伸張要素を組み込んだ履物物品
【課題】材料要素の数を減少させることによって、履物の質量および廃棄物を減少させ、それと同時に生産効率およびリサイクル性を向上させる。
【解決手段】履物物品が靴底構造と、下地要素および伸張要素を含むアッパーとを有する。伸張要素はベース層および複数のストランドを含み、ベース層は下地要素の外部表面に接合される。履物の製造にあたって、ベース層の熱可塑性ポリマー材料を用いて伸張要素を下地要素に接着または接合してもよい。
【解決手段】履物物品が靴底構造と、下地要素および伸張要素を含むアッパーとを有する。伸張要素はベース層および複数のストランドを含み、ベース層は下地要素の外部表面に接合される。履物の製造にあたって、ベース層の熱可塑性ポリマー材料を用いて伸張要素を下地要素に接着または接合してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、伸張要素を組み込んだ履物物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、履物物品は2つの主な要素、すなわち、アッパーおよび靴底(ソール)構造を有する。アッパーは、互いに縫い合わせた、または接着剤で貼り合わせた、複数の材料要素(例えば、織物、ポリマーシート層、発泡層、革、合成皮革)から形成されていることが多く、足を快適で確実に収容するために履物の内部に空洞を形成する。より具体的には、アッパーは、足の内側側部および外側側部に沿い、また足の踵部分を回り、足の甲およびつま先の部分の上に延びる構造を形成する。また、アッパーは、履物のフィット性を調節すると共にアッパー内部の空洞から足の出し入れを可能にする紐システムを組み込んでいてもよい。さらにアッパーは、紐システムの下に延びて履物の調節性および快適性を高めるベロを備えていてもよく、また踵部カウンターを組み込んでいてもよい。
【0003】
アッパーを形成する種々の材料要素は、アッパーの異なる領域に特定の特性を与える。例えば、織物要素は通気性を提供し、足から湿気を吸収できる。発泡層は圧縮して快適性を与え、革は耐久性および耐摩耗性を与えることができる。
靴底構造は、足と地面との間に配置されるようにアッパーの下部に固定されている。運動靴では、例えば、靴底構造はミッドソールおよびアウトソールを含む。ミッドソールは、ウォーキング中、ランニング中および他の歩行活動中の地面反力を減衰する(すなわち、クッション性を与える)ポリマー発泡材料から形成されてもよい。またミッドソールは、例えば、力をさらに減衰したり、安定性を向上させたり、または足の動きに影響を及ぼしたりする流体を充填した区室、板、緩和部または他の要素を含んでいてもよい。アウトソールは、履物の接地要素を形成し、通常は地面捕捉性能を付与するテクスチュアリングを含んだ、耐久性および耐摩耗性を有するゴム材料から構成される。また、靴底構造は、履物の快適性を向上させるために、アッパー内部および足の下表面近くに配置される中敷きを含んでいてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
材料要素の数が増えるのに比例して、履物の総質量は増加する場合がある。また、材料要素の輸送、仕入れ、切断および接合に関連する時間および費用も増大する場合がある。その上、アッパーに組み込まれた材料要素の数が増えるに従って、切断および縫合工程からの廃棄物がかなりの程度たまるおそれがある。さらに、数少ない材料要素から形成された製品よりも、多くの材料要素を用いた製品の方が再利用の難しい場合がある。したがって、材料要素の数を減少させることによって、履物の質量および廃棄物を減少させることができ、それと同時に生産効率およびリサイクル性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
アッパーと前記アッパーに固定された靴底構造とを有する履物物品が、以下に開示される。アッパーは下地要素および伸張要素を含む。下地要素は内部表面および反対側の外部表面を有し、かかる内部表面は着用者の足を収容するためにアッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定する。伸張要素はベース層および複数のストランド(ひも)を含む。ベース層は下地要素の外部表面に固定され、ストランドと下地要素の外部表面との間に位置する。また、ベース層は外部表面の少なくとも1つの領域を露出する複数の縁部を画定し、各ストランドは、ベース層に接して配置され、少なくとも5センチメートルの距離にわたってベース層と実質的に平行である。
【0006】
また、履物物品を製造する方法も開示される。本方法は、ベース層とカバー層との間に複数のストランドを配置する工程を含む。ベース層は、加熱されて当該ベース層をカバー層に接合する熱可塑性ポリマー材料を含んでいてもよい。ベース層は履物物品のアッパーの下地要素に隣接して配置される。さらに、熱可塑性ポリマー材料でベース層を下地要素に接合し、下地要素の少なくとも一部が露出されてアッパーの外部表面を形成する。
【0007】
本発明の態様を特徴づける新規性の利点および特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に説明される。しかし、新規性の利点および特徴についてさらに理解を得るために、本発明に関連した様々な構成および概念について記載および例示する以下の記述および添付図面を参照してもよい。
本発明の上記の概要および以下の発明を実施するための形態は、添付の図面を参照して読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】履物物品の外側側部の立面図である。
【図2】履物物品の内側側部の立面図である。
【図3】履物物品の図2における切断線3−3に沿った横断面図である。
【図4】履物物品の外側側部の分解立面図である。
【図5】履物物品の内側側部の分解立面図である。
【図6】履物物品のアッパーで用いる伸張要素の平面図である。
【図7】伸張要素の図6における第1部分の斜視図である。
【図8】伸張要素の第1部分の分解斜視図である。
【図9A】伸張要素の図7における切断線9A−9Aに沿った第1部分の断面図である。
【図9B】伸張要素の図7における切断線9B−9Bに沿った第1部分の断面図である。
【図10】伸張要素の図6における第2部分の斜視図である。
【図11A】伸張要素を製造する工程の概略斜視図である。
【図11B】伸張要素を製造する工程の概略斜視図である。
【図11C】伸張要素を製造する工程の概略斜視図である。
【図11D】伸張要素を製造する工程の概略斜視図である。
【図11E】伸張要素を製造する工程の概略斜視図である。
【図12A】伸張要素を製造する工程の図11Aにおける切断線12A−12Aに沿った横断面図である。
【図12B】伸張要素を製造する工程の図11Bにおける切断線12B−12Bに沿った横断面図である。
【図12C】伸張要素を製造する工程の図11Cにおける切断線12C−12Cに沿った横断面図である。
【図13A】履物物品を製造する工程の外側側部の概略立面図である。
【図13B】履物物品を製造する工程の外側側部の概略立面図である。
【図14A】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図14B】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図14C】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図14D】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図14E】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図15A】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図15B】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図15C】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図15D】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図15E】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図15F】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図16A】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16B】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16C】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16D】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16E】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16F】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16G】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記の記述および添付図面により、種々のストランドを含む伸張要素を組み込んだ履物物品の様々な構成を開示する。履物物品はウォーキングまたはランニングに適した一般的な構造を有するように開示される。また、この履物物品に関連した概念は、例えば、野球シューズ、バスケットボールシューズ、クロストレーニングシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズおよびハイキングブーツなど他の様々な履物タイプにも適用できる。こうした概念はまた、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業靴などの運動以外に使用されると一般に考えられる履物タイプにも適用できる。したがって、本明細書中に開示の様々な概念は、多種多様な履物タイプに当てはまる。履物の他に、伸張性のあるストランドまたは伸張性のあるストランドに関連した概念は、他の様々な製品に組み込まれてもよい。
【0010】
一般的な履物構造
靴底構造20およびアッパー30を含む履物物品10を図1〜図5に示す。参考として、図1および図2に示すように、履物10は前方領域11、中間領域12および踵領域13という3つの一般的な領域に分けられてもよい。また、履物10は外側側部14および内側側部15を含む。前方領域11は一般に、足指(つま先)、および中足骨を指骨に連結している関節に対応する履物10の部分を含む。中間領域12は一般に、足のアーチ部分に対応する履物10の部分を含み、踵領域13は踵骨を含む足の後方部分に対応する。外側側部14および内側側部15は、各領域11〜13を通って延び、履物10の反対側の側面に対応する。各領域11〜13および各側部14〜15は、履物10の正確な領域を区分するものではなく、むしろ、以下の説明の理解を助けるために、履物10の一般的な各領域を表すことを意図したものである。また、履物10の他に、各領域11〜13および各側部14〜15も、靴底構造20、アッパー30およびそれらの各要素に適用される。
【0011】
靴底構造20はアッパー30に固定されており、履物10の着用時に足と地面との間に延びるものである。靴底構造20の主な要素としては、ミッドソール21、アウトソール22および中敷き23がある。ミッドソール21はアッパー30の下表面に固定され、ウォーキング中、ランニング中および他の歩行活動中に足と地面との間で圧縮される際に地面反力を減衰する(すなわち、クッション性を与える)圧縮可能なポリマー発泡要素(例えば、ポリウレタン発泡体またはエチルビニルアセテート発泡体)から形成されていてもよい。さらなる構成では、ミッドソール21は、力をさらに減衰したり、安定性を向上させたり、または足の動きに影響を及ぼしたりする流体を充填した区室(チャンバ)、板、緩和部もしくは他の要素を組み込んでいてもよく、または主に流体を充填した区室から形成されていてもよい。アウトソール22はミッドソール21の下表面に固定され、テキスチャが形成されて地面捕捉性能を付与した耐摩耗性のゴム材から形成されていてもよい。中敷き23はアッパー30内部に位置され、足の下表面の下に延びて配置される。このような靴底構造20に対する構成は、アッパー30に関連して用いられる靴底構造の一例を提供するが、靴底構造20に対する他の様々な従来の構成または従来にない構成も利用してよい。したがって、アッパー30と共に用いる靴底構造20または任意の靴底構造の構成および特徴は大幅に変化してもよい。
【0012】
アッパー30は靴底構造20に固定され、靴底構造20に対して足を収容し固定するために履物10内部に空洞を画定する下地要素31を含んでいる。より具体的には、下地要素31の内部表面が、空洞の少なくとも一部をアッパー30内部に形成している。図示するように、下地要素31は足を収容するために形作られ、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上を通って、踵を回り、足の下に延びている。他の構成では、下地要素31は、単に足の一部分の上にまたはその部分に沿って延びており、それによってアッパー30内部に空洞の一部分だけを形成する。少なくとも踵領域13に位置する足首開口部32によって、下地要素31内部の空洞までアクセスできるようにしている。靴紐33が様々な靴紐開口部34を貫通して延び、靴紐開口部34は下地要素31を貫通している。この靴紐33によって、着用者が足の大きさに対応するようにアッパー30の寸法を変えることができる。より詳細には、靴紐33によって、着用者が足のまわりのアッパー30をしっかりと締めることができ、また、着用者が空洞から(すなわち、足首開口部32を通して)足を出し入れしやすいようにアッパー30を緩めることができる。さらに、下地要素31は、靴紐33の下に延びるベロ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0013】
下地要素31の様々な部分は、互いに縫い合わせた、または接着した1つ以上の複数の材料要素(例えば、織物、ポリマーシート、発泡層、革、合成皮革)から形成され、履物10内部に空洞を形成する。図3を参照すると、下地要素31は単一の材料層から形成されているように示しているが、それぞれ異なる特性を与える複数の材料層から形成されてもよい。上述のように、下地要素31は、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上を通って、踵を回り、足の下に延びる。さらに、下地要素31の内部表面は足(または足に着用したソックス)と接触するのに対して、下地要素31の外部表面はアッパー30の外部表面の少なくとも一部を形成する。下地要素31を形成する材料要素はアッパー30に様々な特性を与えるが、外側側部14および内側側部15それぞれに伸張要素40が固定される。図3を参照して、例えば、伸張要素40は下地要素31の外部表面に固定される。したがって、アッパー30の外部表面の大部分は、下地要素31および伸張要素40の組み合わせによって形成される。
