説明

低次構造シリカを含有するインナーライナーを持つタイヤ

【課題】 改善された耐透過性および引裂抵抗性を有する、主要部がブチルゴムより構成されるタイヤインナーライナーを持つ空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】
カーカスおよびそのカーカスに直接接触しているインナーライナーを含む空気入りタイヤであって、上記インナーライナーが、10重量部の少なくとも1種のエラストマー;エラストマー100重量部当たり10〜80重量部(phr)のカーボンブラック;および10〜70phrの、500nm未満の中央値粒度、15〜25m/gの範囲の比表面積および2.1〜2.3g/cmの比重を有する低次構造ミクロシリカをむゴム組成物を含む上記の空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーカスおよびそのカーカスに直接接触しているインナーライナーを含む空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
空気入りゴムタイヤは通常トロイド形状であり、そしてクロージャーが典型的にはタイヤが取り付けられるべき堅いリムで終わっているキャビティー(空洞部分)を持つカーカスを含む。このような空気入りタイヤ、および空気入りタイヤ/リム集成体は周知である。
【0003】
空気入りタイヤの内面、即ち、ときには「インナーライナー」と称される上記キャビティーの表面は、典型的には、タイヤの内部空気室となる上記キャビティーからタイヤカーカスの中への空気および湿気の透過を防ぎまたは遅らせるように設計されているエラストマー組成物から構成されたゴム層である。このようなタイヤインナーライナー、即ちインナーライナーゴム層はこのような技術分野の当業者にはよく知られている。
【0004】
ブチルゴムは、典型的には、比較的空気および湿気不透過性であって、タイヤインナーライナー組成物の主要部として使われることが多く、そして、ブチルゴム、または例えばブロモブチルゴムのようなハロブチルゴムの形をしていることができる。例えば、米国特許第3,808,177号明細書を参照されたい。ブチルゴムは、典型的には約0.5〜約5重量パーセントのイソプレン由来単位を含んでいるに過ぎない、少量のイソプレンとのイソブチレン共重合体である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハロブチルゴムおよびブチルゴムは、通常、タイヤで使用される最も高価なエラストマーの1つである。タイヤ市場に競争があり、そしてタイヤの製造コストを下げる必要が引き続きあるとすれば、それにはインナーライナーのコストをそれらの性能を維持しつつ低下させたいという欲求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、カーカスおよびそのカーカスに直接接触しているインナーライナーを含む空気入りタイヤであって、上記インナーライナーが
100重量部の少なくとも1種のエラストマー;および
エラストマー100重量部当たり10〜80重量部(phr)のカーボンブラック;並びに
10〜70phrの、500nm未満の中央値粒度、15〜25m/gの範囲の比表面積および2.1〜2.3g/cmの比重を有する低次構造ミクロシリカ
を含むゴム組成物
を含む上記の空気入りタイヤに向けられている。
【0007】
発明の説明
本明細書には、カーカスおよびそのカーカスに直接接触しているインナーライナーを含む空気入りタイヤであって、上記インナーライナーが
100重量部の少なくとも1種のエラストマー;および
エラストマー100重量部当たり10〜80重量部(phr)のカーボンブラック;並びに
10〜70phrの、500nm未満の中央値粒度、15〜25m/gの範囲の比面積および2.1〜2.3g/cmの比重を有する低次構造ミクロシリカ
を含むゴム組成物
を含む上記の空気入りタイヤが開示される。
【0008】
予想外にも、タイヤインナーライナーゴム組成物中に低次構造ミクロシリカを含めることは、許容できる引裂強さと共に高い耐透過性を有するインナーライナーをもたらすことが見いだされた。
【0009】
