説明

低アルコール清酒及びその製造方法

【課題】 カロリー、アルコール分が一般的な清酒と比べて半分程度でありながらその他の香味成分をバランス良く残した低アルコール清酒及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 原料として米、米麹、水を用い、製麹ではプロテアーゼを多く生産する温度帯域にある時間を通常の製麹の場合の2倍程度の時間とし、総米の45〜60%程度の麹歩合で仕込みを行い、アルコール分17〜18%となった時点で上槽し、割り水によりアルコール分7.0〜8.5%になるように調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロリー、アルコール分が一般的な清酒と比べて半分程度でありながらその他の香味成分をバランス良く残した低アルコール清酒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な清酒は、アルコール分が15〜20%程度である。近年、低アルコール飲料を望む消費者ニーズや清酒になじみの薄い女性を対象として、低アルコール清酒の製造が試みられてきた。低アルコール清酒の製造方法としては特許文献1,2に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1,2に開示されている低アルコール清酒にあっては、アルコール分は5%〜13%であり、一般的な清酒と比べ低く抑えられているものの、エキス分は一般的な清酒よりむしろ高くなるよう製造するものであった。これは、アルコール分を12%以下の低アルコール清酒にすると、エキス分も希釈されて、水っぽくなり、香味のバランスが取れなくなるため、この欠点を改善するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特公平3−11758号公報
【特許文献2】 特開2003−265159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、消費者の健康意識が更に高まり、カロリーオフやダイエットを狙った食品が数多く市販されている中、清酒業界にあっては本格的な低カロリー商品はほとんど市場に出回っていない。その理由としては、清酒中のカロリー源がほとんどアルコールと糖分に代表されるエキス分であることが挙げられる。しかしながら、前述したように、アルコール分を12%以下の低アルコール清酒にすると、エキス分も希釈されて、水っぽくなり、香味のバランスが取れなくなるため、アルコール分とエキス分の両方を低く抑えた低カロリーの低アルコール清酒の開発が望まれていた。清酒のカロリーを落とすには、アルコール分と糖分の両方を低く抑える必要があるが、従来の清酒の製法では、水っぽくなり、香味のバランスが取れなくなるため、そのためには他の成分(酸やアミノ酸、香味成分)をバランスよく残しつつ、アルコールと糖分のみを選択的に減らす技術を確立する必要があった。
【0006】
本発明は、カロリー、アルコール分が一般的な清酒と比べて半分程度でありながらその他の香味成分をバランス良く残した低アルコール清酒及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明の低アルコール清酒の製造方法にあっては、原料として米、米麹、水を用いた低アルコール清酒の製造方法にあって、製麹においてプロテアーゼを多く生産する温度帯域にある時間を通常の製麹の場合の2倍程度の時間とし、総米の45〜60%程度の麹歩合で仕込みを行い、アルコール分17〜18%となった時点で上槽し、割り水によりアルコール分7.0〜8.5%になるように調整することを特徴とする。
【0008】
また、掛け米として、85〜90%の低精白米を使用することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の低アルコール清酒にあっては、原料として米、米麹、水を用いた低アルコール清酒であって、酸度1.2〜1.5、アミノ酸度0.8〜1.2、アルコール分7.0〜8.5%、エキス分2.4〜2.7、カロリー51〜55kcalからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあっては、アルコール分と糖分以外の香味成分が通常の2倍程度の清酒を製造し、それを半分程度に割り水することにより、カロリー、アルコール分共に一般的な清酒の半分程度でありながら、水っぽくなく香味バランスも取れた清酒を得ることができた。したがって、今までの清酒と比べて、体型や健康をあまり気にせずにお酒を楽しむことができると共に従来カロリーを気にされて飲酒されなかった方にも飲酒してもらえる機会が広がることになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 本発明に係る低アルコール清酒の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の低アルコール清酒とその製造方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る低アルコール清酒の製造方法を示す工程図である。
【0013】
本発明の低アルコール清酒は、酸度1.2〜1.5、アミノ酸度0.8〜1.2、アルコール分7.0〜8.5%、エキス分2.4〜2.7、カロリー51〜55kcalからなる。このように本発明の清酒は、一般的な清酒と比べて、カロリー、アルコール分、エキス分は半分程度でありながら、香味成分である酸度、アミノ酸度はほぼ同じである。
【0014】
この低アルコール、低カロリーの清酒の製造方法は以下の通りである。まず、麹の製造方法について説明する。白米(精米歩合70%)を洗米、浸漬しそれを甑にて蒸きょうし、麹室に引き込み製麹を行なう。32℃まで冷却した蒸米に清酒用黄麹菌を接種し、43℃まで品温を上げながら、約46時間培養し、製麹する。
【0015】
本発明の製麹では、プロテアーゼを多く生産する低温帯域(33〜39℃)にある時間を通常の製麹の場合の2倍程度の時間(9〜10時間程度)とした。こうすることで、麹により酸性プロテアーゼが多く生産され、モロミ中での麹由来のアミノ酸値が増大することになる。
【0016】
次に掛け米の原料処理について説明する。低精白米(精米歩合85〜90%、好ましくは90%)を洗米、浸漬しそれを甑にて蒸きょうする。一般的な精米歩合が70%であるのに対し、本発明にあっては低精白米を使用することによりできあがる清酒に対して更に香味を付加することができることになる。
【0017】
これらできた麹、掛け米及び汲み水とを一般的な清酒製造同様に3回に分けて仕込を行なう。仕込配合は、麹:掛け米を約50:50の比率とする。麹の割合を多くすることで、酸やアミノ酸、その他香味成分が増大することになる。一般的な清酒の仕込配合における麹歩合は約20%程度であるが、本発明にあっては50%としたものである。なお、45〜60%程度の麹歩合であれば、十分実用化可能である。
【0018】
その後、約2週間の発酵期間を経てアルコール分17〜18%となった時点で上槽する。ろ過、火入れ、熟成した後、割り水によりアルコール分を7.0〜8.5%、好ましくは7.7〜7.8%程度に調整し、製品とする。
【0019】
本発明の製造方法により得られる清酒の成分と、当社の一般的な製造方法で得られる純米酒の成分との比較を表1に示す。この表からも明らかなように、本発明の清酒は、一般的な清酒と比べて、カロリー、アルコール分、エキス分は半分程度でありながら、香味成分である酸度、アミノ酸度はほぼ同じあることがわかる。
【0020】
【表1】

