説明

位置検出装置および医療装置位置検出システム

【課題】 位置検出装置の増幅度を高く設定し、位置検出精度の向上を図ることができる位置検出装置および医療装置位置検出システムを提供する。
【解決手段】 検知体10の内部に備えられた、少なくとも1つの内蔵コイル10aを含む回路と、内蔵コイル10aの配置領域に第1の磁界を形成する第1の磁界発生部11と、第1の磁界により内蔵コイル10aから発生する誘導磁界を検出する磁界検出部5,12と、第1の磁界に対して略逆位相の第2の磁界を生成する第2の磁界発生部23と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置および医療装置位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検者等の被検体に飲み込ませて体腔管路内を通過させ、目的位置の体腔管路内における画像の取得が可能な飲み込み型のカプセル型内視鏡等に代表されるカプセル型医療装置(検知体)が実用化に向けて研究開発されている。
このようなカプセル型医療装置を体腔管路内の所定位置に誘導するためには、現在、カプセル型医療装置が体腔管路内のどの位置にいるかを検出するするとともに、カプセル型医療装置を誘導する手段が必要であった。
【0003】
カプセル型医療装置を誘導する手段としては、カプセル型医療装置内に磁石を搭載し、外部から磁場を作用させることにより、カプセル型医療装置の位置等を制御する手段が知られている。
一方、カプセル型医療装置の位置を検出する方法としては、磁気式の位置検出方法が知られている。磁気式の位置検出方法としては、コイルを内蔵した検知体に対し、外部から磁界を与え、その誘導起電力により発生する磁界を、外部の磁気センサにより検知することで検知体の位置を特定する技術が知られている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−285044号公報
【非特許文献1】徳永,枦,藪上,河野,豊田,小澤,岡崎,荒井,「LC共振型磁気マーカを用いた高精度位置検出システム」日本応用磁気学会誌,2005年,29,p.153−156
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1においては、3軸直交の3つの磁界発生用コイルを有する略直方体状の磁場ソースを外部に配置するとともに、同じく3軸直交の3つの磁界受信用コイルを有する磁場検出コイルを医療用カプセル内に配置する技術が開示されている。この技術によれば、磁場ソースにより発生させた交番磁界により磁場検出コイルに誘導電流を発生させ、発生した誘導電流に基づいて磁場検出コイルの位置、つまり医療用カプセルの位置を検出することができる。
しかしながら、上述の技術においては、磁場ソースにより発生された交番磁界の強度と、磁場検出コイルに発生する誘導電流の強度とは比例関係にある。そのため、検出効率を向上させるためには、その分だけ交番磁界の強度を上げる必要があるという問題があった。
【0005】
一方、非特許文献1においては、交番磁界を発生する励磁コイルと、交番磁界を受けて誘導磁界を発生するLC共振型磁気マーカと、誘導磁界を検出する検出コイルと、を有する位置検出システムが開示されている。この位置検出システムによれば、LC共振型磁気マーカは、付加容量や寄生容量などにより所定周波数で共振を起こすため、上記交番磁界の周波数を上記所定周波数とすることにより、それ以外の周波数の場合と比較して、誘導磁界の強度を飛躍的に大きくすることができ、検出効率が高くなる。
しかしながら、上記非特許文献1におけるシステムの場合、検出コイルは、LC共振マーカが発生する誘導磁界だけではなく、励磁コイルが発生した交番磁界も捉えていた。
【0006】
本来検出したい誘導磁界は、上記交番磁界と比較して、微小な磁界であるため、位置検出の過程においては、予め誘導磁界がない状態で測定した交番磁界を差し引くことにより、誘導磁界を検出することが知られている。
この操作は、例えば、検出した交番磁界等のアナログ信号を、アナログデジタル変換器(以下、AD変換器と表記する。)によりデジタル信号に変換した後に行なわれている。検出コイルが捉えたアナログ信号は、増幅過程を経てAD変換器に入力されるが、上述のように、検出コイルから出力されるアナログ信号には、誘導磁界に係る信号よりも上記交番磁界に係る信号を多く含んでいる。
【0007】
そのため、誘導磁界に係る信号を、位置検出のために十分なレベルにまで増幅しようとすると(増幅器の利得を上げようとすると)、増幅器が飽和する恐れがあった。その結果、誘導磁界に係る信号を十分なレベルにまで増幅できないという問題があった。
一般に、上記増幅器の増幅度の設定は、上記交番磁界の強度に基づいて増幅器が飽和しないように設定されるため、誘導磁界に係る信号に対しては低めの増幅度に抑えられており、LC共振型磁気マーカの位置検出精度、つまり位置検出システムにおける位置検出精度が犠牲になっているという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、位置検出装置の増幅度を高く設定し、位置検出精度の向上を図ることができる位置検出装置および医療装置位置検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、検知体の内部に備えられた、少なくとも1つの内蔵コイルを含む回路と、前記内蔵コイルの配置領域に第1の磁界を形成する第1の磁界発生部と、前記第1の磁界により前記内蔵コイルから発生する誘導磁界を検出する磁界検出部と、前記第1の磁界に対して略逆位相の第2の磁界を生成する第2の磁界発生部と、を有する位置検出装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、第2の磁界発生部により発生される第1の磁界と略逆位相の第2の磁界により、磁界検出部の位置において第1の磁界を打ち消すことができる。つまり、磁界検出部が捉える第1の磁界と第2の磁界との合成磁界の強度を最小(例えば略零)とすることができ、磁界検出部は上記誘導磁界のみを捉えることができる。
そのため、例えば、磁界検出部からの出力を増幅する際に、上記誘導磁界に係る出力に基づいて増幅度を高く設定することができ、検知体の位置検出精度の向上を図ることができる。
また、第2の磁界発生部を磁界検出部の近傍に配置することにより、磁界検出部の位置において第2の磁界を打ち消しやすくすることができる。
【0011】
上記発明においては、前記第2の磁界発生部が、前記第1の磁界発生部の近傍に配置されるとともに、前記第1の磁界により相互誘導磁界を発生させる相互誘導磁界発生コイルと、前記磁界検出部の近傍に配置された第2の磁界発生コイルと、を有し、前記相互誘導磁界発生コイルと前記第2の磁界発生コイルとが電気的に直列接続されていることが望ましい。
【0012】
本発明によれば、第1の磁界発生部の近傍に配置された相互誘導磁界発生コイルが、第1の磁界発生部から発生した第1の磁界を受けて、第2の磁界としての相互誘導磁界を発生する。この相互誘導磁界は、第1の磁界と略逆位相の磁界となっている。このとき、磁界検出部の近傍に配置された第2の磁界発生コイルにも、相互誘導磁界発生コイルと電気的に直列接続されていることから、第1の磁界と略逆位相の第2の磁界が発生する。この結果、簡単な構成により第1の磁界と略逆位相の第2の磁界を発生できるとともに、磁界検出部の位置において第2の磁界の強度を大きくすることができる。したがって、より確実に磁界検出部の位置において、第1の磁界を打ち消すことができる。
【0013】
上記発明においては、前記第2の磁界発生部に、前記相互誘導磁界発生コイルまたは前記第2の磁界発生コイルの少なくとも一方の配置位置を移動させる移動機構が設けられていることが望ましい。
【0014】
本発明によれば、相互誘導磁界発生コイルまたは第2の磁界発生コイル(以下、相互誘導磁界発生コイル等と表記する。)の少なくとも一方の配置位置を移動できる移動機構を設け、相互誘導磁界発生コイル等の配置位置を調節することにより、磁界検出部の位置における第2の磁界の強さを調節することができる。
【0015】
上記発明においては、前記移動機構が、前記磁界検出部から出力される前記第1の磁界と前記第2の磁界の合成磁界に係る磁界強度信号の強度を最小にするように、前記相互誘導磁界発生コイルの配置位置を移動させることが望ましい。
本発明によれば、相互誘導磁界発生コイルの配置位置を、移動機構により上記合成磁界に係る磁界強度信号の強度が最小となるように調整するため、磁界検出部の位置における第1の磁界と第2の磁界との合成磁界の強さを最小にすることができる。
【0016】
上記発明においては、前記移動機構が、前記磁界検出部から出力される前記第1の磁界と前記第2の磁界の合成磁界に係る磁界強度信号の強度を最小にするように、前記第2の磁界発生コイルの配置位置を移動させることが望ましい。
本発明によれば、第2の磁界発生コイルの配置位置を、移動機構により上記合成磁界に係る磁界強度信号の強度が最小となるように調整するため、磁界検出部の位置における第1の磁界と第2の磁界との合成磁界の強さを最小にすることができる。
【0017】
上記発明においては、前記第2の磁界発生部が、磁界発生用の信号から略逆位相の信号を生成する位相調整部と、その信号を増幅する第2の磁界発生コイル駆動部と、前記磁界センサ近傍に配置され、増幅された信号により第2の磁界を形成する第2の磁界発生コイルと、から構成されていることが望ましい。
【0018】
本発明によれば、磁界発生用の信号から位相が略逆の信号を生成する位相調整部を構成要素の一つに備えているため、より確実に第1の磁界と略逆位相の第2の磁界を発生させることができ、上記逆相信号を増幅する第2の磁界発生コイル駆動部を構成要素の一つに備えているため、第2の磁界を所定の磁界強度で発生させることができる。そのため、より確実に第1の磁界を打ち消すことができる第2の磁界を発生させることができる。
【0019】
上記発明においては、前記第2の磁界発生コイル駆動部が、前記磁界検出部から出力される磁界強度信号に基づいて、その信号強度を最小にするように、前記第2の磁界強度を調整することが望ましい。
本発明によれば、上記磁界強度信号に基づいて、磁界強度信号が最小となるように第2の磁界の強度を調節するため、磁界検知部の位置における第1の磁界と第2の磁界との合成磁界の強度を最小とすることができる。
【0020】
上記発明においては、前記磁界検出部から出力された磁界強度信号を表示する表示部が設けられていることが望ましい。
本発明によれば、表示部により磁界センサから出力された磁界強度信号を逐次確認することができる。
【0021】
本発明は、少なくとも1つの内蔵コイルを含む回路と、磁石と、を有する医療装置と、前記内蔵コイルの配置領域に第1の磁界を形成する第1の磁界発生部と、前記内蔵コイルにおいて前記第1の磁界により励起された誘導磁界を検出する磁界検出部と、前記第1の磁界に対して略逆位相である第2の磁界と、前記磁石に作用させて前記医療装置を誘導する第3の磁界とを発生する第2の磁界発生部と、を備える医療装置位置検出システムを提供する。
【0022】
本発明によれば、第3の磁界を磁石に作用させることにより、医療装置を誘導することができるため、医療装置の位置を確認しながら所定位置へ医療装置を誘導できる。
さらに、第2の磁界の位相が第1の磁界に対して略逆位相であるため、磁界検出部の位置において第1の磁界を打ち消すことができる。つまり、磁界検出部が捉える第1の磁界と第2の磁界との合成磁界の強度を最小(例えば略零)とすることができ、磁界検出部は上記誘導磁界のみを捉えることができ、位置検出精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の位置検出装置および医療装置位置検出システムによれば、逆相磁界発生装置により発生される上記交番磁界と位相が略逆の逆相磁界により、磁気センサの位置において上記交番磁界を打ち消すことができるため、例えば、磁気センサからの出力を増幅する際に、上記誘導磁界に係る出力に基づいて増幅度を高く設定することができ、検知体の位置検出精度の向上を図ることができるという効果を奏する。
また、逆相磁界発生装置を磁界センサの近傍に配置することにより、磁気センサの位置において上記交番磁界を打ち消しやすくすることができるため、位置検出装置の増幅度を高く設定し、位置検出精度の向上を図りやすくできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(位置検出装置)
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の位置検出装置に係る第1の実施形態について図1から図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
位置検出装置1は、図1に示すように、交番磁界(第1の磁界)を発生する磁界発生コイル(第1の磁界発生部)11と、検知体10に搭載された内蔵コイル10aが発生した誘導磁界を検知する磁界センサ(磁界検出部)12と、磁界発生コイル11を駆動制御する駆動部3と、磁界センサ12から出力された信号を処理する検出部(磁界検出部)5と、逆相磁界(第2の磁界)を発生する逆相磁界発生コイル(第2の磁界発生部、第2の磁界発生コイル)23と、逆相磁界発生コイル23と電気的に結合された結合コイル(第2の磁界発生部、相互誘導磁界発生コイル)22と、から概略構成されている。
【0025】
検知体10としては、被験者等の体内に投入され医療行為を行なうカプセル型医療装置などを例示することができる。
検知体10内には、図1に示すように、内蔵コイル10aと所定容量のコンデンサ(図示せず)とを有する検知体閉回路(図示せず)が構成されており、所定の周波数で共振を起こすLC型共振回路が設けられている。
なお、上述のようにLC型共振回路を検知体閉回路として用いてもよいし、内蔵コイル10aにおける寄生容量により所定の共振周波数を実現できる場合には、両端を開放された内蔵コイル10aのみでも検知体閉回路が形成される。
【0026】
磁界発生コイル11は略面状に形成されたコイルから構成されており、駆動部3と電気的に接続されている。
駆動部3は、磁界発生コイル11で発生する交番磁界の周波数の交流信号を出力する信号発生部13と、信号発生部13から入力された交流信号を増幅して磁界発生コイル11を駆動する磁界発生コイル駆動部14と、から概略構成されている。
【0027】
磁界センサ12は略面上に配置された複数の検出コイル12aから構成され、各検出コイル12aは検出部5と電気的に接続されている。また、磁界センサ12は磁界発生コイル11と対向して配置され、磁界センサ12と磁界発生コイル11との間に検知体10が配置されている。
【0028】