本発明の説明において、用語「phr」はゴム組成物中に含まれるゴム100重量部当たりの特定成分の重量部数に関する。用語「ゴム」と「エラストマー」とは外に指摘されなければ互換的に使用され、用語「硬化させる」と「加硫する」とは外に指摘されなければ互換的に使用することができ、そして用語「ゴム組成物」と「ゴムコンパウンド」とは外に指摘されなければ互換的に使用することができる。用語「ブチル型ゴム」は、本発明では、外に指摘されなければ、ブチルゴム(イソブチレンと例えば約0.5〜5重量パーセント或いはまた1〜約3重量パーセントから構成される少量のイソプレン由来単位との共重合体)、並びにクロロブチルゴムおよびブロモブチルゴム(それぞれ塩素化ブチルゴムおよび臭素化ブチルゴム)としてのハロブチルゴムを指すために用いられる。
【0010】
本発明のインナーライナーで使用するためのゴム組成物はエラストマーを含んでいる。適したエラストマーに、ブチルゴム、並びにクロロブチルゴムおよびブロモブチルゴムのようなハロブチルゴムを含めてブチル型ゴムが包含される。他の適したエラストマーに、合成ポリイソプレン、天然ゴム、スチレンブタジエンゴムおよびポリブタジエンが包含される。
【0011】
上記に代わるインナーライナー用ブチルゴムは、イソブチレンとパラメチルスチレンとの臭素化共重合体を含む。臭素化共重合体は、普通、約0.3〜約2重量パーセントの臭素化を含んでいる。このような臭素化共重合体を例示すると、伝えられるところでは約45〜約55の125℃におけるムーニー(ML 1+8)粘度、約5重量パーセントのパラメチルスチレン含量、約94〜約95重量パーセントのイソブチレン含量および約0.8重量パーセントの臭素含量を有するExxonMobil Chemical社からのExxpro(登録商標)がある。或いはまた、ブチルゴムは、イソブチレンとイソプレンとの共重合体とイソブチレンとパラメチルスチレンとの臭素化共重合体とを一緒にした組み合わせを含むことができる。
【0012】
本発明のインナーライナーで使用するためのゴム組成物は、また、低次構造ミクロシリカも含んでいる。低次構造(low structure)とは、ミクロシリカが比較的低い比表面積を有し、かつ凝集傾向が低いほとんど球形の一次粒子幾何学的外形を有することを意味する;1つの態様において比表面積は15−25m/gの範囲である。本発明で使用される用語・ミクロシリカは、シリカが還元され、その還元生成物が気相中で酸化されて非晶質シリカを形成する気相法から得られた粒状非晶質SiO2を指す。このようなミクロシリカは少なくとも97重量%のシリカ(SiO2)を含有し、そして2.1〜2.3g/cmの比重および15〜25m/gの表面積を有することができる。一次粒子は実質的に球形である。一次粒子は約0.15ミクロンの中央値としての大きさを有し、この場合中央値としての大きさの範囲は約100〜200nmである。ミクロシリカは、電気還元炉での珪素または珪素合金の製造において共−生成物(co-product)として得るのが好ましい。これらの方法においては大量のシリカがSiO2として形成される。このSiO2はフィルターまたは他の収集装置を用いる常用の方法で回収される。
【0013】
ミクロシリカは、SiO2源および1種または2種以上の固体炭素質還元剤を含む装填材料がフェロシリコン(ferrosilicon)または珪素を形成するために反応せしめられる電気還元炉中でのフェロシリコンおよび珪素の生成中に副生成物として生成させることができる。この方法においては、還元炉中の反応ゾーンにおいてガス状SiO2が中間生成物として形成され、そのガスが装填材料を通って上の方へ移動する。SiO2ガスの一部は反応ゾーンの上方のより冷たい装填材料中で凝縮され、一方そのSiO2ガスの残りの部分は装填材料から逃れ、装填材料の上方の、炉に供給される空気によって速やかに冷却、酸化されて粒状非晶質SiO2を形成する。粒状SiO2は炉から上向きに排ガスの中に運ばれ、そしてフィルター、普通はバグハウスフィルター中で上記の炉排ガスから回収される。こうして製造されたミクロシリカは0.5ミクロン(500nm)以下、実質的には0.02〜0.5ミクロンの間の粒度を有し、そしてその個々の粒子は基本的には形状が球形である。適した低次構造ミクロシリカは、例えば米国特許第6,696,035号明細書に開示される方法に従って製造することができる。
【0014】
適した低次構造ミクロシリカは、限定されるものではないが、Sidistar(登録商標)Rを含めてElkem社からのSidistar(登録商標)シリーズとして商業的に入手できる。Sidistar(登録商標)Rは次のとおりの性質を有すると報告されている:二酸化珪素(非晶質SiO2)最低90.0重量パーセント;炭素(C)最大1.50重量パーセント;酸化鉄(Fe2O3)最大0.25重量パーセント;銅(Cu)最大0.01重量パーセント;マンガン(Mn)最大0.02重量パーセント;水(充填されたときのH2O)最大0.80重量パーセント;975℃での強熱減量1.80%;BET表面積15〜25m/g;中央値粒度0.15ミクロン;粗粒(45ミクロンより大)最大0.10重量パーセント;pH値(新鮮なシリカ(fresh))6.5〜8.0;比重2.2g/cm;および嵩密度(充填されたとき)500〜700kg/m
【0015】
1つの態様では、低次構造ミクロシリカは約20nmに狭い極大値を、そして約100〜約400nmに広いほうの第二極大値を持つ双峰粒度分布を有する。
【0016】
1つの態様では、低次構造シリカの個々の粒子は形状が実質的に球形である。
【0017】
実質的に球形とは、低次構造シリカ粒子が次の定義(米国特許第5,915,150号に従う)による表面積に基づく球形度が0.95以上、即ち0.95〜1の範囲であることを意味する:球形度=[実質的に球形の粒子が真の球体の形をしているという仮定に基づく幾何学的比表面積(m/g)]/[実質的に球形の微粒子の実測BET比表面積]。
【0018】
本発明で言及される球形度を計算するための、実質的に球形の粒子のBET比表面積(m/g)の値は、比表面積メーター(例えばQUANTACHROME Co.から入手できる“Autosorb 1”)を用いることによる、次の方法でなされる測定に基づく。
【0019】
約0.3gの実質的に球形の粒子をセルの中へ秤量し、40℃の温度および1.0×10−3mmHgの真空度において少なくとも1時間排気に付し、次いでBETマルチポイント法(BET multi-point method)による比表面積測定のために液体窒素温度で冷却しながら窒素吸着に付す。
【0020】
実質的に球形の粒子が真の球体の形をしているという仮定に基づく幾何学的比表面積(m/g)は、次の方法で測定することができる。実質的に球形の試料粒子の写真を電子顕微鏡により倍率10,000倍で撮り、そして各々少なくとも10nmの粒度を有する100個の粒子の画像をランダムに選んでそれら100個の粒子の長軸直径の平均を求める。その時、実質的に球形の微粒子は、表面積が4πr(m)と計算され、また容積が4/3πr(m)と計算されるように半径r(=1/2×平均の長軸直径)を有する真の球体であると仮定される。その時、上記の仮定された幾何学的比表面積は、別個に測定された上記の実質的に球形の粒子の密度d(g/m)を用いることによって4πr/(4/3πr)=3/(rd)と計算することができる。
【0021】
1つの態様では、低次構造シリカはゴム組成物中に10〜70phrの範囲の量で存在することができる。他の態様では、低次構造シリカはゴム組成物中に10〜40phrの範囲の量で存在することができる。
【0022】
インナーライナーゴム組成物は、また、タイヤインナーライナー用の前記のエラストマーおよび低次構造ミクロシリカに加えて、ゴム加硫物において一般に用いられる他の常用の成分、例えば粘着付与剤樹脂、加工助剤、カーボンブラック、シリカ、タルク、クレー、マイカ、酸化防止剤、オゾン亀裂防止剤、ステアリン酸、活性剤、ワックスおよび油を望まれるだろうとおりに含んでいることができる。カーボンブラックは、例えば10〜80phrの範囲で用いることができる。1つの態様では、ゴム組成物中の低次構造シリカとカーボンブラックとの合計量は10〜30容量パーセントの範囲である。
【0023】
インナーライナーとして使用するためのコンパウンドの加硫は硫黄加硫剤の存在下で行われる。適した硫黄加硫剤の例に、元素硫黄(遊離硫黄)、または硫黄供与加硫剤、例えばアミンジスルフィド、高分子ジスルフィドまたは硫黄オレフィン付加体が包含される。硫黄加硫剤は元素硫黄が好ましい。この技術分野の当業者に知られているように、硫黄加硫剤は約0.2〜5.0phrの範囲の量で用いられ、約0.5〜3.0phrの範囲が好ましい。
【0024】
