説明

低侵襲血管新生計測装置

【課題】非侵襲あるいは低侵襲で被験者に負担を与えず、しかも簡便な計測装置により高精度に栄養血管網の新生度や末梢血管障害の治療効果を計測可能にする。
【解決手段】新生血管の新生度を計測する装置において、生体組織透過性の高い近赤外光を測定部位内に照射するための発光部と、該発光部から照射された近赤外光が、測定部位内において散乱反射して得られる反射近赤外光あるいは測定部位内を透過して得られる透過近赤外光を受光するための受光部と、発光部から照射された近赤外光と受光部で受光した近赤外光とに基づいて、測定部位内における近赤外光の減衰率を演算する減衰率演算部と、新生血管測定部位における血液量を演算する血液量演算手段と、血液量を記録する記録部と、血液量の時間経過に応じた変化率に基づいて、新生血管測定部位内における新生血管の新生度を評価する血管新生度評価手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野、特に臓器移植や再生医療の分野において、移植手術後の臓器周辺における栄養血管網の新生過程や、糖尿病患者の末梢血管障害の治療効果を定量的に評価、診断するための低侵襲血管新生計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病気や事故によって失われた体の細胞や組織、臓器などの再生や機能回復を、細胞移植や組織移植することで実現する再生医療の研究開発が進んでおり、再生骨や再生軟骨、再生皮膚、再生角膜、再生心筋、再生腎臓、再生肝臓などが研究対象となっている。
これら再生組織や再生臓器を生体内へ移植した後、長期間安定して機能させるためには、酸素や栄養を供給できるような栄養血管網を、再生組織や再生臓器に誘導する必要がある。
そのため、再生組織や再生臓器を生体に移植した後、再生組織や再生臓器周辺の栄養血管網の新生度を評価することが重要である。
【0003】
すなわち、こうした臓器移植に際しては、移植手術時に主要な血管は接続されるが、臓器移植の正否は、移植手術後、移植された臓器周辺における栄養血管網の新生度が大きく影響する。
主要血管の接続が成功しても、その後栄養血管網が健全に新生されなければ、結局移植された臓器に栄養が補給されず、最悪の場合壊死してしまう。
したがって、移植手術後、臓器周辺における栄養血管網の新生状況を正確に計測し、投薬治療、再手術の要否を的確に診断することが非常に重要である。
このことは、糖尿病患者の末梢血管障害の治療効果を定量的に診断する上でもまったく同様である。
【0004】
従来、血液中の成分濃度を計測する装置として、下記特許文献1にみられるように、生体を撮像して得られる生体画像中の血管像に基づいて血液に含まれる成分濃度を算出することが知られている。
【0005】
また、脳表面を含む複数部位の血流量の変化を計測する装置として、下記特許文献2にみられるように、複数の光照射プローブと複数の光検出プローブで、検出光量のマッピングを行うことが知られている。
【0006】
さらに下記特許文献3には、300〜700nmの波長領域を使用した生体情報計測装置が、下記特許文献4には、3種類以上の光の吸収度合いの違いにより血液量を計測する血液量測定装置が、下記特許文献5には、所定波長の光を血液流路中に照射して、ヘマトクリットまたは酸素飽和度を求める血液特性計測装置が示されている。
【0007】
これらの計測装置では、測定部位における血液の成分濃度や血液量は計測できるものの、臓器周辺における栄養血管網の新生度を計測することはできず、病理標本による侵襲を伴う検査や、血管造影剤による血管造影、超音波エコーを用いた画像診断技術などを使用して、生体内の血管を画像化することにより、非侵襲での検査方法が行われている。
【0008】
しかし、病理標本検査や血管造影検査は、被験者に大きな負担を掛けるものであり、これを定期的に行うと、被験者の健康を阻害するおそれが生じる。
また、超音波エコーを用いた画像診断技術では、画像分解能に制限があるため、細かい細動脈や毛細血管などの細い血管網までは評価することは困難である。
そこで、非侵襲あるいは低侵襲で被験者に負担を与えず、しかも簡便な計測装置により高精度に栄養血管網の新生度や末梢血管障害の治療効果の計測を可能にすることが強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−86449号公報
