説明

位相制御式調光器

【課題】電磁ノイズを抑制するとともに、周辺の回路部品に与えるストレスを軽減できる位相制御式調光器を提供する。
【解決手段】商用交流電源ACに接続される照明負荷2をスイッチング手段Q5による位相制御によって調光制御する負荷駆動回路11と、この負荷駆動回路11の出力端に印加される位相制御時における電圧波形の急峻な立ち上がりを緩和させる波形整形回路16と、前記負荷駆動回路11のスイッチング手段Q5に流れる最大電流を制限する電流制限回路17とを備えた位相制御式調光器1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照明負荷を位相制御により調光する位相制御式調光器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源を位相制御して照明負荷へ供給する電力を100%から0%までの範囲で変化させて、調光制御する位相制御式調光器が知られている。例えば、室内の廊下などに設置されたダウンライトに装着された白熱電球を調光制御して調光点灯を行うものである。
【0003】
ところで、近時、長寿命や省エネの観点から、光源としてLEDを用いるLED電球が開発されている。このLED電球は、白熱電球と同様にダウンライト等の照明器具に口金を介して装着して使用できるものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】東芝ライテック(株)|商品紹介|配線器具・住宅用分電盤|白熱電球用調光器・WIDE コントルクス[平成22年11月5日検索](http://www.tlt.co.jp/tlt/new/haisen/contolux/contolux.htm)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−33863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなLED電球を調光点灯する場合、LED電球はコンデンサインプット型の整流回路を備えた非線形負荷であり、スイッチング手段による位相制御時にスイッチング手段が急激にONすると、電圧、電流の急峻な立ち上がり波形が生じ、このためコンデンサに急激なパルス状の充電電流が流れ、強烈な電流スパイクとなって電磁ノイズを放射するとともに、周辺の回路部品に過渡的な振動電流等によってストレスを与える問題が発生する。
したがって、電磁ノイズによる障害が生じるとともに、調光器やLED電球に損傷を与えて製品寿命を短縮させてしまう虞が生じる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、電磁ノイズを抑制するとともに、周辺の回路部品に与えるストレスを軽減できる位相制御式調光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による位相制御式調光器は、商用交流電源に接続される照明負荷をスイッチング手段による位相制御によって調光制御する負荷駆動回路と、この負荷駆動回路の出力端に印加される位相制御時における電圧波形の急峻な立ち上がりを緩和させる波形整形回路と、前記負荷駆動回路のスイッチング手段に流れる最大電流を制限する電流制限回路とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、電磁ノイズを抑制することができるとともに、周辺の回路部品に与えるストレスを軽減できる位相制御式調光器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る位相制御式調光器を示す概略の構成図である。
【図2】同位相制御式調光器を示すブロック構成図である。
【図3】同位相制御式調光器を示す回路図である。
【図4】同位相制御式調光器における各部の波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る位相制御式調光器ついて図1乃至図4を参照して説明する。図1は、位相制御式調光器の構成図、図2は、ブロック図、図3は、回路図、図4は、各部における電圧の波形図を示している。なお、各図において同一部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
図1において、商用交流電源ACに接続された位相制御式調光器1及び照明負荷2が示されている。
【0012】
照明負荷2は、天井面に設置されたダウンライトに装着されたLED電球である。このLED電球は、E型の口金を有しており、本体内に、基板に実装された複数のLED及びLEDを点灯制御する点灯回路を備えている。点灯回路は、コンデンサインプット型の整流回路を備えていて、例えば、全波整流回路の出力端子間に平滑コンデンサを接続し、この平滑コンデンサに直流電圧変換回路及び電流検出手段を接続して構成されている。したがって、このLED電球は、ダウンライトのソケットに装着され、商用交流電源ACから給電されることによって点灯し、床面方向における所定の範囲を照明する。
【0013】
位相制御式調光器1は、ボックス形の本体を備え、壁面に埋め込まれて取付けられる壁埋込形であり、その前面側には、調光用の回動操作摘み21や表示ランプ22が設けられている。
【0014】
