよい。これらの金属のうち、銅が好ましく用いられる。
【0071】
導体(または導電体)の厚さは、伝送線路の種類や、伝送線路内部での役割に応じて適宜設定することが可能であるが、例えば、1〜100μmの範囲内であってもよく、5〜50μmの範囲内が好ましく、10〜35μmの範囲内がより好ましい。
【0072】
本発明の伝送線路は、このように優れた誘電特性を有するため、同軸ケーブル、ストリップラインなどの各種電気伝送線路として有効に利用することができ、特に、使用の際に耐屈曲性や低吸湿性が求められる伝送線路として、好適に用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例においては、下記の方法により各種物性を測定した。
【0074】
[融点]
示差走査熱量計を用いて、フィルムの熱挙動を観察して得た。つまり、供試フィルムを20℃/分の速度で昇温して完全に溶融させた後、溶融物を50℃/分の速度で50℃まで急冷し、再び20℃/分の速度で昇温した時に現れる吸熱ピークの位置を、フィルムの融点として記録した。
【0075】
[膜厚]
膜厚は、デジタル厚み計(株式会社ミツトヨ製)を用い、選られたフィルムをTD方向に1cm間隔で測定し、中心部および端部から任意に選んだ10点の平均値を膜厚とした。
【0076】
[力学物性測定]
ASTM D882に準じて力学物性測定装置(ORIENTEC RTE-1210)を使用してフィルム破断強度を測定した。なお、破断強度比の定義:MD破断強度/TD破断強度である。
【0077】
[平衡水分率 %]
JIS L1013に準拠し、試料を120℃の雰囲気中で絶乾した後、温度20℃かつ相対湿度65%RHにおいて72時間調整し、絶乾状態での試料の質量に対する試料中に含まれる水分率を算出し、これを百分率(%)にて表した。
【0078】
[誘電特性]
誘電率測定は周波数10GHzで共振摂動法により実施した。ネットワークアナライザ(Agilent Technology社製「E8362B」)に1GHzの空洞共振器((株)関東電子応用開発)を接続し、空洞共振器に微小な材料(幅:2.7mm×長さ:45mm)を挿入し、温度20℃、湿度65%RH環境下、96時間の挿入前後の共振周波数の変化から材料の誘電率および誘電損失を測定した。
【0079】
なお、誘電率比(PTD/PMD)の定義:TD方向の誘電率/MD方向の誘電率であり、誘電正接比(DTD/DMD)の定義:TD方向の誘電正接/MD方向の誘電正接である。
【0080】
[分子配向度(SOR)]
マイクロ波分子配向度測定機において、液晶ポリマーフィルムを、マイクロ波の進行方向にフィルム面が垂直になるように、マイクロ波共振導波管中に挿入し、該フィルムを透過したマイクロ波の電場強度(マイクロ波透過強度)が測定される。
【0081】
そして、この測定値に基づいて、次式により、m値(屈折率と称する)が算出される。
m=(Zo/△z) X [1−νmax/νo]
【0082】
ただし、Zoは装置定数、△z は物体の平均厚、νmaxはマイクロ波の振動数を変化させたとき、最大のマイクロ波透過強度を与える振動数、νoは平均厚ゼロのとき(すなわち物体がないとき)の最大マイクロ波透過強度を与える振動数である。
【0083】
次に、マイクロ波の振動方向に対する物体の回転角が0°のとき、つまり、マイクロ波の振動方向と、物体の分子が最もよく配向されている方向であって、最小マイクロ波透過強度を与える方向とが合致しているときのm値をm0、回転角が90°のときのm値をm90として、分子配向度SORがm0/ m90により算出される。
【0084】
[特性インピーダンス]
特性インピーダンス測定器(アジレント・テクノロジー(株)製、86100C/54754A)を使用し、10GHzの周波数で測定を行なった。
【0085】
[伝送損失]
ベクトル・ネットワークアナライザ(アジレント・テクノロジー(株)製、HP8753D)を使用し、温度20℃、湿度65%RH環境下、3〜10GHzの周波数の範囲において伝送損失を測定した。
【0086】
(実施例1)
(1)熱可塑性液晶ポリマーフィルムの作製
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)で、融点が280℃である熱可塑性液晶ポリマーを単軸押出機で加熱混練し、ダイ直径33.5mm、ダイスリット間隔950μmの環状インフレーションダイから、ダイ剪断速度500秒−1で溶融押出して、縦の延伸比(Dr)2.9、横の延伸比(Bl)6.2の条件で、融点280℃、膜厚100μm、SOR1.07、平衡水分率0.04%、誘電正接比(DTD/DMD)1.00のフィルムを得た。
【0087】
(2)ストリップ線路の作製
(1)で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム1と、幅100μm、厚み12μmの中心導体3とを使用して、長さ150mm、幅0.1mmのストリップ線路を以下に述べる方法で作製した。なお、絶縁層の厚みと誘電率から特性インピーダンス(Z0)が50±2Ωになるように配線幅を設計した。
【0088】
具体的には、まず、図6(a)に示すように、2枚の熱可塑性液晶ポリマーフィルム1,1について、それぞれのフィルムのTD方向がストリップ線路の長手方向となるように位置あわせをし、中心導体(信号ラインとしての導体)3を、中心導体3の長手方向がストリップ線路の長手方向と一致するようにして前記熱可塑性液晶ポリマーフィルム1,1で上下に挟み、さらにこれらの熱可塑性液晶ポリマーフィルム1,1の外側にグラウンドプレーンとしての面状接地導体4,4を配設して、組立体を作製した。
【0089】
ついで、この組立体を熱プレス装置の金属プレート5,5の間に入れ、金属プレートの表面温度260度、面圧4MPaの条件で熱圧着させ、(b)に示すストリップ線路を作製した。このストリップ線路は、軸断面が略長方形状の線状の絶縁体2と、絶縁体2の内部に配設された信号ラインとしてのストリップ状の中心導体3と、絶縁体2を挟んで両側に配設された面状接地導体4,4で構成されている。ここで、(c)に示すように、絶縁体2を構成する液晶ポリマーフィルムのTD方向は、ストリップ線路の長手方向(X方向)に向けられている。
【0090】
(実施例2)
熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、以下のフィルムで形成する以外は、実施例1と同様にしてストリップ線路を作製した。すなわち、実施例1と同様の熱可塑性液晶ポリマーを単軸押出機で加熱混練し、ダイ直径33.5mm、ダイスリット間隔900μmの環状インフレーションダイから、ダイ剪断速度450秒−1で溶融押出して、縦の延伸比(Dr)7.9、横の延伸比(Bl)4.7の条件で、融点280℃、膜厚100μm、SOR1.12、平衡水分率0.04%、誘電正接比(DTD/DMD)0.91のフィルムを得た。