【特許文献2】特開2006−218196号公報
【特許文献3】特開2005−125106号公報
【特許文献4】特開2003−194714号公報
【特許文献5】特開平11−104114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、上記の課題を解決するため、本発明の低侵襲血管新生計測装置においては、次のような技術的手段を講じた。すなわち、
(1)新生血管の新生度を計測する装置において、生体組織透過性が高い近赤外光を新生血管測定部位に照射するための発光部と、該発光部から照射された近赤外光が、前記新生血管測定部位において散乱反射して得られる反射近赤外光を受光するための受光部と、前記発光部から照射された近赤外光と前記受光部で受光した反射近赤外光とに基づいて、前記新生血管測定部位における近赤外光の減衰率を演算する減衰率演算部と、該減衰率に基づいて、前記新生血管測定部位における血液量を演算する血液量演算手段と、該血液量を記録する記録部と、前記血液量の時間経過に応じた変化率に基づいて、前記新生血管測定部位内における新生血管の新生度を評価する血管新生度評価手段とを備えた。
【0011】
(2)新生血管の新生度を計測する装置において、生体組織透過性の高い近赤外光を新生血管測定部位に照射するための発光部と、該発光部から照射された近赤外光が、前記新生血管測定部位を透過して得られる透過近赤外光を受光するための受光部と、前記発光部から照射された近赤外光と前記受光部で受光した反射近赤外光とに基づいて、前記新生血管測定部位における近赤外光の減衰率を演算する減衰率演算部と、該減衰率に基づいて、前記新生血管測定部位における血液量を演算する血液量演算手段と、該血液量を記録する記録部と、前記血液量の時間経過に応じた変化率に基づいて、前記新生血管測定部位内における新生血管の新生度を評価する血管新生度評価手段とを備えた。
【0012】
(3)上記の低侵襲血管新生計測装置において、前記発光部は、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの等吸収点となる波長を前記新生血管測定部位に照射するようにした。
【0013】
(4)上記の低侵襲血管新生計測装置において、ひとつの発光部から照射された近赤外光の前記反射近赤外光あるいは前記透過近赤外光を、複数の受光部で受光するようにした。
【0014】
(5)上記の低侵襲血管新生計測装置において、前記血管新生度評価手段は、前記発光部から異なる距離に設置した2つの受光部の検出値に基づいて、深さの異なる血液量の差分を求め、浅部における毛細血管の血液量変化を補償する手段を備えた。
【0015】
(6)上記の低侵襲血管新生計測装置において、前記受光部として近赤外線カメラを用い、前記血管新生度評価手段が該近赤外線カメラの出力に基づいて画像処理を行うことにより、前記血管新生度評価手段が前記新生血管測定部位における新生血管の新生度を評価するようにした。
【0016】
(7)上記の低侵襲血管新生計測装置において、前記発光部は複数波長の近赤外光を前記新生血管測定部位に時間差をつけて照射し、前記減衰率演算部は、それぞれの照射タイミング毎の波長の減衰率から前記新生血管測定部位内における近赤外光の減衰率を演算するようにした。
【0017】
(8)上記の低侵襲血管新生計測装置において、前記発光部は複数波長の近赤外光を前記新生血管測定部位に照射するとともに、前記受光部は分光器を備え、前記減衰率演算部が、前記分光器により分光分析された近赤外光の減衰率を演算するようにした。
【0018】
(9)上記の低侵襲血管新生計測装置において、前記発光部と前記受光部が2つの組からなり、前記減衰率演算部は、一方の組により前記新生血管測定部位における近赤外光の減衰率を演算するとともに、他方の組により、前記新生血管測定部位の近傍にある基準部位における近赤外光の減衰率を演算し、前記血管新生度評価手段は、前記新生血管測定部位における近赤外光の減衰率に基づいて演算された血液量の変化率と、前記基準部位における近赤外光の減衰率に基づいて演算された血液量の変化率とを比較することにより、前記新生血管測定部位内における新生血管の新生度を評価するようにした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)生体外から近赤外線を測定部位に照射するため、非侵襲あるいは低侵襲で血管新生度の計測評価が可能となる。
(2)新生血管網を画像化するのではなく、血液量として評価するため、細動脈や毛細血管などの極めて細い新生血管網の新生度を計測評価することができ、造影剤を使用する必要もない。
(3)新生血管網の測定部位近傍に基準点を取るため、患者の生理状態の変動や日内変動の影響を軽減することができる。
(4)受光部に近赤外線カメラを用いることで、一度に広範囲の血管新生度を計測評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施例の基本ブロック図を示す。
【図2】血管新生度を評価する評価部の構成例を示す。
【図3】本実施例による血管新生計測装置をラットに用いた場合の実験結果を示す。
【図4】実験に使用したプローブを示す。
【図5】本発明の第2実施例の基本ブロック図を示す。
【図6】本発明の第3実施例の基本ブロック図を示す。
【図7】各実施例で使用する計測プローブの例を示す。
【図8】内視鏡を使用した生体内への適用例を示す。
【図9】光ファイバを使用した生体内への適用例を示す。
【図10】内視鏡を使用したプローブの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0022】
[第1実施例]
図1は本発明の第1実施例の基本ブロック図を示すものであり、LEDまたは半導体レーザー素子からなる発光素子とこれを駆動する駆動回路からなる発光部1a、1bと、この発光部1a、1bから照射された近赤外光が、測定部位内において散乱反射して得られる反射近赤外光を受光するためのフォトダイオードあるいはフォトトランジスタからなる素子及びその出力を増幅する増幅回路からなる受光部2a、2bを備えている。
【0023】
例えば、生体内の近赤外光が到達する範囲に植え込まれた、鼻や耳の再生軟骨や指の再生骨、再生皮膚などを対象に、発光部1a、1bから、生体の窓と呼ばれ、血液中のヘモグロビンに吸収される以外は、生体組織に対しては透過性が高い600〜1000nmの近赤外光を新生血管測定部位、及びその周辺の基準部位に照射し、新生血管測定部位内及び基準部位を散乱反射して得られた近赤外光をフォトダイオードあるいはフォトトランジスタを使用した受光部2a、2bでそれぞれ受光する。
【0024】
そして、発光部1a、1bの信号と受光部2a、2bの信号に基づいて演算部5で新生血管測定部位内のヘモグロビンによる近赤外光の減衰率から、ランベルト・ベールの法則を利用して血液量を算出し、記録部6で計測値を保存する。
また、生体の日内変動や生理状態による変動の影響を補償するため、ほぼ同等の生体組織である新生血管測定部の近傍でも血液量を計測し、記録部で計測値を保存する。最後に評価部7で、新生血管の新生開始時からの新生血管測定部とその近傍の血液量の変化を差分することで、新生血管の新生度を評価する。
【0025】
すなわち、発光部1aの発光素子及び受光部2aの受光素子は、新生血管測定部位である、再生治療を行った部分の直上付近に密着されるものであり、減衰率演算部3aにより、発光部1aの発光強度と受光部2aの受光強度とに基づいて、新生血管測定部位における近赤外光の減衰率が演算される。
【0026】
一方、発光部1bの発光素子及び受光部2bの受光素子は、移植された臓器の周辺であって、ほぼ同等の生体組織を有し、移植手術とは直接関わりなく、細動脈や毛細血管が健全に巡らされている基準部位に密着されるものであり、同様に、減衰率演算部3bにより、発光部1bの発光強度と受光部2bの受光強度とに基づいて、基準部位における近赤外光の減衰率が演算される。
【0027】
各減衰率演算部3a、3bで演算された各減衰率は、血液量演算部5により新生血管測定部位における血液量を演算し、記録部6に計測日時とともに記録する。
同様に、血液量演算部5は基準部位における血液量を演算し、記録部6に計測日時とともに記録する。
【0028】
血管新生度評価部7は、記録された新生血管測定部位における血液量及び基準部位における血液量に基づいて、手術後からの経過時間に応じた両者の血液量の変化率を求め、その差分に基づいて、正常な血液新生が行われた場合の変化率と比較し、細動脈や毛細血管が健全に新生しているか否かを評価する。
