低周波信号によってインビトロ・システム又は哺乳類システムをトランスデュースするための装置および方法
哺乳類システムにエージェント固有の効果を生成するようにシステムをトランスデュースできる低周波時間ドメイン信号を発生および選択する方法および装置が開示されている。低周波時間ドメイン信号は、注入された磁気刺激の存在下で生成され、結果の信号は、採点アルゴリズムによって選択され、またオプションとして、エージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システム中でエージェント固有の応答を生成する能力について、採点アルゴリズムによって同定された各信号を試験することによって選択される。選ばれた信号は、サンプルを保持する電磁トランスダクション・コイルに印加されて、哺乳類システムをトランスデュースするために使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、信号を電磁波に変換又はトランスデュースするシステムによって読出し可能な信号ならびにそのような信号を生成および適用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
化学および生化学の分野で受け入れられるパラダイムの1つは、化学的又は生化学的エフェクタ・エージェント(effector agent)、例えば、分子は、イオン、電荷又は分散による力など各種の物理化学力を介して、あるいは、共有結合又はイオン結合の切断又は形成を介して標的システムと相互作用するということである。これらの力は、エフェクタ・エージェント又は標的システムのいずれかのなかにエネルギー・モードを含んでいる。
【0003】
このパラダイムの帰結として、エフェクタ−標的システムにおいて、標的環境にエフェクタ・エージェントが存在することが要求される。しかし、この要求がエフェクタの実際の存在を要求するものであるか、あるいは、少なくとも特定のエフェクタ機能に関する、エフェクタに特徴的なエネルギー・モードの存在を要求するものであるかについては、知られていないか、理解されていない。もしエフェクタ機能の少なくとも一部を特定の特徴的エネルギー・モードによって模擬できるのであれば、システムをエフェクタに特徴的な特定のエネルギー・モードに晒すことによって、標的システムにおけるエフェクタ・エージェントの効果を「模擬する」ことが可能となる。もしそうであれば、必然的に、どのようなエフェクタ−分子のエネルギー・モードが効果的であるか、それらを測定可能な信号の形にどのように変換又はトランスデュースすればよいか、そしてそれらの信号をどのように利用すれば標的システムに効果を与えることができるか、すなわち、標的システムにおいて分子のエフェクタ機能の少なくともいくつかを模倣できるか?などの疑問が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国出願番号第60/593,006号
【特許文献2】米国出願番号第60/591,549号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】1993年発行のBendatおよびPiersol著の「相関およびスペクトル解析の工学応用(Engineering Applications of Correlation and Spectral Analysis)」
【非特許文献2】Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.Aの第70巻、ページ765−768(1973)にM.L.Shelanski、F.GaskinおよびC.R.Cantorが発表した「添加ヌクレオチド構造が存在しない微小管重合(Microtubule assembly in the absence of added nucleotides)」
【非特許文献3】Biochemistry第16巻、ページ1754−1762(1977)にJ.C.LeeおよびS.N.Timasheffが発表した「子牛脳の微小管のインビトロ再構成:溶液変数の効果(In vitro reconstitution of calf brain microtubules:effects of solution variables)」
【0006】
これらの疑問は、最近出願された共同所有の特許出願第60/593,006号および第60/591,549号(代理人整理番号38547−8010および−8011)で議論されている。出願に述べられた発明をサポートするために実行された実験によれば、標的システム(この場合、複数の生物学的システムの1つ)に対する特定のエフェクタ機能を、エフェクタ・コンパウンドの時間ドメイン信号を「トランスデュースする」ことによって生成される電磁波に標的システムを晒すことによって複製できることが実証された。先に述べた発明に従えば、時間ドメイン信号は、遮蔽された環境においてコンパウンドによって生成された信号を記録し、同時に、コンパウンドによって生成される低周波の確率現象の観察能力を強化するレベルでガウス白色雑音刺激を記録装置に注入することによって生成される。先に述べた出願で、トランスデュース信号(transducing signal)は、エフェクタ・コンパウンドの実際のコンパウンド時間ドメイン信号であった。
【0007】
エフェクタ・エージェントの実際の存在を必要とせずに、特徴的なエフェクタ−分子信号に標的システムを晒すことによってエフェクタ−分子機能を実現できることは、複数の重要で興味深い用途を生み出す。薬を投与して生物体に処置を施す代わりに、生物体を医薬固有の信号に晒すことで同じ効果を実現できる。ナノ・ファブリケーションの分野では、今や望ましい自己組織化パターンを促進できる多価エフェクタ分子の特徴的な信号をアセンブリ・システムに導入することによって、自己組織化パターンを触媒又は促進することが可能である。
【0008】
従って、磁気的なトランスダクション(transduction)環境において哺乳類システム又はインビトロ・システム(in vitro system)に対してエージェント固有の効果を及ぼすことのできる低周波時間ドメイン信号を生成および選択するための系統的な方法を採用することが望まれる。
【発明の概要】
【0009】
発明は、1つの態様において、哺乳類システムが電磁トランデューサの環境において信号によってトランスデュースされるときに、哺乳類システムに対してエージェント固有の効果を生ずることのできる信号を発生させる方法を含む。方法は、次の工程
(a)エージェントを含むサンプルを磁気および電磁遮蔽を備えたサンプル容器に設置する工程であって、ここで、サンプルは、低周波分子信号の信号源として機能し、また磁気遮蔽は、低温容器の外部にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件下で、サンプルに対して刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器に注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々について、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちから、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析されるときに、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)インビトロ・システムが電磁トランデューサの環境内で信号によってトランスデュースされるとき、エージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システム中にエージェント固有の応答を生成する能力について、工程(e)で同定された各信号を試験する工程と、
(g)インビトロ・システム中で最も大きいエージェント固有のトランスダクション効果を生ずる1又は複数の信号を選択する工程と、
を含む。
【0010】
刺激磁場の異なる条件には、(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットおよび(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された注入電圧で、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたって連続的に注入される低周波範囲にわたる掃引が含まれる。
【0011】
方法の工程(f)は、更にエージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システム中にエージェント固有の応答を発生する能力について時間ドメイン信号を試験したあとで、電磁トランデューサの環境下で印加されたトランスダクション電圧の変動を含む変化するトランスダクション条件下でエージェント固有の応答を生成する能力について信号を試験して、哺乳類システムにおけるトランスダクションに関するトランスダクション条件を最適化する工程を含む。
【0012】
記録信号のうちで、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程は、次の算術的採点法の1つによって実行される。
(i)時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲で選ばれた周波数範囲にわたり自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を生成し、FFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する方法と、
(ii)2つの時間ドメイン信号に対して一対の位相空間を計算し、算術比較を実行して2つの間の差異の尺度を提供する方法と、
(iii)fを時間ドメイン信号をサンプリングするときのサンプリング・レートとしたとき、DCから8kHzの範囲で選ばれた周波数範囲にわたり各事象ビンfについて各ビンの事象カウント数を表示するヒストグラムを生成し、ヒストグラムに対し与えられた閾値を超えるビン数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する方法と、
(iv)時間ドメイン信号の冒頭部に近い小さいデータ・ブロックと時系列の残りのものとの相互相関を取り、結果の相互相関が与えられた閾値を超える事象の発生を計数する工程と、
(v)DCと8kHzとの間で選ばれた周波数範囲において、複数の定義された期間の各々にわたり時間ドメイン信号の一連のフーリエ・スペクトルを計算し、フーリエ・スペクトルを平均して、平均のFFT信号に対して雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する方法。
【0013】
方法のなかで採用された電磁トランスデューサは、それらの間にサンプルの磁気環境を定義する一対の整列した電磁コイルを有するヘルムホルツ・コイルを含み、またインビトロ・システム中にエージェント固有の応答を生成する能力について同定された各信号を試験する工程は、インビトロ・システムを整列したコイル間に設置して、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によってシステムをトランスデュースする工程を含む。
【0014】
エージェントがインビトロでチューブリン凝集を促進する効果を持つ抗悪性腫瘍薬である場合、方法の工程(f)は、チューブリンを含むコンポジションを電磁トランスデューサの環境に設置して、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によってコンポジションをトランスデュースする工程を含む。
【0015】
別の態様で、発明は、インビトロ・システム又は哺乳類システムが電磁トランスデューサの環境で信号によってトランスデュースされるときに、システムに対してエージェント固有の効果を生成できる信号を発生させる方法を含む。方法は、次の
(a)エージェントを含むサンプルを磁気および電磁遮蔽を備えたサンプル容器に設置する工程であって、ここで、サンプルは、分子信号の信号源として機能し、また磁気遮蔽は、低温容器の外部にある工程と、
(b)(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットおよび(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された注入電圧で、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたり連続的に注入される低周波範囲にわたる掃引を含むグループから選ばれた刺激磁場条件下で、サンプルに激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器に注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々について、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちで、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)電磁トランスデューサの環境にインビトロ・システム又は哺乳類システムを設置して、工程(e)で同定された信号によってサンプルをトランスデュースすることによって、システムをトランスデュースする工程と、
を含む。
方法の工程(e)は、例えば、時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲で選ばれた周波数範囲にわたり自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を生成し、FFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程によって実行される。
【0016】
方法に採用される電磁トランスデューサは、それらの間に露出ステーションを定義して電磁環境の環境を構成する整列した一対の電磁コイルを有するヘルムホルツ・コイルを含み、また方法の工程(f)は、化学システム又はインビトロ・システムを整列コイル間に設置して、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によってシステムをトランスデュースする工程を含む。
【0017】
エージェントがインビトロ・システム中でチューブリン凝集を促進する効果を持つ抗悪性腫瘍薬である場合、工程(f)は、チューブリンを含むコンポジションを電磁トランスデューサの環境に設置して、コンポジション中で信号に依存したチューブリン凝集を生ずるのに有効な条件下で、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によってコンポジションをトランスデュースする工程を含む。
【0018】
更に別の実施の形態で、発明は、選ばれたエージェントの存在に応答してインビトロ・システム又は哺乳類システムをトランスデュースするための候補となる低周波時間ドメイン信号を生成する装置を含む。装置は、
(a)磁気的および電磁的の両方の遮蔽を備えた、エージェントのサンプルを受け入れるのに適したサンプル容器であって、サンプルは、分子信号の信号源として機能し、磁気遮蔽は、低温容器の外部にあるサンプル容器と、
(b)サンプルを容器に入れた状態で、(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセット、(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された注入電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたり連続的に注入される低周波範囲にわたる掃引を含むグループから選ばれた複数の選ばれた刺激磁場条件の各々において、容器中に刺激磁場を注入するように動作可能な調節可能なパワー源と、
(c)前記パワー源(b)によって注入された異なる刺激磁場条件の各々において、注入刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む電磁時間ドメイン信号を記録する検出器と、
(d)検出器によって記録された信号を記憶するメモリ装置と、
(e)コンピュータであって、
(i)メモリ装置に記憶された時間ドメイン信号を取り出し、
(ii)取り出した時間ドメイン信号を、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波数コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析し、
(iii)閾値を超える低周波数コンポネントの最大数を有する時間ドメイン信号を同定する
ように動作可能なコンピュータと、
を含む。
【0019】
サンプル容器は、サンプル保持領域、領域を取り囲む磁気遮蔽ケージおよび磁気遮蔽ケージ内に含まれ領域を取り囲むファラデー・ケージを有する減衰チューブでよく、ガウス雑音源は、ガウス雑音発生器とヘルムホルツ・コイルとを含み、後者は、磁気ゲージおよびファラデー・ケージ内に含まれており、また雑音発生器からの雑音出力信号を受信し、更に時間依存信号中の定常的な雑音コンポネントを除去するときに使用するために、雑音源からのガウス雑音を受信してSQUID(超伝導量子干渉デバイス)に出力するように雑音源およびSQUIDに接続されて動作する信号インバータを含む。ガウス雑音は、サンプルに注入されたガウス雑音に対して反転される。
【0020】
パワー源は、サンプルを容器に入れた状態で、サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を発生すると計算された複数の選ばれたオフセット電圧の各々について、オフセット電圧を容器に注入するように動作する。あるいは、パワー源は、サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された複数の異なる掃引電圧の各々について、少なくとも約0および1kHzの間で掃引周波数範囲にわたり連続的な掃引を注入、生成するように動作する。
【0021】
装置のコンピュータは、取り出した時間ドメイン信号を解析するときに、次のうちの1つから選ばれた解析アルゴリズムを適用するように動作する。
(i)時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲で選ばれた周波数範囲にわたり自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させ、FFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する。
(ii)2つの時間ドメイン信号に対して一対の位相空間を計算し、算術比較を実行して、2つの間の差異の尺度を提供する。
(iii)fを時間ドメイン信号をサンプリングするときのサンプリング・レートとしたとき、DCから8kHzの間で選ばれた周波数範囲にわたり各事象ビンfについて各ビンの事象カウント数を表示するヒストグラムを生成し、ヒストグラムに対し与えられた閾値を超えるビン数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する。
(iv)時間ドメイン信号の冒頭部に近い小さいデータ・ブロックと時系列の残りのものとの相互相関を取り、結果の相互相関が与えられた閾値を超える事象発生を計数する。
(v)DCと8kHzとの間で選ばれた周波数範囲において、複数の定義された期間の各々にわたり時間ドメイン信号の一連のフーリエ・スペクトルを計算し、フーリエ・スペクトルを平均し、平均のFFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する。
【0022】
哺乳類システムに対してエージェント固有の効果を生ずるシステムについても開示されている。システムは、
(1)記憶メディアであって、次の
(a)それに対して哺乳類システムが応答するサンプルを、磁気および電磁遮蔽の両方を備えたサンプル容器に設置する工程であって、ここでサンプルは、低周波分子信号の信号源として機能し、また磁気遮蔽は、低温容器の外部にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件下で、サンプルに刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器に注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々について、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちで、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)インビトロ・システムが電磁トランスデューサの環境下で信号によってトランスデュースされるときに、エージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システム中にエージェント固有の応答を発生させる能力について、工程(e)で同定された各信号を試験する工程と、
によって生成されるエージェント固有の低周波時間ドメイン信号をその上に記憶する記憶メディアと、
(2)サンプルが受け入れられる磁気環境を定義する内側領域を有する1又は複数の電磁コイルを含む電磁トランスデューサと、
(3)記憶メディアからの信号を増幅し、増幅した信号をトランスダクション・コイル(単数又は複数)に供給する増幅器と、
を含む。
電磁トランスデューサは、それらの間に内側領域を定義する一対の整列したヘルムホルツ・コイルを含む。
【0023】
更に別の実施の形態で、発明は、以下の
(a)それに対して哺乳類システムが応答するサンプルを、磁気および電磁遮蔽の両方を備えたサンプル容器に設置する工程であって、ここでサンプルは、低周波分子信号の信号源として機能し、また磁気遮蔽は、低温容器の外部にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件下で、サンプルに刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器に注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々について、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちで、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)インビトロ・システムが電磁トランスデューサの環境下で信号によってトランスデュースされるときに、エージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システム中でエージェント固有の応答を発生する能力について、工程(e)で同定された各信号を試験する工程と、
によって生成されるエージェント固有の低周波時間ドメイン信号をその上に記憶する記憶メディアを含む。
【0024】
記憶メディアで運ばれる信号は、例えばインビトロでチューブリン凝集を促進する効果を有する抗悪性腫瘍薬によって生成される。
【0025】
発明のこれらおよびその他の目的は、発明についての以下の詳細な説明を添付図面と一緒に読めばより完全に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の1つの実施の形態に従って形成される分子電磁シグナリング検出装置の1つの実施の形態の等角図である。
【図2】図1に示したファラデー・ケージおよびその内容を拡大した詳細図である。
【図3】図1および2に示した減衰チューブの1つの拡大断面図である。
【図4】図2に示したファラデー・ケージおよびその内容の断面図である。
【図5】代替の電磁放射検出システムの図である。
【図6】上記の図面の検出システムに含まれる処理ユニットの図である。
【図7】図6のそれに代わる代替処理ユニットの図である。
【図8】本システムによって実行される信号検出および処理のフロー図である。
【図9】発明のヒストグラム・スペクトル・プロット法に関するデータ・フローのハイ・レベル・フロー図である。
【図10】発明に従う、スペクトル・プロット・ヒストグラムを生成するアルゴリズムのフロー図である。
【図11】発明の方法の第2の実施の形態に従って、最適な時間ドメイン信号を同定する工程のフロー図である。
【図12】発明の方法の第3の実施の形態に従って、最適な時間ドメイン信号を同定する工程のフロー図である。
【図13】信号得点結果の例を示しており、上のグラフは、X軸にファイル番号を、Y軸にタウを、そしてZ軸に得点を示している。
【図14】典型的なトランスダクション実験におけるトランスダクション装置レイアウトを示す。
【図15】典型的なトランスダクション実験で使用されるトランスダクション・コイルおよび容器を示す。
【図16】AからFは、トランスダクション信号の開始又はタクソール添加後それぞれ1、2、3、4および5分後に計算される、ODで測定されるチューブリン重合レートを示す棒グラフである。
【図17】20分間の分析反応の最後で計算された図16のチューブリン分析に関するVmaxを示す棒グラフである。
【図18】タクソール時間ドメイン信号によるトランスダクションの後、グリア芽腫細胞を頭蓋内に注入されたマウスの生存日数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
次の用語は、特に断らない限り以下の定義を有する。
【0028】
「磁気遮蔽」は、遮蔽材料の磁気透磁率の結果として、磁束の通過を減少させ、禁止し又は防止する遮蔽を指す。
【0029】
「電磁遮蔽」は、例えば、標準的なファラデー式電磁遮蔽を指すか、あるいは、電磁放射の通過を減少させるその他の方法を指す。
【0030】
「時間ドメイン信号」又は「時系列信号」は、時間とともに変化する過渡的な信号特性を備えた信号を指す。
【0031】
「サンプル・ソース放射」は、例えば、磁場中での分子双極子の回転などのサンプルの分子運動から生ずる磁束又は電磁フラックス放射を指す。サンプル・ソース放射は、注入される磁場刺激の存在下で生成されるため、それは、また「注入された磁場刺激に重畳されたサンプル・ソース放射」も指す。
【0032】
「刺激磁場」又は「磁場刺激」は、サンプルを取り囲む磁気コイル中に、(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセット、(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された注入電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたり連続的に注入される低周波範囲にわたる掃引を含む複数の電磁信号の1つを注入することで生成される磁場を指す。サンプルの場所に生成される磁場は、注入コイルの巻線数と形状、コイルに供給される電圧および注入コイルとサンプルとの間の距離を知れば、既知の電磁的関係を用いて容易に計算できる。
【0033】
「選ばれた刺激磁場条件」は、白色雑音又はDCオフセット信号に供給された選ばれた電圧、あるいは、印加された掃引刺激磁場の選ばれた掃引範囲、掃引周波数および電圧を指す。
【0034】
「白色雑音」は、白色のランダム雑音又は確定的雑音(deterministic noise)など、同時に現われる複数の周波数を有するランダムな雑音又は信号を意味する。「ガウス白色雑音」は、ガウス状のパワー分布を有する白色雑音を意味する。「定常的ガウス白色雑音」は、後続のコンポネントを予想できないランダムなガウス状白色雑音を意味する。「構造的雑音」は、スペクトルの1つの領域から別の領域にエネルギーをシフトする対数的特性を含む白色雑音であるか、あるいは、振幅を一定に保ったままで、ランダムな時間要素を提供するように設計されている。これら2つは、ピンク雑音および均一雑音を表し、後続のコンポネントを予測できない真にランダムな雑音と対照的である。「均一雑音」は、ガウス分布でなく、矩形分布を有する白色雑音を意味する。
【0035】
「周波数ドメイン・スペクトル」は、時間ドメイン信号のフーリエ周波数プロットを指す。
【0036】
「スペクトル・コンポネント」は、時間ドメイン信号のなかで、周波数、振幅および/又は位相ドメインで測定できる単一又は反復的特性を指す。スペクトル・コンポネントは、一般的に周波数ドメインにある信号を指す。
【0037】
「ファラデー・ケージ」は、望ましくない電磁放射のためにアースへの電気経路を提供して、電磁環境を鎮める電磁遮蔽構成を指す。
【0038】
「信号解析得点」は、例えば、ここに述べられた5つの方法のうちの1つなど適当な方法によって、エージェント又はサンプルに固有な同定可能なスペクトル特徴を明らかにするために処理されたエージェント又はサンプルに関して記録された時間ドメイン信号中で、例えば、DCから1kHz又はDCから8kHzの選ばれた低周波範囲にわたって観察されたエージェント固有のスペクトル・ピークの数および/又は振幅に基づく得点を指す。
【0039】
「最適化されたエージェント固有の時間ドメイン信号」は、最大又は最大に近い信号解析得点を有する時間ドメイン信号を指す。
【0040】
「インビトロ・システム」は、ウイルス、バクテリア又は多細胞植物又は動物から分離又は抽出された構造タンパク質およびレセプタを含む、核酸又はタンパク・コンポネントなどの1又は複数の生化学コンポネントを有する生化学システムを指す。インビトロ・システムは、典型的には、生理学的バッファなどの液状媒体に分離又は部分的に分離されたインビトロ・コンポネントを1又は複数含む溶液又は懸濁液である。この用語は、また培地中のバクテリア又は真核細胞を含む細胞培養システムを指す。
【0041】
「哺乳類システム」は、哺乳類を指し、マウス、ラット又は霊長類などヒトの病気やヒトの患者に関するモデルとして役立つ実験動物を含む。
【0042】
「エージェント固有の効果」は、インビトロ・システム又は哺乳類システムがエージェント(エフェクタ)に晒されたときに観察される効果を指す。エージェント固有のインビトロ効果の例には、例えば、システムのコンポネントの凝集状態の変化、エージェントとレセプタなどの標的との結合および培地での細胞の成長又は分割の変化が含まれる。
(II.記録装置および方法)
【0043】
発明に従う信号記録装置についての以下の説明は、発明の実施の形態を説明し、完全に理解するための詳細を提供する。しかし、当業者が理解するように、発明は、それらの詳細なしでも実施できる。別の例では、発明の実施の形態の説明を不必要にあいまいにすることを避けるために、よく知られた構造および機能について詳細に説明又は示すことを行っていない。
【0044】
以下に詳細に説明するように、本発明の実施の形態は、後に遠隔で利用するために、低閾値の分子電磁信号の反復可能な検出および記録を行うための装置および方法を提供することを目的としている。磁気的に遮蔽されたファラデー・ケージは、サンプル材料および検出装置を外部の電磁信号から遮蔽する。磁気的に遮蔽されたファラデー・ケージのなかで、コイルがガウス白色雑音などの刺激信号を注入し、非鉄材料のトレイがサンプルを保持し、グラジオメータが低閾値の分子電磁応答信号を検出する。装置は、更に超伝導量子干渉デバイス(「SQUID」)およびプリアンプを含む。
【0045】
装置は、サンプルを磁気的に遮蔽されたファラデー・ケージ内で、刺激信号を発生するコイルおよび応答を測定するグラジオメータに接近して設置するように使用される。刺激信号は、刺激コイルを介して注入され、また分子電磁信号が最適化されるまで変調される。分子電磁応答信号は、ファラデー・ケージによって外部干渉および刺激コイルによって生成される場から遮蔽されて、グラジオメータおよびSQUIDによって検出および測定される。信号は、次に増幅され、任意の適当な記録又は測定装置に送信される。
【0046】
図1および2を参照すると、ファラデー・ケージの形をした遮蔽構造10が示されており、これは、外側から内に向けて、磁気遮蔽である導電性ワイヤのケージ16と電磁遮蔽を提供する内部導電性ワイヤのケージ18および20を含んでいる。別の実施の形態で、外側の磁気遮蔽は、アルミニウム−ニッケル合金被覆を有する固体アルミニウム板材料の形を含んで形成されており、電磁遮蔽は、各々固体アルミニウムを含んで形成された2つの内側壁構造によって提供されている。
【0047】
ファラデー・ケージ10は、上部が開くようになっており、また側面の開口12および14を含む。ファラデー・ケージ10は、更に互いに接近して配置された3つの銅メッシュのケージ16、18および20を含む。銅メッシュのケージ16、18および20の各々は、ケージ同士の間の誘電体障壁(図示されていない)によって他のケージから電気的に分離されている。
【0048】
側面の開口12および14は、更にファラデー・ケージ10の内部を外部の干渉源から分離しながら、ケージの内部へのアクセスを提供する減衰チューブ22および24を含む。図3を参照すると、減衰チューブ24は、互いに接近して配置された3つの銅メッシュのチューブ26、28および30(図3)を含む。外部銅メッシュのケージ16、18および20は、銅メッシュのチューブ26、28および30のそれぞれ1つに電気的に接続されている。減衰チューブ24は、更にキャップ32を被せられており、キャップには、孔34が設けられている。減衰チューブ22も同様に、銅メッシュのチューブ26、28および30を含むが、キャップ32は、含まない。
【0049】
再び図2を参照すると、ファラデー・ケージ10の内部に低密度の非鉄材料のサンプル・トレイ50が搭載されている。サンプル・トレイ50は、それを減衰チューブ22および側面開口12を通してファラデー・ケージ10から取り出せるように搭載されている。各々の長さがファラデー・ケージ10の中央垂直軸から減衰チューブ22の最も外側端までの距離よりも長い3本のロッド52がサンプル・トレイ50に取り付けられている。3本のロッド52は、減衰チューブ22の内側曲線に沿うように変形しており、そのためサンプル・トレイ50は、ロッドを減衰チューブに収めることによってファラデー・ケージ10の中央に位置するようになっている。例示した実施の形態で、サンプル・トレイ50およびロッド52は、グラス・ファイバ・エポキシを含んでいる。当業者であれば容易に理解できるように、サンプル・トレイ50およびロッド52は、その他の非鉄材料を含むこともでき、またトレイは、その他の手段、例えば1本のロッドによってファラデー・ケージ10の中に搭載してもよい。
【0050】
再び図2を参照すると、ファラデー・ケージ10の内部のサンプル・トレイ50の上方に低温デュワ100が搭載されている。開示された実施の形態で、デュワ100は、ファラデー・ケージ10の上部の開口内にフィットするように適応しており、トリスタン・テクノロジー社(Tristan Technologies,Inc.)によって製造されたBMD−6型の液体ヘリウム・デュワである。デュワ100は、グラス・ファイバ・エポキシ複合材料を含む。非常に狭い視野を備えたグラジオメータ110がデュワ100内部に、それの視野がサンプル・トレイ50を包囲する位置に搭載されている。例示された実施の形態で、グラジオメータ110は、一次の軸検出コイルであり、公称の直径は、1センチメートル、バランス値は、2%で、超伝導材料を含む。グラジオメータは、プレーナ形のグラジオメータを含む任意の形状のグラジオメータでよい。グラジオメータ110は、1つの低温直流超伝導量子干渉デバイス(「SQUID」)120の入力コイルに接続される。開示された実施の形態で、SQUIDは、カンタム・デザイン社(Quantum Design,Inc.)によって製造されたLSQ/20型のLTS dc SQUIDである。当業者であれば認識されるように、発明の精神および範囲から外れることなく、高温又は交流式のSQUIDを使用することもできる。代替的実施の形態で、SQUID120は、雑音抑制コイル124を含む。
【0051】
グラジオメータ110とSQUID120の開示された組合せは、磁場を測定するとき、5マイクロテスラ/√Hzの感度を有する。
【0052】
SQUID120の出力は、トリスタン・テクノロジー社によって製造されたSP型の低温ケーブル130に接続される。低温ケーブル130は、デュワ100内外の温度に耐えることができ、SQUID120から、ファラデー・ケージ10およびデュワ100の外部に搭載されたフラックス・ロック・ループ140に信号を伝送する。開示された実施の形態のフラックス・ロック・ループ140は、トリスタン・テクノロジー社によって製造されたiFL−301−L型のフラックス・ロック・ループである。
【0053】
