説明

低圧水銀放電灯

【課題】低圧水銀放電灯の最冷部温度に依存する発光効率を、広い温度範囲で高効率化を実現する。
【解決手段】U字状の気密容器11内の放電空間13に希ガスと発光金属が封入され、ランプ電流ILと前記気密容器の内径φinがIL/φin>0.05の関係にある高電流密度で、少なくとも入力電力を500Wとして低圧水銀放電灯を構成する。さらに気密容器11のU字状先端の放電空間13に連通させるとともに放電空間外の気密容器11の最冷部となる空間部281に、アマルガム30を保持可能とした連結孔282を備えたカプセル28を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、最冷部温度に依存する発光効率を広い温度範囲で高効率化した殺菌などの用途に用いられる低圧水銀放電灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の低圧水銀放電灯では、発光管の電極部を金属製ブロックおよび金属板で固定し、気体温度調節装置などからの温度調整された気体を、電極後部に吹き付けることにより、発光管の最冷部の温度を所定値に設定している。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−135486公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、殺菌ランプとして用いる場合の発光効率の低下を抑えるには25℃付近に冷却する必要から気体温度調整装置が必要となることから、気体温度調整のための手段とこれを制御するための手段が必要でシステムとして煩雑となる、という問題があった。
【0005】
この発明の目的は、最冷部の温度に依存する発光効率を、広い温度範囲で高効率化を図ることのできる低圧水銀放電灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明の低圧水銀放電灯は、U字状の気密容器内の放電空間に希ガスが封入され、ランプ電流ILと前記気密容器の内径φinがIL/φin>0.05の関係にある電流密度で、少なくとも入力電力を500Wとした低圧水銀放電灯において、前記放電空間に連通させるとともに前記放電空間外の前記気密容器の最冷部となる空間部に、アマルガムを保持可能としたカプセルを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、冷却等の措置を行なうことなく最冷部を形成するとともに、封入薬品としてアマルガムを用いたことにより、広い温度範囲での高い発光効率を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の低圧水銀放電灯に関する一実施形態について説明するための一部を切欠して示した概略的な構成図である。
【図2】図1の電極について説明するための構成図である。
【図3】図1の要部を拡大して示した一部切欠断面図である。
【図4】この発明の効果について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1〜図3は、この発明の低圧水銀放電灯に関する一実施形態について説明するための、図1は一部を切欠して示した概略的な構成図、図2は図1の電極部分について説明するための構成図、図3は図1の要部を拡大して示した一部切欠断面図である。
【0011】
図1〜図3において、11は、中間部分に屈曲部12が形成されたU字状の紫外線透過性で耐熱性の管状の放電空間13を備えた気密容器である。気密容器11は、例えば石英ガラス製で形成される。気密容器11の両端内部には、例えばタングステン材で形成された電極14,15が配置される。
【0012】
電極14,15は、封止部16,17で一部が気密容器11で封止されたインナーリード18,19を介して電気的にそれぞれ接続されたアウターリード20,21から外部にそれぞれ取り出される。アウターリード20,21は図示しない電源に接続される。
【0013】
電極14,15の近傍に配置される22,23は電極であり、この電極22,23は放電を開始させる補助用であるエミッターが塗布されている。電極22は、図2にも示すように、その一端はインナーリード221を、他端はインナーリード222を介してアウターリード24,25から外部に取り出される。アウターリード24,25は、封止部16でインナーリード18とともに封止される。アウターリード24,25には、電極22を励起させる図示しない電源が供給される。
【0014】
同じように、電極23は、その一端がインナーリード231を、他端がインナーリード232を介してアウターリード26,27から外部に取り出される。アウターリード26,27は、封止部17でインナーリード19とともに封止される。アウターリード26,27には、電極23を励起させる図示しない電源が供給される。