検出部5は、検出コイル12aからの出力信号(磁界強度信号)に含まれる不要な周波数成分をカットするフィルタ15と、不要成分がカットされた出力信号を増幅する増幅器16と、増幅された出力信号を交流信号から直流信号へ変換する直流変換部17と、直流に変換された出力信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換するAD変換器18と、デジタル信号に変換された出力信号に基づいて演算処理するCPU19と、から概略構成されている。
【0029】
また、磁界センサ12が検知体10の周囲に複数配置される場合には、磁界センサ12とフィルタ15との間に、全検出コイル12aの出力信号から所定の検出コイル12aの出力信号を選択する磁界センサ切替部20が設けられている。磁界センサ切替部20を設けることにより、位置検出に必要な検出コイル12aの出力信号のみを選択してCPU19に対する演算負荷を低減させることができる。位置検出に必要な出力信号としては、信号強度の強い出力信号や、検知体10との距離が近い位置にある検出コイル12aからの出力信号などを例示することができる。
【0030】
CPU19には、検知体10が配置されていない状態で取得した出力信号を保存するメモリ21が接続されている。メモリ21を配置することにより、検知体10が配置された状態で取得した出力信号から、配置されていない状態で取得した出力信号を差し引くことが容易となる。そのため、検知体10の内蔵コイル10aから発生した誘導磁界に係る出力信号のみを容易に検出することができる。
また、直流変換部17としては、RMSコンバータなどを例示することができるが、特に限定されることなく公知の交流―直流変換器を用いることができる。
【0031】
図2は、図1の結合コイルと逆相磁界発生コイルとから構成される回路構成を説明する回路図である。
結合コイル22は略面状に形成されたコイルから構成されているとともに、図1および図2に示すように、逆相磁界発生コイル23と電気的に接続され閉回路を構成している。また、結合コイル22は、図1に示すように、磁界発生コイル11と対向して配置されているとともに、その近傍に配置する等して、磁界発生コイル11と磁気的に結合するように配置されている。さらに、結合コイル22は、磁界発生コイル11に対して検知体10の反対側に位置するように配置されている。
【0032】
逆相磁界発生コイル23は略面状に形成されたコイルから構成されているとともに、図1および図2に示すように、結合コイル22と電気的に直列接続され閉回路を構成している。また、逆相磁界発生コイル23は、図1に示すように、磁界センサ12と対向して配置されているとともに、その近傍に配置されている。さらに、逆相磁界発生コイル23は、検知体10との間に磁界センサ12に対して検知体10の反対側に位置するように配置されている。
なお、結合コイル22と磁界発生コイル11、または、磁界発生コイル23と磁界センサ12の位置関係は入れ替わってもよい。また、結合コイル22が空芯であって磁界発生コイル11を内部に配置できる形状の場合、図3にしめすように、結合コイル22と磁界発生コイル11とを、略同一平面上に配置してもよい。また、逆相磁界発生コイル23が空芯であって、磁界センサ12を内部に配置できる形状の場合、逆相磁界発生コイル23と磁界センサ12とを、略同一平面上に配置してもよい。
【0033】
次に、上記の構成からなる位置検出装置1における作用について説明する。
まず、駆動部3において、図1に示すように、信号発生部13が所定周波数の交流信号を生成し、交流信号は磁界発生コイル駆動部14に出力される。磁界発生コイル駆動部14は入力された交流信号を所定の強さに増幅し、増幅された交流信号は磁界発生コイル11に出力される。磁界発生コイル11は、増幅された交流信号が供給されることにより、交番磁界を周囲に形成する。
【0034】
検知体10に上記交番磁界の磁束が通過すると、その内部に搭載された内蔵コイル10aを有する検知体閉回路に所定周波数の共振電流が誘起される。検知体閉回路に共振電流が誘起されると、共振電流により内蔵コイル10aは周囲に所定周波数の誘導磁界を形成する。
【0035】
磁界センサ12の検出コイル12aには、上述の交番磁界および誘導磁界による磁束が通過するため、検出コイル12aは両磁界の磁束を加算した磁束を捉え、通過する磁束の変化に基づいた誘導電流である出力信号を発生する。検出コイル12aの出力信号は、検出部5に向けて出力される。
【0036】
検出部5においては、入力された出力信号は、最初に磁界センサ切替部20に入力される。磁界センサ切替部20は、検知体10の位置検出に用いる出力信号のみを通過させ、その他の出力信号は遮断する。
出力信号の選択方法としては、信号強度の強い出力信号や、検知体10との距離が近い位置にある検出コイル12aからの出力信号などを選択する方法を例示することができる。
【0037】
なお、上述のように、磁界センサ12とフィルタ15との間に磁界センサ切替部20を配置して位置検出に用いる出力信号のみを選択してもよいし、磁界センサ切替部20が複数の検出コイル12aとの接続を切り替えることにより、全ての検出コイル12aからの出力信号を、時分割で検出部5に入力させてもよい。また、複数の検出コイル12aに対して、それぞれフィルタ15からAD変換器18に至る系を接続させることにより、磁界センサ切替部20を用いることなく、出力信号の選択を行なわなくてもよく、特に限定するものでない。
【0038】
選択された出力信号はフィルタ15に入力され、出力信号中における位置検出に用いられない周波数成分、例えば低周波成分などが取り除かれる。不要な成分が取り除かれた出力信号は、増幅器16に入力され、後段のAD変換器18における適正な入力レベルになるように増幅される。
増幅された出力信号は直流変換部17に入力され、交流信号である出力信号は直流信号に変換される。その後、出力信号はAD変換器18に入力され、アナログ信号である出力信号はデジタル信号に変換される。
【0039】
デジタル信号に変換された出力信号はCPU19に入力される。一方、CPU19に接続されたメモリ21から検知体10を配置しない状態で取得した出力信号がCPU19に入力される。
CPU19では、入力された両出力信号の差分を演算することにより、誘導磁界に係る出力信号を求め、得られた誘導磁界に係る出力信号に基づいて内蔵コイル10aの位置、つまり検知体10の位置を特定するための演算を行なう。位置を特定するための演算には、公知の演算方法を用いることができ、特に限定するものではない。
【0040】
次に、本発明の特徴部である結合コイル22および逆相磁界発生コイル23の作用について説明する。
結合コイル22は、磁界発生コイル11と磁気的に結合するように配置されているため、磁界発生コイル11により形成された交番磁界の磁束が結合コイル22を通過する。交番磁界の磁界強度が変動すると、結合コイル22にその磁界強度の変動を打ち消す方向の磁界、つまり上記交番磁界と位相が逆の逆相磁界を形成する誘導起電力が生じる。
【0041】
結合コイル22と逆相磁界発生コイル23とは電気的に直列に接続された閉回路を形成しているため、逆相磁界発生コイル23にも結合コイル22で生じた誘導起電力に基づく誘導電流が流れる。
上記誘導電流が逆相磁界発生コイル23に流れると、逆相磁界発生コイルの周囲に上記逆相磁界が形成される。
【0042】
ここで、磁界発生コイル11、結合コイル22および逆相磁界発生コイル23が形成する磁界強度の分布について説明する。
図4は、図1における磁界強度の分布を位置測定装置1の側面から見た図である。
