説明

低圧水銀放電ランプ

【目的】 ランプの発光効率がかなり増加し、大変良好な演色は維持され、寿命中にランプがデグラデーションするスピードがかなり小さい低圧水銀放電ランプを提供する。
【構成】 演色が極めて優れ、完全放射体軌跡上あるいは近傍にカラーポイント(xL , yL ) を有し、水銀と希ガスとを含む、ガス漏れしない、放射線−透過エンベロープを具え、発光層を具える低圧水銀放電ランプであって、この発光層が2価のユーロビウムで活性化され、最大値が470 nmから500 nmの間で、半値幅が多くとも90nmのエミッションパンドを有する第1の発光材料と、2価のマンガンで活性化され、主に可視スペクトルの赤色領域に少なくともエミッションバンドを有する第2の発光材料とを含み、更に発光層が、最大値が430 nmから490 nmにあるバンドエミッションを有する第3の発光材料と、主に520 nmと565 nmとの間で発光する第4の発光材料と、主に590 nmと630 nmとの間で発光する第4の発光材料とを含む。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、演色が極めて優れ、完全放射体軌跡上あるいは近傍にカラーポジション(XL ,YL )を有する低圧水銀放電ランプに関するものであり、この低圧水銀放電ランプは、水銀と希ガスを含み、ガスを通さない放射線−透過エンベロープと、発光層とを具えており、この発光層が、2価のユーロピウムによって活性化された第1の発光材料であって、エミッションバンドが、最大値が470nm と500nm との間で、半値幅が最大90nmである第1の発光材料と、2価のマンガンによって活性化された第2の発光材料であって、主に可視スペクトルの赤色領域に少なくともエミッションバンドを有する第2の発光材料とを含むものである。
【0002】上述の「演色が極めて優れている」という表現は、平均演色指数R(a,8)(国際照明委員会(International Commission on Illumination) によって規定されている8つのテストカラーの演色指数値:CIE Publication No. 13.2 (TC−3.2), 1974参照) が少なくとも90の値を有するという意味である。
【0003】
【従来の技術】可視放射線の色は、色度図のカラーポイントを決定する色座標(x,y)によって特徴付けられる。(CIE Publication No. 15 (E −1.3.1), 1971参照)。一般的な照明に用いられる低圧水銀放電ランプ(以下単にランプということもある)は、“白色(white) ”と呼ぶことができる光を放射するものでなくてはならない。白色放射線は、完全放射体軌跡上に位置するカラーポイントにおける、色の三角形の中に見出される。このカーブは、以下カーブPと称するが、黒体ラインとも呼ばれ、異なった温度(いわゆる色温度)において、完全な黒体によって発せられる放射線のカラーポイントを含むものである。ある色温度は、カーブP上の所定のポイントに特定されるのみならず、このポイントにおいてカーブPと交わる線上に位置する色座標を有する放射線でも特定される。(上述のCIEPublication No. 15 参照) 。この放射線がカーブP近傍のカラーポイントを有するものであれば、この放射線は、所定の色温度を有する白色光として認識される。本明細書及び特許請求の範囲においては、「カーブP近傍のカラーポイイント」の表現は、このカラーポイントから、同じ色温度を有するカーブP上のポイントまでの距離が多くとも20MPCDであることを意味する。MPCD(最小可知覚色差“minimum perceptible colour difference") は、色差の単位である。(オプティカルスペクトラ、Optical Spectra by J.J. Rennion, October 1980,p.63 参照)。このランプで放射される光の色温度に関する特性と、演色とを考慮して発光層を課すべき要件とは別に、発光層は、低温水銀放電において発生する紫外線によって励起されて、高光束を生じ、ランプの寿命中を通じてこの高光束を維持する物質を含んでいることが要求される。