図1を参照すると、フラックス・ロック・ループ140は、更にSQUID120から受信した信号を増幅して、ハイ・レベル出力回路142を介してiMC−303型のiMAG(登録商標)SQUIDコントローラ150に出力する。フラックス・ロック・ループ140は、またCC−60型の6メートルの光ファイバ複合接続ケーブル144を通してSQUIDコントローラ150に接続される。光ファイバ接続ケーブル144およびSQUIDコントローラ150は、トリスタン・テクノロジー社によって製造されている。コントローラ150は、磁気遮蔽ケージ40の外部に搭載される。光ファイバ接続ケーブル144は、SQUIDコントローラ150からフラックス・ロック・ループ140に制御信号を運び、更に測定すべき信号に対する電磁干渉の可能性を低減させる。当業者には明らかなように、発明の精神および範囲から外れることなく、他のフラックス・ロック・ループ、接続ケーブルおよびSQUIDコントローラを使用することもできる。
【0054】
SQUIDコントローラ150は、更に高分解能のアナログ−デジタル変換器152、デジタル信号を出力するための標準のGP−IBバス154およびアナログ信号を出力するためのBNCコネクタ156を含む。例示した実施の形態で、BNCコネクタは、パッチ・コード162を通してデュアル・トレース・オシロスコープ160に接続される。
【0055】
図2および4を参照すると、サンプル・トレイ50をファラデー・ケージ10内に完全に挿入したときに、サンプル・トレイ50のいずれかの側面に2要素式ヘルムホルツ変圧器60が配置されるようになっている。例示した実施の形態で、ヘルムホルツ変圧器60のコイル巻線62および64は、直流から50キロヘルツまでの範囲で動作するように設計されており、中心周波数は、25キロヘルツで、自己共振周波数は、8.8メガヘルツである。例示した実施の形態で、コイル巻線62および64は、一般に、およそ20.3cm(8インチ)の高さで10.2cm(4インチ)の幅を持つ矩形形状をしている。その他の形状のヘルムホルツ・コイルを使用してもよいが、グラジオメータ110およびサンプル・トレイ50がヘルムホルツ・コイルによって生成される場の内部に位置するような形状およびサイズのものであるべきである。コイル巻線62および64の各々は、2つの低密度の非鉄材料フレーム66および68の一方の上に搭載される。フレーム66および68は、互いにヒンジ接続されており、脚部70によって支えられている。フレーム66および68は、脚部70に対してスライド可能なように取り付けられていて、デュワ100の下側部分に対して垂直方向にフレームが移動できるようになっている。フレームが移動できることで、ヘルムホルツ変圧器60のコイル巻線62および64の調節が可能になり、磁場刺激、例えばグラジオメータ110に受信されるガウス白色雑音の振幅を変化させることができる。脚部70は、ファラデー・ケージ10の底部の上に設置又は接着される。例示した実施の形態で、フレーム66および68と脚部70とは、グラス・ファイバ・エポキシを含む。発明の精神および範囲から外れることなく、サンプル・トレイ50周りに変圧器又はコイルのその他の配置を利用することもできる。
【0056】
図4を参照すると、ファラデー・ケージおよびそれの内容の断面図が示されていて、デュワ100およびファラデー・ケージ10に対するヘルムホルツ変圧器60の巻線62の相対関係が示されている。図4でサンプル・トレイ50およびサンプル200の位置関係に注目されたい。
【0057】
再び図1を参照すると、振幅調節可能なガウス白色雑音発生器80は、磁気遮蔽ケージ80の外部にあって、電気ケーブル82によってフィルタ90を介してヘルムホルツ変圧器60に電気的に接続されている。以下で議論するように、信号記録の間にサンプルに注入される磁場刺激の信号源としてガウス雑音発生器以外のものを使用してもよい。従って以下の説明で、ガウス発生器は、信号記録の間に記録システムに注入される磁場刺激の信号源の単なる一例であることが理解される。
【0058】
図3を参照すると、ケーブル82は、側面開口12、減衰チューブ24および孔34を通ってキャップ32を通過する。ケーブル82は、同軸ケーブルであり、内部および外部を磁気遮蔽86および88によってそれぞれ囲まれたツイスト・ペアの銅導体84を含む。他の実施の形態で、導体は、銀又は金など任意の非磁性導電性材料を含むことができる。内部および外部の磁場遮蔽86および88は、キャップ32のところで終端し、図1に示されたようにキャップ端からヘルムホルツ変圧器60までの残りの距離をつなぐツイスト・ペア84の部分を残している。内部磁気遮蔽86は、キャップ32を通してファラデー・ケージ16に電気的に接続され、他方外部磁気遮蔽は、図1に示されるように、磁気的に遮蔽されたケージ40に電気的に接続されている。
【0059】
図1を参照すると、ガウス白色雑音発生器80は、同じく0−1G(ガウス)の範囲で例えば25mGの増分で選ばれた計算済みの磁場を発生させる、例えば0.01から1.0ボルトの間の選ばれた電圧振幅で、ゼロから100キロヘルツまでほぼ平坦な周波数スペクトルを発生させることができる。例示した実施の形態で、フィルタ90は、50キロヘルツを超える雑音を除去するが、発明の精神および範囲から外れることなく、他の周波数範囲を利用することもできる。
【0060】
ガウス白色雑音刺激は、他の刺激信号パターンで置き換えることができる。そのようなパターンの例には、正弦波周波数範囲のスキャン、矩形波、定義された非線形構造を含む時系列データ又はSQUID出力自身が含まれる。これらの信号は、それ自身、刺激信号を更に変調させるように、オンとオフとの間でパルス化できる。磁場遮蔽によって自然に生成される白色雑音を刺激信号の信号源として利用することもできる。1つの実施の形態で、磁場刺激の信号源は、サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の計算された磁場を生成する、例えば0.01から1.0ボルトの選ばれた電圧のようなDC電圧(オフセット)を磁場刺激コイルに供給するように動作する電圧調節可能な直流電圧源でよい。更に別の実施の形態で、磁場刺激の信号源は、好ましくは、少なくとも0から1kHz、典型的には、0から10kHz又はそれ以上に達する選ばれた周波数にわたる掃引を連続的に発生するように動作する周波数掃引発生器である。掃引時間は、好ましくは、1から10秒間であり、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた計算済みの磁場を発生させる、例えば、0.01から1.0ボルトの選ばれた電圧レベルにある。このように、掃引発生器は、選ばれた電圧レベルにおいて、1から10kHzの間の掃引周波数にわたって、5秒ごとに連続的な周波数掃引を発生させるようにセットされる。
【0061】
信号発生器の特定の機構やモデルによって束縛される意図はないが、注入される磁場刺激は、サンプル中の特定の低周波事象又はモードを刺激又は増幅するように働き、従って記録される時間ドメイン信号は、信号バックグラウンドに重畳されたこれら事象を含むことになることが分かる。注入される磁場刺激が白色雑音である場合、刺激の機構は、確率的共鳴を含む。磁場刺激が直流オフセットである場合、刺激は、核又は電子共鳴プロセスを刺激するように働き、この場合、記録される信号は、NMR又はESRコンポネントを有することになる。磁場刺激が掃引周波数発生器である場合、刺激は、サンプルが見る瞬時周波数に対応するそれら低周波事象を励起するように働く。
【0062】
ガウス白色雑音刺激発生器80は、これもパッチ・コード164を通してデュアル・トレース・オシロスコープ160の他方の入力に電気的に接続される。
【0063】
図1、2および3を参照すると、測定すべき物質のサンプル200は、サンプル・トレイ50の上に置かれ、サンプル・トレイは、ファラデー・ケージ10内に設置される。第1の実施の形態では、ガウス白色雑音刺激発生器80が用いられて、ヘルムホルツ変圧器60を介してガウス白色雑音刺激を注入する。雑音信号は、グラジオメータ110中に電圧を誘起する。グラジオメータ110中に誘起された電圧は、次にSQUID120によって検出および増幅され、SQUIDからの出力は、更にフラックス・ロック・ループ140によって増幅されてSQUIDコントローラ150に送られ、次にデュアル・トレース・オシロスコープ160に送られる。デュアル・トレース・オシロスコープ160は、またガウス白色雑音刺激発生器80によって生成される信号を表示するためにも利用される。
【0064】
ガウス白色雑音刺激信号(又は他の磁場刺激)は、刺激発生器80の出力を変更し、また図2に示すようにサンプル200周りでヘルムホルツ変圧器60を回転させることによって調節できる。フレーム66および68のヒンジ接続の軸周りにヘルムホルツ変圧器60を回転させることによって、グラジオメータ110に対するそれの位相を変更できる。望ましい位相変更に依存して、フレーム66および68のヒンジ接続は、巻線62および64が互いに平行に留まり、同時にサンプル・トレイ50周りに約30から40度回転することを可能にする。ヒンジ接続は、また巻線62および64がヘルムホルツ変圧器60によって生成される場のグラジオメータ110に対する信号位相を変更させるために、並列の位置から約60度も外れるまで回転することを許容する。位相の典型的な調節は、この平行から外れる回転を含むが、特定の状況では、例えば不規則な形状をしたサンプル200にも対応できるように他の方位が好ましいこともある。刺激は、選ばれた刺激「条件」、すなわち、白色雑音又はDCオフセットを供給する場合の選ばれた電圧で、また掃引刺激の場合は、選ばれた掃引周波数範囲、反復周期および電圧レベルで印加される。
【0065】
本発明の実施の形態は、外部干渉なしに非常に低い閾値の分子電磁信号を検出するための方法および装置を提供する。それらは、更に多様な信号の記録および処理装置によって容易に利用できるフォーマットでそれらの信号の出力を提供する。
【0066】
ここで図5を参照すると、上の図面の分子電磁放射検出および処理システムに対する代替の実施の形態が示されている。システム700は、処理ユニット704に接続された検出ユニット702を含む。処理ユニット704は、検出ユニット702の外部に示されているが、処理ユニットの少なくとも一部は、検出ユニットの内部に位置することができる。
【0067】
図5に断面図が示されている検出ユニット702は、互いに同心状に配置された複数のコンポネントを含む。サンプル・チェンバ又はファラデー・ケージ706は、金属ケージ708の内部に配置されている。サンプル・チェンバ706および金属ケージ708のそれぞれは、アルミニウム材料を含むことができる。サンプル・チェンバ706は、真空に保たれ、プリセット温度に温度制御される。金属ケージ708は、低域通過フィルタとして機能するように構成される。
【0068】
サンプル・チェンバ706と金属ケージ708との間にあってサンプル・チェンバ706を囲むように1組の平行に並んだ加熱コイル又は素子710がある。加熱素子710およびサンプル・チェンバ706に接近して1又は複数の温度センサ711も位置している。例えば、サンプル・チェンバ706の外側を囲む4つの位置に4つの温度センサを配置できる。加熱素子710および温度センサ(単数又は複数)711は、サンプル・チェンバ706内部で一定の温度を維持するように構成されている。
【0069】
遮蔽712は、金属ケージ708を囲む。遮蔽712は、サンプル・チェンバ706に対する付加的な磁場遮蔽又は分離を提供するように構成される。遮蔽712は、鉛又はその他の磁気遮蔽材料を含むことができる。遮蔽712は、サンプル・チェンバ706および/又は金属ケージ708によって十分な遮蔽が提供される場合には、オプションでよい。
【0070】
遮蔽712を囲んでG10分離を備えた寒剤の層716がある。寒剤は、液体ヘリウムでよい。寒剤の層716(低温デュワと呼ばれることもある)は、絶対温度4Kの動作温度にある。寒剤の層716を囲んで外側遮蔽718がある。外側遮蔽718は、ニッケル合金を含み、磁気遮蔽となるように構成される。検出ユニット702によって提供される磁気遮蔽の総量は、直交座標系の3つの直交する面に沿って、およそ−100dB、−100dBおよび−120dBである。
【0071】
上で述べた各種の素子は、空隙又は誘電体障壁(図示されていない)によって互いに電気的に分離される。素子は、説明の便宜上、互いに正確な縮尺で示されていないことを理解すべきである。
【0072】
サンプル・ホルダ720は、サンプル・チェンバ706のなかで手動又は機械的に位置決めされる。サンプル・ホルダ720は、下げられ、持ち上げられ、あるいは、サンプル・チェンバ706の上部から取り出される。サンプル・ホルダ720は、渦電流を誘起せず、特有の分子回転をほとんど示さないか、あるいは、全く示さない材料を含む。一例として、サンプル・ホルダ720は、高品質ガラス又はパイレックス(登録商標)を含むことができる。
【0073】
検出ユニット702は、固体、液体又は気体状のサンプルを取り扱えるように構成される。検出ユニット702には、各種のサンプル・ホルダが利用できる。例えば、サンプルのサイズに依存して、より大型のサンプル・ホルダを利用することもできる。別の例として、サンプルが空気と反応する場合には、サンプル・ホルダは、サンプルをカプセル封入するか、あるいは、サンプルの周りに気密なシールを形成するように構成される。更に別の例では、サンプルが気体状の場合、サンプルは、サンプル・ホルダ720なしでサンプル・チェンバ706内部に導入される。そのような例では、サンプル・チェンバ706は、真空に保たれる。サンプル・チェンバ706の上部にある真空シール721は、真空を保つ助けとなり、および/又はサンプル・ホルダ720を受け入れる助けとなる。
【0074】
検出コイルとも呼ばれるセンス・コイル722およびセンス・コイル724は、サンプル・ホルダ720のそれぞれ上および下に設けられる。センス・コイル722、724のコイル巻線は、中心周波数25kHzおよび自己共振周波数8.8MHzで、直流から約50キロヘルツ(kHz)の範囲まで動作するように構成される。センス・コイル722、724は、二次導関数の形で、ほぼ100%のカップリングを実現するように構成される。1つの実施の形態で、コイル722、724は、一般に矩形形状で、G10ファスナで所定の場所に保持される。コイル722、724は、二次導関数グラジオメータとして機能する。
【0075】
ヘルムホルツ・コイル726および728は、ここに説明するように、遮蔽712と金属ケージ708との間を上下に移動する。コイル726および728の各々は、互いに独立して上下動する。磁気刺激発生器コイルとも呼ばれるコイル726および728は、室温又は雰囲気温度にある。コイル726、728によって生成される雑音は、およそ0.10ガウスである。
【0076】
サンプルからの放射とコイル722、724からの放射とのカップリングの程度は、コイル722、724に対するサンプル・ホルダ720の位置を変えることによって、あるいは、サンプル・ホルダ720に対するコイル726、728の両方又は一方の位置を変えることによって変更できる。
【0077】
処理ユニット704は、コイル722、724、726および728に電気的に接続される。処理ユニット704は、コイル726、728によってサンプルに注入すべき磁場刺激、例えばガウス白色雑音刺激を指定する。処理ユニット104は、また注入された磁場刺激と混合されたサンプルの電磁放射からの誘起電圧をコイル722、724で受信する。
【0078】
図6を参照すると、発明の態様を採用した処理ユニットは、サンプル842がファラデー・ケージ844およびヘルムホルツ・コイル746との間で出し入れできるようになったサンプル・トレイ840を含む。低温デュワ850内には、SQUID/グラジオメータ検出器アセンブリ848が位置する。SQUID/グラジオメータ検出器アセンブリ848とSQUIDコントローラ854との間には、フラックス・ロック・ループ852がつながれている。SQUIDコントローラ854は、トリスタン・テクノロジー社によって製造されたiMC−303型のiMAGマルチチャネル・コントローラである。
【0079】
アナログ・ガウス白色雑音刺激発生器856は、雑音信号(上で説明したように)を位相ロック・ループ858に供給する。位相ロック・ループのx軸出力は、ヘルムホルツ・コイル846に供給され、また例えば20dBほど減衰される。位相ロック・ループのy軸出力は、信号スプリッタ860によって分割される。y軸出力の一部は、SQUIDにおける雑音消去コイルに入力される。これは、グラジオメータのための別の入力を有する。y軸信号の他の部分は、例えばテクトロニクスのTDS3000b型(例えば、モデル3032b)のようなフーリエ関数を有するアナログ/デジタル・オシロスコープなどのオシロスコープ862の入力である。すなわち、位相ロック・ループのx軸出力は、ヘルムホルツ・コイルを駆動し、反転されたy軸出力は、SQUID入力とオシロスコープ入力とに分割される。このように、位相ロック・ループは、信号インバータとして機能する。オシロスコープのトレースは、アナログ磁場刺激信号をモニタするために利用される。コントローラ854に接続されたアナログ・テープ・レコーダ又は記録装置864は、装置からの信号出力を記録し、また好ましくは、広帯域(例えば、50kHz)レコーダである。PCコントローラ866は、例えばRS232ポートを介してコントローラ854との間のインタフェースとなるMSウィンドウ・ベースのPCである。
【0080】
図7には、処理ユニットの別の実施の形態のブロック図が示されている。二相ロック・イン・アンプ202は、第1の磁場信号(例えば、「x」又は雑音刺激信号)をコイル726、728に供給し、第2の磁場信号(例えば、「y」又は雑音消去信号)を超伝導量子干渉デバイス(SQUID)206の雑音消去コイルに供給するように構成される。増幅器202は、外部基準なしでロックするように構成され、パーキン・エルマー(Perkins Elmer)の7265型DSPロック・イン・アンプでよい。この増幅器は、「仮想モード」で動作する。そこにおいて、増幅器は、初期の基準周波数にロックし、次に基準周波数を除去して自由動作を許容して「雑音」にロックする。
【0081】
アナログ・ガウス白色雑音刺激発生器200などの磁場刺激発生器が、増幅器202に電気的に接続される。発生器200は、増幅器202を通してコイル726、728に、アナログ・ガウス白色雑音刺激のような選ばれた磁場刺激を発生させるように構成される。一例として、発生器200は、ゼネラル・ラジオ(General Radio)によって製造されたモデル1380でよい。
【0082】
SQUID206と増幅器202との間に、インピーダンス変成器204が電気的に接続される。インピーダンス変成器204は、SQUID206と増幅器202との間でインピーダンス整合を提供するように構成される。
【0083】
SQUID206は、低温直流素子SQUIDである。一例として、SQUID206は、トリスタン・テクノロジー社(カリフォルニア州サンディエゴ)から市販されているLSQ/20型のLTS dC SQUIDでよい。あるいは、高温又は交流式SQUIDを利用することもできる。コイル722、724(例えば、グラジオメータ)およびSQUID206(集合的にSQUID/グラジオメータ検出器アセンブリと呼ばれる)の組合せは、約5マイクロテスラ/√Hzの磁場測定感度を有する。コイル722、724に誘起される電圧は、SQUID206によって検出および増幅される。SQUID206の出力は、およそ0.2−0.8マイクロボルトの範囲にある電圧である。
【0084】
SQUID206の出力は、SQUIDコントローラ208への入力である。SQUIDコントローラ208は、SQUID206の動作状態を制御するように、更に検出された信号の状態を調整するように構成される。一例として、SQUIDコントローラ208は、トリスタン・テクノロジー社によって製造されたiMC−303型のiMAGマルチチャネルSQUIDコントローラでよい。
【0085】
SQUIDコントローラ208の出力は、増幅器210に入力される。増幅器210は、0−100dBの範囲の利得を提供するように構成される。雑音消去ノードがSQUID206でターン・オンされたときには、約20dBの利得が提供される。SQUID206が雑音消去を提供しないときには、約50dBの利得が提供される。
【0086】
増幅された信号は、レコーダ又は記憶装置212に入力される。レコーダ212は、アナログの増幅された信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号を記憶するように構成される。1つの実施の形態で、レコーダ212は、Hz当たり8600個のデータ・ポイントを記憶し、2.46メガビット/秒を処理できる。一例として、レコーダ212は、ソニー(SONY)のデジタル・オーディオ・テープ(DAT)レコーダでよい。DTAレコーダを使用すると、生の信号又はデータ・セットを第三者に送って、必要に応じて表示したり、特殊な処理を施したりすることができる。
【0087】
低域通過フィルタ214は、レコーダ212からのデジタル化されたデータ・セットをフィルタリングする。低域通過フィルタ214は、アナログ・フィルタであり、バターワース・フィルタでよい。カットオフ周波数は、約50Hzにある。
【0088】
次に帯域通過フィルタ216は、フィルタを通ったデータ・セットをフィルタリングする。帯域通過フィルタ216は、DCから50kHzの間の帯域幅を備えたデジタル・フィルタになるように構成される。帯域通過フィルタ216は、異なる帯域に対応するように調節することもできる。
【0089】
帯域通過フィルタ216の出力は、フーリエ変圧器プロセッサ218に入力される。フーリエ変圧器プロセッサ218は、時間ドメインにあるデータ・セットを周波数ドメインにあるデータ・セットに変換するように構成される。フーリエ変圧器プロセッサ218は、高速フーリエ変換(FFT)タイプの変換を実行する。
【0090】
フーリエ変換されたデータ・セットは、相関および比較プロセッサ220への入力である。レコーダ212の出力は、またプロセッサ220への入力である。プロセッサ220は、データ・セットと以前に記録されたデータ・セットとの相関を取り、閾値を決定し、雑音消去を実行する(SQUID206によって雑音消去が提供されない場合)ように構成される。プロセッサ220の出力は、サンプルの分子低周波電磁放射のスペクトルを表す最終的なデータ・セットである。
【0091】
グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)などのユーザ・インタフェース(UI)222は、また少なくともフィルタ216およびプロセッサ220に接続されて、信号処理パラメータを指定する。フィルタ216、プロセッサ218およびプロセッサ220は、ハードウエアとして、ソフトウエアとして、あるいは、ファームウエアとして組み込むことができる。例えば、フィルタ216およびプロセッサ218は、1又は複数の半導体チップに組み込むことができる。プロセッサ220は、計算デバイス中に組み込まれたソフトウエアでよい。
【0092】
この増幅器は、「仮想モード」で動作し、そこにおいて、それは、初期基準周波数にロックし、次に基準周波数を除去して自由動作を許容され、「雑音」にロックする。アナログ雑音発生器(ゼネラル・ラジオ社によって生産される、真にアナログな雑音発生器)は、ヘルムホルツおよび雑音消去コイルに対して、それぞれ20dBおよび45dBの減衰を必要とする。
【0093】
ヘルムホルツ・コイルは、1%の100分の1のバランスを備えた約16.4立方センチメートル(1立方インチ)のスイート・スポットを有する。代替的実施の形態で、ヘルムホルツ・コイルは、垂直方向にも動き、(垂直軸の回りに)回転もして、並列状態からパイの形に広がって離れもする。1つの実施の形態で、SQUID、グラジオメータおよび駆動用変圧器(コントローラ)は、それぞれ1.8、1.5および0.3マイクロヘンリーの値を有する。ヘルムホルツ・コイルは、スイート・スポットにおいてアンペア当たり0.5ガウスの感度を有する。
【0094】
確率的応答のためには、およそ10から15マイクロボルトが必要とされる。ガウス白色雑音刺激を注入することによって、システムは、SQUIDデバイスの感度を上げることができる。SQUIDデバイスは、雑音なしで約5フェムトテスラの感度を有していた。このシステムは、雑音を注入し、この確率的共鳴応答を利用することによって、感度を25ないし35dB改善することができた。これは、ほとんど1,500%の増大にあたる。
【0095】
システムから信号を受信して記録したあとで、メインフレーム・コンピュータ、スーパーコンピュータ又は高性能コンピュータなどのコンピュータは、前処理および後処理の両方を実行する。前処理に関しては、カリフォルニア州リッチモンドのシスタット・ソフトウエア(Systat Software)によって生産されたオートシグナル(AutoSignal(登録商標))のソフトウエアを採用することによって、またポスト処理に関しては、フレックスプロ(FlexPro)のソフトウエアの製品を使用することによって実行されよう。フレックスプロは、デュートロン社(Dewetron,Inc.)によって供給されるデータ(統計)解析ソフトウエアである。次の式又はオプションは、オートシグナルおよびフレックスプロの製品で使用される。
【0096】
システム100によって実行される信号検出および処理のフロー図が図8に示されている。サンプルが注目しているものである場合、少なくとも4つの信号検出又はデータ・ランが実行される。サンプルなしで時刻t1に第1のデータ・ラン、サンプルありで時刻t2に第2のデータ・ラン、サンプルありで時刻t3に第3のデータ・ラン、そしてサンプルなしで時刻t4に第4のデータ・ラン。2つ以上のデータ・ランの実行および収集によって、最終的な(例えば、関連付けられた)データ・セットの精度は高まる。第4のデータ・ランで、システム100のパラメータおよび条件は、一定に保たれる(例えば、温度、増幅量、コイルの位置、ガウス白色雑音刺激信号等々)。
【0097】
ブロック300で、適当なサンプルがシステム100に設置される(あるいは、もしそれが第1又は第4のデータ・ランであれば、サンプルなし)。与えられたサンプルは、注入されるガウス白色雑音刺激なしで、約0.001マイクロテスラに等しいかそれよりも小さい振幅で、DC−50kHz範囲の電磁放射を放出する。このような低い放射を捕らえるためには、ブロック301でガウス白色雑音刺激が注入される。
【0098】
ブロック302で、コイル722、724は、サンプルの放射および注入されたガウス白色雑音刺激を表す誘起電圧を検出する。誘起電圧は、データ・ランの期間だけ続く時間の関数としての電圧値(振幅および位相)の連続した流れを含む。データ・ランは、長さが2−20分間であり、従ってデータ・ランに対応するデータ・セットは、2−20分間続く時間の関数としての電圧値を含むことになる。
【0099】
ブロック304で、誘起電圧が検出されるとともに注入されたガウス白色雑音刺激は、消去される。このブロックは、SQUID206の雑音消去機能をターン・オフしている場合には、省略される。
【0100】
ブロック306で、データ・セットの電圧値は、ブロック304で雑音消去が発生するか否かに依存して、20−50dBだけ増幅される。更にブロック308で、増幅されたデータ・セットは、アナログからデジタルへの(A/D)変換を施され、レコーダ212に記録される。デジタル化されたデータ・セットは、数百万行のデータを含む。
【0101】
取得されたデータ・セットが記録されたあと、ブロック310で、サンプルに対して少なくとも4つのデータ・ランが実行されたか否か(例えば、少なくとも4つのデータ・セットが取得されたか否か)のチェックが行われる。与えられたサンプルに関して4つのデータ・セットが得られていれば、ブロック312で低域通過フィルタリングが施される。そうでなければ、次のデータ・ランが開始される(ブロック300に戻る)。
【0102】
デジタル化されたデータ・セットに対して低域通過フィルタリング(ブロック312)および帯域通過フィルタリング(ブロック314)を施したあとで、データ・セットは、フーリエ変換ブロック316で周波数ドメインに変換される。
【0103】
次に、ブロック318で、各データ・ポイントにおいて、類似のデータ・セットが互いに相関を取られる。例えば、第1のデータ・ラン(例えば、ベースライン又は雰囲気雑音のデータ・ラン)に対応する第1のデータ・セットと、第4のデータ・ラン(例えば、別の雑音データ・ラン)に対応するデータ・セットとで互いに相関を取られる。もし与えられた周波数における第1のデータ・セットの振幅値が与えられた周波数における第4のデータ・セットの振幅値と同じであれば、その与えられた周波数についての相関値又は数は、1.0となるはずである。あるいは、相関値の範囲は、0−100の範囲にセットされる。このような相関又は比較は、第2と第3のデータ・ラン(例えば、サンプル・データ・ラン)とについても実施される。取得されたデータ・セットが記録されているので、残りのデータ・ランが完了した後の時点でそれらにアクセスすることができる。
【0104】
相関を取られた各データ・セットに対して予め決められた閾値レベルが適用されて、無関係な相関値が統計的に排除される。データ・ランの長さに依存して(データ・ランが長ければ、取得されるデータの精度が高まる)、また他のタイプのサンプルに対するサンプルの実際の放射スペクトルの類似性に依存して、多様な閾値が使用される。閾値レベルに加えて、相関の平均がとられる。閾値と相関の平均を利用すると、結果の相関の取られたデータ・セットにおける注入ガウス白色雑音刺激コンポネントは非常に小さくなる。
【0105】
2つのサンプル・データ・セットを1つの相関サンプル・データ・セットにリファインし、2つの雑音データ・セットを1つの相関雑音データ・セットにリファインしたあとで、相関雑音データ・セットが、相関サンプル・データ・セットから差し引かれる。結果のデータ・セットは、最終的なデータ・セット(例えば、サンプルの放射スペクトルを表すデータ・セット)である(ブロック320)。
【0106】
Hz当たり8600個のデータ・ポイントがあり、最終的なデータ・セットがDC−50kHzの周波数範囲についてデータ・ポイントを有するので、最終的なデータ・セットは、数億行のデータを含む。データの各行には、周波数、振幅、位相および相関値が含まれる。
(III.候補となる最適な時間ドメイン信号を同定する方法)
【0107】
上で述べた方法に従って生成される信号は、インビトロ・システムや哺乳類システムをトランスデュースするために使用されるとき、更に最適なエフェクタ活動について選択される。発明の1つの態様に従えば、与えられたサンプルについて得られた低周波時間ドメイン信号のサンプルに依存する信号特徴は、サンプルについての時間ドメイン信号を磁場刺激条件の範囲、例えば、ガウス白色雑音刺激の振幅およびDCオフセットについての異なる電圧レベルの範囲にわたって記録することによって最適化できることが分かった。記録された信号は、次に処理されて信号特徴を明らかにされ、以下で述べるように最適な信号解析得点を有する1又は複数の時間ドメイン信号が選択される。最適化された、あるいは、最適に近い時間ドメイン信号の選択が有用であるのは、発明に従えば、最適化された時間ドメイン信号でインビトロ・システムや哺乳類システムをトランスデュースすることが、非最適化時間ドメイン信号の場合よりも強く、より予測可能な応答を与えることが分かったからである。見方を変えると、最適化された(あるいは、最適に近い)時間ドメイン信号を選択することは、標的システムがサンプル信号によってトランスデュースされる場合、信頼でき、検出可能なサンプル効果を達成するのに有効である。
【0108】
一般に、サンプルに供給される注入される白色雑音、DCオフセットおよび掃引振幅電圧は、サンプル容器の場所に0から1G(ガウス)の間の計算された磁場を生成するようなものであるか、あるいは、注入される雑音刺激は、好ましくは、検出しようとする分子電磁放射よりも約30から35デシベル高く、例えば、70−80dbmの範囲にある。記録されるサンプル数、すなわち、時間ドメイン信号が記録される雑音レベル期間の数は、典型的には、10−100又はそれ以上の範囲で変化し、いずれの場合でも十分に小さい期間であれば、良好な最適信号が同定できる。例えば、雑音発生器レベルのパワー利得は、5から20mVの範囲にわたって変化できる。以下で明らかになるように、信号についての信号解析得点を注入される雑音刺激のレベルに対してプロットすると、プロットは、雑音レベル増分が十分小さければ、いくつかの異なる雑音レベルにわたって広がるピークを示す。
【0109】
あるいは、記録された時間ドメイン信号の最適化のためにガウス白色雑音以外の刺激信号を使用することもできる。そのような信号の例は、正弦波周波数の範囲のスキャン、矩形波、定義された非線形構造を含む時系列データ又はSQUID出力自身を含む。これらの信号は、更に刺激信号を修正するために、オフ状態とオン状態との間でそれら自身をパルス化してもよい。磁場によって自然に生成される白色雑音を刺激信号の信号源として使用することもできる。
【0110】
本発明は、記録された時間ドメイン信号について信号解析得点を計算するための5つの異なる方法を考えている。それらは、(A)ヒストグラム・ビン法、(B)自己相関信号のFFT生成、(C)FFTの平均、(D)相互相関閾値の使用および(E)位相空間比較。これらの各々は、後に詳細に説明する。
【0111】
具体的に述べていないが、明らかなように、各方法は、手動モードで実行される。ここでは、ユーザは、信号解析得点が基礎とするスペクトルを評価し、次の記録について雑音刺激レベルの調節を行い、またピーク得点に達する時点を決定する。あるいは、これを自動又は半自動モードで実行することもできる。ここでは、コンピュータ駆動プログラムによって雑音刺激レベルの連続的増分および/又は信号解析得点の評価が行われる。
(A.スペクトル情報を生成するヒストグラム法)
【0112】
図9は、スペクトル情報を生成するためのヒストグラム法のハイ・レベル・データ・フロー図である。SQUIDから得られるデータ(ボックス2002)、あるいは、記録されたデータ(ボックス2004)は、16ビットのWAVデータとして保存され(ボックス2006)、倍精度浮遊小数点データに変換される(ボックス2008)。変換されたデータは、生の波形として保存されるか(ボックス2010)、あるいは、表示される(ボックス2012)。変換されたデータは、次に以下で図10に関連して説明するアルゴリズムに送られ、フーリエ解析とラベル付けされたボックス2014によって表示される。ヒストグラムは、2016で表示できる。
【0113】
図10を参照すると、ヒストグラム・アルゴリズムの一般的な流れは、離散的なサンプリングされた時間ドメイン信号を取り上げ、更に解析するためにフーリエ変換を利用してそれを周波数ドメイン・スペクトルに変換することである。時間ドメイン信号は、ADC(アナログ/デジタル変換器)から収集されて、2102に示されたバッファに記憶される。このサンプルは、SampleDuration秒の長さで、秒当たりSampleRateサンプルでサンプリングされて、SampleCount(SampleDuration*SampleRate)サンプルが得られる。信号から復元できるFrequencyRangeは、ナイキストによって定義されるようにSampleRateの半分として定義される。そうすると、時系列信号を毎秒10,000サンプルでサンプリングすると、FrequencyRangeは、0Hzから5kHzとなる。使用される1つのフーリエ・アルゴリズムは、基数2の実高速フーリエ変換(RFFT)であり、これは、216までの2のべき乗の選択可能な周波数ドメイン分解能(FFTSize)を有する。FrequencyRangeが8kHz以下に留まるかぎり、ヘルツ当たり少なくとも1つのスペクトル・ビンを確保するために十分な分解能を提供するために、8192というFFTSizeが選ばれる。信頼できる結果を保証するために、SampleCount>(2*)FFTSize*10となるようにSampleDurationは、十分長くあるべきである。
【0114】
このFFTは、一時にFFTSize個のサンプルにだけ作用できるので、プログラムは、サンプルに対して逐次的にFFTを実行して、結果を一緒に平均して最終スペクトルを得る必要がある。もし各FFTについてFFTSize個のサンプルをスキップすることを選ぶと、1/FFTSize^0.5の統計誤差が導入される。しかし、FFT入力にFFTSizeの半分を重ねることを選ぶと、この誤差は、1/(0.81*2*FFTSize)^0.5に減少する。これは、誤差を0.0110485435から0.0086805556に低減させる。誤差および相関解析に関する追加情報は、一般的に、1993年発行のBendatおよびPiersol著の「相関およびスペクトル解析の工学応用(Engineering Applications of Correlation and Spectral Analysis)」を参照のこと。
【0115】
