説明

位相差回路

【課題】
本発明は、広帯域に亘って所望の位相差を維持する2つの信号を得ることができると共に、容易に所望の位相差を設定することができる位相差回路を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る位相差回路10は、信号を分割して出力する分配器20と、第1の90°ハイブリッド回路31、第1の特性を有する第1の全反射素子32および第1の特性を有する第2の全反射素子33を備えた第1の位相調整回路30と、第2の90°ハイブリッド回路41、第2の特性を有する第3の全反射素子42および第4の全反射素子43を備えた第2の位相調整回路40と、を備える。ここで、第1の特性および第2の特性は、第1の位相調整回路30から出力された信号と第2の位相調整回路40から出力された信号との位相差が所望の値となるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の位相差を有する信号を出力する位相差回路に関し、特に、電力分配回路および電力合成器回路等へ所望の位相差を有する信号を出力する位相差回路に関する。
【背景技術】
【0002】
VHF、UHF帯のTV、FM送信機等の電力分配回路および電力合成器回路において、3dBカプラを用いて電力合成を行う場合、3dBカプラへは広帯域にわたって位相差が90度である信号を入力する必要がある。さらに、入力する信号を電力増幅器を用いて増幅した後で合成を行う場合、各電力増幅器の運転のばらつきを抑える為、各電力増幅器に入力させる信号の分配偏差をなるべく小さくする必要がある。
【0003】
特許文献1には、所望の位相差を有する信号を生成し、電力増幅器で増幅させた後で合成する技術が開示されている。特許文献1の電力合成器回路図を図12に示す。図12において、電力合成器回路900の端子0に入力した信号は、ウィルキンソン型2分配器910で2分配された後、一方がコンデンサおよびインダクタから成る位相調シフタ920により位相シフトされ、他方が電気長を所望の値に設定した位相調整用線路930により位相調整される。そして、広帯域に所望の位相差に調整された該2つの信号はそれぞれ増幅器940、950において増幅され、λ/4 3db方向性結合器960を用いて結合された後、端子1から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−236105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電力合成器回路900は、位相調シフタ920と位相調整用線路930とによって信号の位相を調整することにより、分散偏差が小さい状態で、広帯域にわたって所望の位相差を有する信号を得ることができる。しかし、特許文献1の技術では、位相調整用の位相調整用線路930の電気長を回路シミュレーションや実験評価等により設定する必要があり、該設定に高度な技術を要する。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、広帯域に亘って所望の位相差を維持する2つの信号を得ることができると共に、容易に所望の位相差を設定することができる位相差回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係る位相差回路は、信号を分割して出力する分配器と、分配器からの信号が入力する入力端子、結合端子、通過端子および信号を出力するアイソレーション端子を備えた第1の90°ハイブリッド回路と、結合端子に接続された第1の特性を有する第1の全反射素子と、通過端子に接続された第1の特性を有する第2の全反射素子と、を備えた第1の位相調整回路と、分配器からの信号が入力する入力端子、結合端子、通過端子および信号を出力するアイソレーション端子を備えた第2の90°ハイブリッド回路と、結合端子に接続された第2の特性を有する第3の全反射素子と、通過端子に接続された第2の特性を有する第4の全反射素子と、を備えた第2の位相調整回路と、を備える。ここで、第1の特性および第2の特性は、第1の位相調整回路からの出力信号と第2の位相調整回路からの出力信号との位相差が所望の値となるように設定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る位相差回路において、位相差回路に入力した信号は分割されて、一方が第1の位相調整回路へ、他方が第2の位相調整回路へ入力され、所望の位相差に調整される。各位相調整回路を90°ハイブリッド回路と等しい特性を有する2つの全反射素子によって構成することにより、広帯域に所望の位相差を維持できると共に、全反射素子の特性を調整するだけで容易に所望の位相差を設定することができる。
