説明

低ロードノイズホィール及びその製造方法

【目的】 吸音材としてのウレタンシールをホィールに接合させる際の接合力を増すとともに、発泡後のウレタンシールを破損させるおそれの少ない低ロードノイズホィールを製造する方法を提供する。
【構成】 カチオン塗装前のホィール1の外周部5の凹部6に発泡前のウレタンシール8を貼り付けた後、ホィール1をカチオン塗装する。カチオン塗装したホィール1を乾燥させる際の乾燥熱によりウレタンシール8を発泡させ、ホィール外周の凹部6をウレタンシール8で満たす。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はロードノイズを低減させたホィール及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】空気入りタイヤに特有の振動騒音としては、周波数がほぼ10Hzのときにピークとなるばね下共振と、周波数がほぼ260Hzのときにピークとなるロードノイズとがあり、このうち、ロードノイズに関しては、ウレタン発泡材などの吸音材をホィールに取り付けることにより低減化が図られている(例えば、特開昭62−216803号公報、特開昭64−78902号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来は、予め発泡させたウレタンを完成品ホィールの外周に接合させていたが、完成品ホィールの外周は錆止め処理等の前処理がなされているため、十分な接合力を確保することが難しいという問題があった。さらに、ウレタンを予め発泡させておくため、接合作業の際に、ウレタンを破損させてしまうおそれもあった。
【0004】本発明はこのような問題点に対応してなされたものであり、ウレタンをホィールに接合しやすくするとともに、ホィールへのウレタン接合時にウレタンを破損させるおそれのない低ロードノイズホィール製造方法を提供することを目的とする。さらに、該製造方法により製造した低ロードノイズホィールであって、ホィールのエアバルブ取り付け位置を開けて発泡性材料をシールした低ロードノイズホィールを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、本発明に係る低ロードノイズホィール製造方法は、カチオン塗装前においてホィール外周に発泡前の発泡性材料のシールを貼り付けた後、カチオン塗装を行い、塗装を乾燥させる際の乾燥熱により発泡性材料シールを発泡させる。
【0006】カチオン塗装後に発泡性材料のシールを貼り付けると、タイヤ回転時に該シールが遠心力を受けて剥がれやすくなる。この点、カチオン塗装前に発泡性材料シールを貼り付けることにより、カチオン塗装後に貼り付ける場合に比較して、より強力な接合力を確保することができる。また、発泡前の発泡性材料シールをホィールに貼り付ける作業は、発泡後の発泡性材料シールをホィールに貼り付ける作業と比較して、発泡性材料の破損のおそれが極めて低い。
【0007】好ましい実施態様においては、発泡性材料のシールは、乾燥時の温度において0.1g/cm3 以下の発泡率を有し、かつ、発泡時にはホィール外周の凹部をほぼ満たす程度まで発泡する量とされる。前述したように、ロードノイズは約260Hzにおいてピーク値となる。発泡性材料シールの発泡率が最大で0.1g/cm3 であれば、ピーク値のロードノイズを十分に低減できる。
【0008】また、発泡性材料シールをホィール外周の凹部をほぼ満たす程度まで発泡させるのは、ホィール外周の凹部を越えて上方に突出する程度まで発泡させると、タイヤを外す際の障害になるからである。タイヤを外す際の障害にならずに、吸音材としての発泡性材料の効果を最大限に発揮させるためには、ホィール外周の凹部をほぼ満たす程度に発泡させれば十分である。
【0009】好ましい実施態様においては、発泡性材料のシールはホィール外周長さよりも短いストリップ形状に形成され、ホィールのエアバルブ取り付け位置を開けてホィール外周に貼り付けられる。予め、エアバルブ取り付け位置が開くように発泡性材料シールの長さを調整しておくことにより、発泡性材料シール発泡後にエアバルブ用の孔を穿設する必要がなくなる。
【0010】さらに、本発明は、ホィールの外周よりも短い長さを有する発泡性材料のシールを該ホィールのエアバルブ取り付け位置を開けて該ホィール外周に貼り付けてなる低ロードノイズホィールを提供する。
【0011】
【実施例】本発明に係る低ロードノイズホィール製造方法に用いるホィール1を図1に示す。ホィール1はハブ取り付け用開口2と、このハブ取り付け用開口2の周囲に等円周角に配置されている五つのボルト挿入口4を有する内周部3と、内周部3の周囲に形成されている外周部5とからなる。外周部5の中央には外周部5の周方向に延びる凹部6が形成されている。
【0012】まず、図1に示すように、ホィール1の外周部5の凹部6に適当な接着剤7を塗布する。次いで、図2に示すように、外周部5の凹部6に発泡性材料としての発泡前のウレタンシール8を貼り付ける。なお、発泡性材料としてはウレタンに限らず、他の材料を用いてもよい。
