説明

伸縮シートおよび伸縮シートを有する使い捨て吸収性物品

【課題】接着剤を用いなくとも、弾性部材とシートとが確実に接合された伸縮シートを提供する。
【解決手段】高融点部と低融点部とを有する弾性部材と、シートとを有する伸縮シートであって、前記弾性部材と前記シートとが融着されていることを特徴とする伸縮シート。高融点部が200℃以上300℃以下の融点を有し、低融点部が80℃以上200℃未満の融点を有するとともに、高融点部は前記低融点部よりも20℃以上高い融点を有することが好ましい。高融点部と低融点部の素材としては、高融点部がポリウレタンであり、低融点部がポリオレフィンであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性部材が配設された伸縮シート、および前記伸縮シートを有する使い捨て吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の使い捨て吸収性物品に使用される伸縮シートとして、シートに接着剤を塗布せずに弾性部材をシートに固定した伸縮シートが知られている。例えば、特許文献1には、弾性部材を伸張状態で挟み込んだ内側シートと外側シートとが、弾性部材の両端部近傍で間欠的に溶着され、弾性部材が内側シートと外側シートとの間に固定された伸縮シートが開示されている。また、特許文献2には、弾性芯と、接着剤または粘着付与剤を含む鞘とからなる接着性繊維が、不織布シートに接合された伸縮シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−104853号公報
【特許文献2】特許第4170225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示される伸縮シートは、弾性部材がシートに接合しておらず、弾性部材はシートとの摩擦力によってのみシートに固定されている。従って、弾性部材をシートに確実に固定できない場合がある。特許文献2に開示される伸縮シートは、接着性繊維を用いているため、接着剤成分の経時劣化による伸縮シートの伸縮性の低下が懸念される。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、接着剤を用いなくとも、弾性部材とシートとが確実に接合された伸縮シート、および前記伸縮シートを有する使い捨て吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することができた本発明の伸縮シートとは、高融点部と低融点部とを有する弾性部材と、シートとを有する伸縮シートであって、弾性部材とシートとが融着されているところに特徴を有する。本発明の伸縮シートは、弾性部材の低融点部がシートと融着されることにより、弾性部材とシートとが確実に接合される。また、弾性部材とシートとが、接着剤によらず融着により接合しているため、接着剤の経時劣化による伸縮シートの伸縮性の低下が起こりにくくなる。伸縮シートを使い捨ておむつ等の吸収性物品に適用すれば、接着剤成分による肌のトラブルが防止されやすくなる。
【0007】
低融点部は、高融点部の一部または全部を覆っていることが好ましい。低融点部が高融点部の一部または全部を覆っていれば、弾性部材をシートに融着しやすくなり、弾性部材がより確実にシートに固定されやすくなる。また、高融点部が伸縮弾性を有する場合、高融点部由来の伸縮弾性をより確実に発現しやすくできる。
【0008】
高融点部はポリウレタンであることが好ましい。高融点部がポリウレタンであれば、高融点部に伸縮弾性を付与しやすくなる。また、低融点部がポリオレフィンであれば、高融点部が低融点部よりも高い融点を有するように弾性部材を形成しやすくなる。
【0009】
高融点部は、低融点部よりも20℃以上高い融点を有することが好ましい。高融点部が低融点部よりも20℃以上高い融点を有していれば、低融点部をシートに融着する際に高融点部が溶けにくくなり、得られる伸縮シートの伸縮性が良好となる。高融点部と低融点部の融点は、具体的には、高融点部が200℃以上300℃以下の融点を有し、低融点部が80℃以上200℃未満の融点を有することが好ましい。高融点部と低融点部が前記範囲の融点を有していれば、弾性部材や伸縮シートの製造が容易となる。
【0010】
シートは、低融点部よりも0℃以上20℃以下高い融点を有することが好ましい。シートの融点が低融点部の融点と同じであれば、シートと弾性部材とを融着する際、シートと弾性部材の低融点部とが同時に溶融し、両者が堅固に融着されやすくなる。シートの融点が低融点部の融点より高く、しかし低融点部の融点の+20℃以内であれば、シートと弾性部材とを融着する際、シートよりも弾性部材の低融点部が優先的に溶融するとともにシートも部分的に溶融することで、シートの損傷を防止しやすくなるとともに、シートと低融点部とを良好に融着できる。