与えられたウインドウでFFTを実行する前に、サンプリング・エイリアシングによるスペクトル欠損を避けるためにデータ・テーパリング・フィルタが適用される。このフィルタは、例えば、矩形(フィルタなし)、ハミング(Hamming)、ハニング(Hanning)、バートレット(Bartlett)、ブラックマン(Blackman)およびブラックマン/ハリス(Blackman/Harris)のうちから選ぶことができる。
【0116】
例示的な方法では、ボックス2104に示すように、可変FFTSizeとして8192を選んだ。これは、同時に動作させる時間ドメイン・サンプルの数であり、またFFTによって出力される離散周波数の数でもある。FFTSize=8192は、分解能である、あるいは、そのサンプリング・レートによって指示される範囲にあるビン数であることに注意されたい。何個の離散RFFR(実FFT)を実行するかを指示する変数nは、SampleCountをFFTビン数であるFFTSize*2で割ることによってセットされる。このアルゴリズムが目的にかなった結果をもたらすようにするために、この数nは、少なくとも10から20であるべきである(他の値も可能ではあるが)。ここで、もっと弱い信号を拾い上げるには、より大きい値が好ましい。このことは、与えられたSampleRateおよびFFTSizeに対して、SampleDurationが十分大きくなければならないということを意味する。0からnまで計数するカウンタmは、これもボックス2104に示すようにゼロに初期化される。
【0117】
プログラムは、まず3つのバッファを確立する。各ビン周波数においてカウントを累積するサイズがFFTSize個のヒストグラム・ビンのためのバッファ2108と、各ビン周波数において平均パワーのためのバッファ2110と、各mについてFFTSize個のコピーされたサンプルを含むバッファ2112である。
【0118】
プログラムは、ヒストグラムおよびアレイを初期化し(ボックス2113)、waveデータのFFTSize個のサンプルをバッファ2112にコピーし(2114で)、waveデータに対してRFFTを実行する(ボックス2115)。FFTは、最も大きい振幅を1とするように正規化され(ボックス2116)、FFTSize個のビンすべてについての平均パワーが正規化信号から決められる(ボックス2117)。各ビン周波数に対して、その周波数でFFTからの正規化された値は、バッファ2108の各ビンに追加される(ボックス2118)。
【0119】
ボックス2119で、プログラムは、各ビン周波数のパワーを調べて、上で計算された平均パワーと比較する。もしパワーが平均パワーの特定の因子イプシロン(0から1の間)の範囲にあれば、それが計数されて、16にあるヒストグラム・バッファで対応するビンが増分される。そうでなければ、それは、破棄される。
【0120】
それが比較される平均パワーは、このFFTのインスタンスのみに関するものであることに注意されたい。低速ではあるが、強化されたアルゴリズムであれば、データを通して2つの経路を取り、ヒストグラム・レベルをセットする前のすべての時間にわたる平均を計算するはずである。イプシロンとの比較は、1つの周波数ビンに対して十分重要なパワー値を表す助けとなる。あるいは、より広義では、イプシロンを採用した式は、「この時点で、この周波数に信号があるか?」という質問に回答する助けになる。もし回答が肯定であれば、それは、2つのこと、(1)ちょうどこの1つの時点でこのビンに入ろうとしている定常的雑音、あるいは、(2)ほとんど毎度発生する実際の低レベル周期信号、のうちの1つによるためであろう。すなわち、ヒストグラムのカウントは、雑音によるヒットを除去し、低レベル信号によるヒットを強調する。従って、平均化およびイプシロン因子は、重要と考えられる最も小さいパワー・レベルを選択することを可能にする。
【0121】
カウンタmは、ボックス2120で増分され、mがnに等しくなるまで、WAVデータの各nセットに対して上のプロセスが繰り返される(ボックス2121)。各サイクルにおいて、各ビンに対する平均パワーは、2118で関連するビンに加えられ、また2114でパワー振幅条件が満たされるとき、各ヒストグラム・ビンが1だけ増分される。
【0122】
データのnサイクルすべてが考慮されたあと、各ビンに累積された平均パワーをサイクルの合計数nで割ることによって各ビンの平均パワーが決定され(ボックス2122)、結果が表示される(ボックス2123)。例えば、DC=0であるか、あるいは、60Hzの倍数にあるなど構造を持つ雑音が存在する場合を除いて、各ビンの平均パワーは、なんらかの比較的小さい数になるはずである。
【0123】
この方法で関係する設定は、雑音刺激利得およびイプシロンの値である。この値は、平均値を超える事象を識別するために使用されるパワー値を決める。値が1のとき、検出される事象はない。パワーが平均パワーよりも大きくなり得ないからである。イプシロンがゼロに近づくと、ビンには、実質上すべての値が入ることになる。0と1との間、典型的には、構造を有する雑音に対する合計のビン・カウントの約20−50%にあるビン・カウント数を与える値において、イプシロンは、最大の「スペクトル特性」を有し、純粋な雑音よりも確率的共鳴事象が最も好ましいことを意味する。
【0124】
従って、磁場刺激入力のパワー利得を体系的に増やす、例えば0と1Vとの間で50mVの増分で増やし、各々のパワー設定で明確に定義されるピークを有するヒストグラムが観測されるまでイプシロンを調節することができる。例えば、処理されるサンプルが20秒間の時間間隔を表す場合、各々の異なるパワーおよびイプシロンについての合計の処理時間は、約25秒間になる。明確に定義された信号が観測されるとき、パワー設定又はイプシロンのいずれか、あるいは両方は、最適なヒストグラムになるまで、すなわち、最大数の同定可能なピークが得られるまでリファインすることができる。
【0125】
このアルゴリズムのもとで、低周波において雑音(例えば、環境雑音)の一般的な発生のせいで、数多くのビンが満たされ、関連するヒストグラムが低周波に割り当てられる。すなわち、システムは、単純に与えられた周波数より低い(例えば、1kHzを下回る)ビンを無視するが、しかしなお、より高い周波数においてサンプル間で独自の信号シグネチャを決定するのに十分なビンの値を提供する。
【0126】
あるいは、イプシロン変数の目的は、各サイクルで決まる異なる平均のパワー・レベルを受け入れることにあるので、プログラムは、それ自身で、平均のパワー・レベルを最適にイプシロン値に関連付ける予め定義された関数を用いて自動的にイプシロンを調節できる。
【0127】
同様に、プログラムは、各々のパワー設定においてピーク高を比較でき、またまたヒストグラムに最適のピーク高又は特性が観察されるまで、雑音刺激パワー設定を自動的に調節できる。
【0128】
イプシロンの値は、すべての周波数に対して固定した値でもかまわないが、周波数に依存するイプシロンの値を採用して、低周波、すなわちDCから1,000において観測される平均のエネルギーをより高い値に対して調節することも考えられる。周波数に依存するイプシロン因子の決定は、例えば、非常に多数の低周波FFT領域を平均して、平均値をより高い周波数において観測されるものと同等な値に「調節する」イプシロン値を決めることによって行うことができる。
(B.自己相関信号のFFT)
【0129】
信号解析得点を決める第2の一般的方法では、選ばれた雑音刺激で記録された時間ドメイン信号の自己相関が取られ、自己相関信号の高速フーリエ変換(FFT)を利用して信号解析プロット、すなわち、周波数ドメインでの信号のプロットが生成される。次にFFTを利用して、選ばれた周波数範囲、例えば、DCから1kHz、あるいは、DCから8kHzの範囲にわたって平均の雑音レベルを超えるスペクトル信号の数が採点される。
【0130】
図11は、この第2の実施の形態に従い、記録された時間ドメイン信号を採点する場合に実行される工程のフロー図である。時間ドメイン信号が、サンプリングされ、デジタル化されて上のようにフィルタリングされる(ボックス402)。このとき、磁場刺激レベルの利得は、404でのように、初期レベルにセットされる。1つのサンプル・コンパウンド402に関する典型的な時間ドメイン信号は、標準的な自己相関アルゴリズムを使用して408で自己相関を取られ、また自己相関関数のFFTは、標準FFTアルゴリズムを使用して410において生成される。
【0131】
FFTプロットは、412において、自己相関FFTで観察される平均雑音よりも統計的に大きいスペクトル・ピークを計数することによって採点され、得点は、414で計算される。このプロセスは、ピーク得点が記録されるまで、すなわち、与えられた信号に対する得点が雑音刺激利得の増大とともに減少し始めるまで、工程416と406との間を繰り返される。ピークの得点は、418で記録され、プログラム又はユーザは、422で時間ドメイン信号のファイルからピークの得点に対応する信号を選択する(ボックス420)。
【0132】
上のように、この実施の形態は、手動モードで実行される。そこにおいて、ユーザは、雑音刺激の増分設定を手動で調節し、FFTスペクトル・プロットからの解析(ピークの計数)を手作業で行い、ピーク得点を利用して1又は複数の最適な時間ドメイン信号を同定する。あるいは、これらの工程の1又は複数の態様を自動化することもできる。
(C.平均のFFT)
【0133】
信号解析得点を決める別の実施の形態では、各々の雑音刺激利得における多数、例えば10−20個の時間ドメイン信号のFFTが平均されて、スペクトル・ピークのプロットが得られ、上で述べたように得点が計算される。
【0134】
図12は、この第3の実施の形態に従い、記録された時間ドメイン信号を採点する場合に実行される工程のフロー図である。時間ドメイン信号は、サンプリングされ、デジタル化されて上のようにフィルタリングされる(ボックス424)。このとき、磁場刺激レベルの利得は、426でのように、初期レベルにセットされる。プログラムは、次に各々の雑音刺激利得について時間ドメイン信号(単数又は複数)に関する一連のFFTを428において発生させ、これらのプロットが430で平均される。平均のFFTプロットを使用して、432、434でのように、平均のFFT中で観測される平均雑音よりも統計的に大きいスペクトル・ピークの数を計数することによって採点が実行される。このプロセスは、ピーク得点が記録されるまで、すなわち、与えられた信号に対する得点が雑音刺激利得の増大とともに減少し始めるまで、工程436および437の論理を通って繰り返される。ピークの得点が438で記録され、プログラム又はユーザは、442の時間ドメイン信号のファイルからピークの得点に対応する信号を選択する(ボックス440)。
【0135】
上のように、この方法は、手動、半自動又は完全自動モードで実行できる。
(D.相互相関閾値)
【0136】
信号解析得点を決めるための別の実施の形態では、閾値と併せて相互相関アルゴリズムが使用される。最初に、応答時系列データの平均値を計算し、その値をデータ全体から差し引くことによって、応答時系列データの平均値がゼロになるようにオフセットされる。次に、この時系列データの冒頭部近くから間隔タウのブロック・データが抽出され、データ・セットの残りの部分との間で相互相関が取られる。相互相関のためのアルゴリズムは、よく知られている。相互相関の出力は、標準偏差値を計算するために使用される。標準偏差値を計算するアルゴリズムは、よく知られている。この標準偏差は、次にアルファと呼ばれる典型的に2.0である因子を乗じられて、閾値が生成される。相互相関出力は、次にこの閾値と比較され、相互相関出力が閾値を超える回数が計数される。計数値が、この応答時系列データの得点となる。
【0137】
応答時系列データに関する得点を計算するこの方法は、タウのデータ・ブロックに含まれるデータ・パターンがデータの残りの部分でどのくらい頻繁に繰り返されるかの尺度、従って、サンプルによってどれほど多くのデータ・パターンが生成されるかの尺度を与える。
【0138】
得点は、タウの期間に対してデータによる応答時系列について計算でき、サンプルによって生成されるデータ・パターンの適切な取得を保証する。
【0139】
得点の値は、変動する刺激ガウス白色雑音振幅又はオフセットなどの変化する条件下でサンプルについて計算できる。得点の値の結果の組を比較することによって、サンプルから最も強いデータ・パターンを生成するサンプル条件を同定することが可能になる。これらの条件は、次に化学システム又は生体システムに効果を与える場合に使用されるデータを取得するために利用できる。
【0140】
1つの実施の形態で、システムは、MIDSユニットから記録されるSQUIDデータ(典型的には、60秒間にわたる)を表すWAV形式のファイルから時系列データを抽出する。時系列の冒頭部付近から間隔タウ(典型的には、5から20ms)のデータ・ブロックが取り出されて、データの残りの部分との間で相互相関を取られ、相互相関データ・セットが得られる。
(相互相関の詳細)
【0141】
信号x(t)およびy(t)の相互相関Rxy(t)は、次のように定義される。
【0142】
【数1】
【0143】
ここで、記号
は、相関を意味する。
【0144】
CrossCorrelationVIの離散的実現は、次のようになっている。hがシーケンスを表し、その指数は、負になることもあるとする。nは、入力シーケンスX中の要素の数、mは、シーケンスY中の要素の数とし、それらの範囲外にあるXおよびYの指数付要素は、ゼロに等しいと仮定する。
【0145】
xj=0, j<0 又は j>=n
および
yj=0, j<0 又は j>=m
そうすると、CrossCorrelationVIは次式を用いてhの要素を得る。
【0146】
【数2】
j=−(n−1),−(n−2),...,−2,−1,0,1,2,...,m−1
【0147】
出力シーケンスRxyの要素は、次式によってシーケンスh中の要素と関連付けられる。
【0148】
【数3】
i=0,1,2,...,size−1,size=n+m−1
【0149】
ここでsizeは、出力シーケンスRxy中の要素の数である。
【0150】
次に、この相互相関データ・セットの平均値が計算され、因子アルファ(典型的には、1.1)が乗ぜられて閾値が得られる。相互相関データ・セットが閾値を交差する合計回数が計数され、この計数値が得点値(Score)として出力される。
【0151】
Score値は、本質的に相互相関データ・セットがいかにぎざぎざしているかの尺度であり、従って初期データ・ブロック中のパターン(長さタウ)が後続データ中で何回繰り返されるかの尺度である。
【0152】
このような反復パターンは、初期データ・ブロック中に存在するか存在しないか分からないので、初期データ・ブロックの位置およびサイズを変化させて、結果のScore値の統計的重要度が決められる。
【0153】
Score結果の例が図13に示されている。上側のグラフは、X軸にファイル番号、Y軸にタウ、Z軸にScoreを示している。ファイル番号は、捕捉パラメータを変化させることによって蓄積されたファイルのシーケンスに対応する。この例では、MIDS刺激オフセットは、+100mVから+250mVまで9回繰り返し増分される。タウは、初期データ・ブロックの期間を意味し、これは、任意のデータ・パターンを確実に捕捉するために増分される。X、Y各座標におけるScoreは、カラー・マップで示されている。この例では、0のScoreを黒で、5000を青で、そして10000を白で示し、中間の値を中間の色で示している。
【0154】
ユーザは、赤いカーソルを手で動かして水平方向又は垂直方向に強度グラフをスライス切断することができる。この例では、水平方向にスライスされていて、スライス断面のデータが下側の線形グラフに示されている。
【0155】
下側の線形グラフは、Score値がどのように変化するかを示している。この例では、+105mVから+130mVの範囲のMIDSオフセットで取得されるファイルについて一般にScoreが高くなる傾向が示されている。主題は、オフセットを増分するごとに、それに同期してそれ自身9回繰り返している。これは、残りのオフセットについて存在しないが+105mVから+130mVのオフセットについて存在するデータ・パターン(未知の構造を有する)を示す。
(E.位相空間比較)
【0156】
信号解析得点を決める別の実施の形態で、応答時系列データについて位相空間が計算され、この位相空間は、別の時系列データからの位相空間との間で相関を取られる。最初に、応答時系列データを用いてアベレージ・ミューチュアル・インフォメーション(Average Mutual information)が計算される。アベレージ・ミューチュアル・インフォメーションに関するアルゴリズムは、既知である。第1の極小は、最適なタウ値に対応する。このタウ値は、次にタケンス(Takens)の定理を使用してN次元位相空間を計算するために使用される。タケンスの定理に関するアルゴリズムは、既知である。
【0157】
結果の位相空間構造は、次に別の時系列からの位相空間構造と比較される。比較は、典型的には、サンプルが存在する場合の収集データとサンプルが存在しない場合の収集データとの間で行われるか、あるいは、サンプルが存在する場合と溶剤のみが存在する場合との間で行われる。
【0158】
比較は、位相空間領域全体を通して位相空間密度を比較することで実行される。これは、確率アレイSの自然対数を確率アレイRで除することによって形成される商の絶対値の重み付け平均を計算することによって計算される。確率アレイSおよびRは、サンプルの位相空間および基準位相空間を有限個のビンに収め、次に1に正規化することによって形成される。比較の結果は、得点値である。
【0159】
得点値は、変動する条件、例えば、変化するガウス白色雑音刺激振幅又はオフセットなどの条件下にあるサンプルについて計算できる。得点値の結果セットの比較によって、サンプルから最も強いデータ・パターンを生成するサンプル条件の同定が可能になる。これらの条件は、次に化学システム又は生体システムに効果を与えるときに使用されるデータを取得するために使用できる。最初に、入力の時系列データ(「入力電圧アレイ(Voltage Array in)」)をスケーリングして、その値がゼロから典型的には1000である「位相空間サイズ(Phase Space Size)」までの範囲に入るようにする。次に、これらの値を整数化する。これらの整数は、次に典型的には、1000×1000の二次元アレイである位相空間の指数として使用される。期間「タウ」によって分離された一対の整数を用いて、位相空間中のX、Y位置を指定し、その位置にある値を値1だけ増分する。時系列データに沿ってスライドしながら、可能なすべての整数対を使用することによって、位相空間に正味のパターンが生成される。
【0160】
サンプルおよび基準からなど2つの異なる位相空間を比較するために、2つの位相空間(サンプル・アレイ(Sample Array)および基準アレイ(Reference Array))は、それらの合計によって除することによって正規化され、それぞれPs(xyz)およびPr(xyz)を得る。アレイ中の各要素は、次に正味の差分を計算するために使用される。
差分=(sum
((sqrt(Ps(xyz)*Pr(xyz)))*(abs(ln(Ps(xyz)/Pr(xyz))))))/(sum(sqrt(Ps(xyz)*Pr(xyz))))
【0161】
差分は、与えられた刺激雑音振幅およびオフセットなどの特別なデータ取得条件に対する得点値を表す。この差分計算を振幅およびオフセットの範囲にわたる1組のデータに適用することによって、1組の得点値が得られる。最も高い得点値は、サンプルがデータに対して最も大きい非線形効果を有する場合を示し、従って、生物学的トランスダクションにおいてそれの有効性を示唆する。
【0162】
5つの採点アルゴリズムのうちで、好ましいものは、(i)FFT自己相関法(アルゴリズムB)、(ii)位相空間比較(アルゴリズムE)又は(iii)ヒストグラム法(アルゴリズムA)に関するものである。
(IV.トランスダクション装置およびプロトコル)
【0163】
この節では、上の節IおよびIIで述べた方法に従って生成および選択された信号によってサンプルをトランスデュースするための装置および方法について説明する。上で述べた方法に従って形成される最適化された時間ドメイン信号である、これらの実験で採用された信号は、発明に従う信号が各種のインビトロ・システム又は哺乳類システムにおいてコンパウンド固有の応答を生成する能力を実証する。
【0164】
図14は、発明に従って、エージェント固有の信号によってサンプルをトランスデュースするための装置のレイアウトを示す。この特別なレイアウトは、トランスダクション・コイル内部に保持され、電磁信号に晒された3つのサンプル444、446および448と、コントロールとしてのサンプル450と、化学誘発作用によるコントロールとしてのサンプル452を含む5つのサンプルを受け入れる。実験のために図15のシステムが使用される。患者の処置のために使用するのであれば、448、450、452等のいくつかの要素が省略される。
【0165】
信号がCDに記録され、プリアンプ456およびオーディオ・アンプ458を通して記録されたCD454上で再生される場合、エージェント固有の信号によるトランスダクションは、サンプルに対して最適化されたエージェント固有の信号を「再生する」ことによって実行される。この信号は、図示のように別々のチャネルを通して電磁コイル444および446に供給される。1つの実施の形態で、ソニーのCDP CE375型CDプレーヤが使用される。プレーヤのチャネル1は、アドカム(Adcom)のGFP750型プリアンプのCD入力1に接続される。チャネル2は、アドカムのGFP750型プリアンプのCD入力2に接続される。CDは、各チャネルからの同一信号を再生するために記録される。あるいは、CDは、各チャネルからの異なる信号を再生するために記録される。サンプル448のコイルは、主として実験のためのコントロールとするガウス白色雑音場を発生させるために使用される。例えば、ゼネラル・ラジオ(GR)のアナログ雑音発生器は、このコイルのためのガウス白色雑音源を提供する。あるいは、このコイルは、第2のクラウン(Crown)・アンプを通して任意の予め記録されたトランスダクション信号を再生するために使用できる。
【0166】
図15は、図14のサンプル444、446および448の任意のものに代表されるサンプルのトランスダクション装置466を示す。装置は、電磁石470を収納するチェンバ468と、チェンバ内の温度などの条件をモニタするための各種プローブを含む。電磁石は、ベース474上に載っていて、従来のように、ドーナツ型の強磁性体コアおよびワイヤ巻線を含む。
【0167】
電磁石は、サンプルが設置される領域でのそれの磁場強度、勾配および方位を制御するために1又は複数の巻線を有する。
【0168】
トランスダクション装置の1つの実施の形態で、コイルは、コイル間の性能を均等化するために、アメリカン・マグネチックス(American Magnetics)によって加工製造されたものとしている。各コイルは、8番ゲージ(米国電線規格)矩形銅製マグネット・ワイヤを416ターン含み、エナメル被覆されて、直径約5cm(約2インチ)の空芯を含む。各コイルは、温度上昇を摂氏15度以下に抑えながら、11ヘルツで実効値10アンペア、実効値10ボルトにおいて、中心部に約1500ガウスを発生できる。
【0169】
トランスダクション・コンポネントが低磁場のNMR信号であるか、あるいは、NMRコンポネントを含む場合での使用に適したトランスダクション装置の第2の実施の形態では、一対のコイルは、直径とほぼ同じ距離だけ軸に沿って離されて、ヘルムホルツ構成を形成する。両方のコイルのなかを同じ方向に電流が循環する。この構成は、対の中心部付近で磁場の均一性を最適化する。
【0170】
これもトランスダクション・コンポネントが低磁場のNMR信号であるか、あるいは、NMRコンポネントを含む場合での使用に適したトランスダクション装置の第3の実施の形態では、ヘルムホルツ・コイルの2つの対が互いの上に重なって巻かれ、1つの対は、両方のコイルで同じ方向に循環する電流を有し、他方の対は、逆の方向に循環する電流を有する。この構成は、制御された磁場強度とともに制御された磁場勾配を発生する。
【0171】
トランスダクション装置の別の一般的な実施の形態では、いくつかのヘルムホルツ・コイルの対は、互いに直交するよう構成される。この構成は、サンプルに印加される磁場の構造をかなり柔軟に制御することを許容する。例えば、1つの軸に沿って静磁場を印加することができ、別の軸に沿って可変磁場を印加することができる。そのような構成は、生物学的システムにNMRタイプの信号を供給するために有用なはずである。第1のコイルに一定の電流を流すことによって7マイクロテスラの静磁場が発生し、また第2のコイルに変化する電流を流すことによって、より小さい振幅の変動磁場が発生する。変動電流は、1組の正弦波を互いに加えることによって発生する。ここで、正弦波は、7マイクロテスラにおける計算されたNMRスペクトルに対応する周波数を有する。
【0172】
トランスダクション装置は、サンプルが設置された領域の環境から制御できない外部場を最小化する目的で、遮蔽された容器のなかに置かれる。
【0173】
遮蔽の1つの実施の形態で、トランスダクション装置は、トランスダクション装置よりも少なくとも3倍大きい、大型の容器のなかに設置される。この大型容器は、アース・グラウンドにつながれた銅メッシュで裏打ちされている。このような容器は、一般に「ファラデー・ケージ」と呼ばれる。銅メッシュは、約10kHzよりも高い外部環境電磁信号を減衰させる。
【0174】
遮蔽の第2の実施の形態で、トランスダクション装置は、アルミニウム板又はその他の固体導体を含み、構造的な不連続性が最小の大型の容器内に設置される。このような容器は、約1kHzよりも高い外部環境電磁信号を減衰させる。
【0175】
遮蔽の第3の実施の形態で、トランスダクション装置は、トランスダクション装置よりも少なくとも5倍大きい、非常に大きい3つの直交するヘルムホルツ・コイル対の組のなかに設置される。ヘルムホルツ・コイル対の幾何学的中心に近く、またトランスダクション装置からいくぶん離れて、フラックスゲート型磁気センサ容器が位置している。フラックスゲート型磁気センサからの信号は、リンドグレン社(Lindgren,Inc.)の磁気補償システム(Magnetic Compensation System)のようなフィードバック装置に入力され、フィードバック電流は、ヘルムホルツ・コイルを駆動するために使用されて、ヘルムホルツ・コイルを駆動して内部領域の磁場を強制的にゼロにする。ヘルムホルツ・コイル対が非常に大きいので、この領域もまたそれに応じて大きい。更に、トランスダクション装置は、比較的小型のコイルを使用するので、それらの場は、フラックスゲート型磁気センサと干渉するほど十分遠くまで広がることがない。このようなヘルムホルツ・コイル対の組は、0.001Hzから1kHzの間の外部環境電磁信号を減衰させる。
【0176】
遮蔽の第4の実施の形態で、トランスダクション装置は、上で述べたように銅メッシュ又はアルミニウム容器のいずれかのなかに設置され、その容器自体が上で述べたヘルムホルツ・コイル対の組のなかに位置する。このような構成は、それらを組み合わせた範囲にわたって外部環境電磁信号を減衰させる。
【0177】
動作時には、サンプル、例えばインビトロ・システム又は哺乳類システムの対象物、あるいは、哺乳類システム対象物の選ばれた標的エリアは、トランスダクション装置のコイル内部の中央に設置される。従って、例えば、コイルは、支持ベッドの対向する端部、あるいは、ベッドの対向する側に位置し、また患者の頭部の対向する側に設置される。次に、図15に示されたものと同様な信号発生装置を使用して、コイルが駆動されて、エージェント固有の時間ドメイン信号、好ましくは、節IIIで述べた採点アルゴリズムの1つによって選ばれたものによってシステムがトランスデュースされる。
【0178】
トランスダクション・パラメータ、すなわち、システムが晒される選ばれたトランスダクション条件は、(i)印加された時間ドメイン信号の電圧、(ii)印加された信号の時間長および(iii)印加された信号のスケジューリングである。印加電圧は、ゼロよりもわずかに大きい値から約100ボルトまでの範囲に及ぶ。印加の時間は、数分間から数日に及ぶ。スケジューリングというのは、信号のオンとオフとの交番周期を意味し、これらの交番周期は、信号がオンとオフの条件間を急速に交番する場合には、非常に短く、例えば数秒間でよいが、例えば数時間のオンと数時間のオフといった延長された期間とすることもできる。
【0179】
以下で明らかになるように、また発明の1つの態様に従えば、最適なエフェクタ時間ドメイン信号、そして哺乳類システムをトランスデュースするための最適化されたトランスダクション条件は、哺乳類システムの簡略化されたインビトロ類似物でトランスダクションを研究することによって同定できる。
(V.哺乳類システムに対してエージェント固有の効果を生成できる時間ドメイン信号の発生方法)
【0180】
上の節IIおよびIIIは、インビトロ・システム又は哺乳類システムでエフェクタとして振舞うことが知られているコンパウンドなどのエージェントに対して低周波時間ドメイン信号を発生させて、記録されたもののうちから最適な時間ドメイン信号を選択する方法について述べている。要約すれば、節IIで詳細に述べたように、哺乳類システムに効果を及ぼすことのできるエージェントが、磁気的および電磁的に遮蔽されたサンプル容器内に設置され、例えば、サンプル容器を取り囲むヘルムホルツ・コイルによって選ばれた磁場刺激がサンプルに印加され、次に、注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号が、例えば、低温容器内のSQUIDによって記録され、信号の記録は、複数の異なる刺激磁場条件、例えば、異なる雑音又はオフセット電圧の各々について行われる。典型的には、約50から1000個の時間ドメイン信号によって適当な信号組が構成され、そこから哺乳類システムをトランスデュースするのに最適な信号を見つけることができる。例えば、信号は、50個の異なる磁場刺激条件の各々において、10個の異なるサンプル濃度の各々について記録され、500個の時間ドメイン信号が生成される。
【0181】
異なる磁気刺激条件下において、またオプションとして異なるサンプル濃度について、そのエージェントに関する複数の低周波時間ドメイン信号が記録され、次に、上の節IIIで述べた採点アルゴリズムの1つを採用して、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析される。この工程で、異なる選ばれた磁場刺激における記録を表している各時間ドメイン信号が採点されて、最も高い得点を有する信号、すなわち記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数が最も多い場合を意味する信号が候補として同定され、そこからインビトロ・システムをトランスデュースできる最適な信号が同定できる。典型的には、この採点法によって最も高い得点を有する3−10個の信号が同定される。
【0182】
発明の1つの態様に従えば、上で採点アルゴリズムによって同定された時間ドメイン信号は、更により複雑な哺乳類システム中の標的生体とエージェントとの間の相互作用を反映する簡略化されたモデルとなるように設計されたインビトロ・システムにおいて高得点信号の各々について試験することによって哺乳類システム中での有効性について選択される。上で述べたように、インビトロ・システムは、またトランスダクション・コイルに印加される信号電圧、トランスダクション時間およびトランスダクション信号へのシステム露出のスケジューリングを含む最適なトランスダクション・パラメータを同定するのにも有用である。
【0183】
多くの研究の焦点であった1つの例では、エフェクタ・エージェントは、タクソール(パクリタキセルとしても知られている)であり、これは、微小管中へのチューブリン重合の刺激および安定化によって働くことが知られた抗癌エージェントである。インビトロで、タクソールは、細胞の微小管の運動に干渉し、細胞が細胞分裂で拘束されるようにし、細胞間の輸送を中断させ、細胞形状、細胞運動および細胞膜の分子の分布を乱す。すなわち、タクソールがインビトロでのチューブリン重合を促進する能力は、インビトロでのそれの活動機構と直接関連している。
【0184】
選ばれた最も有効なタクソールに関連する時間ドメイン信号を選択するインビトロ試験は、添加されたコンパウンドのチューブリン重合活動度を決めるために使用される標準的なチューブリン凝集分析であった。この分析は、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.Aの第70巻、ページ765−768(1973)にM.L.Shelanski、F.GaskinおよびC.R.Cantorが発表した「添加ヌクレオチド構造が存在しない微小管重合(Microtubule assembly in the absence of added nucleotides)」と、Biochemistry第16巻、ページ1754−1762(1977)にJ.C.LeeおよびS.N.Timasheffが発表した「子牛脳の微小管のインビトロ再構成:溶液変数の効果(In vitro reconstitution of calf brain microtubules:effects of solution variables)」に述べられている。
【0185】
分析プロトコルは、動的モードで340nmに設定されたスペクトロフォトメータを使用して、キュベット中で1回の分析を実行するように設計された。HTS−チューブリンは、サイトスケルトン社(Cytoskeleton,Inc.)から購入して、凍結乾燥されたタンパク質のように複数のバイアル瓶に入れて供給された。凍結乾燥されたチューブリンは、最終的な濃度1.5mg/mlにチューブリン重合バッファ(GPEM)に再懸濁された。分析を始める前に、スペクトロフォトメータは、動的モードに設定される。チューブリン重合バッファを空にして、スペクトロフォトメータを340nmでゼロにする。分析中、データは、必要に応じて10秒、30秒又は60秒ごとに収集される。平均化の時間は、1秒に設定された。下記で報告される研究では、分析が20分間実行された。
【0186】
インビトロ試験の1つのグループでは、最終濃度6mg/mlにCremophore(登録商標)中に懸濁されたタクソールのサンプルから低周波信号を記録することによってタクソール固有の時間ドメイン信号が得られた。信号は、DCオフセットを注入された状態で、10から241mVの間で増分1mVの雑音レベル設定で記録された。この注入された雑音レベル範囲にわたって合計241個の時間ドメイン信号が得られ、これらを上で詳細に説明したFFT自己相関アルゴリズムによって解析し、更なるインビトロ試験のための8個の時間ドメイン・タクソール信号が得られた。これらのうちの1つ、M2(3)と名づけられたものは、以下で説明するインビトロ・トランスダクション研究の8個の信号のうち最も効率的なものに含まれる。
【0187】
チューブリン重合反応は、チューブリンを1.5mg/mlの濃度で次のような重合条件に設定されたGPEMバッファに晒すことによって実行された。(i)バッファ(コントロール)、(ii)チューブリンのみ(第2のコントロール)、(iii)最終濃度4μMに添加されたタクソール、(iv)およそ1.693294mGの磁場を生成すると計算されたトランスダクション電圧において20分間にわたってトランスデュースされた上からのM2(3)タクソール信号。340nmにおける光学吸収の変化が各サンプルについて連続測定され、OD340データを使用して、トランスダクション研究の間で1分間の間隔ごとにチューブリン重合レート(340nmにおいて、dA/分で)が計算された。
【0188】
研究の結果は、1、2、3、4および5分の時点で、レート又はチューブリン重合として表わされて、それぞれ図16A−16Fに棒グラフで示されている。各図で、M2(3)1、M2(3)2およびM2(3)3は、同じ信号を表すが、わずかに異なる磁場レベルの下で、別々のトランスダクション・チェンバ中でトランスデュースされたものである。データは、わずか1分後でさえ、M2(3)トランスダクション信号が、2つのコントロールと比べて、しかもタクソール自身と比べてもチューブリン重合レートに顕著な増大を生成するのに有効であることを示している(図16A)。2分では(図16B)、3つのM2(3)信号のうちの2つの重合レートは、タクソールを含むサンプルについてと同様に、顕著に増大した。これらの傾向は、時点3、4および5分についても続き、5分でタクソール自身による重合レートが信号トランスダクションによるチューブリン重合レートに追いついている。
【0189】
