説明

低減画像に基づく歯科矯正治療モニタリング

本発明は、歯科矯正治療過程における患者の歯の位置を、モニタリング及び評価する便利でかつ効率的なデジタル処理方法を提供する。代表的な実施形態では、患者の歯牙構造を表す三次元デジタルデータの初期のセットは、X線写真及び/又は口内走査の手段によって提供される。治療過程において、歯牙構造の部分を表す低減画像が、バイトプレート又は低解像度口内走査を使用して迅速に提供され得る。その後、完全な歯牙構造の三次元(3D)画像が、初期画像の要素と低減画像の対応要素との位置合わせで、レンダリング又は「再構築」される。低減画像の歯牙構造の再構築により、治療専門家は、診断及び治療計画用の、患者の完全な歯牙構造の、正確でかつ操作可能な三次元画像が準備できる。他の態様は、上記データを使用して、実際の歯の位置と目標の歯の位置を比較して、治療の進行を評価し、歯科矯正装具の仕様の改善を提示する方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、歯科矯正治療の分野に属する。より具体的には、本発明は、歯科矯正治療のモニタリング及び計画の方法を目的とする。
【背景技術】
【0002】
歯科矯正学は、口内の歯の位置の監視、誘導、及び矯正に関する歯科学の領域及び専門分野である。これは、歯を、互いに、加えて顔面骨、例えば顎骨に対して適切な位置へと位置付けるための、歯への力を適用する、及び/又は向け直すことによって達成される。
【0003】
1つの一般的な種類の治療では、ブラケットと称される、小さな孔のある装具が患者の歯に取り付けられ、弾性アーチワイヤが各ブラケットの孔の中に配置される。アーチワイヤの端部は、バッカルチューブと称される装具内に提供され、これが患者の臼歯に取り付けられる。口内に配置されたとき、アーチワイヤは撓んでいるが、その後、これが元の形状に回復するにしたがって、歯を適切な位置へと推進する連続的な力を付与する。ブラケット、バッカルチューブ及びアーチワイヤは多くの場合、総じて「ブレース」と呼ばれている。
【0004】
現行の歯科矯正治療は、装具が最初に歯に結合されたときから、治療の終了時にこれらが分離されるときまで、典型的には1〜3年続く。治療の過程全体を通じて、歯の移動が生じ得るが、移動は通常、円滑な連続的な方法では生じない。歯の移動を妨害する、又は更に止める、「障害」が存在する場合がある。例えば、いくつかの歯は、他の歯のための空間をつくるために、経路から外れる必要がある場合がある。更に進行する前に治療されなくてはならない、固定の喪失、又は望ましくない歯の移動のために、遅延がまた生じ得る。更に、各患者の歯牙構造の固有の生態に基づき、いくつかの歯は、他のものより単純に遅く移動することがある。
【0005】
治療の専門家、典型的には歯科矯正医は、患者の治療計画を立てる際に、これらの課題のいくつかを予測することができる。治療の出発点として、治療専門家は、多くの場合、X線及び/又は石膏の研究用モデルの補助を用いて、不正歯列の三次元画像を提供する。治療専門家は次に、歯の望ましい最終的な位置に対応する心像を描き、その状態に至るまでの治療工程を予測する。治療計画はしたがって、患者を不正咬合の状態から最終的な状態まで導く、中間的及び最終的な目標の順序を特定する、「ロードマップ」として機能する。治療計画はまた、治療専門家の経験及び専門知識に基づき、各中間的及び最終的目標を達成するための、予想される時間軸を含むこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、治療専門家の努力及び最良の意図にも拘わらず、実際の治療が、治療計画に正確に沿って進行することは稀である。計画外の調整が多くの場合必要となり、例えば、治療専門家は適切な治療結果を達成するために、アーチワイヤに追加的な屈曲を加えることがあるか、又は1つ以上の歯において装具を再配置することがある。これらの調整は、治療の進行に関する連続的な評価の結果であり、これらの評価は、ひいては、患者の歯の定期検査の間に治療専門家によって観察されるものに基づく。このプロセスは主観的であると共に、本質的に不正確である。口内環境は、人間の視覚、及び患者の口の身体的構造における限界のために、人間が自力で患者の歯牙構造の視覚的三次元画像を生成することを、不可能でないまでも、困難にする。更に、歯の歯根は容易に見ることができず、歯列の隠れた側面、例えば歯根を、中間段階の治療計画に組み込むことを困難にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の従来的な歯科矯正治療モニタリングの限界のために、治療中の、歯の正確な相対位置を提供するプロセスは、多くの場合、時間がかかり、非効率的である。