次に、図2は、位相制御式調光器1のブロック構成図を示している。また、加えて、各部の波形を示している。図2に示すように、商用交流電源ACには位相制御式調光器1と照明負荷2とが接続されている。位相制御式調光器1は、負荷駆動回路11、駆動電源回路12、同期信号発生回路13、定電流放電回路14、タイミング発生回路15、波形整形回路16、電流制限回路17及びバッファ回路18を備えている。
【0015】
負荷駆動回路11は、スイッチング素子等のスイッチング手段によって照明負荷2に電力を供給する機能を有する。また、スイッチング手段によって商用交流電源ACを位相制御してその導通角を調整し、照明負荷2に流れる電流を調整して調光点灯できるようになっている。
【0016】
駆動電源回路12は、調光器1の動作用の電源を発生させるためのものであり、例えば、12Vの安定化電源を供給するため、3端子レギュレータ等のICが用いられている。また、駆動電源回路12の入力端には、ダイオードブリッジ等で全波整流された波形の電圧が入力されるようになっている。
同期信号発生回路13は、前記全波整流された波形の電圧(非平滑波形)に対応して電源に同期するパルス信号を発生する回路である。
【0017】
定電流放電回路14は、インパルスの同期信号に同期してコンデンサに充電し、これを定電流放電させてコンデンサの端子間に鋸歯状波の電圧を発生させる機能を有している。
【0018】
タイミング発生回路15は、負荷駆動回路11におけるスイッチング手段の駆動タイミング信号を設定し生成するものであり、位相制御による導通角、すなわち、調光度を設定する部分である。したがって、タイミング発生回路15には、前記回動操作摘み21によって操作調整される可変抵抗器が設けられている。
【0019】
波形整形回路16は、タイミング発生回路15からの出力を受けてこの出力波形の前縁を傾斜制御するものである。タイミング発生回路15で生成された駆動信号は、立ち上がりが急峻となっている。このため、電源の基本周波数の奇数倍の高調波を含むこととなり、高調波ノイズが発生する虞がある。
【0020】
したがって、波形整形回路16は、波形の急峻な立ち上がりを緩和させ、つまり、波形の前縁をなまらせて高調波を抑制し、ノイズの発生を抑制するものである。
【0021】
電流制限回路17は、波形整形回路16からの駆動信号の振幅を規制して、負荷駆動回路11におけるスイッチング手段に流れる最大電流を制限するものである。この電流制限回路17からの出力は、バッファ回路18を経由して負荷駆動回路11のスイッチング手段に駆動信号として印加される。
このため、スイッチング手段に流れる最大電流を制限でき、周辺の回路部品に与えるストレスを軽減することが可能となる。
【0022】
以上のように照明負荷2に印加される電圧波形は、急峻な立ち上がりが緩和されたものとなり、また、スイッチング手段に流れる最大電流が制限されるので、電磁ノイズを抑制できるとともに、周辺の回路部品に与えるストレスを軽減できる。
【0023】
次に、上記構成の位相制御式調光器1について図3及び図4を参照して詳細な回路構成を説明する。図3に示すように、商用交流電源ACに位相制御式調光器1及び照明負荷2が接続されている。
【0024】
まず、商用交流電源ACの両端には、電源トランスT1を介してダイオードブリッジDB1が接続されている。また、商用交流電源ACによる入力電圧波形を図4(a)に示している。ダイオードブリッジDB1の出力端には、駆動電源回路12が接続されている。
【0025】
駆動電源回路12は、ダイオードブリッジDB1の出力端に接続された抵抗R1、ダイオード、平滑コンデンサを備えており、また、12Vの安定化電源を供給するための3端子レギュレータU1を備えている。
【0026】
駆動電源回路12には、同期信号発生回路13が接続されている。この同期信号発生回路13は、トランジスタQ1と、このトランジスタQ1のエミッタとコレクタ間に接続された抵抗R5とを備えている。トランジスタQ1のベースは、ダイオードブリッジDB1の出力端に接続された抵抗R1の一端側に接続されていて、図4(b)に示す全波整流された後の非平滑波形、つまり、抵抗R1の両端の電圧が印加される。
【0027】
したがって、トランジスタQ1によって全波整流された後の波形におけるゼロボルトに同期して約200μs幅のパルスが生成され、電源と同期がとられるようになっている。このパルスの同期信号は、図4(c)に示すように、抵抗R5の両端に12Vのパルス波形の電圧として現れる。
【0028】
定電流放電回路14は、トランジスタQ3及びトランジスタQ4で構成されるカレントミラー回路を備えている。また、トランジスタQ3のベースには、可変抵抗VR1が接続されている。
【0029】
前記インパルスの同期信号は、バッファ用トランジスタQ2をONして鋸歯状波発生用のコンデンサC3を瞬時に充電させる。そして、コンデンサC3に充電された電圧は、定電流放電によって時間に対して一次関数的に低下する。このため、コンデンサC3の両端間電圧は、図4(d)に示すように鋸歯状波となる。なお、放電電流の値は、可変抵抗VR1にて設定するようになっている。
【0030】
タイミング発生回路15は、コンパレータU2と可変抵抗VR2とを備えている。コンパレータU2のマイナス側入力端子には、可変抵抗VR2が接続され、また、プラス側端子には、前記トランジスタQ4のコレクタ側が接続されており、前記鋸歯状波が入力されるようになっている。