磁界発生コイル11が形成する交番磁界の強度分布は、図4中の破線Aで示すように、磁界発生コイル11の位置L11で最も磁界強度が高く、そこから離れるにつれて磁界強度が減衰する強度分布となる。
【0043】
結合コイル22および逆相磁界発生コイル23が形成する逆相磁界の強度分布は、図4中の一点破線Bで示すように、結合コイル22の位置L22と逆相磁界発生コイル23の位置L23との間で最も磁界強度が高く、L22およびL23から離れる(図4中のL22より左側およびL23より右側)につれて磁界強度が減衰する強度分布となる。逆相磁界の強度は、図4に示すように、交番磁界の強度よりも弱く、その位相は交番磁界と略逆位相となっている。
【0044】
上述の交番磁界と逆相磁界との合成磁界の強度分布は、図4中の実線Cで示すように、磁界発生コイル11の位置L11で最も磁界強度が高く、逆相磁界発生コイル23の位置L23より結合コイル22側にある磁界センサ12の位置L12で磁界強度が略零となる。これは、逆相磁界の位相が交番磁界の位相と逆なため、互いに打ち消しあうためである。
そのため、位置L12より磁界発生コイル11の位置L11側では、合成磁界の位相は交番磁界の位相と同じとなり、逆相磁界発生コイル23の位置L23側では、合成磁界の位相は逆相磁界の位相と同じとなる。
【0045】
なお、結合コイル22の位置L22ないし逆相磁界発生コイル23の位置L23は、予め合成磁界強度を測定することにより、磁界センサ12の出力が最小または略零となるように決めても良いし、磁界センサ12の出力を観測することにより、その出力が最小または略零となるように決めてもよく、特に限定するものではない。
【0046】
上記の構成によれば、結合コイル22および逆相磁界発生コイル23により発生される上記逆相磁界により、磁気センサ12の位置において上記交番磁界を打ち消すことができる。つまり、図4に示すように、磁気センサ12の検出コイル12aが捉える上記交番磁界と上記逆相磁界との合成磁界の強度を最小または略零とすることができるため、検出コイル12aは上記誘導磁界のみを捉えることができる。
そのため、増幅器16において、検出コイル12aからの出力信号を増幅する際に、上記誘導磁界に係る出力信号に基づいて増幅度を高く設定することができ、検知体10の位置検出精度の向上を図ることができる。
また、逆相磁界発生コイル23を磁界センサ12の近傍に配置することにより、磁気センサ12の位置において上記交番磁界を打ち消しやすくすることができる。
【0047】
結合コイル22を磁界発生コイル11の近傍に配置するとともに、結合コイル22を磁界発生コイルと磁気的に結合させることにより、結合コイル22において上記交番磁界と位相が略逆の逆相磁界を形成する誘導起電力を発生させることができる。さらに、結合コイル22と電気的に直列接続された逆相磁界発生コイル23を用いることにより、より確実に磁界センサ12の位置において交番磁界を打ち消すことができる。
【0048】
なお、上述のように、逆相磁界を発生させる専用コイルである逆相磁界発生コイル23等を配置してもよいし、例えば、検知体10の誘導に用いる磁界発生コイルを備え、当該磁界発生コイルにより形成した磁界(第3の磁界)により検知体10に搭載された磁石の位置姿勢を制御させ、それにより検知体10の位置姿勢を制御している場合において、当該姿勢制御に用いる磁界発生コイルが図2に示すような結線となっていれば、姿勢制御に用いる磁界発生コイルを逆相磁界発生装置として兼用してもよい。
例えば、ヘルムホルツ条件で対向コイルが配置されていて、低インピーダンスの駆動装置が接続されていれば、第1の実施形態と同様に機能させることができる。
【0049】
なお、上述のように、検知体10内に少なくとも内蔵コイル10aを含む閉回路のみを搭載してもよいし、用途に応じて、被験者の体腔内を撮像するCCDやCMOSからなる撮像部や、被験者に投与する薬剤を収める容器などを搭載してカプセル型医療装置として用いてもよく、特に限定するものではない。
また、検知体10をカテーテルや内視鏡などの管状医療装置とし、その略先端や途中部位に内蔵コイル10aを含む閉回路を搭載してもよい。
【0050】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の位置検出装置に係る第2の実施形態について図5を参照して説明する。
本実施形態の位置検出装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、逆相磁界発生コイル周辺の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図5を用いて逆相磁界発生コイル周辺の構成のみを説明し、その他の構成要素の説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
なお、第1の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
位置検出装置101は、図5に示すように、交番磁界を発生する磁界発生コイル11と、検知体10に搭載された内蔵コイル10aが発生した誘導磁界を検知する磁界センサ12と、磁界発生コイル11を駆動制御する駆動部3と、磁界センサ12から出力された信号を処理する検出部(磁界検出部)105と、逆相磁界を発生する逆相磁界発生コイル(第2の磁界発生部、第2の磁界発生コイル)123と、逆相磁界発生コイル123と電気的に結合された結合コイル(第2の磁界発生部、相互誘導磁界発生コイル)22と、から概略構成されている。
【0052】
検出部105は、検出コイル12aからの出力信号に含まれる不要な周波数成分をカットするフィルタ15と、不要成分がカットされた出力信号を増幅する増幅器16と、増幅された出力信号を交流信号から直流信号へ変換する直流変換部17と、直流に変換された出力信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換するAD変換器18と、デジタル信号に変換された出力信号に基づいて演算処理するCPU19と、から概略構成されている。
【0053】
また、磁界センサ12が検知体10の周囲に複数配置される場合には、磁界センサ12とフィルタ15との間に、全検出コイル12aの出力信号から所定の検出コイル12aの出力信号を選択する磁界センサ切替部20が設けられている。
CPU19には、検知体10が配置されていない状態で取得した出力信号を保存するメモリ21と、磁界センサ12が捉えた磁界強度を数値やグラフなどで表示する表示部124と、が接続されている。この表示部124を設けることにより、磁界センサ12から出力された磁界強度信号を逐次確認することができる。
【0054】
逆相磁界発生コイル123は略面状に形成されたコイルから構成されているとともに、図5に示すように、結合コイル22と電気的に直列接続され閉回路を構成している。また、逆相磁界発生コイル123は、図5に示すように、磁界センサ12と対向して配置されているとともに、検知体10との間に磁界センサ12が位置するように配置されている。
【0055】
また、逆相磁界発生コイル123下辺には、逆相磁界発生コイル123を磁界センサ12に対して接近離間可能に支持する移動機構125が配置されている。移動機構125は、磁気センサ12の面に対して略垂直に配置された一対の移動レール125aと、移動レール125a上をスライド移動可能に配置された支持部125bと、から概略構成されている。支持部125bは、逆相磁界発生コイル123の下辺を把持することにより保持している。
【0056】