本発明は、デジタル情報を使用して、歯科矯正治療の過程の間における、患者の歯の位置を便利かつ効率的にモニタリング及び評価するための方法を提供する。代表的な実施形態では、患者の歯牙構造を表す最初のデジタルデータのセットは、X線写真及び/又は口内走査によって提供される。治療の過程の間において、歯牙構造の部分を表す低減画像が、バイトプレート印象材、又は超高速低解像度口内スキャナーを使用して便利に提供され得る。完全な歯牙構造の三次元(3D)画像がその後、初期画像の要素と低減画像の対応する要素とを整合又は位置合わせさせることによって得られる、又は「再構築」される。両方の画像からの要素を使用して歯牙構造をデジタル処理で再構築することにより、治療専門家は、診断及び治療計画の目的のための、患者の完全な歯牙構造の、正確な、最新の、操作可能な三次元画像を提供することができる。
【0008】
本発明は、治療中に歯の位置及び方向の完全な三次元画像を得、治療の進行を評価し、歯科矯正装具への調整を算出し、治療専門家及び患者の双方に特定の利点をもたらす方法を提供する。まず、治療の開始時に既に得られている歯のデータの完全なセットを利用することによって、全体の歯牙構造の最新の位置を再構築するために、歯のデータの僅かな部分のみが必要とされる。完全な歯科印象の取得、又は高解像度口内走査は、時間がかかり、患者にとって不快である一方で、咬合記録は、数秒でとり、オフラインで走査することができ、患者の不快感は最小限である。更なる利点として、歯牙構造の、通常隠れている特徴部、例えば、歯根を、追加的な放射線写真の実行を必要とせずに、最新の三次元画像に一体化することができる。これは、一時固定装置(TAD)が含まれる場合、これらの画像技術が、治療専門家がTADの歯根に対する位置を視覚化することを助け得るために、特に有用であり得る。最後に、歯根を含む歯の画像の完全な詳細画像を提供することにより、本方法は、治療する課題の診断、及び歯科矯正装具、例えばアーチワイヤ又は他の装具への中間軌道修正の提案において有用であり得る。
【0009】
更なる詳細では、本発明の態様は、第1の歯の構成を表す第1デジタル画像を提供する工程と、第2の歯の構成を表す第2デジタル画像を提供する工程であって、第2デジタル画像は第1デジタル画像と比較した際に低減画像であり、第2の歯の構成内の少なくとも1つの歯が、第1の歯の構成内に対応する歯とは異なる位置にある、工程と、第1デジタル画像の少なくとも1つの要素を、第2デジタル画像の少なくとも1つの対応する要素と位置合わせすることによって、第2の歯の構成を表す第3デジタル画像を得る工程であって、第3デジタル画像は、第2デジタル画像と比較した際に補足画像である、工程と、を含む、患者の歯の構成の画像を得る方法を目的とする。
【0010】
別の態様は、第1の歯の構成を表す第1デジタル画像を提供する工程と、目標の歯の構成を表す目標デジタル画像を得る工程と、第2の歯の構成を表す第2デジタル画像を提供する工程であって、第2デジタル画像は第1デジタル画像と比較した際に低減画像であり、第2の歯の構成内の少なくとも1つの歯が、第1の歯の構成内に対応する歯とは異なる位置にある、工程と、第1デジタル画像の少なくとも1つの要素を、第2デジタル画像の少なくとも1つの対応する要素と位置合わせすることによって、第2の歯の構成を表す第3デジタル画像を得る工程であって、第3デジタル画像は、第2デジタル画像と比較した際に補足画像である、工程と、を含む、患者の歯の構成を比較する方法を目的とする。
【0011】
別の態様は、歯科矯正装具の提示された仕様を提供する工程と、歯科矯正装具と関連する、第1の歯の構成を表す第1デジタル画像を提供する工程と、第1の歯の構成内の歯を、望ましい位置に仮想的に移動することによって、目標の歯の構成を表す目標デジタル画像を得る工程と、第2の歯の構成を表す第2デジタル画像を提供する方法であって、第2デジタル画像は、第1デジタル画像と比較した際に低減画像であり、第2の歯の構成内の少なくとも1つの歯が、第1の歯の構成内の対応する歯と異なる位置にある、工程と、目標デジタル画像の少なくとも1つの要素を、第2デジタル画像の少なくとも1つの対応する要素と位置合わせして変換マトリックスを得る工程と、歯科矯正装具の提示される仕様を、部分的に変換マトリックスに基づいて修正する工程と、を含む、歯科矯正装具を指定する方法を目的とする。
【0012】