【0009】
従って、広帯域に亘って所望の位相差を維持する2つの信号を得ることができると共に、容易に所望の位相差を得ることができる位相差回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る位相差回路10の等価回路図の一例である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る位相差回路100の等価回路図の一例である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る90°3dBハイブリッドH310の通過損失の周波数特性の一例である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る位相差回路100の信号の流れを説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る位相差回路100の端子1および端子2から出力される信号の位相の周波数特性の一例である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る位相差回路100の端子1から出力される信号の位相を基準としたときの端子2から出力される信号の位相差の周波数特性の一例である。
【図7】本発明の第2の実施形態の変形例に係る位相差回路100Bの等価回路図の一例である。
【図8】本発明の第2の実施形態の変形例に係る位相差回路100Bの位相の周波数特性の一例である。
【図9】本発明の第2の実施形態の変形例に係る位相差回路100Bの端子1から出力される信号の位相を基準としたときの端子2から出力される信号の位相差の周波数特性の一例である。
【図10】本発明の第2の実施形態の別の変形例に係る位相差回路100Cの等価回路図の一例である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る位相差回路100Dの等価回路図の一例である。
【図12】本発明の関連技術の電力合成器回路900の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る位相差回路の等価回路図の一例を示す。図1において、位相差回路10は、分配器20、第1の位相調整回路30および第2の位相調整回路40を備える。位相差回路10の端子0から入力した信号は、分配器20において分割された後、第1の位相調整回路30および第2の位相調整回路40においてそれぞれ位相が調整され、位相差回路10の端子1および端子2から出力される。
【0012】
本実施形態において、第1の位相調整回路30は、第1の90°ハイブリッド回路31、第1の全反射素子32および第2の全反射素子33を備える。第1の90°ハイブリッド回路31は、入力端子311、アイソレーション端子312、結合端子313および通過端子314を備え、結合端子313には第1の全反射素子32が、通過端子314には第2の全反射素子33が接続されている。第1の全反射素子32および第2の全反射素子33は同じ特性(第1の特性)を有し、入力した信号を全反射する。第1の全反射素子32および第2の全反射素子33が同じ特性を有することから、特性を等しく保った状態で少しずつ変化させることにより、容易に第1の特性に調整することができる。
【0013】
第1の位相調整回路30の入力端子311に入力した信号は、結合端子313および通過端子314へ分割されて全反射素子32、33にて全反射された後、再び、結合端子313および通過端子314に入射する。
【0014】
ここで、第1の位相調整回路30に入力した信号は、入力端子311から通過端子314への通過時および結合端子313からアイソレーション端子312への通過時に位相が90°遅れる。さらに、全反射される時に位相が180°反転する。従って、全反射素子の特性を無視できる場合、アイソレーション端子312には、結合端子313および通過端子314からは共に位相が90°進んだ同相の信号が入力される。一方、全反射素子の特性を無視できる場合、入力端子311には、結合端子313および通過端子314から逆位相の信号が入力され、信号が出力されない。ここで、本実施形態において、第1の全反射素子32と第2の全反射素子33とが同じ特性を有することから、アイソレーション端子312において同じ特性を有する信号が合成され、一方、入力端子311では信号が打ち消し合う。従って、第1の位相調整回路30の通過損失を小さくすることができる。