【0011】
本発明は、また、伸縮シートと、吸収性コアとを有する使い捨て吸収性物品も提供する。本発明の伸縮シートは、弾性部材が備えられたシートを有する製品に好適に適用できる。使い捨て吸収性物品においては、例えば、トップシート、バックシート、外装シート(内側シート、外側シート)等に伸縮シートを適用することで、使い捨て吸収性物品使用時に、接着剤成分による肌のトラブルが防止されやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の伸縮シートは、高融点部と低融点部とを有する弾性部材がシートに融着されているため、接着剤を用いなくとも、弾性部材とシートとを確実に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明で用いられる弾性部材の一例を表す。
【図2】弾性部材とシートとを融着する融着部の形成例を表す。
【図3】本発明の使い捨て吸収性物品としての使い捨ておむつの外観を表す。
【図4】図3の使い捨ておむつの前腹部と後背部との接合を解いて、平面に展開した状態を表す。
【図5】図4のA−A断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の伸縮シートに用いられる弾性部材について、まず説明する。本発明で用いられる弾性部材は、シートと融着して伸縮シートを形成するものであり、外力により変形し、その変形を元に戻そうとする力を示すものであれば、特に限定されない。弾性部材は、長さ方向に少なくとも1.5倍(より好ましくは、2.0倍)に伸張しても、ほぼ元の長さに戻るものが好ましく、前記伸張範囲で降伏点を有しないものが好ましい。
【0015】
弾性部材は、高融点部と低融点部とを有している。本発明では、高融点部が伸縮弾性を有していることが好ましく、一方、低融点部は、弾性部材とシートとが融着するように作用する。弾性部材が高融点部と低融点部とを有していれば、低融点部で弾性部材とシートとが融着し、弾性部材とシートとが一体化された伸縮シートが伸縮性を有するようになる。低融点部は、高融点部と接合していてもよく、高融点部と接合せずに、例えば、単に高融点部を覆っていてもよい。
【0016】
弾性部材とシートとの融着容易性の点からは、低融点部は高融点部の一部または全部を覆っていることが好ましい。低融点部が高融点部の一部または全部を覆っていれば、弾性部材をシートに融着しやすくなり、弾性部材がより確実にシートに固定されやすくなる。また、高融点部が伸縮弾性を有していれば、高融点部由来の伸縮弾性をより確実に発現しやすくできる。なお、低融点部が高融点部の一部または全部を覆うとは、高融点部の表面の一部または全部に低融点部が存在することを意味する。
【0017】
弾性部材の形状は、糸状、帯状等の細長い形状が好ましい。弾性部材が細長い形状を有していれば、弾性部材をシートに配設しやすくなり、伸縮シートの製造が容易となる。この場合、弾性部材は、高融点部が弾性部材の長さ方向に延在し、低融点部が高融点部を長さ方向に一部または全部覆っていることが好ましい。
【0018】
弾性部材が糸状や帯状である場合、弾性部材の繊度は100dtex以上が好ましく、300dtex以上がより好ましく、また3,000dtex以下が好ましく、2,000dtex以下がより好ましい。弾性部材の繊度が100dtex以上であれば、弾性部材が十分な強度を有しやすくなり、弾性部材の繊度が3,000dtex以下であれば、弾性部材が嵩高くなりにくく、弾性部材が融着された伸縮シートの取り扱い性が向上する。
【0019】
本発明で使用される弾性部材としては、いわゆる複合繊維(コンジュゲート繊維)を採用することができる。複合繊維を採用する場合の、弾性部材の高融点部と低融点部の構成例を、図1に示す。図1では、弾性部材1は、いずれも、高融点部2と低融点部3を有しており、低融点部3が高融点部2の一部または全部を覆っている。
【0020】
図1(a)に示した弾性部材1は芯鞘構造を有しており、高融点部2が芯を形成し、低融点部3が鞘を形成している。図1(a)では、低融点部3が、高融点部2を長さ方向に全部覆っている。図1(a)に示した弾性部材1を用いれば、低融点部3が高融点部2を長さ方向に全部覆っているので、シートと弾性部材1との融着が容易となる。
【0021】
図1(b)に示した弾性部材1は並列構造を有しており、高融点部2と低融点部3とが長さ方向に並列している。弾性部材1は、断面の一方に高融点部2が存在し、他方に低融点部3が存在するように形成されている。図1(b)では、低融点部3が、高融点部2を長さ方向に一部覆っている。図1(b)に示した弾性部材1は高融点部2が露出しているので、高融点部2由来の伸縮弾性が発現しやすくなる。