更に別の態様は、第1の歯の構成を表す第1デジタル画像を提供する工程と、第2の歯の構成を表す第2デジタル画像を提供する工程であって、第2デジタル画像は第1デジタル画像と比較した際に低減画像であり、第2の歯の構成内の少なくとも1つの歯が、第1の歯の構成内に対応する歯とは異なる位置にある、工程と、第1デジタル画像の少なくとも1つの要素を、第2デジタル画像の少なくとも1つの対応する要素と位置合わせすることによって、第2の歯の構成を表す第3デジタル画像を得る工程であって、第3デジタル画像は、第2デジタル画像と比較した際に補足画像である、工程と、を含む、患者の歯の構成の画像を得る方法を実行するソフトウェアプログラムを目的とする。
【0013】
また更に別の態様は、コンピュータデバイス、及びコンピュータデバイスで実行されるソフトウェアプログラムを含むシステムを目的とし、ソフトウェアプログラムは、第1の歯の構成を表す第1デジタル画像を生成し、第2の歯の構成を現す第2デジタル画像を生成するレンダリングエンジンであって、第2デジタル画像は、第1デジタル画像と比較した際に低減画像であり、第2の歯の構成内の少なくとも1つの歯が、第1の歯の構成内に対応する歯とは異なる位置にある、レンダリングエンジンと、第1デジタル画像の少なくとも1つの要素を第2デジタル画像の少なくとも1つの対応する要素と位置合わせして第2の歯の構成を表す第3デジタル画像を得る位置合わせモジュールであって、第3デジタル画像は第2デジタル画像と比較した際に補足画像である、位置合わせモジュールと、を含む。
【0014】
本明細書において開示される更なる実施形態は、光走査、接触プロービング、能動波面サンプリング、X線写真、磁気共鳴影像法、超音波画像診断、及びコンピュータ断層撮影を使用して第1デジタル画像を提供する工程と、咬合印象の走査、低解像度走査の実行、又は部分口内走査の実行によって第2デジタル画像を提供する工程とを含む。他の実施形態は、歯、歯に結合される装具、及び非結合装具、例えば一時固定装置を含む要素を位置合わせする工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】歯科矯正治療のモニタリングにおける、一連の工程のいくつかを記載するブロック図。
【図2】歯科矯正治療の評価における、一連の工程のいくつかを記載するブロック図。
【図3】歯科矯正治療の仕様の修正における、一連の工程のいくつかを記載するブロック図。
【図4】図7の咬合記録の表面によって表される、患者の歯列の印象。
【図5】咬合記録を使用した、歯列内部の歯の要素を位置合わせするプロセスを示すワークフロー。
【図6】低解像度口内走査を使用した、歯列内部の歯の要素を位置合わせするプロセスを示すワークフロー。
【図7】上歯列弓の歯の咬合表面を表す、仮想バイトプレートのスクリーンショット。
【図8】図7の仮想バイトプレートを使用した、位置合わせプロセスを実証するスクリーンショット。
【0016】
定義
本明細書で使用する用語を以下に定義する。
【0017】
「近心側(mesial)」とは、患者の湾曲した歯列弓の中心に向かう方向を意味する。
【0018】
「遠心側(distal)」とは、患者の湾曲した歯列弓の中心から遠ざかる方向を意味する。
【0019】
「咬合側(occlusal)」は、患者の歯の外端部に向かう方向を意味する。
【0020】
「歯肉側(gingival)」は、患者の歯茎又は歯肉に向かう方向を意味する。
【0021】
「顔側(facial)」とは、患者の唇又は頬に向かう方向を意味する。
【0022】
「舌側(lingual)」とは、患者の舌に向かう方向を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、歯科矯正治療モニタリング及び他の関連する用途において役立つ新しい画像を提供するために、治療中の異なる時間において提供されるデジタル画像の位置合わせを、いくつかの実施形態において、幅広く目的とする。より具体的には、本発明の一態様は、第1デジタル画像からの要素と、第2の低減デジタル画像の対応する要素を位置合わせして、これらの新しい画像を得ることを目的とする。本発明の3つの実施形態、治療モニタリングワークフロー、治療評価ワークフロー、及び装具修正ワークフローがそれぞれ、図1〜3に示されるフローチャートに詳述される。これらのワークフローはそれぞれ、次にいくつかの基本工程へと再分割することができ、これは、初期画像収集、データ処理、治療及び低減画像収集、位置合わせ、並びに適用を含む。以下の説明では、上記の各工程が今度は考察されるが、本発明は、例示される全てよりも少ない工程、例示されるよりも多い工程、及び/又は示されるものとは異なる順序で表され得ることに留意する。