【0004】白色光を放射し、演色が極めて優れた低圧水銀放電ランプは、ヨーロッパ特許EP−A−0114441 及びEP−A−0124175 から公知である。これらのランプで、所望のランプ特性を得るためには、発光層が更にアンチモンあるいはアンチモンとマンガンによって活性化されるがハロリン酸塩カルシウムを含んでいることが必要である。実際には、低圧水銀放電ランプの比較的低い発光効率と組合わせて、公知のランプでは、ランプで放射される光の色及び演色に関する要件が実現され得るだけであることがわかった。特に、ランプに比較的高いウォール負荷がある場合にいえる。なぜなら、高い負荷がかかったランプでは、水銀放電において発生する大変短い波長の紫外線(185nm) の有害な影響が重要な役割を果たすためである。また、公知のランプの寿命中は、発光層の比較的強いデグラデーションが生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、とりわて、放射光が白色であり、演色が極めて優れた低圧水銀放電ランプを提供することを目的とするものであり、同時に低圧水銀放電ランプの発光効率が比較的高く、低圧水銀放電ランプの稼働寿命中はこの発光効率のデグラデーションの割合が比較的小さな低圧水銀放電ランプを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、冒頭に記載したような低圧水銀放電ランプにおいて、この目的を達成するために、発光層が、更に、最大値が430nm と490nm の間にあるバンドエミッションを有する第3の発光材料と、主に520nm と565nm の間で放出する第4の発光材料と、主に590nm と630nm の間で放出する第5の発光材料とを含むことを特徴とするものである。
【0007】本発明に係るランプは、そのランプで放射される光のカラーポント、発光効率、及び発光層のデグラデーションについて、負荷が高い場合も低い場合も、好適な特性を有していることがわかった。本発明に係るランプの演色も極めて優れている。
【0008】公知の低圧水銀ランプに用いられている、アンチモンとマンガンとで活性化されたハロリン酸塩カルウシムは、ランプの稼働中にスペクトルの全可視範囲に亘って、放出を示す。特に、このような特性を有するハロリン酸カルシウムは、演色が極めて優れたランプの発光層に好適に用いられる。しかしながら、本発明に係るランプにおいては、それぞれが主に可視スペクトルの比較的小さな部分で放出を示す3つの発光物質混合物が用いられており、演色が極めて優れた公知のランプの発光層に比べて、発光層がこのように放出スペクトルの急激な変化にさらされている低圧水銀放電ランプが、公知のランプと同様に極めて優れた演色を有するということは驚くべきことである。
【0009】ランプの発光層に、それぞれが、主として可視スペクトルの比較的小さい部分で放出する3つの発光材料の混合物を使用すること自体は、例えば米国特許第4,176,294 号及びオランダ国特許第164,697 号公報において知られている。しかしながら、これらの特許公報に記載されている低圧水銀放電ランプの発光層は、単に3つの発光材料を具えているだけであり、この様な低圧水銀放電ランプでは演色が良好にならない。
【0010】公知の低圧水銀放電ランプにおいてそうであるように、第1の発光材料が、2価のユーロピウムで活性化されたアルミン酸ストロンチウム、2価のユーロピウムによって活性化されたアルミン酸バリウム、2価のユーロピウムによって活性化されたホウリン酸ストロンチウムから成る群中の1または幾つかの物質を含む場合に、本発明に係るランプにおいて大変好ましい結果が得られる。上記の2価のユーロピウムで活性化されたアルミン酸ストロンチウム(以下SAEという)は、それ自体が公知である発光材料であり、式Sr(1-p) Eup Alq O (1 1/2q+1)で表される。ここでは25モル%までの以上のストロンチウムをカルシウムで置き換えてもよく。また、p は0.001 ≦p≦0.10、qは、2≦q≦5である。発光アルミン酸塩SAEは、オランダ国特許出願NL−A−8201943 公開公報により詳しく記載されているが、最大で485 〜495nm のエミッションバンドを有しており、半値幅は55から75nmである。2価のユーロピウムで活性化された上記アルミン酸バリウム(以下BAEという)は、式Ba(1-p) Eup Alq O (1/3q+1)で表わされる、それ自体が公知である発光材料である。ここでは、25モル%までのバリウムをストロンチウムで置き換えてもよい。pは0.005 ≦p≦0.25、qは5≦q≦10である。発光材料BAEは、オランダ国特許出願NL−A−8105739 号公開公報により充分に記載されているが、最大で475 〜485nm のエミッションバンドを有し、半値幅は70〜90nmである。上述の2価のユーロピウムで活性化されたホウリン酸塩ストロンチウム(以下SBPという)は、式m(Sr(1-x-y-p) Bax Cay Eup )0. (1−n)(P2O5),n(B2O3) で表され、それ自体が公知の発光材料である。ここで、xは、0≦x≦0.5 ,yは、0≦y≦0.2 ,pは、0.001 ≦p≦0.15, mは、1.75≦m≦2.30, 及びnは、0.05≦n≦0.23である。発光材料SBPは、ドイツ国特許出願DE−A−2848726 号公開公報に記載されているが、最大で470 〜485nm のエミッションバンドを有し、半値幅は80〜90nmである。