【0015】
一方、図1において、第2の位相調整回路40は、第2の90°ハイブリッド回路41、第3の全反射素子42および第4の全反射素子43を備える。第2の90°ハイブリッド回路41の結合端子413に第3の全反射素子42が、通過端子414に第4の全反射素子43が接続され、第3の全反射素子42と第4の全反射素子43とは同じ特性(第2の特性)を有する。
【0016】
第1の位相調整回路30と同様に、第2の位相調整回路40に入力した信号は、第2の90°ハイブリッド回路41の通過時に位相が90°遅れ、全反射される時に位相が180°反転する。そして、第3の全反射素子42と第4の全反射素子43とが同じ特性を有することから、アイソレーション端子412において同じ特性を有する信号が合成され、入力端子411では信号が打ち消し合う。従って、第2の位相調整回路40の通過損失を小さくすることができる。
【0017】
以下、第1の全反射素子32および第2の全反射素子33が、信号の位相を(X/2)°進める特性(第1の特性)を、第3の全反射素子42および第4の全反射素子43が、信号の位相を(X/2)°遅らせる特性(第2の特性)を有する場合について説明する。
【0018】
第1の位相調整回路30の入力端子311から入力した信号は、第1の90°ハイブリッド回路31を通過することにより位相が90°遅れ、全反射されることにより位相が反転し(+180°)、さらに、全反射素子32、33の特性により位相が(X/2)°進む。従って、第1の位相調整回路30のアイソレーション端子312(端子1)からは、位相が(90+2/X)°進んだ信号が出力される。
【0019】
一方、第2の位相調整回路40の入力端子411から入力した信号は、第2の90°ハイブリッド回路41を通過することにより位相が90°遅れ、全反射されることにより位相が反転し(+180°)、全反射素子42、43通過により位相が(X/2)°遅れる。従って、第2の位相調整回路40のアイソレーション端子412(端子2)からは、位相が(90−2/X)°進んだ信号が出力される。
【0020】
以上のように構成された位相差回路10において、端子0から入力した信号は、分配器20により分配され、端子1から位相が(90+2/X)°進んだ信号が、端子2から位相が(90−2/X)°進んだ信号が出力される。従って、端子1から出力された信号と端子2から出力された信号の位相差は、安定的にX°に維持される。
【0021】
ここで、第1の全反射素子32および第2の全反射素子33として、接地状態の位相を基準にして位相が(X/2)°進む容量を有する(第1の特性を有する)コンデンサを適用することができる。一方、第3の全反射素子42および第4の全反射素子43として、接地状態の位相を基準にして位相が(X/2)°遅れるインダクタンスを有する(第2の特性を有する)インダクタを適用することができる。全反射素子としてコンデンサやインダクタを用いる場合、容量やインダクタンスを変化させることにより、容易に且つ高精度に所望の特性を設定することができ、信号の位相を容易に且つ高精度に調整することができる。
【0022】
さらに、4つの全反射素子を全てコンデンサ(またはインダクタ)で形成する等もできる。この場合、第1の特性として位相がX°進む容量(遅れるインダクタンス)を、第2の特性として位相がY°進む容量(遅れるインダクタンス)を設定することにより、端子1と端子2からは、位相差が(X−Y)°に維持された信号が出力される。
【0023】
以上のように、本実施形態に係る位相差回路10は、広帯域に亘って所望の位相差を維持する2つの信号を得ることができると共に、容易に所望の位相差を得ることができる。
【0024】
なお、本実施形態に係る位相差回路10は、VHF、UHF帯のTV、FM送信機等の電力分配回路および電力合成器回路や、RF応用回路等に適用することができる。
【0025】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。図2に、本実施形態に係る位相差回路の等価回路図の一例を示す。図2において、位相差回路100は、等分配器200と、第1の位相調整回路300と、第2の位相調整回路400とを備える。
【0026】
等分配器200は、位相差回路100の端子0に入力した信号を等分配して、第1の位相調整回路300と第2の位相調整回路400とに出力する。本実施形態では、等分配器200として、入力した信号を同位相で等分配するウィルキンソン型2分配器を適用する。
【0027】