【0029】
なお、この実施例では、血管新生度評価部7が、手術後からの経過時間に応じた新生血管測定部位の血液量の変化率と、基準部位における血液量の変化率の差分に基づいて、正常な血液新生が行われたか否かを評価しているが、これは、計測時の被験者の脈拍変動や体調等により左右するため、新生血管による影響のない基準部位における血液量の変化と新生血管測定部位における血液量の変化を比較することにより、被験者の脈拍変動や体調等による影響を排除するためである。
このような被験者の脈拍変動や体調等による影響が少ない場合は、必ずしも基準部位における血液量の変化率を求める必要はない。
【0030】
図2に、血管新生度を評価する評価部の構成例を示す。
新生血管測定部位において、細動脈や毛細血管の新生が進むにつれ、その密度が高くなり、血液量が増大していく。一方、この発光部1aから新生血管測定部位に照射された近赤外光は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンに対し吸収性の高い波長を有しているため、細動脈や毛細血管の新生につれ、新生血管測定部位内での吸収量が増加し、散乱反射する反射近赤外光が減少することになる。
したがって、減衰率演算部3aにより、発光部1aからの発光強度と受光部2aで検出される受光強度に基づいて減衰率を演算すれば、血液量演算部5により血液量を求めることができ、移植手術後の経過時間に応じた血液量の変化率を求めることができる。
【0031】
同様に、発光部1bからの発光強度と受光部2bで検出される受光強度に基づいて、基準部位における血液量の変化率を求め、両者の差をとれば、基準部位における血液量の変化率と比較した新生血管測定部位における血液量の変化率と、血管新生診断マップにおける良好な血液量の変化率と比較することにより、新生血管測定部位において、細動脈や毛細血管の新生が健全に進行しているか否かを診断することが可能になる。
【0032】
図3に、本実施例による血管新生計測装置をラットに用いた場合の実験結果を示す。
本実験では、図4に示すように、半導体レーザー素子を使用した発光部から発光用光ファイバを通じて計測部位に近赤外光を照射し、浅部受光用光ファイバと深部受光用の光ファイバを通じて受光部により近赤外光を受光する。
なお、浅部受光用光ファイバと深部受光用の光ファイバは、その受光部が光源から半径方向に異なる距離にその先端が設置され、反射角に応じて浅部及び深部からの近赤外光を受光し、浅部の再生に関与しない毛細血管の血液量変化を補償する。
【0033】
また、新生血管の測定部位の近傍に、血液量の基準部位を設け、同様の発光部及び受光部により、基準部位の血液量変化を求めた。
なお、血液量変化は赤血球数密度の変化として計測し、血管新生開始時、3日目、5日目の計測を行った。そして、5日間の赤血球数密度の変化の計測結果と5日目の実験終了時の病理標本結果による血管新生度合いの結果をまとめた。
【0034】
その結果、本実施例により赤血球密度が、基準部位と比較して平均9.49×104個/mm3増加したことが計測されたラット(血管誘導ゲルを使用)については、組織染色で血管誘導ゲルを使用して、血管新生が良好に進行していることが確認できた。
一方、基準部位と比較した赤血球密度の増加が平均5.90×104個/mm3にとどまったラットについては、血管誘導ゲルを使用したものの、組織染色部位で血管新生が不良と評価され、さらに血管誘導ゲルを使用しないラットについては、基準部位と比較した赤血球密度の増加が平均1.58×104個/mm3と計測された。
本試験の結果、本実施例により計測された赤血球密度の増加が、血管新生度を非侵襲で評価する上で有用なパラメータになることが確認された。
【0035】
[第2実施例]
図5は本発明の第2実施例の基本ブロック図を示すものであり、1つの発光部1cに対し、2つの受光素子2c、2dを使用した例を示す。
この発光部1cは、新生血管測定部位及び基準部位の双方に照射し得るよう広角な発光素子を備えており、減衰率演算部3c、3dの双方に発光部1cの発光強度が入力される点を除いて、他の構成は実施例1と同様である。
【0036】
[第3実施例]
図6は本発明の第3実施例の基本ブロック図を示すものであり、受光素子として近赤外カメラを用いた例である。
生体内の近赤外光が到達する範囲に植え込まれた、鼻や耳の再生軟骨や指の再生骨、再生皮膚などを対象に、LEDまたは半導体レーザー素子を使用したひとつの発光部1dから第2実施例と同様に、近赤外光を新生血管測定部位及び基準部位の双方に照射し、新生血管測定部位内を散乱反射して得られた近赤外光を、近赤外光の受光感度を有するCCDカメラにより撮像する。そして、実施例1と同様に、撮影された画像中の各画素の血液量を画像処理により求め、新生血管の新生開始時からの新生血管の測定部位と基準部位の血液量変化の差から血管新生度を評価する。
【0037】
図7に、各実施例で使用する計測プローブの例を示す。
図7に示すプローブは、生体組織に密着させるフレキシブルシートに発光素子である発光用LED、受光素子である受光用LEDを配列したものである。このプローブは、特に第2実施例に使用されるものであり、フレキシブルシートにおける発光用LED、受光用LEDの配列に基づいて、新生血管の測定部位と基準部位を含め、広範囲の部位について、血液量を測定し、血管新生度を評価することが可能である。
【0038】
図8は、計測対象が生体外から近赤外光の到達しない部位にある、再生心筋や再生骨、再生軟骨、再生腎臓、再生肝臓などの大規模な新生血管の新生度を出来るだけ少ない侵襲で評価する際の生体内への適用例を示す。
【0039】
生体外から近赤外光の到達しない深い狭い部位の血管新生を評価する場合、体表面より生体内の再生部位近傍まで、事前に留置されたカテーテルを通じて挿入したプローブを利用する。
ここで使用するプローブは、図9に示されるように弾力性のある合成樹脂の中に、発光用光ファイバと受光用光ファイバが埋め込まれており、その先端が血管新生部位あるいは基準部位に密着され、それぞれの末端は、外部に設置された機器内の発光部、受光部に接続されている。そして、発光部から発光用光ファイバを通じて、新生血管測定部位に近赤外光を照射し、新生血管測定部位内を散乱反射して得られた近赤外光を、受光用光ファイバを通じて受光部で受光する。他の構成は実施例1と同様である。
【0040】
また、図10に示されるように内視鏡の先端中央にCCDカメラを設け、新生血管測定部位内を散乱反射して得られた近赤外光をCCDカメラにより撮像し、得られた画像中の各画素の血液量を画像処理により求め、新生血管の新生開始時からの新生血管の測定部位と基準部位の血液量変化の差から血管新生度を評価することができる。
【0041】
以上、各実施例では、発光部から照射された近赤外光が、新生血管の測定部位及び基準部位内において散乱反射して得られる反射近赤外光を受光することにより血液量を計測したが、測定部位によっては、受光部により透過した透過近赤外光を受光することにより血液量を計測してもよい。この場合は、受光部は、新生血管の測定部位及び基準部位を挟んで発光部に相対するよう被験者に密着させる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のとおり、本発明によれば、生体組織透過性の高い近赤外光を測定部位内に照射するための発光部と、測定部位内において得られる反射近赤外光あるいは透過赤外光を受光するための受光部を設け、新生血管測定部位とその近傍の基準部位の血液量を測定するという簡便な構成で、血管の新生度を簡単にしかも高精度に計測することができるので、患者の再生臓器の再生度あるいは糖尿病患者の末梢血管障害の治療効果を、定期的かつ定量的に診断する診断機器として広く利用されることが期待できる。
【符号の説明】
【0043】
1a〜1d 発光部
2a〜2d 受光部
3a、3b 減衰率演算部
5 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生血管の新生度を計測する装置において、
生体組織透過性の高い近赤外光を新生血管測定部位に照射するための発光部と、
該発光部から照射された近赤外光が、前記新生血管測定部位において散乱反射して得られる反射近赤外光を受光するための受光部と、
前記発光部から照射された近赤外光と前記受光部で受光した反射近赤外光とに基づいて、前記新生血管測定部位における近赤外光の減衰率を演算する減衰率演算部と、
該減衰率に基づいて、前記新生血管測定部位における血液量を演算する血液量演算手段と、
該血液量を記録する記録部と、