なお、上述のように、移動機構125として移動レール125aと支持部125bとから構成される実施形態に適用して説明したが、移動レール125aと支持部125bとの組み合わせに限られることなく、その他の公知の可動機構を用いても構わない。
【0057】
次に、上記の構成からなる位置検出装置101における作用について説明する。
検知体10の周囲への交番磁界の形成から、内蔵コイル10aから発生した誘導磁界の検出、CPU19における検知体10の位置の特定までは、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
CPU19に入力された合成磁界に係る出力信号は、表示部124に出力される。表示部124は、入力された合成磁界に係る出力信号の強度を数値やグラフ等で表示する。
逆相磁界発生コイル123は、表示部124に表示された合成磁界に係る出力信号の強度に基づいて、その強度が最小または略零になるように移動機構125により位置が調整される。具体的には、逆相磁界発生コイル123は、移動レール125aの上を支持部125bとともに、その中心軸線方向を一定に保ちながら磁界センサ12に対して接近離間するように移動される。
【0058】
上記の構成によれば、逆相磁界発生コイル123の配置位置を移動できる移動機構125を設け、逆相磁界発生コイル123の配置位置を調節することにより、磁界センサ12の位置における合成磁界の強さを最小または略零に調節することができる。
【0059】
表示部124に表示された合成磁界に係る出力信号に基づいて、当該出力信号が最小または略零となるように逆相磁界発生コイル123の位置を変更するため、より確実に、磁界センサ12の位置における合成磁界の強度を最小または略零とすることができる。
【0060】
なお、上述のように、逆相磁界発生コイル123に移動機構125を備え、逆相磁界発生コイル123を移動可能に構成してもよいし、結合コイル22に移動機構125を備え、結合コイル22を移動可能に構成してもよいし、結合コイル22および逆相磁界発生コイル123の両者を移動可能に構成してもよく、特に限定するものではない。
【0061】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の位置検出装置に係る第3の実施形態について図6を参照して説明する。
本実施形態の位置検出装置の基本構成は、第2の実施形態と同様であるが、第2の実施形態とは、逆相磁界発生コイル周辺の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図6を用いて逆相磁界発生コイル周辺の構成のみを説明し、その他の構成要素の説明を省略する。
図6は、本実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
なお、第2の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
位置検出装置201は、図6に示すように、交番磁界を発生する磁界発生コイル11と、検知体10に搭載された内蔵コイル10aが発生した誘導磁界を検知する磁界センサ12と、磁界発生コイル11を駆動制御する駆動部3と、磁界センサ12から出力された信号を処理する検出部105と、逆相磁界を発生する逆相磁界発生コイル(第2の磁界発生部、第2の磁界発生コイル)223と、から概略構成されている。
【0063】
逆相磁界発生コイル223は略面状に形成されたコイルから構成されているとともに、図6に示すように、制御部(第2の磁界発生部)225と電気的に接続されている。また、逆相磁界発生コイル223は、図6に示すように、磁界センサ12と対向して配置されているとともに、検知体10との間に磁界センサ12が位置するように配置されている。
【0064】
制御部225は、信号発生部13の出力が入力される位相調整部226と、位相調整部226の出力が入力される逆相磁界発生コイル駆動部(第2の磁界発生コイル駆動部)227と、から概略構成されている。
位相調整部226は、信号発生部13から入力された交流信号に基づいて、位相が略反転した逆相信号を生成するように構成されている。逆相磁界発生コイル駆動部227は、入力された逆相信号を所定の強度に増幅、つまり増幅度調整ができるように構成され、増幅された逆相信号は逆相磁界発生コイル223に出力される。
【0065】
次に、上記の構成からなる位置検出装置201における作用について説明する。
検知体10の周囲への交番磁界の形成から、内蔵コイル10aから発生した誘導磁界の検出、CPU19における検知体10の位置の特定までは、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
CPU19に入力された合成磁界に係る出力信号は、表示部124に出力される。表示部124は、入力された合成磁界に係る出力信号の強度を数値やグラフ等で表示する。
逆相磁界発生コイル駆動部227は、表示部124に表示された合成磁界に係る出力信号の強度に基づいて、その強度が最小または略零になるように増幅度が調整される。逆相磁界発生コイル223に供給される逆相信号の強度が変化すると、逆相磁界発生コイル223により形成される逆相磁界の強度も変化するため、上記交番磁界が打ち消される強度の逆相磁界を形成することができる。
【0066】
上記の構成によれば、位相調整部226において、交番磁界発生に用いられる交流信号から位相が略逆の逆相信号を生成するため、より確実に上記交番磁界と位相が略逆の逆相磁界を発生させることができる。一方、逆相磁界発生コイル駆動部227において、上記逆相信号を所定の増幅度で増幅するため、所定位置において、交番磁界を打ち消すことができる強度の逆相磁界を発生させることができる。そのため、磁界センサ12の位置において、より確実に上記交番磁界を打ち消す逆相磁界を発生させることができる。
また、逆相磁界発生コイル223を磁界センサ12の近傍に配置することにより、磁界センサ12の位置において上記交番磁界を打ち消しやすくすることができる。
【0067】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の位置検出装置に係る第4の実施形態について図7を参照して説明する。
本実施形態の位置検出装置の基本構成は、第3の実施形態と同様であるが、第3の実施形態とは、逆相磁界発生コイル周辺の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図7を用いて逆相磁界発生コイル周辺の構成のみを説明し、その他の構成要素の説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
なお、第3の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
位置検出装置301は、図7に示すように、交番磁界を発生する磁界発生コイル11と、検知体10に搭載された内蔵コイル10aが発生した誘導磁界を検知する磁界センサ12と、磁界発生コイル11を駆動制御する駆動部3と、磁界センサ12から出力された信号を処理する検出部(磁界検出部)305と、逆相磁界を発生する逆相磁界発生コイル(第2の磁界発生部、第2の磁界発生コイル)323と、から概略構成されている。
【0069】