【0014】
伸張要素40は種々のストランド41を組み込んでいる。図1および図2を参照して、ストランド41は、外側側部14および内側側部15の両方において(a)靴紐開口部34と靴底構造20との間をほぼ鉛直方向に、かつ、(b)前方領域11と踵領域13との間をほぼ水平方向に延びる。また図3を参照して、種々のストランド41はベース層42とカバー層43との間に位置する。ベース層42は下地要素31の外部表面に固定されるのに対して、カバー層43はアッパー30の外部表面の一部を形成する。
【0015】
ウォーキング中、ランニング中または他の歩行活動中、履物10の空洞内部の足はアッパー30を伸展させる傾向がある。すなわち、足の運動によって引っ張られると、下地要素31を含むアッパー30を形成する材料要素の多くが伸展する。ストランド41も伸展できるが、一般にアッパー30を形成する他の材料要素(例えば、下地要素31、ベース層42およびカバー層43)よりも低い度合いで伸展する。したがって、ストランド41をそれぞれ位置して、特定の方向に伸展しにくいまたは力が集中する位置を補強する構造部品をアッパー30内に形成してもよい。一例として、靴紐開口部34と靴底構造20との間に延びる種々のストランド41は、内側から外側の方向に(すなわち、アッパー30を取り囲む方向に)伸展しにくい。また、靴紐33の張力による伸展に抵抗するため、このようなストランド41は靴紐開口部34にも隣接して配置され、靴紐開口部34から放射状に外方に広がる。別の例として、前方領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41は、長手方向に(すなわち、領域11〜13をそれぞれ貫通する方向に)伸展しにくい。したがって、ストランド41を配置して伸展しにくい構造部品をアッパー30内に形成する。
【0016】
伸張要素の構成
伸張要素40を図6に個別に示す。さらに、伸張要素40の部分を図7〜図10にそれぞれ示す。また、実質的に類似の伸張要素40も内側側部15に関連して利用してもよい。履物10のある構成では、伸張要素40は外側側部14の一部分(例えば、中間領域12に限定)を通って延びるだけでもよく、または外側側部14および内側側部15の大部分を形成するように拡張されてもよい。すなわち、伸張要素40の一般的な構成を有する、ストランド41と層42および43とを含む単一要素は、外側側部14および内側側部15の両方を通って延びていてもよい。他の構成では、さらなる要素が伸張要素40に接合されて外側側部14の部分を形成してもよい。
【0017】
伸張要素40は、ストランド41と、ベース層42と、カバー層43とを含み、ストランド41は層42と層43との間に配置されている。ストランド41はベース層42の表面に隣接し、ベース層42の表面と実質的に平行である。一般に、ストランド41はカバー層43の表面にも隣接し、カバー層43の表面と実質的に平行である。上述したように、ストランド41は伸展しにくい構造部品をアッパー30内に形成する。ベース層42およびカバー層43の表面は実質的に平行であることによって、ストランド41は層42および43の平面に対応する方向に伸展しにくい。位置によってはストランド41は(例えば、縫い合わせた結果)ベース層42を貫通して延びていてもよいが、ベース層42を貫通して延びる領域が伸展を可能にしてもよく、それによってストランド41の全体的な能力が低下して伸展が制限される。その結果、各ストランド41は一般にベース層42の表面に隣接し、少なくとも12ミリメートルの距離にわたってベース層42の表面と実質的に平行である。また、ベース層42の表面に隣接し、少なくとも5センチメートル以上の距離にわたってベース層42の表面と実質的に平行であってもよい。
【0018】
ベース層42およびカバー層43は互いに同じ範囲に広がるように示している。すなわち、層42および43は同じ形状および大きさであってもよく、ベース層42の縁部はカバー層43の縁部と一致して平坦にそろっている。いくつかの製造工程では、(a)ストランド41をベース層42上に配置し、(b)カバー層43をベース層42およびストランド41に接着し、(c)所望の形状および大きさを有するようにこの複合物から伸張要素40を切断し、それによってベース層42およびカバー層43に共通の縁部を形成する。この方法では、ストランド41の端も各層42および43の縁部まで延びてもよい。図6を参照して、例えば、ストランド41の端はそれぞれ伸張要素40の反対側の側面にある各層42および43の縁部に配置される。また、図10を参照すると、ストランド41の端は各層42および43の縁部に位置するように示している。したがって、各層42および43の縁部、さらにストランド41の端はすべて伸張要素40の縁部に配置されてもよい。
【0019】
ストランド41は任意の一般的な一次元材料から形成されてもよい。本発明に対して用いるように、「一次元材料」という用語またはその変形は、幅および厚みより実質的に大きい長さを表す一般に細長い材料を包含することを意図している。したがって、ストランド41に好適な材料として、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル酸、絹、綿、炭素、ガラス、アラミド(例えば、パラ系アラミド繊維およびメタ系アラミド繊維)、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマー、銅、アルミニウムおよび鋼から形成される種々のフィラメント、繊維、ヤーン、糸、ケーブルまたはロープが挙げられる。フィラメントは長さが不定で、ストランド41として個々に用いてもよい。一方、繊維は比較的長さが短く、一般に紡績または加撚工程を経て、好適な長さのストランドを生成する。ストランド41に用いた個々のフィラメントは、単一の材料(すなわち、単成分フィラメント)から形成されてもよく、または複数の材料(すなわち、二成分フィラメント)から形成されてもよい。同様に、異なるフィラメントが異なる材料から形成されていてもよい。一例として、ストランド41として用いるヤーンは、一般的な材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよく、2種以上の異なる材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよく、または2種以上の異なる材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよい。また、同様の概念が、糸、ケーブルまたはロープにも当てはまる。ストランド41の厚みは、例えば、0.03ミリメートル〜5ミリメートルを超える範囲で著しく変化してもよい。一次元材料は、断面の幅と厚みとが実質的に等しいこと(例えば、円形または正方形の断面)が多いが、厚みより幅の方が大きいもの(例えば、長方形、楕円形またはその他の細長い断面)もある。幅が大きいにもかかわらず、材料の長さが材料の幅および厚みよりも実質的に大きい場合、材料が一次元的であると考えられる。
【0020】
ベース層42およびカバー層43はそれぞれ任意の一般的に二次元材料から形成されてもよい。本発明に対して用いるように、「二次元材料」という用語またはその変形は、厚みより実質的に大きい長さおよび幅を表す一般に平坦な材料を包含することを意図している。したがって、ベース層42およびカバー層43に好適な材料として、例えば、様々な織物、ポリマーシート、または織物とポリマーシートとの組み合わせが挙げられる。織物は一般に、例えば、(a)接着、融合、連結によって繊維の織物から直接生成して不織布およびフェルトを構成するか、または(b)ヤーンの機械加工によって形成して不織布もしくはニット生地を生成するか、どちらかの方法によって生成された繊維、フィラメントまたはヤーンから製造される。織物は、一方向に伸展または複数方向に伸展するように配置された繊維を組み込んでもよく、例えば、通気性のある耐水バリヤを形成する被膜を含んでいてもよい。ポリマーシートは、押出、圧延、またはポリマー材料から形成されて、ほぼ平坦な態様を示す。また、二次元材料は、積層材料、もしくは織物、ポリマーシートまたは織物とポリマーシートとを組み合わせた2つ以上の層を含む層状材料を包含していてもよい。織物およびポリマーシートに加えて、他の二次元材料はベース層42およびカバー層43に用いてもよい。二次元材料は、平滑な表面またはほぼテクスチャのない表面を有していてもよいが、中には、テクスチャまたは、例えば、ディンプリング、凸部、ひだまたは各種パターンなどの他の表面特性を示すものもある。表面特性があるにもかかわらず、二次元材料はほぼ平坦なままであり、厚みより実質的に大きい長さおよび幅を示す。ある構成では、層42および43のどちらか一方または両方にメッシュ材または有孔材を用いて、さらに良好な通気性または空気透過性を付与してもよい。
【0021】
ベース層42およびカバー層43は様々な材料から形成されてもよいが、層42および43のどちらか一方または両方に熱可塑性ポリマー材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン)を組み込むと、層42と層43との間を接着しやすくなり、さらに層42と層43との間にストランド41を固定しやすくなる。例としては、ベース層42は、(a)熱可塑性ポリマーシート、(b)熱可塑性ポリマー材料から形成されたフィラメントもしくは繊維を含む織物、または(c)織物と熱可塑性ポリマーシートとの組み合わせであってもよい。これらの構成のうちいずれも、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料を加熱することによって、ストランド41およびカバー層42の両方で接着剤を形成してもよい。他の構成では、カバー層43は熱可塑性ポリマー材料を組み込んでもよい。しかし、ベース層42に熱可塑性ポリマー材料を組み込む利点は、熱可塑性ポリマー材料も用いて伸張要素40を下地要素31に接合できることである。すなわち、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料を用いて、(a)ベース層42とカバー層43との間、(b)ベース層42とストランド41との間、および(c)ベース層42と下地要素31との間に接着を形成できる。伸張要素40の種々の要素を接合すること、および伸張要素40を下地要素31に接合することに関する概念は、より詳細に以下に説明する。
【0022】
種々のストランド41は、靴紐開口部34から下方へ延び、靴紐開口部34は下地要素31を貫通している。また、靴紐開口部34に隣接した伸張要素40の部分は、図4および図6に最もよく示されるように、種々の靴紐開口部44を画定して靴紐33を受け入れるための領域を提供する。
上記の説明に基づくと、一般に、伸張要素40は少なくとも2つの層42および43とこれらの層間に位置するストランド41とを備える。ストランド41は層42および43のいずれか一方を貫通してもよいが、一般に層42および43の表面に隣接し、12ミリメートルを超える長さ、さらに5センチメートルを超える長さにわたって層42および43の表面と実質的に平行である。様々な一次元材料はストランド41に使用されてもよいが、1つのまたはそれ以上の二次元材料を層42および43に用いてもよい。さらに、ベース層42が熱可塑性ポリマー材料を含む場合、熱可塑性ポリマー材料を加熱することによって、ベース層42とアッパー30の他の要素との間を接着させてもよい。
【0023】
構造部品
従来のアッパーは複数の材料層から形成され、アッパーの様々な領域にそれぞれ異なる特性を与えていた。使用中にアッパーが著しい引張力を受け、その引張力に抵抗するために1つまたはそれ以上の材料層がアッパーの領域に配置される。すなわち、履物の使用中に発生する引張力に抵抗するために、アッパーの特定の部分に個々の層を組み込む。一例として、長手方向に伸展耐性を与えるために、織布地をアッパーに組み込んでもよい。織布地は、互いに直角で織り合わさるヤーンから形成される。長手方向へ伸展しにくくするために織布地をアッパーに組み込むと、長手方向に配向されたヤーンだけが長手方向の伸展耐性に貢献し、一般に長手方向に直交するヤーンは長手方向の伸展耐性に貢献しない。したがって、織布地におけるヤーンの約2分の1は、長手方向の伸展耐性には不要である。この例をさらに発展させたものとして、アッパーの異なる領域に要する伸展耐性の程度は変化してもよい。アッパーの領域によっては比較的高度の伸展耐性を要するものもあるが、他のアッパーの領域は比較的低度の伸展耐性を要する場合がある。織布地は高度および低度の両方の伸展耐性を要する領域で利用できるため、低度の伸展耐性を要する領域には織布地におけるヤーンが不要な場合もある。この例では、こうした不要なヤーンは、履物に有用な特性を付加することなく、履物の総質量を増やす。同様の概念が、例えば、耐摩耗性、柔軟性、空気透過性、クッション性および吸湿性のうち1つ以上に対して利用される革およびポリマーシートなどの他の材料に当てはまる。
【0024】
上記の説明の概要として、複数の材料層から形成された従来のアッパーに用いられる材料は、アッパーの所望の特性にあまり貢献しない不要な部分を有しているかもしれない。伸展耐性に関して、例えば、層は必要または所望するよりも(a)より多数の伸展耐性の方向または(b)より高度な伸展耐性を与える材料を有しているかもしれない。したがって、このような材料の不要な部分は、あまり有用な特性を与えることなく、履物の総質量および費用を増やすものである。
【0025】
上述した従来の層構造とは対照的に、アッパー30は不要な材料の存在を最小限に抑えるように構成されている。下地要素31は足を覆うものであるが、比較的質量が少ない。伸張要素40は種々のストランド41を含んでいるが、特定の方向および位置に伸展耐性を与えるように配置される。また、ストランド41の数は所望する伸展耐性の程度を与えるように選択される。したがって、ストランド41の配向、位置および量は、特定の目的に合った構造部品を提供するように選択される。
【0026】
以下の説明における参考として、4つのストランド群51〜54を図6に明示する。ストランド群51は、足首開口部32に最も近い靴紐開口部34から下方へ延びる種々のストランド41を含む。同様に、ストランド群52および53は、他の靴紐開口部34から下方へ延びる種々のストランド41を含む。さらに、ストランド群54は、足前領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41を含む。
【0027】