反応のVmaxも20分の分析時間の終わりに各サンプルについて計算された。チューブリン重合化分析は、各々が異なるVmax値を有する3つの別々の事象を含むことが知られているが、分析全体で最大の反応レートを表す1つの合成Vmaxが決められ、これらの値が図17にプロットされている。明らかに、コントロールとなるVmax値は、両方とも約0.2と0.3との間にある。濃度4μMのタクソールは、1.8に近い最高のVmax値を示したが、タクソール信号のサンプルの2つは、これも高く、1.4を少し超えている。第3のタクソール信号のサンプルは、ずっと小さいが、それでも本質的にコントロール値を超えている。
【0190】
上で詳細に説明した方法に従って生成および同定された他のタクソール時間ドメイン信号によるトランスダクションについて複数の同様な研究が実行された。得られた結果は、上で説明したのと類似していて、信号ごとに、また異なる時点における同じ信号について、観測されたチューブリン重合の範囲は、変動するが、重合エージェントとしてのタクソール自身についても同程度の変動が観測されている。加えて、チューブリン・サンプルを白色雑音に晒すことによって、コントロール・レベルを統計的に超えるチューブリン重合活動を起こさなかった。
【0191】
上の結果に基づいて、時間ドメイン信号M2(3)およびインビトロ分析においてチューブリンで良好な活動度を示した3つの付加的タクソール固有の低周波時間ドメイン信号が哺乳類システムでのトランスダクション研究のために選択された。信号は、図18で信号A、B、CおよびD(M2(3)信号)と表記されている。この研究で、各々が10匹のマウスを含む5つのグループがそれぞれ、5×105U87グリア芽腫細胞で右前頭葉に注入され、その1日後にタクソール信号での処置が開始された。この研究で使用されたトランスダクション装置は、コイル巻線を備えた直径61cm(2フィート)の直角シリンダであった。これらのシリンダは、標準的なマウス用又はラット用のケージを受け入れることができ、そのためマウスは、定常的にMIDS再生信号に晒される。処理の間、各グループの10匹のマウスすべては、給餌および給水の間、1つのケージに入れられて、連続的再生の下で大型トランスダクション・コイルの中心円筒キャビティのエリア内に保たれた。この結果、60日の研究期間の約90−95%にあたる連続した露出時間を実現できた。処置には、研究の全過程にわたり、80−110Gの間の磁場にわたって1掃引/秒の掃引周波数で連続的に掃引することによってコイルに1つ又は4つのタクソール固有の信号が含まれる場合と信号が含まれない場合とがあった。すなわち、1つのグループの10匹の動物のそれぞれに対して、掃除と給餌のための時々の中断のみで、選ばれた磁場範囲にわたり信号を掃引することによって、各信号が連続的に再生された。
【0192】
研究の結果は、各グループ内で60日の期間を生き延びた動物の数としてプロットされ、図18にプロットされている。タクソールのみ(コンパウンド)の効果は、この研究で調べられていない。それは、多分、血流の脳障壁を効率的に通過する能力に欠けているせいであろう、脳への配給がうまくいかないことが知られているからである。明らかに、コントロール・グループの動物10匹すべてが34日までに死亡しており、タクソール信号Aによる処置についても同じ生存割合が得られた。しかし、チューブリン重合化分析でチューブリン重合を促進するために上で示した時間ドメイン信号であるタクソール信号Dと、タクソール信号Bは、両方とも、生存割合の顕著な改善を示した。信号Dグループのマウスは、46日目で20%の生存割合を示し、また信号Bグループのマウスは、最終的に20%の生存割合を示した。
【0193】
この結果、低周波時間ドメイン信号は、選ばれた多様な磁場注入条件下で生成され、採点アルゴリズムによって選択され、更に哺乳類システムでのエージェントの作用機構を模擬するインビトロ・システムでの選択を経た場合、哺乳類システムに対するエージェント自身の効果を模擬するために使用できることが実証された。
【0194】
上で、タクソールおよびインビトロ・チューブリン重合化分析に関して、信号トランスダクションによるタクソール関連の抗癌効果を生成するための信号を選択するための有効な時間ドメイン信号を発生および選択するシステムについて説明した。哺乳類システムの病気を処置するときに使用される多様な医薬が、インビトロ・システムにおいて医薬によって生成され、哺乳類システム・ホストに同様な標的医薬の相互作用を生成するのに有効な低周波時間ドメイン信号を同定するモデルとなる標的医薬を同定できたことを理解されよう。
【0195】
例えば、チューブリンに結合するように働く複数の医薬を、同様なインビトロ・チューブリン分析によって最適化された時間ドメイン信号について同様に試験できる。そのような医薬には、タクソールのほか、ドセタキセル(タキソテール)、エポチロン、ディスコデルモライド、コルヒチン、コムブレタスタティン、2−メトキシエストラジオール、メトキシベンゼン・サルフォンアミド・エストラムスチンおよびビンブラスチン(ベルバン)、ビンクリスチン(オンコビン)、ビノレルビン(ナベルビン)、ビンフルニン、クリプトフィシン、ハリコンドリン、ドラスタチンおよびヘミアスタリンを含むビンカ・アルカロイドが含まれる。
【0196】
別の例として、非常に多くの医薬は、それらの特殊な細胞レセプタ、例えばGタンパク・レセプタに結合する能力を通して機能する。インビトロ試験のために、例えば、観測すべき細胞の信号トランスダクション効果を許容する条件下で培養できる組み換えられた蛍光タンパク質の発現を通して、しばしば標的レセプタに結合するエージェントの検出を許容するように設計された遺伝子操作されたゲノムを伴う多くの異なる哺乳類システム細胞が存在する。すなわち、この処置モデルにおいて、トランスデュース・エージェントは、レセプタ結合分子であり、インビトロ・システムは、エージェント結合に応答して検出可能な細胞応答を生成する細胞培養システムであり、哺乳類システムは、結合エージェントによる処置に反応する病状を有する対象哺乳類システムである。
【0197】
同様に、複数の医薬は、溶解しやすい、あるいは膜結合性エンザイムの活動を禁止する能力を通して機能する。インビトロ試験のために、標的エンザイムは、同様に、検出可能な基質に対するエンザイム活動度の増加又は減少に伴って、例えば、切断発色効果によってエンザイム活動に対する医薬効果を検出できるインビトロ・エンザイム反応分析に適用することができる。このように、この処置モデルで、トランスデュース・エージェントは、エンザイム結合エージェントであり、インビトロ・システムは、エージェントに応答してエンザイムの運動に検出可能な変化を生じるエンザイム分析反応であり、哺乳類システムは、通常は、結合エージェントによって処置される病状を有する対象哺乳類システムである。
(VI.トランスダクションNMR信号の形成)
【0198】
発明の1つの実施の形態で、生体システム(下記参照)をトランスデュースするために使用される低周波信号は、トランスデュース・エージェント、例えば、治療薬の低周波NMRスペクトル信号である。
【0199】
NMRスペクトル、例えば、従来の高磁場NMR信号は、一定強度の静磁場に置かれたときに、サンプル溶液に特徴的な一連の周波数バンドを含む。プロトンNMRで、水素原子核のラーマー周波数は、サンプル分子中で発生する局所遮蔽効果およびスピン結合プロセスによって複数の周波数バンドに分離する。水素原子核について、磁気回転比は、42.58MHz/Tであり、従って、7Tの典型的なNMRマシンでは、ラーマー周波数は、(42.58MHz/T)*(7T)=300MHzで、数ヘルツ離れたバンドに分離する。7μTというずっと弱い磁場の中の水素原子核については、ラーマー周波数は、(42.58MHz/T)*(7μT)=300Hzとなり、ここでも数ヘルツ離れたバンドに分離する。このように、もし磁場の強度を下げれば、周波数帯は、それに対応して下方にシフトするが、(スピン結合プロセスによる)分離は、同じである。任意の局所遮蔽効果は、低い磁場強度において無視できる。
【0200】
高磁場装置で得られたデータを使用して、低磁場強度のNMRスペクトルを計算するために、次のような操作が実行される。例えば、7Tの磁場において、高磁場NMR装置が、分子上のメチル基内でのスピン結合プロセスによって、1.03ppm、1.13ppmおよび1.23ppmの3つのピークを生じ、TMS標準が、0.00ppmにピークを生ずると仮定する。TMS標準に対するメチル・バンドの周波数は、ppmシフトの差分にラーマー周波数を乗じたものになる。
(1.03ppm−0.00ppm)*300000000Hz=310Hz
(1.13ppm−0.00ppm)*300000000Hz=340Hz
(1.23ppm−0.00ppm)*300000000Hz=370Hz
理論上、TMSは、顕著な化学シフトを呈さないため、それのピーク位置は、単純に300000000Hzのラーマー周波数である。このように、メチル基の実際の周波数は、次のようになる。
300000000Hz+310Hz=300000310Hz
300000000Hz+340Hz=300000340Hz
300000000Hz+370Hz=300000370Hz
もし化学シフトがなければ(低磁場でのように)、メチル基の周波数は、ラーマー周波数を中心としたものとなり、それから遠ざかる方向にシフトしない。すなわち、メチル中央バンドは、ラーマー周波数に中心を持ち、2つのサイド・バンドは、ラーマー周波数に対して+30Hzおよび−30Hzに位置するはずである。
370Hz−340Hz=+30Hz
310Hz−340Hz=−30Hz
7マイクロテスラの磁場中でのラーマー周波数は、(42.58MHz/T)*(7μT)=300Hzである。すなわち、メチル基は、中央バンドをラーマー周波数300Hzに示し、2つのサイド・バンドを300Hz+30Hz=330Hzと300Hz−30Hz=270Hzとに示す。従って、メチル基の正味のスペクトルは、330Hz、300Hzおよび270Hzとなる。
これは、7μTの磁場で発生するはずとして理論的に計算されたNMRスペクトルである。この計算は、最後の周波数が負になるほど低くない低磁場強度についてのみ有効である点に注意すべきである。
【0201】
別の方式として、与えられたエージェントの低周波NMR信号は、磁気信号を検出するためにチューニングされていない超伝導量子干渉デバイス(SQUID)磁力計(上を参照)を使用して、ミリテスラの磁場における低磁場NMR検出によって直接発生させることができる。すなわち、上で述べた、低磁場NMRモードで動作する信号発生装置を採用して低磁場NMR信号を直接発生させることができる。
【0202】
いったん、低磁場NMR信号が計算又は生成されると、トランスダクション信号が構築される。これは、低磁場スペクトルの逆フーリエ変換を計算して時系列データを発生させることによって行うことができる。この時系列データは、また低磁場NMRスペクトルに与えられたのと同じ周波数および振幅を有する1組の正弦波を一緒に加えることによって発生させることができる。この時系列データは、従って、適当な電圧発生器の電圧を制御するために使用できる。この時間変化する電圧は、次にヘルムホルツ・コイルの両端に印加され、それによって導体を通って電流が流れ、時間変化する磁場が生成される。この時間変化する磁場は、次に生物学的トランスダクションのために使用される。
【0203】
発明の別の実施の形態では、NMR(核磁気共鳴)信号の代わりにEPR(電子常磁性共鳴)信号が使用される。EPRは、電子スピン−核スピン相互作用に関連する。他方、NMRは、核スピン−核スピン相互作用に関連する。この出願でNMRデータに関して概説した手順は、EPRデータが典型的に幾分高周波域にあることを除いて、EPRデータの場合に使用すべき手順と機能的に同等である。
【0204】
発明の実施の形態についての上の詳細な説明は、発明を上で開示した精確な形態に制限又は排除する意図のものではない。説明の便宜上、発明の特別な実施の形態および例について上で説明したが、当業者には、明らかなように、発明の範囲から外れることなく各種の等価な修正が可能である。例えば、プロセス又はブロックは、与えられた順序で提示されているが、代替の実施の形態は、異なる順序で、工程を有するルーチン又はブロックを有する採用システムを実行でき、またいくつかのプロセス又はブロックを削除、移動、追加、分割、組合せおよび/又は修正することが可能である。それらのプロセス又はブロックの各々は、多様な異なるやり方で実施できる。更に、しばしば、直列的に実行されるように示されているが、それらのプロセス又はブロックをむしろ並列に、あるいは、異なる時点で実行することもできる。
【0205】
ここに提示する発明が教えることは、必ずしも上で説明したのと同じでない他のシステムにも適用できる。上で述べた各種の実施の形態の要素および作用を組み合わせて、別の実施の形態を提供することができる。
【0206】
上の特許および出願およびその他の引用文献のすべては、添付の出願文書にリストされたすべてを含めて、ここに参照によって取り込まれる。発明の態様は、必要に応じて、上で述べた各種引用文献のシステム、機能および概念を採用するように修正して、発明の更に別の実施の形態を提供するようにすることができる。
【0207】
上の詳細な説明に照らしながら、発明に対してこれらおよびその他の変更を実施することができる。上の説明が発明の特定の実施の形態について詳細に説明し、考えうる最良のモードについて述べている一方で、テキスト中で上のことがどれほど詳しく述べられていようと、発明は、多くのやり方で実施できる。信号処理システムの詳細は、それの実施の詳細においてかなりの程度変化することがあろうとも、なお、ここに開示される発明に包含される。上で指摘したように、発明の特定の特徴又は態様を説明するときに使用される特別な用語は、その用語に関連する発明の任意の特別な特性、特徴又は態様に限定するものとしてここに再定義されることを意味すると解釈されるべきでない。一般に、以下の請求の範囲で使用される用語は、上の詳細な説明の節がそれらの用語を明示的に定義しないかぎり、発明を明細書に開示された特別の実施の形態に制限すると理解されるべきでない。従って、発明の真の範囲は、開示された実施の形態のみならず、請求項のもとで、発明を実施又は実現するすべての等価なやり方を包含する。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、信号を電磁波に変換又はトランスデュースするシステムによって読出し可能な信号ならびにそのような信号を生成および適用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
化学および生化学の分野で受け入れられるパラダイムの1つは、化学的又は生化学的エフェクタ・エージェント(effector agent)、例えば、分子は、イオン、電荷又は分散による力など各種の物理化学力を介して、あるいは、共有結合又はイオン結合の切断又は形成を介して標的システムと相互作用するということである。これらの力は、エフェクタ・エージェント又は標的システムのいずれかのなかにエネルギー・モードを含んでいる。
【0003】
このパラダイムの帰結として、エフェクタ−標的システムにおいて、標的環境にエフェクタ・エージェントが存在することが要求される。しかし、この要求がエフェクタの実際の存在を要求するものであるか、あるいは、少なくとも特定のエフェクタ機能に関する、エフェクタに特徴的なエネルギー・モードの存在を要求するものであるかについては、知られていないか、理解されていない。もしエフェクタ機能の少なくとも一部を特定の特徴的エネルギー・モードによって模擬できるのであれば、システムをエフェクタに特徴的な特定のエネルギー・モードに晒すことによって、標的システムにおけるエフェクタ・エージェントの効果を「模擬する」ことが可能となる。もしそうであれば、必然的に、どのようなエフェクタ−分子のエネルギー・モードが効果的であるか、それらを測定可能な信号の形にどのように変換又はトランスデュースすればよいか、そしてそれらの信号をどのように利用すれば標的システムに効果を与えることができるか、すなわち、標的システムにおいて分子のエフェクタ機能の少なくともいくつかを模倣できるか?などの疑問が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国出願番号第60/593,006号
【特許文献2】米国出願番号第60/591,549号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】1993年発行のBendatおよびPiersol著の「相関およびスペクトル解析の工学応用(Engineering Applications of Correlation and Spectral Analysis)」
【非特許文献2】Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.Aの第70巻、ページ765−768(1973)にM.L.Shelanski、F.GaskinおよびC.R.Cantorが発表した「添加ヌクレオチド構造が存在しない微小管重合(Microtubule assembly in the absence of added nucleotides)」
【非特許文献3】Biochemistry第16巻、ページ1754−1762(1977)にJ.C.LeeおよびS.N.Timasheffが発表した「子牛脳の微小管のインビトロ再構成:溶液変数の効果(In vitro reconstitution of calf brain microtubules:effects of solution variables)」
【0006】
これらの疑問は、最近出願された共同所有の特許出願第60/593,006号および第60/591,549号(代理人整理番号38547−8010および−8011)で議論されている。出願に述べられた発明をサポートするために実行された実験によれば、標的システム(この場合、複数の生物学的システムの1つ)に対する特定のエフェクタ機能を、エフェクタ・コンパウンドの時間ドメイン信号を「トランスデュースする」ことによって生成される電磁波に標的システムを晒すことによって複製できることが実証された。先に述べた発明に従えば、時間ドメイン信号は、遮蔽された環境においてコンパウンドによって生成された信号を記録し、同時に、コンパウンドによって生成される低周波の確率現象の観察能力を強化するレベルでガウス白色雑音刺激を記録装置に注入することによって生成される。先に述べた出願で、トランスデュース信号(transducing signal)は、エフェクタ・コンパウンドの実際のコンパウンド時間ドメイン信号であった。
【0007】
エフェクタ・エージェントの実際の存在を必要とせずに、特徴的なエフェクタ−分子信号に標的システムを晒すことによってエフェクタ−分子機能を実現できることは、複数の重要で興味深い用途を生み出す。薬を投与して生物体に処置を施す代わりに、生物体を医薬固有の信号に晒すことで同じ効果を実現できる。ナノ・ファブリケーションの分野では、今や望ましい自己組織化パターンを促進できる多価エフェクタ分子の特徴的な信号をアセンブリ・システムに導入することによって、自己組織化パターンを触媒又は促進することが可能である。
【0008】
従って、磁気的なトランスダクション(transduction)環境において哺乳類システム又はインビトロ・システム(in vitro system)に対してエージェント固有の効果を及ぼすことのできる低周波時間ドメイン信号を生成および選択するための系統的な方法を採用することが望まれる。
【発明の概要】
【0009】
発明は、1つの態様において、哺乳類システムが電磁トランデューサの環境において信号によってトランスデュースされるときに、哺乳類システムに対してエージェント固有の効果を生ずることのできる信号を発生させる方法を含む。方法は、次の工程
(a)エージェントを含むサンプルを磁気および電磁遮蔽を備えたサンプル容器に設置する工程であって、ここで、サンプルは、低周波分子信号の信号源として機能し、また磁気遮蔽は、低温容器の外部にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件下で、サンプルに対して刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器に注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々について、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちから、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析されるときに、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)インビトロ・システムが電磁トランデューサの環境内で信号によってトランスデュースされるとき、エージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システム中にエージェント固有の応答を生成する能力について、工程(e)で同定された各信号を試験する工程と、
(g)インビトロ・システム中で最も大きいエージェント固有のトランスダクション効果を生ずる1又は複数の信号を選択する工程と、
を含む。
【0010】
刺激磁場の異なる条件には、(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットおよび(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された注入電圧で、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたって連続的に注入される低周波範囲にわたる掃引が含まれる。
【0011】
方法の工程(f)は、更にエージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システム中にエージェント固有の応答を発生する能力について時間ドメイン信号を試験したあとで、電磁トランデューサの環境下で印加されたトランスダクション電圧の変動を含む変化するトランスダクション条件下でエージェント固有の応答を生成する能力について信号を試験して、哺乳類システムにおけるトランスダクションに関するトランスダクション条件を最適化する工程を含む。
【0012】
記録信号のうちで、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程は、次の算術的採点法の1つによって実行される。
(i)時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲で選ばれた周波数範囲にわたり自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を生成し、FFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する方法と、
(ii)2つの時間ドメイン信号に対して一対の位相空間を計算し、算術比較を実行して2つの間の差異の尺度を提供する方法と、
(iii)fを時間ドメイン信号をサンプリングするときのサンプリング・レートとしたとき、DCから8kHzの範囲で選ばれた周波数範囲にわたり各事象ビンfについて各ビンの事象カウント数を表示するヒストグラムを生成し、ヒストグラムに対し与えられた閾値を超えるビン数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する方法と、
(iv)時間ドメイン信号の冒頭部に近い小さいデータ・ブロックと時系列の残りのものとの相互相関を取り、結果の相互相関が与えられた閾値を超える事象の発生を計数する工程と、
(v)DCと8kHzとの間で選ばれた周波数範囲において、複数の定義された期間の各々にわたり時間ドメイン信号の一連のフーリエ・スペクトルを計算し、フーリエ・スペクトルを平均して、平均のFFT信号に対して雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する方法。
【0013】
方法のなかで採用された電磁トランスデューサは、それらの間にサンプルの磁気環境を定義する一対の整列した電磁コイルを有するヘルムホルツ・コイルを含み、またインビトロ・システム中にエージェント固有の応答を生成する能力について同定された各信号を試験する工程は、インビトロ・システムを整列したコイル間に設置して、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によってシステムをトランスデュースする工程を含む。
【0014】
エージェントがインビトロでチューブリン凝集を促進する効果を持つ抗悪性腫瘍薬である場合、方法の工程(f)は、チューブリンを含むコンポジションを電磁トランスデューサの環境に設置して、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によってコンポジションをトランスデュースする工程を含む。
【0015】
別の態様で、発明は、インビトロ・システム又は哺乳類システムが電磁トランスデューサの環境で信号によってトランスデュースされるときに、システムに対してエージェント固有の効果を生成できる信号を発生させる方法を含む。方法は、次の
(a)エージェントを含むサンプルを磁気および電磁遮蔽を備えたサンプル容器に設置する工程であって、ここで、サンプルは、分子信号の信号源として機能し、また磁気遮蔽は、低温容器の外部にある工程と、
(b)(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットおよび(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された注入電圧で、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたり連続的に注入される低周波範囲にわたる掃引を含むグループから選ばれた刺激磁場条件下で、サンプルに激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器に注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々について、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちで、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)電磁トランスデューサの環境にインビトロ・システム又は哺乳類システムを設置して、工程(e)で同定された信号によってサンプルをトランスデュースすることによって、システムをトランスデュースする工程と、
を含む。
方法の工程(e)は、例えば、時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲で選ばれた周波数範囲にわたり自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を生成し、FFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程によって実行される。
【0016】
方法に採用される電磁トランスデューサは、それらの間に露出ステーションを定義して電磁環境の環境を構成する整列した一対の電磁コイルを有するヘルムホルツ・コイルを含み、また方法の工程(f)は、化学システム又はインビトロ・システムを整列コイル間に設置して、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によってシステムをトランスデュースする工程を含む。
【0017】
エージェントがインビトロ・システム中でチューブリン凝集を促進する効果を持つ抗悪性腫瘍薬である場合、工程(f)は、チューブリンを含むコンポジションを電磁トランスデューサの環境に設置して、コンポジション中で信号に依存したチューブリン凝集を生ずるのに有効な条件下で、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によってコンポジションをトランスデュースする工程を含む。
【0018】
更に別の実施の形態で、発明は、選ばれたエージェントの存在に応答してインビトロ・システム又は哺乳類システムをトランスデュースするための候補となる低周波時間ドメイン信号を生成する装置を含む。装置は、
(a)磁気的および電磁的の両方の遮蔽を備えた、エージェントのサンプルを受け入れるのに適したサンプル容器であって、サンプルは、分子信号の信号源として機能し、磁気遮蔽は、低温容器の外部にあるサンプル容器と、
(b)サンプルを容器に入れた状態で、(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセット、(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された注入電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたり連続的に注入される低周波範囲にわたる掃引を含むグループから選ばれた複数の選ばれた刺激磁場条件の各々において、容器中に刺激磁場を注入するように動作可能な調節可能なパワー源と、
(c)前記パワー源(b)によって注入された異なる刺激磁場条件の各々において、注入刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む電磁時間ドメイン信号を記録する検出器と、
(d)検出器によって記録された信号を記憶するメモリ装置と、
(e)コンピュータであって、
(i)メモリ装置に記憶された時間ドメイン信号を取り出し、
(ii)取り出した時間ドメイン信号を、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波数コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析し、
(iii)閾値を超える低周波数コンポネントの最大数を有する時間ドメイン信号を同定する
ように動作可能なコンピュータと、
を含む。
【0019】
サンプル容器は、サンプル保持領域、領域を取り囲む磁気遮蔽ケージおよび磁気遮蔽ケージ内に含まれ領域を取り囲むファラデー・ケージを有する減衰チューブでよく、ガウス雑音源は、ガウス雑音発生器とヘルムホルツ・コイルとを含み、後者は、磁気ゲージおよびファラデー・ケージ内に含まれており、また雑音発生器からの雑音出力信号を受信し、更に時間依存信号中の定常的な雑音コンポネントを除去するときに使用するために、雑音源からのガウス雑音を受信してSQUID(超伝導量子干渉デバイス)に出力するように雑音源およびSQUIDに接続されて動作する信号インバータを含む。ガウス雑音は、サンプルに注入されたガウス雑音に対して反転される。
【0020】
パワー源は、サンプルを容器に入れた状態で、サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を発生すると計算された複数の選ばれたオフセット電圧の各々について、オフセット電圧を容器に注入するように動作する。あるいは、パワー源は、サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された複数の異なる掃引電圧の各々について、少なくとも約0および1kHzの間で掃引周波数範囲にわたり連続的な掃引を注入、生成するように動作する。
【0021】
装置のコンピュータは、取り出した時間ドメイン信号を解析するときに、次のうちの1つから選ばれた解析アルゴリズムを適用するように動作する。
(i)時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲で選ばれた周波数範囲にわたり自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させ、FFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する。
(ii)2つの時間ドメイン信号に対して一対の位相空間を計算し、算術比較を実行して、2つの間の差異の尺度を提供する。
(iii)fを時間ドメイン信号をサンプリングするときのサンプリング・レートとしたとき、DCから8kHzの間で選ばれた周波数範囲にわたり各事象ビンfについて各ビンの事象カウント数を表示するヒストグラムを生成し、ヒストグラムに対し与えられた閾値を超えるビン数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する。
(iv)時間ドメイン信号の冒頭部に近い小さいデータ・ブロックと時系列の残りのものとの相互相関を取り、結果の相互相関が与えられた閾値を超える事象発生を計数する。
(v)DCと8kHzとの間で選ばれた周波数範囲において、複数の定義された期間の各々にわたり時間ドメイン信号の一連のフーリエ・スペクトルを計算し、フーリエ・スペクトルを平均し、平均のFFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てて、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する。
【0022】
哺乳類システムに対してエージェント固有の効果を生ずるシステムについても開示されている。システムは、
(1)記憶メディアであって、次の
(a)それに対して哺乳類システムが応答するサンプルを、磁気および電磁遮蔽の両方を備えたサンプル容器に設置する工程であって、ここでサンプルは、低周波分子信号の信号源として機能し、また磁気遮蔽は、低温容器の外部にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件下で、サンプルに刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器に注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々について、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちで、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)インビトロ・システムが電磁トランスデューサの環境下で信号によってトランスデュースされるときに、エージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システム中にエージェント固有の応答を発生させる能力について、工程(e)で同定された各信号を試験する工程と、
によって生成されるエージェント固有の低周波時間ドメイン信号をその上に記憶する記憶メディアと、
(2)サンプルが受け入れられる磁気環境を定義する内側領域を有する1又は複数の電磁コイルを含む電磁トランスデューサと、
(3)記憶メディアからの信号を増幅し、増幅した信号をトランスダクション・コイル(単数又は複数)に供給する増幅器と、
を含む。
電磁トランスデューサは、それらの間に内側領域を定義する一対の整列したヘルムホルツ・コイルを含む。
【0023】
更に別の実施の形態で、発明は、以下の
(a)それに対して哺乳類システムが応答するサンプルを、磁気および電磁遮蔽の両方を備えたサンプル容器に設置する工程であって、ここでサンプルは、低周波分子信号の信号源として機能し、また磁気遮蔽は、低温容器の外部にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件下で、サンプルに刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器に注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々について、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちで、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)インビトロ・システムが電磁トランスデューサの環境下で信号によってトランスデュースされるときに、エージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システム中でエージェント固有の応答を発生する能力について、工程(e)で同定された各信号を試験する工程と、
によって生成されるエージェント固有の低周波時間ドメイン信号をその上に記憶する記憶メディアを含む。
【0024】
記憶メディアで運ばれる信号は、例えばインビトロでチューブリン凝集を促進する効果を有する抗悪性腫瘍薬によって生成される。
【0025】
発明のこれらおよびその他の目的は、発明についての以下の詳細な説明を添付図面と一緒に読めばより完全に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の1つの実施の形態に従って形成される分子電磁シグナリング検出装置の1つの実施の形態の等角図である。
【図2】図1に示したファラデー・ケージおよびその内容を拡大した詳細図である。
