説明

伝送線路

【課題】 従来構造のNRDガイドに比べて安価で高精度に製造でき、かつ、NRDガイドと同等以上の伝送特性を実現することができるようにした伝送線路を提供する。
【解決手段】 伝送線路1は、第1および第2の誘電体層11,12と、第1および第2の誘電体層11,12に挟まれるように積層された第3の誘電体層13と、第1〜第3の誘電体層11〜13を貫通する複数の第1のスルーホール21および複数の第2のスルーホール22とを備える。中間層である第3の誘電体層13は、第1および第2の誘電体層11,12の誘電率ε2よりも、相対的に高い誘電率ε1を有している。第1および第2のスルーホール21,22の列によって挟まれた領域内において、LSM01モードの電磁波のほとんどが、相対的に誘電率の高い第3の誘電体層13内を伝搬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマイクロ波やミリ波の伝搬に用いられる伝送線路に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波帯やミリ波帯の信号を伝送する伝送線路として、非放射性誘電体線路(Nonradiative Dielectric Waveguide;以下、NRDガイドという。)が知られている。NRDガイドは、図12(A)に示したように、互いに対向配置された上側金属板101および下側金属板102と、それらの金属板101,102に挟まれた誘電体線路103とによって構成される。このNRDガイドでは、電磁波信号が誘電体線路103内に伝搬される。このNRDガイドによれば、従来の誘電体線路(マイクロストリップライン等)に比べて、線路の曲がり部分や不連続部分での不要放射を抑制できるので、極めて高性能な誘電体線路を実現できる。
【0003】
ここで、NRDガイドの伝送モードには、大別してLSMモードとLSEモードとがある。図12(A),(B)にはそれぞれ、LSM01モードにおける電界E(LSM01)の分布、および磁界H(LSM01)の分布を模式的に示す。LSM01モードにおいては、電磁波の伝搬方向(図のz方向)に平行、かつ上下の金属板101,102に垂直な面内にのみ磁界ベクトルHが存在する。一方、図13(A),(B)にはそれぞれ、LSE01モードにおける電界E(LSE01)の分布、および磁界H(LSE01)の分布を模式的に示す。LSE01モードにおいては、伝搬方向に対して平行、かつ上下の金属板101,102に垂直な面内にのみ電界ベクトルEが存在する。
【0004】
通常、LSMモードとLSEモードのうち、LSMモードの方が励振が容易でかつ低損失であることから、実用的にはLSMモードが動作モードとして選ばれる。この場合、LSEモードは不要な伝送モードとなるため伝搬しないようにする必要がある。特許文献1には、NRDガイドにおいてLSEモードを遮断するために、誘電体線路中に導体ピンを設ける方法や、誘電体線路中に串状パターンからなる導体ホイルを設ける方法が記載されている(特許文献1の図1、図14等)。
【特許文献1】特開平9−219608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では加工が複雑になり、製造性の点で問題がある。また、従来のNRDガイド自体の構造も、構造的強度を保つためには上下の金属板101,102を支持する構造が別途必要で、製造が難しいという問題がある。さらに金属板101,102と誘電体線路103とを隙間無く密着させなければならず、加工精度を出すのが難しいという問題がある。密着が不十分であると、伝搬特性が変わり所望の特性が得られなくなるおそれがある。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、従来構造のNRDガイドに比べて安価で高精度に製造でき、かつ、従来のNRDガイドと同等以上の伝送特性を実現することができるようにした伝送線路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による伝送線路は、所定の誘電率を有する第1および第2の誘電体層と、第1および第2の誘電体層の誘電率よりも大きい誘電率を有し、第1および第2の誘電体層に挟まれるように積層された第3の誘電体層と、第1、第2および第3の誘電体層を貫通すると共に、列状に配設された複数の第1のスルーホールと、第1、第2および第3の誘電体層を貫通し、かつ第1のスルーホールに並列的に配設された複数の第2のスルーホールとを備えたものである。
【0008】
本発明による伝送線路において、第1および第2のスルーホールは例えば、内壁面が導電体で覆われ、LSMモードとLSEモードで伝搬される電磁波のうち、LSMモードの電磁波に対してのみ擬似的な導体壁として機能するものである。
【0009】
本発明による伝送線路では、第1および第2のスルーホールが、伝搬対象の電磁波に対し擬似的な導体壁として機能する。そして、第1および第2のスルーホールの列によって挟まれた領域内において、伝搬対象の電磁波のほとんどが、相対的に誘電率の高い第3の誘電体層内を伝搬する。これによって、従来のNRDガイドと同等以上の伝送特性を実現する。また、上下の金属板の間に誘電体線路を挟み込む従来構造のNRDガイドに比べ、構造的強度および製造性の点で有利となる。
【0010】