靴紐開口部34および44と靴底構造20との間に延びる種々のストランド41は、内側と外側との間の方向に伸展しにくいが、これは靴紐33の張力によるものであってもよい。より具体的には、ストランド群51の種々のストランド41は、足首開口部31に最も近い靴紐開口部44を貫通して延びる靴紐32の部分から協働的に伸展に抵抗する。また、ストランド群51が靴紐開口部44から離れるように延びる場合、外方へ放射状に延び、それによって靴紐33からの力をアッパー30の領域全体に分散させる。同様の概念がストランド群52および53にも当てはまる。足前領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41は、長手方向に伸展しにくい。より具体的には、ストランド群54の種々のストランド41は協働的に長手方向に伸展しにくく、それらの数は領域11〜13によって特定の程度の伸展耐性を提供するように選択される。さらに、ストランド群54のストランド41は、ストランド群51〜53のストランド41とそれぞれ交差して領域11〜13にかけて比較的連続した伸展耐性を与える。
【0028】
履物10の特定の構成および履物10の意図された用途に応じて、層42および43は、例えば、非伸展性材料、一方向に伸展する材料、または二方向に伸展する材料であってもよい。一般に、二方向に伸展する材料から層42および43を形成すると、足の形状に適合する一段と優れた能力をアッパー30に与え、それによって履物10の快適性を向上させる。層42および43が二方向に伸展する構成では、ストランド41と層42および43との組み合わせによって、特定の位置におけるアッパー30の伸展特性を効果的に変化させる。アッパー30に関しては、ストランド41と二方向に伸展する層42および43との組み合わせによって、異なる伸展特性を有する帯域をアッパー30内に形成する。このような帯域としては、(a)ストランド41が存在せず、アッパー30が二方向に伸展する第1帯域、(b)複数のストランド41が存在し、互いに交差せず、アッパー30がストランド41と直交する(すなわち、垂直の)方向に一方向伸展性を示す第2帯域、および(c)複数のストランド41が存在して互いに交差し、アッパー30が実質的に非伸展性または制限的伸展性を示す第3帯域が挙げられる。したがって、アッパー30の特定の領域の全体的な伸展特性は、ストランド41の存在によって制御され、また、ストランド41が互いに交差するかどうかによっても制御される。
【0029】
上記の説明に基づけば、ストランド41を用いて、アッパー30内に構造部品を形成してもよい。一般に、ストランド41は伸展に抵抗してアッパー30の全体的な伸展を制限する。また、アッパー30の異なる領域に力(例えば、靴紐33からの力)を分散するために用いてもよい。したがって、ストランド41の配向、位置および量は特定の目的に合った構造部品を提供するために選択される。さらに、互いに対するストランド41の配向およびストランド41が互いに交差するか否かを利用して、アッパー30の異なる部分における伸展方向を制御してもよい。
【0030】
製造工程
種々の方法を利用して伸張要素40を含むアッパー30を製造してもよい。一例として、縫取り(刺繍)プロセスを利用してベース層42に対してストランド41を配置してもよい。一旦ストランド41を配置すると、カバー層43はベース層42およびストランド41に接着され、それによって伸張要素40内にストランド41を固定させる。こうした一般的な方法は、米国特許商標庁に2006年5月25日に出願された「Article Of Footwear Having An Upper With Thread Structural Elements(スレッド構造要素を備えたアッパーを有する履物物品)」と題した米国特許出願第11/442,679号に詳細に記載されており、この先行出願の全体を本明細書に引用して援用する。縫取り方法に代わる方法として、ベース層42に対してストランド41を配置するために、コンピューター縫合といった他の縫合方法を利用してもよい。さらに、ベース層42を囲むフレーム上にあるペグにストランド41を巻きつけることを含む工程を利用して、ベース層42上にストランド41を配置してもよい。したがって、様々な方法を利用してベース層42に対してストランド41を配置できる。
【0031】
以下、伸張要素40を形成するために利用される成型工程について説明する。図11Aおよび図12Aを参照すると、成形型60が第1成型部61および第2成型部62を含むように示されている。後述のように、対向面を有する成型部61および62はそれぞれストランド41と層42および43とを圧縮する。伸張要素40の部品を圧縮する成型部61および62の表面は、それぞれ異なる密度および硬さの材料を含んでいる。より具体的には、第1成型部61は材料63を含み、第2成型部62は材料64を含んでいる。比較すると、材料63は材料64より硬度が低く、密度も低い。その結果、材料63は材料64より容易に圧縮する。好適な材料の例として、材料63はショアA硬度スケールで硬度15のシリコーンであり、一方、材料64はショアA硬度スケールで硬度70のシリコーンである。成形型60のある構成では、材料63のショアA硬度は40未満であるが、材料64のショアA硬度は40を超える。成形型60の他の構成では、材料63のショアA硬度は5〜20であるが、材料64のショアA硬度は40〜80である。また、他の種々の材料を用いてもよく、例えば、エチルビニルアセテートやゴムといった様々なポリマーおよび発泡体が挙げられる。しかし、シリコーンの利点は圧縮永久ひずみに関するものである。より具体的には、シリコーンは繰り返し圧縮されることによる窪みまたはその他の表面ムラを形成することなく、繰り返し成型作業を受けることができる。
【0032】
材料63および64の密度および硬度の違いに加えて、厚みも異なっていてよい。図12A〜図12Cを参照して、例えば、材料63は材料64よりも厚みが大きい。材料63がショアA硬度スケールで硬度15のシリコーンであり、材料64がショアA硬度スケールで硬度70のシリコーンである構成では、材料63の厚みは5ミリメートルで、材料64の厚みは2ミリメートルであってもよい。成形型60の他の構成では、材料63の厚みは3〜10ミリメートル以上で、材料64の厚みは1〜4ミリメートルであってもよい。
【0033】
成形型60を用いて、ストランド41と層42および43とから伸張要素40を形成する。最初に、図11Aおよび図12Aに示すように、伸張要素40の部品が成形部61と成形部62との間に配置される。適切に部品を配置するために、シャトルフレームまたは他の機器を用いてもよい。次いで、層42および43に用いる特定の材料に応じて、ストランド41と層42および43とを部品間を接着しやすくする温度に加熱する。伸張要素40の部品を加熱するために、様々な放射加熱器または他の機器を用いてもよい。いくつかの製造工程では、成形型60と伸張要素40の部品との間の接触によって、部品の温度が接着しやすいレベルに上がるように、成形型60を加熱する。また、ラジオ周波数加熱を利用して材料要素40の部品を加熱してもよい。
【0034】
一旦成型部61および62を配置して加熱すると、互いに向かって移動させ、(a)材料63を有する第1成型部61の表面がカバー層42に接触し、(b)材料64を有する第2成型部62の表面がベース層41に接触するように、部品上に閉じ始める。その後、図11Bおよび図12Bに示すように、成形型部61および62は互いに向かってさらに移動し、伸張要素40の部品を圧縮し、それによって部品を互いに接着する。いくつかの工程では、成型部61と成型部62との間を圧縮しながら、成形型60からの伝導熱で伸張要素40の部品を加熱する。
【0035】
上述したように、層42および43のどちらか一方または両方に熱可塑性ポリマー材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン)を組み込むと、層42と43との間を接着しやすくなり、また層42と43との間にストランド41を固定しやすくなる。したがって、ベース層42内の熱可塑性ポリマー材料を用いて、伸張要素40の部品を互いに固定できる。熱可塑性ポリマー材料は加熱すると溶融または軟化し、十分に冷却すると固体の状態に戻る。この熱可塑性ポリマー材料の特性に基づいて、熱接着工程を利用して、伸張要素40の部品を接合する熱接着剤を形成してもよい。本明細書中で用いるように、「熱接着」という用語またはその変形は、要素の材料が冷却時に互いに固定されるような要素のうち少なくとも1つに含まれる熱可塑性ポリマー材料の軟化または溶融工程を含む、2つの要素間の固着技術として定義される。同様に、「熱接着剤」という用語またはその変形は、要素の材料が冷却時に互いに固定されるような要素のうち少なくとも1つに含まれる熱可塑性ポリマー材料の軟化または溶融工程を含む工程を経て2つの要素を接合する接着剤、結合または構造として定義される。例えば、熱接着としては、(a)熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合い(例えば、熱可塑性ポリマー材料間の境界層全体に拡散し)、冷却時に互いに固定されるような熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ2つの要素の溶融または軟化、(b)熱可塑性ポリマー材料がストランドの構造内へ延在または浸透して(例えば、ストランドのフィラメントまたは繊維の周りに延接または接着して)、冷却時互いに要素を固定するような熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ要素の溶融または軟化、(c)熱可塑性ポリマー材料が織物要素の構造内へ延在または浸透して(例えば、織物要素のフィラメントまたは繊維の周りに延接または接着して)、冷却時互いに要素を固定するような熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ要素の溶融または軟化、および(d)熱可塑性ポリマー材料が別の要素(例えば、ポリマー発泡体またはシート、板、構造デバイス)に形成された隙間または凹部に延在または浸透して、冷却時互いに要素を固定するような熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ要素の溶融または軟化が挙げられる。1つの要素だけが熱可塑性ポリマー材料を含む場合、または両方の要素が熱可塑性ポリマー材料を含む場合に熱接着が生じる。さらに、熱接着は一般に、縫合または接着剤を使用するものではなく、熱で直接要素同士を接着するものである。しかし、状況によっては、縫合または接着剤を利用して熱接着剤を補ったり、熱接着を経て要素の接合を補ったりすることもある。
【0036】
熱接着法を利用して、ベース層42をカバー層43およびストランド41に接合する熱接着剤を形成するが、熱接着剤の構成は、少なくとも部分的に伸張要素40の部品に依存する。第1の例として、カバー層43が織物である場合、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料はカバー層43のフィラメントの周りに延接または接着して、冷却時に部品を互いに固定してもよい。第2の例として、カバー層43が熱可塑性ポリマー材料から形成されたポリマーシートである場合、ポリマー材料は混ざり合って、冷却時に部品を互いに固定してもよい。しかし、カバー層43の熱可塑性ポリマー材料がベース層42の熱可塑性ポリマー材料より著しく高い融点を有する場合、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料はカバー層43の構造、隙間または凹部内へ延びて、冷却時に部品を互いに固定してもよい。第3の例として、ストランド41は複数の個々のフィラメントまたは繊維を有する糸から形成され、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料は、フィラメントまたは繊維の周りに延接または接着して、冷却時に部品を互いに固定してもよい。第4の例として、ストランド41は単一フィラメントの構成を有するように形成されてもよく、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料はフィラメントの周りに延接または接着して、冷却時に部品を互いに固定してもよい。しかし、フィラメントが少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成される場合、ポリマー材料は混ざり合って、冷却時に部品を互いに固定してもよい。したがって、部品が多様な範囲の材料から形成される場合または種々の構造のうちの1つを有する場合でさえ、熱接着剤を用いて伸張要素40の部品を互いに接合することができる。
【0037】
上述したように、材料63は材料64より硬度が低く、密度が低く、厚みが大きい。その結果、材料63は材料64より容易に圧縮する。図11Bおよび図12Bを参照して、カバー層43はストランド41の領域にある材料63内に突出するが、ベース層42は実質的に平面のままである。材料63と64との間の異なる圧縮性により、材料63はストランド41が存在する領域内で圧縮する。この段階では、ベース層42が材料64に突出する深さは、カバー層43が材料63に突出する深さより少ない。高温の圧縮部品と結合された成形型60の圧縮力によって、(a)層42および43が互いに接着し、(b)ストランド41が層42および43のどちらか一方に接着し、(c)ベース層42が実質的に平面のままで、カバー層43がストランド41の領域内で外方に突出するように材料要素40が成型される。
【0038】
(硬度、密度および厚みの差異による)材料63および64の異なる圧縮性によって、ストランド41の領域内でカバー層43がベース層42より大きく外方に突出することを確実にする。ある構成では、材料63および64の相対的な圧縮性によって、ストランド41の領域内でベース層42がある程度外方に突出してもよい。他の構成では、材料63および64は実質的に同一であって、ストランド41の領域内で層42および43が同程度外方に突出してもよい。
【0039】
図11Cおよび図12Cに示すように、接着および成形が終了すると、成形型60を開き、伸張要素40を取り出して冷却することができる。本工程のこの段階において、伸張要素40は層42および43の形状によってほぼ長方形の態様を有する。伸張要素40を履物10向けに適切に成形するため、層42および43の余剰部分を除去する。図11Dを参照して、例えば、伸張要素40を表面65に載置し、レーザ装置66で層42および43、さらにストランド41も切断し、図11Eに示すように、伸張要素40に特定の形状を与える。レーザ装置66に代わるものとして、ダイカット工程またはハサミによる切断工程を利用して、層42および43の余剰部分を除去する。
【0040】
上述したように、層42および43は同じ形状および大きさで、ベース層42の縁部はカバー層43の縁部と一致して平らにそろっていてもよい。さらに、ストランド41の端は各層42および43の縁部に位置してもよい。上述した製造工程によって、各層42および43の縁部、さらにストランド41の端はすべて伸張要素40の縁部に配置してもよい。
【0041】
一旦伸張要素40が形成されると、下地要素31に接合されて、それによって履物10に伸張要素40を組み込んでもよい。図13Aを参照して、伸張要素40は外側側部14に隣接して配置される。上述したように、ベース層42は下地要素31で(すなわち、熱接着剤)を形成する熱可塑性ポリマー材料を組み込んでもよい。したがって、伸張要素40を加熱してベース層42の温度を上昇させてもよい。下地要素31と接触すると、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料は下地要素31で接着剤を形成し、それによって図13Bに示すように伸張要素40を下地要素31に接合する。したがって、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料は下地要素31と接着して、履物10の製造を実質的に終了してもよい。他の方法として、縫合または接着剤を用いた工程を利用して、伸張要素40と下地要素31とを接合してもよい。