前記血液量の時間経過に応じた変化率に基づいて、前記新生血管測定部位内における新生血管の新生度を評価する血管新生度評価手段とを備えたことを特徴とする低侵襲血管新生計測装置。
【請求項2】
新生血管の新生度を計測する装置において、
生体組織透過性の高い近赤外光を新生血管測定部位に照射するための発光部と、
該発光部から照射された近赤外光が、前記新生血管測定部位を透過して得られる透過近赤外光を受光するための受光部と、
前記発光部から照射された近赤外光と前記受光部で受光した反射近赤外光とに基づいて、前記新生血管測定部位における近赤外光の減衰率を演算する減衰率演算部と、
該減衰率に基づいて、前記新生血管測定部位における血液量を演算する血液量演算手段と、
該血液量を記録する記録部と、
前記血液量の時間経過に応じた変化率に基づいて、前記新生血管測定部位内における新生血管の新生度を評価する血管新生度評価手段とを備えたことを特徴とする低侵襲血管新生計測装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の低侵襲血管新生計測装置において、
前記発光部は、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの等吸収点となる波長を前記新生血管測定部位に照射することを特徴とする低侵襲血管新生計測装置。
【請求項4】
請求項1ないし3記載の低侵襲血管新生計測装置において、
ひとつの発光部から照射された近赤外光の前記反射近赤外光あるいは前記透過近赤外光を、複数の受光部で受光するようにしたことを特徴とする低侵襲血管新生計測装置。
【請求項5】
請求項4記載の低侵襲血管新生計測装置において、
前記血管新生度評価手段は、前記発光部から異なる距離に設置した2つの受光部の検出値に基づいて、深さの異なる血液量の差分を求め、浅部における毛細血管の血液量変化を補償する手段を備えたことを特徴とする低侵襲血管新生計測装置。
【請求項6】
請求項1ないし3記載の低侵襲血管新生計測装置において、
前記受光部として近赤外線カメラを用い、前記血管新生度評価手段が該近赤外線カメラの出力に基づいて画像処理を行うことにより、前記血管新生度評価手段が前記新生血管測定部位における新生血管の新生度を評価することを特徴する低侵襲血管新生計測装置。
【請求項7】
請求項1ないし6記載の低侵襲血管新生計測装置において、
前記発光部は複数波長の近赤外光を前記新生血管測定部位に時間差をつけて照射し、前記減衰率演算部は、それぞれの照射タイミング毎の波長の減衰率から前記新生血管測定部位内における近赤外光の減衰率を演算することを特徴とする低侵襲血管新生計測装置。
【請求項8】
請求項1ないし7記載の低侵襲血管新生計測装置において、
前記発光部は複数波長の近赤外光を前記新生血管測定部位に照射するとともに、前記受光部は分光器を備え、前記減衰率演算部が、前記分光器により分光分析された近赤外光の減衰率を演算することを特徴とする低侵襲血管新生計測装置。
【請求項9】
請求項1ないし8記載の低侵襲血管新生計測装置において、
前記発光部と前記受光部が2つの組からなり、前記減衰率演算部は、一方の組により前記新生血管測定部位における近赤外光の減衰率を演算するとともに、他方の組により、前記新生血管測定部位の近傍にある基準部位における近赤外光の減衰率を演算し、
前記血管新生度評価手段は、前記新生血管測定部位における近赤外光の減衰率に基づいて演算された血液量の変化率と、前記基準部位における近赤外光の減衰率に基づいて演算された血液量の変化率とを比較することにより、前記新生血管測定部位内における新生血管の新生度を評価するようにしたことを特徴とする低侵襲血管新生計測装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−142929(P2011−142929A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3600(P2010−3600)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「三次元複合臓器構造体研究開発」(国立大学法人東京大学医学部附属病院からの再委託)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】