説明

低圧鋳造装置及び低圧鋳造方法

【課題】 鋳造溶湯の湯漏れを防止できると共に、生産性を大幅に向上させることができる低圧鋳造装置及び低圧鋳造方法を提供する。
【解決手段】 低圧鋳造装置は、鋳物形状のキャビティ12cを有する金型1と、この金型1の下方に配置された溶湯保持炉13と、下端部が前記溶湯保持炉13内に挿入され上端部が前記金型1の溶湯注入口38に連結されるストークと、前記溶湯保持炉13の上に配置された支持体4と、前記支持体4と前記金型1との間に設けられ前記ストーク6を前記金型1の溶湯注入口38に弾性的に押圧する弾性体2と、金型1と溶湯保持炉38との間の前記ストーク6の少なくとも一部を加熱するヒータと、を有する。低圧鋳造方法は、前記ストーク6と前記支持体4との間の雰囲気温度及び前記ストーク6上部の温度に応じて、前記ヒータ3の出力を制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶湯保持炉内の所定温度の溶湯をストークを介して金型に注入した後、この金型内で溶湯を凝固させる低圧鋳造装置及びその低圧鋳造方法に関し、特に、鋳造溶湯の湯漏れ等のトラブルの発生を防止できると共に、生産性が優れた低圧鋳造装置及びその低圧鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、溶湯と鋳物形状のキャビティとの間の圧力差を利用して、キャビティ内に溶湯を注入して鋳造する方法に、低圧鋳造法、差圧鋳造法及び減圧鋳造法等がある。これらのうち、例えば低圧鋳造法は、容器内の溶解金属の湯面に不活性ガス、工場エアー及びCO2等により比較的低い正の圧力を印加し、この圧力で容器内の溶融金属をストークを介して上方に押し上げ、容器上方に配置された鋳型に注入することにより、鋳物を製造する方法である。この低圧鋳造法は、車輌の部材等に使用されるアルミニウム合金等の鋳物製品を製造することに広く利用されている。
【0003】図2は、従来の低圧鋳造法で使用される低圧鋳造機を示す断面図である。溶湯保持炉13は密閉されており、その側壁上部には、不活性ガス、工場エアー及びCO2等の供給源に接続された通気管19が挿入されている。この通気管19の溶湯(保持)炉の外部の部分には、圧力調整バルブ20が介装されている。溶湯保持炉13の内部には、その内壁に沿って電気ヒータ21が配設されており、溶湯保持炉13の中央部には溶湯7を貯留した溶湯保持坩堝16が配置されるようになっている。溶湯保持坩堝16の中央部には溶湯保持炉13の蓋に取付けられたストーク22が配置されており、このストーク22はその下部が溶湯保持坩堝16内の溶湯7内に浸漬されている。
【0004】溶湯保持炉13の上方に配置されたダイプレート(固定プラテン)11上には、下金型12b及び上金型12aが配置されており、固定プラテン11上には支持フレーム14aが立設されている。この支持フレーム14aの上端には、水平方向に延びる上部フレーム14bが固定されている。また、支持フレーム14aには、可動プラテン17aが昇降自在に配置されている。上部フレーム14bには、締付けシリンダ15がそのロッドを下方に向けて固定されている。この締付けシリンダ15のロッドは可動プラテン17aに固定されており、シリンダ15の作動により可動プラテン17aが昇降駆動される。可動プラテン17aと上金型12aとの間には連結棒17bが固定されている。従って、シリンダ15の作動により、可動プラテン17aが昇降すると、上金型12aが昇降移動する。なお、上金型12aには、その上部から押出板18が挿入されている。下金型12bと上金型12aとの合わせ面には、凹部が形成されており、この下金型12bと上金型12aとを重ね合わせたときに、前記凹部により鋳物形状のキャビティ12cが形成される。このキャビティ12c内で凝固した鋳物は押出板18を上金型12a間に押し込むことにより上金型12aから離脱される。下金型12bの中央部には溶湯注入口12dが設けられており、この下金型12bの下面には溶湯注入口12dに整合する位置に中間ストーク23が固定されている。この中間ストーク23は固定プラテン11に設けられた孔11bを挿通して固定プラテン11の下方に露出している。そして、この中間ストーク23と溶湯保持炉13に固定されたストーク22とが位置合わせをして連結されている。
【0005】このように構成された溶湯保持炉においては、溶湯7を貯留した溶湯保持坩堝16を溶湯保持炉13内に挿入し、調整バルブ20で圧力を調整された不活性ガスを通気管19を介して溶湯保持炉13内に導入する。このガス圧力により、溶湯保持坩堝16内の溶湯7の湯面が加圧されて、溶湯が押し上げられ、ストーク22及び中間ストーク23を介して、下金型12b及び上金型12aにより形成されたキャビティ12c内に注入される。この場合に、溶湯7が中間ストーク23内で凝固することを防止するために、中間ストーク23は加熱ヒータ24で加熱されている。キャビティ12c内で溶湯7が冷却されて凝固した後、シリンダ15を作動させて可動プラテン17a及び上金型12aを上昇させ、更に押出板18を押して上金型12aから鋳物を取り出す。このようにして、キャビティに倣った鋳物を製造することができる。
【0006】このように従来技術では、溶湯保持炉内に配置されたストーク22と下金型12bとを連通する中間ストーク23が使用されている。このため、中間ストーク23内で溶湯7が冷却されて凝固することを防止するために、この中間ストークを加熱する必要があり、上述のように加熱ヒータ24を中間ストーク23の周囲に取り付けて加熱する方法(実開平3−120958号公報)及びガスバーナーで中間ストーク23を加熱する方法等が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の従来技術には、以下に示す問題点がある。即ち、上述したようなガスバーナーで中間ストークを加熱する方法では、温度管理の精度が低く、中間ストーク内部の温度分布を均一にすることが困難であるため、溶湯と製品との湯切れが悪く、鋳物の中心部に軸巣といわれる巣等の欠陥が発生して、製品の歩留りが低くなるという問題点がある。また、ガスバーナーで中間ストークを加熱する場合は、固定プラテンの温度が上昇するため、金型の冷却効率が低下し、軸巣が発生しやすくなると共に、鋳造機の周囲が高温となるため、作業環境が劣悪になるという欠点がある。
【0008】また、実開平3−120958号公報に記載された電気ヒータを内蔵したストークでは、中間ストークと溶湯保持炉内に配置されたストークとの接続箇所及び中間ストークと金型との接続箇所の2つの接続箇所があるため、中間ストークのセット時に、中間ストークとストークとの軸及び中間ストークと金型との軸がずれやすく、このずれにより中間ストークが変形し、湯漏れが生じて、鋳造作業が続行できなくなるという難点がある。また、この湯漏れはヒータ自体及び配線を損傷させるため、これらを交換する必要が生じ、この交換は極めて煩雑であるという問題点がある。更に、ヒータが故障した場合は、ヒータのみを交換することはできず、ストーク自体を交換する必要があるという問題点がある。
【0009】更に、湯漏れが生じない場合であっても、接続部にアルミニウム等の溶湯が付着しやすく、付着物が鋳造する度に増大し、やがてストーク内が詰まって、鋳造作業の停止を余儀なくされていた。
【0010】上述の理由により、従来の中間ストークを使用した低圧鋳造装置において、生産性を向上させることは極めて困難である。
【0011】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、鋳造溶湯の湯漏れを防止できると共に、生産性を大幅に向上させることができる低圧鋳造装置及び低圧鋳造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係る低圧鋳造装置は、鋳物形状のキャビティを有する金型と、この金型の下方に配置された溶湯保持炉と、下端部が前記溶湯保持炉内に挿入され上端部が前記金型の溶湯注入口に連結されるストークと、前記溶湯保持炉の上に配置された支持体と、前記支持体と前記金型との間に設けられ前記ストークを前記金型の溶湯注入口に弾性的に押圧する弾性体と、金型と溶湯保持炉との間の前記ストークの少なくとも一部を加熱するヒータと、を有することを特徴とする。
【0013】本発明に係る他の低圧鋳造装置は、鋳物形状のキャビティを有する金型と、この金型の下方に配置された溶湯保持炉と、下端部が前記溶湯保持炉内に挿入され上端部が前記金型の溶湯注入口に連結されるストークと、このストークに固定された支持体と、前記支持体と前記溶湯保持炉との間に設けられ前記支持体を介して前記ストークを前記金型の溶湯注入口に弾性的に押圧する弾性体と、金型と溶湯保持炉との間の前記ストークの少なくとも一部を加熱するヒータと、を有することを特徴とする。
【0014】前記支持体は前記ストークを外嵌する筒状をなすものであってもよい。
【0015】前記弾性体は前記ストークを外嵌する筒状をなすものであってもよい。
【0016】前記ストークはセラミックからなることが好ましい。
【0017】本発明に係る低圧鋳造方法は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の低圧鋳造装置を使用し、前記ストークと前記弾性体との間の雰囲気温度に応じて、前記ヒータの出力を制御することを特徴とする。
【0018】本発明に係る他の低圧鋳造方法は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の低圧鋳造装置を使用し、前記ストーク上部の温度に応じて、前記ヒータの出力を制御することを特徴とする。
【0019】
【作用】本発明の請求項1に係る低圧鋳造装置においては、溶接保持炉の上に支持体が配置され、この支持体上に設けられた弾性体によりストークを支持し、この状態で例えば、金型を所定位置まで下降させ、金型の溶接注入口とストーク上端とを連結する。これにより、前記弾性体が前記ストークを金型の溶湯注入口に弾性的に押圧し、溶接保持炉内の坩堝等に貯留された溶湯を金型内に注入できるようになる。本発明においては、ストークが弾性体により金型に押圧されるので、鋳造中のストークの加熱及び溶湯の加熱によって、ストークに伸び及び変形が生じた場合でも、弾性体が伸び及び変形を吸収することができる。このため、ストークと金型の溶湯注入口との接合部から溶湯が漏洩することが防止されると共に、ガスシール性が生じるので、鋳造時に加圧ガスが装置外に漏洩することを防止できる。また、このようにストークが金型の溶湯注入口に直接取り付けられているため、ストーク同士の継ぎ目が存在せず、溶湯が継ぎ目から漏洩することがない。また、取り替えが容易であるため、段取り替えも極めて簡単である。このため、段取り替えに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0020】また、ストークの上部と支持体との間にはヒータが取り付けられている。即ち、ヒータとストークとは分離されている。このため、溶湯が万一漏洩した場合であっても、ヒータの焼損を防止することができることに加え、ヒータの寿命が長くなる。
【0021】本発明の請求項2に係る低圧鋳造装置においては、溶湯保持炉と支持体との間に弾性体が設けられ、この弾性体は支持体を介してストークを支持し、この状態で例えば、金型を所定位置まで下降させ、金型の溶湯注入口とストーク上端とを連結する。これにより、前記弾性体が前記ストークを前記支持体を介して金型の溶湯注入口に弾性的に押圧し、溶湯保持炉内の坩堝等に貯留された溶湯を金型内に注入できるようになる。このため、請求項2に係る低圧鋳造装置においても、ストークが支持体を介して弾性体により金型に押圧されるので、鋳造中のストークの加熱及び溶湯の加熱によって、ストークに伸び及び変形が生じた場合でも、弾性体が伸び及び変形を吸収することができる。従って、請求項1に係る低圧鋳造装置と同様に、ストークと金型の溶湯注入口との接合部から溶湯が漏洩することが防止されると共に、ガスシール性が生じるので、鋳造時に加圧ガスが装置外に漏洩することを防止できる。また、請求項1に係る低圧鋳造装置と同様に、ストークが金型の溶湯注入口に直接取り付けられているため、ストーク同士の継ぎ目がない。このため、この継ぎ目から溶湯が漏洩することがない。また、段取り替えも極めて容易であるため、短時間で段取り替えを実施できる。