【0011】また、本発明に係る良好な特性をもったランプは、公知のランプでもそうであるように、第2の発光材料が3価のセリウムと2価のマンガンによって活性化された五ホウ酸塩を具えており、この五ホウ酸塩は、赤色Mn2+を放出する。これらの五ホウ酸塩(以下CBMという)はそれ自体が公知の発光材料であり(NL−A−7905680 及びNL−A−8100346 号参照)、式(y,La,Gd) (1-X) CeX (Mg, Zn, Cd)(1-p) Mnp B5O10 で規定される。ここで、20モル%までのボロンをアルミニウム及び/又はガリウムで置き換えてもよい。ここで、xは、0.01≦x≦1.0、pは、0.01≦p≦0.30である。ここでは、ガドリニウムとマグネシウムを含む五ホウ酸塩が好ましい。これらのホウ酸塩は、最大ではほぼ630nm 、半値幅約80nmの比較的狭いバンドにおいて、低圧水銀放電の短波長紫外線によって励起したMn2+によって大変有効な放出を示す。
【0012】本発明の低圧水銀放電ランプは、好ましくは、第3の発光材料が、2価のユーロビウムによって活性化されたアルミン酸バリウム−マグネシウム、及び2価のユーロピウムによって活性化されたクロロリン酸ストロンチウムから成る群中の1あるいは幾つかの物質を含むことが好ましい。上記2価のユーロピウムによって活性化されたアルミン酸バリウム−マグネシウムは、以下BAMというが、それ自体が公知の発光材料であり、ベータアルミナの構造と同類の六方晶系の結晶構造を有している。これらのアルミン酸は、式Ba(1-p) Eup , xMgO. yAl2O3で表わすことができ、25モル%までのAl2O3 はGa2O3 及び/又はSc2O3 で置き換えてもよい。また、ここでは、xは1≦x≦2,yは5≦y≦8、及びpは0.01≦p≦0.50であり、これらのアルミン酸塩は非常に有効である。また、最大で約450nm 、半値幅が約50nmのエミッションバンドを示す。上述の2価のユーロピウムによって活性化されたクロロリン酸ストロンチウム(以下SCAPという)は、公知の発光材料であり(米国特許第4,038,204 号明細書参照) 、鉱物性のリン灰石の結晶構造を有すると共に、一般的に化学量論的なM10(PO4)6X2 (Mはアルカリ土類、主としてSr;Xはハロゲン、主として塩素)からやや離れた基本格子の組成を有する。SCAPは有効なバンドエミッションを有する(最大約450nm 、半値幅約85nm)。
【0013】第4の発光材料に使用されるべき好適な物質は3価のテルビウムで活性化されたアルミン酸セリウム−マグネシウムと、3価のセリウムと3価のテルビウムで活性化された五ホウ酸セリウム−マグネシウムである。上記3価のテルビウムで活性化されたアルミン酸セリウム−マグネシウム(以下CATという)は、NL−A−7214862 号公報から公知であり、磁気亜鉛酸(magnetoplumbite) の結晶構造と同類の六方晶系の結晶構造を有する。アルミン酸塩CATは、式(Ce(1-p-q)Lap Tbq )2O3・xMgO・yAl2O3で規定され、ここでは25モル%までのAl2O3 をGa2O3 及び/又はSc2O3 で置き換えてもよい。また、xは2≦x≦4,yは10≦y≦16、pは0≦p≦0.50、qは0.01≦q≦0.60、及びp+qはp+q≦0.90である。上記の3価のセリウムと3価のテルビウムで活性化された五ホウ酸塩(以下CBTという)は、上述のNL−A−7905680 及びNL−A−8100346 号から公知であり、式(Y,La,Gd) (1=x-y) Cex Tb7(Mg, Zn, Cd)B5O10で表わすことができる。ここでは、20モル%までのボロン(B) をAl及び/又はGaで置き換えるようにしてもよい。また、ここで、xは、0.01≦x≦1−y,yは0.01≦y≦0.75の範囲にある。ここでは、ガドリニウムとマグネシウムを含む五ホウ酸塩が好ましい。発光材料CAT及びCBTが、主として520 〜565nm の範囲において大変効果的な線放射をもたらす。