促進剤は、加硫に必要とされる時間および/または温度を制御するために、そして加硫物の性質を改善するために使用される。単一の促進剤系、即ち一次促進剤は約0.5〜3.0phrの範囲の常用量で使用することができる。これに代わる態様では、一般により大量(0.3〜3.0phr)で用いられる一次促進剤、および加硫を活性化し、そして加硫物の性質を改善するために一般により少量(0.05〜1.0phr)で用いられる二次促進剤より成ることができる2種または3種以上の促進剤の組み合わせが用い得る。これら促進剤の組み合せは最終製品の性質に対して相乗効果をもたらすことが知られており、そしてそれらの最終的な性質はいずれかの促進剤単独によってもたらされる性質よりも幾分良好である。加えて、標準の加工温度によっては影響を受けないが、普通の加硫温度では満足な硬化をもたらす遅効型促進剤も用いることができる。使用することができる、適したタイプの促進剤は、アミン類、ジスルフィド類、グアニジン類、チオ尿素類、チアゾール類、チウラム類、スルフェンアミド類、ジチオカルバメート類およびザンテート類である。一次促進剤はジスルフィド類またはスルフェンアミド類であるのが好ましい。
【0025】
タイヤインナーライナー組成物が低次構造ミクロシリカの外にシリカを含んでいることが望ましい場合、色々な合成非晶質シリカがタイヤインナーライナー組成物に用いることができる。このようなシリカの典型は、例えば、そして限定することを意図するものではないが、例えばPPG Industries社からのHiSil 210(商標)およびHiSil 243(商標)としての沈降シリカ;並びにJ. M. Huber Companyからの各種沈降シリカ;Degussa Companyからの各種沈降シリカ;およびRhodia Companyからの各種沈降シリカである。
【0026】
色々なカップリング剤が、シリカ凝集体を多種のエラストマーにカップリングさせるために種々の合成非晶質シリカ、特に沈降シリカに使用することができる。このようなカップリング剤の典型は、例えば、そして限定することを意図するものではないが、アルコキシ基の内の少なくとも2つ、そして随意に全3つがエトキシ基であり、そしてポリスルフィド橋が平均約2〜約4個、或いはまた平均約2〜約2.6個または平均約3.4〜約3.8個の連結硫黄原子を含むビス(3−トリアルコキシシリルプロピル)ポリスルフィド、並びにゴム組成物との混合中に適切なブロッキング剤でブロックされるメルカプト部分を随意に有することができる、アルコキシ基が好ましくはエトキシ基であるアルコキシ有機メルカプトシランである。
【0027】
ゴム組成物の混合は、ゴムの混合技術分野の当業者に知られている方法によって成し遂げることができる。例えば、その諸成分は、典型的には、少なくとも2つの段階、即ち少なくとも1つの非硬化発現段階とそれに続く硬化発現混合段階で混合される。硫黄加硫剤を含めて最終硬化剤は、典型的には、混合が先行する非硬化発現混合段階(1つまたは2つ以上)の混合温度(1つまたは2つ以上)より低い温度、即ち最終温度で典型的に起こる、通常「硬化発現」混合段階と呼ばれる最終段階で混合される。用語「非硬化発現(non-productive)」混合段階および「硬化発現(productive)」混合段階は、ゴム混合技術分野の当業者には周知である。
【0028】
実際問題として、インナーライナーゴム組成物、即ちコンパウンドはガムストリップに成形される。この技術分野の当業者に知られているように、ガムストリップはプレス機で、またはゴムコンパウンドをミル、カレンダー、多頭押出機または他の適切な手段を通過させることによって製造される。ガムストリップはカレンダーで製造されるのが好ましく、それはより大きな均一性が与えられると思われるからである。次に、未硬化ガムストリップは、カーカスとしても知られる未硬化ゴムタイヤ構造物の内面(露出内面)として構成される。インナーライナーは次に加熱、加圧条件下でのタイヤ硬化作業中にタイヤカーカスと一緒に硫黄硬化される。
【0029】
本発明のタイヤの加硫は、一般に、例えば約100〜200℃の間の諸温度で実行される。好ましくは、加硫は約110〜180℃の範囲の諸温度で行われる。プレス機または金型中での加熱、過熱蒸気若しくは熱塩による加熱、または塩浴中での加熱のような通常の加硫法のいずれも使用することができる。好ましくは、加熱はタイヤ硬化の技術分野の当業者に知られている方法でプレス機または金型中で成し遂げられる。