【0024】
初期画像収集
本明細書で使用するとき、「歯列」とは、次の、歯の要素(歯冠及び歯根など)、歯肉、骨、結合された装具、埋め込まれた装具、及び他の関連する解剖学的構造(治療中の特定の時間に、三次元(3D)空間に位置付けられ、患者と関連する)の1つ以上の集合又は部分集合として定義される。用語「デジタル画像」は、観察可能な3D画像を表す、画定する、若しくはレンダリングするデジタルデータ、又は画像自体を含み得る。以下の実施例では、用語「デジタル画像」及び「デジタルデータ」は、互換的に使用される。デジタル画像は、バックオフィスサーバー、又はワークステーション、例えば、デジタル画像を操作することのできるプロセッサ、ユーザーインターフェース、及びユーザーがデジタル画像を見ることを可能にするディスプレイを有する汎用コンピュータデバイスを使用して、保存、処理、及び/又は伝達することができる。コンピュータデバイスは更に、デジタル画像の多数のセットを保存することができ、コンピュータデバイスで実行されるソフトウェアに完全にアクセス可能な、メモリを含む。
【0025】
治療モニタリング、治療評価、及び装具修正ワークフローはそれぞれ、患者の歯牙構造を表すデジタル画像の収集から始まる。図1〜3のブロック100として指定される、この第1工程では、患者の歯列の第1デジタル画像が提供されて、ローカル又はリモートコンピュータデバイスに保存される。デジタル画像は、患者の歯牙構造全体、上歯列弓若しくは下歯列弓のみ、又は一方若しくは両方の歯列弓の一部のみを表し得る。患者の歯牙構造の一部のみを表すデジタル画像が、例えば、治療モニタリングが歯の全体ではなく一部を必要とする場合において、望ましいことがある。任意により、歯科矯正治療の開始時に、例えば、歯列矯正装具を歯へと結合又は配置する直前又は直後に、第1デジタル画像が提供される。いくつかの実施形態では、第1デジタル画像は、患者の歯だけではなくまた、ブラケット、又はこれに関連する他の歯科矯正装具の三次元形状を示す。歯科矯正装具の幾何学的特徴は、以下に記載されるように、画像を互いに位置合わせするための目印を提供することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1デジタル画像(ブロック100)は、手持ち式口内スキャナー、例えば、Brontes Technologies,Inc.(Lexington,MA)によって開発され、PCT国際公開特許WO 2007/084727号(Boerjes,et al.)に記載される、能動波面サンプリングを使用する口内スキャナーを使用して提供され得る。また、他の口内スキャナー又は口内接触プローブを使用することもできる。別の選択肢として、第1デジタル画像(ブロック100)は、患者の歯の凹型の歯科印象を走査することによって提供され得る。更に別の選択肢として、第1デジタル画像(ブロック100)は、患者の歯の凸型の物理的モデルを画像化することにより、又は患者の歯のモデル上で接触プローブを使用することにより提供され得る。走査に使用されるモデルは、例えば、アルギネート又はポリビニルシロキサン(PVS)などの好適な歯科印象材から、患者の歯列の印象をキャスティングし、キャスティング材料(例えば、歯科矯正石膏又はエポキシ樹脂)を歯科印象材に注ぎ、キャスティング材料を硬化させることによって作製され得る。モデルを走査するために、X線写真、レーザー走査、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、及び超音波画像診断を含む、任意の好適な操作技術が使用され得る。他の可能な走査方法が、米国特許公開第2007/0031791号(Cinader et al.)に記載される。
【0027】
歯の露出面を走査してデジタル画像を提供することに加え、歯列の隠れた特徴部、例えば、患者の歯根、及び患者の顎骨を画像化することが可能である。いくつかの実施形態では、第1デジタル画像(ブロック100)は、これらの特徴部のいくつかの3D画像を提供し、その後これらを共に「つなぎ合わせる」ことによって形成される。これらの異なる画像は、同じ画像化技術を使用して提供される必要はない。例えば、CTスキャンで提供される歯根のデジタル画像が、口内可視光線スキャナーで提供される歯冠のデジタル画像と一体化されてもよい。二次元歯科画像の三次元歯科画像でのスケーリング及び位置合わせは、米国特許第6,845,175号(Kopelman,et al.)、及び米国特許公開第2004/0029068号(Badura et al.)に記載される。特許となった米国特許第7,027,642号(Imgrund et al.)、及び同第7,234,937号(Sachdeva,et al.)は、様々な三次元ソースから提供されるデジタル画像を一体化する技術の使用を記載している。したがって、用語「画像化」は、これが本明細書において使用される際、視覚的に明らかな構造の、通常の写真画像化に限定されず、視界から隠れた歯牙構造の画像化をも含む。