【0031】
可変抵抗VR2は、位相制御による調光度を設定する部分であり、前記図1に示す回動操作摘み21によって操作調整され、所望の調光点灯の状態にすることができるものである。
【0032】
コンパレータU2において、鋸歯状波と可変抵抗VR2で設定された電圧とが比較され、可変抵抗VR2で設定された電圧値が時間関数に変換され(図4(d)参照)、コンパレータU2から電源周期に同期したパルスが出力される。
【0033】
波形整形回路16は、トランジスタQ11及びトランジスタQ12で構成されるカレントミラー回路、トランジスタQ11及びトランジスタQ12のベースに共通接続された可変抵抗VR11、トランジスタQ12のコレクタ側に接続されたトランジスタQ13、このトランジスタQ13のエミッタ−コレクタ間に接続されたコンデンサC11を備えている。
【0034】
このように構成された波形整形回路16において、コンパレータU2の出力がハイレベルになると、これがトランジスタQ13のベースに印加され、トランジスタQ13はONし、トランジスタQ11及びトランジスタQ12には、同じ大きさのコレクタ電流Icが流れる。そして、コンパレータU2の出力がローレベルになると、トランジスタQ13はOFFし、トランジスタQ12を介してコンデンサC11に充電電流Icが流れる。
【0035】
このとき、トランジスタQ12のベース電流は、可変抵抗VR11に制限され、コレクタ電流も制限される。したがって、可変抵抗VR11の調整によりコンデンサC11の充電量を調整できる。すなわち、コンデンサC11の両端の電圧は、図4(e)に示すように、立ち上がりが緩和した、つまり、di/dtが小さく、波形の前縁をなまらせたものとなる。
【0036】
また、このコンデンサC11の電圧の立ち下りについては、次の半サイクルに同期したトランジスタQ13のONによって瞬時に放電されリセットされる。なお、図4(e)に示すコンデンサC11の両端の電圧波形における立ち上がりの緩和の度合いは、可変抵抗VR11を調整することにより変更することができる。
【0037】
電流制限回路17は、コンデンサC11の両端間に接続された可変抵抗VR12を備えて構成されている。この可変抵抗VR12の出力電圧は、オペアンプU3からなるバッファ回路18を経由して負荷駆動回路11のスイッチング手段としての電界効果トランジスタ(MOS FET)Q5のゲートに入力され電界効果トランジスタQ5を駆動する。
【0038】
可変抵抗VR12は、電界効果トランジスタQ5のゲート駆動電圧波形の最大値調整用の可変抵抗であり、電界効果トランジスタQ5に流れる最大電流IDmaxを制限するために、可変抵抗VR12の出力電圧の最大値Vmaxを調整するものである。因みに、この出力電圧の最大値Vmaxを調整することにより、電界効果トランジスタQ5に流れる最大電流IDmaxは、ゲート−ソース間の電圧をVGSとすると、ソース電流帰還抵抗R14との関係で、IDmax=(Vmax−VGS)/R14で表わされる値に制限することが可能となる。
【0039】
負荷駆動回路11は、スイッチング手段としての電界効果トランジスタQ5によって照明負荷2に商用交流電源ACを位相制御して照明負荷2に流れる電流を調整して調光点灯を行うものである。したがって、商用交流電源ACに接続された照明負荷2であるLED電球は、ダイオードブリッジDB2を介して負荷駆動回路11に接続されている。
なお、上述のダイオードブリッジDB1の出力端間に接続された発光ダイオードLEDは、通電確認用の表示ランプ22である。
【0040】
以上のような本実施形態の構成によれば、調光用の回動操作摘み21を操作することにより照明負荷2を位相制御によって調光点灯することができる。そして、この場合、図4(f)に示すように、照明負荷2には、立ち上がりが緩和された電圧が印加され、また電界効果トランジスタQ5に流れる最大電流IDmaxは、制限された値のすることができるため、電磁ノイズを抑制することができるとともに、周辺の回路部品に与えるストレスを軽減できる位相制御式調光器1を提供することが可能となる。
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・位相制御式調光器、2・・・照明負荷、11・・・負荷駆動回路、
12・・・駆動電源回路、13・・・同期信号発生回路、
14・・・定電流放電回路、15・・・タイミング発生回路、
16・・・波形整形回路、17・・・電流制限回路、
18・・・バッファ回路、Q5・・・スイッチング手段(電界効果トランジスタ)、
AC・・・商用交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電源に接続される照明負荷をスイッチング手段による位相制御によって調光制御する負荷駆動回路と;
この負荷駆動回路の出力端に印加される位相制御時における電圧波形の急峻な立ち上がりを緩和させる波形整形回路と;
前記負荷駆動回路のスイッチング手段に流れる最大電流を制限する電流制限回路と;
を具備することを特徴とする位相制御式調光器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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