説明

低屈折率薄膜組成物及び低屈折率硬化薄膜

【課題】効率的かつ簡便に低屈折性のフッ素を含有する有機薄膜を提供する。
【解決手段】フルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物およびまたはアクリレート化合物およびまたは有機溶剤に溶解または分散させた含フッ素ポリマー、1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有する有機化合物と、光重合開始剤からなる組成物に、場合によりフュームドシリカを配合し光照射し、薄膜組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低屈折性のフッ素を含有する薄膜組成物及びそれを光硬化して得られる低屈折率硬化薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低屈折率で耐久性に優れていることから、弗化マグネシウム(MgF2)が低屈折薄膜材として一般的に用いられてきたが、MgF2膜は付着力が弱く、かつ硬度や耐擦傷性が低いという難点があるためガラス製品には焼き付けなければならず、プラスチック製品には焼き付けできないため実用性が高い塗膜とは言えなかった。また、MgF2 と同等の低屈折率の物質として、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどの含フッ素ポリマーがあるが、成形加工性に乏しく、一般の溶媒に不溶であるため、薄膜コーティングが出来なかったまた、溶剤に可溶あるいは分散可能な含フッ素ポリマーを用いた薄膜化には、低接着性や相分離などによる実用上の問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、メタクリル酸やアクリル酸のフルオロアルキルエステルが、ポリマーなどの有機材料の構成成分となる際に、材料に安価に低屈折性はもとより加工性や塗装性を付与しうるが(例えば、特許文献2参照)、実用には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−53631号公報
【特許文献2】特開2002−332313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、簡便な手法で、低屈折性の薄膜組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、以下の(1)〜(8)のとおりである。
【0007】
(1)炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物および/またはアクリレート化合物、フッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体、有機溶剤に溶解または分散させた含フッ素ポリマー及び光重合開始剤からなる低屈折率薄膜組成物。
【0008】
(2)フッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体および/またはメタクリル酸誘導体、有機溶剤に溶解または分散させた含フッ素ポリマー及び光重合開始剤からなる低屈折率薄膜組成物。
【0009】
(3)フュームドシリカを含む(1)項又は(2)項に記載の低屈折率薄膜組成物。
【0010】
(4)含フッ素ポリマーが、
式(1)、
【0011】
【化1】

【0012】
式(2)、
【0013】
【化2】

【0014】
又は式(3)、
【0015】
【化3】

【0016】
で示される環状構造を有する含フッ素ポリマーおよび/またはテトラフルオロエチレン10〜50モル部、ヘキサフルオロプロピレン0〜50モル部、ビニリデンフルオライド90〜10モル部、およびビニルフルオライド10〜100モル部のモノマーの共重合体であることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の低屈折率薄膜組成物。
【0017】
(5)含フッ素ポリマーが、炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物およびまたはアクリレート化合物からなるポリマーであることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の低屈折率薄膜組成物。
【0018】
(6)炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物あるいはアクリレート化合物、フッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体、フュームドシリカ及び光重合開始剤からなる低屈折率薄膜組成物。
【0019】
(7)炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物あるいはアクリレート化合物が、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートおよびまたは2,2,2−トリフルオロエチルアクリレートである、(1)項、(5)項または(6)項に記載の低屈折率薄膜組成物。
【0020】