【0022】また、請求項1に係る低圧鋳造装置と同様に、ストークの上部と支持体との間にはヒータが取り付けられており、ヒータとストークとは分離されているので、溶湯が万一漏洩した場合であっても、ヒータの焼損を防止することができる。
【0023】上述のいずれの低圧鋳造装置においても、ストークはセラミック製であることが好ましい。ストークは、溶湯の温度が低下することを防止するために、保温性がある材質であることが好ましく、ストークをセラミック製とすることにより、高い保温性を保持できる。
【0024】本発明に係る低圧鋳造方法においては、上述の低圧鋳造装置のストークと支持体との間の雰囲気温度に応じて、ヒータの出力を制御する。また、本発明に係る他の低圧鋳造方法においては、ストーク上部の温度に応じて、ヒータの出力を制御する。何れの方法においても、そうすることにより、溶湯の温度を精度良く制御することができるので、溶湯の過冷却等によるストークの目詰まりを防止することができる。
【0025】なお、本発明の低圧鋳造装置及び低圧鋳造方法は、差圧鋳造装置及び減圧鋳造装置にも適用可能である。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の実施例に係る低圧鋳造装置の溶湯保持炉の上部から金型部までを示す断面図である。
【0027】金型1は上金型12aと下金型12bとから形成される。下金型12bが固定プラテン11に載置され、この下金型12bと上金型12aとが組み合わされて、鋳物形状のキャビティ12cが形成される。下金型12b中央部の溶湯注入口38の下側に、セラミック製のストーク6が下金型12bに垂直に配置され、このストーク6は、固定プラテン11及び固定プラテン11の下方の炉蓋5を挿通して溶湯保持炉13内の溶湯坩堝16に達する。こうして、ストーク6は溶湯7をキャビティ12cに導くために、溶湯流路を形成する。炉蓋5の中央部に支持体(スペーサ)4が載置されており、この支持体4上に、下板39aを介して筒状の弾性体であるベローズ2がストーク6を外嵌して配置されている。ベローズ2は、支持体4の中央部を挿通するストーク6を下金型12bの溶湯注入口38に、上板39bを介して、押圧する。ベローズ(弾性体)2の外側には、ストーク6が極端に沈み込むことを防止するために、ストッパー34が設けられている。支持体4の内壁には、ストーク6内の溶湯が凝固することを防止するために、筒状のストーク加熱用ヒータ3が、ストーク6を外嵌して設けられている。ストーク加熱用ヒータ3は絶縁されていると共に、熱が支持体4に直接伝わることを防止するために、セラミック板36を介して支持体4内壁に取り付けられている。また、ストーク加熱用ヒータ3は、その表面に溶湯が付着することを防止するために、パンチングメタル35を介して炉蓋5に取り付けられている。ストーク加熱用ヒータ3とストーク6との間には、溶湯保持炉13内の雰囲気温度を測定するために熱電対37aが設置されており、またストーク6の上端には、ストーク6内の溶湯温度を測定するために、熱電対37bが設置されている。これらの熱電対は制御器(図示せず)に接続され、この制御器によりストーク加熱用ヒータ3の電圧が制御される。
【0028】一方、鋳造装置の下部では、溶湯保持炉13が、炉蓋5及び溶湯保持部30で密閉されて形成されている。空気又は不活性ガス等の気体を溶湯保持炉13内に導入するために、通気管19の一端が炉蓋5と溶湯保持部30と間から溶湯保持炉13内部に入り込んでおり、この通気管19の他端は圧力調整バルブ20に接続されている。溶湯保持部30は、鋼皮31と断熱材32とから形成されている。断熱材32は、この鋼皮31内壁に接触し、溶湯保持炉13の内部に向かって凹凸が繰り返された形状となっている。断熱材32の凹部33には、電気ヒータ21が配設されている。断熱材32の内側には溶湯保持坩堝16が配置されており、この溶湯保持坩堝16の中央部に前述のストーク6が炉蓋5を挿通し、その下半部が溶湯保持坩堝16内の溶湯7に達している。