【0028】
歯根の画像データと歯冠の画像データを一体化することによって、治療中に移動する歯冠と歯根との間の関係をモニタリング及び/シミュレートすることが可能である。歯根及び顎を含む情報はまた、治療専門化が、歯及び周辺の骨構造のより包括的な分析を提供することを可能にする。例えば、患者の顎のX線写真は、剛直した(例えば、顎骨に融合した)歯の特定を補助することができ、一方でMRIは、患者の歯肉組織の密度に関する情報を提供することができる。更に、患者の歯と、他の頭蓋特徴部との間の関係に関する情報は、各治療工程において、頭部の残りの部分に対する歯の正確な位置合わせを可能にする。埋め込まれた一時固定装置(TADs)、又は歯科インプラントの位置に関する同様の情報が収集され得る。走査、又は走査の組み合わせを実行することにより、これらの埋め込まれた装置は、歯根に隣接する画像と共に、顎骨の三次元画像へと画像化及びマッピングすることができる。上記の各走査技術は、歯科矯正医院、又は別の方法として院外で実行されてもよい。
【0029】
データ処理
図1〜3のブロック102は、ブロック100から収集された未加工デジタルデータの追加的な処理を表す。例えば、未加工データは、明らかなエラーを表すか、又は不必要であるいずれかのデータポイントを除去することによって任意により、「浄化(cleansed)」されてもよい。例えば、隣り合うデータポイント同士に通常予想される幾何学的関係から著しく外れたデータポイントを含む、歯表面を表すデータファイルを、データ処理ソフトウェアで修正することによって、誤ったデータポイントを除去することができる。更に、欠けている歯のデータポイントをデータ処理ソフトウェアで追加又は推定することによって、データポイントによって画定される実際的な滑らかに湾曲した歯又は顎骨の形状を形成することもできる。いくつかの実施形態では、デジタルデータは、Geomagic,Inc.(Research Triangle Park,NC)などの提供元からのモデル化ソフトウェアによって「表面化」されるか、又はデジタルポイントクラウドから三次元表面へと変換されてもよい。行われる走査の種類によって、これらの表面は、裸眼では見えない表面、例えば、歯根及び埋め込まれたTADsの尾部を表す表面を含んでもよい。隠れた構造を表す表面は、顎骨を表す表面内でネスト化されてもよい。
【0030】
またブロック102で表されるように、第1デジタル画像(ブロック100)は次に、別個の要素へと仮想的に分離され、それによって各歯が、別個のオブジェクトとして、別々に動かされ得る。任意により歯の要素はまた、周辺の歯肉組織、及び骨から分離されて、歯冠及び歯根の浮動三次元画像のみを残す。これは、ローカル又はリモートコンピュータデバイスで実行され、自動的に、又は操作者の干渉により実行される、市販のソフトウェア、例えば、Geomagic Studio、及び/又はGeomagic Dental(Geomagic Inc.,Research Triangle Park,NC)を使用して実行され得る。この手順は、歯ではない構造においても、同様に実行され得る。例えば、埋め込まれた装置、例えばTADsは、周辺の歯周靭帯及び顎骨から仮想的に分離され得る。歯の、個別の歯のオブジェクトへの分離を記載する別の方法は、特許となった米国特許第6,632,089号(Rubbert et al.)、同第6,371,761号(Cheang et al.)、及び同第7,245,750号(Cermak et al.)に記載される。
【0031】
治療評価及び装具修正ワークフローにおいては、図2及び図3のブロック104によって示されるように、望ましい位置における歯の目標デジタル画像が追加的に提供される。好ましくは、ブロック104の目標デジタル画像は、第1歯列における歯を、望ましい位置に、仮想的に移動することによって得られ、ブロック100の第1デジタル画像と同じ水準の詳細(例えば、同じ範囲及び点密度)を提供する。本明細書において「望ましい位置」は、治療の終了時の最終的な歯の位置、又は別の方法として、中間的な治療目標に達した際の歯の位置を表す。いくつかの実施形態では、各望ましい歯の位置は今度は、目標デジタル画像内の分離した、別個の可動要素によって表される(ブロック104)。