【図3】図1および2に示した減衰チューブの1つの拡大断面図である。
【図4】図2に示したファラデー・ケージおよびその内容の断面図である。
【図5】代替の電磁放射検出システムの図である。
【図6】上記の図面の検出システムに含まれる処理ユニットの図である。
【図7】図6のそれに代わる代替処理ユニットの図である。
【図8】本システムによって実行される信号検出および処理のフロー図である。
【図9】発明のヒストグラム・スペクトル・プロット法に関するデータ・フローのハイ・レベル・フロー図である。
【図10】発明に従う、スペクトル・プロット・ヒストグラムを生成するアルゴリズムのフロー図である。
【図11】発明の方法の第2の実施の形態に従って、最適な時間ドメイン信号を同定する工程のフロー図である。
【図12】発明の方法の第3の実施の形態に従って、最適な時間ドメイン信号を同定する工程のフロー図である。
【図13】信号得点結果の例を示しており、上のグラフは、X軸にファイル番号を、Y軸にタウを、そしてZ軸に得点を示している。
【図14】典型的なトランスダクション実験におけるトランスダクション装置レイアウトを示す。
【図15】典型的なトランスダクション実験で使用されるトランスダクション・コイルおよび容器を示す。
【図16】AからFは、トランスダクション信号の開始又はタクソール添加後それぞれ1、2、3、4および5分後に計算される、ODで測定されるチューブリン重合レートを示す棒グラフである。
【図17】20分間の分析反応の最後で計算された図16のチューブリン分析に関するVmaxを示す棒グラフである。
【図18】タクソール時間ドメイン信号によるトランスダクションの後、グリア芽腫細胞を頭蓋内に注入されたマウスの生存日数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
次の用語は、特に断らない限り以下の定義を有する。
【0028】
「磁気遮蔽」は、遮蔽材料の磁気透磁率の結果として、磁束の通過を減少させ、禁止し又は防止する遮蔽を指す。
【0029】
「電磁遮蔽」は、例えば、標準的なファラデー式電磁遮蔽を指すか、あるいは、電磁放射の通過を減少させるその他の方法を指す。
【0030】
「時間ドメイン信号」又は「時系列信号」は、時間とともに変化する過渡的な信号特性を備えた信号を指す。
【0031】
「サンプル・ソース放射」は、例えば、磁場中での分子双極子の回転などのサンプルの分子運動から生ずる磁束又は電磁フラックス放射を指す。サンプル・ソース放射は、注入される磁場刺激の存在下で生成されるため、それは、また「注入された磁場刺激に重畳されたサンプル・ソース放射」も指す。
【0032】
「刺激磁場」又は「磁場刺激」は、サンプルを取り囲む磁気コイル中に、(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセット、(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された注入電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたり連続的に注入される低周波範囲にわたる掃引を含む複数の電磁信号の1つを注入することで生成される磁場を指す。サンプルの場所に生成される磁場は、注入コイルの巻線数と形状、コイルに供給される電圧および注入コイルとサンプルとの間の距離を知れば、既知の電磁的関係を用いて容易に計算できる。
【0033】
「選ばれた刺激磁場条件」は、白色雑音又はDCオフセット信号に供給された選ばれた電圧、あるいは、印加された掃引刺激磁場の選ばれた掃引範囲、掃引周波数および電圧を指す。
【0034】
「白色雑音」は、白色のランダム雑音又は確定的雑音(deterministic noise)など、同時に現われる複数の周波数を有するランダムな雑音又は信号を意味する。「ガウス白色雑音」は、ガウス状のパワー分布を有する白色雑音を意味する。「定常的ガウス白色雑音」は、後続のコンポネントを予想できないランダムなガウス状白色雑音を意味する。「構造的雑音」は、スペクトルの1つの領域から別の領域にエネルギーをシフトする対数的特性を含む白色雑音であるか、あるいは、振幅を一定に保ったままで、ランダムな時間要素を提供するように設計されている。これら2つは、ピンク雑音および均一雑音を表し、後続のコンポネントを予測できない真にランダムな雑音と対照的である。「均一雑音」は、ガウス分布でなく、矩形分布を有する白色雑音を意味する。
【0035】
「周波数ドメイン・スペクトル」は、時間ドメイン信号のフーリエ周波数プロットを指す。
【0036】
「スペクトル・コンポネント」は、時間ドメイン信号のなかで、周波数、振幅および/又は位相ドメインで測定できる単一又は反復的特性を指す。スペクトル・コンポネントは、一般的に周波数ドメインにある信号を指す。
【0037】
「ファラデー・ケージ」は、望ましくない電磁放射のためにアースへの電気経路を提供して、電磁環境を鎮める電磁遮蔽構成を指す。
【0038】
「信号解析得点」は、例えば、ここに述べられた5つの方法のうちの1つなど適当な方法によって、エージェント又はサンプルに固有な同定可能なスペクトル特徴を明らかにするために処理されたエージェント又はサンプルに関して記録された時間ドメイン信号中で、例えば、DCから1kHz又はDCから8kHzの選ばれた低周波範囲にわたって観察されたエージェント固有のスペクトル・ピークの数および/又は振幅に基づく得点を指す。
【0039】
「最適化されたエージェント固有の時間ドメイン信号」は、最大又は最大に近い信号解析得点を有する時間ドメイン信号を指す。
【0040】
「インビトロ・システム」は、ウイルス、バクテリア又は多細胞植物又は動物から分離又は抽出された構造タンパク質およびレセプタを含む、核酸又はタンパク・コンポネントなどの1又は複数の生化学コンポネントを有する生化学システムを指す。インビトロ・システムは、典型的には、生理学的バッファなどの液状媒体に分離又は部分的に分離されたインビトロ・コンポネントを1又は複数含む溶液又は懸濁液である。この用語は、また培地中のバクテリア又は真核細胞を含む細胞培養システムを指す。
【0041】
「哺乳類システム」は、哺乳類を指し、マウス、ラット又は霊長類などヒトの病気やヒトの患者に関するモデルとして役立つ実験動物を含む。
【0042】
「エージェント固有の効果」は、インビトロ・システム又は哺乳類システムがエージェント(エフェクタ)に晒されたときに観察される効果を指す。エージェント固有のインビトロ効果の例には、例えば、システムのコンポネントの凝集状態の変化、エージェントとレセプタなどの標的との結合および培地での細胞の成長又は分割の変化が含まれる。
(II.記録装置および方法)
【0043】
発明に従う信号記録装置についての以下の説明は、発明の実施の形態を説明し、完全に理解するための詳細を提供する。しかし、当業者が理解するように、発明は、それらの詳細なしでも実施できる。別の例では、発明の実施の形態の説明を不必要にあいまいにすることを避けるために、よく知られた構造および機能について詳細に説明又は示すことを行っていない。
【0044】
以下に詳細に説明するように、本発明の実施の形態は、後に遠隔で利用するために、低閾値の分子電磁信号の反復可能な検出および記録を行うための装置および方法を提供することを目的としている。磁気的に遮蔽されたファラデー・ケージは、サンプル材料および検出装置を外部の電磁信号から遮蔽する。磁気的に遮蔽されたファラデー・ケージのなかで、コイルがガウス白色雑音などの刺激信号を注入し、非鉄材料のトレイがサンプルを保持し、グラジオメータが低閾値の分子電磁応答信号を検出する。装置は、更に超伝導量子干渉デバイス(「SQUID」)およびプリアンプを含む。
【0045】
装置は、サンプルを磁気的に遮蔽されたファラデー・ケージ内で、刺激信号を発生するコイルおよび応答を測定するグラジオメータに接近して設置するように使用される。刺激信号は、刺激コイルを介して注入され、また分子電磁信号が最適化されるまで変調される。分子電磁応答信号は、ファラデー・ケージによって外部干渉および刺激コイルによって生成される場から遮蔽されて、グラジオメータおよびSQUIDによって検出および測定される。信号は、次に増幅され、任意の適当な記録又は測定装置に送信される。
【0046】
図1および2を参照すると、ファラデー・ケージの形をした遮蔽構造10が示されており、これは、外側から内に向けて、磁気遮蔽である導電性ワイヤのケージ16と電磁遮蔽を提供する内部導電性ワイヤのケージ18および20を含んでいる。別の実施の形態で、外側の磁気遮蔽は、アルミニウム−ニッケル合金被覆を有する固体アルミニウム板材料の形を含んで形成されており、電磁遮蔽は、各々固体アルミニウムを含んで形成された2つの内側壁構造によって提供されている。
【0047】
ファラデー・ケージ10は、上部が開くようになっており、また側面の開口12および14を含む。ファラデー・ケージ10は、更に互いに接近して配置された3つの銅メッシュのケージ16、18および20を含む。銅メッシュのケージ16、18および20の各々は、ケージ同士の間の誘電体障壁(図示されていない)によって他のケージから電気的に分離されている。
【0048】
側面の開口12および14は、更にファラデー・ケージ10の内部を外部の干渉源から分離しながら、ケージの内部へのアクセスを提供する減衰チューブ22および24を含む。図3を参照すると、減衰チューブ24は、互いに接近して配置された3つの銅メッシュのチューブ26、28および30(図3)を含む。外部銅メッシュのケージ16、18および20は、銅メッシュのチューブ26、28および30のそれぞれ1つに電気的に接続されている。減衰チューブ24は、更にキャップ32を被せられており、キャップには、孔34が設けられている。減衰チューブ22も同様に、銅メッシュのチューブ26、28および30を含むが、キャップ32は、含まない。
【0049】
再び図2を参照すると、ファラデー・ケージ10の内部に低密度の非鉄材料のサンプル・トレイ50が搭載されている。サンプル・トレイ50は、それを減衰チューブ22および側面開口12を通してファラデー・ケージ10から取り出せるように搭載されている。各々の長さがファラデー・ケージ10の中央垂直軸から減衰チューブ22の最も外側端までの距離よりも長い3本のロッド52がサンプル・トレイ50に取り付けられている。3本のロッド52は、減衰チューブ22の内側曲線に沿うように変形しており、そのためサンプル・トレイ50は、ロッドを減衰チューブに収めることによってファラデー・ケージ10の中央に位置するようになっている。例示した実施の形態で、サンプル・トレイ50およびロッド52は、グラス・ファイバ・エポキシを含んでいる。当業者であれば容易に理解できるように、サンプル・トレイ50およびロッド52は、その他の非鉄材料を含むこともでき、またトレイは、その他の手段、例えば1本のロッドによってファラデー・ケージ10の中に搭載してもよい。
【0050】
再び図2を参照すると、ファラデー・ケージ10の内部のサンプル・トレイ50の上方に低温デュワ100が搭載されている。開示された実施の形態で、デュワ100は、ファラデー・ケージ10の上部の開口内にフィットするように適応しており、トリスタン・テクノロジー社(Tristan Technologies,Inc.)によって製造されたBMD−6型の液体ヘリウム・デュワである。デュワ100は、グラス・ファイバ・エポキシ複合材料を含む。非常に狭い視野を備えたグラジオメータ110がデュワ100内部に、それの視野がサンプル・トレイ50を包囲する位置に搭載されている。例示された実施の形態で、グラジオメータ110は、一次の軸検出コイルであり、公称の直径は、1センチメートル、バランス値は、2%で、超伝導材料を含む。グラジオメータは、プレーナ形のグラジオメータを含む任意の形状のグラジオメータでよい。グラジオメータ110は、1つの低温直流超伝導量子干渉デバイス(「SQUID」)120の入力コイルに接続される。開示された実施の形態で、SQUIDは、カンタム・デザイン社(Quantum Design,Inc.)によって製造されたLSQ/20型のLTS dc SQUIDである。当業者であれば認識されるように、発明の精神および範囲から外れることなく、高温又は交流式のSQUIDを使用することもできる。代替的実施の形態で、SQUID120は、雑音抑制コイル124を含む。
【0051】
グラジオメータ110とSQUID120の開示された組合せは、磁場を測定するとき、5マイクロテスラ/√Hzの感度を有する。
【0052】
SQUID120の出力は、トリスタン・テクノロジー社によって製造されたSP型の低温ケーブル130に接続される。低温ケーブル130は、デュワ100内外の温度に耐えることができ、SQUID120から、ファラデー・ケージ10およびデュワ100の外部に搭載されたフラックス・ロック・ループ140に信号を伝送する。開示された実施の形態のフラックス・ロック・ループ140は、トリスタン・テクノロジー社によって製造されたiFL−301−L型のフラックス・ロック・ループである。
【0053】
図1を参照すると、フラックス・ロック・ループ140は、更にSQUID120から受信した信号を増幅して、ハイ・レベル出力回路142を介してiMC−303型のiMAG(登録商標)SQUIDコントローラ150に出力する。フラックス・ロック・ループ140は、またCC−60型の6メートルの光ファイバ複合接続ケーブル144を通してSQUIDコントローラ150に接続される。光ファイバ接続ケーブル144およびSQUIDコントローラ150は、トリスタン・テクノロジー社によって製造されている。コントローラ150は、磁気遮蔽ケージ40の外部に搭載される。光ファイバ接続ケーブル144は、SQUIDコントローラ150からフラックス・ロック・ループ140に制御信号を運び、更に測定すべき信号に対する電磁干渉の可能性を低減させる。当業者には明らかなように、発明の精神および範囲から外れることなく、他のフラックス・ロック・ループ、接続ケーブルおよびSQUIDコントローラを使用することもできる。
【0054】
SQUIDコントローラ150は、更に高分解能のアナログ−デジタル変換器152、デジタル信号を出力するための標準のGP−IBバス154およびアナログ信号を出力するためのBNCコネクタ156を含む。例示した実施の形態で、BNCコネクタは、パッチ・コード162を通してデュアル・トレース・オシロスコープ160に接続される。
【0055】
図2および4を参照すると、サンプル・トレイ50をファラデー・ケージ10内に完全に挿入したときに、サンプル・トレイ50のいずれかの側面に2要素式ヘルムホルツ変圧器60が配置されるようになっている。例示した実施の形態で、ヘルムホルツ変圧器60のコイル巻線62および64は、直流から50キロヘルツまでの範囲で動作するように設計されており、中心周波数は、25キロヘルツで、自己共振周波数は、8.8メガヘルツである。例示した実施の形態で、コイル巻線62および64は、一般に、およそ20.3cm(8インチ)の高さで10.2cm(4インチ)の幅を持つ矩形形状をしている。その他の形状のヘルムホルツ・コイルを使用してもよいが、グラジオメータ110およびサンプル・トレイ50がヘルムホルツ・コイルによって生成される場の内部に位置するような形状およびサイズのものであるべきである。コイル巻線62および64の各々は、2つの低密度の非鉄材料フレーム66および68の一方の上に搭載される。フレーム66および68は、互いにヒンジ接続されており、脚部70によって支えられている。フレーム66および68は、脚部70に対してスライド可能なように取り付けられていて、デュワ100の下側部分に対して垂直方向にフレームが移動できるようになっている。フレームが移動できることで、ヘルムホルツ変圧器60のコイル巻線62および64の調節が可能になり、磁場刺激、例えばグラジオメータ110に受信されるガウス白色雑音の振幅を変化させることができる。脚部70は、ファラデー・ケージ10の底部の上に設置又は接着される。例示した実施の形態で、フレーム66および68と脚部70とは、グラス・ファイバ・エポキシを含む。発明の精神および範囲から外れることなく、サンプル・トレイ50周りに変圧器又はコイルのその他の配置を利用することもできる。
【0056】
図4を参照すると、ファラデー・ケージおよびそれの内容の断面図が示されていて、デュワ100およびファラデー・ケージ10に対するヘルムホルツ変圧器60の巻線62の相対関係が示されている。図4でサンプル・トレイ50およびサンプル200の位置関係に注目されたい。
【0057】
再び図1を参照すると、振幅調節可能なガウス白色雑音発生器80は、磁気遮蔽ケージ80の外部にあって、電気ケーブル82によってフィルタ90を介してヘルムホルツ変圧器60に電気的に接続されている。以下で議論するように、信号記録の間にサンプルに注入される磁場刺激の信号源としてガウス雑音発生器以外のものを使用してもよい。従って以下の説明で、ガウス発生器は、信号記録の間に記録システムに注入される磁場刺激の信号源の単なる一例であることが理解される。
【0058】
図3を参照すると、ケーブル82は、側面開口12、減衰チューブ24および孔34を通ってキャップ32を通過する。ケーブル82は、同軸ケーブルであり、内部および外部を磁気遮蔽86および88によってそれぞれ囲まれたツイスト・ペアの銅導体84を含む。他の実施の形態で、導体は、銀又は金など任意の非磁性導電性材料を含むことができる。内部および外部の磁場遮蔽86および88は、キャップ32のところで終端し、図1に示されたようにキャップ端からヘルムホルツ変圧器60までの残りの距離をつなぐツイスト・ペア84の部分を残している。内部磁気遮蔽86は、キャップ32を通してファラデー・ケージ16に電気的に接続され、他方外部磁気遮蔽は、図1に示されるように、磁気的に遮蔽されたケージ40に電気的に接続されている。
【0059】
図1を参照すると、ガウス白色雑音発生器80は、同じく0−1G(ガウス)の範囲で例えば25mGの増分で選ばれた計算済みの磁場を発生させる、例えば0.01から1.0ボルトの間の選ばれた電圧振幅で、ゼロから100キロヘルツまでほぼ平坦な周波数スペクトルを発生させることができる。例示した実施の形態で、フィルタ90は、50キロヘルツを超える雑音を除去するが、発明の精神および範囲から外れることなく、他の周波数範囲を利用することもできる。
【0060】
ガウス白色雑音刺激は、他の刺激信号パターンで置き換えることができる。そのようなパターンの例には、正弦波周波数範囲のスキャン、矩形波、定義された非線形構造を含む時系列データ又はSQUID出力自身が含まれる。これらの信号は、それ自身、刺激信号を更に変調させるように、オンとオフとの間でパルス化できる。磁場遮蔽によって自然に生成される白色雑音を刺激信号の信号源として利用することもできる。1つの実施の形態で、磁場刺激の信号源は、サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の計算された磁場を生成する、例えば0.01から1.0ボルトの選ばれた電圧のようなDC電圧(オフセット)を磁場刺激コイルに供給するように動作する電圧調節可能な直流電圧源でよい。更に別の実施の形態で、磁場刺激の信号源は、好ましくは、少なくとも0から1kHz、典型的には、0から10kHz又はそれ以上に達する選ばれた周波数にわたる掃引を連続的に発生するように動作する周波数掃引発生器である。掃引時間は、好ましくは、1から10秒間であり、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた計算済みの磁場を発生させる、例えば、0.01から1.0ボルトの選ばれた電圧レベルにある。このように、掃引発生器は、選ばれた電圧レベルにおいて、1から10kHzの間の掃引周波数にわたって、5秒ごとに連続的な周波数掃引を発生させるようにセットされる。
【0061】
信号発生器の特定の機構やモデルによって束縛される意図はないが、注入される磁場刺激は、サンプル中の特定の低周波事象又はモードを刺激又は増幅するように働き、従って記録される時間ドメイン信号は、信号バックグラウンドに重畳されたこれら事象を含むことになることが分かる。注入される磁場刺激が白色雑音である場合、刺激の機構は、確率的共鳴を含む。磁場刺激が直流オフセットである場合、刺激は、核又は電子共鳴プロセスを刺激するように働き、この場合、記録される信号は、NMR又はESRコンポネントを有することになる。磁場刺激が掃引周波数発生器である場合、刺激は、サンプルが見る瞬時周波数に対応するそれら低周波事象を励起するように働く。
【0062】
ガウス白色雑音刺激発生器80は、これもパッチ・コード164を通してデュアル・トレース・オシロスコープ160の他方の入力に電気的に接続される。
【0063】
図1、2および3を参照すると、測定すべき物質のサンプル200は、サンプル・トレイ50の上に置かれ、サンプル・トレイは、ファラデー・ケージ10内に設置される。第1の実施の形態では、ガウス白色雑音刺激発生器80が用いられて、ヘルムホルツ変圧器60を介してガウス白色雑音刺激を注入する。雑音信号は、グラジオメータ110中に電圧を誘起する。グラジオメータ110中に誘起された電圧は、次にSQUID120によって検出および増幅され、SQUIDからの出力は、更にフラックス・ロック・ループ140によって増幅されてSQUIDコントローラ150に送られ、次にデュアル・トレース・オシロスコープ160に送られる。デュアル・トレース・オシロスコープ160は、またガウス白色雑音刺激発生器80によって生成される信号を表示するためにも利用される。
【0064】
ガウス白色雑音刺激信号(又は他の磁場刺激)は、刺激発生器80の出力を変更し、また図2に示すようにサンプル200周りでヘルムホルツ変圧器60を回転させることによって調節できる。フレーム66および68のヒンジ接続の軸周りにヘルムホルツ変圧器60を回転させることによって、グラジオメータ110に対するそれの位相を変更できる。望ましい位相変更に依存して、フレーム66および68のヒンジ接続は、巻線62および64が互いに平行に留まり、同時にサンプル・トレイ50周りに約30から40度回転することを可能にする。ヒンジ接続は、また巻線62および64がヘルムホルツ変圧器60によって生成される場のグラジオメータ110に対する信号位相を変更させるために、並列の位置から約60度も外れるまで回転することを許容する。位相の典型的な調節は、この平行から外れる回転を含むが、特定の状況では、例えば不規則な形状をしたサンプル200にも対応できるように他の方位が好ましいこともある。刺激は、選ばれた刺激「条件」、すなわち、白色雑音又はDCオフセットを供給する場合の選ばれた電圧で、また掃引刺激の場合は、選ばれた掃引周波数範囲、反復周期および電圧レベルで印加される。
【0065】
本発明の実施の形態は、外部干渉なしに非常に低い閾値の分子電磁信号を検出するための方法および装置を提供する。それらは、更に多様な信号の記録および処理装置によって容易に利用できるフォーマットでそれらの信号の出力を提供する。
【0066】
ここで図5を参照すると、上の図面の分子電磁放射検出および処理システムに対する代替の実施の形態が示されている。システム700は、処理ユニット704に接続された検出ユニット702を含む。処理ユニット704は、検出ユニット702の外部に示されているが、処理ユニットの少なくとも一部は、検出ユニットの内部に位置することができる。
【0067】
図5に断面図が示されている検出ユニット702は、互いに同心状に配置された複数のコンポネントを含む。サンプル・チェンバ又はファラデー・ケージ706は、金属ケージ708の内部に配置されている。サンプル・チェンバ706および金属ケージ708のそれぞれは、アルミニウム材料を含むことができる。サンプル・チェンバ706は、真空に保たれ、プリセット温度に温度制御される。金属ケージ708は、低域通過フィルタとして機能するように構成される。
【0068】
サンプル・チェンバ706と金属ケージ708との間にあってサンプル・チェンバ706を囲むように1組の平行に並んだ加熱コイル又は素子710がある。加熱素子710およびサンプル・チェンバ706に接近して1又は複数の温度センサ711も位置している。例えば、サンプル・チェンバ706の外側を囲む4つの位置に4つの温度センサを配置できる。加熱素子710および温度センサ(単数又は複数)711は、サンプル・チェンバ706内部で一定の温度を維持するように構成されている。
【0069】
遮蔽712は、金属ケージ708を囲む。遮蔽712は、サンプル・チェンバ706に対する付加的な磁場遮蔽又は分離を提供するように構成される。遮蔽712は、鉛又はその他の磁気遮蔽材料を含むことができる。遮蔽712は、サンプル・チェンバ706および/又は金属ケージ708によって十分な遮蔽が提供される場合には、オプションでよい。
【0070】
遮蔽712を囲んでG10分離を備えた寒剤の層716がある。寒剤は、液体ヘリウムでよい。寒剤の層716(低温デュワと呼ばれることもある)は、絶対温度4Kの動作温度にある。寒剤の層716を囲んで外側遮蔽718がある。外側遮蔽718は、ニッケル合金を含み、磁気遮蔽となるように構成される。検出ユニット702によって提供される磁気遮蔽の総量は、直交座標系の3つの直交する面に沿って、およそ−100dB、−100dBおよび−120dBである。
【0071】
上で述べた各種の素子は、空隙又は誘電体障壁(図示されていない)によって互いに電気的に分離される。素子は、説明の便宜上、互いに正確な縮尺で示されていないことを理解すべきである。
【0072】
サンプル・ホルダ720は、サンプル・チェンバ706のなかで手動又は機械的に位置決めされる。サンプル・ホルダ720は、下げられ、持ち上げられ、あるいは、サンプル・チェンバ706の上部から取り出される。サンプル・ホルダ720は、渦電流を誘起せず、特有の分子回転をほとんど示さないか、あるいは、全く示さない材料を含む。一例として、サンプル・ホルダ720は、高品質ガラス又はパイレックス(登録商標)を含むことができる。
【0073】
検出ユニット702は、固体、液体又は気体状のサンプルを取り扱えるように構成される。検出ユニット702には、各種のサンプル・ホルダが利用できる。例えば、サンプルのサイズに依存して、より大型のサンプル・ホルダを利用することもできる。別の例として、サンプルが空気と反応する場合には、サンプル・ホルダは、サンプルをカプセル封入するか、あるいは、サンプルの周りに気密なシールを形成するように構成される。更に別の例では、サンプルが気体状の場合、サンプルは、サンプル・ホルダ720なしでサンプル・チェンバ706内部に導入される。そのような例では、サンプル・チェンバ706は、真空に保たれる。サンプル・チェンバ706の上部にある真空シール721は、真空を保つ助けとなり、および/又はサンプル・ホルダ720を受け入れる助けとなる。
【0074】
検出コイルとも呼ばれるセンス・コイル722およびセンス・コイル724は、サンプル・ホルダ720のそれぞれ上および下に設けられる。センス・コイル722、724のコイル巻線は、中心周波数25kHzおよび自己共振周波数8.8MHzで、直流から約50キロヘルツ(kHz)の範囲まで動作するように構成される。センス・コイル722、724は、二次導関数の形で、ほぼ100%のカップリングを実現するように構成される。1つの実施の形態で、コイル722、724は、一般に矩形形状で、G10ファスナで所定の場所に保持される。コイル722、724は、二次導関数グラジオメータとして機能する。
【0075】
ヘルムホルツ・コイル726および728は、ここに説明するように、遮蔽712と金属ケージ708との間を上下に移動する。コイル726および728の各々は、互いに独立して上下動する。磁気刺激発生器コイルとも呼ばれるコイル726および728は、室温又は雰囲気温度にある。コイル726、728によって生成される雑音は、およそ0.10ガウスである。
【0076】
サンプルからの放射とコイル722、724からの放射とのカップリングの程度は、コイル722、724に対するサンプル・ホルダ720の位置を変えることによって、あるいは、サンプル・ホルダ720に対するコイル726、728の両方又は一方の位置を変えることによって変更できる。
【0077】
処理ユニット704は、コイル722、724、726および728に電気的に接続される。処理ユニット704は、コイル726、728によってサンプルに注入すべき磁場刺激、例えばガウス白色雑音刺激を指定する。処理ユニット104は、また注入された磁場刺激と混合されたサンプルの電磁放射からの誘起電圧をコイル722、724で受信する。
【0078】
図6を参照すると、発明の態様を採用した処理ユニットは、サンプル842がファラデー・ケージ844およびヘルムホルツ・コイル746との間で出し入れできるようになったサンプル・トレイ840を含む。低温デュワ850内には、SQUID/グラジオメータ検出器アセンブリ848が位置する。SQUID/グラジオメータ検出器アセンブリ848とSQUIDコントローラ854との間には、フラックス・ロック・ループ852がつながれている。SQUIDコントローラ854は、トリスタン・テクノロジー社によって製造されたiMC−303型のiMAGマルチチャネル・コントローラである。
【0079】
アナログ・ガウス白色雑音刺激発生器856は、雑音信号(上で説明したように)を位相ロック・ループ858に供給する。位相ロック・ループのx軸出力は、ヘルムホルツ・コイル846に供給され、また例えば20dBほど減衰される。位相ロック・ループのy軸出力は、信号スプリッタ860によって分割される。y軸出力の一部は、SQUIDにおける雑音消去コイルに入力される。これは、グラジオメータのための別の入力を有する。y軸信号の他の部分は、例えばテクトロニクスのTDS3000b型(例えば、モデル3032b)のようなフーリエ関数を有するアナログ/デジタル・オシロスコープなどのオシロスコープ862の入力である。すなわち、位相ロック・ループのx軸出力は、ヘルムホルツ・コイルを駆動し、反転されたy軸出力は、SQUID入力とオシロスコープ入力とに分割される。このように、位相ロック・ループは、信号インバータとして機能する。オシロスコープのトレースは、アナログ磁場刺激信号をモニタするために利用される。コントローラ854に接続されたアナログ・テープ・レコーダ又は記録装置864は、装置からの信号出力を記録し、また好ましくは、広帯域(例えば、50kHz)レコーダである。PCコントローラ866は、例えばRS232ポートを介してコントローラ854との間のインタフェースとなるMSウィンドウ・ベースのPCである。
【0080】
図7には、処理ユニットの別の実施の形態のブロック図が示されている。二相ロック・イン・アンプ202は、第1の磁場信号(例えば、「x」又は雑音刺激信号)をコイル726、728に供給し、第2の磁場信号(例えば、「y」又は雑音消去信号)を超伝導量子干渉デバイス(SQUID)206の雑音消去コイルに供給するように構成される。増幅器202は、外部基準なしでロックするように構成され、パーキン・エルマー(Perkins Elmer)の7265型DSPロック・イン・アンプでよい。この増幅器は、「仮想モード」で動作する。そこにおいて、増幅器は、初期の基準周波数にロックし、次に基準周波数を除去して自由動作を許容して「雑音」にロックする。
【0081】
アナログ・ガウス白色雑音刺激発生器200などの磁場刺激発生器が、増幅器202に電気的に接続される。発生器200は、増幅器202を通してコイル726、728に、アナログ・ガウス白色雑音刺激のような選ばれた磁場刺激を発生させるように構成される。一例として、発生器200は、ゼネラル・ラジオ(General Radio)によって製造されたモデル1380でよい。
【0082】
SQUID206と増幅器202との間に、インピーダンス変成器204が電気的に接続される。インピーダンス変成器204は、SQUID206と増幅器202との間でインピーダンス整合を提供するように構成される。
【0083】
SQUID206は、低温直流素子SQUIDである。一例として、SQUID206は、トリスタン・テクノロジー社(カリフォルニア州サンディエゴ)から市販されているLSQ/20型のLTS dC SQUIDでよい。あるいは、高温又は交流式SQUIDを利用することもできる。コイル722、724(例えば、グラジオメータ)およびSQUID206(集合的にSQUID/グラジオメータ検出器アセンブリと呼ばれる)の組合せは、約5マイクロテスラ/√Hzの磁場測定感度を有する。コイル722、724に誘起される電圧は、SQUID206によって検出および増幅される。SQUID206の出力は、およそ0.2−0.8マイクロボルトの範囲にある電圧である。
【0084】
SQUID206の出力は、SQUIDコントローラ208への入力である。SQUIDコントローラ208は、SQUID206の動作状態を制御するように、更に検出された信号の状態を調整するように構成される。一例として、SQUIDコントローラ208は、トリスタン・テクノロジー社によって製造されたiMC−303型のiMAGマルチチャネルSQUIDコントローラでよい。
【0085】
SQUIDコントローラ208の出力は、増幅器210に入力される。増幅器210は、0−100dBの範囲の利得を提供するように構成される。雑音消去ノードがSQUID206でターン・オンされたときには、約20dBの利得が提供される。SQUID206が雑音消去を提供しないときには、約50dBの利得が提供される。
【0086】
増幅された信号は、レコーダ又は記憶装置212に入力される。レコーダ212は、アナログの増幅された信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号を記憶するように構成される。1つの実施の形態で、レコーダ212は、Hz当たり8600個のデータ・ポイントを記憶し、2.46メガビット/秒を処理できる。一例として、レコーダ212は、ソニー(SONY)のデジタル・オーディオ・テープ(DAT)レコーダでよい。DTAレコーダを使用すると、生の信号又はデータ・セットを第三者に送って、必要に応じて表示したり、特殊な処理を施したりすることができる。
【0087】
低域通過フィルタ214は、レコーダ212からのデジタル化されたデータ・セットをフィルタリングする。低域通過フィルタ214は、アナログ・フィルタであり、バターワース・フィルタでよい。カットオフ周波数は、約50Hzにある。
【0088】
次に帯域通過フィルタ216は、フィルタを通ったデータ・セットをフィルタリングする。帯域通過フィルタ216は、DCから50kHzの間の帯域幅を備えたデジタル・フィルタになるように構成される。帯域通過フィルタ216は、異なる帯域に対応するように調節することもできる。
【0089】
帯域通過フィルタ216の出力は、フーリエ変圧器プロセッサ218に入力される。フーリエ変圧器プロセッサ218は、時間ドメインにあるデータ・セットを周波数ドメインにあるデータ・セットに変換するように構成される。フーリエ変圧器プロセッサ218は、高速フーリエ変換(FFT)タイプの変換を実行する。
【0090】
フーリエ変換されたデータ・セットは、相関および比較プロセッサ220への入力である。レコーダ212の出力は、またプロセッサ220への入力である。プロセッサ220は、データ・セットと以前に記録されたデータ・セットとの相関を取り、閾値を決定し、雑音消去を実行する(SQUID206によって雑音消去が提供されない場合)ように構成される。プロセッサ220の出力は、サンプルの分子低周波電磁放射のスペクトルを表す最終的なデータ・セットである。
【0091】
グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)などのユーザ・インタフェース(UI)222は、また少なくともフィルタ216およびプロセッサ220に接続されて、信号処理パラメータを指定する。フィルタ216、プロセッサ218およびプロセッサ220は、ハードウエアとして、ソフトウエアとして、あるいは、ファームウエアとして組み込むことができる。例えば、フィルタ216およびプロセッサ218は、1又は複数の半導体チップに組み込むことができる。プロセッサ220は、計算デバイス中に組み込まれたソフトウエアでよい。
【0092】
この増幅器は、「仮想モード」で動作し、そこにおいて、それは、初期基準周波数にロックし、次に基準周波数を除去して自由動作を許容され、「雑音」にロックする。アナログ雑音発生器(ゼネラル・ラジオ社によって生産される、真にアナログな雑音発生器)は、ヘルムホルツおよび雑音消去コイルに対して、それぞれ20dBおよび45dBの減衰を必要とする。
【0093】
ヘルムホルツ・コイルは、1%の100分の1のバランスを備えた約16.4立方センチメートル(1立方インチ)のスイート・スポットを有する。代替的実施の形態で、ヘルムホルツ・コイルは、垂直方向にも動き、(垂直軸の回りに)回転もして、並列状態からパイの形に広がって離れもする。1つの実施の形態で、SQUID、グラジオメータおよび駆動用変圧器(コントローラ)は、それぞれ1.8、1.5および0.3マイクロヘンリーの値を有する。ヘルムホルツ・コイルは、スイート・スポットにおいてアンペア当たり0.5ガウスの感度を有する。