【0015】
28は、屈曲部12の先端部に一体的に形成されて最冷部となる長さが30mm程度の内部に空間部281を備えたカプセルである。空間部281は、図3にも示すように、内径が5mm程度であり、放電空間13と空間部281が内径1mm程度の連結孔282で連結される非放電空間である。連結孔282は、空間部181よる絞られた形状としたことから消灯時におけるアマルガム30の保持に有効となる。
【0016】
29は、屈曲部12に対向する位置の気密容器11の両端側を、気密容器11と同材料で連結させることで、機械的な強度を増した連結部である。
【0017】
放電空間13には、封入ガスとしてアルゴンガス0.5Torrが封入され、封入薬品としてはSn(錫):50±5%、Bi(ビスマス):30±5%、Pb(鉛):15±5%、Hg(水銀):5%の成分比率からなるアマルガム30が封入されている。アマルガム30は、カプセル28の空間部281内にも封入される。
【0018】
また、ランプ電流ILと気密容器11の内径φinの関係が、IL/φin>0.05と高い電流密度としている。高電流密度の場合は、点灯中に高温となる。
【0019】
このように構成された低圧水銀放電灯に電力が投入されると、まず電極22,23から電子が放出されて放電空間13内の放電破壊が行われ点灯を開始する。点灯後は、電子からエネルギーをアマルガム30が受けて励起され、アマルガム30がカプセル28から放出されアマルガム30に含まれる水銀に基づき殺菌効果をもたらす254nmが発光される。
【0020】
低圧水銀放電灯が消灯されると、アマルガム30は最冷部であるカプセル28の空間部282に還流される。以降、点灯時と消灯時において、同サイクルを繰り返すこととなる。
【0021】
図4は、この発明のカプセル内にアマルガムが収容された低圧水銀放電灯と従来の水銀が放電空間に封入された低圧水銀放電灯とを同条件で点灯させた場合の温度依存性について説明するための説明図である。
【0022】
すなわち、従来は20℃前後にピンポイント的な発光効率の高い箇所がある。この発明の場合は、最冷部であるカプセル28内に、封入薬品としてSn:50±5%、Bi:30±5%、Pb:15±5%、Hg:5%の成分比率からなるアマルガムが封入された場合の最適温度範囲は、4〜40℃程度なる。このため、最冷部温度に依存する発光効率を広い温度範囲で高効率化を図ることが可能となる。
【0023】
この実施形態では、電極から離れた位置に最冷部となるカプセルを形成するとともに、広い温度範囲で発光効率を呈するアマルガムを収容したことにより、特別な気体温度調整装置を必要とすることなしに、高い発光効率を実現することができる。
【0024】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、アマルガムが封入されるカプセル28は、電極14,15から最も遠い中間部に形成したが、電極14,15付近に比して温度が低い箇所であれば中間部分には限定されない。これにより、カプセル28は下向きとは限らず水平方向に位置しても、場合によっては斜めあるいは垂直に形成されるものであっても構わない。要は、最冷部であればよい。
【符号の説明】
【0025】
11 気密容器
12 屈曲部
13 放電空間
14,15 電極
16,17 封止部
18,19,221,222,231,232 インナーリード
20,21,24,25,26,27 アウターリード
22,23 電極
28 カプセル
281 空間部
282 連結孔
29 連結部
30 アマルガム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字状の気密容器内の放電空間に希ガスが封入され、ランプ電流ILと前記気密容器の内径φinがIL/φin>0.05の関係にある電流密度で、少なくとも入力電力を500Wとした低圧水銀放電灯において、
前記放電空間に連通させるとともに前記放電空間外の前記気密容器の最冷部となる空間部に、アマルガムを保持可能としたカプセルを備えたことを特徴とする低圧水銀放電灯。
【請求項2】
前記カプセルは、前記両電極から遠い位置に形成したことを特徴とする請求項1記載の低圧水銀放電灯。
【請求項3】
前記アマルガムは、Sn:50±5%、Bi:30±5%、Pb:15±5%、Hg:5%の成分比率からなることを特徴とする請求項1または2記載の低圧水銀放電灯。
【請求項4】
前記放電空間に連通される前記カプセルの空間部は細い連結孔で連結したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低圧水銀放電灯。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate