説明

低密度特徴を持つ超伝導性物品

基板、該基板の上に横たわるバッファ層、該バッファ層の上に横たわる超伝導性層を持つ超伝導性物品が、開示されている。実施形態によれば、該物品は、該物品の全体、および/または、該物品の個々の層と関連して、低密度の特徴を持っている。該物品は、例えば、長い長さの導体、コイル状とされた長い長さの導体、このようなコイルを組み込んでいる機械の形で、実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に超伝導性物品に向けられている。本発明は、特に、コートされた導体の形の超伝導性物品、およびこれを組み込んだデバイスに関係する。
【背景技術】
【0002】
超伝導体材料は、長い間、技術的コミュニティによって知られてきて、かつ、理解されてきた。液体ヘリウム(4.2K)の使用を必要とする温度で、超伝導特性を示す低温(低Tc)超伝導体は、1911年以来、知られてきた。しかしながら、酸素ベースの高温(高Tc)超伝導体が発見されたのは、いくぶん最近になってからである。1986年ごろ、液体窒素の温度(77K)以上の温度で超伝導特性をもつ、最初の高温超伝導体(HTS)、すなわち、YBa2Cu3O7-x (YBCO)が、発見され、それにつづいて、過去15年間の間に、Bi2Sr2Ca2Cu3O10+y(BSCCO)、およびその他のものを含む、更なる材料の開発があった。高Tc超伝導体の開発は、このような材料を組み込む超伝導性構成要素の可能性のある、経済的に実現可能な開発を、部分的にはこのような超伝導体を液体ヘリウムに基づく比較的により高価な極低温インフラ構造よりむしろ、液体窒素でもって動作させるコストにより、もたらした。
【0003】
可能性のある無数のアプリケーションの中で、産業は、発電、送電、配電、および電力蓄積という応用を含む、電力産業においてのこのような材料の使用の開発を求めてきた。この点に関し、銅ベースの商用電力要素は、電気においてきわめて大きな損失を生じるものであり、したがって、電力産業は、送電及び配電電力ケーブル、発電機、変圧器、および無効電流遮断器、等の電力素子における高温超伝導体の利用に基づき、実質的な効率を得ることができる。 さらに、電力産業における高温超伝導体の他の利点は、電力処理能力の大きさの1桁から2桁の増大、電力設備の大きさ(すなわち、外形)の実質的な減少、環境上の影響の減少、より大きな安全性、および従来の技術に対する増大した容量、である。高温超伝導体のこのような可能性のある利点は、きわめて競争力のあるものであり、数多くの技術的挑戦が、高温超伝導体の製造および商業化において大きなスケールで、存在しつづけている。
【0004】
高温超伝導体の商業化に関連した挑戦の中で、多くは、多くの電力要素の形成に利用することのできる超伝導体テープの製造の周りに存在する。第1世代の超伝導体テープは、前記したBSCCO 高温超伝導体の使用を含んでいる。この材料は、一般に、代表的に銀の、貴金属のマトリクス内に埋め込まれている、ディスクリートなフィラメントの形で、与えられる。このような導体は、電力産業において実施するのに必要な延長された長さで(すなわち、キロメーターのオーダーで)、作製されることもできるが、このようなテープは、商業的に利用可能な製品を、提供することはできない。
【0005】
したがって、非常に大きな興味は、優秀な商業的実現可能性をもつ、いわゆる第2世代HTSテープにおいて生み出されてきた。これらのテープは、代表的に層構造に依存しており、一般に、機械的な強度を与えるフレキシブル基板、該基板の上に横たわる、任意に複数の膜を含む、少なくとも1つのバッファ層、該バッファ層の上に横たわるHTS層、および、該超伝導層の上に横たわる、代表的に少なくとも1つの貴金属層より形成される、電気的な安定化層、を含む。しかしながら、今日までにも、このような第2世代テープの完全な商業化の前には、数多くの、技術的な、かつ、製造上の挑戦が、まだ残っている。
【0006】
したがって、以上に鑑み、超伝導体の技術において、および特に、商業的に実現可能な超伝導体テープ、これを形成する方法、およびこのような超伝導体テープを用いた電力素子、を設けるにおいて、種々の必要が、存在し続ける。
【特許文献1】特開平07−073758号公報
【特許文献2】特開平01−200518号公報
【特許文献3】米国特許5,872,080号明細書
【発明の開示】