(8) (1)項ないし(7)項のいずれか1項に記載の低屈折率薄膜組成物を薄膜に形成し、光を照射して硬化させたことを特徴とする低屈折率硬化薄膜。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡便な手法で、低屈折性の薄膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明では、炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物およびまたはアクリレート化合物、フッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体、有機溶剤に溶解または分散させた含フッ素ポリマー、及び光重合開始剤からなる混合物に光を照射して硬化させて、目的とする低屈折率薄膜組成物を得ることができる。例えば、1〜90重量部の炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物およびまたはアクリレート化合物と、1〜50重量部のフッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体と、有機溶剤に溶解または分散させた0.1〜50重量部の含フッ素ポリマー、および0.1〜20重量部の光重合開始剤からなる混合物に光照射して薄膜状の低屈折組成物を得ることができる。
【0023】
また、本発明では、フッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体、有機溶剤に溶解または分散させた含フッ素ポリマー、及び光重合開始剤からなる混合物に光を照射して低屈折率薄膜組成物を得ることができ、例えば、1〜50重量%のフッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体と、有機溶剤に溶解または分散させた0.1〜50重量%の含フッ素ポリマーと、0.1〜10重量%の光重合開始剤の混合物に光照射して薄膜状の低屈折組成物を得ることもできる。
【0024】
ここで、炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物およびまたはアクリレート化合物とは、特に制限されるものではないが、CF3 (CF2)8CH22CCH=CH2、CF3(CF2)8CH22CC(CH)=CH2、HCF2(CF2)7(CH2)22CCH=CH2、HCF2(CF2)7(CH2)22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)7CH22CCH=CH2、CF3(CF2)7CH22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)6CH22CCH=CH2、CF3(CF2)6CH22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)5CH22CCH=CH2、CF3(CF2)5CH22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)4CH22CCH=CH2、CF3(CF2)4CH22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)3CH22CCH=CH2、CF3(CF2)3CH22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)2CH22CCH=CH2、CF3(CF2)2CH22CC(CH)=CH2、(CF33CCH22CCH=CH2、(CF33CCH22CC(CH)=CH2、(CF32CFCH22CCH=CH2、(CF32CFCH22CC(CH)=CH2、CF3CF2CH(CF3 )O2CCH=CH2、CF3CF2CH(CF3 )O2CC(CH)=CH2、CF3CF2CH22CCH=CH2、CF3CF2CH22CC(CH)=CH2、CF3CF3CHO2CCH=CH2、CF3 CF3CHO2CC(CH)=CH2、H2CFCH22CCH=CH2、H2CFCH22CC(CH)=CH2、HCF2CH22CCH=CH2、HCF2CH22CC(CH)=CH2、CF3CH22CCH=CH2、CF3CH22CC(CH)=CH2、などが例示され、単独あるいは二種以上混合して用いることができ、特に、CF3CH22CCH=CH2、CF3CH22CC(CH)=CH2の使用が好ましい。
【0025】
また、本発明におけるフッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体とは、CH22CC(CH)=CH2、CH22CCH=CH2や、新中村化学工業(株)や日本化薬(株)などで製造販売されている、CH=C(CH)O2C(CHO)COC(CH)=CH、CH=C(CH)O2C(CHO)COC(CH)=CH、CH=C(CH)O2C(CHO)3COC(CH)=CH、CH=C(CH)O2C(CHO)4COC(CH)=CH、CH=CHO2C(CHO)4COCH=CH、CH=CHO2C(CHO)6COCH=CH、CH=CHO2C(CHO)9COCH=CH、CH=CHO2C(CHO)10COCH=CH、CH=C(CH)O2C(CHO)9COC(CH)=CH、CH=C(CH)O2C(CHO)14COC(CH)=CH、CH=C(CH)O2C(CHO)23COC(CH)=CH、CH=C(CH)O2CCHC(CHCHCO2C(CH)=CH、CH=CHO2CCHC(CHCHCO2CH=CHCH=C(CH)O2CCHCH(OH)CHCO2C(CH)=CH、CH=C(CH)O2C(CH9CO2C(CH)=CH、CH=C(CH)O2C(CHO)(CC(CH)(CHO)COC(CH)=CH(m+n=2〜30)、CH=CHO2C(CHO)(CC(CH)(CHO)COCCH=CH(m+n=2〜30)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、CH=C(CH)O2C(CHC(C)(CHCC(CH)=CH)CH)OCC(CH)=CH、CH=CHO2C(CHC(C)(CHCCH=CH)CH)OCCH=CH、CH=CHO2C(CHC(CHCCH=CHCH)OCCH=CH、CH=CHO2C(CHC(CHCCH=CHCH)OCHC(CH(CHCCH=CH、や(株)トクシキ、新中村工業(株)あるいは日本化薬(株)で販売されているウレタン骨格を有するウレタンジメタクリレート化合物やウレタンジアクリレート化合物、あるいは昭和電工(株)で販売されているイソシアネートモノマーであるカレンズ・シリーズから誘導されるウレタンジメタクリレート化合物やウレタンジアクリレート化合物あるいは、ウレタンメタクリレートアクリレートなどなどが例示され、これらを単独あるいは二種以上混合して用いることができる。