【0094】
確率的応答のためには、およそ10から15マイクロボルトが必要とされる。ガウス白色雑音刺激を注入することによって、システムは、SQUIDデバイスの感度を上げることができる。SQUIDデバイスは、雑音なしで約5フェムトテスラの感度を有していた。このシステムは、雑音を注入し、この確率的共鳴応答を利用することによって、感度を25ないし35dB改善することができた。これは、ほとんど1,500%の増大にあたる。
【0095】
システムから信号を受信して記録したあとで、メインフレーム・コンピュータ、スーパーコンピュータ又は高性能コンピュータなどのコンピュータは、前処理および後処理の両方を実行する。前処理に関しては、カリフォルニア州リッチモンドのシスタット・ソフトウエア(Systat Software)によって生産されたオートシグナル(AutoSignal(登録商標))のソフトウエアを採用することによって、またポスト処理に関しては、フレックスプロ(FlexPro)のソフトウエアの製品を使用することによって実行されよう。フレックスプロは、デュートロン社(Dewetron,Inc.)によって供給されるデータ(統計)解析ソフトウエアである。次の式又はオプションは、オートシグナルおよびフレックスプロの製品で使用される。
【0096】
システム100によって実行される信号検出および処理のフロー図が図8に示されている。サンプルが注目しているものである場合、少なくとも4つの信号検出又はデータ・ランが実行される。サンプルなしで時刻t1に第1のデータ・ラン、サンプルありで時刻t2に第2のデータ・ラン、サンプルありで時刻t3に第3のデータ・ラン、そしてサンプルなしで時刻t4に第4のデータ・ラン。2つ以上のデータ・ランの実行および収集によって、最終的な(例えば、関連付けられた)データ・セットの精度は高まる。第4のデータ・ランで、システム100のパラメータおよび条件は、一定に保たれる(例えば、温度、増幅量、コイルの位置、ガウス白色雑音刺激信号等々)。
【0097】
ブロック300で、適当なサンプルがシステム100に設置される(あるいは、もしそれが第1又は第4のデータ・ランであれば、サンプルなし)。与えられたサンプルは、注入されるガウス白色雑音刺激なしで、約0.001マイクロテスラに等しいかそれよりも小さい振幅で、DC−50kHz範囲の電磁放射を放出する。このような低い放射を捕らえるためには、ブロック301でガウス白色雑音刺激が注入される。
【0098】
ブロック302で、コイル722、724は、サンプルの放射および注入されたガウス白色雑音刺激を表す誘起電圧を検出する。誘起電圧は、データ・ランの期間だけ続く時間の関数としての電圧値(振幅および位相)の連続した流れを含む。データ・ランは、長さが2−20分間であり、従ってデータ・ランに対応するデータ・セットは、2−20分間続く時間の関数としての電圧値を含むことになる。
【0099】
ブロック304で、誘起電圧が検出されるとともに注入されたガウス白色雑音刺激は、消去される。このブロックは、SQUID206の雑音消去機能をターン・オフしている場合には、省略される。
【0100】
ブロック306で、データ・セットの電圧値は、ブロック304で雑音消去が発生するか否かに依存して、20−50dBだけ増幅される。更にブロック308で、増幅されたデータ・セットは、アナログからデジタルへの(A/D)変換を施され、レコーダ212に記録される。デジタル化されたデータ・セットは、数百万行のデータを含む。
【0101】
取得されたデータ・セットが記録されたあと、ブロック310で、サンプルに対して少なくとも4つのデータ・ランが実行されたか否か(例えば、少なくとも4つのデータ・セットが取得されたか否か)のチェックが行われる。与えられたサンプルに関して4つのデータ・セットが得られていれば、ブロック312で低域通過フィルタリングが施される。そうでなければ、次のデータ・ランが開始される(ブロック300に戻る)。
【0102】
デジタル化されたデータ・セットに対して低域通過フィルタリング(ブロック312)および帯域通過フィルタリング(ブロック314)を施したあとで、データ・セットは、フーリエ変換ブロック316で周波数ドメインに変換される。
【0103】
次に、ブロック318で、各データ・ポイントにおいて、類似のデータ・セットが互いに相関を取られる。例えば、第1のデータ・ラン(例えば、ベースライン又は雰囲気雑音のデータ・ラン)に対応する第1のデータ・セットと、第4のデータ・ラン(例えば、別の雑音データ・ラン)に対応するデータ・セットとで互いに相関を取られる。もし与えられた周波数における第1のデータ・セットの振幅値が与えられた周波数における第4のデータ・セットの振幅値と同じであれば、その与えられた周波数についての相関値又は数は、1.0となるはずである。あるいは、相関値の範囲は、0−100の範囲にセットされる。このような相関又は比較は、第2と第3のデータ・ラン(例えば、サンプル・データ・ラン)とについても実施される。取得されたデータ・セットが記録されているので、残りのデータ・ランが完了した後の時点でそれらにアクセスすることができる。
【0104】
相関を取られた各データ・セットに対して予め決められた閾値レベルが適用されて、無関係な相関値が統計的に排除される。データ・ランの長さに依存して(データ・ランが長ければ、取得されるデータの精度が高まる)、また他のタイプのサンプルに対するサンプルの実際の放射スペクトルの類似性に依存して、多様な閾値が使用される。閾値レベルに加えて、相関の平均がとられる。閾値と相関の平均を利用すると、結果の相関の取られたデータ・セットにおける注入ガウス白色雑音刺激コンポネントは非常に小さくなる。
【0105】
2つのサンプル・データ・セットを1つの相関サンプル・データ・セットにリファインし、2つの雑音データ・セットを1つの相関雑音データ・セットにリファインしたあとで、相関雑音データ・セットが、相関サンプル・データ・セットから差し引かれる。結果のデータ・セットは、最終的なデータ・セット(例えば、サンプルの放射スペクトルを表すデータ・セット)である(ブロック320)。
【0106】
Hz当たり8600個のデータ・ポイントがあり、最終的なデータ・セットがDC−50kHzの周波数範囲についてデータ・ポイントを有するので、最終的なデータ・セットは、数億行のデータを含む。データの各行には、周波数、振幅、位相および相関値が含まれる。
(III.候補となる最適な時間ドメイン信号を同定する方法)
【0107】
上で述べた方法に従って生成される信号は、インビトロ・システムや哺乳類システムをトランスデュースするために使用されるとき、更に最適なエフェクタ活動について選択される。発明の1つの態様に従えば、与えられたサンプルについて得られた低周波時間ドメイン信号のサンプルに依存する信号特徴は、サンプルについての時間ドメイン信号を磁場刺激条件の範囲、例えば、ガウス白色雑音刺激の振幅およびDCオフセットについての異なる電圧レベルの範囲にわたって記録することによって最適化できることが分かった。記録された信号は、次に処理されて信号特徴を明らかにされ、以下で述べるように最適な信号解析得点を有する1又は複数の時間ドメイン信号が選択される。最適化された、あるいは、最適に近い時間ドメイン信号の選択が有用であるのは、発明に従えば、最適化された時間ドメイン信号でインビトロ・システムや哺乳類システムをトランスデュースすることが、非最適化時間ドメイン信号の場合よりも強く、より予測可能な応答を与えることが分かったからである。見方を変えると、最適化された(あるいは、最適に近い)時間ドメイン信号を選択することは、標的システムがサンプル信号によってトランスデュースされる場合、信頼でき、検出可能なサンプル効果を達成するのに有効である。
【0108】
一般に、サンプルに供給される注入される白色雑音、DCオフセットおよび掃引振幅電圧は、サンプル容器の場所に0から1G(ガウス)の間の計算された磁場を生成するようなものであるか、あるいは、注入される雑音刺激は、好ましくは、検出しようとする分子電磁放射よりも約30から35デシベル高く、例えば、70−80dbmの範囲にある。記録されるサンプル数、すなわち、時間ドメイン信号が記録される雑音レベル期間の数は、典型的には、10−100又はそれ以上の範囲で変化し、いずれの場合でも十分に小さい期間であれば、良好な最適信号が同定できる。例えば、雑音発生器レベルのパワー利得は、5から20mVの範囲にわたって変化できる。以下で明らかになるように、信号についての信号解析得点を注入される雑音刺激のレベルに対してプロットすると、プロットは、雑音レベル増分が十分小さければ、いくつかの異なる雑音レベルにわたって広がるピークを示す。
【0109】
あるいは、記録された時間ドメイン信号の最適化のためにガウス白色雑音以外の刺激信号を使用することもできる。そのような信号の例は、正弦波周波数の範囲のスキャン、矩形波、定義された非線形構造を含む時系列データ又はSQUID出力自身を含む。これらの信号は、更に刺激信号を修正するために、オフ状態とオン状態との間でそれら自身をパルス化してもよい。磁場によって自然に生成される白色雑音を刺激信号の信号源として使用することもできる。
【0110】
本発明は、記録された時間ドメイン信号について信号解析得点を計算するための5つの異なる方法を考えている。それらは、(A)ヒストグラム・ビン法、(B)自己相関信号のFFT生成、(C)FFTの平均、(D)相互相関閾値の使用および(E)位相空間比較。これらの各々は、後に詳細に説明する。
【0111】
具体的に述べていないが、明らかなように、各方法は、手動モードで実行される。ここでは、ユーザは、信号解析得点が基礎とするスペクトルを評価し、次の記録について雑音刺激レベルの調節を行い、またピーク得点に達する時点を決定する。あるいは、これを自動又は半自動モードで実行することもできる。ここでは、コンピュータ駆動プログラムによって雑音刺激レベルの連続的増分および/又は信号解析得点の評価が行われる。
(A.スペクトル情報を生成するヒストグラム法)
【0112】
図9は、スペクトル情報を生成するためのヒストグラム法のハイ・レベル・データ・フロー図である。SQUIDから得られるデータ(ボックス2002)、あるいは、記録されたデータ(ボックス2004)は、16ビットのWAVデータとして保存され(ボックス2006)、倍精度浮遊小数点データに変換される(ボックス2008)。変換されたデータは、生の波形として保存されるか(ボックス2010)、あるいは、表示される(ボックス2012)。変換されたデータは、次に以下で図10に関連して説明するアルゴリズムに送られ、フーリエ解析とラベル付けされたボックス2014によって表示される。ヒストグラムは、2016で表示できる。
【0113】
図10を参照すると、ヒストグラム・アルゴリズムの一般的な流れは、離散的なサンプリングされた時間ドメイン信号を取り上げ、更に解析するためにフーリエ変換を利用してそれを周波数ドメイン・スペクトルに変換することである。時間ドメイン信号は、ADC(アナログ/デジタル変換器)から収集されて、2102に示されたバッファに記憶される。このサンプルは、SampleDuration秒の長さで、秒当たりSampleRateサンプルでサンプリングされて、SampleCount(SampleDuration*SampleRate)サンプルが得られる。信号から復元できるFrequencyRangeは、ナイキストによって定義されるようにSampleRateの半分として定義される。そうすると、時系列信号を毎秒10,000サンプルでサンプリングすると、FrequencyRangeは、0Hzから5kHzとなる。使用される1つのフーリエ・アルゴリズムは、基数2の実高速フーリエ変換(RFFT)であり、これは、216までの2のべき乗の選択可能な周波数ドメイン分解能(FFTSize)を有する。FrequencyRangeが8kHz以下に留まるかぎり、ヘルツ当たり少なくとも1つのスペクトル・ビンを確保するために十分な分解能を提供するために、8192というFFTSizeが選ばれる。信頼できる結果を保証するために、SampleCount>(2*)FFTSize*10となるようにSampleDurationは、十分長くあるべきである。
【0114】
このFFTは、一時にFFTSize個のサンプルにだけ作用できるので、プログラムは、サンプルに対して逐次的にFFTを実行して、結果を一緒に平均して最終スペクトルを得る必要がある。もし各FFTについてFFTSize個のサンプルをスキップすることを選ぶと、1/FFTSize^0.5の統計誤差が導入される。しかし、FFT入力にFFTSizeの半分を重ねることを選ぶと、この誤差は、1/(0.81*2*FFTSize)^0.5に減少する。これは、誤差を0.0110485435から0.0086805556に低減させる。誤差および相関解析に関する追加情報は、一般的に、1993年発行のBendatおよびPiersol著の「相関およびスペクトル解析の工学応用(Engineering Applications of Correlation and Spectral Analysis)」を参照のこと。
【0115】
与えられたウインドウでFFTを実行する前に、サンプリング・エイリアシングによるスペクトル欠損を避けるためにデータ・テーパリング・フィルタが適用される。このフィルタは、例えば、矩形(フィルタなし)、ハミング(Hamming)、ハニング(Hanning)、バートレット(Bartlett)、ブラックマン(Blackman)およびブラックマン/ハリス(Blackman/Harris)のうちから選ぶことができる。
【0116】
例示的な方法では、ボックス2104に示すように、可変FFTSizeとして8192を選んだ。これは、同時に動作させる時間ドメイン・サンプルの数であり、またFFTによって出力される離散周波数の数でもある。FFTSize=8192は、分解能である、あるいは、そのサンプリング・レートによって指示される範囲にあるビン数であることに注意されたい。何個の離散RFFR(実FFT)を実行するかを指示する変数nは、SampleCountをFFTビン数であるFFTSize*2で割ることによってセットされる。このアルゴリズムが目的にかなった結果をもたらすようにするために、この数nは、少なくとも10から20であるべきである(他の値も可能ではあるが)。ここで、もっと弱い信号を拾い上げるには、より大きい値が好ましい。このことは、与えられたSampleRateおよびFFTSizeに対して、SampleDurationが十分大きくなければならないということを意味する。0からnまで計数するカウンタmは、これもボックス2104に示すようにゼロに初期化される。
【0117】
プログラムは、まず3つのバッファを確立する。各ビン周波数においてカウントを累積するサイズがFFTSize個のヒストグラム・ビンのためのバッファ2108と、各ビン周波数において平均パワーのためのバッファ2110と、各mについてFFTSize個のコピーされたサンプルを含むバッファ2112である。
【0118】
プログラムは、ヒストグラムおよびアレイを初期化し(ボックス2113)、waveデータのFFTSize個のサンプルをバッファ2112にコピーし(2114で)、waveデータに対してRFFTを実行する(ボックス2115)。FFTは、最も大きい振幅を1とするように正規化され(ボックス2116)、FFTSize個のビンすべてについての平均パワーが正規化信号から決められる(ボックス2117)。各ビン周波数に対して、その周波数でFFTからの正規化された値は、バッファ2108の各ビンに追加される(ボックス2118)。
【0119】
ボックス2119で、プログラムは、各ビン周波数のパワーを調べて、上で計算された平均パワーと比較する。もしパワーが平均パワーの特定の因子イプシロン(0から1の間)の範囲にあれば、それが計数されて、16にあるヒストグラム・バッファで対応するビンが増分される。そうでなければ、それは、破棄される。
【0120】
それが比較される平均パワーは、このFFTのインスタンスのみに関するものであることに注意されたい。低速ではあるが、強化されたアルゴリズムであれば、データを通して2つの経路を取り、ヒストグラム・レベルをセットする前のすべての時間にわたる平均を計算するはずである。イプシロンとの比較は、1つの周波数ビンに対して十分重要なパワー値を表す助けとなる。あるいは、より広義では、イプシロンを採用した式は、「この時点で、この周波数に信号があるか?」という質問に回答する助けになる。もし回答が肯定であれば、それは、2つのこと、(1)ちょうどこの1つの時点でこのビンに入ろうとしている定常的雑音、あるいは、(2)ほとんど毎度発生する実際の低レベル周期信号、のうちの1つによるためであろう。すなわち、ヒストグラムのカウントは、雑音によるヒットを除去し、低レベル信号によるヒットを強調する。従って、平均化およびイプシロン因子は、重要と考えられる最も小さいパワー・レベルを選択することを可能にする。
【0121】
カウンタmは、ボックス2120で増分され、mがnに等しくなるまで、WAVデータの各nセットに対して上のプロセスが繰り返される(ボックス2121)。各サイクルにおいて、各ビンに対する平均パワーは、2118で関連するビンに加えられ、また2114でパワー振幅条件が満たされるとき、各ヒストグラム・ビンが1だけ増分される。
【0122】
データのnサイクルすべてが考慮されたあと、各ビンに累積された平均パワーをサイクルの合計数nで割ることによって各ビンの平均パワーが決定され(ボックス2122)、結果が表示される(ボックス2123)。例えば、DC=0であるか、あるいは、60Hzの倍数にあるなど構造を持つ雑音が存在する場合を除いて、各ビンの平均パワーは、なんらかの比較的小さい数になるはずである。
【0123】
この方法で関係する設定は、雑音刺激利得およびイプシロンの値である。この値は、平均値を超える事象を識別するために使用されるパワー値を決める。値が1のとき、検出される事象はない。パワーが平均パワーよりも大きくなり得ないからである。イプシロンがゼロに近づくと、ビンには、実質上すべての値が入ることになる。0と1との間、典型的には、構造を有する雑音に対する合計のビン・カウントの約20−50%にあるビン・カウント数を与える値において、イプシロンは、最大の「スペクトル特性」を有し、純粋な雑音よりも確率的共鳴事象が最も好ましいことを意味する。
【0124】
従って、磁場刺激入力のパワー利得を体系的に増やす、例えば0と1Vとの間で50mVの増分で増やし、各々のパワー設定で明確に定義されるピークを有するヒストグラムが観測されるまでイプシロンを調節することができる。例えば、処理されるサンプルが20秒間の時間間隔を表す場合、各々の異なるパワーおよびイプシロンについての合計の処理時間は、約25秒間になる。明確に定義された信号が観測されるとき、パワー設定又はイプシロンのいずれか、あるいは両方は、最適なヒストグラムになるまで、すなわち、最大数の同定可能なピークが得られるまでリファインすることができる。
【0125】
このアルゴリズムのもとで、低周波において雑音(例えば、環境雑音)の一般的な発生のせいで、数多くのビンが満たされ、関連するヒストグラムが低周波に割り当てられる。すなわち、システムは、単純に与えられた周波数より低い(例えば、1kHzを下回る)ビンを無視するが、しかしなお、より高い周波数においてサンプル間で独自の信号シグネチャを決定するのに十分なビンの値を提供する。
【0126】
あるいは、イプシロン変数の目的は、各サイクルで決まる異なる平均のパワー・レベルを受け入れることにあるので、プログラムは、それ自身で、平均のパワー・レベルを最適にイプシロン値に関連付ける予め定義された関数を用いて自動的にイプシロンを調節できる。
【0127】
同様に、プログラムは、各々のパワー設定においてピーク高を比較でき、またまたヒストグラムに最適のピーク高又は特性が観察されるまで、雑音刺激パワー設定を自動的に調節できる。
【0128】
イプシロンの値は、すべての周波数に対して固定した値でもかまわないが、周波数に依存するイプシロンの値を採用して、低周波、すなわちDCから1,000において観測される平均のエネルギーをより高い値に対して調節することも考えられる。周波数に依存するイプシロン因子の決定は、例えば、非常に多数の低周波FFT領域を平均して、平均値をより高い周波数において観測されるものと同等な値に「調節する」イプシロン値を決めることによって行うことができる。
(B.自己相関信号のFFT)
【0129】
信号解析得点を決める第2の一般的方法では、選ばれた雑音刺激で記録された時間ドメイン信号の自己相関が取られ、自己相関信号の高速フーリエ変換(FFT)を利用して信号解析プロット、すなわち、周波数ドメインでの信号のプロットが生成される。次にFFTを利用して、選ばれた周波数範囲、例えば、DCから1kHz、あるいは、DCから8kHzの範囲にわたって平均の雑音レベルを超えるスペクトル信号の数が採点される。
【0130】
図11は、この第2の実施の形態に従い、記録された時間ドメイン信号を採点する場合に実行される工程のフロー図である。時間ドメイン信号が、サンプリングされ、デジタル化されて上のようにフィルタリングされる(ボックス402)。このとき、磁場刺激レベルの利得は、404でのように、初期レベルにセットされる。1つのサンプル・コンパウンド402に関する典型的な時間ドメイン信号は、標準的な自己相関アルゴリズムを使用して408で自己相関を取られ、また自己相関関数のFFTは、標準FFTアルゴリズムを使用して410において生成される。
【0131】
FFTプロットは、412において、自己相関FFTで観察される平均雑音よりも統計的に大きいスペクトル・ピークを計数することによって採点され、得点は、414で計算される。このプロセスは、ピーク得点が記録されるまで、すなわち、与えられた信号に対する得点が雑音刺激利得の増大とともに減少し始めるまで、工程416と406との間を繰り返される。ピークの得点は、418で記録され、プログラム又はユーザは、422で時間ドメイン信号のファイルからピークの得点に対応する信号を選択する(ボックス420)。
【0132】
上のように、この実施の形態は、手動モードで実行される。そこにおいて、ユーザは、雑音刺激の増分設定を手動で調節し、FFTスペクトル・プロットからの解析(ピークの計数)を手作業で行い、ピーク得点を利用して1又は複数の最適な時間ドメイン信号を同定する。あるいは、これらの工程の1又は複数の態様を自動化することもできる。
(C.平均のFFT)
【0133】
信号解析得点を決める別の実施の形態では、各々の雑音刺激利得における多数、例えば10−20個の時間ドメイン信号のFFTが平均されて、スペクトル・ピークのプロットが得られ、上で述べたように得点が計算される。
【0134】
図12は、この第3の実施の形態に従い、記録された時間ドメイン信号を採点する場合に実行される工程のフロー図である。時間ドメイン信号は、サンプリングされ、デジタル化されて上のようにフィルタリングされる(ボックス424)。このとき、磁場刺激レベルの利得は、426でのように、初期レベルにセットされる。プログラムは、次に各々の雑音刺激利得について時間ドメイン信号(単数又は複数)に関する一連のFFTを428において発生させ、これらのプロットが430で平均される。平均のFFTプロットを使用して、432、434でのように、平均のFFT中で観測される平均雑音よりも統計的に大きいスペクトル・ピークの数を計数することによって採点が実行される。このプロセスは、ピーク得点が記録されるまで、すなわち、与えられた信号に対する得点が雑音刺激利得の増大とともに減少し始めるまで、工程436および437の論理を通って繰り返される。ピークの得点が438で記録され、プログラム又はユーザは、442の時間ドメイン信号のファイルからピークの得点に対応する信号を選択する(ボックス440)。
【0135】
上のように、この方法は、手動、半自動又は完全自動モードで実行できる。
(D.相互相関閾値)
【0136】
信号解析得点を決めるための別の実施の形態では、閾値と併せて相互相関アルゴリズムが使用される。最初に、応答時系列データの平均値を計算し、その値をデータ全体から差し引くことによって、応答時系列データの平均値がゼロになるようにオフセットされる。次に、この時系列データの冒頭部近くから間隔タウのブロック・データが抽出され、データ・セットの残りの部分との間で相互相関が取られる。相互相関のためのアルゴリズムは、よく知られている。相互相関の出力は、標準偏差値を計算するために使用される。標準偏差値を計算するアルゴリズムは、よく知られている。この標準偏差は、次にアルファと呼ばれる典型的に2.0である因子を乗じられて、閾値が生成される。相互相関出力は、次にこの閾値と比較され、相互相関出力が閾値を超える回数が計数される。計数値が、この応答時系列データの得点となる。
【0137】
応答時系列データに関する得点を計算するこの方法は、タウのデータ・ブロックに含まれるデータ・パターンがデータの残りの部分でどのくらい頻繁に繰り返されるかの尺度、従って、サンプルによってどれほど多くのデータ・パターンが生成されるかの尺度を与える。
【0138】
得点は、タウの期間に対してデータによる応答時系列について計算でき、サンプルによって生成されるデータ・パターンの適切な取得を保証する。
【0139】
得点の値は、変動する刺激ガウス白色雑音振幅又はオフセットなどの変化する条件下でサンプルについて計算できる。得点の値の結果の組を比較することによって、サンプルから最も強いデータ・パターンを生成するサンプル条件を同定することが可能になる。これらの条件は、次に化学システム又は生体システムに効果を与える場合に使用されるデータを取得するために利用できる。
【0140】
1つの実施の形態で、システムは、MIDSユニットから記録されるSQUIDデータ(典型的には、60秒間にわたる)を表すWAV形式のファイルから時系列データを抽出する。時系列の冒頭部付近から間隔タウ(典型的には、5から20ms)のデータ・ブロックが取り出されて、データの残りの部分との間で相互相関を取られ、相互相関データ・セットが得られる。
(相互相関の詳細)
【0141】
信号x(t)およびy(t)の相互相関Rxy(t)は、次のように定義される。
【0142】
【数1】
【0143】
ここで、記号
は、相関を意味する。
【0144】
CrossCorrelationVIの離散的実現は、次のようになっている。hがシーケンスを表し、その指数は、負になることもあるとする。nは、入力シーケンスX中の要素の数、mは、シーケンスY中の要素の数とし、それらの範囲外にあるXおよびYの指数付要素は、ゼロに等しいと仮定する。
【0145】
xj=0, j<0 又は j>=n
および
yj=0, j<0 又は j>=m
そうすると、CrossCorrelationVIは次式を用いてhの要素を得る。
【0146】
【数2】
j=−(n−1),−(n−2),...,−2,−1,0,1,2,...,m−1
【0147】
出力シーケンスRxyの要素は、次式によってシーケンスh中の要素と関連付けられる。
【0148】
【数3】
i=0,1,2,...,size−1,size=n+m−1
【0149】
ここでsizeは、出力シーケンスRxy中の要素の数である。
【0150】
次に、この相互相関データ・セットの平均値が計算され、因子アルファ(典型的には、1.1)が乗ぜられて閾値が得られる。相互相関データ・セットが閾値を交差する合計回数が計数され、この計数値が得点値(Score)として出力される。
【0151】
Score値は、本質的に相互相関データ・セットがいかにぎざぎざしているかの尺度であり、従って初期データ・ブロック中のパターン(長さタウ)が後続データ中で何回繰り返されるかの尺度である。
【0152】
このような反復パターンは、初期データ・ブロック中に存在するか存在しないか分からないので、初期データ・ブロックの位置およびサイズを変化させて、結果のScore値の統計的重要度が決められる。
【0153】
Score結果の例が図13に示されている。上側のグラフは、X軸にファイル番号、Y軸にタウ、Z軸にScoreを示している。ファイル番号は、捕捉パラメータを変化させることによって蓄積されたファイルのシーケンスに対応する。この例では、MIDS刺激オフセットは、+100mVから+250mVまで9回繰り返し増分される。タウは、初期データ・ブロックの期間を意味し、これは、任意のデータ・パターンを確実に捕捉するために増分される。X、Y各座標におけるScoreは、カラー・マップで示されている。この例では、0のScoreを黒で、5000を青で、そして10000を白で示し、中間の値を中間の色で示している。
【0154】
ユーザは、赤いカーソルを手で動かして水平方向又は垂直方向に強度グラフをスライス切断することができる。この例では、水平方向にスライスされていて、スライス断面のデータが下側の線形グラフに示されている。
【0155】
下側の線形グラフは、Score値がどのように変化するかを示している。この例では、+105mVから+130mVの範囲のMIDSオフセットで取得されるファイルについて一般にScoreが高くなる傾向が示されている。主題は、オフセットを増分するごとに、それに同期してそれ自身9回繰り返している。これは、残りのオフセットについて存在しないが+105mVから+130mVのオフセットについて存在するデータ・パターン(未知の構造を有する)を示す。
(E.位相空間比較)
【0156】
信号解析得点を決める別の実施の形態で、応答時系列データについて位相空間が計算され、この位相空間は、別の時系列データからの位相空間との間で相関を取られる。最初に、応答時系列データを用いてアベレージ・ミューチュアル・インフォメーション(Average Mutual information)が計算される。アベレージ・ミューチュアル・インフォメーションに関するアルゴリズムは、既知である。第1の極小は、最適なタウ値に対応する。このタウ値は、次にタケンス(Takens)の定理を使用してN次元位相空間を計算するために使用される。タケンスの定理に関するアルゴリズムは、既知である。
【0157】
結果の位相空間構造は、次に別の時系列からの位相空間構造と比較される。比較は、典型的には、サンプルが存在する場合の収集データとサンプルが存在しない場合の収集データとの間で行われるか、あるいは、サンプルが存在する場合と溶剤のみが存在する場合との間で行われる。
【0158】
比較は、位相空間領域全体を通して位相空間密度を比較することで実行される。これは、確率アレイSの自然対数を確率アレイRで除することによって形成される商の絶対値の重み付け平均を計算することによって計算される。確率アレイSおよびRは、サンプルの位相空間および基準位相空間を有限個のビンに収め、次に1に正規化することによって形成される。比較の結果は、得点値である。
【0159】
得点値は、変動する条件、例えば、変化するガウス白色雑音刺激振幅又はオフセットなどの条件下にあるサンプルについて計算できる。得点値の結果セットの比較によって、サンプルから最も強いデータ・パターンを生成するサンプル条件の同定が可能になる。これらの条件は、次に化学システム又は生体システムに効果を与えるときに使用されるデータを取得するために使用できる。最初に、入力の時系列データ(「入力電圧アレイ(Voltage Array in)」)をスケーリングして、その値がゼロから典型的には1000である「位相空間サイズ(Phase Space Size)」までの範囲に入るようにする。次に、これらの値を整数化する。これらの整数は、次に典型的には、1000×1000の二次元アレイである位相空間の指数として使用される。期間「タウ」によって分離された一対の整数を用いて、位相空間中のX、Y位置を指定し、その位置にある値を値1だけ増分する。時系列データに沿ってスライドしながら、可能なすべての整数対を使用することによって、位相空間に正味のパターンが生成される。
【0160】
サンプルおよび基準からなど2つの異なる位相空間を比較するために、2つの位相空間(サンプル・アレイ(Sample Array)および基準アレイ(Reference Array))は、それらの合計によって除することによって正規化され、それぞれPs(xyz)およびPr(xyz)を得る。アレイ中の各要素は、次に正味の差分を計算するために使用される。
差分=(sum
((sqrt(Ps(xyz)*Pr(xyz)))*(abs(ln(Ps(xyz)/Pr(xyz))))))/(sum(sqrt(Ps(xyz)*Pr(xyz))))
【0161】
差分は、与えられた刺激雑音振幅およびオフセットなどの特別なデータ取得条件に対する得点値を表す。この差分計算を振幅およびオフセットの範囲にわたる1組のデータに適用することによって、1組の得点値が得られる。最も高い得点値は、サンプルがデータに対して最も大きい非線形効果を有する場合を示し、従って、生物学的トランスダクションにおいてそれの有効性を示唆する。
【0162】
5つの採点アルゴリズムのうちで、好ましいものは、(i)FFT自己相関法(アルゴリズムB)、(ii)位相空間比較(アルゴリズムE)又は(iii)ヒストグラム法(アルゴリズムA)に関するものである。
(IV.トランスダクション装置およびプロトコル)
【0163】
この節では、上の節IおよびIIで述べた方法に従って生成および選択された信号によってサンプルをトランスデュースするための装置および方法について説明する。上で述べた方法に従って形成される最適化された時間ドメイン信号である、これらの実験で採用された信号は、発明に従う信号が各種のインビトロ・システム又は哺乳類システムにおいてコンパウンド固有の応答を生成する能力を実証する。
【0164】
図14は、発明に従って、エージェント固有の信号によってサンプルをトランスデュースするための装置のレイアウトを示す。この特別なレイアウトは、トランスダクション・コイル内部に保持され、電磁信号に晒された3つのサンプル444、446および448と、コントロールとしてのサンプル450と、化学誘発作用によるコントロールとしてのサンプル452を含む5つのサンプルを受け入れる。実験のために図15のシステムが使用される。患者の処置のために使用するのであれば、448、450、452等のいくつかの要素が省略される。
【0165】
信号がCDに記録され、プリアンプ456およびオーディオ・アンプ458を通して記録されたCD454上で再生される場合、エージェント固有の信号によるトランスダクションは、サンプルに対して最適化されたエージェント固有の信号を「再生する」ことによって実行される。この信号は、図示のように別々のチャネルを通して電磁コイル444および446に供給される。1つの実施の形態で、ソニーのCDP CE375型CDプレーヤが使用される。プレーヤのチャネル1は、アドカム(Adcom)のGFP750型プリアンプのCD入力1に接続される。チャネル2は、アドカムのGFP750型プリアンプのCD入力2に接続される。CDは、各チャネルからの同一信号を再生するために記録される。あるいは、CDは、各チャネルからの異なる信号を再生するために記録される。サンプル448のコイルは、主として実験のためのコントロールとするガウス白色雑音場を発生させるために使用される。例えば、ゼネラル・ラジオ(GR)のアナログ雑音発生器は、このコイルのためのガウス白色雑音源を提供する。あるいは、このコイルは、第2のクラウン(Crown)・アンプを通して任意の予め記録されたトランスダクション信号を再生するために使用できる。
【0166】
図15は、図14のサンプル444、446および448の任意のものに代表されるサンプルのトランスダクション装置466を示す。装置は、電磁石470を収納するチェンバ468と、チェンバ内の温度などの条件をモニタするための各種プローブを含む。電磁石は、ベース474上に載っていて、従来のように、ドーナツ型の強磁性体コアおよびワイヤ巻線を含む。
【0167】
電磁石は、サンプルが設置される領域でのそれの磁場強度、勾配および方位を制御するために1又は複数の巻線を有する。
【0168】
トランスダクション装置の1つの実施の形態で、コイルは、コイル間の性能を均等化するために、アメリカン・マグネチックス(American Magnetics)によって加工製造されたものとしている。各コイルは、8番ゲージ(米国電線規格)矩形銅製マグネット・ワイヤを416ターン含み、エナメル被覆されて、直径約5cm(約2インチ)の空芯を含む。各コイルは、温度上昇を摂氏15度以下に抑えながら、11ヘルツで実効値10アンペア、実効値10ボルトにおいて、中心部に約1500ガウスを発生できる。
【0169】
トランスダクション・コンポネントが低磁場のNMR信号であるか、あるいは、NMRコンポネントを含む場合での使用に適したトランスダクション装置の第2の実施の形態では、一対のコイルは、直径とほぼ同じ距離だけ軸に沿って離されて、ヘルムホルツ構成を形成する。両方のコイルのなかを同じ方向に電流が循環する。この構成は、対の中心部付近で磁場の均一性を最適化する。
【0170】