【0029】次に、上述の如く構成された鋳造装置の動作について説明する。先ず下金型12b上に上金型12aを重ね、キャビティ12cを形成すると共に、ストーク6の下半部を溶湯保持坩堝16内の溶湯7に浸漬させる。次に、調整バルブ20で圧力を調整しつつ、通気管19から空気又は不活性ガス等を流入させて溶湯7の湯面を均一に加圧する。そうすると、溶湯7はストーク6内を上昇し、キャビティ12cに注入される。この場合に、ベローズ2が弾性体であるため、鋳造時のストーク6の加熱及び溶湯の加熱によるストーク6の伸び及び変形が生じた場合であっても、ベローズ2が伸び及び変形を吸収し一定の力でストーク6を溶湯注入口38に押圧するので、溶湯7が溶湯注入口38とストーク6との隙間から漏洩することを防止できる。また、ベローズ2が弾性体であるため、ガスをシールドすることができるので、鋳造時に溶湯注入口38とストーク6との隙間から加圧ガスが漏洩することを防止できる。更に、ストーク6は、1本のストークで構成されており、継ぎ目が存在しないので、溶湯7がストーク6から漏洩することはない。
【0030】また、ストーク加熱用ヒータ3は、ベローズ6の下側で支持体4の内側に設けられているので、ストーク加熱用ヒータ3とストーク6とは分離されている。このため、万一、溶湯が溶湯注入口38とストーク6との隙間から漏洩することがあっても、ストーク加熱用ヒータ3が焼損する虞れがない。
【0031】なお、上述の実施例では、支持体4上に、下板39aを介して、ベローズ2を配置したが、支持体4とベローズ2との位置を反対にして、炉蓋5上にベローズ2を配値し、ベローズ2の上に支持体4を載置してもよい。
【0032】また、本実施例におけるストーク6の材質は、溶湯の温度低下を防止するために、保温性が高いセラミック製である。セラミック製ストークを従来技術の鋳造装置に設置した場合は、セラミックの靱性が低いため、熱歪みによりストークが損傷する虞れがある。本実施例に係る鋳造装置では、上述のように、ベローズ2がストーク6を溶湯注入口38に押圧する構造にしてあるので、熱歪みを容易に吸収することができ、ストーク6が、セラミック製であっても、損傷する虞れがない。
【0033】更に、取り替えも容易であるため、ストークの段取り替えも極めて簡単に実施することができ、段取り替え時間を大幅に短縮することができる。
【0034】次に、本実施例における低圧鋳造方法について説明する。本実施例における低圧鋳造方法では、熱電対37aによりストーク上部の温度を検出し、また熱電対37bによりストーク6と支持体4との間の雰囲気温度を検出し、これらの検出温度に基づいて、ストーク加熱用ヒータ3の出力を制御する。これにより、溶湯の温度を精度よく制御できる。例えば、600乃至700℃の溶湯温度を±10℃以内で制御することができるので、溶湯の過冷却等によるストーク6の目詰まりを防止することができる。
【0035】次に、本実施例に係る低温鋳造装置を使用して、実際に鋳造した結果について説明する。上述のように、上金型12aと下金型12bとでキャビティ12cを形成した後に、通気管19から加圧された空気を溶湯保持炉13内に送り込み、アルミニウム溶湯7の湯面を押し下げ、アルミニウム溶湯7をストーク6を介して鋳物形状のキャビティ12cに充填させることにより、鋳造製品を鋳造した。鋳造中、熱電対37aによりストーク6と支持体4との間の雰囲気温度及び熱電対37bによりストーク6の上端の温度を測定し、得られた温度に基づいてストーク加熱用ヒータ3の電圧を制御した。なお、使用したストーク加熱用ヒータ3は3.5kWの発熱体タイプのものである。
【0036】その結果、ストークの継ぎ目からの湯漏れが皆無であったため、湯漏れによるトラブルは全く生じなかった。また、溶湯の過冷却等によるストーク6の目詰まりは発生しなかった。更に、加熱用ヒータ3の寿命が平均2か月であったものが、平均4か月と倍増した。
【0037】なお、本実施例は、低圧鋳造装置に対するものであるが、差圧鋳造装置及び減圧鋳造装置に対しても適用可能である。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る低圧鋳造装置は、弾性体がストークを金型の溶湯注入口に押圧するので、溶湯の湯漏れを防止でき、ヒータの寿命を長くすることができる。また、本発明によれば、ストークの上部と支持体との間にヒータが取り付けられているので、溶湯の過冷却等により、ストークが目詰まりすることを防止することができる。