本発明による伝送線路はまた、第1および第2の誘電体層における、第3の誘電体層の積層面とは反対側の表面全体に積層された導体層をさらに備えていても良い。
【0011】
本発明による伝送線路はまた、第1および第2の誘電体層における、第3の誘電体層の積層面とは反対側の表面の一部の領域に積層された導体層をさらに備えていても良い。
この場合、導体層は例えば、第1および第2の誘電体層の表面において、第1および第2のスルーホールの列によって挟まれた領域の外側に形成することができる。また逆に、導体層が、第1および第2の誘電体層の表面において、第1および第2のスルーホールの列によって挟まれた領域内に形成されていても良い。
【0012】
第1および第2の誘電体層の表面全体または一部に導体層を設けた場合には、外部への不要な電磁波の漏えいもしくは伝搬が防止される。
【0013】
本発明による伝送線路はさらに、第1および第2の誘電体層の少なくとも一方における第1および第2のスルーホールの列によって挟まれた領域内に、部分的に空気層が形成されていても良い。
この場合、第1および第2の誘電体層と第3の誘電体層との誘電率差を大きくでき、伝送特性がより向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の伝送線路によれば、相対的に誘電率の高い第3の誘電体層を、第1および第2の誘電体層に挟まれるように積層し、かつ第1および第2のスルーホールを第1、第2および第3の誘電体層を貫通するように列状に配設するようにしたので、従来構造のNRDガイドに比べて安価で高精度に製造でき、かつ、NRDガイドと同等の伝送特性を実現することができる。
【0015】
本発明の伝送線路において、特に、第1および第2の誘電体層における、第3の誘電体層の積層面とは反対側の表面の全体または一部に導体層を設けるようにした場合には、外部への不要な電磁波の漏えいもしくは伝搬を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1および図2は、本発明の第1の実施の形態に係る伝送線路1の一構成例を示している。この伝送線路1は、第1および第2の誘電体層11,12と、第1および第2の誘電体層11,12に挟まれるように積層された第3の誘電体層13と、第1〜第3の誘電体層11〜13を貫通する複数の第1のスルーホール21および複数の第2のスルーホール22とを備えている。
【0018】
第1〜第3の誘電体層11〜13は、電磁波の伝搬方向Sに対し垂直方向に積層されている。中間層である第3の誘電体層13は、上下層である第1および第2の誘電体層11,12の誘電率ε2よりも、相対的に高い誘電率ε1を有している。後述するように、第1および第2の誘電体層11,12と第3の誘電体層13は、できるだけ大きい誘電率差を有している方が、第1および第2の誘電体層11,12において不要な電場波を減衰させ、また第3の誘電体層13内に電場波が伝搬され易くなるので望ましい。
【0019】
なお、第3の誘電体層13の誘電率ε1よりも低い誘電率を有している限りにおいて、第1および第2の誘電体層11,12の誘電率が互いに異なっていても良い。例えば他の伝送路との結合を行う場合には、第1および第2の誘電体層11,12のうち、結合を行う層の誘電率を高めに設定しても良い。また、第1および第2の誘電体層11,12の厚みは互いに異なっていても良いが、同じ厚みである方が上下方向に対称的な構造となり、応力のバランスが取れて構造的な強度が高くなるので好ましい。
【0020】
第1のスルーホール21は、電磁波の伝搬方向Sに複数、列状に配設されている。第2のスルーホール22も同様に複数、列状に配設され、第1のスルーホール21に並列的に配設されている。第1および第2のスルーホール21,22の内壁面は金属などの導電体で覆われている。または、内部に金属などの導電体が充填されていても良い。第1および第2のスルーホール21,22の断面形状は、円形に限らず、多角形または楕円等、他の形状であっても良い。第1および第2のスルーホール21,22は、伝搬対象の電磁波が漏れ出さないよう、所定値以下の間隔(例えば隣り合う各スルーホール間の間隔Dと各スルーホールの直径dとが同じとなるような間隔)で設けられており、伝搬対象の電磁波に対し擬似的な導体壁として機能している。特に、後述するように、LSM01モードの電磁波に対して良好に擬似的な導体壁として機能する。
【0021】
次に、この伝送線路1の作用を説明する。
【0022】
この伝送線路1は、図12(A)の従来構造のNRDガイドと比較すると、図12(A)のz方向を軸として90°回転させた状態において、誘電体線路103の上下方向に第1および第2の誘電体層11,12を積層し、金属板101,102をスルーホール21,22で形成したような構造となっている。従って、この伝送線路1も、NRDガイドと同様にLSM01モードを伝搬する線路として機能する。すなわち、この伝送線路1では、第1および第2のスルーホール21,22の列によって挟まれた領域内において、伝搬対象であるLSM01モードの電磁波のほとんどが、後述する理由により相対的に誘電率の高い第3の誘電体層13内を伝搬する。
【0023】
図2および図3は、この伝送線路1内におけるLSM01モードの電界E(LSM01)の分布、および磁界H(LSM01)の分布を模式的に示している。図示したように、LSM01モードでの磁界H(LSM01)は、第1および第2のスルーホール21,22に直交する面内に環状に分布している。