【0042】
ベース層42内の熱可塑性ポリマー材料は、伸張要素40と下地要素31との間を接触させる前に加熱してもよい。例えば、放射加熱器を利用してベース層42を加熱してもよい。いくつかの工程では、加熱器をアッパー20の空洞内部に配置してもよく、下地要素31を介して熱を伝導して、伸張要素40と下地要素31との間に熱接着剤の形成を引き起こしてもよい。
【0043】
伸張要素40および下地要素31の両方がアッパー30の外部表面部分を形成する。伸張要素40の領域が下地要素31の領域より小さい場合、下地要素31の外部表面の領域は伸張要素40の縁部を越えて露出される。上述したように、伸張要素40の部分はポリマー材料またはポリマーシートから形成されてもよいが、下地要素31は織物材料から形成されてもよい。ポリマーシートが一般に織物より通気性が悪いと、伸張要素40を含むアッパー30の領域は下地要素31が露出している領域より通気性が悪い場合がある。したがって、伸張要素40を用いる利点は、アッパー30の領域が通気性を維持したまま、履物10を着用時に汗または熱せられた空気がアッパー30から出ていく程度を高めることである。
【0044】
さらなる構成
図1および図2のストランド41の配向、位置および量は、履物10に好適な構成の一例を提供することを意図している。履物10の他の構成では、伸張要素40および履物10の種々の態様は大幅に変化してもよい。図14Aを参照して、3つの異なる伸張要素40は、靴紐開口部34と靴底構造20との間に鉛直に延びる種々のストランドを含む別の構成が示されている。図1と比較すると、例えば、各領域11〜13を通って長手方向に延びているストランド41はない。伸張要素40は、靴紐開口部34と靴底構造20との間の距離全体に延びていてもよいが、図14Bに示すように、距離の一部分にだけ延びていてもよい。伸張要素40はまた、図14Cに示すように、ストランド41が長手方向にだけ延びる、または図14Dに示すように、履物10の長手方向長さの一部にだけ延びる構成を有していてもよい。さらなる構成では、図14Eに示すように、さらなるストランド41が踵領域13に位置され、着用者の踵を安定させる踵部カウンターまたは他の手段を効果的に形成してもよい。したがって、ストランド41の特定の構成および伸張要素40の他の態様は著しく変化してもよい。
【0045】
図3には、下地要素31は、単層の材料から形成されているように示している。しかし、図15Aを参照すると、下地要素31は3層である。例として、内側層および外側層は織物でもよいが、中央の層は快適性を増すポリマー発泡材料であってもよい。縫取り工程を用いてストランド41を配置する場合、図15Bに示すように、2組のストランド41がベース層42の反対側の側面に位置されてもよい。また、図15Cに示すように、その2組目のストランド41と下地要素31との間にさらなる層45が延びていてもよい。ベース層42のように、層45は伸張要素40と下地要素31との間に接着を引き起こす熱可塑性ポリマー材料を含んでいてもよい。一般に、図15Cに示す構成は、米国特許商標庁に2008年7月25日に出願された「Composite Element With A Polymer Connecting Layer(ポリマー接続層を有する複合要素)」と題した米国特許出願第12/180,235号に詳細に記載されており、この出願の全体を本明細書に引用して援用する。図15Dを参照して、伸張要素40は下地要素31の内部表面と接合するように示している。さらなる構成では、図15Eに示すように、カバー層43が存在しなくてもよく、または図15Fに示すように、ベース層42が存在しなくてもよい。
【0046】
さらなる製造工程
以下、図16A〜図16Gに関連して、伸張要素40を形成し、下地要素31に固定するためのさらなる製造工程について説明する。図16Aを参照して、ストランド41の構成上の変形を層42と層43との間に位置するように示している。上述したように、ストランド41を配置するために、縫取り工程などの様々な方法が利用されてもよい。レーザ装置66または別の切断装置を利用して様々な領域46を切除または除去してもよい。すなわち、レーザ装置66は層42および43を切断して、開口部または層42および43が存在しないその他の領域を形成してもよい。
【0047】
一旦層42および43から領域46を除去すると、伸張要素40および下地要素31の一部は成形型60の内部(すなわち、成形部61と成形部62との間)に位置される。上述した様々な方法では、下地要素31を履物10に組み込んだ後に、伸張要素40を下地要素31に固定する。しかし、本方法では、下地要素31を履物10に組み込む前に、伸張要素40を下地要素31(または下地要素の一部または層)に固定する。成形型61および63は一旦配置されると、伸張要素40および下地要素31を圧縮し、図16Dに示すように、それによって伸張要素40および下地要素31を互いに接着させる。図16Eに示すように、成形型60を開く際に、接着した伸張要素40および下地要素31を取り出してもよい。ただし、下地要素31は伸張要素40に形成される様々な領域46を介して視認できる。
【0048】
次いで、伸張要素40および下地要素31の組み合わせを平板65上に配置してもよく、その後、図16Fに示すように、レーザ装置66を用いてベース層42、カバー層43、および下地要素31それぞれを切断して伸張要素40および下地要素31の組み合わせを適切に成形する。すなわち、レーザ装置66を用いて伸張要素40および下地要素31の余剰部分を除去して図16Gに示す形状にする。その後、伸張要素40および下地要素31の組み合わせは履物10に組み込まれる。
【0049】
本発明は、様々な構成を参照して、上記におよび添付の図面において開示した。しかしこの開示の目的は、本発明の範囲を制限することではなく、本発明に関連する様々な特徴および概念の例を示すことである。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定された本発明の範囲から逸脱することなく、上で述べた構成に対して多くの変形や変更を行なえること認識するであろう。
【技術分野】
【0001】
この発明は、伸張要素を組み込んだ履物物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、履物物品は2つの主な要素、すなわち、アッパーおよび靴底(ソール)構造を有する。アッパーは、互いに縫い合わせた、または接着剤で貼り合わせた、複数の材料要素(例えば、織物、ポリマーシート層、発泡層、革、合成皮革)から形成されていることが多く、足を快適で確実に収容するために履物の内部に空洞を形成する。より具体的には、アッパーは、足の内側側部および外側側部に沿い、また足の踵部分を回り、足の甲およびつま先の部分の上に延びる構造を形成する。また、アッパーは、履物のフィット性を調節すると共にアッパー内部の空洞から足の出し入れを可能にする紐システムを組み込んでいてもよい。さらにアッパーは、紐システムの下に延びて履物の調節性および快適性を高めるベロを備えていてもよく、また踵部カウンターを組み込んでいてもよい。
【0003】
アッパーを形成する種々の材料要素は、アッパーの異なる領域に特定の特性を与える。例えば、織物要素は通気性を提供し、足から湿気を吸収できる。発泡層は圧縮して快適性を与え、革は耐久性および耐摩耗性を与えることができる。
靴底構造は、足と地面との間に配置されるようにアッパーの下部に固定されている。運動靴では、例えば、靴底構造はミッドソールおよびアウトソールを含む。ミッドソールは、ウォーキング中、ランニング中および他の歩行活動中の地面反力を減衰する(すなわち、クッション性を与える)ポリマー発泡材料から形成されてもよい。またミッドソールは、例えば、力をさらに減衰したり、安定性を向上させたり、または足の動きに影響を及ぼしたりする流体を充填した区室、板、緩和部または他の要素を含んでいてもよい。アウトソールは、履物の接地要素を形成し、通常は地面捕捉性能を付与するテクスチュアリングを含んだ、耐久性および耐摩耗性を有するゴム材料から構成される。また、靴底構造は、履物の快適性を向上させるために、アッパー内部および足の下表面近くに配置される中敷きを含んでいてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
材料要素の数が増えるのに比例して、履物の総質量は増加する場合がある。また、材料要素の輸送、仕入れ、切断および接合に関連する時間および費用も増大する場合がある。その上、アッパーに組み込まれた材料要素の数が増えるに従って、切断および縫合工程からの廃棄物がかなりの程度たまるおそれがある。さらに、数少ない材料要素から形成された製品よりも、多くの材料要素を用いた製品の方が再利用の難しい場合がある。したがって、材料要素の数を減少させることによって、履物の質量および廃棄物を減少させることができ、それと同時に生産効率およびリサイクル性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
アッパーと前記アッパーに固定された靴底構造とを有する履物物品が、以下に開示される。アッパーは下地要素および伸張要素を含む。下地要素は内部表面および反対側の外部表面を有し、かかる内部表面は着用者の足を収容するためにアッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定する。伸張要素はベース層および複数のストランド(ひも)を含む。ベース層は下地要素の外部表面に固定され、ストランドと下地要素の外部表面との間に位置する。また、ベース層は外部表面の少なくとも1つの領域を露出する複数の縁部を画定し、各ストランドは、ベース層に接して配置され、少なくとも5センチメートルの距離にわたってベース層と実質的に平行である。
【0006】
また、履物物品を製造する方法も開示される。本方法は、ベース層とカバー層との間に複数のストランドを配置する工程を含む。ベース層は、加熱されて当該ベース層をカバー層に接合する熱可塑性ポリマー材料を含んでいてもよい。ベース層は履物物品のアッパーの下地要素に隣接して配置される。さらに、熱可塑性ポリマー材料でベース層を下地要素に接合し、下地要素の少なくとも一部が露出されてアッパーの外部表面を形成する。
【0007】
本発明の態様を特徴づける新規性の利点および特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に説明される。しかし、新規性の利点および特徴についてさらに理解を得るために、本発明に関連した様々な構成および概念について記載および例示する以下の記述および添付図面を参照してもよい。
本発明の上記の概要および以下の発明を実施するための形態は、添付の図面を参照して読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】履物物品の外側側部の立面図である。
【図2】履物物品の内側側部の立面図である。
【図3】履物物品の図2における切断線3−3に沿った横断面図である。
【図4】履物物品の外側側部の分解立面図である。
【図5】履物物品の内側側部の分解立面図である。
【図6】履物物品のアッパーで用いる伸張要素の平面図である。
【図7】伸張要素の図6における第1部分の斜視図である。
【図8】伸張要素の第1部分の分解斜視図である。
【図9A】伸張要素の図7における切断線9A−9Aに沿った第1部分の断面図である。
【図9B】伸張要素の図7における切断線9B−9Bに沿った第1部分の断面図である。
【図10】伸張要素の図6における第2部分の斜視図である。
【図11A】伸張要素を製造する工程の概略斜視図である。
【図11B】伸張要素を製造する工程の概略斜視図である。
【図11C】伸張要素を製造する工程の概略斜視図である。
【図11D】伸張要素を製造する工程の概略斜視図である。
【図11E】伸張要素を製造する工程の概略斜視図である。
【図12A】伸張要素を製造する工程の図11Aにおける切断線12A−12Aに沿った横断面図である。
【図12B】伸張要素を製造する工程の図11Bにおける切断線12B−12Bに沿った横断面図である。
【図12C】伸張要素を製造する工程の図11Cにおける切断線12C−12Cに沿った横断面図である。
【図13A】履物物品を製造する工程の外側側部の概略立面図である。
【図13B】履物物品を製造する工程の外側側部の概略立面図である。
【図14A】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図14B】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図14C】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図14D】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図14E】履物物品のさらなる構成を示す、図1に対応した外側側部の立面図である。
【図15A】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図15B】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図15C】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図15D】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図15E】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図15F】履物物品のさらなる構成を示す、図3に対応した横断面図である。
【図16A】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16B】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16C】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16D】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16E】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16F】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【図16G】伸張要素を製造する別の工程の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記の記述および添付図面により、種々のストランドを含む伸張要素を組み込んだ履物物品の様々な構成を開示する。履物物品はウォーキングまたはランニングに適した一般的な構造を有するように開示される。また、この履物物品に関連した概念は、例えば、野球シューズ、バスケットボールシューズ、クロストレーニングシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズおよびハイキングブーツなど他の様々な履物タイプにも適用できる。こうした概念はまた、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業靴などの運動以外に使用されると一般に考えられる履物タイプにも適用できる。したがって、本明細書中に開示の様々な概念は、多種多様な履物タイプに当てはまる。履物の他に、伸張性のあるストランドまたは伸張性のあるストランドに関連した概念は、他の様々な製品に組み込まれてもよい。