【0007】
開示された超伝導性物品の最初の側面によれば、チタンよりなる基板が提供される。 バッファ層は、該基板の上に横たわり、超伝導性層が、該バッファ層の上に横たわる。
【0008】
もう1つの側面は、基板、該基板の上に横たわるバッファ層、該バッファ層の上に横たわる超伝導性層、および、該超伝導性層の上に横たわる安定化層よりなる超伝導性物品を提供する。該安定化層は、アルミニウムよりなる。
【0009】
もう1つの側面は、10より小さくない寸法比をもつ基板、および該基板の上に横たわる超伝導性層を含む超伝導性物品を提供する、該超伝導性物品は、約7.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【0010】
もう1つの側面は、約8.00g/ccより大きくない密度を持つ基板、該基板上に横たわるバッファ層、該バッファ層上に横たわる超伝導性層を含む超伝導性物品を提供する。 一般に、該物品は、約10より小さくない寸法比を持つ。
【0011】
デバイスのもう1つの実施形態は、基板、該基板の上に横たわるバッファ層、該基板の上に横たわる超伝導性層、約8.00g/ccより大きくない密度を持つ、超伝導性層上に横たわる安定化層を供給する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
図1は、1つの実施形態による超伝導性物品100の層構造を図示する。 該超伝導性物品は、基板10、バッファ層12、および超伝導性層14を含む。キャップ層16は、超伝導性層の上に横たわって設けられており、該キャップ層16の上に横たわる安定化層18がそれに続いている。
【0013】
基板は、リールツーリールプロセスの機械的ストレスおよびストレインに耐えることのできる材料よりなり、かつ、種々の応用において、最終の超伝導性物品の機械的統合性をも与えることができる。さらに、該基板は、有利にも、該超伝導性物品の製造の間の、高い処理温度、および、攻撃的な処理環境(例えば、高い酸化性)に耐えることができる。前述に鑑み、基板10は、一般に金属ベースのものであり、かつ代表的に、少なくとも2つの金属元素の合金である。適当な基板材料は、合金の公知のInconel(登録商標) グループのようなニッケルベースの金属合金を含む。利用可能な材料のなかで、合金の Inconel (登録商標) グループのようなニッケルベースの金属合金が、膨張係数、引っ張り強度、降伏強さ、および、伸張、を含む、望ましい、クリープ、化学的、かつ機械的特性、を持つ傾向がある。しかしながら、1つの特定の実施形態において、基板10は、比較的より低い重量密度材料よりなる。この点において、基板10は、およそ7.00g/cc、あるいは 6.00g/ccより大きくないような、およそ8.00g/ccより大きくない重量密度を持ち得る。いくつかの場合には、基板の重量密度は、およそ5.00g/ccより大きくない。
【0014】
低い重量密度材料基板という文脈で、チタン金属、またはチタン金属合金が、使用される。役に立つ合金金属元素は、アルミニウム、バナジウム、鉄、錫、ルテニウム、パラジウム、ジルコニウム、モリブデン、ニッケル、ニオブ、クロム、およびシリコン、およびそれらの組み合わせを含む。 これらの中で、特に有用な合金要素は、アルミニウムおよびバナジウムを含む。1つの実施形態において、アルミニウムおよびバナジウムは、それぞれ、6%、および4%より大きくないように、それぞれ10%、および8%より大きくない量で、存在している。1つの特定のスピーシーズは、重量で3%アルミニウム、および2.5%バナジウムを含み、バランスがチタンである、等級(グレード)9のチタン合金である。合金の要素の特定の選択は、耐酸化性特性を含む、種々のファクターに依存する。
【0015】
チタン合金の特定の文脈において、基板10の合金金属元素の全重量パーセントは、しばしば、重量で10%より大きくなく、一般に、およそ20%より大きくなく、該チタンのパーセンテージは、重さでおよそ80%より小さくなく、かつ、他の実施形態においては、重量でおよそ85%あるいは90%より小さくない。チタンおよびチタン合金は、望ましくは、たとえば、およそ4.0から5.0g/cc内のような、およそ5.0g/ccより大きくない重量密度を持つ基板を、与える。
【0016】