【0014】第4の発光材料を、3価のセリウムと、第2の発光材料として使用できるとして上述した2価のマンガンによって活性化された五ホウ酸塩から構成することも可能である。第2の発光材料では、この五ホウ酸塩は3価のテルビウムによっても活性化されるため、第2の発光材料は、第4の発光材料の少なくとも一部をなしている。第4の発光材料の機能が、第2の発光材料によって完全に満たされていることは有利である。なぜなら、発光層が、1つ少ない発光成分を含むためであり、そのためランプの製造が簡単になるからである。2価のマンガン及び3価のテルビウム同様に3価のセリウムによって活性化された五ホウ酸塩(以下CBTMという)は、上記NL−A−7905680 及びNL−A−8200346 号とから公知であり、式(Y,La, Gd)(1-x-y) Cex TbY (Mg, Zn, Cd)(1-p) Mnp B5 O10で表すことができる。ここで、20モル%までのホウ素(B) をアルミニウム(Al)及び/又はガリウム(Ga)で置き換えてもよい。ここで、xは、0.01≦x≦1−y,0.01≦y≦0.75、及びpは、0.01≦p≦0.30である。ガドリニウム(Gd)でマグネシウム(Mg)を含む五ホウ酸塩が好ましい。
【0015】第5の発光材料を形成する好適な材料は、3価のユーロピウムによって活性化された酸化イットリウムである。この発光酸化物はそれ自体公知であり(以下YOXという)、式Y(2-p) Eup O3で規定される。ここで、pは、0.01≦p≦0.20であり、主に590 〜630nm の範囲で、たいへん有効な線放出を示す。
【0016】低圧水素ランプによって放射される光の色温度が比較的低いことを所望する場合は、発光層が、3価のセリウムで活性化された蛍光イットリウム−アルミニウムガーネットを含んでいることによってこれを実現できる。このアルミン酸塩(以下YAGという)、式Y3-x Cex Al5O12によって規定される。ここで、xは、0.01≦x≦0.15である。イットリウム(Y) を、ガドリニウム(Gd)、ランタン(La)、及びルテニウム(Lu)のような他の希土酸化物で置き換えてもよく、アルミニウム(Al)の一部を、例えば、ガリウム(Ga)及び/又はスカンジウム(Sc)で置き換えるようにしてもよい。これらの発光ガーネット(例えば、アプライドフィジクスレターズ;Appl. Phys. Letters. 11. 53.、1967参照) は、短波長紫外線のみならず、可視深青線をも吸収し、最大約560nm の広いバンド(半値幅約110nm)で放出する。
【0017】
【実施例】以下に、4つの表を用いて本発明をより詳細に説明する。表I、II、III に示されている全結果は、定格電力36Wの、TLD タイプの管状低圧水銀放電ランプ(管長約120 cm、管径約2.5 cm、クリプトン及びアルゴンガスを充填)に関するものである。表Iは、このランプによって放射される光の色温度Tc、演色指数Ra及び1m/Wで100 時間作動させた後の発光効率η100 を、本発明のランプの発光層の5つの異なる組成について示したものである。第1から第5まで(第5を含む)の発光材料は、表I、II、III において、ローマ数字IからVまで表示されている。使用されている第1の発光材料は、2価のユロピュウムで活性化されたアルミン酸ストロンチウム(SAE)である。使用されている第2及び第4の発光材料は、3価のセリウム、3価のテルビウム及び2価のマンガンで活性化されたガドリニウム及びマグネシウムを含む5ホウ酸塩(CBTM)である。使用されている第3の発光材料は、2価のユーロビウムで活性されたアルミン酸バリウム−マンガン(BAM)である。第4の発光材料は3価のユーロビウムで活性化された酸化イットリウム(YOX)である。5つの組成のうちの2つは、3価のセリウムで活性化されたイットリウム−アルミニウムガーネット(YAG)を含んでいる。これらの組成は重量パーセントで与えられている。また、定格電力36Wの、TLDタイプの低圧水銀放電ランプにおいて、関連するCBTMのカラーポイントの座標が、発光層の各組成について、CBTMの重量パーセントの下に表示されている。このカラーポイントは、CBTMに存在するテルビウムとマンガンの量によって、比較的広い範囲にわたって調整することができる。演色が極めて優れた(Ra≧90) 本発明に斯かる低圧水銀放電ランプは、この低圧水銀放電ランプによって放射される光の大変広い色温度範囲にわたって、比較的高い発光効率を以て製造することができる。