【0091】
(実施例3)
熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、以下のフィルムで形成する以外は、実施例1と同様にしてストリップ線路を作製した。すなわち、実施例1と同様の熱可塑性液晶ポリマーを単軸押出機で加熱混練し、ダイ直径33.5mm、ダイスリット間隔900μmの環状インフレーションダイから、ダイ剪断速度500秒−1で溶融押出して、縦の延伸比(Dr)5.2、横の延伸比(Bl)3.3の条件で、融点280℃、膜厚100μm、SOR1.18、平衡水分率0.04%、誘電正接比(DTD/DMD)0.77のフィルムを得た。
【0092】
(比較例1)
熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、以下のフィルムで形成する以外は、実施例1と同様にしてストリップ線路を作製した。すなわち、実施例1と同様の熱可塑性液晶ポリマーを単軸押出機で加熱混練し、ダイ直径33.5mm、ダイスリット間隔700μmの環状インフレーションダイから、ダイ剪断速度700秒−1で溶融押出して、縦の延伸比(Dr)2.2、横の延伸比(Bl)6.2の条件で、融点280℃、膜厚100μm、SOR1.01、平衡水分率0.04%、誘電正接比(DTD/DMD)1.03のフィルムを得た。
【0093】
得られたフィルムの物性およびストリップ線路の物性を、それぞれ表7および表8に示す。
【0094】
【表7】

【0095】
【表8】

【0096】
表7に示すように、実施例1〜3の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、TD方向の誘電正接がMD方向の誘電正接よりも低く、また、比誘電率についても、TD方向の比誘電率がMD方向の比誘電率よりも低くすることができる。
【0097】
このように、熱可塑性液晶ポリマーフィルムでは、誘電特性については異方性が発生しているが、それぞれの方向における破断強度は、実用上問題のない範囲であり、MD方向とTD方向の間で発生する比も3倍以内に収まっている。また、平衡水分率も低い値であるため、吸湿性が低い。
【0098】
さらに、表8に示すように、このような液晶ポリマーフィルムの誘電正接の特性を利用して得られた伝送線路については、その伝送損失を低い値に抑えることが可能である。また、伝送速度は、真空中の光速を、誘電体の比誘電率の平方根で除することにより算出可能であるため、液晶ポリマーフィルムの誘電率の低減に伴って、その速度を向上できることがわかる。
【0099】
一方、比較例1の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、TD方向の誘電正接がMD方向の誘電正接よりも高く、その結果、この液晶ポリマーフィルムを用いた伝送線路については、その伝送損失を低い値に抑えることができない。また、比誘電率についても、TD方向の比誘電率がMD方向の比誘電率と同程度であるため、フィルムのTD方向を伝送線路の長手方向と一致させても、その伝送速度を向上させることはできない。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の伝送線路は、電気・電子製品の伝送線路材料として利用することが可能であり、特に、強度、低吸湿性、耐薬品性に優れているため、携帯電話、コンピュータなどの携帯用途の電気・電子製品へ用いるための伝送線路として、または、屋外用途の電気・電子製品へ用いるための伝送線路として、有効に利用することができる。
【0101】
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1…熱可塑性液晶ポリマーフィルム
2,12,22,32,42,52…絶縁体
3,23,33,43…中心導体
4,24,34,44…面状接地導体
5…金属プレート
10…同軸線路
13…内部導体
14…外部導体
20…ストリップ線路
30…マイクロ・ストリップ線路
40…コプレナー線路
50…平行線路
53…導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの導体と、少なくとも1つの絶縁体とを含む伝送線路であって、
前記絶縁体は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムから形成され、この熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、フィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)とこれと直交する方向(以下、TD方向と略す)の1GHz以上の周波数における誘電正接の比(DTD/DMD)が1.02以下であり;
前記熱可塑性液晶ポリマーフィルムのTD方向と、前記伝送線路の長手方向とが略同一方向に配設されている伝送線路。
【請求項2】
請求項1において、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの1GHz以上の周波数における誘電率の比(PTD/PMD)が1.0未満である伝送線路。
【請求項3】
請求項1または2において、熱可塑性液晶ポリマーフィルムのMD方向の破断強度とTD方向の破断強度の比(RMD/RTD)が、1〜3である伝送線路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの分子配向度SORが、1.02〜1.20である伝送線路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの平衡水分率が1.5%以下である
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、伝送線路の長手方向と幅方向の長さの比が2倍以上である伝送線路。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載された伝送線路において、絶縁体として用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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