さらに、ここでの実施形態によれば、基板10は、超伝導性層における渦巻き電流損失の低減を可能にするよう、抵抗性であってもよい。このような渦巻き電流損失の低減は、該物品が、発電機あるいはモーター(さらに以下に記述される)のような、回転機械の形態をとるとき、特に有益である。抵抗性基板の使用は、回転機械のかたちにおいて使用されるとき、AC損失を最小にする。基板の代表的な比抵抗は、約100マイクロオームセンチより大きい、のように、約50マイクロオームセンチより、一般に、より大きい。
【0017】
さらに、基板の厚さは、まだ該分野におけるリールツーリール処理、取り扱い、および統合性に耐える充分さを与えながら、実施形態によってさらに低減されることができる。代表的に、該基板10は、およそ50ミクロンより大きくない、あるいはさらに、40ミクロンより大きくない厚さを持つ。さらに、他の実施形態においては、該基板10の厚さは、およそ30ミクロンより大きくない、あるいはさらに、およそ20ミクロン、またはそれ以下と同等の薄い、厚みをもつ。
【0018】
基板10は、一般に、高い寸法比を持つテープである。 ここに使われるように、用語「寸法比」は、基板10またはテープの長さの、次の長い寸法に対する比を示すのに用いられる。例えば、基板の幅は、おおよそ、0.4‐10センチの範囲にわたり、基板10の長さは、代表的に100mより大きく、しばしば、約500mより、より大きい。実際、1つの実施形態は、1kmまたはそれ以上のオーダーの長さをもつ超伝導性基板を与え、これは、多数のテープセグメントからなるものである。したがって、該基板は、10より小さくないオーダーの、102より小さくないオーダーの、あるいは、103より小さくないオーダーの、かなり高い寸法比をもつ。ある特定の実施形態は、104 及びそれより高い、寸法比を持つ、より長いものである。
【0019】
1つの実施形態において、基板10は、超伝導性物品の構成層の順次の堆積のための望ましい表面特性を持つように扱われる。 例えば、該表面は、望ましい平坦さと、表面粗さに軽く磨き上げられる。 さらに、該基板10は、公知の、RABiTS(roll assisted biaxially textured substrate)によるように、技術において理解されているように、2軸テキスチャされたように、取り扱われてもよい、ただし、一般にここでの実施形態は、特に、金属合金多結晶基板を含み、テキスチャされていない基板の利点を用いている。
【0020】
図1に戻り、図示された実施形態は、バッファ層12を与える。該バッファ層は、単一層であってもよく、より共通には、いくつかの膜よりできあがっていてもよい。最も典型的には、該バッファ層12は、該膜の平面内、および平面外の両方で、結晶軸に沿って一般に配列されている結晶組織をもつ、2軸テキスチャード膜を含む。該バッファ層12の2軸テキスチャリングは、IBADにより遂行することができる。技術において理解されているように、IBADは、イオンビームアシステッドデポジション(ion beam assisted deposition)の略であり、超伝導特性のために好ましい結晶学的方位をもつ超伝導層を順次形成するのに適してテキスチャされた層を形成するよう、有利に利用される技術である。マグネシウム酸化物は、IBAD膜のために選択される代表的な材料であり、50から200オングストロームのように、50から500オングストロームのオーダー上にあるものである。一般に、IBAD膜は、米国特許6,190,752で定義され、記述されているように、 岩塩のような結晶構造を持ち、該米国特許は、参照によりここに、組み入れられる。
【0021】
該バッファ層12は、IBAD膜と、基板10との間に設けられたバリア層のようなさらなる膜を、含むことができる。この点に関し、該バリア膜12は、有利には、イットリアのような酸化物から形成されることができ、該基板を、IBAD膜から隔離するよう機能する。バリア膜12は、また、シリコン窒化物のような非酸化物より形成されてもよい。バリア膜の堆積のための適切な技術は、化学気相成長およびスパッタリングを含む物理気相成長を含む。バリア膜の代表的な厚さは、およそ100‐200オングストロームの範囲内にあるであろう。またさらに、該バッファ層は、また、IBAD膜上にエピタキシャル成長された膜をも含むかもしれない。この文脈において、該エピタキシャル成長された膜は、IBAD膜の厚さを増大するのに有効であり、かつ、望ましくは、MgO のようなIBAD 層のために利用されたのと同じ材料から、主になっていてもよい。