【0022】
図1(c)に示した弾性部材1も並列構造を有しているが、断面において、1つの高融点部2の周りを複数(図では3つ)の低融点部3が囲んでいる。図1(c)に示した弾性部材1は、断面方向で複数の低融点部3が高融点部2を囲んでいるため、低融点部3がシートと接触しやすくなり、シートと弾性部材1との融着が容易となる。また、高融点部2が露出しているので、高融点部2由来の伸縮弾性が発現しやすくなる。
【0023】
図1(d)に示した弾性部材1は多芯構造を有しており、高融点部2が複数(図では2つ)の芯を形成し、低融点部3が複数の芯を完全に覆って鞘を形成している。図1(d)に示した弾性部材1は、断面が楕円形状を有する帯状であり、高融点部2が断面楕円形状の長辺方向に配置されている。図1(d)に示したような弾性部材1を用いれば、シートに高融点部2を複数本並列して設けやすくなり、伸縮シートに一定の幅をもって伸縮弾性を付与しやすくなる。高融点部2は、図1(d)に示すように断面に2本配置するのに限られず、3本以上配置してもよい。
【0024】
図1(a)〜(d)に示した弾性部材はいずれも、低融点部が長さ方向に連続して延在しているが、低融点部は長さ方向に断続的に延在していてもよい。また、高融点部は、断面が略円形状に限らず、扁平形状であってもよい。高融点部の断面が扁平形状を有し、その周りを低融点部が覆っていれば、弾性部材は帯状となり、伸縮シートに一定の幅をもって伸縮弾性を付与しやすくなる。
【0025】
図1に示したような複合繊維は、従来公知の方法により得られる。複合繊維は、例えば、低融点部と高融点部とを形成する材料を、溶融状態で、所望する繊維断面に応じた口金形状を有する紡糸口金から吐出するとともに、吐出された低融点部と高融点部とを接合することにより、製造される。また、図1(d)に示したような複合繊維は、図1(a)に示した芯鞘構造の複合繊維どうしを、鞘部分の低融点部が固化する前に、接合することによっても製造できる。
【0026】
弾性部材として複合繊維を採用する場合、弾性部材は、複数本の複合繊維の集合体であってもよい。
【0027】
本発明で使用される弾性部材としては、低融点部からなる糸(長繊維)や短繊維が、高融点部からなる芯繊維(芯糸)の一部または全部を被覆した複合糸を採用してもよい。具体的には、芯繊維に被覆糸を一方向に巻き付けたシングルカバードヤーン;芯繊維に被覆糸を方向を変えて二重に巻き付けたダブルカバードヤーン;芯繊維に短繊維を撚り掛けたコアスパンヤーン;芯繊維に1本以上の被覆糸を撚り掛けたプライヤーン等を採用できる。これらは、従来公知の方法により製造できる。
【0028】
高融点部と低融点部の融点や素材について説明する。高融点部は、低融点部よりも高い融点を有するものであれば特に限定されない。しかしながら、高融点部の融点は低融点部の融点よりも20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましく、40℃以上高いことがさらに好ましい。高融点部が低融点部よりも20℃以上高い融点を有していれば、低融点部をシートに融着する際に高融点部が溶けにくくなり、得られる伸縮シートの伸縮性が良好となる。
【0029】
高融点部の融点は、200℃以上が好ましく、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。低融点部の融点は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、また200℃未満が好ましく、185℃以下がより好ましい。高融点部の融点が200℃以上300℃以下の範囲にあり、低融点部の融点が80℃以上200℃未満の範囲にあれば、高融点部を溶かすことなく弾性部材をシートに融着しやすくなり、得られる伸縮シートの伸縮性が良好となるとともに、弾性部材の製造が容易になる。
【0030】
高融点部は、長さ方向に少なくとも1.5倍(より好ましくは、2.0倍)に伸張しても、ほぼ元の長さに戻るものが好ましく、前記伸張範囲で降伏点を有しないものが好ましい。つまり、高融点部は、伸縮弾性を有するエラストマーであることが好ましい。高融点部としては、天然ゴム;スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソブチレン等の合成ゴム;ポリウレタン、ポリエーテル・ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等の合成樹脂等が採用でき、ポリウレタン(ポリウレタンエラストマー)が特に好ましい。
【0031】