【0018】表IIは、表Iと同様に、放電ランプによって放射される光の色温度Tc、演色Ra、及び本発明のランプの発光層の5つの異なる組成に関する1m/Wにおける発光効率η100 を示す。しかし、表IIに示されている組成中、第1の発光材料は、2価のユーロピウムによって活性化されたアルミン酸バリウム(BAE)を使用した。色温度Tcに依存する発光効率η100 と演色指数は、表Iに示されている発光層の組成について見出されるものに対応していることは明らかである。
【0019】表III では、本発明の低圧水銀放電ランプの、表Iに示されている発光層の組成とは異なる組成についての色温度Tcの2つの値に関する演色指数Raと発光効率η100 とを示す。ここでは発光材料の一つが選択的な発光材料によって置き換えられている。表III の第1列及び第2列には、第1の発光材料としてのSAEが2価のユーロビウムによって活性化されたホウリン酸ストロンチウム(SPB)で置き換えられている。第3列及び第4列では、第4の発光材料としてのCBTMが3価のテルビウムによって活性化されたアルミン酸セリウム−マグネシウム(CAT)で置き換えられている。このことは、第2の発光材料としてその層に存在する五ホウ酸塩が、テルビウムによって活性化されずに、排他的にマンガン及びセリウムによって活性化される(CBM)ことを意味する。そこで、CBTMはCATとCBMの混合物によって置き換えられる。第5及び第6コラムでは、BAMは第5発光材料として2価のユーロビウムによって活性化されたクロロリン酸ストロンチチウム(SCAP)によって置き換えられている。表III は、本発明の低圧水銀放電ランプの発光層が広く異なる発光材料から構成され得る事を示すものである。
【0020】表IVは、2つのタイプの低圧水銀放電ランプについての、色温度Tc、100 時間動作させた後の発光効率η100 、演色指数Ra、及び、2000時間後のランプの発光効率( η2000) と100 時間後のランプの発光効率( η100)との商( η2000/η100 )として表現されるランプの寿命中の発光層のデグラデーションを示す。これらのランプの番号は、定格電力36Wの、TLDタイプの管状低圧水銀放電ランプ(管長約120 cm;管径約2.5 cm;クリプトン及びアルゴンガスを充填)に関するものであった。このランプのウォール負荷は、ランプの動作中、すなわち、ランプのウォール負荷が比較的低いときで約380 W/m2であった。更に、定格電力が同じで、やはり低圧水銀放電ランプであるアルゴンからなるガスを充填したPL−Lタイプのランプが使用された。PL−Lタイプのランプは、並列に配置され、ブリッジによって内部が接続された2つの管状部分から構成された放電容器を有している。管状部分の内径は約1.5 cmで、ランプの動作中の放電コラムの全長約106 cmである。ウォール負荷は動作中で約720 W/m2である。500 W/m2以上のウォール負荷を有するランプはしばしば高負荷のものとして認識されるので、ここで使用されているPL−Lタイプのランプは高負荷ランプの一例である。表IVの第1列は本発明のランプであって、ランプから放射される光の色温度が約4000Kになるように発光層が構成されたTLDタイプのランプに関するものである。表IVの第2列も、本発明に係るTLDタイプのランプに関するものである。しかし、このランプの発光層の組成は、ランプで放射される光の色温度が約5200Kになるものである。表IVの第3列及び第4列もTLDタイプのランプに関するものであるが、これらのランプの発光層はハロリン酸カルシウムを具えているため本発明に関するものではない。この第3及び第4のランプの発光層の組成は、ランプで放電される光の色温度が4000K及び5200Kであるものが選択された。表IVの残りの4つの列は、PL−Lタイプのランプに関するものである。第5及び第6列のランプは本発明に関するものである。しかし、第7及び第8列のランプの発光層は、ハロリン酸塩カルシウムを具えている。表IVの第5及び第7列のランプで放射される光の色温度は約4000Kである。表IVの第6及び第8列のランプで放射される光の色温度は約5200Kである。両タイプの本発明のランプは、対応する発光層がハロリン酸カルシウムを含むランプよりかなり高い発光効率を有していることがわかる。また、特に(高負荷の)PL−Lタイプのランプについては、本発明のランプは、発光層がハロリン酸カルシウムを含むランプより発光層のデクラデーションがより少ないことが明らかである。発光層がハロリン酸カルシウムを含むPL−Lタイプのランプの発光効率は大変低いものである。大変低い発光効率と発光層の急激なデクラデーションとの組み合わせは、演色が極めて優れており、発光層がハロリン酸カルシウムを含む高負荷のランプを製造することを、興味のないものにする。しかし、表IVのデータから、本発明に係る高負荷のランプが高い発光効率と比較的小さいデグラデーションを有することが導かれる。