【0022】
MgO ベースの IBAD膜、および/またはエピタキシャル膜を利用する実施形態においては、MgO 材料と、超伝導性層の材料との間の格子不整合が、存在し得る。したがって、該バッファ層12は、さらに、もう1つのバッファ層を含んでいてもよく、このバッファ層は、特に、超伝導性層と、その下にあるIBAD膜、および/またはエピタキシャル膜との間の格子定数の不整合を、低減するために実施される。このバッファ膜は、YSZ (イットリア安定化ジルコニア)、ストロンチウムルテネート、ランタンマンガネート、等の材料より形成されていてもよく、および一般には、 ペロブスカイト構造のセラミック材料より形成されていてもよい。該バッファ膜は、種々の物理的気相成長技術により堆積することができ、かつ、一般には、その上にそれが形成されている下に横たわる層の、2軸テキスチャを保持している。
【0023】
超伝導性層14は、代表的に、高温超伝導体(HTS)層の形に形成されている。HTS材料は、代表的に、液体窒素の温度、77K以上で、超伝導特性を示す高温超伝導材料のいずれかから、選択される。このような材料は、例えば、 YBa2Cu3O7-x、 Bi2Sr2Ca2Cu3O10+y、および HgBa2Ca2Cu3O8+yを含む。該材料の1つのクラスは、 REBa2Cu3O7-xを含む、ここで、REは希土類元素である。以上のものの中で、 YBa2Cu3O7-xは、これはまた、一般に、YBCOともいわれるが、有利に利用されることができる。該超伝導性層14は、厚膜、および薄膜形成技術を含む、種々の技術のうちの任意の1つにより、形成することができる。好ましくは、パルス励起レーザ堆積(PLD)のような、薄膜物理気相成長技術が、高堆積レートのために用いることができ、あるいは、化学気相成長技術が、より低いコスト、およびより大きい表面領域処理のために、用いることができる。代表的に、超伝導層は、該超伝導層14と関連した好ましい定格電流を得るために、およそ1からおよそ30ミクロンのオーダーの厚みを持ち、最も典型的には、およそ2からおよそ10ミクロンのような、およそ2からおよそ20ミクロンの厚みをもつ。
【0024】
安定化層18、および、キャップ層16(任意)は、一般に、実際の使用における超伝導体の焼失を妨げることを助けるための、電気的安定化のための低抵抗インタフェースを提供するために実行される。より特定的には、安定化層18は、冷却が失敗したとき、あるいは、臨界電流密度を超えたとき、超伝導体が超伝導性でなくなった場合において、超伝導体に沿っての電流の継続的な流れを助ける。キャップ層16は、超伝導性層14と、安定化層18との間の望ましくない相互作用が、該キャップ層がなければ起こるであろうそれらの実施形態において、特に該構造内に組み入れられている。このような場合、キャップ層は、金、銀、プラチナ、およびパラジウムのような、貴金属により形成されている。銀は、その費用と、一般的入手可能性により、代表的に使用される。キャップ層16は、代表的に、安定化層18から超伝導性の層14への望まれない要素の拡散を妨げるよう十分厚く形成されるが、しかし一般に、コストの理由(原材料、および処理費用)のために、薄く形成される。キャップ層16の代表的な厚さは、0.5からおよそ5.0ミクロンのような、およそ0.1から、およそ10.0ミクロンの範囲にわたる。DCマグネトロンスパッタリング等の、物理気相成長を含む、種々の技術が、キャップ層16の堆積のために使用される。
【0025】
安定化層18は、一般に、超伝導性層14の上に横たわるよう、特に、図1に示される特定の実施形態では、キャップ層16の上に横たわり、かつ、直接接触するように、組み入れられる、ただし、変形例によれば、キャップ層を削除すると、超伝導性層14に直接接触することとなる。該安定化層18は、厳しい環境条件および超伝導性クエンチに対する安定性を、向上するために、保護/並列層として作用する。該層は、一般に、熱的、および電気的に伝導性があり、超伝導性層の失敗の場合に、電流をバイパスするよう機能する。それは、超伝導性テープ上に、あらかじめ形成された銅ストリップを、半田、またはフラックス等の中間的な接合材料を用いて積層することによる、等の、種々の厚膜、および薄膜形成技術の任意の1つにより、形成することができる。他の技術は、物理気相成長、代表的には、蒸着、またはスパッタリング、ばかりでなく、エレクトロレスプレーティング、および、エレクトロプレーティング、等の、湿式化学処理に、焦点があてられてきた。