【0026】
更に、本発明では、当該低屈折率薄膜組成物に0.01〜10重量部のフュームドシリカが含まれることにより、得られる薄膜の性能が向上する。本発明で用いることができるフュームドシリカは、一次粒子の平均径が1〜100nmで、比評面積が10〜1000m/gのもので、特に好ましくは、一次粒子の平均径が3〜50nmで、比評面積が40〜400m/gである。例えば、エボニック社製のフュームドシリカであれば、R202、R805、R812、R812S、RX200、RY200,R972、R972CF,90G、200V,200CF、200FAD、300CF等を用いることが出来る。なお、本発明ではヒュームドシリカとともに、微粒子状のチタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ−アルミナなども単独あるいは二種以上を混合して用いることが出来る。
【0027】
本発明で用いられる、含フッ素ポリマーとは、式(1)、
【0028】
【化4】

【0029】
式(2)、
【0030】
【化5】

【0031】
式(3)、
【0032】
【化6】

【0033】
で示される環状構造を有する含フッ素ポリマーおよび/またはテトラフルオロエチレン10〜50モル部、ヘキサフルオロプロピレン0〜50モル部、ビニリデンフルオライド90〜10モル部、およびビニルフルオライド10〜100モル部のモノマーの共重合体である。本発明の含フッ素ポリマーは有機溶剤に可溶または分散可能である。
【0034】
本発明で用いられる含フッ素ポリマーとして、例えば、市販品のテフロンAFシリーズ(デュポン社製)、フルオンシリーズ(旭硝子社製)、ハイフロンシリーズ(ソルベイ・ソレクシス社製)、サイトップ(旭硝子社製)、THVシリーズ(住友スリーエム社製)、ネオフロンシリーズ(ダイキン社製)、カイナーシリーズ(アルケマ社製)、テドラーシリーズ(デュポン社製)、ダイニオンシリーズ(ダイニオン社製)などを単独あるいは二種以上用いることができる。
【0035】
これらフッ素ポリマーを溶解あるいは分散させる有機溶媒としては、CF3CH2OH、F(CF22CH2OH、(CF32CHOH、F(CF23CH2OH、F(CF2425OH、H(CF22CH2OH、H(CF23CH2OH、H(CF24CH2OHなどのフッ素アルコール系溶剤、パーフルオロベンゼン、メタキシレンヘキサフルオライドなどの含フッ素芳香族系溶剤、CF4(HFC−14)、CHClF2(HCFC−22)、CHF3(HFC−23)、CH2CF2(HFC−32)、CF3CF3(PFC−116)、CF2ClCFCl2(CFC−113)、C3HClF5(HCFC−225)、CH2FCF3(HFC−134a)、CH3CF3(HFC−143a)、CH3CHF2(HFC−152a)、CH3CCl2F(HCFC−141b)、CH3CClF2(HCFC−142b)、C48(PFC−C318)などのフルオロカーボン系溶剤などが例示され、更に、例えば、キシレン、トルエン、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ヘキサンなどの炭化水素系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコール、酢酸ジエチレングリコールなどのエステル系溶剤;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン系溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミドなどのアミド系溶剤、ジメチルスルホキシドなどのスルホン酸エステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(重合度3〜100)などが例示され、単独あるいは二種以上混合して用いることができる。なお、これらのうち、溶解能、塗膜外観、貯蔵安定性の点から前記各種のフッ素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が好ましく、特にメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、セロソルブアセテート、酢酸ブチル、酢酸エチル、パーフルオロベンゼン、メタキシレンヘキサフルオライド、HCFC−225、CFC−113、HFC−134a、HFC−143a、HFC−142bの単独あるいは二種以上混合した使用が好ましい。
【0036】
また更に、本発明で用いられる含フッ素ポリマーとして、炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物およびまたはアクリレート化合物からなるポリマーを用いる事ができ、CF3 (CF2)8CH22CCH=CH2、CF3(CF2)8CH22CC(CH)=CH2、HCF2(CF2)7(CH2)22CCH=CH2、HCF2(CF2)7(CH2)22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)7CH22CCH=CH2、CF3(CF2)7CH22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)6CH22CCH=CH2、CF3(CF2)6CH22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)5CH22CCH=CH2、CF3(CF2)5CH22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)4CH22CCH=CH2、CF3(CF2)4CH22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)3CH22CCH=CH2、CF3(CF2)3CH22CC(CH)=CH2、CF3(CF2)2CH22CCH=CH2、CF3(CF2)2CH22CC(CH)=CH2、(CF33CCH22CCH=CH2、(CF33CCH22CC(CH)=CH2、(CF32CFCH22CCH=CH2、(CF32CFCH22CC(CH)=CH2、CF3CF2CH(CF3 )O2CCH=CH2、CF3CF2CH(CF3 )O2CC(CH)=CH2、CF3CF2CH22CCH=CH2、CF3CF2CH22CC(CH)=CH2、CF3CF3CHO2CCH=CH2、CF3 CF3CHO2CC(CH)=CH2、H2CFCH22CCH=CH2、H2CFCH22CC(CH)=CH2、HCF2CH22CCH=CH2、HCF2CH22CC(CH)=CH2、CF3CH22CCH=CH2、CF3CH22CC(CH)=CH2、などを一種または複数混合し、熱重合させて得られるポリマーが例示される。
【0037】
本発明で用いられる光重合開始剤は、特に制限されるものではないが、IRGACURE651、IRGACURE184、DAROCUR1173、IRGACURE2959、IRGACURE127、IIRGACURE907、IIRGACURE369、IIRGACURE379、DAROCUR TPO、IRGACURE819、IRGACURE784、IRGACURE OXE1、IRGACURE OXE2、IRGACURE754等のチバガイギー社製のものやBASF社製のLucirin TPO、Lucirin TPO−Lを単独あるいは二種以上混合して使用できる。光硬化を促進するため、例えば、ベンゾフェノン等のケトン化合物、ローズベンガル等の色素や、フルオレン、ピレン、あるいはフラーレン等の共役系化合物を光増感剤として、光開始剤に対して重量比で0.05〜3倍量を光開始剤と併用いることが可能である。
【0038】
また、本発明における光硬化で、光開始剤に加熱によりラジカルを発生する熱開始剤を、光開始剤に対して重量比で0.05〜3倍量を併用、あるいは光開始剤と光増感剤を併用することも出来る。熱開始剤としては、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)、ケトンパーオキサイドやパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシカーボネートなどの化合物またはその誘導体が好ましく、市販品では、日本油脂株式会社製パーロイルO、パーロイルL、パーロイルS、パーオクタO、パーロイルSA、パーヘキサ250、パーヘキシルO、ナイパーPMB、パーブチルO、ナイパーBMT、ナイパーBW、パーブチルIB、パーヘキサMC、パーヘキサTMH、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーテトラA、パーヘキシルI、パーブチルMA、パーブチル355、パーブチルL、パーヘキサ25MT、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキシルZ、パーヘキサV、パーブチルP、パークミルD、パーヘキシルD、パーヘキサ25B、パーブチルD、パーメンタH、パーヘキシン25Bなどが例示できる。
【0039】
また、本発明では、炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物あるいはアクリレート化合物、フッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体、フュームドシリカ、及び光重合開始剤に光を照射することにより、当該低屈折率薄膜組成物を得ることもできる。例えば、1〜90重量部の炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物あるいはアクリレート化合物と、1〜50重量部のフッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体と、0.01〜10重量部のフュームドシリカと、0.1〜10重量部の光重合開始剤からなる組成物に光照射し、薄膜状の硬化組成物を得ることができる。
【0040】
本発明で用いられる炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物あるいはアクリレート化合物としては、特に、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートおよびまたは2,2,2−トリフルオロエチルアクリレートが好適である。
【0041】
本発明では、フルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物あるいはアクリレート化合物や、含フッ素ポリマーなどの含フッ素化合物は、主に得られた薄膜組成物の屈折率を下げる。また、フッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体や、ヒュームドシリカなどのフッ素を含まない化合物は、得られた薄膜組成物の硬度や耐擦過性の向上あるいは基材への接着性を向上させる。
【0042】
本発明で得られる薄膜組成物の屈折率は、ナトリウムD線(589nm)の光に対し、1.30以上1.47未満であることも特徴としてあげられる。
【0043】
なお、本発明の光硬化では、高圧水銀灯、定圧水銀灯、タリウムランプ、インジウムランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、紫外線LED、青色LED,白色LED、ハリソン東芝ラィティング社製のエキシマランプ、フュージョン社製のHバルブ、Hプラスバルブ、Dバルブ、Vバルブ、Qバルブ、Mバルブ等の発光光が挙げられるほか、太陽光の使用も可能である。光硬化反応が進みにくい場合は、光照射を酸素非存在下で実施することが望ましい。酸素存在下では酸素阻害のためフィルム表面のべたつきがなかなか取れず、開始剤の使用量を増やすことが必要となる。なお、酸素非存在下での硬化方法としては、窒素ガス、炭酸ガス、ヘリウムガス等の雰囲気で行うことが挙げられる。
【0044】
以下に記載した実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
光硬化は、ハリソン東芝ライティング社製の高圧水銀灯またはフュージョン社製のHバルブの光源を用いた。光量計は、EIT社製のUV POWER PUCKを用いた。屈折率は、23℃で波長589nm(D線)にて日本分光社製のM−150で測定した。膜厚は、テクロック社製のPG−20で測定した。鉛筆硬度は、コーテック社製のKT−VF2391で測定した。
【0046】
光硬化の判定は、タックフリーテスト(指触テスト)に基づいて行った。すなわち、光照射によりフィルム表面の光硬化性組成物のタック(べたつき)が取れるまでの時間を硬化時間とした。
【0047】
(実施例1)
東ソー・エフテック社製の2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを9.0g、新中村工業社製のA−DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)を1.0g、チバガイギー社製のIRGACURE184を200mg、エボニック社製のR202(ジメチルシリコンオイル処理のフュームドシリカ)を5mg混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部を松浪硝子工業社製のガラス板(50mmx40mmx0.1mm)上にスポイトで54.3mg移し、ハリソン東芝ライティング社の高圧水銀ランプで約1秒間(320nm〜390nm、500mJ/cm)、そのガラス板上の組成物を照射したところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は8μmで、鉛筆硬度は、5Hで、屈折率は、1.44であった。
【0048】
(実施例2)
大阪有機工業社製の2,2,2−トリフルオロエチルアクリレートを9.0g、日本化薬社製のKAYA−R684(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)を1.0g、チバガイギー社製のIRGACURE184を200mg、エボニック社製のR202(ジメチルシリコンオイル処理のフュームドシリカ)を5mg混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部を松浪硝子工業社製のガラス板(50mmx40mmx0.1mm)上にスポイトで40.4mg移し、ハリソン東芝ライティング社の高圧水銀ランプで約1秒間(320nm〜390nm、500mJ/cm)、そのガラス板上の組成物を照射したところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は9μmで、鉛筆硬度は、5Hで、屈折率は、1.43であった。
【0049】
(実施例3)
東ソー・エフテック社製の2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを9.0g、新中村工業社製のNK−NOD(1,9−ノナンジオールジメタクリレート)を1.0g、チバガイギー社製のIRGACURE184を200mg、エボニック社製のR202(ジメチルシリコンオイル処理のフュームドシリカ)を5mg混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部を松浪硝子工業社製のガラス板(50mmx40mmx0.1mm)上にスポイトで54.3mg移し、ハリソン東芝ライティング社の高圧水銀ランプで約1秒間(320nm〜390nm、500mJ/cm)、そのガラス板上の組成物を照射したところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は8μmで、鉛筆硬度は、Hで、屈折率は、1.44であった。
【0050】
(実施例4)
東ソー・エフテック社製の2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを9.0g、新中村工業社製のA−DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)を1.0g、新中村工業社製のNK−701(2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロイルプロパン)を100mg、チバガイギー社製のIRGACURE127を200mg、エボニック社製のR202(ジメチルシリコンオイル処理のフュームドシリカ)を5mg混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部を松浪硝子工業社製のガラス板(50mmx40mmx0.1mm)上にスポイトで47.5mg移し、フュージョン社のHバルブで約1秒間(320nm〜390nm、500mJ/cm)、そのガラス板上の組成物を照射したところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は9μmで、鉛筆硬度は、4Hで、屈折率は、1.42であった。
【0051】