【0021】
【表1】


【0022】
【表2】


【0023】
【表3】


【0024】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 演色が極めて優れ、完全放射体軌跡上あるいは近傍にカラーポイント(xL ,yL )を有し、水銀と希ガスとを含み、ガス洩れしない、放射線−透過エンベロープを具えるとともに、発光層を具える低圧水銀放電ランプであって、この発光層が2価のユーロピウムで活性化され、最大値が470nm から500nm の間にあり、半値幅が多くとも90nmのエミッションバンドを有する第1の発光材料と、2価のマンガンで活性化され、主に可視スペクトルの赤色領域に少なくともエミッションバンドを有する第2の発光材料とを具え、更に、上記発光層が最大値が430nm から490nm にあるバンドエミッションを有する第3 の発光材料と主に520nm と565nm の間で放射する第4の発光材料と主に590nm と630nm の間で放射する第5の発光材料とを具えることを特徴とする低圧水銀放電ランプ。
【請求項2】 請求項1に記載の低圧水銀放電ランプにおいて、前記第2の発光材料が、2価のユーロピウムで活性化されたアルミン酸ストロンチウムと、2価のユーロピウムで活性化されたアルミン酸バリウムと、2価のユーロピウムで活性化されたホウリン酸ストロンチウムから成る群中の1または幾つかの物質を含むことを特徴とする低圧水銀放電ランプ。
【請求項3】 請求項1または2に記載の低圧水銀放電ランプにおいて、前記第2の発光材料が、3価のセリウムと2価のマンガンとで活性化されか五ホウ酸塩であって、赤色Mn2+を放出する五ホウ酸塩を含むことを特徴とする低圧水銀放電ランプ。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載の低圧水銀放電ランプにおいて、前記第3の発光材料が、2価のユーロピウムで活性化されたがアルミン酸バリウム−マンガンと2価のユーロピウムで活性化されたクロロリン酸ストロンチウムから成る群中の1または幾つかの物質を含むことを特徴とする低圧水銀放電ランプ。
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載の低圧放電ランプにおいて、前記第4の発光材料が、3価のテルビウムで活性化されたアルミン酸セリウム−マンガンと、2価のセリウムと3価のテルビウムで活性化された五ホウ酸塩から成る群中の1または幾つかの物質を含むことを特徴とする低圧水銀放電ランプ。
【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかに記載の低圧水銀放電ランプにおいて、前記第5の発光材料が、3価のユーロウムで活性化された酸化イットリウムを含むことを特徴とする低圧水銀放電ランプ。
【請求項7】 請求項3に記載の低圧水銀放電ランプにおいて、前記五ホウ酸塩が、3価のテルビウムで活性化されたものであり、前記第4の発光材料の少なくとも一部を構成するものであることを特徴とする低圧水銀放電ランプ。
【請求項8】 請求項1乃至7のいずれかに記載の低圧水銀放電ランプにおいて、前記発光材料が、さらに3価のセリウムで活性化されたイットリウム−アルミニウムガーネットを含むことを特徴とする低圧水銀放電ランプ。

【公開番号】特開平6−208845
【公開日】平成6年(1994)7月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−238257
【出願日】平成5年(1993)9月24日
【出願人】(592098322)フィリップス エレクトロニクス ネムローゼ フェンノートシャップ (6)
【氏名又は名称原語表記】PHILIPS ELECTRONICS NEAMLOZE VENNOOTSHAP