【0010】
一般的な履物構造
靴底構造20およびアッパー30を含む履物物品10を図1〜図5に示す。参考として、図1および図2に示すように、履物10は前方領域11、中間領域12および踵領域13という3つの一般的な領域に分けられてもよい。また、履物10は外側側部14および内側側部15を含む。前方領域11は一般に、足指(つま先)、および中足骨を指骨に連結している関節に対応する履物10の部分を含む。中間領域12は一般に、足のアーチ部分に対応する履物10の部分を含み、踵領域13は踵骨を含む足の後方部分に対応する。外側側部14および内側側部15は、各領域11〜13を通って延び、履物10の反対側の側面に対応する。各領域11〜13および各側部14〜15は、履物10の正確な領域を区分するものではなく、むしろ、以下の説明の理解を助けるために、履物10の一般的な各領域を表すことを意図したものである。また、履物10の他に、各領域11〜13および各側部14〜15も、靴底構造20、アッパー30およびそれらの各要素に適用される。
【0011】
靴底構造20はアッパー30に固定されており、履物10の着用時に足と地面との間に延びるものである。靴底構造20の主な要素としては、ミッドソール21、アウトソール22および中敷き23がある。ミッドソール21はアッパー30の下表面に固定され、ウォーキング中、ランニング中および他の歩行活動中に足と地面との間で圧縮される際に地面反力を減衰する(すなわち、クッション性を与える)圧縮可能なポリマー発泡要素(例えば、ポリウレタン発泡体またはエチルビニルアセテート発泡体)から形成されていてもよい。さらなる構成では、ミッドソール21は、力をさらに減衰したり、安定性を向上させたり、または足の動きに影響を及ぼしたりする流体を充填した区室(チャンバ)、板、緩和部もしくは他の要素を組み込んでいてもよく、または主に流体を充填した区室から形成されていてもよい。アウトソール22はミッドソール21の下表面に固定され、テキスチャが形成されて地面捕捉性能を付与した耐摩耗性のゴム材から形成されていてもよい。中敷き23はアッパー30内部に位置され、足の下表面の下に延びて配置される。このような靴底構造20に対する構成は、アッパー30に関連して用いられる靴底構造の一例を提供するが、靴底構造20に対する他の様々な従来の構成または従来にない構成も利用してよい。したがって、アッパー30と共に用いる靴底構造20または任意の靴底構造の構成および特徴は大幅に変化してもよい。
【0012】
アッパー30は靴底構造20に固定され、靴底構造20に対して足を収容し固定するために履物10内部に空洞を画定する下地要素31を含んでいる。より具体的には、下地要素31の内部表面が、空洞の少なくとも一部をアッパー30内部に形成している。図示するように、下地要素31は足を収容するために形作られ、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上を通って、踵を回り、足の下に延びている。他の構成では、下地要素31は、単に足の一部分の上にまたはその部分に沿って延びており、それによってアッパー30内部に空洞の一部分だけを形成する。少なくとも踵領域13に位置する足首開口部32によって、下地要素31内部の空洞までアクセスできるようにしている。靴紐33が様々な靴紐開口部34を貫通して延び、靴紐開口部34は下地要素31を貫通している。この靴紐33によって、着用者が足の大きさに対応するようにアッパー30の寸法を変えることができる。より詳細には、靴紐33によって、着用者が足のまわりのアッパー30をしっかりと締めることができ、また、着用者が空洞から(すなわち、足首開口部32を通して)足を出し入れしやすいようにアッパー30を緩めることができる。さらに、下地要素31は、靴紐33の下に延びるベロ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0013】
下地要素31の様々な部分は、互いに縫い合わせた、または接着した1つ以上の複数の材料要素(例えば、織物、ポリマーシート、発泡層、革、合成皮革)から形成され、履物10内部に空洞を形成する。図3を参照すると、下地要素31は単一の材料層から形成されているように示しているが、それぞれ異なる特性を与える複数の材料層から形成されてもよい。上述のように、下地要素31は、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上を通って、踵を回り、足の下に延びる。さらに、下地要素31の内部表面は足(または足に着用したソックス)と接触するのに対して、下地要素31の外部表面はアッパー30の外部表面の少なくとも一部を形成する。下地要素31を形成する材料要素はアッパー30に様々な特性を与えるが、外側側部14および内側側部15それぞれに伸張要素40が固定される。図3を参照して、例えば、伸張要素40は下地要素31の外部表面に固定される。したがって、アッパー30の外部表面の大部分は、下地要素31および伸張要素40の組み合わせによって形成される。
【0014】
伸張要素40は種々のストランド41を組み込んでいる。図1および図2を参照して、ストランド41は、外側側部14および内側側部15の両方において(a)靴紐開口部34と靴底構造20との間をほぼ鉛直方向に、かつ、(b)前方領域11と踵領域13との間をほぼ水平方向に延びる。また図3を参照して、種々のストランド41はベース層42とカバー層43との間に位置する。ベース層42は下地要素31の外部表面に固定されるのに対して、カバー層43はアッパー30の外部表面の一部を形成する。
【0015】
ウォーキング中、ランニング中または他の歩行活動中、履物10の空洞内部の足はアッパー30を伸展させる傾向がある。すなわち、足の運動によって引っ張られると、下地要素31を含むアッパー30を形成する材料要素の多くが伸展する。ストランド41も伸展できるが、一般にアッパー30を形成する他の材料要素(例えば、下地要素31、ベース層42およびカバー層43)よりも低い度合いで伸展する。したがって、ストランド41をそれぞれ位置して、特定の方向に伸展しにくいまたは力が集中する位置を補強する構造部品をアッパー30内に形成してもよい。一例として、靴紐開口部34と靴底構造20との間に延びる種々のストランド41は、内側から外側の方向に(すなわち、アッパー30を取り囲む方向に)伸展しにくい。また、靴紐33の張力による伸展に抵抗するため、このようなストランド41は靴紐開口部34にも隣接して配置され、靴紐開口部34から放射状に外方に広がる。別の例として、前方領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41は、長手方向に(すなわち、領域11〜13をそれぞれ貫通する方向に)伸展しにくい。したがって、ストランド41を配置して伸展しにくい構造部品をアッパー30内に形成する。
【0016】
伸張要素の構成
伸張要素40を図6に個別に示す。さらに、伸張要素40の部分を図7〜図10にそれぞれ示す。また、実質的に類似の伸張要素40も内側側部15に関連して利用してもよい。履物10のある構成では、伸張要素40は外側側部14の一部分(例えば、中間領域12に限定)を通って延びるだけでもよく、または外側側部14および内側側部15の大部分を形成するように拡張されてもよい。すなわち、伸張要素40の一般的な構成を有する、ストランド41と層42および43とを含む単一要素は、外側側部14および内側側部15の両方を通って延びていてもよい。他の構成では、さらなる要素が伸張要素40に接合されて外側側部14の部分を形成してもよい。
【0017】
伸張要素40は、ストランド41と、ベース層42と、カバー層43とを含み、ストランド41は層42と層43との間に配置されている。ストランド41はベース層42の表面に隣接し、ベース層42の表面と実質的に平行である。一般に、ストランド41はカバー層43の表面にも隣接し、カバー層43の表面と実質的に平行である。上述したように、ストランド41は伸展しにくい構造部品をアッパー30内に形成する。ベース層42およびカバー層43の表面は実質的に平行であることによって、ストランド41は層42および43の平面に対応する方向に伸展しにくい。位置によってはストランド41は(例えば、縫い合わせた結果)ベース層42を貫通して延びていてもよいが、ベース層42を貫通して延びる領域が伸展を可能にしてもよく、それによってストランド41の全体的な能力が低下して伸展が制限される。その結果、各ストランド41は一般にベース層42の表面に隣接し、少なくとも12ミリメートルの距離にわたってベース層42の表面と実質的に平行である。また、ベース層42の表面に隣接し、少なくとも5センチメートル以上の距離にわたってベース層42の表面と実質的に平行であってもよい。
【0018】
ベース層42およびカバー層43は互いに同じ範囲に広がるように示している。すなわち、層42および43は同じ形状および大きさであってもよく、ベース層42の縁部はカバー層43の縁部と一致して平坦にそろっている。いくつかの製造工程では、(a)ストランド41をベース層42上に配置し、(b)カバー層43をベース層42およびストランド41に接着し、(c)所望の形状および大きさを有するようにこの複合物から伸張要素40を切断し、それによってベース層42およびカバー層43に共通の縁部を形成する。この方法では、ストランド41の端も各層42および43の縁部まで延びてもよい。図6を参照して、例えば、ストランド41の端はそれぞれ伸張要素40の反対側の側面にある各層42および43の縁部に配置される。また、図10を参照すると、ストランド41の端は各層42および43の縁部に位置するように示している。したがって、各層42および43の縁部、さらにストランド41の端はすべて伸張要素40の縁部に配置されてもよい。
【0019】
ストランド41は任意の一般的な一次元材料から形成されてもよい。本発明に対して用いるように、「一次元材料」という用語またはその変形は、幅および厚みより実質的に大きい長さを表す一般に細長い材料を包含することを意図している。したがって、ストランド41に好適な材料として、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル酸、絹、綿、炭素、ガラス、アラミド(例えば、パラ系アラミド繊維およびメタ系アラミド繊維)、超高分子量ポリエチレン、液晶ポリマー、銅、アルミニウムおよび鋼から形成される種々のフィラメント、繊維、ヤーン、糸、ケーブルまたはロープが挙げられる。フィラメントは長さが不定で、ストランド41として個々に用いてもよい。一方、繊維は比較的長さが短く、一般に紡績または加撚工程を経て、好適な長さのストランドを生成する。ストランド41に用いた個々のフィラメントは、単一の材料(すなわち、単成分フィラメント)から形成されてもよく、または複数の材料(すなわち、二成分フィラメント)から形成されてもよい。同様に、異なるフィラメントが異なる材料から形成されていてもよい。一例として、ストランド41として用いるヤーンは、一般的な材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよく、2種以上の異なる材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよく、または2種以上の異なる材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでいてもよい。また、同様の概念が、糸、ケーブルまたはロープにも当てはまる。ストランド41の厚みは、例えば、0.03ミリメートル〜5ミリメートルを超える範囲で著しく変化してもよい。一次元材料は、断面の幅と厚みとが実質的に等しいこと(例えば、円形または正方形の断面)が多いが、厚みより幅の方が大きいもの(例えば、長方形、楕円形またはその他の細長い断面)もある。幅が大きいにもかかわらず、材料の長さが材料の幅および厚みよりも実質的に大きい場合、材料が一次元的であると考えられる。
【0020】
ベース層42およびカバー層43はそれぞれ任意の一般的に二次元材料から形成されてもよい。本発明に対して用いるように、「二次元材料」という用語またはその変形は、厚みより実質的に大きい長さおよび幅を表す一般に平坦な材料を包含することを意図している。したがって、ベース層42およびカバー層43に好適な材料として、例えば、様々な織物、ポリマーシート、または織物とポリマーシートとの組み合わせが挙げられる。織物は一般に、例えば、(a)接着、融合、連結によって繊維の織物から直接生成して不織布およびフェルトを構成するか、または(b)ヤーンの機械加工によって形成して不織布もしくはニット生地を生成するか、どちらかの方法によって生成された繊維、フィラメントまたはヤーンから製造される。織物は、一方向に伸展または複数方向に伸展するように配置された繊維を組み込んでもよく、例えば、通気性のある耐水バリヤを形成する被膜を含んでいてもよい。ポリマーシートは、押出、圧延、またはポリマー材料から形成されて、ほぼ平坦な態様を示す。また、二次元材料は、積層材料、もしくは織物、ポリマーシートまたは織物とポリマーシートとを組み合わせた2つ以上の層を含む層状材料を包含していてもよい。織物およびポリマーシートに加えて、他の二次元材料はベース層42およびカバー層43に用いてもよい。二次元材料は、平滑な表面またはほぼテクスチャのない表面を有していてもよいが、中には、テクスチャまたは、例えば、ディンプリング、凸部、ひだまたは各種パターンなどの他の表面特性を示すものもある。表面特性があるにもかかわらず、二次元材料はほぼ平坦なままであり、厚みより実質的に大きい長さおよび幅を示す。ある構成では、層42および43のどちらか一方または両方にメッシュ材または有孔材を用いて、さらに良好な通気性または空気透過性を付与してもよい。
【0021】