【0039】本発明に係る低圧鋳造方法は、ストークと支持体との間の雰囲気温度及び/又はストークの上部の温度に応じて、ヒータの出力を制御するため、溶湯の温度制御が容易であり、溶湯の目詰まりを防止できるので、高い生産性で鋳造製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る低圧鋳造装置の溶湯保持炉の上部から金型部までを示す断面図である。
【図2】一般的に低圧鋳造法で使用される低圧鋳造機を示す断面図である。
【符号の説明】
1;金型部
2;ベローズ
3;ストーク加熱用ヒータ
4;支持体
5;炉蓋
6,22;ストーク
7;溶湯
11;固定プラテン
11b;孔
12a;上金型
12b;下金型
12c;キャビティ
12d;溶湯注入口
13;溶湯保持炉
14a;支持フレーム
14b;上部フレーム
15;締付けシリンダ
17a;可動プラテン
17b;連結棒
16;溶湯保持坩堝
19;通気管
20;調整バルブ
21;電気ヒータ
23;中間ストーク
24;中間ストーク加熱ヒータ
30;溶湯保持部
31;鋼皮
32;断熱材
33;凹部
34;ストッパー
35;パンチングメタル
36;セラミック板
37a,37b;熱電対
38;溶湯注入口
39a;下板
39b;上板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋳物形状のキャビティを有する金型と、この金型の下方に配置された溶湯保持炉と、下端部が前記溶湯保持炉内に挿入され上端部が前記金型の溶湯注入口に連結されるストークと、前記溶湯保持炉の上に配置された支持体と、前記支持体と前記金型との間に設けられ前記ストークを前記金型の溶湯注入口に弾性的に押圧する弾性体と、金型と溶湯保持炉との間の前記ストークの少なくとも一部を加熱するヒータと、を有することを特徴とする低圧鋳造装置。
【請求項2】 鋳物形状のキャビティを有する金型と、この金型の下方に配置された溶湯保持炉と、下端部が前記溶湯保持炉内に挿入され上端部が前記金型の溶湯注入口に連結されるストークと、このストークに固定された支持体と、前記支持体と前記溶湯保持炉との間に設けられ前記支持体を介して前記ストークを前記金型の溶湯注入口に弾性的に押圧する弾性体と、金型と溶湯保持炉との間の前記ストークの少なくとも一部を加熱するヒータと、を有することを特徴とする低圧鋳造装置。
【請求項3】 前記支持体は前記ストークを外嵌する筒状をなすことを特徴とする請求項1又は2に記載の低圧鋳造装置。
【請求項4】 前記弾性体は前記ストークを外嵌する筒状をなすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の低圧鋳造装置。
【請求項5】 前記ストークはセラミックからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の低圧鋳造装置。
【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の低圧鋳造装置を使用し、前記ストークと前記弾性体との間の雰囲気温度に応じて、前記ヒータの出力を制御することを特徴とする低圧鋳造方法。
【請求項7】 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の低圧鋳造装置を使用し、前記ストーク上部の温度に応じて、前記ヒータの出力を制御することを特徴とする低圧鋳造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平9−94653
【公開日】平成9年(1997)4月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−276254
【出願日】平成7年(1995)9月29日
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)