これもトランスダクション・コンポネントが低磁場のNMR信号であるか、あるいは、NMRコンポネントを含む場合での使用に適したトランスダクション装置の第3の実施の形態では、ヘルムホルツ・コイルの2つの対が互いの上に重なって巻かれ、1つの対は、両方のコイルで同じ方向に循環する電流を有し、他方の対は、逆の方向に循環する電流を有する。この構成は、制御された磁場強度とともに制御された磁場勾配を発生する。
【0171】
トランスダクション装置の別の一般的な実施の形態では、いくつかのヘルムホルツ・コイルの対は、互いに直交するよう構成される。この構成は、サンプルに印加される磁場の構造をかなり柔軟に制御することを許容する。例えば、1つの軸に沿って静磁場を印加することができ、別の軸に沿って可変磁場を印加することができる。そのような構成は、生物学的システムにNMRタイプの信号を供給するために有用なはずである。第1のコイルに一定の電流を流すことによって7マイクロテスラの静磁場が発生し、また第2のコイルに変化する電流を流すことによって、より小さい振幅の変動磁場が発生する。変動電流は、1組の正弦波を互いに加えることによって発生する。ここで、正弦波は、7マイクロテスラにおける計算されたNMRスペクトルに対応する周波数を有する。
【0172】
トランスダクション装置は、サンプルが設置された領域の環境から制御できない外部場を最小化する目的で、遮蔽された容器のなかに置かれる。
【0173】
遮蔽の1つの実施の形態で、トランスダクション装置は、トランスダクション装置よりも少なくとも3倍大きい、大型の容器のなかに設置される。この大型容器は、アース・グラウンドにつながれた銅メッシュで裏打ちされている。このような容器は、一般に「ファラデー・ケージ」と呼ばれる。銅メッシュは、約10kHzよりも高い外部環境電磁信号を減衰させる。
【0174】
遮蔽の第2の実施の形態で、トランスダクション装置は、アルミニウム板又はその他の固体導体を含み、構造的な不連続性が最小の大型の容器内に設置される。このような容器は、約1kHzよりも高い外部環境電磁信号を減衰させる。
【0175】
遮蔽の第3の実施の形態で、トランスダクション装置は、トランスダクション装置よりも少なくとも5倍大きい、非常に大きい3つの直交するヘルムホルツ・コイル対の組のなかに設置される。ヘルムホルツ・コイル対の幾何学的中心に近く、またトランスダクション装置からいくぶん離れて、フラックスゲート型磁気センサ容器が位置している。フラックスゲート型磁気センサからの信号は、リンドグレン社(Lindgren,Inc.)の磁気補償システム(Magnetic Compensation System)のようなフィードバック装置に入力され、フィードバック電流は、ヘルムホルツ・コイルを駆動するために使用されて、ヘルムホルツ・コイルを駆動して内部領域の磁場を強制的にゼロにする。ヘルムホルツ・コイル対が非常に大きいので、この領域もまたそれに応じて大きい。更に、トランスダクション装置は、比較的小型のコイルを使用するので、それらの場は、フラックスゲート型磁気センサと干渉するほど十分遠くまで広がることがない。このようなヘルムホルツ・コイル対の組は、0.001Hzから1kHzの間の外部環境電磁信号を減衰させる。
【0176】
遮蔽の第4の実施の形態で、トランスダクション装置は、上で述べたように銅メッシュ又はアルミニウム容器のいずれかのなかに設置され、その容器自体が上で述べたヘルムホルツ・コイル対の組のなかに位置する。このような構成は、それらを組み合わせた範囲にわたって外部環境電磁信号を減衰させる。
【0177】
動作時には、サンプル、例えばインビトロ・システム又は哺乳類システムの対象物、あるいは、哺乳類システム対象物の選ばれた標的エリアは、トランスダクション装置のコイル内部の中央に設置される。従って、例えば、コイルは、支持ベッドの対向する端部、あるいは、ベッドの対向する側に位置し、また患者の頭部の対向する側に設置される。次に、図15に示されたものと同様な信号発生装置を使用して、コイルが駆動されて、エージェント固有の時間ドメイン信号、好ましくは、節IIIで述べた採点アルゴリズムの1つによって選ばれたものによってシステムがトランスデュースされる。
【0178】
トランスダクション・パラメータ、すなわち、システムが晒される選ばれたトランスダクション条件は、(i)印加された時間ドメイン信号の電圧、(ii)印加された信号の時間長および(iii)印加された信号のスケジューリングである。印加電圧は、ゼロよりもわずかに大きい値から約100ボルトまでの範囲に及ぶ。印加の時間は、数分間から数日に及ぶ。スケジューリングというのは、信号のオンとオフとの交番周期を意味し、これらの交番周期は、信号がオンとオフの条件間を急速に交番する場合には、非常に短く、例えば数秒間でよいが、例えば数時間のオンと数時間のオフといった延長された期間とすることもできる。
【0179】
以下で明らかになるように、また発明の1つの態様に従えば、最適なエフェクタ時間ドメイン信号、そして哺乳類システムをトランスデュースするための最適化されたトランスダクション条件は、哺乳類システムの簡略化されたインビトロ類似物でトランスダクションを研究することによって同定できる。
(V.哺乳類システムに対してエージェント固有の効果を生成できる時間ドメイン信号の発生方法)
【0180】
上の節IIおよびIIIは、インビトロ・システム又は哺乳類システムでエフェクタとして振舞うことが知られているコンパウンドなどのエージェントに対して低周波時間ドメイン信号を発生させて、記録されたもののうちから最適な時間ドメイン信号を選択する方法について述べている。要約すれば、節IIで詳細に述べたように、哺乳類システムに効果を及ぼすことのできるエージェントが、磁気的および電磁的に遮蔽されたサンプル容器内に設置され、例えば、サンプル容器を取り囲むヘルムホルツ・コイルによって選ばれた磁場刺激がサンプルに印加され、次に、注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号が、例えば、低温容器内のSQUIDによって記録され、信号の記録は、複数の異なる刺激磁場条件、例えば、異なる雑音又はオフセット電圧の各々について行われる。典型的には、約50から1000個の時間ドメイン信号によって適当な信号組が構成され、そこから哺乳類システムをトランスデュースするのに最適な信号を見つけることができる。例えば、信号は、50個の異なる磁場刺激条件の各々において、10個の異なるサンプル濃度の各々について記録され、500個の時間ドメイン信号が生成される。
【0181】
異なる磁気刺激条件下において、またオプションとして異なるサンプル濃度について、そのエージェントに関する複数の低周波時間ドメイン信号が記録され、次に、上の節IIIで述べた採点アルゴリズムの1つを採用して、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析される。この工程で、異なる選ばれた磁場刺激における記録を表している各時間ドメイン信号が採点されて、最も高い得点を有する信号、すなわち記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数が最も多い場合を意味する信号が候補として同定され、そこからインビトロ・システムをトランスデュースできる最適な信号が同定できる。典型的には、この採点法によって最も高い得点を有する3−10個の信号が同定される。
【0182】
発明の1つの態様に従えば、上で採点アルゴリズムによって同定された時間ドメイン信号は、更により複雑な哺乳類システム中の標的生体とエージェントとの間の相互作用を反映する簡略化されたモデルとなるように設計されたインビトロ・システムにおいて高得点信号の各々について試験することによって哺乳類システム中での有効性について選択される。上で述べたように、インビトロ・システムは、またトランスダクション・コイルに印加される信号電圧、トランスダクション時間およびトランスダクション信号へのシステム露出のスケジューリングを含む最適なトランスダクション・パラメータを同定するのにも有用である。
【0183】
多くの研究の焦点であった1つの例では、エフェクタ・エージェントは、タクソール(パクリタキセルとしても知られている)であり、これは、微小管中へのチューブリン重合の刺激および安定化によって働くことが知られた抗癌エージェントである。インビトロで、タクソールは、細胞の微小管の運動に干渉し、細胞が細胞分裂で拘束されるようにし、細胞間の輸送を中断させ、細胞形状、細胞運動および細胞膜の分子の分布を乱す。すなわち、タクソールがインビトロでのチューブリン重合を促進する能力は、インビトロでのそれの活動機構と直接関連している。
【0184】
選ばれた最も有効なタクソールに関連する時間ドメイン信号を選択するインビトロ試験は、添加されたコンパウンドのチューブリン重合活動度を決めるために使用される標準的なチューブリン凝集分析であった。この分析は、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.Aの第70巻、ページ765−768(1973)にM.L.Shelanski、F.GaskinおよびC.R.Cantorが発表した「添加ヌクレオチド構造が存在しない微小管重合(Microtubule assembly in the absence of added nucleotides)」と、Biochemistry第16巻、ページ1754−1762(1977)にJ.C.LeeおよびS.N.Timasheffが発表した「子牛脳の微小管のインビトロ再構成:溶液変数の効果(In vitro reconstitution of calf brain microtubules:effects of solution variables)」に述べられている。
【0185】
分析プロトコルは、動的モードで340nmに設定されたスペクトロフォトメータを使用して、キュベット中で1回の分析を実行するように設計された。HTS−チューブリンは、サイトスケルトン社(Cytoskeleton,Inc.)から購入して、凍結乾燥されたタンパク質のように複数のバイアル瓶に入れて供給された。凍結乾燥されたチューブリンは、最終的な濃度1.5mg/mlにチューブリン重合バッファ(GPEM)に再懸濁された。分析を始める前に、スペクトロフォトメータは、動的モードに設定される。チューブリン重合バッファを空にして、スペクトロフォトメータを340nmでゼロにする。分析中、データは、必要に応じて10秒、30秒又は60秒ごとに収集される。平均化の時間は、1秒に設定された。下記で報告される研究では、分析が20分間実行された。
【0186】
インビトロ試験の1つのグループでは、最終濃度6mg/mlにCremophore(登録商標)中に懸濁されたタクソールのサンプルから低周波信号を記録することによってタクソール固有の時間ドメイン信号が得られた。信号は、DCオフセットを注入された状態で、10から241mVの間で増分1mVの雑音レベル設定で記録された。この注入された雑音レベル範囲にわたって合計241個の時間ドメイン信号が得られ、これらを上で詳細に説明したFFT自己相関アルゴリズムによって解析し、更なるインビトロ試験のための8個の時間ドメイン・タクソール信号が得られた。これらのうちの1つ、M2(3)と名づけられたものは、以下で説明するインビトロ・トランスダクション研究の8個の信号のうち最も効率的なものに含まれる。
【0187】
チューブリン重合反応は、チューブリンを1.5mg/mlの濃度で次のような重合条件に設定されたGPEMバッファに晒すことによって実行された。(i)バッファ(コントロール)、(ii)チューブリンのみ(第2のコントロール)、(iii)最終濃度4μMに添加されたタクソール、(iv)およそ1.693294mGの磁場を生成すると計算されたトランスダクション電圧において20分間にわたってトランスデュースされた上からのM2(3)タクソール信号。340nmにおける光学吸収の変化が各サンプルについて連続測定され、OD340データを使用して、トランスダクション研究の間で1分間の間隔ごとにチューブリン重合レート(340nmにおいて、dA/分で)が計算された。
【0188】
研究の結果は、1、2、3、4および5分の時点で、レート又はチューブリン重合として表わされて、それぞれ図16A−16Fに棒グラフで示されている。各図で、M2(3)1、M2(3)2およびM2(3)3は、同じ信号を表すが、わずかに異なる磁場レベルの下で、別々のトランスダクション・チェンバ中でトランスデュースされたものである。データは、わずか1分後でさえ、M2(3)トランスダクション信号が、2つのコントロールと比べて、しかもタクソール自身と比べてもチューブリン重合レートに顕著な増大を生成するのに有効であることを示している(図16A)。2分では(図16B)、3つのM2(3)信号のうちの2つの重合レートは、タクソールを含むサンプルについてと同様に、顕著に増大した。これらの傾向は、時点3、4および5分についても続き、5分でタクソール自身による重合レートが信号トランスダクションによるチューブリン重合レートに追いついている。
【0189】
反応のVmaxも20分の分析時間の終わりに各サンプルについて計算された。チューブリン重合化分析は、各々が異なるVmax値を有する3つの別々の事象を含むことが知られているが、分析全体で最大の反応レートを表す1つの合成Vmaxが決められ、これらの値が図17にプロットされている。明らかに、コントロールとなるVmax値は、両方とも約0.2と0.3との間にある。濃度4μMのタクソールは、1.8に近い最高のVmax値を示したが、タクソール信号のサンプルの2つは、これも高く、1.4を少し超えている。第3のタクソール信号のサンプルは、ずっと小さいが、それでも本質的にコントロール値を超えている。
【0190】
上で詳細に説明した方法に従って生成および同定された他のタクソール時間ドメイン信号によるトランスダクションについて複数の同様な研究が実行された。得られた結果は、上で説明したのと類似していて、信号ごとに、また異なる時点における同じ信号について、観測されたチューブリン重合の範囲は、変動するが、重合エージェントとしてのタクソール自身についても同程度の変動が観測されている。加えて、チューブリン・サンプルを白色雑音に晒すことによって、コントロール・レベルを統計的に超えるチューブリン重合活動を起こさなかった。
【0191】
上の結果に基づいて、時間ドメイン信号M2(3)およびインビトロ分析においてチューブリンで良好な活動度を示した3つの付加的タクソール固有の低周波時間ドメイン信号が哺乳類システムでのトランスダクション研究のために選択された。信号は、図18で信号A、B、CおよびD(M2(3)信号)と表記されている。この研究で、各々が10匹のマウスを含む5つのグループがそれぞれ、5×105U87グリア芽腫細胞で右前頭葉に注入され、その1日後にタクソール信号での処置が開始された。この研究で使用されたトランスダクション装置は、コイル巻線を備えた直径61cm(2フィート)の直角シリンダであった。これらのシリンダは、標準的なマウス用又はラット用のケージを受け入れることができ、そのためマウスは、定常的にMIDS再生信号に晒される。処理の間、各グループの10匹のマウスすべては、給餌および給水の間、1つのケージに入れられて、連続的再生の下で大型トランスダクション・コイルの中心円筒キャビティのエリア内に保たれた。この結果、60日の研究期間の約90−95%にあたる連続した露出時間を実現できた。処置には、研究の全過程にわたり、80−110Gの間の磁場にわたって1掃引/秒の掃引周波数で連続的に掃引することによってコイルに1つ又は4つのタクソール固有の信号が含まれる場合と信号が含まれない場合とがあった。すなわち、1つのグループの10匹の動物のそれぞれに対して、掃除と給餌のための時々の中断のみで、選ばれた磁場範囲にわたり信号を掃引することによって、各信号が連続的に再生された。
【0192】
研究の結果は、各グループ内で60日の期間を生き延びた動物の数としてプロットされ、図18にプロットされている。タクソールのみ(コンパウンド)の効果は、この研究で調べられていない。それは、多分、血流の脳障壁を効率的に通過する能力に欠けているせいであろう、脳への配給がうまくいかないことが知られているからである。明らかに、コントロール・グループの動物10匹すべてが34日までに死亡しており、タクソール信号Aによる処置についても同じ生存割合が得られた。しかし、チューブリン重合化分析でチューブリン重合を促進するために上で示した時間ドメイン信号であるタクソール信号Dと、タクソール信号Bは、両方とも、生存割合の顕著な改善を示した。信号Dグループのマウスは、46日目で20%の生存割合を示し、また信号Bグループのマウスは、最終的に20%の生存割合を示した。
【0193】
この結果、低周波時間ドメイン信号は、選ばれた多様な磁場注入条件下で生成され、採点アルゴリズムによって選択され、更に哺乳類システムでのエージェントの作用機構を模擬するインビトロ・システムでの選択を経た場合、哺乳類システムに対するエージェント自身の効果を模擬するために使用できることが実証された。
【0194】
上で、タクソールおよびインビトロ・チューブリン重合化分析に関して、信号トランスダクションによるタクソール関連の抗癌効果を生成するための信号を選択するための有効な時間ドメイン信号を発生および選択するシステムについて説明した。哺乳類システムの病気を処置するときに使用される多様な医薬が、インビトロ・システムにおいて医薬によって生成され、哺乳類システム・ホストに同様な標的医薬の相互作用を生成するのに有効な低周波時間ドメイン信号を同定するモデルとなる標的医薬を同定できたことを理解されよう。
【0195】
例えば、チューブリンに結合するように働く複数の医薬を、同様なインビトロ・チューブリン分析によって最適化された時間ドメイン信号について同様に試験できる。そのような医薬には、タクソールのほか、ドセタキセル(タキソテール)、エポチロン、ディスコデルモライド、コルヒチン、コムブレタスタティン、2−メトキシエストラジオール、メトキシベンゼン・サルフォンアミド・エストラムスチンおよびビンブラスチン(ベルバン)、ビンクリスチン(オンコビン)、ビノレルビン(ナベルビン)、ビンフルニン、クリプトフィシン、ハリコンドリン、ドラスタチンおよびヘミアスタリンを含むビンカ・アルカロイドが含まれる。
【0196】
別の例として、非常に多くの医薬は、それらの特殊な細胞レセプタ、例えばGタンパク・レセプタに結合する能力を通して機能する。インビトロ試験のために、例えば、観測すべき細胞の信号トランスダクション効果を許容する条件下で培養できる組み換えられた蛍光タンパク質の発現を通して、しばしば標的レセプタに結合するエージェントの検出を許容するように設計された遺伝子操作されたゲノムを伴う多くの異なる哺乳類システム細胞が存在する。すなわち、この処置モデルにおいて、トランスデュース・エージェントは、レセプタ結合分子であり、インビトロ・システムは、エージェント結合に応答して検出可能な細胞応答を生成する細胞培養システムであり、哺乳類システムは、結合エージェントによる処置に反応する病状を有する対象哺乳類システムである。
【0197】
同様に、複数の医薬は、溶解しやすい、あるいは膜結合性エンザイムの活動を禁止する能力を通して機能する。インビトロ試験のために、標的エンザイムは、同様に、検出可能な基質に対するエンザイム活動度の増加又は減少に伴って、例えば、切断発色効果によってエンザイム活動に対する医薬効果を検出できるインビトロ・エンザイム反応分析に適用することができる。このように、この処置モデルで、トランスデュース・エージェントは、エンザイム結合エージェントであり、インビトロ・システムは、エージェントに応答してエンザイムの運動に検出可能な変化を生じるエンザイム分析反応であり、哺乳類システムは、通常は、結合エージェントによって処置される病状を有する対象哺乳類システムである。
(VI.トランスダクションNMR信号の形成)
【0198】
発明の1つの実施の形態で、生体システム(下記参照)をトランスデュースするために使用される低周波信号は、トランスデュース・エージェント、例えば、治療薬の低周波NMRスペクトル信号である。
【0199】
NMRスペクトル、例えば、従来の高磁場NMR信号は、一定強度の静磁場に置かれたときに、サンプル溶液に特徴的な一連の周波数バンドを含む。プロトンNMRで、水素原子核のラーマー周波数は、サンプル分子中で発生する局所遮蔽効果およびスピン結合プロセスによって複数の周波数バンドに分離する。水素原子核について、磁気回転比は、42.58MHz/Tであり、従って、7Tの典型的なNMRマシンでは、ラーマー周波数は、(42.58MHz/T)*(7T)=300MHzで、数ヘルツ離れたバンドに分離する。7μTというずっと弱い磁場の中の水素原子核については、ラーマー周波数は、(42.58MHz/T)*(7μT)=300Hzとなり、ここでも数ヘルツ離れたバンドに分離する。このように、もし磁場の強度を下げれば、周波数帯は、それに対応して下方にシフトするが、(スピン結合プロセスによる)分離は、同じである。任意の局所遮蔽効果は、低い磁場強度において無視できる。
【0200】
高磁場装置で得られたデータを使用して、低磁場強度のNMRスペクトルを計算するために、次のような操作が実行される。例えば、7Tの磁場において、高磁場NMR装置が、分子上のメチル基内でのスピン結合プロセスによって、1.03ppm、1.13ppmおよび1.23ppmの3つのピークを生じ、TMS標準が、0.00ppmにピークを生ずると仮定する。TMS標準に対するメチル・バンドの周波数は、ppmシフトの差分にラーマー周波数を乗じたものになる。
(1.03ppm−0.00ppm)*300000000Hz=310Hz
(1.13ppm−0.00ppm)*300000000Hz=340Hz
(1.23ppm−0.00ppm)*300000000Hz=370Hz
理論上、TMSは、顕著な化学シフトを呈さないため、それのピーク位置は、単純に300000000Hzのラーマー周波数である。このように、メチル基の実際の周波数は、次のようになる。
300000000Hz+310Hz=300000310Hz
300000000Hz+340Hz=300000340Hz
300000000Hz+370Hz=300000370Hz
もし化学シフトがなければ(低磁場でのように)、メチル基の周波数は、ラーマー周波数を中心としたものとなり、それから遠ざかる方向にシフトしない。すなわち、メチル中央バンドは、ラーマー周波数に中心を持ち、2つのサイド・バンドは、ラーマー周波数に対して+30Hzおよび−30Hzに位置するはずである。
370Hz−340Hz=+30Hz
310Hz−340Hz=−30Hz
7マイクロテスラの磁場中でのラーマー周波数は、(42.58MHz/T)*(7μT)=300Hzである。すなわち、メチル基は、中央バンドをラーマー周波数300Hzに示し、2つのサイド・バンドを300Hz+30Hz=330Hzと300Hz−30Hz=270Hzとに示す。従って、メチル基の正味のスペクトルは、330Hz、300Hzおよび270Hzとなる。
これは、7μTの磁場で発生するはずとして理論的に計算されたNMRスペクトルである。この計算は、最後の周波数が負になるほど低くない低磁場強度についてのみ有効である点に注意すべきである。
【0201】
別の方式として、与えられたエージェントの低周波NMR信号は、磁気信号を検出するためにチューニングされていない超伝導量子干渉デバイス(SQUID)磁力計(上を参照)を使用して、ミリテスラの磁場における低磁場NMR検出によって直接発生させることができる。すなわち、上で述べた、低磁場NMRモードで動作する信号発生装置を採用して低磁場NMR信号を直接発生させることができる。
【0202】
いったん、低磁場NMR信号が計算又は生成されると、トランスダクション信号が構築される。これは、低磁場スペクトルの逆フーリエ変換を計算して時系列データを発生させることによって行うことができる。この時系列データは、また低磁場NMRスペクトルに与えられたのと同じ周波数および振幅を有する1組の正弦波を一緒に加えることによって発生させることができる。この時系列データは、従って、適当な電圧発生器の電圧を制御するために使用できる。この時間変化する電圧は、次にヘルムホルツ・コイルの両端に印加され、それによって導体を通って電流が流れ、時間変化する磁場が生成される。この時間変化する磁場は、次に生物学的トランスダクションのために使用される。
【0203】
発明の別の実施の形態では、NMR(核磁気共鳴)信号の代わりにEPR(電子常磁性共鳴)信号が使用される。EPRは、電子スピン−核スピン相互作用に関連する。他方、NMRは、核スピン−核スピン相互作用に関連する。この出願でNMRデータに関して概説した手順は、EPRデータが典型的に幾分高周波域にあることを除いて、EPRデータの場合に使用すべき手順と機能的に同等である。
【0204】
発明の実施の形態についての上の詳細な説明は、発明を上で開示した精確な形態に制限又は排除する意図のものではない。説明の便宜上、発明の特別な実施の形態および例について上で説明したが、当業者には、明らかなように、発明の範囲から外れることなく各種の等価な修正が可能である。例えば、プロセス又はブロックは、与えられた順序で提示されているが、代替の実施の形態は、異なる順序で、工程を有するルーチン又はブロックを有する採用システムを実行でき、またいくつかのプロセス又はブロックを削除、移動、追加、分割、組合せおよび/又は修正することが可能である。それらのプロセス又はブロックの各々は、多様な異なるやり方で実施できる。更に、しばしば、直列的に実行されるように示されているが、それらのプロセス又はブロックをむしろ並列に、あるいは、異なる時点で実行することもできる。
【0205】
ここに提示する発明が教えることは、必ずしも上で説明したのと同じでない他のシステムにも適用できる。上で述べた各種の実施の形態の要素および作用を組み合わせて、別の実施の形態を提供することができる。
【0206】
上の特許および出願およびその他の引用文献のすべては、添付の出願文書にリストされたすべてを含めて、ここに参照によって取り込まれる。発明の態様は、必要に応じて、上で述べた各種引用文献のシステム、機能および概念を採用するように修正して、発明の更に別の実施の形態を提供するようにすることができる。
【0207】
上の詳細な説明に照らしながら、発明に対してこれらおよびその他の変更を実施することができる。上の説明が発明の特定の実施の形態について詳細に説明し、考えうる最良のモードについて述べている一方で、テキスト中で上のことがどれほど詳しく述べられていようと、発明は、多くのやり方で実施できる。信号処理システムの詳細は、それの実施の詳細においてかなりの程度変化することがあろうとも、なお、ここに開示される発明に包含される。上で指摘したように、発明の特定の特徴又は態様を説明するときに使用される特別な用語は、その用語に関連する発明の任意の特別な特性、特徴又は態様に限定するものとしてここに再定義されることを意味すると解釈されるべきでない。一般に、以下の請求の範囲で使用される用語は、上の詳細な説明の節がそれらの用語を明示的に定義しないかぎり、発明を明細書に開示された特別の実施の形態に制限すると理解されるべきでない。従って、発明の真の範囲は、開示された実施の形態のみならず、請求項のもとで、発明を実施又は実現するすべての等価なやり方を包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類システムが電磁トランデューサの環境内で信号によってトランスデュースされるときに、哺乳類システムに対するエージェント固有の効果を生成できる信号を発生する方法であって、
(a)エージェントを含むサンプルを、磁気的および電磁的遮蔽を備えたサンプル容器に入れる工程であって、サンプルが低周波分子信号の信号源として機能し、磁気遮蔽が低温容器の外部にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件下で、サンプルに刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器内で注入された刺激磁場に重畳されたサンプル信号源放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々において、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちから、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するときに最も高い得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)エージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システムにおいて電磁トランデューサの環境内でインビトロ・システムが信号によってトランスデュースされるときにエージェント固有の応答を生成する能力について、工程(e)で同定された各信号を試験する工程と、
(g)インビトロ・システムで最も大きいエージェント固有のトランスダクション効果を生ずる1又は複数の信号を選択する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、刺激磁場の異なる条件が、
(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音と、
(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットと、
(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたって連続的に注入される低周波域にわたる掃引と、
を含むグループから選ばれた条件を含む前記方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、刺激磁場の異なる条件が、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットを含む前記方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法であって、刺激磁場の異なる条件が、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の低周波域にわたる連続的な掃引を含む前記方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、工程(f)が更に、エージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システムでエージェント固有の応答を生成する能力について時間ドメイン信号を試験したあとで、電磁トランデューサの環境内で印加されるトランスダクション電圧の変動を含む変化するトランスダクション条件の下でエージェント固有の応答を生成する能力について信号を試験することによって哺乳類システムでのトランスダクションのためのトランスダクション条件を最適化する工程を含む前記方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、工程(e)が
(i)時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲で選ばれた周波数範囲にわたり自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させて、FFT信号に雑音平均値を超えるピークの数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
(ii)2つの時間ドメイン信号に対して一対の位相空間を計算し、算術比較を行って2つの間の差分の尺度を得る工程と、
(iii)fを時間ドメイン信号をサンプリングするサンプリング・レートとしたとき、DCから8kHzのなかで選ばれた周波数範囲にわたって各々の事象ビンfに対して、各ビン中の事象カウント数を示すヒストグラムを発生させて、ヒストグラムに対し与えられた閾値を超えるビンの数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
(iv)時間ドメイン信号の冒頭部付近の小さいデータ・ブロックと、時系列の残りの部分とで相互相関を取り、結果の相互相関が与えられた閾値を超える回数を計数する工程と、
(v)DCから8kHzの間の選ばれた周波数範囲で、複数の定義された期間の各々にわたり時間ドメイン信号の一連のフーリエ・スペクトルを計算し、フーリエ・スペクトルを平均し、平均のFFT信号に対し雑音値平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
を含むグループのうちから選ばれた方法によって実行される前記方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法であって、工程(e)が、時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲内で選ばれた周波数範囲にわたって自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させ、FFT信号に対し雑音値平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択することによって実行される前記方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法であって、電磁トランスデューサは、それらの間に露出ステーションを定義して電磁環境の環境を構成する一対の整列した電磁コイルを含むヘルムホルツ・コイルを含み、工程(f)は、整列したコイル内にインビトロ・システムを設置する工程と、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間度ドメイン信号でシステムをトランスデュースする工程とを含む前記方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、エージェントは、インビトロ・システム中に無細胞の状態でチューブリン凝集を促進するのに有効な抗悪性腫瘍薬であり、工程(f)は、電磁トランスデューサの環境にチューブリンを含むコンポジションを設置する工程と、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号でコンポジションをトランスデュースする工程とを含む前記方法。
【請求項10】
電磁トランスデューサの環境内でインビトロ・システム又は哺乳類システムが信号によってトランスデュースされるときに、システムに対してエージェント固有の効果を及ぼすことにできる信号を発生させる方法であって、
(a)磁気的および電磁的の両方の遮蔽を備える容器のなかに、エージェントを含むサンプルを設置する工程であって、サンプルが分子信号の信号源として働き、磁気遮蔽が低温容器の外にある方法と、
(b)(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音と、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットと、(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたって連続的に注入される低周波域にわたる掃引とを含むグループのうちから選ばれた刺激磁場条件の下で、サンプル中に刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器中の注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々において、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちから、記録信号のなかで与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)システムを電磁トランスデューサの環境に設置して、工程(e)で同定された信号によってサンプルをトランスデュースする工程と、
を含む方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法であって、刺激磁場の異なる条件は、約±0.01から±1ボルトの間のオフセット電圧で注入されるDCオフセットを含む前記方法。
【請求項12】
請求項10記載の方法であって、刺激磁場の異なる条件は、約±0.01から±1ボルトの間の掃引電圧で注入され、少なくとも約0−1kHzの間の低周波域にわたる連続的な掃引を含む前記方法。
【請求項13】
請求項10記載の方法であって、工程(e)は、時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲内の選ばれた周波数範囲にわたる自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させ、FFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択することによって実行される前記方法。