【0026】
代表的に、銅等の金属が、安定化層18に使用される。しかしながら、他の実施形態によれば、該安定化層は、およそ 8.00g/cc、 およそ7.00g/cc、あるいはさらに、およそ6.00g/ccより低い材料等の、より低い密度材料を利用している。実際、いくつかの実施形態は、およそ 4.00g/ccより大きくない密度、あるいは3.00g/ccより大きくない密度を持つ安定化層を持つ。特定の実施形態によれば、アルミニウムのような比較的低密度の伝導性金属が、安定化層18の主要な構成要素(重量で、50%より大きい)を形成する。例えば、該安定化層18は、アルミニウム、あるいはアルミニウムが重量で、少なくともおよそ80%存在しているアルミニウム合金よりなる。アルミニウムの使用は、単に安定化層18の密度を減らすだけでなく、顕著に、超伝導性物品100の全体の密度を、低減する。アルミニウムベース材料の使用は、およそ2.00から3.00g/cc内のような、およそ3.00g/ccより大きくない、低い重量密度を、好ましくはもつ、安定化層を与える。
【0027】
代表的に、安定化層の厚さは、およそ50ミクロンより小さくなく、しばしば、およそ100ミクロンより小さくない。気づくべきことは、アルミニウムベースの安定化材は、同じ電流運搬能力を有する、銅ベースの安定化材より、アルミニウムは銅よりより高い比抵抗を持っているので、比較的に、より厚いであろう。アルミニウムベースの安定化材と関連した厚さの相対的増大にかかわらず、超伝導体物品の重量は、重量密度の意味のある減少により、さらに減少されるであろう。
【0028】
特定の層を構成する材料の密度は、上記で記述されたが、全体の超伝導性物品の全体の密度は、ここでの実施形態により、望ましく、低減される。密度のより低い、超伝導性物品は、意義のある力点を、たとえば、超伝導性テープのコイルに置く、発電機、等の回転機械において、有利であろう。したがって、いくつかの実施形態においては、超伝導性物品の全体密度は、7.00g/ccより小さいであろう。あるいは、他の実施形態は、6.50g/cc、 6.00g/cc、あるいはさらに、5.00g/ccより小さい全体密度を使用する。より低い全体密度は、構成する層、特に以前に詳細に述べたように、基板、および安定化層のおのおのの密度を減らすことにより、達成される。
【0029】
超伝導体物品の一般化された構造は、図1に関連して以上で記述されたが、さらなる実施形態は、図2および図3において図示されており、これらは、高い寸法比をもつ、超伝導性テープ、あるいは超伝導性物品への代表的な応用を示す。特定の構造体を越えて、かつ、図1に関連して上記した超伝導性物品、あるいはテープに関連して、実施形態は、このような導体を組み込む産業の、あるいは商業上の電力要素等の、要素にも向けられている。あるクラスのこのような要素は、高寸法比の超伝導性導体のコイルまたは巻線を、組み込んでおり、かつ、特に、意義のあるものである。コイル状の、または、巻きつけられた構造体の文脈内で、ある実施形態は、広くは、電力発電機、およびモーターを含む、“回転機械”として知られている、あるクラスの電力要素に向けられている。低密度の基板、低密度の安定化剤、および/または低全体密度を持つ、ここでの実施形態は、このような回転機械において、特別の使用を見いだす。
【0030】
例えば、図2は、それの周りに1次巻線72、および2次巻線74が設けられる中央コア76をもつ、電力変圧器を図示している。図2が、その性質的な模式図であり、該変圧器の実際の幾何学的形状は、該技術でよく理解されているように、変化し得るものである。しかしながら、該変圧器は、少なくとも、基本的な1次巻線、および2次巻線を、含む。この点に関して、図2に示された実施形態では、1次巻線は、2次巻線より多くの数のコイルをもっており、入力する電力信号の電圧を下げる、ステップダウン変圧器を、表している。逆に、1次巻線に、2次巻線より少ない数のコイルを与えると、電圧の上昇を与える。この点に関して、代表的に、電圧上昇変圧器は、長い距離にわたる電力損失を、低減するために、電圧を高電圧に増大するよう、送電サブステーションにおいて利用され、他方、電圧下降変圧器は、電力の後段ステージでの配電のために、配電サブステーションにおいて集積される。1次巻線と、2次巻線の少なくとも1つ、および好ましくは両方は、以下の記述のとおりに、超伝導性テープよりなる。
【0031】
図3に向いて、発電機の模式的図解が、与えられる。該発電機は、技術において知られているように、タービンにより駆動されるローター86を含む。ローター86は、高強度の電磁石を含み、これらは、電力の発生のための所要の電磁界を形成するローターコイル87よりなる。該電磁界の発生は、ステーター88において電力を生じ、これは、すくなくとも1つの、導電性のステーター巻線89よりなる。特定の特徴によれば、ローターコイル87および/またはステーター巻線89は、上記した実施形態による超伝導物品よりなる。
【0032】
上記した種々の実施形態によれば、望ましい重量密度特徴を持つ超伝導体物品が提供される。このような超伝導体物品は、すくなくとも部分的に、該物品の減少した重量密度により、回転機械のように、高度にダイナミックな環境で使用されるとき、特に、改善された機械的な統合性と構造安定性を与えるものである。
【0033】
本発明の特定の側面が、ここで特に記述されたが、当業者は、以下のクレームの範囲を何ら限定することなく、まだ現クレームの範囲内において、これらに対し修正をなすことができるであろう。以前に記述された実施形態、および実施例は、以下のクレームの範囲を何ら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、1つの実施形態の超伝導性物品の層の斜視図である。
【図2】図2は、変圧器の模式的図である。
【図3】図3は、発電機の模式的図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導性物品であって、以下のものよりなる:
チタンよりなる基板;
該基板上に横たわるバッファ層;および、
該バッファ層上に横たわる超伝導性層。
【請求項2】
クレーム1の超伝導性物品において、前記基板は、約8.00g/ccより低い密度を持つ。
【請求項3】
クレーム2の超伝導性物品において、前記基板は、約7.00g/ccより低い密度を持つ。
【請求項4】
クレーム1の超伝導性物品において、チタンは 前記基板の主な構成要素である。
【請求項5】
クレーム4の超伝導性物品において、前記基板は、重量が、約80%チタンより軽くないもの、より構成されている。
【請求項6】
クレーム1の超伝導性物品において、前記基板は、チタン合金から構成されて、さらに、アルミニウム、バナジウム、鉄、錫、 ルテニウム、パラジウム、ジルコニウム、モリブデン、ニッケル、ニオブ、クロム、およびシリコン、およびそれらの組み合わせのグループから選択された要素よりなる。
【請求項7】
クレーム6の超伝導性物品において、前記要素は、アルミニウム、バナジウム、およびそれらの組み合わせよりなるグループから選択される。
【請求項8】
クレーム7の超伝導性物品において、前記基板は、重量で約10%以上ではない量の、アルミニウムよりなり、かつ、重量で約8%以上ではない量の、バナジウムよりなる。
【請求項9】
クレーム1の超伝導性物品において、前記基板は、少なくとも約100マイクロオームセンチの比抵抗を持つ。
【請求項10】
クレーム1の超伝導性物品において、前記基板は、約50ミクロンより大きくない厚さを持つ。
【請求項11】
クレーム1の超伝導性物品において、さらに、前記超伝導性層の上に横たわる安定化層をもつ。
【請求項12】
クレーム11の超伝導性物品において、前記安定化層は、約8.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項13】
クレーム12の超伝導性物品において、前記安定化層は、約6.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項14】
クレーム11の超伝導性物品において、前記安定化層は、アルミニウムよりなる。
【請求項15】
クレーム11の超伝導性物品において、前記安定化層は、約50ミクロンより小さくない厚さを持つ。
【請求項16】
クレーム15の超伝導性物品において、前記安定化層は、約100ミクロンより小さくない厚さを持つ。
【請求項17】
クレーム1の超伝導性物品において、前記超伝導性層は、約77°Kより小さくない臨界温度Tcをもつ、高温超伝導体材料よりなる。