高融点部としてポリウレタンを用いる場合、ポリウレタンとしては、主鎖の繰り返し単位中にウレタン結合(−NHCOO−)を有するポリマーであれば特に限定されない。ポリウレタンは、シートと弾性部材とを融着する際、熱がかかっても硬化しない方がよいことから、熱可塑性であることが好ましい。特に、弾性部材として前記複合繊維を採用する場合は、複合繊維の製造容易性の点から、ポリウレタンは熱可塑性であることが好ましい。
【0032】
ポリウレタンとしては、ポリオールとジイソシアネートとの反応により得られるものが好ましい。ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール等を用いることができる。これらの中でも、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールが好ましい。前記例示したポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記ポリオールの数平均分子量は、ポリウレタンが適度な伸縮弾性を有するようにする点から、500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、また5000以下が好ましく、3000以下がより好ましい。
【0033】
前記ジイソシアネートとしては、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族系ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添XDI(H6XDI)、水添MDI(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族系ジイソシアネートを用いることができる。前記例示したジイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ポリウレタンとしては、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて両末端イソシアネート基のプレポリマーを得て、前記プレポリマーに鎖伸長剤とを反応させて得られるものが好ましい。前記方法により得られるポリウレタンは、適度な伸縮弾性を付与しやすくなる点で好ましい。
【0035】
鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン等のジアミン類;ヒドラジンヒドラート、カーボンヒドラジド、N,N−ジメチルカーボンジヒドラジド、ヘキサンビスセミカルバジド、シュウ酸ジヒドラジド等のヒドラジン類;エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール等のグリコール類等を用いることができる。また、必要に応じて、架橋剤として3官能以上の多官能性化合物(例えば、トリオール類やトリアミン類)を用いてもよい。
【0036】
ポリウレタンは従来公知の方法により成形すればよい。弾性部材として前記複合糸を採用する場合は、例えば、射出成型したり、紡糸(乾式紡糸法、湿式紡糸法、化学紡糸法、溶融紡糸法等)することにより、ポリウレタンを糸状や帯状に成形すればよい。弾性部材として前記複合繊維を採用する場合は、ポリウレタンと低融点部を形成する材料とを、溶融状態で紡糸口金から各々吐出し、吐出されたポリウレタンと低融点部とを接合して、ポリウレタンを成形すればよい。
【0037】
ポリウレタンとしては、熱可塑性ポリウレタンエラストマーやその成形体、ポリウレタン弾性繊維等を採用すればよく、例えば、株式会社クラレ製のクラミロン(登録商標)、DIC株式会社製のポリライト(登録商標)やパンデックス(登録商標)、東レ・デュポン株式会社製のオペロン(登録商標)、旭化成せんい株式会社製のロイカ(登録商標)、インヴィスタ・テクノロジー社製のライクラ(登録商標)、東洋紡績株式会社製のエスパ(登録商標)、日清紡ケミカル株式会社製のモビロン(登録商標)等を用いることができる。前記例示したポリウレタンは、融点が概ね200℃以上300℃以下の範囲にあり、融点の点からも高融点部として好ましく用いられる。
【0038】
低融点部は、熱可塑性であり、高融点部よりも低い融点を有するものが好ましい。本発明の伸縮シートでは、低融点部がシートと融着していることが好ましいことから、低融点部は熱可塑性であることが好ましい。
【0039】