【0030】
この加硫の結果、インナーライナーは、タイヤと一緒に硬化されることによってタイヤの一体部分となる。
【0031】
従って、実際問題として、インナーライナーは、例えば、未硬化配合ゴムのガムストリップとしての未硬化ゴムタイヤの内面としてまず構成することができ、次いでタイヤの硬化作業中にタイヤと一緒に硬化されるが、この場合上記ゴムのガムストリップは、タイヤのタイプ、大きさおよび予定される用途に多少依存するが、例えば約0.04〜約1センチメートルの範囲、或いはまた約0.05〜約0.5センチメートルの範囲の厚さを有することができる。
【0032】
一体インナーライナーを有する空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラックタイヤ、または他のタイプのバイアス若しくはラジアル空気入りタイヤの形に組み立てることができる。
【0033】
次の実施例は本発明を例証するために与えられるが、それらは本発明を限定するものではない。部数および百分率は外に指摘されなければ重量による。
【実施例】
【0034】
実施例1
この実施例では、ミクロシリカをブロモブチルゴムインナーライナー組成物の中に分散させることの効果が例証される。量は全て重量部である。ゴム組成物は2相混合手法を用いて混合され、この場合エラストマーと充填材を第一非硬化発現混合工程で添加し、続いて常用量の硬化剤を第二硬化発現混合工程で添加してゴムコンパウンドを得た。
【0035】
混合されたコンパウンドは試験品に成形され、そして170℃で25分間硬化された。硬化試料は次に通気度について試験された。通気度は色々な充填材容量について表1−3に示される。
【0036】
接着試験試料は1インチ幅の試験品についての標準剥離接着試験法によって調製された。ストリップ接着試料は、コンパウンドのマイラーフィルム窓シートで隔てられた2つの層のサンドイッチを調製することによって作成された。このサンドイッチを硬化させ、そしてそのマイラーフィルム中の各窓を中心にして1インチ試料を切り取った。この硬化試料を、次に、マイラーフィルムの窓で画成された領域中のシート間の接着力について試験装置で180度引っ張ることによって試験した。次に、硬化試料が指示された試験条件で接着力について試験された。接着試験の結果は色々な充填材容量について表1−3に示される。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
表1−3の各々に見られるとおり、ミクロシリカとカーボンブラックとの組み合わせは、一定充填材容量についてミクロシリカ単独かカーボンブラック単独のどちらかと比較して、有意に改善された耐透過性および引裂抵抗性を示す。このような挙動は予想外かつ驚くべきことであって、それはカーボンブラックとミクロシリカとの組み合わせの相乗効果を示唆している。
【0041】
以上、本発明を説明する目的からある特定の代表的態様および細部を示したが、この技術分野の当業者には、本発明においては発明の精神または範囲から逸脱しない限り色々な変更および改変がなされ得ることは明白であろう。
[本発明の態様]
[1]
カーカスおよびそのカーカスに直接接触しているインナーライナーを含む空気入りタイヤであって、上記インナーライナーが
100重量部の少なくとも1種のエラストマー;
エラストマー100重量部当たり10〜80重量部(phr)のカーボンブラック;および
10〜70phrの、500nm未満の中央値粒度、15〜25m/gの範囲の比表面積および2.1〜2.3g/cmの比重を有する低次構造ミクロシリカ
を含むゴム組成物
を含む上記の空気入りタイヤ。
[2]
エラストマーがブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、合成ポリイソプレン、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、イソブチレンとパラメチルスチレンとの共重合体、およびイソブチレンとパラメチルスチレンとの臭素化共重合体より成る群から選ばれる、1に記載の空気入りタイヤ。
[3]
エラストマーがブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、イソブチレンとパラメチルスチレンとの共重合体、およびイソブチレンとパラメチルスチレンとの臭素化共重合体より成る群から選ばれる、1に記載の空気入りタイヤ。