【0024】
ここで、図4(A),(B)に、第1のスルーホール21の近辺におけるLSM01モードの磁界H(LSM01)の分布、およびLSE01モードの磁界H(LSE01)の分布を模式的に示す。この伝送線路1では、第1のスルーホール21に対して磁界Hが直交する電磁波、すなわち磁界H(LSM01)が直交するLSM01モードの電磁波に対しては第1のスルーホール21が擬似的な金属壁として機能する。一方、第1のスルーホール21に対して磁界Hが平行となる電磁波、すなわち磁界H(LSE01)が平行となるLSE01モードの電磁波に対しては第1のスルーホール21が金属壁として機能せず、外部に電磁波が漏れ出すように機能する。なお、第2のスルーホール22についても同様である。すなわち、この伝送線路1では、第1および第2のスルーホール21,22によって挟まれた領域内では、LSM01モードとLSE01モードのうち、主としてLSM01モードの電磁波のみが伝搬される。なお、外部に漏れ出すLSE01モードの電磁波が問題となる場合には、伝送線路1の側面周囲に電波吸収体を設けるなどすれば良い。
【0025】
次に、第1〜第3の誘電体層11〜13の積層方向での電磁波の分布を考察する。空間に存在する電磁波のエネルギー密度Vは誘電率ε、電界ベクトルEを用いて(1)式で表される。また、電界の大きさ|E|は誘電率εに反比例するので、(2)式が成り立つ。すなわち、(3)式のように、電磁波のエネルギー密度Vは、誘電率εに反比例する。これは、誘電率εの大きい空間は、エネルギー密度Vが下がることを意味する。
V=ε|E|2 ……(1)
|E|∝1/ε ……(2)
V∝1/ε ……(3)
【0026】
ここで、図5に、従来のNRDガイドにおける電磁波のエネルギー密度分布110を模式的に示す。自然界のエネルギーは、エネルギーの低い方向に拡散する性質がある。すなわち電磁波は、エネルギー密度Vの低い誘電率εの大きい空間に拡散する。従って、例えば従来のNRDガイドのように誘電体線路103の左右方向が空気層であれば、電磁波は誘電率εの低い空気中に存在するよりは誘電率εの高い誘電体線路103の部分を通ろうとする。これにより、NRDガイド内で電磁波が伝搬されるとき、その電磁波のエネルギー分布110は図5に示したように、誘電体線路103の部分で高く、左右方向に指数関数的に減衰するような分布となる。
【0027】
一方、本実施の形態における伝送線路1では、第3の誘電体層13が相対的に高い誘電率ε1を有しているので、入力された電磁波の多くは第3の誘電体層13を通り、上下層の第1および第2の誘電体層11,12では電磁波が指数関数的に減衰する。そして、その減衰の度合いは第1および第2の誘電体層11,12と第3の誘電体層13との誘電率差に依存する。従って、大きい誘電率差を有している方が、第1および第2の誘電体層11,12において不要な電場波を減衰させ、また第3の誘電体層13内に電場波が伝搬され易くなるので望ましいと言える。なお、理論的には第1および第2の誘電体層11,12を空気層とした方が、第3の誘電体層13との誘電率差を大きくでき、伝送特性上好ましい。しかしながらその場合、第1および第2のスルーホール21,22を導体ピンなどで構成する必要があり、また構造的な強度を保つことが難しくなるので構造および製造上、現実的ではない。
【0028】
以上のようにして、この伝送線路1では、スルーホール構造と誘電体層の積層構造とにより、LSM01モードを伝搬する線路として、従来のNRDガイドと同等以上の伝送特性が実現される。また、外周全体が金属で囲まれている導波管に比べて、金属層が少ないので、導体損失が少なく伝送特性に優れている。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態によれば、相対的に誘電率の高い第3の誘電体層13を、第1および第2の誘電体層11,12に挟まれるように積層し、かつ第1および第2のスルーホール21,22を第1〜第3の誘電体層11〜13を貫通するように列状に配設するようにしたので、従来構造のNRDガイドに比べて安価で高精度に製造でき、かつ、NRDガイドと同等の伝送特性を実現することができる。
[第2の実施の形態]
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、図1の構成と実質的に同一の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0031】
図6および図7は、本発明の第2の実施の形態に係る伝送線路2の一構成例を示している。この伝送線路2は、図1に示した伝送線路1の構成に対し、第1および第2の誘電体層11,12における、第3の誘電体層13の積層面とは反対側の表面全体に金属からなる第1および第2の導体層31,32を積層したものである。第1および第2の導体層31,32は、例えば板状の金属を第1および第2の誘電体層11,12の表面に貼り付けることで形成することができる。また、印刷法により金属の層を形成するようにしても良い。
【0032】