低融点部としては、ポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンには、ポリウレタンよりも低融点を有するものが多く存在し、好適に用いられる。ポリオレフィンは、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合して得られるものであれば特に限定されないが、ハロゲン元素により置換されていてもよい炭素数2〜5のアルケンを重合して得られるものが好ましい。そのようなポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリイソブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。前記例示したポリオレフィンは、融点が概ね80℃以上200℃未満の範囲に収まり、融点の点からも低融点部として好ましく用いられる。前記例示したポリオレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ポリオレフィンは、製造容易性やコストの点から、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンが好ましい。
【0040】
ポリオレフィンは従来公知の方法により成形すればよい。弾性部材として前記複合糸を採用する場合は、例えば、射出成型したり、紡糸(溶融紡糸法等)することにより、ポリオレフィンを糸状や帯状に成形すればよい。弾性部材として前記複合繊維を採用する場合は、ポリオレフィンと高融点部を形成する材料とを、溶融状態で紡糸口金から各々吐出し、吐出されたポリオレフィンと高融点部とを接合して、ポリオレフィンを成形すればよい。
【0041】
本発明の伸縮シートに用いられるシートについて、次に説明する。本発明で用いられるシートは、弾性部材と融着して伸縮シートを形成するものである。
【0042】
シートの素材としては、弾性部材と融着するものである限り特に限定されない。シートとしては、例えば、不織布、織布、編布、プラスチックフィルム、不織布とプラスチックフィルムとの積層体等が使用でき、前記積層体としては、例えば、不織布とプラスチックフィルムとが一層ずつ重ねられたものや、プラスチックフィルムを不織布で挟んで重ねられたものが示される。シートは、弾性部材との融着が容易な点で、不織布製であることが特に好ましい。
【0043】
シートの融点は、シートと弾性部材との融着の容易性の点から、低融点部よりも0℃以上20℃以下高い(好ましくは、10℃以上15℃以下高い)ことが好ましい。シートの融点が低融点部の融点と同じであれば、シートと弾性部材とを融着する際、シートと弾性部材の低融点部とが同時に溶融し、両者が堅固に融着されやすくなる。シートの融点が低融点部の融点より高く、しかし低融点部の融点の+20℃以内であれば、シートと弾性部材とを融着する際、シートよりも弾性部材の低融点部が優先的に溶融するとともにシートも部分的に溶融することで、シートの損傷を防止しやすくなるとともに、シートと低融点部とを良好に融着できる。なお、シートと弾性部材との融着において、両者が接合されていれば、シートは必ずしも溶融していなくてもよい。
【0044】
シートとして不織布を用いる場合、不織布としては、スパンボンド法、エアースルー法、ポイントボンド法、メルトブロー法、エアレイド法やそれらの製法の組み合わせ等により製造されるものが好ましい。さらに、スパンボンド法、またはスパンボンド法とメルトブロー法を組み合わせたSMS法により製造された長繊維不織布が好ましく、特にスパンボンド法により製造された長繊維不織布が好ましい。このような不織布を用いれば、高強度のシートが得やすくなる。
【0045】
シートに用いられる不織布の材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、パルプ、絹等の天然繊維から適宜選択できる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成繊維が好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはそれらの組み合わせがより好ましい。このような材質から得られる不織布を用いれば、弾性部材とシートとの融着が容易になるとともに、高強度のシートが得やすくなる。
【0046】
シートに用いられる不織布の目付は、5g/m2以上が好ましく、10g/m2以上がより好ましく、また100g/m2以下が好ましく、50g/m2以下がより好ましい。不織布の目付が5g/m2〜100g/m2の範囲にあれば、適度な強度と柔軟性を有する伸縮シートを得やすくなる。
【0047】
本発明の伸縮シートについて、説明する。本発明の伸縮シートは、高融点部と低融点部とを有する弾性部材とシートとを有し、弾性部材とシートとが融着されている。弾性部材は、低融点部の一部または全部が加熱により溶融され、シートと接合している。好ましくは、弾性部材の低融点部の一部が溶融されて、シートと接合している。シートは、弾性部材との接合部分で溶融していても溶融していなくてもよいが、当該部分でシートの少なくとも一部が溶融していれば、弾性部材とシートとの融着が堅固となり、好ましい。
【0048】