[4]
低次構造ミクロシリカが約20nmに第一極大値を、そして約100〜約400nmに第二極大値を持つ双峰粒度分布を有する、1に記載の空気入りタイヤ。
[5]
低次構造シリカがゴム組成物中に10〜40phrの範囲の量で存在する、1に記載の空気入りタイヤ。
[6]
低次構造シリカが100〜約200nmの範囲の中央値粒度を有する、1に記載の空気入りタイヤ。
[7]
ゴム組成物中の低次構造シリカとカーボンブラックの合計量が10〜30容量パーセントの範囲である、1に記載の空気入りタイヤ。
[8]
低次構造シリカが形状が実質的に球形である、1に記載の空気入りタイヤ。
[9]
低次構造シリカが、二酸化珪素(非晶質SiO2)を最低90.0重量パーセント;炭素(C)を最大1.50重量パーセント;酸化鉄(Fe2O3)を最大0.25重量パーセント;銅(Cu)を最大0.01重量パーセント;マンガン(Mn)を最大0.02重量パーセント;水(充填されたときのH2O)を最大0.80重量パーセント;;45ミクロンより大きい粗粒を最大0.10重量パーセント含み、975℃での強熱減量が1.80%;BET表面積が15〜25m/g;中央値粒度が0.15ミクロン;pH値(新鮮なシリカ)が6.5〜8.0;比重が2.2g/cm;および嵩密度(充填されたとき)が500〜700kg/mであることを含む性質を有する、1に記載の空気入りタイヤ。
[10]
低次構造シリカが表面積に基づく球形度が0.95以上である、1に記載の空気入りタイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスおよびそのカーカスに直接接触しているインナーライナーを含む空気入りタイヤであって、
上記インナーライナーが
100重量部の少なくとも1種のエラストマー;
エラストマー100重量部当たり10〜80重量部(phr)のカーボンブラック;および
10〜70phrの、500nm未満の中央値粒度、15〜25m/gの範囲の比表面積および2.1〜2.3g/cmの比重を有する低次構造ミクロシリカ
を含むゴム組成物を含む、ことを特徴とする、
上記の空気入りタイヤ。
【請求項2】
エラストマーがブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、合成ポリイソプレン、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、イソブチレンとパラメチルスチレンとの共重合体、およびイソブチレンとパラメチルスチレンとの臭素化共重合体より成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
エラストマーがブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、イソブチレンとパラメチルスチレンとの共重合体、およびイソブチレンとパラメチルスチレンとの臭素化共重合体より成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
低次構造ミクロシリカが約20nmに第一極大値を、そして約100〜約400nmに第二極大値を持つ双峰粒度分布を有することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
低次構造シリカがゴム組成物中に10〜40phrの範囲の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2009−149898(P2009−149898A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326423(P2008−326423)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(590002976)ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー (256)
【氏名又は名称原語表記】THE GOODYEAR TIRE & RUBBER COMPANY
【住所又は居所原語表記】1144 East Market Street,Akron,Ohio 44316−0001,U.S.A.
【Fターム(参考)】