検出部305は、検出コイル12aからの出力信号に含まれる不要な周波数成分をカットするフィルタ15と、不要成分がカットされた出力信号を増幅する増幅器16と、増幅された出力信号を交流信号から直流信号へ変換する直流変換部17と、直流に変換された出力信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換するAD変換器18と、デジタル信号に変換された出力信号に基づいて演算処理するCPU319と、から概略構成されている。CPU319は、後述する位相調整部と逆相磁界発生コイル駆動部とに対して制御信号を出力できるように構成されている。
【0070】
逆相磁界発生コイル323は略面状に形成されたコイルから構成されているとともに、図7に示すように、制御部(第2の磁界発生部)325と電気的に接続されている。また、逆相磁界発生コイル323は、図7に示すように、磁界センサ12と対向して配置されているとともに、検知体10との間に磁界センサ12が位置するように配置されている。
【0071】
制御部325は、信号発生部13の出力が入力される位相調整部326と、位相調整部326の出力が入力される逆相磁界発生コイル駆動部(第2の磁界発生コイル駆動部)327と、から概略構成されている。
位相調整部326は、信号発生部13から入力された交流信号とCPU319から入力された制御信号とに基づいて、上記交流信号の位相から所定位相ずれた逆相信号を生成するように構成されている。逆相磁界発生コイル駆動部327は、CPU319から入力された制御信号に基づいて、入力された逆相信号を所定の強度に増幅、つまり増幅度調整ができるように構成され、増幅された逆相信号は逆相磁界発生コイル323に出力される。
【0072】
次に、上記の構成からなる位置検出装置301における作用について説明する。
本実施形態においては、初めに、CPU319は位相調整部326に対して、生成する逆相信号の位相のずれを略180°とする制御信号を出力する。一方、逆相磁界発生コイル駆動部327に対して、測定の都度、逆相信号の増幅度を変える制御信号を出力する。つまり、逆相磁界の強度を変更しながら交番磁界と相互磁界の合成磁界に係る出力信号を取得し、メモリ21に記憶させる。
【0073】
CPU319は、増幅度を変更して取得した一連の上記出力信号のうち、最も信号強度が小さかった増幅度を選び出し、逆相磁界発生コイル駆動部327に対して当該増幅度で逆相信号を増幅する制御信号を出力する。一方、位相調整部326に対しては、測定の都度、逆相信号の位相のずれを略180°から少しずつ変化させる制御信号を出力する。つまり、逆相磁界の位相を変更しながら上記合成磁界に係る出力信号を取得し、メモリ21に記憶させる。
【0074】
そして、CPU319は、メモリ21に記憶された上記出力信号のうち、最も信号強度が小さかった位相を選び出す。
以後、位置検出装置301は、上記手順で求められた位相を有する逆相信号を上記増幅度で増幅し、当該増幅された逆相信号により形成された逆相磁界を用いる。
【0075】
なお、検知体10の周囲への交番磁界の形成から、内蔵コイル10aから発生した誘導磁界を検出し、CPU319に上記合成磁界に係る出力信号が入力されるまでの過程は第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0076】
上記の構成によれば、CPU319により、磁界センサ12に捉えられる上記合成磁界の強度を最も小さく、または、略零にする位相調整部326および逆相磁界発生コイル駆動部327の設定を求めることができる。そのため、手動により上記設定を求める場合と比較して、より短時間で上記設定を求めることができる。
【0077】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図8から図10を参照して説明する。
本実施形態の医療用磁気誘導・位置検出システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、誘導磁界発生コイル周辺の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図8から図10を用いて誘導磁界発生コイル周辺の構成のみを説明し、その他の構成要素の説明を省略する。
図8は、本実施形態に係る位置検出装置の概略構成を示す模式図である。
なお、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0078】
位置検出装置401は、図8に示すように、交番磁界を発生する磁界発生コイル11と、検知体10に搭載された内蔵コイル10aが発生した誘導磁界を検知する磁界センサ12と、検知体10を体腔内の所定位置に誘導するための誘導用磁界を発生する誘導用磁界発生コイル413A,413B,414A,414B,415A,415Bと、から概略構成されている。
【0079】
磁界発生コイル11には磁界発生コイル11を駆動制御する駆動部403が設けられ、磁界センサ12には磁界センサ12から出力された信号を処理する検出部405が設けられている。
【0080】
駆動部403は、磁界発生コイル11で発生する交番磁界の周波数の交流信号を出力する信号発生部423と、信号発生部423から入力された交流信号を増幅して磁界発生コイル11を駆動する磁界発生コイル駆動部424と、から概略構成されている。
【0081】
検出部405は、検出コイル12aからの出力信号に含まれる不要な周波数成分をカットするフィルタ425と、不要成分がカットされた出力信号を増幅する増幅器426と、増幅された出力信号を交流信号から直流信号へ変換する直流変換部427と、直流に変換された出力信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換するAD変換器428と、デジタル信号に変換された出力信号に基づいて演算処理するCPU429と、全磁界センサ12の出力信号から所定の磁界センサ12の出力信号を選択する磁界センサ切替部430と、から概略構成されている。
【0082】
CPU429には、検知体10が配置されていない状態で取得した出力信号を保存するメモリ431が接続されている。メモリ431を配置することにより、検知体10が配置された状態で取得した出力信号から、配置されていない状態で取得した出力信号を差し引くことが容易となる。そのため、検知体10の内蔵コイル10aから発生した誘導磁界に係る出力信号のみを容易に検出することができる。
また、直流変換部427としては、RMSコンバータなどを例示することができるが、特に限定されることなく公知の交流―直流変換器を用いることができる。
【0083】
誘導用磁界発生コイル413A,413B、誘導用磁界発生コイル414A,414B、誘導用磁界発生コイル415A,415Bは、ヘルムホルツ条件を満たすように対向配置されている。そのため、誘導用磁界発生コイル413A,413B、誘導用磁界発生コイル414A,414B、誘導用磁界発生コイル415A,415Bにより発生される磁界の空間的な強度勾配はなくなり、誘導範囲内で均一な磁界となっている。
また、誘導用磁界発生コイル413A,413B、誘導用磁界発生コイル414A,414B、誘導用磁界発生コイル415A,415Bのそれぞれの中心軸線は、互いに直交するように配置され、その内部に直方体状の空間を形成するように配置されている。直方体状の空間は、図8に示すように、検知体10の作動空間になる。
【0084】
図9は、図8の誘導用磁界発コイルの概略構成を説明するブロック図である。図10は、図9の誘導磁界発生コイルと誘導磁界発生コイル駆動部との接続を説明する回路図である。