第1の位相調整回路300は、90°3dBハイブリッドH310、キャパシタC320およびキャパシタC330を備える。90°3dBハイブリッドH310は、端子aから入力した信号を、等分配し、同位相で端子cへ、位相が90°遅れた状態で端子dへ出力する。端子cには、片端が接地されたキャパシタC320が、端子dには、片端が接地されたキャパシタC330が接続され、端子c、dへ入力した信号は、キャパシタC320、330によって特性が付加されると共に、全反射されて再び端子c、dへ入力する。そして、端子c、dへ入力した信号は、端子cから端子bへ位相が90°遅れた状態で、端子dから端子bへ同位相で出力する。
【0028】
本実施形態において、キャパシタC320、330は共に、短絡した状態(容量が無限大)の時の位相(ハイブリッドの中心周波数において+90°)を基準に、位相が45°進む容量を有する。キャパシタC320、330が同じ容量を有することから、端子bからは同じ位相の信号が合成されて出力され、端子aからは信号が逆位相となって打ち消されて信号が出力されない。従って、90°3dBハイブリッドH310の端子aに入力した信号は小さな通過損失で端子bから出力する。
【0029】
図3に、本実施形態に係る第1の位相調整回路300の、通過損失の周波数特性の一例を示す。図3に示すように、第1の位相調整回路300の通過損失は、広帯域に亘って小さい。なお、図3において、本実施形態に係る位相差回路100をUHF帯域(470MHz〜862MHz)に適用する場合、Band width:1.0は、666MHzに相当する。
【0030】
図2の説明に戻る。図2において、第2の位相調整回路400は、90°3dBハイブリッドH410、インダクタL420およびインダクタL430を備える。90°3dBハイブリッドH410の端子gには片端が接地されたインダクタL420が、端子hには片端が接地されたインダクタL430が接続されている。本実施形態において、インダクタL420、430は共に、短絡した状態(定数が0)の時の位相(ハイブリッドの中心周波数において+90°)を基準に、位相が45°遅れるインダクタンスを有する。インダクタL420、430が同じインダクタンスを有することから、90°3dBハイブリッドH410の端子fからは同じ位相の信号が合成されて出力され、端子eからは信号が逆位相となって打ち消されて信号が出力されない。従って、通過損失を小さくすることができる。
【0031】
信号の位相の変化について図4を用いて説明する。図4において、第1の位相調整回路300(90°3dBハイブリッドH310)の端子aに入力した位相が0°の信号は、端子cへは同相で、端子dへは−90°で出力する。端子c、dに入力した信号は共に、キャパシタC320、330により位相が45°進み、全反射されることにより位相が反転する(180°進む)。そして、端子cに戻った信号は−90°で端子bに、端子dに戻った信号は同相で端子bに入力する。すなわち、第1の位相調整回路300からは、位相が135°(=−90°+45°+180°)進んだ信号が出力する。
【0032】
一方、第1の位相調整回路400(90°3dBハイブリッドH410)の端子eに入力した信号は、端子gへは同相で、端子hへは−90°で出力する。端子g、hに入力した信号は共に、インダクタL420、430により位相が45°遅れ、全反射されることにより位相が反転する(180°進む)。そして、端子gに戻った信号は−90°で端子fに、端子hに戻った信号は同相で端子fに入力する。すなわち、第2の位相調整回路400からは、位相が45°(=−90°−45°+180°)進んだ信号が出力する。
【0033】
端子1および端子2から出力される信号の位相の周波数特性の一例を図5に、端子1から出力される信号の位相を基準としたときの端子2から出力される信号の位相差の一例を図6に示す。なお、図5において、端子1から出力する信号の特性を太線で、端子2から出力する信号の特性を一点鎖線で示す。また、参考に90°3dBハイブリッドの2つの端子をショート(接地)させた場合の位相特性を細線で示す。図5および図6からわかるように、本実施形態に係る位相差回路100において、端子1から出力される信号と端子2から出力される信号は、広帯域にわたり位相差が略90°に維持される。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る位相差回路100は、等分配器200により信号を第1の位相調整回路300と第2の位相調整回路400とへ分配する。第1の位相調整回路300からは容量性の全反射素子を適用することにより位相が135°進んだ信号が、第2の位相調整回路400からはインダクタンス性の全反射素子を適用することにより位相が45°進んだ信号が出力される。従って、端子1および端子2からは広帯域にわたって位相差90°を維持する信号が出力される。