(実施例5)
東ソー・エフテック社製の2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを9.0g、新中村工業社製のA−DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)を1.0g、チバガイギー社製のIRGACURE1173を200mg、和光純薬社製のMIBK(メチルイソブチルケトン)40mgに溶解したアルケマ社製のカイナーSLを10mg、エボニック社製のR202(ジメチルシリコンオイル処理のフュームドシリカ)を5mg混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部を松浪硝子工業社製のガラス板(50mmx40mmx0.1mm)上にスポイトで32.7mg移し、ハリソン東芝ライティング社の高圧水銀ランプで約5秒間(320nm〜390nm、2000mJ/cm)、そのガラス板上の組成物を照射したところ、べたつきのない薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は8μmで、鉛筆硬度は、Hで、屈折率は、1.45であった。
【0052】
(実施例6)
東ソー・エフテック社製の2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを9.0g、新中村工業社製のA−DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)を1.0g、チバガイギー社製のIRGACURE184を200mg、和光純薬社製のMIBK(メチルイソブチルケトン)40mgに溶解したアルケマ社製のカイナーSLを10mg、混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部を松浪硝子工業社製のガラス板(50mmx40mmx0.1mm)上にスポイトで49.5mg移し、ハリソン東芝ライティング社の高圧水銀ランプで約5秒間(320nm〜390nm、2000mJ/cm)、そのガラス板上の組成物を照射したところ、べたつきのない薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は8μmで、鉛筆硬度は、Hで、屈折率は、1.45であった。
【0053】
(実施例7)
新中村工業社製のNK−1G(エチレングリコールジメタクリレート)を1.0g、チバガイギー社製のIRGACURE651を20mg、和光純薬社製のMIBK(メチルイソブチルケトン)4.0gに溶解したアルケマ社製のカイナーSLを1.0g、エボニック社製のR202(ジメチルシリコンオイル処理のフュームドシリカ)を5mg混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部を松浪硝子工業社製のガラス板(50mmx40mmx0.1mm)上にスポイトで39.5mg移し、ハリソン東芝ライティング社の高圧水銀ランプで約5秒間(320nm〜390nm、2000mJ/cm)、そのガラス板上の組成物を照射したところ、べたつきのない薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は8μmで、鉛筆硬度は、Bで、屈折率は、1.45であった。
【0054】
(実施例8)
新中村工業社製のBPE−100(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート)を1.0g、チバガイギー社製のIRGACURE651を20mg、和光純薬社製のMIBK(メチルイソブチルケトン)4.0gに溶解したアルケマ社製のカイナーSLを1.0g、混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部を松浪硝子工業社製のガラス板(50mmx40mmx0.1mm)上にスポイトで35.5mg移し、ハリソン東芝ライティング社の高圧水銀ランプで約5秒間(320nm〜390nm、2000mJ/cm)、そのガラス板上の組成物を照射したところ、べたつきのない薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は8μmで、鉛筆硬度は、2Bで、屈折率は、1.45であった。
【0055】
(実施例9)
東ソー・エフテック社製の2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートをPolymer Journal誌の1994年、10巻、1118〜1123ページに記載の合成法により得たポリ2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを9.0g、新中村工業社製のA−DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)を1.0g、チバガイギー社製のIRGACURE184を200mg、エボニック社製のR202(ジメチルシリコンオイル処理のフュームドシリカ)を5mg混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部を松浪硝子工業社製のガラス板(50mmx40mmx0.1mm)上にスポイトで54.3mg移し、ハリソン東芝ライティング社の高圧水銀ランプで約1秒間(320nm〜390nm、500mJ/cm)、そのガラス板上の組成物を照射したところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は8μmで、鉛筆硬度は、5Hで、屈折率は、1.43であった。
【0056】
(実施例10)