誘導用磁界発生コイル413A,413Bと、誘導用磁界発生コイル414A,414Bと、誘導用磁界発生コイル415A,415Bとは、それぞれ電気的に直列接続されている。
また、図9および図10に示すように、誘導用磁界発生コイル413A,413Bと、誘導用磁界発生コイル414A,414Bと、誘導用磁界発生コイル415A,415Bには、それぞれ誘導用磁界発生コイル駆動部413C,414C,415Cからの出力が入力されるように電気的に接続されている。誘導用磁界発生コイル駆動部413C,414C,415Cには、それぞれ信号発生器413D,414D,415Dからの信号が入力されるように電気的に接続され、信号発生器413D,414D,415Dには誘導制御部416からの制御信号が入力されるように電気的に接続されている。誘導制御部416には、外部から検知体10の誘導方向の指示が入力される入力装置417からの信号が入力されるように電気的に接続されている。
【0085】
次に、上記の構成からなる医療用磁気誘導・位置検出システム401における作用について説明する。
まず、医療用磁気誘導・位置検出システム401における検知体10の位置検出の作用について説明する。
駆動部403において、図11に示すように、信号発生部423が所定周波数の交流信号を生成し、交流信号は磁界発生コイル駆動部424に出力される。磁界発生コイル駆動部424は入力された交流信号を所定の強さに増幅し、増幅された交流信号は磁界発生コイル11に出力される。磁界発生コイル11は、増幅された交流信号が供給されることにより、交流磁界を周囲に形成する。
【0086】
検知体10に上記交流磁界の磁束が通過すると、その内部に搭載された内蔵コイル10aを有する検知体閉回路に所定周波数の共振電流が誘起される。検知体10の閉回路に共振電流が誘起されると、共振電流により内蔵コイル10aは周囲に所定周波数の誘導磁界を形成する。
【0087】
磁界センサ12には、上述の交流磁界および誘導磁界による磁束が通過するため、磁界センサ12は両磁界の磁束を加算した磁束を捉え、通過する磁束の変化に基づいた誘導電流である出力信号を発生する。磁界センサ12の出力信号は、検出部405に向けて出力される。
【0088】
検出部405においては、入力された出力信号は、最初に磁界センサ切替部430に入力される。磁界センサ切替部430は、検知体10の位置検出に用いる出力信号のみを通過させ、その他の出力信号は遮断する。
出力信号の選択方法としては、信号強度の強い出力信号や、検知体10との距離が近い位置にある磁界センサ12からの出力信号などを選択する方法を例示することができる。
【0089】
なお、上述のように、磁界センサ12とフィルタ425との間に磁界センサ切替部430を配置して位置検出に用いる出力信号のみを選択してもよいし、磁界センサ切替部430が複数の磁界センサ12との接続を切り替えることにより、全ての磁界センサ12からの出力信号を、時分割で検出部405に入力させてもよい。また、複数の磁界センサ12に対して、それぞれフィルタ425からAD変換器428に至る系を接続させることにより、磁界センサ切替部430を用いることなく、出力信号の選択を行なわなくてもよく、特に限定するものでない。
【0090】
選択された出力信号はフィルタ425に入力され、出力信号中における位置検出に用いられない周波数成分、例えば低周波成分などが取り除かれる。不要な成分が取り除かれた出力信号は、増幅器426に入力され、後段のAD変換器428における適正な入力レベルになるように増幅される。
増幅された出力信号は直流変換部427に入力され、交流信号である出力信号は直流信号に変換される。その後、出力信号はAD変換器428に入力され、アナログ信号である出力信号はデジタル信号に変換される。
【0091】
デジタル信号に変換された出力信号はCPU429に入力される。一方、CPU429に接続されたメモリ431から検知体10を配置しない状態で取得した出力信号がCPU429に入力される。
CPU429では、入力された両出力信号の差分を演算することにより、誘導磁界に係る出力信号を求め、得られた誘導磁界に係る出力信号に基づいて内蔵コイル10aの位置、つまり検知体10の位置を特定するための演算を行なう。位置を特定するための演算には、公知の演算方法を用いることができ、特に限定するものではない。
【0092】
次に、カプセル型医療装置の誘導における作用について説明する。
まず、入力装置417に検知体10を遠隔操作するため動作させたい動きを入力する。入力装置417は、入力された情報に基づき誘導制御部416に信号を出力する。誘導制御部416は、入力された信号に基づいて、検知体10を実際に動かすための磁界を発生させるための制御信号を生成し、信号発生器413D,414D,415Dへ出力する。
信号発生器413D,414D,415Dは、入力された制御信号に基づいて誘導用磁界発生コイル駆動部413C,414C,415Cに出力される信号が生成される。誘導用磁界発生コイル駆動部413C,414C,415Cは、入力された信号を電流増幅して、それぞれ誘導用磁界発生コイル413A,413B、誘導用磁界発生コイル414A,414B、誘導用磁界発生コイル415A,415Bに当該電流を流す。
【0093】
上述のように、誘導用磁界発生コイル413A,413B、誘導用磁界発生コイル414A,414B、誘導用磁界発生コイル415A,415Bに電流を流すことで、検知体10の近傍領域に誘導用の磁界を生成することができる。この生成された磁界により、検知体10内の磁石を移動させることができ、当該磁石を移動させることにより検知体10を移動させることができる。
【0094】
次に、本発明の特徴である導用磁界発生コイル413A,413B、誘導用磁界発生コイル414A,414B、誘導用磁界発生コイル415A,415Bから相互誘導磁界が発生するときの作用について説明する。
誘導用磁界発生コイル413Aと導用磁界発生コイル413B、誘導用磁界発生コイル414Aと誘導用磁界発生コイル414B、誘導用磁界発生コイル415Aと誘導用磁界発生コイル415Bは、電気的に直列に接続されている。そのため、磁界強度が変動する交番磁界の磁束が導用磁界発生コイル413A,413Bの一方、誘導用磁界発生コイル414A,414Bの一方、誘導用磁界発生コイル415A,415Bの一方を通過すると、当該磁束が通過したコイルにその磁界強度の変動を打ち消す方向の磁界、つまり上記交番磁界と位相が逆の逆相磁界を形成する誘導起電力が生じる。
【0095】
導用磁界発生コイル413A,413Bや、誘導用磁界発生コイル414A,414Bや、誘導用磁界発生コイル415A,415Bは、電気的に直列に接続された閉回路を形成しているため、導用磁界発生コイル413A,413Bの他方、誘導用磁界発生コイル414A,414Bの他方、誘導用磁界発生コイル415A,415Bの他方にも上記一方のコイルで生じた誘導起電力に基づく誘導電流が流れる。
上記誘導電流が上記他方のコイルに流れると、上記他方のコイルの周囲に上記逆相磁界が形成される。
【0096】
誘導用磁界発生コイル413A,413B,414A,414B,415A,415Bは、通常、低い出力インピーダンスに設定されているため、先の起電力に基づく電流が流れ、位置検出用磁界に対して略逆位相の磁界を発生させることができる。