【0035】
ここで、位相調整回路300、400は、全反射素子の特性(容量、インダクタンス)を調整することにより、0〜180°までの任意の位相差を容易に設定することができる。図5に、容量を調整することによって設定可能な位相範囲を「C性」で、インダクタンス性を調整することによって設定可能な位相範囲を「L性」で示す。
【0036】
さらに、位相調整回路300、400において、対を成す全反射素子の特性を同じにすることにより、所望の特性を容易に設定することができて信号の位相差を所望の値に容易に且つ高精度に調整することができると共に、位相調整回路300、400の通過損失を小さくすることができる。
【0037】
(第2の実施形態の変形例)
第2の実施形態の変形例について説明する。本実施形態に係る位相差回路は、第2の実施形態に係る位相差回路100において、キャパシタC320およびキャパシタC330の容量を無限に大きくし、インダクタL420およびインダクタL430のインダクタンスを無限に大きくしたものである。本実施形態に係る位相差回路100Bの等価回路図の一例を図7に示す。
【0038】
図7に示した位相差回路100Bにおいて、キャパシタC320B、330Bの容量を無限に大きくすることにより、等価的にショート回路を構成することができる。一方、インダクタL420B、430Bのインダクタンスを無限に大きくすることにより、等価的にオープン回路を構成することができる。
【0039】
ショート回路を通過した信号は、ショート点で位相が180°反転することから、第1の位相調整回路300B(端子1)から出力される信号の位相は、+90°(90°3dBハイブリッドH310により−90°、ショート回路により+180°)になる。一方、オープン回路を通過した信号の位相は変化しないため、第2の位相調整回路400B(端子2)から出力される信号の位相は、−90°(90°3dBハイブリッドH410により−90°、オープン回路により0°)になる。
【0040】
本実施形態に係る位相差回路100Bの端子1および端子2から出力される信号の位相の周波数特性の一例を図8に、端子1から出力される信号の位相を基準としたときの端子2から出力される信号の位相差の一例を図9に示す。図8において、端子1の特性を実線で、端子2の特性を一点鎖線で示す。図8および図9からわかるように、本実施形態に係る位相差回路100Bは、広帯域に180°一定の位相差を得ることができる。
【0041】
さらに、第2の実施形態の別の変形例について説明する。本実施形態に係る位相差回路は、第2の実施形態に係る位相差回路100において、キャパシタC320およびキャパシタC330の容量を無限に小さくし、インダクタL420およびインダクタL430のインダクタンスを無限に小さくしたものである。本実施形態に係る位相差回路100Cの等価回路図の一例を図10に示す。
【0042】
図10に示した位相差回路100Cにおいて、容量を無限に小さくすることにより等価的にオープン回路を、インダクタンスを無限に小さくすることにより等価的にショート回路を構成することができる。
【0043】
本実施形態に係る位相差回路100Cにおいて、第1の位相調整回路300C(端子1)からは位相が−90°(90°3dBハイブリッドH310により−90°、オープン回路により0°)の信号が、第2の位相調整回路400C(端子2)からは位相が+90°(90°3dBハイブリッドH410により−90°、ショート回路により+180°)の信号が出力される。従って、位相差回路100Cは、広帯域に180°一定の位相差に維持された信号を出力することができる。
【0044】
上記の位相差回路100B、100Cは、広帯域に180°一定の位相差に維持された信号を出力することができることから、広帯域なバラン回路として利用することができる。
【0045】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る位相差回路100Dの等価回路図の一例を図11に示す。図11において、位相差回路100Dは、3dBカプラ500と、第2の実施形態で用いた第1の位相調整回路300および第2の位相調整回路400と、を備える。
【0046】