上述したように、図1に示した伝送線路1では、入力された電磁波の多くは第3の誘電体層13を通り、上下層の第1および第2の誘電体層11,12では電磁波が指数関数的に減衰する。しかしながら、十分減衰しきれずに外部に漏れ出す電磁波成分が生ずる場合も考えられる。本実施の形態に係る伝送線路2では、第1および第2の導体層31,32が電磁波の遮蔽版として機能し、そのような外部に漏れ出す不要な電磁波成分の伝搬が防止される。
【0033】
以上説明したように、この第2の実施の形態によれば、第1および第2の誘電体層11,12の表面全体に第1および第2の導体層31,32を設けるようにしたので、外部への不要な電磁波の漏えいもしくは伝搬を確実に防止することができる。
[第3の実施の形態]
【0034】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。なお、図1の構成と実質的に同一の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。図6および図7の構成例では、第1および第2の誘電体層11,12の表面全体に第1および第2の導体層31,32を設けるようにしたが、本実施の形態は、第1および第2の誘電体層11,12の表面の一部に導体層を設けるようにしたものである。
【0035】
図8は、本実施の形態の第1の構成例に係る伝送線路3の構成を示している。この伝送線路3は、図1に示した伝送線路1の構成に対し、第1および第2の誘電体層11,12における、第3の誘電体層13の積層面とは反対側の表面の一部に金属からなる第1の導体層31A,31Bおよび第2の導体層32A,32Bを積層したものである。より詳しくは、第1および第2の誘電体層11,12の表面において、第1および第2のスルーホール21,22の列によって挟まれた領域の外側の領域に、第1の導体層31A,31Bおよび第2の導体層32A,32Bが形成されている。第1の導体層31A,31Bおよび第2の導体層32A,32Bは、例えば印刷法により金属を塗布することで形成することができる。
【0036】
図1に示した伝送線路1では、第1および第2のスルーホール21,22の列によって挟まれた領域内から外部に漏れ出した電磁波が、さらにその領域外において第1〜第3の誘電体層11〜13に侵入し、不要な電磁波成分として伝搬されてしまう場合も考えられる。この伝送線路3では、第1の導体層31A,31Bおよび第2の導体層32A,32Bが電磁波の遮蔽版として機能し、そのような第1〜第3の誘電体層11〜13に侵入する不要な電磁波成分41,42の伝搬が防止される。
【0037】
図9は、本実施の形態の第2の構成例に係る伝送線路4の構成を示している。この伝送線路4は、図8に示した第1の構成例に係る伝送線路3とは逆に、第1および第2の誘電体層11,12の表面において、第1および第2のスルーホール21,22の列によって挟まれた内側の領域に、第1の導体層31Cおよび第2の導体層32Cを積層したものである。第1および第2の導体層31C,32Cは、例えば印刷法により金属を塗布することで形成することができる。
【0038】
この伝送線路4では、第1および第2の導体層31C,32Cが電磁波の遮蔽版として機能し、図6および図7に示した伝送線路2と同様、第1および第2のスルーホール21,22の列によって挟まれた領域内から外部に漏れ出す不要な電磁波成分の伝搬が防止される。
【0039】
以上説明したように、この第3の実施の形態によれば、第1および第2の誘電体層11,12の表面の一部に導体層を設けるようにしたので、外部への不要な電磁波の漏えいもしくは伝搬を確実に防止することができる。
【0040】
なお、本発明は、以上で説明した各実施の形態に限定されず、さらに種々の変形実施が可能である。例えば本発明の伝送線路は、直線状に限らず曲線状であっても良い。この場合、図10に示したように、電磁波を伝搬させたい方向Sに沿って、第1および第2のスルーホール21,22を曲線状に設ければ良い。スルーホールを形成する位置を変更するだけなので、構造的に曲線状の伝送線路を容易に製造できる。
【0041】
また、上述したように本発明の伝送線路では、第1および第2の誘電体層11,12と第3の誘電体層13との誘電率差が大きい方が伝送特性上、好ましいが、この誘電率差を大きくするために、第1および第2の誘電体層11,12の内部に空気層を形成するようにしても良い。
【0042】
例えば図11(A)に示したように、第1および第2の誘電体層11,12における、第1および第2のスルーホール21,22の列によって挟まれた領域内に、スルーホール状の第1および第2の空気孔23,24を所定の間隔で複数、形成するようにしても良い。第1および第2の空気孔23,24は、擬似的な導体壁として機能する第1および第2のスルーホール21,22とは異なり、内部には金属加工などはなされていない。第1および第2の空気孔23,24が設けられていることにより、第1および第2の誘電体層11,12の内部が部分的に空気層となるので、その部分では誘電率が下がり、見掛け上、第1および第2の誘電体層11,12の全体としての誘電率が下がる。これにより、第3の誘電体層13との誘電率差をより大きくでき、伝送特性がより向上する。
【0043】