ベース層42およびカバー層43は様々な材料から形成されてもよいが、層42および43のどちらか一方または両方に熱可塑性ポリマー材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン)を組み込むと、層42と層43との間を接着しやすくなり、さらに層42と層43との間にストランド41を固定しやすくなる。例としては、ベース層42は、(a)熱可塑性ポリマーシート、(b)熱可塑性ポリマー材料から形成されたフィラメントもしくは繊維を含む織物、または(c)織物と熱可塑性ポリマーシートとの組み合わせであってもよい。これらの構成のうちいずれも、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料を加熱することによって、ストランド41およびカバー層42の両方で接着剤を形成してもよい。他の構成では、カバー層43は熱可塑性ポリマー材料を組み込んでもよい。しかし、ベース層42に熱可塑性ポリマー材料を組み込む利点は、熱可塑性ポリマー材料も用いて伸張要素40を下地要素31に接合できることである。すなわち、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料を用いて、(a)ベース層42とカバー層43との間、(b)ベース層42とストランド41との間、および(c)ベース層42と下地要素31との間に接着を形成できる。伸張要素40の種々の要素を接合すること、および伸張要素40を下地要素31に接合することに関する概念は、より詳細に以下に説明する。
【0022】
種々のストランド41は、靴紐開口部34から下方へ延び、靴紐開口部34は下地要素31を貫通している。また、靴紐開口部34に隣接した伸張要素40の部分は、図4および図6に最もよく示されるように、種々の靴紐開口部44を画定して靴紐33を受け入れるための領域を提供する。
上記の説明に基づくと、一般に、伸張要素40は少なくとも2つの層42および43とこれらの層間に位置するストランド41とを備える。ストランド41は層42および43のいずれか一方を貫通してもよいが、一般に層42および43の表面に隣接し、12ミリメートルを超える長さ、さらに5センチメートルを超える長さにわたって層42および43の表面と実質的に平行である。様々な一次元材料はストランド41に使用されてもよいが、1つのまたはそれ以上の二次元材料を層42および43に用いてもよい。さらに、ベース層42が熱可塑性ポリマー材料を含む場合、熱可塑性ポリマー材料を加熱することによって、ベース層42とアッパー30の他の要素との間を接着させてもよい。
【0023】
構造部品
従来のアッパーは複数の材料層から形成され、アッパーの様々な領域にそれぞれ異なる特性を与えていた。使用中にアッパーが著しい引張力を受け、その引張力に抵抗するために1つまたはそれ以上の材料層がアッパーの領域に配置される。すなわち、履物の使用中に発生する引張力に抵抗するために、アッパーの特定の部分に個々の層を組み込む。一例として、長手方向に伸展耐性を与えるために、織布地をアッパーに組み込んでもよい。織布地は、互いに直角で織り合わさるヤーンから形成される。長手方向へ伸展しにくくするために織布地をアッパーに組み込むと、長手方向に配向されたヤーンだけが長手方向の伸展耐性に貢献し、一般に長手方向に直交するヤーンは長手方向の伸展耐性に貢献しない。したがって、織布地におけるヤーンの約2分の1は、長手方向の伸展耐性には不要である。この例をさらに発展させたものとして、アッパーの異なる領域に要する伸展耐性の程度は変化してもよい。アッパーの領域によっては比較的高度の伸展耐性を要するものもあるが、他のアッパーの領域は比較的低度の伸展耐性を要する場合がある。織布地は高度および低度の両方の伸展耐性を要する領域で利用できるため、低度の伸展耐性を要する領域には織布地におけるヤーンが不要な場合もある。この例では、こうした不要なヤーンは、履物に有用な特性を付加することなく、履物の総質量を増やす。同様の概念が、例えば、耐摩耗性、柔軟性、空気透過性、クッション性および吸湿性のうち1つ以上に対して利用される革およびポリマーシートなどの他の材料に当てはまる。
【0024】
上記の説明の概要として、複数の材料層から形成された従来のアッパーに用いられる材料は、アッパーの所望の特性にあまり貢献しない不要な部分を有しているかもしれない。伸展耐性に関して、例えば、層は必要または所望するよりも(a)より多数の伸展耐性の方向または(b)より高度な伸展耐性を与える材料を有しているかもしれない。したがって、このような材料の不要な部分は、あまり有用な特性を与えることなく、履物の総質量および費用を増やすものである。
【0025】
上述した従来の層構造とは対照的に、アッパー30は不要な材料の存在を最小限に抑えるように構成されている。下地要素31は足を覆うものであるが、比較的質量が少ない。伸張要素40は種々のストランド41を含んでいるが、特定の方向および位置に伸展耐性を与えるように配置される。また、ストランド41の数は所望する伸展耐性の程度を与えるように選択される。したがって、ストランド41の配向、位置および量は、特定の目的に合った構造部品を提供するように選択される。
【0026】
以下の説明における参考として、4つのストランド群51〜54を図6に明示する。ストランド群51は、足首開口部32に最も近い靴紐開口部34から下方へ延びる種々のストランド41を含む。同様に、ストランド群52および53は、他の靴紐開口部34から下方へ延びる種々のストランド41を含む。さらに、ストランド群54は、足前領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41を含む。
【0027】
靴紐開口部34および44と靴底構造20との間に延びる種々のストランド41は、内側と外側との間の方向に伸展しにくいが、これは靴紐33の張力によるものであってもよい。より具体的には、ストランド群51の種々のストランド41は、足首開口部31に最も近い靴紐開口部44を貫通して延びる靴紐32の部分から協働的に伸展に抵抗する。また、ストランド群51が靴紐開口部44から離れるように延びる場合、外方へ放射状に延び、それによって靴紐33からの力をアッパー30の領域全体に分散させる。同様の概念がストランド群52および53にも当てはまる。足前領域11と踵領域13との間に延びる種々のストランド41は、長手方向に伸展しにくい。より具体的には、ストランド群54の種々のストランド41は協働的に長手方向に伸展しにくく、それらの数は領域11〜13によって特定の程度の伸展耐性を提供するように選択される。さらに、ストランド群54のストランド41は、ストランド群51〜53のストランド41とそれぞれ交差して領域11〜13にかけて比較的連続した伸展耐性を与える。
【0028】
履物10の特定の構成および履物10の意図された用途に応じて、層42および43は、例えば、非伸展性材料、一方向に伸展する材料、または二方向に伸展する材料であってもよい。一般に、二方向に伸展する材料から層42および43を形成すると、足の形状に適合する一段と優れた能力をアッパー30に与え、それによって履物10の快適性を向上させる。層42および43が二方向に伸展する構成では、ストランド41と層42および43との組み合わせによって、特定の位置におけるアッパー30の伸展特性を効果的に変化させる。アッパー30に関しては、ストランド41と二方向に伸展する層42および43との組み合わせによって、異なる伸展特性を有する帯域をアッパー30内に形成する。このような帯域としては、(a)ストランド41が存在せず、アッパー30が二方向に伸展する第1帯域、(b)複数のストランド41が存在し、互いに交差せず、アッパー30がストランド41と直交する(すなわち、垂直の)方向に一方向伸展性を示す第2帯域、および(c)複数のストランド41が存在して互いに交差し、アッパー30が実質的に非伸展性または制限的伸展性を示す第3帯域が挙げられる。したがって、アッパー30の特定の領域の全体的な伸展特性は、ストランド41の存在によって制御され、また、ストランド41が互いに交差するかどうかによっても制御される。
【0029】
上記の説明に基づけば、ストランド41を用いて、アッパー30内に構造部品を形成してもよい。一般に、ストランド41は伸展に抵抗してアッパー30の全体的な伸展を制限する。また、アッパー30の異なる領域に力(例えば、靴紐33からの力)を分散するために用いてもよい。したがって、ストランド41の配向、位置および量は特定の目的に合った構造部品を提供するために選択される。さらに、互いに対するストランド41の配向およびストランド41が互いに交差するか否かを利用して、アッパー30の異なる部分における伸展方向を制御してもよい。
【0030】
製造工程
種々の方法を利用して伸張要素40を含むアッパー30を製造してもよい。一例として、縫取り(刺繍)プロセスを利用してベース層42に対してストランド41を配置してもよい。一旦ストランド41を配置すると、カバー層43はベース層42およびストランド41に接着され、それによって伸張要素40内にストランド41を固定させる。こうした一般的な方法は、米国特許商標庁に2006年5月25日に出願された「Article Of Footwear Having An Upper With Thread Structural Elements(スレッド構造要素を備えたアッパーを有する履物物品)」と題した米国特許出願第11/442,679号に詳細に記載されており、この先行出願の全体を本明細書に引用して援用する。縫取り方法に代わる方法として、ベース層42に対してストランド41を配置するために、コンピューター縫合といった他の縫合方法を利用してもよい。さらに、ベース層42を囲むフレーム上にあるペグにストランド41を巻きつけることを含む工程を利用して、ベース層42上にストランド41を配置してもよい。したがって、様々な方法を利用してベース層42に対してストランド41を配置できる。
【0031】
以下、伸張要素40を形成するために利用される成型工程について説明する。図11Aおよび図12Aを参照すると、成形型60が第1成型部61および第2成型部62を含むように示されている。後述のように、対向面を有する成型部61および62はそれぞれストランド41と層42および43とを圧縮する。伸張要素40の部品を圧縮する成型部61および62の表面は、それぞれ異なる密度および硬さの材料を含んでいる。より具体的には、第1成型部61は材料63を含み、第2成型部62は材料64を含んでいる。比較すると、材料63は材料64より硬度が低く、密度も低い。その結果、材料63は材料64より容易に圧縮する。好適な材料の例として、材料63はショアA硬度スケールで硬度15のシリコーンであり、一方、材料64はショアA硬度スケールで硬度70のシリコーンである。成形型60のある構成では、材料63のショアA硬度は40未満であるが、材料64のショアA硬度は40を超える。成形型60の他の構成では、材料63のショアA硬度は5〜20であるが、材料64のショアA硬度は40〜80である。また、他の種々の材料を用いてもよく、例えば、エチルビニルアセテートやゴムといった様々なポリマーおよび発泡体が挙げられる。しかし、シリコーンの利点は圧縮永久ひずみに関するものである。より具体的には、シリコーンは繰り返し圧縮されることによる窪みまたはその他の表面ムラを形成することなく、繰り返し成型作業を受けることができる。
【0032】
材料63および64の密度および硬度の違いに加えて、厚みも異なっていてよい。図12A〜図12Cを参照して、例えば、材料63は材料64よりも厚みが大きい。材料63がショアA硬度スケールで硬度15のシリコーンであり、材料64がショアA硬度スケールで硬度70のシリコーンである構成では、材料63の厚みは5ミリメートルで、材料64の厚みは2ミリメートルであってもよい。成形型60の他の構成では、材料63の厚みは3〜10ミリメートル以上で、材料64の厚みは1〜4ミリメートルであってもよい。
【0033】
成形型60を用いて、ストランド41と層42および43とから伸張要素40を形成する。最初に、図11Aおよび図12Aに示すように、伸張要素40の部品が成形部61と成形部62との間に配置される。適切に部品を配置するために、シャトルフレームまたは他の機器を用いてもよい。次いで、層42および43に用いる特定の材料に応じて、ストランド41と層42および43とを部品間を接着しやすくする温度に加熱する。伸張要素40の部品を加熱するために、様々な放射加熱器または他の機器を用いてもよい。いくつかの製造工程では、成形型60と伸張要素40の部品との間の接触によって、部品の温度が接着しやすいレベルに上がるように、成形型60を加熱する。また、ラジオ周波数加熱を利用して材料要素40の部品を加熱してもよい。
【0034】
一旦成型部61および62を配置して加熱すると、互いに向かって移動させ、(a)材料63を有する第1成型部61の表面がカバー層42に接触し、(b)材料64を有する第2成型部62の表面がベース層41に接触するように、部品上に閉じ始める。その後、図11Bおよび図12Bに示すように、成形型部61および62は互いに向かってさらに移動し、伸張要素40の部品を圧縮し、それによって部品を互いに接着する。いくつかの工程では、成型部61と成型部62との間を圧縮しながら、成形型60からの伝導熱で伸張要素40の部品を加熱する。
【0035】
上述したように、層42および43のどちらか一方または両方に熱可塑性ポリマー材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン)を組み込むと、層42と43との間を接着しやすくなり、また層42と43との間にストランド41を固定しやすくなる。したがって、ベース層42内の熱可塑性ポリマー材料を用いて、伸張要素40の部品を互いに固定できる。熱可塑性ポリマー材料は加熱すると溶融または軟化し、十分に冷却すると固体の状態に戻る。この熱可塑性ポリマー材料の特性に基づいて、熱接着工程を利用して、伸張要素40の部品を接合する熱接着剤を形成してもよい。本明細書中で用いるように、「熱接着」という用語またはその変形は、要素の材料が冷却時に互いに固定されるような要素のうち少なくとも1つに含まれる熱可塑性ポリマー材料の軟化または溶融工程を含む、2つの要素間の固着技術として定義される。同様に、「熱接着剤」という用語またはその変形は、要素の材料が冷却時に互いに固定されるような要素のうち少なくとも1つに含まれる熱可塑性ポリマー材料の軟化または溶融工程を含む工程を経て2つの要素を接合する接着剤、結合または構造として定義される。例えば、熱接着としては、(a)熱可塑性ポリマー材料が互いに混ざり合い(例えば、熱可塑性ポリマー材料間の境界層全体に拡散し)、冷却時に互いに固定されるような熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ2つの要素の溶融または軟化、(b)熱可塑性ポリマー材料がストランドの構造内へ延在または浸透して(例えば、ストランドのフィラメントまたは繊維の周りに延接または接着して)、冷却時互いに要素を固定するような熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ要素の溶融または軟化、(c)熱可塑性ポリマー材料が織物要素の構造内へ延在または浸透して(例えば、織物要素のフィラメントまたは繊維の周りに延接または接着して)、冷却時互いに要素を固定するような熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ要素の溶融または軟化、および(d)熱可塑性ポリマー材料が別の要素(例えば、ポリマー発泡体またはシート、板、構造デバイス)に形成された隙間または凹部に延在または浸透して、冷却時互いに要素を固定するような熱可塑性ポリマー材料を組み込んだ要素の溶融または軟化が挙げられる。1つの要素だけが熱可塑性ポリマー材料を含む場合、または両方の要素が熱可塑性ポリマー材料を含む場合に熱接着が生じる。さらに、熱接着は一般に、縫合または接着剤を使用するものではなく、熱で直接要素同士を接着するものである。しかし、状況によっては、縫合または接着剤を利用して熱接着剤を補ったり、熱接着を経て要素の接合を補ったりすることもある。