【0013】ウレタンシール8は、図3に示すように、細長いストリップ状であり、ホィール1の外周長さよりもやや短い長さを有している。このウレタンシール8はカチオン塗装後のホィール1を乾燥させる温度(後述するように、摂氏約140〜160度)において0.1g/cm3 の発泡率を有している。さらに、ウレタンシール8の容積(厚み×幅×長さ)は、ウレタンシール8が発泡したときに凹部6をほぼ満たす程度に発泡するような値に設定されている。
【0014】ウレタンシール8を凹部6に貼り付ける際には、図2に示すように、エアバルブ9の取り付け口が開くようにしておく。次いで、図4に示すように、発泡前のウレタンシール8を外周部5に貼り付けた状態のホィール1をカチオン電着槽10に浸し、カチオン塗装を行う。さらに、図5に示すように、乾燥室11においてカチオン塗装後のホィール1を乾燥させ、このときの乾燥熱によりウレタンシール8を発泡させる。乾燥室11における乾燥温度は通常摂氏140〜160度であるので、ウレタンシール8はこの温度範囲内で発泡するようなものを選定しておく。
【0015】ウレタンシール8が発泡すると、図6に示すように、ホィール1の外周部5の凹部6をほぼ満たす。この後、ホィール1にタイヤ12を取り付け、エアバルブ9を介して空気を入れる。また、本発明に係る低ロードノイズホィールは、図6に示すように、ホィール1の外周よりも短い長さを有する発泡性材料のシール8をホィール1のエアバルブ9の取り付け位置を開けてホィール1の外周に貼り付けてある。
【0016】
【発明の効果】本発明に係る低ロードノイズホィール製造方法においては、カチオン塗装前において発泡性材料のシールをホィールに貼り付けるので、カチオン塗装後に貼り付ける場合よりも大きな接合力を得ることができる。さらに、発泡性材料の発泡前において発泡性材料シールをホィールに取り付けるので、発泡性材料の発泡後にホィールに取り付ける場合よりも発泡性材料の破損のおそれを少なくすることができる。
【0017】さらに、発泡性材料を取り付けていないホィールにおいては、260Hzにおけるロードノイズのピーク値は0.5G以上であるが、本発明に係る低ロードノイズホィールにおいては、図7に示すように、約260Hz付近における振動のピーク値が約0.1まで低減されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る低ロードノイズホィール製造方法に用いるホィールの断面図及び正面図である。
【図2】ウレタンシールを貼り付けた状態のホィールの断面図及び正面図である。
【図3】ウレタンシールの斜視図である。
【図4】カチオン塗装を示す概念図である。
【図5】カチオン塗装したホィールを乾燥させる際の概念図である。
【図6】ウレタンシールが発泡した後のホィールの断面図である。
【図7】本発明に係る低ロードノイズホィールの効果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ホィール
2 ハブ取り付け用開口
3 内周部
4 ボルト挿入口
5 外周部
6 凹部
7 接着剤
8 ウレタンシール
9 エアバルブ
10 カチオン電着槽
11 乾燥室
12 タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ホィール外周とタイヤ内面との間に形成された空間内に発泡性材料を介装させた低ロードノイズホィールの製造方法であって、カチオン塗装前のホィールの外周に発泡前の発泡性材料のシールを貼り付ける過程と、前記発泡性材料のシールを貼り付けた前記ホィールにカチオン塗装を行う過程と、カチオン塗装後の前記ホィールを乾燥させる際の乾燥熱により前記発泡性材料シールを発泡させる過程とからなる低ロードノイズホィールの製造方法。
【請求項2】 前記発泡性材料のシールは、カチオン塗装後の前記ホィールを乾燥させる際の温度で発泡率が0.1g/cm3 以下であり、かつ、発泡時には前記ホィールの外周の凹部内をほぼ満たす程度まで発泡する量を有することを特徴とする請求項1に記載の低ロードノイズホィール製造方法。
【請求項3】 前記発泡性材料のシールは前記ホィールの外周よりも短い長さを有し、前記ホィールのエアバルブ取り付け位置を開けて前記ホィール外周に貼り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の低ロードノイズホィールの製造方法。
【請求項4】 ホィールの外周よりも短い長さを有する発泡性材料のシールを該ホィールのエアバルブ取り付け位置を開けて該ホィール外周に貼り付けてなる低ロードノイズホィール。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平6−106902
【公開日】平成6年(1994)4月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−255196
【出願日】平成4年(1992)9月25日
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)