【請求項14】
請求項10記載の方法であって、電磁トランスデューサは、それらの間に露出ステーションを定義して電磁環境の環境を構成する一対の整列した電磁コイルを含むヘルムホルツ・コイルを含み、工程(f)は、整列したコイル内に化学的な、インビトロ・システム又は哺乳類システムを設置する工程と、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によってシステムをトランスデュースする工程とを含む前記方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、エージェントは、インビトロ・システム中にチューブリン凝集を促進するのに有効な抗悪性腫瘍薬であり、工程(f)は、電磁トランスデューサの環境にチューブリンを含むコンポジションを設置する工程と、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によって、コンポジション中のチューブリンの信号に依存した凝集を生成するのに有効な条件下で、コンポジションをトランスデュースする工程とを含む前記方法。
【請求項16】
選ばれたエージェントの存在に応答するインビトロ・システム又は哺乳類システムをトランスデュースするための候補となる低周波時間ドメイン信号を発生させる装置であって、
(a)エージェントのサンプルを受け入れるように適応し、磁気的および電磁的遮蔽を備えた容器と、
(b)(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音と、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットと、(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたって連続的に注入される低周波域にわたる掃引とを含むグループのうちから選ばれた複数の刺激磁場条件の各々において、そのなかにサンプルを入れた状態で容器中に刺激磁場を注入するように動作する調節可能なパワー源と、
(c)前記パワー源(b)によって注入される異なる刺激磁場条件の各々において、注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む電磁的時間ドメイン信号を記録するための検出器と、
(d)検出器によって記録される信号を記憶するためのメモリ装置と、
(e)コンピュータであって、
(i)メモリ装置に記憶された時間ドメイン信号を取り出す工程と、
(ii)記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって取り出した時間ドメイン信号を解析する工程と、
(iii)閾値を超える低周波コンポネントの数が最も大きい時間ドメイン信号を同定する工程と、
を実行できるコンピュータと、
を含む装置。
【請求項17】
請求項16記載の装置であって、容器は、サンプル保持用の領域と、領域を取り囲む磁気遮蔽ケージと、磁気遮蔽ケージ内に含まれて、領域を取り囲むファラデー・ケージとを有する減衰チューブであり、ガウス雑音源は、ガウス雑音発生器と磁気ケージおよびファラデー・ケージのなかに含まれたヘルムホルツ・コイルとを含み、雑音発生器から雑音出力信号を受信し、更に時間依存信号の定常的な雑音コンポネントを除去するときに使用するための、雑音源およびSQUID(超伝導量子干渉デバイス)とに接続されて動作する信号インバータを含み、信号インバータは、雑音源からガウス雑音を受信して、サンプルに注入されたガウス雑音に対して反転したガウス雑音をSQUID中に出力するようになった前記装置。
【請求項18】
請求項16記載の装置であって、前記パワー源は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を発生させると計算された複数の選ばれたオフセット電圧の各々において、サンプルをそのなかに入れた状態で容器中にオフセット電圧を注入するように動作する前記装置。
【請求項19】
請求項16記載の装置であって、前記パワー源は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を発生させると計算された複数の異なる掃引電圧の各々において、少なくとも0と1kHzとの間の掃引周波数範囲にわたって連続した掃引を注入、生成するように動作する前記装置。
【請求項20】
請求項16記載の装置であって、取り出した時間ドメイン信号を解析するときに、前記コンピュータは、
(i)時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲内の選ばれた周波数範囲にわたって自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させ、FFTに対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
(ii)2つの時間ドメイン信号について一対の位相空間を計算し、算術比較を行って1つの間の差分の尺度を与える工程と、
(iii)fを時間ドメイン信号をサンプリングするサンプリング・レートとしたとき、DCから8kHzのなかで選ばれた周波数範囲にわたって各々の事象ビンfに対して、各ビン中の事象カウント数を示すヒストグラムを発生させて、ヒストグラムに対し与えられた閾値を超えるビンの数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
(iv)時間ドメイン信号の冒頭部付近の小さいデータ・ブロックと、時系列の残りの部分とで相互相関を取り、結果の相互相関が与えられた閾値を超える回数を計数する工程と、
(v)DCから8kHzの間の選ばれた周波数範囲で、複数の定義された期間の各々にわたり時間ドメイン信号の一連のフーリエ・スペクトルを計算し、フーリエ・スペクトルを平均し、平均のFFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
を含むグループのうちから選ばれた解析アルゴリズムを適用するように動作する前記装置。
【請求項21】
請求項20記載の装置であって、取り出した時間ドメイン信号を解析するときに、前記コンピュータは、時間ドメイン信号の自己相関を取る工程と、DCから8kHzの範囲内で選ばれた周波数範囲にわたって自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させる工程と、FFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てる工程と、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程とを含む解析アルゴリズムを適用するように動作する前記装置。
【請求項22】
哺乳類装置に対してエージェント固有の効果を生成するシステムであって、
(1)記憶メディアであって、次の工程
(a)それに対して哺乳類システムが応答するサンプルを磁気的と電磁的の両方の遮蔽を備えるサンプル容器に設置する工程であって、サンプルは、低周波分子信号の信号源として働き、磁気遮蔽は、低温容器の外にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件の下で、サンプル中に刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器中の注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々において、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちから、記録信号のなかで与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)インビトロ・システムが電磁トランスデューサの環境内で信号によってトランスデュースされるときに、エージェントに応答するコンパウンドを含むインビトロ・システムにおいてエージェント固有の応答を発生させる能力について、工程(e)で同定された信号を試験する工程と、
によって生成されるエージェント固有の低周波時間ドメイン信号をその上に記憶する記憶メディアと、
(2)サンプルを受け入れるトランスデューサ環境を定義する内部領域を有する1又は複数の磁気コイルを含む電磁トランスデューサと、
(3)記憶メディアから受信した信号を増幅して、増幅信号をトランスデューサ・コイル(単数又は複数)に供給する増幅器と、
を含むシステム。
【請求項23】
請求項22記載の装置であって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を発生させるときに使用される刺激磁場の異なる条件は、
(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音と、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットと、(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたって連続的に注入される低周波域にわたる掃引とを含むグループのうちから選ばれる前記装置。
【請求項24】
請求項23記載の装置であって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を生成するときに使用される刺激磁場の異なる条件は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧で注入されるDCオフセットを含む刺激磁場の異なる条件を含む前記装置。
【請求項25】
請求項23記載の装置であって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を生成するときに使用される刺激磁場の異なる条件は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された掃引電圧で注入される、少なくとも約0−1kHzの間の低周波域にわたる連続的な掃引を含む前記装置。
【請求項26】
請求項22記載の装置であって、電磁トランスデューサは、それらの間に内部領域を定義する一対の整列した電磁コイルを有するヘルムホルツ・コイルを含む前記装置。
【請求項27】
記憶メディアであって、
(a)それに対して哺乳類システムが応答するサンプルを磁気的と電磁的の両方の遮蔽を備えるサンプル容器に設置する工程であって、サンプルは、低周波分子信号の信号源として働き、磁気遮蔽は、低温容器の外にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件の下で、サンプル中に刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器中の注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々において、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちから、記録信号のなかで与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)インビトロ・システムが電磁トランスデューサの環境内で信号によってトランスデュースされるときに、エージェントに応答するコンパウンドを含むインビトロ・システムにおいてエージェント固有の応答を発生させる能力について、工程(e)で同定された信号を試験する工程と、
によって生成されるエージェント固有の低周波時間ドメイン信号を、その上に有する記憶メディア。
【請求項28】
請求項27記載の記憶メディアであって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を生成するときに使用される刺激磁場の異なる条件は、次のものを含むグループのうちから選ばれたものである前記記憶メディア。
【請求項29】
請求項28記載の記憶メディアであって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を生成するときに使用される刺激磁場の異なる条件は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットを含む前記記憶メディア。
【請求項30】
請求項29記載の記憶メディアであって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を生成するときに使用される刺激磁場の異なる条件は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された掃引電圧で注入される、少なくとも約0−1kHzの間の低周波域にわたる連続的な掃引を含む前記メディア。
【請求項31】
請求項29記載の記憶メディアであって、エージェント固有の時間ドメイン信号が、インビトロ・システムにおいてチューブリン凝集を促進するのに有効な抗悪性腫瘍薬のサンプルから生成される前記メディア。
【請求項1】
哺乳類システムが電磁トランデューサの環境内で信号によってトランスデュースされるときに、哺乳類システムに対するエージェント固有の効果を生成できる信号を発生する方法であって、
(a)エージェントを含むサンプルを、磁気的および電磁的遮蔽を備えたサンプル容器に入れる工程であって、サンプルが低周波分子信号の信号源として機能し、磁気遮蔽が低温容器の外部にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件下で、サンプルに刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器内で注入された刺激磁場に重畳されたサンプル信号源放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々において、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちから、記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するときに最も高い得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)エージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システムにおいて電磁トランデューサの環境内でインビトロ・システムが信号によってトランスデュースされるときにエージェント固有の応答を生成する能力について、工程(e)で同定された各信号を試験する工程と、
(g)インビトロ・システムで最も大きいエージェント固有のトランスダクション効果を生ずる1又は複数の信号を選択する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、刺激磁場の異なる条件が、
(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音と、
(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットと、
(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたって連続的に注入される低周波域にわたる掃引と、
を含むグループから選ばれた条件を含む前記方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、刺激磁場の異なる条件が、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットを含む前記方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法であって、刺激磁場の異なる条件が、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の低周波域にわたる連続的な掃引を含む前記方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、工程(f)が更に、エージェントに応答するコンポネントを含むインビトロ・システムでエージェント固有の応答を生成する能力について時間ドメイン信号を試験したあとで、電磁トランデューサの環境内で印加されるトランスダクション電圧の変動を含む変化するトランスダクション条件の下でエージェント固有の応答を生成する能力について信号を試験することによって哺乳類システムでのトランスダクションのためのトランスダクション条件を最適化する工程を含む前記方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、工程(e)が
(i)時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲で選ばれた周波数範囲にわたり自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させて、FFT信号に雑音平均値を超えるピークの数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
(ii)2つの時間ドメイン信号に対して一対の位相空間を計算し、算術比較を行って2つの間の差分の尺度を得る工程と、
(iii)fを時間ドメイン信号をサンプリングするサンプリング・レートとしたとき、DCから8kHzのなかで選ばれた周波数範囲にわたって各々の事象ビンfに対して、各ビン中の事象カウント数を示すヒストグラムを発生させて、ヒストグラムに対し与えられた閾値を超えるビンの数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
(iv)時間ドメイン信号の冒頭部付近の小さいデータ・ブロックと、時系列の残りの部分とで相互相関を取り、結果の相互相関が与えられた閾値を超える回数を計数する工程と、
(v)DCから8kHzの間の選ばれた周波数範囲で、複数の定義された期間の各々にわたり時間ドメイン信号の一連のフーリエ・スペクトルを計算し、フーリエ・スペクトルを平均し、平均のFFT信号に対し雑音値平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
を含むグループのうちから選ばれた方法によって実行される前記方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法であって、工程(e)が、時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲内で選ばれた周波数範囲にわたって自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させ、FFT信号に対し雑音値平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択することによって実行される前記方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法であって、電磁トランスデューサは、それらの間に露出ステーションを定義して電磁環境の環境を構成する一対の整列した電磁コイルを含むヘルムホルツ・コイルを含み、工程(f)は、整列したコイル内にインビトロ・システムを設置する工程と、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間度ドメイン信号でシステムをトランスデュースする工程とを含む前記方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、エージェントは、インビトロ・システム中に無細胞の状態でチューブリン凝集を促進するのに有効な抗悪性腫瘍薬であり、工程(f)は、電磁トランスデューサの環境にチューブリンを含むコンポジションを設置する工程と、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号でコンポジションをトランスデュースする工程とを含む前記方法。
【請求項10】
電磁トランスデューサの環境内でインビトロ・システム又は哺乳類システムが信号によってトランスデュースされるときに、システムに対してエージェント固有の効果を及ぼすことにできる信号を発生させる方法であって、
(a)磁気的および電磁的の両方の遮蔽を備える容器のなかに、エージェントを含むサンプルを設置する工程であって、サンプルが分子信号の信号源として働き、磁気遮蔽が低温容器の外にある方法と、
(b)(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音と、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットと、(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたって連続的に注入される低周波域にわたる掃引とを含むグループのうちから選ばれた刺激磁場条件の下で、サンプル中に刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器中の注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々において、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちから、記録信号のなかで与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)システムを電磁トランスデューサの環境に設置して、工程(e)で同定された信号によってサンプルをトランスデュースする工程と、
を含む方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法であって、刺激磁場の異なる条件は、約±0.01から±1ボルトの間のオフセット電圧で注入されるDCオフセットを含む前記方法。
【請求項12】
請求項10記載の方法であって、刺激磁場の異なる条件は、約±0.01から±1ボルトの間の掃引電圧で注入され、少なくとも約0−1kHzの間の低周波域にわたる連続的な掃引を含む前記方法。
【請求項13】
請求項10記載の方法であって、工程(e)は、時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲内の選ばれた周波数範囲にわたる自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させ、FFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択することによって実行される前記方法。
【請求項14】
請求項10記載の方法であって、電磁トランスデューサは、それらの間に露出ステーションを定義して電磁環境の環境を構成する一対の整列した電磁コイルを含むヘルムホルツ・コイルを含み、工程(f)は、整列したコイル内に化学的な、インビトロ・システム又は哺乳類システムを設置する工程と、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によってシステムをトランスデュースする工程とを含む前記方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、エージェントは、インビトロ・システム中にチューブリン凝集を促進するのに有効な抗悪性腫瘍薬であり、工程(f)は、電磁トランスデューサの環境にチューブリンを含むコンポジションを設置する工程と、工程(e)で同定されたエージェント固有の時間ドメイン信号によって、コンポジション中のチューブリンの信号に依存した凝集を生成するのに有効な条件下で、コンポジションをトランスデュースする工程とを含む前記方法。
【請求項16】
選ばれたエージェントの存在に応答するインビトロ・システム又は哺乳類システムをトランスデュースするための候補となる低周波時間ドメイン信号を発生させる装置であって、
(a)エージェントのサンプルを受け入れるように適応し、磁気的および電磁的遮蔽を備えた容器と、
(b)(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音と、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットと、(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたって連続的に注入される低周波域にわたる掃引とを含むグループのうちから選ばれた複数の刺激磁場条件の各々において、そのなかにサンプルを入れた状態で容器中に刺激磁場を注入するように動作する調節可能なパワー源と、
(c)前記パワー源(b)によって注入される異なる刺激磁場条件の各々において、注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む電磁的時間ドメイン信号を記録するための検出器と、
(d)検出器によって記録される信号を記憶するためのメモリ装置と、
(e)コンピュータであって、
(i)メモリ装置に記憶された時間ドメイン信号を取り出す工程と、
(ii)記録信号中で与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって取り出した時間ドメイン信号を解析する工程と、
(iii)閾値を超える低周波コンポネントの数が最も大きい時間ドメイン信号を同定する工程と、
を実行できるコンピュータと、
を含む装置。
【請求項17】
請求項16記載の装置であって、容器は、サンプル保持用の領域と、領域を取り囲む磁気遮蔽ケージと、磁気遮蔽ケージ内に含まれて、領域を取り囲むファラデー・ケージとを有する減衰チューブであり、ガウス雑音源は、ガウス雑音発生器と磁気ケージおよびファラデー・ケージのなかに含まれたヘルムホルツ・コイルとを含み、雑音発生器から雑音出力信号を受信し、更に時間依存信号の定常的な雑音コンポネントを除去するときに使用するための、雑音源およびSQUID(超伝導量子干渉デバイス)とに接続されて動作する信号インバータを含み、信号インバータは、雑音源からガウス雑音を受信して、サンプルに注入されたガウス雑音に対して反転したガウス雑音をSQUID中に出力するようになった前記装置。
【請求項18】
請求項16記載の装置であって、前記パワー源は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を発生させると計算された複数の選ばれたオフセット電圧の各々において、サンプルをそのなかに入れた状態で容器中にオフセット電圧を注入するように動作する前記装置。
【請求項19】
請求項16記載の装置であって、前記パワー源は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を発生させると計算された複数の異なる掃引電圧の各々において、少なくとも0と1kHzとの間の掃引周波数範囲にわたって連続した掃引を注入、生成するように動作する前記装置。
【請求項20】
請求項16記載の装置であって、取り出した時間ドメイン信号を解析するときに、前記コンピュータは、
(i)時間ドメイン信号の自己相関を取り、DCから8kHzの範囲内の選ばれた周波数範囲にわたって自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させ、FFTに対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
(ii)2つの時間ドメイン信号について一対の位相空間を計算し、算術比較を行って1つの間の差分の尺度を与える工程と、
(iii)fを時間ドメイン信号をサンプリングするサンプリング・レートとしたとき、DCから8kHzのなかで選ばれた周波数範囲にわたって各々の事象ビンfに対して、各ビン中の事象カウント数を示すヒストグラムを発生させて、ヒストグラムに対し与えられた閾値を超えるビンの数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
(iv)時間ドメイン信号の冒頭部付近の小さいデータ・ブロックと、時系列の残りの部分とで相互相関を取り、結果の相互相関が与えられた閾値を超える回数を計数する工程と、
(v)DCから8kHzの間の選ばれた周波数範囲で、複数の定義された期間の各々にわたり時間ドメイン信号の一連のフーリエ・スペクトルを計算し、フーリエ・スペクトルを平均し、平均のFFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当て、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程と、
を含むグループのうちから選ばれた解析アルゴリズムを適用するように動作する前記装置。
【請求項21】
請求項20記載の装置であって、取り出した時間ドメイン信号を解析するときに、前記コンピュータは、時間ドメイン信号の自己相関を取る工程と、DCから8kHzの範囲内で選ばれた周波数範囲にわたって自己相関信号のFFT(高速フーリエ変換)を発生させる工程と、FFT信号に対し雑音平均値を超えるピーク数に関する得点を割り当てる工程と、得点に基づいて時間ドメイン信号を選択する工程とを含む解析アルゴリズムを適用するように動作する前記装置。
【請求項22】
哺乳類装置に対してエージェント固有の効果を生成するシステムであって、
(1)記憶メディアであって、次の工程
(a)それに対して哺乳類システムが応答するサンプルを磁気的と電磁的の両方の遮蔽を備えるサンプル容器に設置する工程であって、サンプルは、低周波分子信号の信号源として働き、磁気遮蔽は、低温容器の外にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件の下で、サンプル中に刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器中の注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々において、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちから、記録信号のなかで与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)インビトロ・システムが電磁トランスデューサの環境内で信号によってトランスデュースされるときに、エージェントに応答するコンパウンドを含むインビトロ・システムにおいてエージェント固有の応答を発生させる能力について、工程(e)で同定された信号を試験する工程と、
によって生成されるエージェント固有の低周波時間ドメイン信号をその上に記憶する記憶メディアと、
(2)サンプルを受け入れるトランスデューサ環境を定義する内部領域を有する1又は複数の磁気コイルを含む電磁トランスデューサと、
(3)記憶メディアから受信した信号を増幅して、増幅信号をトランスデューサ・コイル(単数又は複数)に供給する増幅器と、
を含むシステム。
【請求項23】
請求項22記載の装置であって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を発生させるときに使用される刺激磁場の異なる条件は、
(i)サンプルの場所に0と1G(ガウス)との間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入される白色雑音と、(ii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットと、(iii)サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで、少なくとも約0−1kHzの間の掃引範囲にわたって連続的に注入される低周波域にわたる掃引とを含むグループのうちから選ばれる前記装置。
【請求項24】
請求項23記載の装置であって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を生成するときに使用される刺激磁場の異なる条件は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧で注入されるDCオフセットを含む刺激磁場の異なる条件を含む前記装置。
【請求項25】
請求項23記載の装置であって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を生成するときに使用される刺激磁場の異なる条件は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された掃引電圧で注入される、少なくとも約0−1kHzの間の低周波域にわたる連続的な掃引を含む前記装置。
【請求項26】
請求項22記載の装置であって、電磁トランスデューサは、それらの間に内部領域を定義する一対の整列した電磁コイルを有するヘルムホルツ・コイルを含む前記装置。
【請求項27】
記憶メディアであって、
(a)それに対して哺乳類システムが応答するサンプルを磁気的と電磁的の両方の遮蔽を備えるサンプル容器に設置する工程であって、サンプルは、低周波分子信号の信号源として働き、磁気遮蔽は、低温容器の外にある工程と、
(b)選ばれた刺激磁場条件の下で、サンプル中に刺激磁場を注入する工程と、
(c)低温容器中の注入された刺激磁場に重畳されたサンプル・ソース放射を含む低周波時間ドメイン信号を記録する工程と、
(d)複数の異なる刺激磁場条件の各々において、工程(b)および(c)を反復する工程と、
(e)工程(c)で記録された信号のうちから、記録信号のなかで与えられた閾値を超える低周波コンポネントの数を測定する採点アルゴリズムによって解析するとき、最も高い信号得点を有する1又は複数の信号を同定する工程と、
(f)インビトロ・システムが電磁トランスデューサの環境内で信号によってトランスデュースされるときに、エージェントに応答するコンパウンドを含むインビトロ・システムにおいてエージェント固有の応答を発生させる能力について、工程(e)で同定された信号を試験する工程と、
によって生成されるエージェント固有の低周波時間ドメイン信号を、その上に有する記憶メディア。
【請求項28】
請求項27記載の記憶メディアであって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を生成するときに使用される刺激磁場の異なる条件は、次のものを含むグループのうちから選ばれたものである前記記憶メディア。
【請求項29】
請求項28記載の記憶メディアであって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を生成するときに使用される刺激磁場の異なる条件は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された電圧レベルで注入されるDCオフセットを含む前記記憶メディア。
【請求項30】
請求項29記載の記憶メディアであって、エージェント固有の低周波時間ドメイン信号を生成するときに使用される刺激磁場の異なる条件は、サンプルの場所に0と1Gとの間の選ばれた磁場を生成すると計算された掃引電圧で注入される、少なくとも約0−1kHzの間の低周波域にわたる連続的な掃引を含む前記メディア。
【請求項31】
請求項29記載の記憶メディアであって、エージェント固有の時間ドメイン信号が、インビトロ・システムにおいてチューブリン凝集を促進するのに有効な抗悪性腫瘍薬のサンプルから生成される前記メディア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図17】
【図18】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図17】
【図18】
【図14】
【公表番号】特表2010−509995(P2010−509995A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537240(P2009−537240)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/024307
【国際公開番号】WO2008/063654
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(509139380)ネイティヴィス、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/024307
【国際公開番号】WO2008/063654
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(509139380)ネイティヴィス、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]