【0036】
熱接着法を利用して、ベース層42をカバー層43およびストランド41に接合する熱接着剤を形成するが、熱接着剤の構成は、少なくとも部分的に伸張要素40の部品に依存する。第1の例として、カバー層43が織物である場合、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料はカバー層43のフィラメントの周りに延接または接着して、冷却時に部品を互いに固定してもよい。第2の例として、カバー層43が熱可塑性ポリマー材料から形成されたポリマーシートである場合、ポリマー材料は混ざり合って、冷却時に部品を互いに固定してもよい。しかし、カバー層43の熱可塑性ポリマー材料がベース層42の熱可塑性ポリマー材料より著しく高い融点を有する場合、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料はカバー層43の構造、隙間または凹部内へ延びて、冷却時に部品を互いに固定してもよい。第3の例として、ストランド41は複数の個々のフィラメントまたは繊維を有する糸から形成され、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料は、フィラメントまたは繊維の周りに延接または接着して、冷却時に部品を互いに固定してもよい。第4の例として、ストランド41は単一フィラメントの構成を有するように形成されてもよく、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料はフィラメントの周りに延接または接着して、冷却時に部品を互いに固定してもよい。しかし、フィラメントが少なくとも部分的に熱可塑性ポリマー材料から形成される場合、ポリマー材料は混ざり合って、冷却時に部品を互いに固定してもよい。したがって、部品が多様な範囲の材料から形成される場合または種々の構造のうちの1つを有する場合でさえ、熱接着剤を用いて伸張要素40の部品を互いに接合することができる。
【0037】
上述したように、材料63は材料64より硬度が低く、密度が低く、厚みが大きい。その結果、材料63は材料64より容易に圧縮する。図11Bおよび図12Bを参照して、カバー層43はストランド41の領域にある材料63内に突出するが、ベース層42は実質的に平面のままである。材料63と64との間の異なる圧縮性により、材料63はストランド41が存在する領域内で圧縮する。この段階では、ベース層42が材料64に突出する深さは、カバー層43が材料63に突出する深さより少ない。高温の圧縮部品と結合された成形型60の圧縮力によって、(a)層42および43が互いに接着し、(b)ストランド41が層42および43のどちらか一方に接着し、(c)ベース層42が実質的に平面のままで、カバー層43がストランド41の領域内で外方に突出するように材料要素40が成型される。
【0038】
(硬度、密度および厚みの差異による)材料63および64の異なる圧縮性によって、ストランド41の領域内でカバー層43がベース層42より大きく外方に突出することを確実にする。ある構成では、材料63および64の相対的な圧縮性によって、ストランド41の領域内でベース層42がある程度外方に突出してもよい。他の構成では、材料63および64は実質的に同一であって、ストランド41の領域内で層42および43が同程度外方に突出してもよい。
【0039】
図11Cおよび図12Cに示すように、接着および成形が終了すると、成形型60を開き、伸張要素40を取り出して冷却することができる。本工程のこの段階において、伸張要素40は層42および43の形状によってほぼ長方形の態様を有する。伸張要素40を履物10向けに適切に成形するため、層42および43の余剰部分を除去する。図11Dを参照して、例えば、伸張要素40を表面65に載置し、レーザ装置66で層42および43、さらにストランド41も切断し、図11Eに示すように、伸張要素40に特定の形状を与える。レーザ装置66に代わるものとして、ダイカット工程またはハサミによる切断工程を利用して、層42および43の余剰部分を除去する。
【0040】
上述したように、層42および43は同じ形状および大きさで、ベース層42の縁部はカバー層43の縁部と一致して平らにそろっていてもよい。さらに、ストランド41の端は各層42および43の縁部に位置してもよい。上述した製造工程によって、各層42および43の縁部、さらにストランド41の端はすべて伸張要素40の縁部に配置してもよい。
【0041】
一旦伸張要素40が形成されると、下地要素31に接合されて、それによって履物10に伸張要素40を組み込んでもよい。図13Aを参照して、伸張要素40は外側側部14に隣接して配置される。上述したように、ベース層42は下地要素31で(すなわち、熱接着剤)を形成する熱可塑性ポリマー材料を組み込んでもよい。したがって、伸張要素40を加熱してベース層42の温度を上昇させてもよい。下地要素31と接触すると、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料は下地要素31で接着剤を形成し、それによって図13Bに示すように伸張要素40を下地要素31に接合する。したがって、ベース層42の熱可塑性ポリマー材料は下地要素31と接着して、履物10の製造を実質的に終了してもよい。他の方法として、縫合または接着剤を用いた工程を利用して、伸張要素40と下地要素31とを接合してもよい。
【0042】
ベース層42内の熱可塑性ポリマー材料は、伸張要素40と下地要素31との間を接触させる前に加熱してもよい。例えば、放射加熱器を利用してベース層42を加熱してもよい。いくつかの工程では、加熱器をアッパー20の空洞内部に配置してもよく、下地要素31を介して熱を伝導して、伸張要素40と下地要素31との間に熱接着剤の形成を引き起こしてもよい。
【0043】
伸張要素40および下地要素31の両方がアッパー30の外部表面部分を形成する。伸張要素40の領域が下地要素31の領域より小さい場合、下地要素31の外部表面の領域は伸張要素40の縁部を越えて露出される。上述したように、伸張要素40の部分はポリマー材料またはポリマーシートから形成されてもよいが、下地要素31は織物材料から形成されてもよい。ポリマーシートが一般に織物より通気性が悪いと、伸張要素40を含むアッパー30の領域は下地要素31が露出している領域より通気性が悪い場合がある。したがって、伸張要素40を用いる利点は、アッパー30の領域が通気性を維持したまま、履物10を着用時に汗または熱せられた空気がアッパー30から出ていく程度を高めることである。
【0044】
さらなる構成
図1および図2のストランド41の配向、位置および量は、履物10に好適な構成の一例を提供することを意図している。履物10の他の構成では、伸張要素40および履物10の種々の態様は大幅に変化してもよい。図14Aを参照して、3つの異なる伸張要素40は、靴紐開口部34と靴底構造20との間に鉛直に延びる種々のストランドを含む別の構成が示されている。図1と比較すると、例えば、各領域11〜13を通って長手方向に延びているストランド41はない。伸張要素40は、靴紐開口部34と靴底構造20との間の距離全体に延びていてもよいが、図14Bに示すように、距離の一部分にだけ延びていてもよい。伸張要素40はまた、図14Cに示すように、ストランド41が長手方向にだけ延びる、または図14Dに示すように、履物10の長手方向長さの一部にだけ延びる構成を有していてもよい。さらなる構成では、図14Eに示すように、さらなるストランド41が踵領域13に位置され、着用者の踵を安定させる踵部カウンターまたは他の手段を効果的に形成してもよい。したがって、ストランド41の特定の構成および伸張要素40の他の態様は著しく変化してもよい。
【0045】
図3には、下地要素31は、単層の材料から形成されているように示している。しかし、図15Aを参照すると、下地要素31は3層である。例として、内側層および外側層は織物でもよいが、中央の層は快適性を増すポリマー発泡材料であってもよい。縫取り工程を用いてストランド41を配置する場合、図15Bに示すように、2組のストランド41がベース層42の反対側の側面に位置されてもよい。また、図15Cに示すように、その2組目のストランド41と下地要素31との間にさらなる層45が延びていてもよい。ベース層42のように、層45は伸張要素40と下地要素31との間に接着を引き起こす熱可塑性ポリマー材料を含んでいてもよい。一般に、図15Cに示す構成は、米国特許商標庁に2008年7月25日に出願された「Composite Element With A Polymer Connecting Layer(ポリマー接続層を有する複合要素)」と題した米国特許出願第12/180,235号に詳細に記載されており、この出願の全体を本明細書に引用して援用する。図15Dを参照して、伸張要素40は下地要素31の内部表面と接合するように示している。さらなる構成では、図15Eに示すように、カバー層43が存在しなくてもよく、または図15Fに示すように、ベース層42が存在しなくてもよい。
【0046】
さらなる製造工程
以下、図16A〜図16Gに関連して、伸張要素40を形成し、下地要素31に固定するためのさらなる製造工程について説明する。図16Aを参照して、ストランド41の構成上の変形を層42と層43との間に位置するように示している。上述したように、ストランド41を配置するために、縫取り工程などの様々な方法が利用されてもよい。レーザ装置66または別の切断装置を利用して様々な領域46を切除または除去してもよい。すなわち、レーザ装置66は層42および43を切断して、開口部または層42および43が存在しないその他の領域を形成してもよい。
【0047】
一旦層42および43から領域46を除去すると、伸張要素40および下地要素31の一部は成形型60の内部(すなわち、成形部61と成形部62との間)に位置される。上述した様々な方法では、下地要素31を履物10に組み込んだ後に、伸張要素40を下地要素31に固定する。しかし、本方法では、下地要素31を履物10に組み込む前に、伸張要素40を下地要素31(または下地要素の一部または層)に固定する。成形型61および63は一旦配置されると、伸張要素40および下地要素31を圧縮し、図16Dに示すように、それによって伸張要素40および下地要素31を互いに接着させる。図16Eに示すように、成形型60を開く際に、接着した伸張要素40および下地要素31を取り出してもよい。ただし、下地要素31は伸張要素40に形成される様々な領域46を介して視認できる。
【0048】
次いで、伸張要素40および下地要素31の組み合わせを平板65上に配置してもよく、その後、図16Fに示すように、レーザ装置66を用いてベース層42、カバー層43、および下地要素31それぞれを切断して伸張要素40および下地要素31の組み合わせを適切に成形する。すなわち、レーザ装置66を用いて伸張要素40および下地要素31の余剰部分を除去して図16Gに示す形状にする。その後、伸張要素40および下地要素31の組み合わせは履物10に組み込まれる。
【0049】
本発明は、様々な構成を参照して、上記におよび添付の図面において開示した。しかしこの開示の目的は、本発明の範囲を制限することではなく、本発明に関連する様々な特徴および概念の例を示すことである。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定された本発明の範囲から逸脱することなく、上で述べた構成に対して多くの変形や変更を行なえること認識するであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーおよび前記アッパーに固定された靴底構造を有する履物物品であって、前記アッパーが、
内部表面および反対側の外部表面を有し、前記内部表面が着用者の足を収容するための前記アッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定している下地要素と、
ベース層および複数のストランドを含む伸張要素であって、前記ベース層が前記外部表面に固定され、前記ストランドと前記外部表面との間に位置し、さらに前記外部表面の少なくとも1つの領域を露出する複数の縁部を画定し、前記ストランドが前記ベース層に接して配置され、前記ベース層と少なくとも5センチメートルの距離にわたって実質的に平行である伸張要素と、
を含むことを特徴とする履物物品。
【請求項2】
前記ベース層が、熱可塑性ポリマー材料から少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項3】
前記ベース層が、前記熱可塑性ポリマー材料を用いて前記下地要素と接合されていることを特徴とする、請求項2に記載の履物物品。
【請求項4】
前記ベース層が前記熱可塑性ポリマー材料でカバー層に接合され、前記ストランドが前記カバー層と前記ベース層との間に位置していることを特徴とする、請求項2に記載の履物物品。
【請求項5】
前記カバー層が複数の縁部を画定し、前記カバー層の縁部が前記ベース層の縁部に位置していることを特徴とする、請求項3に記載の履物物品。
【請求項6】
前記ベース層が、(a)前記熱可塑性ポリマー材料を含浸させた織物および(b)前記熱可塑性ポリマー材料のシートのいずれか一方であること特徴とする、請求項2に記載の履物物品。
【請求項7】
前記ストランドの少なくとも一部の端が、前記ベース層の縁部に位置していることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項8】
前記下地要素が層構造を有し、前記層構造の少なくとも第1層が前記内部表面を形成し、また前記層構造の少なくとも第2層が前記外部表面を形成し、前記ベース層が前記第2層に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項9】
前記ストランドの一群が、前記アッパーの靴紐領域と前記靴底構造が前記アッパーに接合されている領域との間に延びていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項10】
前記ストランドの別の一群が、前記アッパーの踵領域と足前領域との間に延びていることを特徴とする、請求項9に記載の履物物品。
【請求項11】
アッパーおよび前記アッパーに固定された靴底構造を有する履物物品であって、前記アッパーが、
内部表面および反対側の外部表面を有する下地要素であって、前記内部表面が着用者の足を収容するための前記アッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定している下地要素と、
前記外部表面に固定された伸張要素とを含んでおり、
前記伸長要素が、
(a)複数のベース層縁部を画定しているベース層と、
(b)前記ベース層と同じ範囲に広がり、前記ベース層縁部にある複数のカバー層縁部を画定しているカバー層と、
(c)前記ベース層と前記カバー層との間に配置された複数のストランドであって、前記ベース層に少なくとも5センチメートルの距離にわたって実質的に平行であり、前記ストランドの少なくとも一部の端が前記ベース層および前記カバー層の縁部に位置しているストランドと