【請求項18】
クレーム17の超伝導性物品において、前記超伝導体材料はREBa2Cu3O7-xよりなる、ここで、REは希土類要素である。
【請求項19】
クレーム1の超伝導性物品において、前記物品は、約10より小さくない寸法比を持つ。
【請求項20】
クレーム19の超伝導性物品において、前記物品は、約100より小さくない寸法比を持つ。
【請求項21】
クレーム1の超伝導性物品において、前記バッファ層は、すくなくとも1つの、該膜の平面内、および平面外の両方において2軸整列された結晶よりなる膜よりなる。
【請求項22】
超伝導性物品であって、以下のものよりなる:
基板;
該基板の上に横たわるバッファ層;
該バッファ層の上に横たわる超伝導性層;および、
該超伝導性層の上に横たわるアルミニウムよりなる安定化層。
【請求項23】
クレーム22の超伝導性物品において、前記安定化層は、約8.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項24】
クレーム23の超伝導性物品において、前記安定化層は、約6.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項25】
クレーム22の超伝導性物品において、前記アルミニウムは、前記安定化層の主要な構成要素である。
【請求項26】
クレーム25の超伝導性物品において、前記安定化層は、重量が、約80%アルミニウムより軽くないもの、より構成されている。
【請求項27】
クレーム22の超伝導性物品において、前記安定化層は、少なくとも約50ミクロンより小さくない厚さを持つ。
【請求項28】
クレーム22の超伝導性物品であって、さらに、前記安定化層と、前記超伝導性層との間にキャップ層を有する。
【請求項29】
クレーム22の超伝導性物品において、前記超伝導性層は、約77°Kより小さくない臨界温度Tcをもつ、高温超伝導体材料よりなる。
【請求項30】
クレーム22の超伝導性物品において、前記超伝導体材料はREBa2Cu3O7-xよりなり、ここで、REは希土類元素である。
【請求項31】
クレーム22の超伝導性物品において、前記物品は、約10より小さくない寸法比を持つ。
【請求項32】
クレーム22の超伝導性物品において、前記バッファ層は、すくなくとも1つの、該膜の平面内、および平面外の両方において2軸整列された結晶よりなる膜よりなる。
【請求項33】
超伝導性物品であって、以下のものよりなる:
10より小さくない寸法比をもつ基板;および、
該基板上に横たわる超伝導性層、ここで、該超伝導性物品は、約7.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項34】
クレーム33の超伝導性物品において、前記超伝導性物品は、約6.50g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項35】
クレーム34の超伝導性物品において、前記超伝導性物品は、約6.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項36】
クレーム35の超伝導性物品において、前記超伝導性物品は、約5.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項37】
クレーム35の超伝導性物品において、前記超伝導性物品は、約4.50g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項38】
クレーム33の超伝導性物品において、前記基板は、約6.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項39】
クレーム38の超伝導性物品において、前記基板は、約5.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項40】
クレーム33の超伝導性物品であって、さらに前記超伝導性層の上に横たわる安定化層よりなる。
【請求項41】
クレーム40の超伝導性物品において、前記安定化層は、約6.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項42】
クレーム41の超伝導性物品において、前記安定化層は、約5.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項43】