【0032】
望ましい位置の、歯のデジタル画像は、様々な方法で提供され得る。一実施例では、治療専門家はコンピュータデバイスのユーザーインターフェースと相互作用して、三次元(「3D」)仮想モデルを見て、患者の歯の望ましい最終的な位置を手動で画定してもよい。ブロック100の第1デジタル画像が歯に結合される装具を既に含む場合、ブロック104の望ましい歯の位置は、仮想アーチワイヤと装具を接続し、アーチワイヤが時間と共にその通常の弛緩形状に戻る、予測される移動に基づいて、最終的な歯の位置を決定することによって自動的に決定され得る。別の実施形態では、望ましい歯の位置を提供すること(ブロック104)は、歯の全体的な集合を一方の顎の上で、対向する顎に対して並進運動させて、顎手術の効果をシミュレートすることを含み得る。
【0033】
ブロック100の第1デジタル画像が装具を含まない場合は、望ましい歯の位置は、仮想的な装具を使用して得ることができる。例えば、ブロック104は、仮想的な装具を画定すること、仮想的に装具を歯の要素に結合すること、及び仮想的なアーチワイヤを使用して歯の要素を望ましい位置に移動することを含み得る。一実施形態では、治療専門家は、ローカルコンピュータデバイスを使用して、仮想的な装具、例えば、ブラケット、及びバッカルチューブを選択し、仮想モデル上に配置する。このプロセス中、治療専門家は、特定の幾何学的属性を具現化する仮想装具を選択し、またモデリング環境内で患者の歯上の装具の位置を選択する。モデリングソフトウェアは、3D環境内で別々の物体として各ブラケット及び各歯を操作し、対応するブラケットの歯に関連する座標系に対して3D空間内で各ブラケットの位置を決定する。モデリングソフトウェアは次に、アーチワイヤと標準的な歯列弓の形状との接続をシミュレートし、装具の選択された位置に基づいて歯の最終位置を計算し、その最終咬合における仮想歯を表示する。
【0034】
治療専門家が歯の最終的な予測される位置に完全に満足しない場合、治療専門家はモデリングソフトウェアを使用して、仮想歯に対して1つ以上の仮想装具を移動させてもよい。モデリングソフトウェアは、次いで、仮想歯上の仮想装具の修正された位置に基づいて、仮想歯の新たな最終位置を計算及び表示する。これらの工程は、治療専門家がモデリングソフトウェアにより表されるような仮想歯の最終位置に満足するまで、所望の回数繰り返すことができる。
【0035】
装具の位置付けの代わりに、治療専門家は、モデリングソフトウェアを使用して、仮想歯を所望の位置に直接移動してもよい。いくつかの実施形態では、モデリングソフトウェアが次に、歯を所望の位置に移動するために、歯の上での装具の位置を計算する。各装具の識別データ(例えば、商品名及び製造業者の品番)、歯の識別データ(例えば、歯の種類及び口腔内での位置)及び患者データ(例えば、氏名、誕生日又は患者識別番号)と共に、装具の望ましい位置を表すデータが、次いで、製造設備に送信され得る。このデータは次に、物理的装具を患者の歯に結合するための、ボンディングトレー、又はジグを調製するために、製造設備によって使用され得る。好適なインダイレクトボンディングトレー、及びインダイレクトボンディングトレーを作製するための方法は、例えば、特許となった米国特許第7,020,963号(Cleary at al.)、及び同第7,188,421号(Cleary at al.)、米国特許公開第2005/0074717号(Cleary et al.)、並びに同時係属米国特許公開第2006/0223031号(Cinader et al.)、及び同第2006/0223021号(Cinader et al.)に記載される。
【0036】
更に別の方法として、治療専門家の医院での、コンピュータデバイスは、患者の既存の不正構造を分析するため、及び患者の歯における装具の望ましい最終的な位置の決定を補助するために好適なサブプログラムを含み得る。ソフトウェアはまた、手で特定の不正咬合を治療するために適切な装具を示唆又は選択するのを補助するためのサブプログラムを含んでもよい。更に別の選択肢として、ブロック104における工程は、治療専門家の医院から離れた場所にいる技術者によって実施されてもよい。例えば、製造業者の設備にいる技術者が、当該技術分野における既知の基準に従って又は治療専門家によって予め与えられた一般指針に従って、ソフトウェアを使用して仮想装具を仮想歯科用模型上に配置してもよい。