本発明の伸縮シートは、弾性部材とシートとが融着されているため、弾性部材とシートとが確実に接合される。また、弾性部材とシートとが、接着剤によらず融着により接合しているため、接着剤の経時劣化による伸縮シートの伸縮性の低下が起こりにくくなる。伸縮シートを使い捨ておむつ等の吸収性物品に適用すれば、接着剤成分による肌のトラブルを防止しやすくなる。さらに、伸縮シートの製造に当たり接着剤の塗布設備が不要となり、製造コストが低減できる。
【0049】
伸縮シートは、例えば、1枚のシートに弾性部材を融着してもよく、弾性部材を2枚のシート間に配置し、弾性部材とシートとを融着してもよい。この際、弾性部材は、伸張状態でシートに配設し融着することが好ましい。
【0050】
弾性部材とシートとは、シートの弾性部材が配設されていない面から熱を加えることで、融着することが好ましい。このように融着することで、弾性部材の高融点部に加えられる熱が低減され、高融点部の伸縮弾性が維持されやすくなる。
【0051】
弾性部材とシートとは、連続的に融着されていてもよく、断続的に融着されていてもよい。しかし、シートの溶融部分をできるだけ少なくし、シートの肌触りを向上させ、シートの柔軟性を保つ点から、弾性部材とシートとは断続的に融着されていることが好ましい。図2に、弾性部材1とシート4とを融着する融着部5の形成例を示す。
【0052】
図2(a)に示した融着部5では、直線状の融着線が弾性部材1の配設方向に複数並んで融着線群が形成され、前記融着線群は、シート4に配設された各々の弾性部材1と重なるように3列配置されている。図2(a)のように融着部5を設けることにより、弾性部材1とシート4とを融着しつつ、シートの肌触りを向上させ、シートの柔軟性を保つことができる。
【0053】
図2(b)に示した融着部5では、シート4に配設された3本の弾性部材1を横切る直線状の融着線が、弾性部材1の配設方向に複数並んで、1列の融着線群を形成している。図2(b)では、1つの融着線が全ての弾性部材1を横切っているため、弾性部材1が多少ずれて配設されても、弾性部材1とシート4とが確実に融着されやすくなる。
【0054】
図2(c)に示した融着部5では、直線状の融着線が弾性部材1の配設方向に複数並んで融着線群が形成され、融着線群は、融着線群間の間隔が0以下となるように複数列配置されている。ここで、融着線群間の間隔が0以下となるとは、融着線群を構成する各融着線が、隣り合う融着線群を構成する各融着線の端部を結ぶ仮想直線と接するか交差することを意味する。図2(c)では、融着線群間の間隔が0以下となるように融着線群が複数列配置されているため、弾性部材1が多少ずれて配設されても、弾性部材1とシート4とが確実に融着される。また、1つの融着線の長さが図2(b)の場合と比べて短いので、融着部の強度(特に引張強度)が強く保たれる。
【0055】
図2(d)に示した融着部5では、直線状の融着線が弾性部材1の配設方向に複数並んで融着線群が形成され、融着線群は複数列配置され、隣り合う融着線群どうしは、一方の融着線群の融着線が弾性部材の配設方向に対し90°未満の角度で配置され、他方の融着線群の融着線が弾性部材の配設方向に対し90°超の角度で配置されている。図2(d)では、隣り合う融着線群の融着線の配置角度が互い違いになるように融着部5が形成されているため、特定の一方向から融着部を破断する力が加わっても、融着部全体は破断しにくくなり、弾性部材がシートに堅固に固定されやすくなる。
【0056】
図2(a)〜(d)に示したように、直線状の融着線が弾性部材の配設方向に複数並んで融着線群が形成される場合、直線状の融着線は、弾性部材の配設方向に対し45°〜135°の角度で配置することが好ましい。融着線を、弾性部材の配設方向に対し45°〜135°の角度で配置することで、弾性部材とシートとが確実に融着されやすくなる。
【0057】
図2(a)〜(d)では、融着線は直線状であったが、融着線は、例えば曲線状であってもよい。また、融着線は、厳密に線状であることは要求されず、任意の形状(例えば、円、楕円、多角形、不定形等)を有するものであってもよい。
【0058】
前記例示した融着部は、例えば、表面に所定のパターンで凸部が形成された熱ロールとフラットロールとで、弾性部材とシートを挟み込むことにより、形成することができる。また、弾性部材が2枚のシート間に配置される場合は、表面に所定のパターンで凸部が形成された2つの熱ロール間に、弾性部材とシートを挟み込むことにより、融着部を形成してもよい。
【0059】
弾性部材とシートとを前記例示した融着部により融着しない場合は、弾性部材とシートとにドライヤー等による熱風を当てることで、両者を熱接着してもよい。
【0060】