位相差回路100Dに入力した信号は、3dBカプラ500により、第1の位相調整回路300側に位相−90°で、第2の位相調整回路400側に位相0°で等分配される。なお、3dBカプラ500の出力ポート間は、アイソレーションを確保することができる。
【0047】
第1の位相調整回路300に位相−90°で入力した信号は、第1の位相調整回路300を通過することにより位相が135°進み(90°3dBハイブリッドH310により−90°、キャパシタC320、330の特性により+45°、全反射により+180°)、端子1からは位相が45°(=−90°+135°)進んだ信号が出力される。一方、第2の位相調整回路400に0°で入力した信号は、第2の位相調整回路400を通過することにより、位相が45°進み(90°3dBハイブリッドH410により−90°、インダクタL420、430の特性により−45°、全反射により+180°)、端子2からは位相が45°(=0°+45°)進んだ信号が出力される。
【0048】
すなわち、端子1および端子2から同位相の信号が出力される。従って、本実施形態に係る位相差回路100Dは、同相分配しつつ、出力ポート間にもアイソレーションを確保したい分配器(例えばアンテナスプリッタ)等として利用することができる。
【0049】
ここで、本実施形態に係る3dBカプラ500を、上述の位相差回路100B、100Cと組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0050】
10、100、100B、100C、100D 位相差回路
20 分配器
200 等分配器
30、300、300B、300C 第1の位相調整回路
40、400、400B、400C 第2の位相調整回路
310、410 90°3dBハイブリッドH
320、320B、320C、330、330B、330C キャパシタC
420、420B、420C、430、430B、430C インダクタL
500 3dBカプラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を分割して出力する分配器と、
前記分配器からの信号が入力する入力端子、結合端子、通過端子および前記信号を出力するアイソレーション端子を備えた第1の90°ハイブリッド回路と、前記結合端子に接続された第1の特性を有する第1の全反射素子と、前記通過端子に接続された前記第1の特性を有する第2の全反射素子と、を備えた第1の位相調整回路と、
前記分配器からの信号が入力する入力端子、結合端子、通過端子および前記信号を出力するアイソレーション端子を備えた第2の90°ハイブリッド回路と、前記結合端子に接続された第2の特性を有する第3の全反射素子と、前記通過端子に接続された前記第2の特性を有する第4の全反射素子と、を備えた第2の位相調整回路と、
を備え、
前記第1の特性および前記第2の特性は、前記第1の位相調整回路からの出力信号と前記第2の位相調整回路からの出力信号との位相差が所望の値となるように設定されていることを特徴とする位相差回路。
【請求項2】
前記第1の特性は前記信号の位相をX/2度進める特性であり、前記第2の特性は前記信号の位相をX/2度遅らせる特性である、請求項1記載の位相差回路。
【請求項3】
前記第1の全反射素子および前記第2の全反射素子はコンデンサであり、前記第3の全反射素子および前記第4の全反射素子はインダクタである、請求項1または2記載の位相差回路。
【請求項4】
前記コンデンサは前記信号の位相をX/2度進める容量を有し、前記インダクタは前記信号の位相をX/2度遅らせるインダクタンスを有する、請求項3記載の位相差回路。
【請求項5】
前記コンデンサは限りなく大きい容量を有し、前記インダクタは限りなく大きいインダクタンスを有する、請求項3記載の位相差回路。
【請求項6】
前記コンデンサは限りなく小さい容量を有し、前記インダクタは限りなく小さいインダクタンスを有する、請求項3記載の位相差回路。
【請求項7】
前記分配器は前記信号を同位相で等分配するウィルキンソン型2分配器である、請求項1乃至6のいずれか1項記載の位相差回路。
【請求項8】
前記分配器は前記信号を90度位相差で等分配する3dBカプラである、請求項1乃至6のいずれか1項記載の位相差回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−114624(P2012−114624A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261061(P2010−261061)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】