【0037】
一旦技術者が装具の位置及び得られる歯の最終位置に満足すれば、装具の位置を表すデータに加えて仮想模型を、点検のために治療専門家に転送する。治療専門家は、次いで、技術者の装具配置位置を承認するか又は必要に応じて装具を再配置することができる。治療専門家は次に、上記のような、装具、歯、及び患者のデータと共に、仮想モデルを、製造業者に転送して戻す。上記のように、歯の望ましい位置を、装具の、その最終咬合における選択された位置から得ることができる(104)。上記の方法のいくつかが、現在係属中の米国特許公開第2008/0233531号(Raby et al.)に更に詳細に開示されている。
【0038】
治療及び低減画像収集
次に、そして図1〜3のブロック106に示されるように、患者は矯正治療を続ける。ブラケット及びバンドが患者の歯に接続される実施形態では、歯科矯正アーチワイヤが結合された装具に接続されて、歯科矯正治療が開始されることがある。しかしながら、歯科矯正治療の別の形態、例えば、アライナトレー(aligner tray)の、又は機能的装具の設置などがまた使用されて、歯を移動するための力を付与してもよい。
【0039】
図3の装具修正ワークフローでは、ブロック107に示されるように、歯科矯正装具の提示される仕様が追加的に提供される。好ましくは、この仕様は、ブロック106の歯科矯正治療の過程の間において使用される装具を特徴付ける。いくつかの実施形態では、この仕様は、歯科矯正装具の物理的寸法又は他の幾何学的態様を画定する一連の数値を含む。例えば、提示される仕様(ブロック107)は、ブロック106における治療を開始するために、患者の中に配置されたカスタマイズされた歯科矯正アーチワイヤのための、一連の、連続的に並ぶ障害物(in-and-out)の値、トルク値、及び角部分の値を含むことができる。使用される歯科矯正治療の特徴により、提示される仕様(ブロック107)は、任意により他の装具、例えば、アライナトレー、カスタマイズされた歯科矯正ブラケット、又は既製の歯科矯正ブラケットなどを対象としてもよい。
【0040】
図1〜3のブロック108では、第2歯列を表す第2デジタル画像が次に提供されている。好ましくは、この工程は、患者の歯が第2の構成となり、第2の歯の構成内の少なくとも1つの歯が、第1の構成内に対応する歯と異なる位置にあるように、好適な治療期間が経過した後に行われる。使用されるとき、「異なる位置」とは、第2の歯の構成内の歯が、第1の歯の構成内に対応する歯に対し、三次元空間において回転及び/又は並進移動していることを示す(即ち、用語「位置」は、x、y、z軸空間における角度方向及び位置の両方に関する)。
【0041】
第2デジタル画像は、2D若しくは3D用X線、MRI、又はレーザー光線走査技術を使用して患者を再走査し、デジタルデータを上記のように加工することによって提供され得る。別の方法として、未加工データが、第2歯列を表す、凸型、又は凹型の物理的歯科モデルを走査することによって提供され得る。
【0042】
好ましくは、ブロック108に示されるように、第2の歯の構成を表すデジタル画像は、ブロック100のデジタル画像と比較して、低減した画像である。本明細書で使用するとき、所与のオブジェクトの2つの画像を比較した際に、一方の画像が、他方の画像よりも、少ないデータ、又は少ない詳細を含むとき、これは「低減画像」と称される。逆に、他方の画像は、これが、「低減画像」に存在しない、オブジェクトに関する追加的データ又は詳細を含むことに基づいて、「補足画像」と称される。低減画像の使用は、これらの画像を保存するためにより少ないメモリを必要とし、これらを加工及び操作するためにより少ない計算能力を必要とするために、有利であり得る。低減画像を得るために、更により著しく少ない時間が典型的には必要とされ、歯科矯正医院又は走査設備において、顕著な時間の節約が生じる。より詳細には、低減画像は、図4〜6、及び以下の記載に示されるように、有利に提供され得る。
【0043】