次に、本発明の伸縮シートを有する使い捨て吸収性物品について説明する。本発明の使い捨て吸収性物品は、伸縮シートと吸収性コアとを有している。使い捨て吸収性物品としては、使い捨ておむつや生理用ナプキン等が挙げられる。本発明の使い捨て吸収性物品は、前記伸縮シートを有しているため、伸縮性に優れる上、接着剤成分による肌のトラブルを防止しやすくできる。
【0061】
使い捨て吸収性物品が、例えば生理用ナプキンである場合、生理用ナプキンは、例えば、トップシートとバックシートとの間に吸収性コアが挟み込まれて形成される。生理用ナプキンの形状としては、略長方形、砂時計型、ひょうたん型等が示される。
【0062】
使い捨て吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、後背部または前腹部の左右に一対の止着部材が設けられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するオープン型使い捨ておむつであったり、前腹部と後背部とが接合されることによりウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつであってもよい。
【0063】
使い捨て吸収性物品が、使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、例えば、内側シートと外側シートとからなる積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とからなるおむつ本体を形成し、前記股部にトップシートとバックシートとの間に吸収性コアが挟み込まれた吸収性本体が備えられていてもよい。また、使い捨ておむつは、例えば、トップシートとバックシートとの間に吸収性コアが挟み込まれた積層体からなり、この積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とを有していてもよい。なお、前腹部、後背部、股部とは、使い捨ておむつを着用の際に、着用者の腹側に当てる部分を前腹部と称し、着用者の尻側に当てる部分を後背部と称し、前腹部と後背部との間に位置し着用者の股間に当てる部分を股部と称する。
【0064】
吸収性コアは、尿等の排泄物を吸収できるものであれば特に限定されず、吸水性樹脂を含んでいることが好ましい。吸収性コアは、例えば、粉砕したパルプ繊維やセルロース繊維等の親水性繊維集合層に粒状の吸水性樹脂を混合または散布したものを、ティッシュペーパーなどの紙シートまたは液透過性不織布シート等の被覆シートで包み、長方形、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型等の所定形状に成形することにより得られる。
【0065】
使い捨て吸収性物品には、吸収性コアの両側縁部に沿って、立ち上がりフラップが設けられていることが好ましい。立ち上がりフラップは、例えば、吸収性コアの上面の幅方向両側縁部に設けられてもよく、吸収性コアの幅方向両外側に設けられてもよい。
【0066】
本発明の伸縮シートは、弾性部材が設けられる部材であれば、特に制限なく適用でき、使い捨て吸収性物品においては、例えば、トップシート、バックシート、外装シート(内側シート、外側シート)等に適用できる。例えば、使い捨ておむつには、ウェスト開口部の縁に沿ってウェスト用弾性部材が設けられたり、脚開口部の縁に沿って脚用弾性部材が設けられたり、下腹部周りに胴周り用弾性部材が設けられたり、吸収性コアの両側縁部に沿って設けられる立ち上がりフラップの自由端部に立体用弾性部材が設けられるが、これらの弾性部材が設けられる部材に、本発明の伸縮シートが使用できる。これについて、図3〜図5を用いて具体的に説明する。
【0067】
図3は、本発明の使い捨て吸収性物品としての使い捨ておむつ(パンツ型使い捨ておむつ)の外観を表す。図4は、図3の使い捨ておむつの前腹部と後背部との接合を解いて、平面に展開した状態を表す。図5は、図4の使い捨ておむつのA−A断面図を表す。図では、矢印xをおむつ幅方向とし、矢印yをおむつ前後方向と定義付けている。また、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向を厚み方向zと定義付ける。
【0068】
使い捨ておむつ10は、前腹部Pと、後背部Qと、これらの間に位置し吸収性コア15が備えられた股部Rとから構成される。詳細には、使い捨ておむつ10は、前腹部Pと後背部Qと股部Rとからなるおむつ本体11と、トップシート16とバックシート17との間に吸収性コア15が配置された吸収性本体14とを有し、吸収性コア15を有する吸収性本体14がおむつ本体11の股部Rに備えられている。おむつ本体11は、前腹部Pと後背部Qとが接合されることによりウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成される。おむつ本体11は、内側シート12と外側シート13とからなる積層体である。