東ソー・エフテック社製の2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートをPolymer Journal誌の1994年、10巻、1118〜1123ページに記載の合成法により得たポリ2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを9.0g、新中村工業社製のA−TMM−3L(ペンタエリスリトールトリアクリレート)を1.0g、チバガイギー社製のIRGACURE184を200mg、エボニック社製のR202(ジメチルシリコンオイル処理のフュームドシリカ)を5mg混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部を松浪硝子工業社製のガラス板(50mmx40mmx0.1mm)上にスポイトで54.3mg移し、ハリソン東芝ライティング社の高圧水銀ランプで約1秒間(320nm〜390nm、500mJ/cm)、そのガラス板上の組成物を照射したところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は8μmで、鉛筆硬度は、3Hで、屈折率は、1.43であった。
【0057】
(実施例11)
東ソー・エフテック社製の2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートをPolymer Journal誌の1994年、10巻、1118〜1123ページに記載の合成法により得たポリ2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを4.5g、東ソー・エフテック社製の2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを4.5g、新中村工業社製のA−DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)を1.0g、チバガイギー社製のIRGACURE184とIRGACURE184を各々100mg、エボニック社製のR202(ジメチルシリコンオイル処理のフュームドシリカ)を5mg混合し、目視にて均一になるまで攪拌した。その溶液の一部を松浪硝子工業社製のガラス板(50mmx40mmx0.1mm)上にスポイトで54.3mg移し、ハリソン東芝ライティング社の高圧水銀ランプで約1秒間(320nm〜390nm、500mJ/cm)、そのガラス板上の組成物を照射したところ、べたつきのない透明な薄膜が得られた。その薄膜の膜厚は8μmで、鉛筆硬度は、5Hで、屈折率は、1.43であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
光硬化により得られる当該薄膜は、ワープロ、コンピュータ、テレビ等の各種ディスプレイ、太陽電池、各種光学レンズ、光学部品、自動車や電車の窓ガラス表面等の光反射防止膜として用いることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物および/またはアクリレート化合物、フッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体、有機溶剤に溶解または分散させた含フッ素ポリマー及び光重合開始剤からなる低屈折率薄膜組成物。
【請求項2】
フッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体および/またはメタクリル酸誘導体、有機溶剤に溶解または分散させた含フッ素ポリマー及び光重合開始剤からなる低屈折率薄膜組成物。
【請求項3】
フュームドシリカを含む請求項1又は2に記載の低屈折率薄膜組成物。
【請求項4】
含フッ素ポリマーが、
式(1)、
【化1】

式(2)、
【化2】

又は式(3)、
【化3】

で示される環状構造を有する含フッ素ポリマーおよび/またはテトラフルオロエチレン10〜50モル部、ヘキサフルオロプロピレン0〜50モル部、ビニリデンフルオライド90〜10モル部、およびビニルフルオライド10〜100モル部のモノマーの共重合体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の低屈折率薄膜組成物。
【請求項5】
含フッ素ポリマーが、炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物およびまたはアクリレート化合物からなるポリマーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の低屈折率薄膜組成物。
【請求項6】
炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物あるいはアクリレート化合物、フッ素を含まない1〜5個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体、フュームドシリカ及び光重合開始剤からなる低屈折率薄膜組成物。
【請求項7】
炭素数1〜10のフルオロアルキル基を含有するメタアクリレート化合物あるいはアクリレート化合物が、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートおよびまたは2,2,2−トリフルオロエチルアクリレートである、請求項1、請求項5または請求項6に記載の低屈折率薄膜組成物。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の低屈折率薄膜組成物を薄膜に形成し、光を照射して硬化させたことを特徴とする低屈折率硬化薄膜。


【公開番号】特開2010−195859(P2010−195859A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39453(P2009−39453)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】