【0021】
このように、アルコール分と糖分以外の香味成分が通常の2倍程度の清酒を製造し、それを上槽後半分程度に割り水するという本発明の製造方法によれば、カロリー、アルコール分共に一般的な清酒の半分程度でありながら、水っぽくなく香味バランスも取れた清酒を得ることが可能であることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として米、米麹、水を用いた低アルコール清酒の製造方法にあって、製麹においてプロテアーゼを多く生産する温度帯域にある時間を通常の製麹の場合の2倍程度の時間とし、総米の45〜60%程度の麹歩合で仕込みを行い、アルコール分が17〜18%となった時点で上槽し、割り水によりアルコール分7.0〜8.5%になるように調整することを特徴とする低アルコール清酒の製造方法。
【請求項2】
掛け米として、85%〜90%の低精白米を使用することを特徴とする請求項1記載の低アルコール清酒の製造方法。
【請求項3】
原料として米、米麹、水を用いた低アルコール清酒であって、酸度1.2〜1.5、アミノ酸度0.8〜1.2、アルコール分7.0〜8.5%、エキス分2.4〜2.7、カロリー51〜55kcalからなることを特徴とする低アルコール清酒。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−246514(P2010−246514A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114970(P2009−114970)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(397041509)酔仙酒造株式会社 (1)
【Fターム(参考)】