誘導用磁界発生コイル413A,413B,414A,414B,415A,415Bは対向する2つの誘導用磁界発生コイル413A,413Bが直列に接続されているため、第1の実施形態と同様に、磁界センサ12近傍においても打ち消し作用がある。例えば、図8において、誘導用磁界発生コイル413Aが第1の実施形態における結合コイルの役割を果たし、これに直列に接続されている誘導用磁界発生コイル413Bからも位置検出用磁界に対して逆相の磁界が発生される。つまり、特別に結合コイルと逆相磁界発生コイルとを設けなくとも、その配置に調整により磁界センサ12付近の位置検出用磁界を打ち消すことができる。
【0097】
なお、位置検出用のコイル対が、誘導用磁界発生コイル対B,Cと組み合わされても構わない。
なお、位置検出コイル対が誘導用コイル対と同じく3対あって、これらコイル対が磁界センサ部の位置検出用磁界を打ち消すように配置されていても構わない。
【0098】
上記構成によれば、磁界発生コイル11は、検知体10が有する内蔵コイル10aに誘導磁界を誘起させる位置検出用磁界を発生する。内蔵コイル10aから発生した誘導磁界は、磁界センサ12により検出され、内蔵コイル10aを有する検知体10の位置または姿勢の検出に用いられる。
また、3組の誘導用磁界発生コイル413A,413B、誘導用磁界発生コイル414A,414B、誘導用磁界発生コイル415A,415Bにおいて発生した誘導用磁界は、検知体10が有する磁石に作用して検知体10の位置・姿勢を制御する。ここで、3組の誘導用磁界発生コイル413A,413B、誘導用磁界発生コイル414A,414B、誘導用磁界発生コイル415A,415Bの中心軸線の方向が、互いに直交するように配置されているため、誘導用磁界の磁力線を、3次元的に任意の方向に向けることができる。これにより、磁石を有する検知体10の位置・姿勢を立体的に制御できる。
【0099】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、磁界発生コイルと磁気センサと逆相磁界発生コイルなどを一つずつ備え、これらが略同一直線上に配置された構成に適用して説明したが、この構成に限られることなく、磁界発生コイル等を複数備えて、それらを複数の直線上に配置するように構成されていてもよく、その配置個数および配置位置は特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明における第1の実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
【図2】図1の結合コイルと逆相磁界コイルとから構成される回路構成を説明する回路図である。
【図3】図1の結合コイルと磁界発生コイルとの他の配置関係、および、逆相磁界発生コイルと磁界センサとの他の配置関係を説明する図である。
【図4】図1における磁界強度の分布を位置測定装置の側面から見た図である。
【図5】本発明における第2の実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
【図6】本発明における第3の実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
【図7】本発明における第4の実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
【図8】本発明における第5の実施形態に係る位置検出装置の概略構成を示す模式図である。
【図9】図8の誘導用磁界発コイルの概略構成を説明するブロック図である。
【図10】図9の誘導磁界発生コイルと誘導磁界発生コイル駆動部との接続を説明する回路図である。
【符号の説明】
【0101】
1,101,201,301,401 位置検出装置
5,105,305 検出部(磁界検出部)
10 検知体
10a 内蔵コイル
11 磁界発生コイル(第1の磁界発生部)
12 磁界センサ(磁界検出部)
22 結合コイル(第2の磁界発生部、相互誘導磁界発生コイル)
23,123,223,323 逆相磁界発生コイル(第2の磁界発生部、第2の磁界発生コイル)
124 表示部
125 移動機構
225,325 制御部(第2の磁界発生部)
226,326 位相調整部
227,327 逆相磁界発生コイル駆動部(第2の磁界発生コイル駆動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知体の内部に備えられた、少なくとも1つの内蔵コイルを含む回路と、
第1の磁界を発生する第1の磁界発生部と、
前記第1の磁界により前記内蔵コイルから発生する誘導磁界を検出する磁界検出部と、
前記第1の磁界に対して略逆位相の第2の磁界を発生する第2の磁界発生部と、を有する位置検出装置。
【請求項2】
前記第2の磁界発生部が、前記第1の磁界発生部の近傍に配置されるとともに、前記第1の磁界により相互誘導磁界を発生させる相互誘導磁界発生コイルと、前記磁界検出部の近傍に配置された第2の磁界発生コイルと、を有し、
前記相互誘導磁界発生コイルと前記第2の磁界発生コイルとが電気的に直列接続されている請求項1記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記第2の磁界発生部に、前記相互誘導磁界発生コイルまたは前記第2の磁界発生コイルの少なくとも一方の配置位置を移動させる移動機構が設けられている請求項2記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記移動機構が、前記磁界検出部から出力される前記第1の磁界と前記第2の磁界の合成磁界に係る磁界強度信号の強度を最小にするように、前記相互誘導磁界発生コイルの配置位置を移動させる請求項3記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記移動機構が、前記磁界検出部から出力される前記第1の磁界と前記第2の磁界の合成磁界に係る磁界強度信号の強度を最小にするように、前記第2の磁界発生コイルの配置位置を移動させる請求項3記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記第2の磁界発生部が、磁界発生用の信号から略逆位相の信号を生成する位相調整部と、その信号を増幅する第2の磁界発生コイル駆動部と、前記磁界センサ近傍に配置され、増幅された信号により第2の磁界を発生する第2の磁界発生コイルと、から構成されている請求項1記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記第2の磁界発生コイル駆動部が、前記磁界検出部から出力される磁界強度信号に基づいて、その信号強度を最小にするように、前記第2の磁界強度を調整する請求項6記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記磁界検出部から出力された磁界強度信号を表示する表示部が設けられている請求項1から7のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項9】
少なくとも1つの内蔵コイルを含む回路と、磁石と、を有する医療装置と、
第1の磁界を発生する第1の磁界発生部と、
前記内蔵コイルにおいて前記第1の磁界により励起された誘導磁界を検出する磁界検出部と、
前記第1の磁界に対して略逆位相である第2の磁界と、前記磁石に作用させて前記医療装置の位置姿勢を制御する第3の磁界とを発生する第2の磁界発生部と、を備える医療装置位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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