クレーム42の超伝導性物品において、前記安定化層は、約3.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項44】
クレーム40の超伝導性物品であって、前記安定化層は、アルミニウムよりなり、アルミニウムは、前記主要な構成要素である。
【請求項45】
クレーム33の超伝導性物品であって、前記基板は、チタンよりなり、チタンは、前記主要な構成要素である。
【請求項46】
クレーム33の超伝導性物品において、前記超伝導性層は、約77°Kより小さくない臨界温度Tcをもつ、高温超伝導体材料よりなる。
【請求項47】
クレーム33の超伝導性物品において、前記超伝導体材料はREBa2Cu3O7-xよりなり、ここで、REは希土類要素である。
【請求項48】
クレーム33の超伝導性物品において、前記物品は、約100より小さくない寸法比を持つ。
【請求項49】
クレーム33の超伝導性物品において、前記物品は、さらに、前記基板と、前記超伝導性層との間に設けられたバッファ層を有する。
【請求項50】
クレーム49の超伝導性物品において、前記バッファ層は、すくなくとも1つの、該膜の平面内、および平面外の両方において2軸整列された結晶よりなる膜よりなる。
【請求項51】
クレーム33の超伝導性物品において、前記超伝導性物品は、超伝導性のテープのコイルであり、該超伝導性テープのコイルは、前記基板と、前記超伝導性層とよりなる。
【請求項52】
クレーム33の超伝導性物品において、該物品は、電力変圧器であり、該電力変圧器は、少なくとも1次巻線と、2次巻線とよりなり、ここで、前記1次巻線と、2次巻線とのいずれかは、前記超伝導性テープの巻かれたコイルよりなり、該超伝導性テープは、前記基板と、前記超伝導性層とよりなる。
【請求項53】
クレーム33の超伝導性物品において、前記物品は、回転機械であり、該回転機械は、少なくとも1つの巻線よりなり、該少なくとも1つの巻線は、前記基板と、前記超伝導性層よりなる超伝導性テープよりなる。
【請求項54】
超伝導性物品であって、以下のものよりなる:
約8.00g/ccより大きくない密度を持つ基板;
該基板の上に横たわるバッファ層;および、
前記基板の上に横たわる超伝導性層。
【請求項55】
クレーム54の超伝導性物品において、前記基板は、約7.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項56】
クレーム55の超伝導性物品において、前記基板は、約5.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項57】
クレーム54の超伝導性物品において、前記基板は、チタンよりなり、チタンは、前記基板の主要な構成要素である。
【請求項58】
超伝導性物品であって、以下のものよりなる:
基板;
該基板の上に横たわるバッファ層;および、
該超伝導性層の上に横たわる安定化層であって、該安定化層は、約8.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項59】
クレーム58の超伝導性物品において、前記安定化層は、約7.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項60】
クレーム59の超伝導性物品において、前記安定化層は、約5.00g/ccより大きくない密度を持つ。
【請求項61】
クレーム58の超伝導性物品において、前記安定化層は、アルミニウムよりなる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−532230(P2008−532230A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557105(P2007−557105)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/006153
【国際公開番号】WO2006/091612
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(505448796)スーパーパワー インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】