を含んでおり、
前記外部表面の領域が前記伸張要素を越えて延び、前記アッパーの露出表面部分を形成していることを特徴とする履物物品。
【請求項12】
前記ベース層が、(a)前記伸張要素を前記下地要素の前記外部表面に接合し、かつ(b)前記カバー層を前記ベース層に接合する熱可塑性ポリマー材料から少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする、請求項11に記載の履物物品。
【請求項13】
前記ベース層が、(a)前記熱可塑性ポリマー材料を含浸させた織物、および(b)前記熱可塑性ポリマー材料のシートのいずれか一方であることを特徴とする、請求項12に記載の履物物品。
【請求項14】
前記下地要素が層構造を有し、前記層構造の少なくとも第1層が前記内部表面を形成し、また前記層構造の少なくとも第2層が前記外部表面を形成し、前記ベース層が前記第2層に固定されていることを特徴とする、請求項11に記載の履物物品。
【請求項15】
前記ストランドの第1群が前記アッパーの靴紐領域と前記靴底構造が前記アッパーに接合されている領域との間に延びており、前記ストランドの第2群が前記アッパーの踵領域と足前領域との間に延びており、前記第1群のストランドが前記第2群のストランドと交差していることを特徴とする、請求項11に記載の履物物品。
【請求項16】
アッパーおよび前記アッパーに固定された靴底構造を有する履物物品であって、前記アッパーが、
内部表面および反対側の外部表面を有する下地要素であって、前記内部表面が着用者の足を収容するための前記アッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定している下地要素と、
伸張要素とを含み、
前記伸長要素が、
(a)前記外部表面に固定された熱可塑性ポリマー材料を含み、縁部を画定するベース層と、
(b)前記熱可塑性ポリマー材料で前記ベース層に接合され、前記ベース層の縁部に配置された縁部を画定するカバー層と、
(c)前記ベース層と前記カバー層との間に配置された複数のストランドであって、前記ベース層に少なくとも5センチメートルの距離にわたって実質的に平行であり、前記ストランドの少なくとも一部の端が前記ベース層および前記カバー層の縁部に位置されているストランドと
を含んでおり、
前記伸張要素の領域が前記下地要素の前記外部表面の領域より小さく、前記下地要素の前記外部表面の部分が前記アッパーの露出表面を形成していることを特徴とする履物物品。
【請求項17】
前記ベース層が、(a)前記熱可塑性ポリマー材料を含浸させた織物、および(b)前記熱可塑性ポリマー材料のシートのいずれか一方であること特徴とする、請求項16に記載の履物物品。
【請求項18】
前記下地要素が層構造を有し、前記層構造の少なくとも第1層が前記内部表面を形成し、また前記層構造の少なくとも第2層が前記外部表面を形成し、前記ベース層が前記第2層に固定されていることを特徴とする、請求項16に記載の履物物品。
【請求項19】
前記ストランドの第1群が前記アッパーの靴紐領域と前記靴底構造が前記アッパーに接合されている領域との間に延びており、前記ストランドの第2群が前記アッパーの踵領域と足前領域との間に延びており、前記第1群のストランドが前記第2群のストランドと交差していることを特徴とする、請求項16に記載の履物物品。
【請求項20】
履物物品を製造する方法であって、
ベース層とカバー層との間に複数のストランドを配置し、少なくとも前記ベース層が熱可塑性ポリマー材料を含む工程と、
前記熱可塑性ポリマー材料を加熱して前記カバー層を前記ベース層に接合する工程と、
前記ベース層を、当該履物物品のアッパーの下地要素に隣接して配置する工程と、
前記熱可塑性ポリマー材料で前記下地要素に前記ベース層を接合し、少なくとも前記下地要素の一部が露出されて前記アッパーの外部表面を形成する工程とを含む方法。
【請求項21】
前記加熱工程が、前記ストランドを前記ベース層に接合する工程を含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記配置する工程が、
前記アッパーの靴紐領域と靴底構造が前記アッパーに接合する領域との間に延びるように前記ストランドの第1群を配向させる工程と、
前記アッパーの踵領域と足前領域との間に延びるように前記ストランドの第2群を配向させる工程と
を含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記接合する工程が、少なくとも前記下地要素および前記カバー層から前記アッパーの前記外部表面を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記接合する工程が、前記熱可塑性ポリマー材料を加熱する工程を含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
(a)前記ベース層が前記カバー層と同じ範囲に広がるように、および(b)前記ストランドの少なくとも一部の端が前記ベース層および前記カバー層の縁部として位置するように、前記ベース層、前記カバー層および前記ストランドを、外形加工する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項1】
アッパーおよび前記アッパーに固定された靴底構造を有する履物物品であって、前記アッパーが、
内部表面および反対側の外部表面を有し、前記内部表面が着用者の足を収容するための前記アッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定している下地要素と、
ベース層および複数のストランドを含む伸張要素であって、前記ベース層が前記外部表面に固定され、前記ストランドと前記外部表面との間に位置し、さらに前記外部表面の少なくとも1つの領域を露出する複数の縁部を画定し、前記ストランドが前記ベース層に接して配置され、前記ベース層と少なくとも5センチメートルの距離にわたって実質的に平行である伸張要素と、
を含むことを特徴とする履物物品。
【請求項2】
前記ベース層が、熱可塑性ポリマー材料から少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項3】
前記ベース層が、前記熱可塑性ポリマー材料を用いて前記下地要素と接合されていることを特徴とする、請求項2に記載の履物物品。
【請求項4】
前記ベース層が前記熱可塑性ポリマー材料でカバー層に接合され、前記ストランドが前記カバー層と前記ベース層との間に位置していることを特徴とする、請求項2に記載の履物物品。
【請求項5】
前記カバー層が複数の縁部を画定し、前記カバー層の縁部が前記ベース層の縁部に位置していることを特徴とする、請求項3に記載の履物物品。
【請求項6】
前記ベース層が、(a)前記熱可塑性ポリマー材料を含浸させた織物および(b)前記熱可塑性ポリマー材料のシートのいずれか一方であること特徴とする、請求項2に記載の履物物品。
【請求項7】
前記ストランドの少なくとも一部の端が、前記ベース層の縁部に位置していることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項8】
前記下地要素が層構造を有し、前記層構造の少なくとも第1層が前記内部表面を形成し、また前記層構造の少なくとも第2層が前記外部表面を形成し、前記ベース層が前記第2層に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項9】
前記ストランドの一群が、前記アッパーの靴紐領域と前記靴底構造が前記アッパーに接合されている領域との間に延びていることを特徴とする、請求項1に記載の履物物品。
【請求項10】
前記ストランドの別の一群が、前記アッパーの踵領域と足前領域との間に延びていることを特徴とする、請求項9に記載の履物物品。
【請求項11】
アッパーおよび前記アッパーに固定された靴底構造を有する履物物品であって、前記アッパーが、
内部表面および反対側の外部表面を有する下地要素であって、前記内部表面が着用者の足を収容するための前記アッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定している下地要素と、
前記外部表面に固定された伸張要素とを含んでおり、
前記伸長要素が、
(a)複数のベース層縁部を画定しているベース層と、
(b)前記ベース層と同じ範囲に広がり、前記ベース層縁部にある複数のカバー層縁部を画定しているカバー層と、
(c)前記ベース層と前記カバー層との間に配置された複数のストランドであって、前記ベース層に少なくとも5センチメートルの距離にわたって実質的に平行であり、前記ストランドの少なくとも一部の端が前記ベース層および前記カバー層の縁部に位置しているストランドと
を含んでおり、
前記外部表面の領域が前記伸張要素を越えて延び、前記アッパーの露出表面部分を形成していることを特徴とする履物物品。
【請求項12】
前記ベース層が、(a)前記伸張要素を前記下地要素の前記外部表面に接合し、かつ(b)前記カバー層を前記ベース層に接合する熱可塑性ポリマー材料から少なくとも部分的に形成されていることを特徴とする、請求項11に記載の履物物品。
【請求項13】
前記ベース層が、(a)前記熱可塑性ポリマー材料を含浸させた織物、および(b)前記熱可塑性ポリマー材料のシートのいずれか一方であることを特徴とする、請求項12に記載の履物物品。
【請求項14】
前記下地要素が層構造を有し、前記層構造の少なくとも第1層が前記内部表面を形成し、また前記層構造の少なくとも第2層が前記外部表面を形成し、前記ベース層が前記第2層に固定されていることを特徴とする、請求項11に記載の履物物品。
【請求項15】
前記ストランドの第1群が前記アッパーの靴紐領域と前記靴底構造が前記アッパーに接合されている領域との間に延びており、前記ストランドの第2群が前記アッパーの踵領域と足前領域との間に延びており、前記第1群のストランドが前記第2群のストランドと交差していることを特徴とする、請求項11に記載の履物物品。
【請求項16】
アッパーおよび前記アッパーに固定された靴底構造を有する履物物品であって、前記アッパーが、
内部表面および反対側の外部表面を有する下地要素であって、前記内部表面が着用者の足を収容するための前記アッパー内部の空洞の少なくとも一部を画定している下地要素と、
伸張要素とを含み、
前記伸長要素が、
(a)前記外部表面に固定された熱可塑性ポリマー材料を含み、縁部を画定するベース層と、
(b)前記熱可塑性ポリマー材料で前記ベース層に接合され、前記ベース層の縁部に配置された縁部を画定するカバー層と、
(c)前記ベース層と前記カバー層との間に配置された複数のストランドであって、前記ベース層に少なくとも5センチメートルの距離にわたって実質的に平行であり、前記ストランドの少なくとも一部の端が前記ベース層および前記カバー層の縁部に位置されているストランドと
を含んでおり、
前記伸張要素の領域が前記下地要素の前記外部表面の領域より小さく、前記下地要素の前記外部表面の部分が前記アッパーの露出表面を形成していることを特徴とする履物物品。
【請求項17】
前記ベース層が、(a)前記熱可塑性ポリマー材料を含浸させた織物、および(b)前記熱可塑性ポリマー材料のシートのいずれか一方であること特徴とする、請求項16に記載の履物物品。
【請求項18】
前記下地要素が層構造を有し、前記層構造の少なくとも第1層が前記内部表面を形成し、また前記層構造の少なくとも第2層が前記外部表面を形成し、前記ベース層が前記第2層に固定されていることを特徴とする、請求項16に記載の履物物品。
【請求項19】
前記ストランドの第1群が前記アッパーの靴紐領域と前記靴底構造が前記アッパーに接合されている領域との間に延びており、前記ストランドの第2群が前記アッパーの踵領域と足前領域との間に延びており、前記第1群のストランドが前記第2群のストランドと交差していることを特徴とする、請求項16に記載の履物物品。
【請求項20】
履物物品を製造する方法であって、
ベース層とカバー層との間に複数のストランドを配置し、少なくとも前記ベース層が熱可塑性ポリマー材料を含む工程と、
前記熱可塑性ポリマー材料を加熱して前記カバー層を前記ベース層に接合する工程と、
前記ベース層を、当該履物物品のアッパーの下地要素に隣接して配置する工程と、
前記熱可塑性ポリマー材料で前記下地要素に前記ベース層を接合し、少なくとも前記下地要素の一部が露出されて前記アッパーの外部表面を形成する工程とを含む方法。
【請求項21】
前記加熱工程が、前記ストランドを前記ベース層に接合する工程を含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記配置する工程が、
前記アッパーの靴紐領域と靴底構造が前記アッパーに接合する領域との間に延びるように前記ストランドの第1群を配向させる工程と、
前記アッパーの踵領域と足前領域との間に延びるように前記ストランドの第2群を配向させる工程と
を含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記接合する工程が、少なくとも前記下地要素および前記カバー層から前記アッパーの前記外部表面を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記接合する工程が、前記熱可塑性ポリマー材料を加熱する工程を含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
(a)前記ベース層が前記カバー層と同じ範囲に広がるように、および(b)前記ストランドの少なくとも一部の端が前記ベース層および前記カバー層の縁部として位置するように、前記ベース層、前記カバー層および前記ストランドを、外形加工する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図16G】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
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【図15C】
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【図15F】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図16G】
【公表番号】特表2013−502299(P2013−502299A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526857(P2012−526857)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046115
【国際公開番号】WO2011/028441
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046115
【国際公開番号】WO2011/028441
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】
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