【0069】
吸収性本体14のトップシート16は、着用者の股部の肌に面するように配置され、尿等の排泄物を透過する。トップシート16を透過した排泄物は、吸収性コア15により収容される。バックシート17は、おむつ本体11の内側シート12に接合され、排泄物が外部へ漏れるのを防いでいる。
【0070】
ウェスト用弾性部材21は、ウェスト開口部の縁19に沿って設けられている。ウェスト用弾性部材21により、着用者が寝ている状態でも、背中側や腹部側からの尿等の排泄物の漏れが起こりにくくなる。
【0071】
胴周り用弾性部材22は、前腹部Pと後背部Qに、おむつ幅方向xに設けられている。胴周り用弾性部材22により、おむつの下腹部周りのフィット性が向上する。
【0072】
脚用弾性部材23は、脚開口部の縁20に沿って設けられている。脚用弾性部材23により、着用者の脚周りに沿ったレッグギャザーが形成され、股部からの尿等の排泄物の漏れが防止される。
【0073】
図3〜図5では、ウェスト用弾性部材21、胴周り用弾性部材22、脚用弾性部材23のいずれも、内側シート12と外側シート13との間に接合されている。本発明の伸縮シートは、内側シート12と外側シート13との間に、ウェスト用弾性部材21、胴周り用弾性部材22、および/または脚用弾性部材23が接合された積層体(外装シート)に、適用することができる。
【0074】
吸収性コア15のおむつ幅方向xの両側縁部に沿って、立ち上がりフラップ18が設けられている(図5)。立ち上がりフラップ18は、トップシート16に接合され、おむつ前後方向yに延在している。立ち上がりフラップ18のおむつ幅方向xの内方端部(自由端部)には、立体用弾性部材24が接合されている。立ち上がりフラップ18は、立体用弾性部材24の収縮力により、トップシート16の上方(着用者側)に立ち上がる立体ギャザーを形成し、尿等の横漏れを防止する。なお、立ち上がりフラップ18は、吸収性本体14の前後端部で、内面がトップシート16上に接合されており、これにより尿等の前後方向yの外方への漏れが防止される。本発明の伸縮シートは、立体用弾性部材24が接合された立ち上がりフラップ18にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の伸縮シートは、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
1: 弾性部材
2: 高融点部
3: 低融点部
4: シート
5: 融着部
10: 使い捨て吸収性物品(使い捨ておむつ)
11: おむつ本体
12: 内側シート
13: 外側シート
14: 吸収性本体
15: 吸収性コア
18: 立ち上がりフラップ
21: ウェスト用弾性部材
22: 胴周り用弾性部材
23: 脚用弾性部材
24: 立体用弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高融点部と低融点部とを有する弾性部材と、シートとを有する伸縮シートであって、
前記弾性部材と前記シートとが融着されていることを特徴とする伸縮シート。
【請求項2】
前記低融点部が、前記高融点部の一部または全部を覆う請求項1に記載の伸縮シート。
【請求項3】
前記高融点部がポリウレタンである請求項1または2に記載の伸縮シート。
【請求項4】
前記低融点部がポリオレフィンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の伸縮シート。
【請求項5】
前記高融点部が、前記低融点部よりも20℃以上高い融点を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の伸縮シート。
【請求項6】
前記高融点部が、200℃以上300℃以下の融点を有し、
前記低融点部が、80℃以上200℃未満の融点を有する請求項5に記載の伸縮シート。
【請求項7】
前記シートが、前記低融点部よりも0℃以上20℃以下高い融点を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の伸縮シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の伸縮シートと、吸収性コアとを有することを特徴とする使い捨て吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−269025(P2010−269025A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124519(P2009−124519)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】