なお、図11(B)に示したように、第1および第2の空気孔23,24が第3の誘電体層13の表面にまで達しておらず、第1および第2の誘電体層11,12の途中までしか形成されていなくとも良い。また、第1および第2の誘電体層11,12のいずれか一方にのみ空気孔を形成するようにしても良い。また、空気孔の形状は円形に限らず、どのような形状であっても良い。さらに、第1および第2の誘電体層11,12に形成する空気層はスルーホール状のものに限らず、例えば層の表面の中央部分を部分的に削り取るなどしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る伝送線路の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る伝送線路の断面構造を、LSM01モードの電界分布、および磁界分布と共に示した図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る伝送線路内におけるLSM01モードの磁界分布の状態を示した図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る伝送線路内におけるスルーホールの作用を説明した図である。
【図5】NRDガイドにおける電磁波のエネルギー密度分布を説明した図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る伝送線路の全体構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る伝送線路の断面構造を示した図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る伝送線路の第1の構成例を示した図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る伝送線路の第2の構成例を示した図である。
【図10】伝送線路を曲げる場合の構成例を示した図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る伝送線路の変形例を示す断面図である。
【図12】従来のNRDガイドの構造を、LSM01モードにおける電界分布および磁界分布と共に示した図である。
【図13】従来のNRDガイドの構造を、LSE01モードにおける電界分布および磁界分布と共に示した図である。
【符号の説明】
【0045】
11…第1の誘電体層、12…第2の誘電体層、13…第3の誘電体層、21…第1のスルーホール、22…第2のスルーホール、23…第1の空気孔、24…第2の空気孔、31,31A,31B,31C…第1の導体層、32,32A,32B,32C…第2の導体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の誘電率を有する第1および第2の誘電体層と、
前記第1および第2の誘電体層の誘電率よりも大きい誘電率を有し、前記第1および第2の誘電体層に挟まれるように積層された第3の誘電体層と、
前記第1、第2および第3の誘電体層を貫通すると共に、列状に配設された複数の第1のスルーホールと、
前記第1、第2および第3の誘電体層を貫通し、かつ前記第1のスルーホールに並列的に配設された複数の第2のスルーホールと
を備えたことを特徴とする伝送線路。
【請求項2】
前記第1および第2の誘電体層における、前記第3の誘電体層の積層面とは反対側の表面全体に積層された導体層をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送線路。
【請求項3】
前記第1および第2の誘電体層における、前記第3の誘電体層の積層面とは反対側の表面の一部の領域に積層された導体層をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の伝送線路。
【請求項4】
前記導体層は、前記第1および第2の誘電体層の表面において、前記第1および第2のスルーホールの列によって挟まれた領域の外側に形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の伝送線路。
【請求項5】
前記導体層は、前記第1および第2の誘電体層の表面において、前記第1および第2のスルーホールの列によって挟まれた領域内に形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の伝送線路。
【請求項6】
前記第1および第2のスルーホールは内壁面が導電体で覆われ、LSMモードとLSEモードで伝搬される電磁波のうち、LSMモードの電磁波に対してのみ擬似的な導体壁として機能するものである
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の伝送線路。
【請求項7】
前記第1および第2の誘電体層の少なくとも一方における前記第1および第2のスルーホールの列によって挟まれた領域内に、部分的に空気層が形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の伝送線路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−157706(P2006−157706A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347413(P2004−347413)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】