図4の工程220は、バイトプレート200を使用して、最新の歯の咬合表面が提供される、1つの代表的な実施形態を示す。バイトプレート200は、顎がバイトプレート200を噛み締めた際に、下顎の最新の歯の構成内244の歯のいくつか、又は全ての形状、位置、及び向きを記録する、可鍛性材料の単純なブロックである。好ましくは、及び示されるように、バイトプレート200は、上顎及び下顎の歯科印象を同時に獲得し、これは、有利なことに、1つの顎の中の歯の位置と、両顎の間の歯の位置との両方に関する。バイトプレート200に使用され得る可鍛性材料としては、ワックス、アルギネート、ポリビニルシロキサン、アクリル、プラスチック、石膏、及び歯から係合離脱した際に歪まない、他の任意の好適な歯科印象材が挙げられる。バイトプレート200は、ほぼ矩形の形状を有するものとして本明細書において示されるが、材料を節約するために、またほぼ「U」字型の形状を有してもよい。歯の咬合表面を横断して延びる、可鍛性材料の、他の任意の適度に平坦なスラブもまた使用され得る。歯科印象材が取られた後、歯科印象202がバイトプレート200に形成され、最新の歯の構成内244の少なくとも一部の三次元表示が提供される。必要であれば、最新の歯の構成内244における、関心の歯の全てを補足するために、2つ以上のバイトプレート200が使用されてもよい。バイトプレート200の使用は、装具が歯に接続されている場合、装具とバイトプレート200が互いに干渉しないために、特に便利である。
【0044】
工程222に示されるように、第2デジタル画像224は、次にバイトプレート200を走査することによって提供される。これは、能動波面サンプリングを備えるスキャナー、レーザー光線走査、接触プローブ、又は既述の他の方法のいずれかを使用して達成され得る。任意により、画像224を生成する前に、未加工データが浄化され、表面化され、及び/又は別の方法で加工される。多数のバイトプレート200が使用された場合、多数の画像224が存在し得る。多数の画像224は後に、ソフトウェアで記録され、互いに再結合され得る。バイトプレート200の走査は、歯科矯正医院で即座に行われてもよく、又は別の方法として、スキャナーが利用可能でない場合、バイトプレート200は、院外で走査されてもよい。この実施形態における第2デジタル画像224は、最新の歯の構成内244の咬合する歯表面のみを表すため、ブロック100で提供される第1デジタル画像と比較して、低減画像である。
【0045】
この実例、並びに図5及び図6で説明される、続く実例における単純化のために、第2画像224は、最新の歯の構成内244の単一の歯を表す、断面図での単一の要素のみを示す。しかしながら、第2デジタル画像224は、2つ以上の対応する歯を表す2つ以上の要素を含み得ることが想到される。いくつかの実施形態では、第2デジタル画像224は、最新の歯の構成内244における少なくとも3つの対応する歯を表す、少なくとも3つの別々に可動の要素を含む。第2デジタル画像224が、治療中に動かないTAD又は歯の特徴部に関連する少なくとも1つの要素と共に、上顎及び下顎の各歯における対応する要素を含む場合、特に有利である。顎骨に対して可動である歯の特徴部(例えば、歯)と、顎骨に対して動かない歯の特徴部(例えば、TAD)の両方を補足することによって、治療中の異なる時間にとられる多数の第2デジタル画像224の要素を、単一の統一された座標系で位置合わせすることが可能となる。これは今度は、治療専門家が、後に記載されるように、歯の構成の画像を重ね、歯の移動を数値化することを可能にする。
【0046】
図5の工程240及び246に表される、第2実施形態では、低減された解像度の口内走査が使用されて、低減画像を提供し得る。ブロック100に提供される第1デジタル画像は、第1解像度で動作する口内スキャナーを使用して得られたものとする。工程240において、第1解像度よりも低い第2解像度で動作する手持ち式スキャナー242が次に、最新の歯の位置244における歯のいくつか、又は全ての表面を走査してもよい。走査データは、任意により浄化及び加工され、次に、ブロック100で提供される第1デジタル画像のものよりも低い点密度を呈する第2デジタル画像248を得るために使用される。低減した点密度のために、第2デジタル画像248における走査された表面は、ブロック100の第1デジタル画像における対応する走査された表面と比較して、詳細を欠いている(例えば、三次元メッシュ表示において、少ない数の三角形を有する)。そのため、第2デジタル画像248は、ブロック100で提供される第1デジタル画像と比較して低減画像である。
【0047】
第2デジタル画像248は、ブロック100の第1デジタル画像によって表される歯列の同一部分を表してもよく、又は、代わりに、同一部分の部分集合若しくは上位集合を提供してもよい。即ち、第2デジタル画像248を生成するために走査される口腔の全体領域は、第1デジタル画像(ブロック100)に含まれるものよりも、大きな、又は小さな領域を含んでもよい。明確さのために、第2デジタル画像248における関心の要素は、走査された画像の他の要素、例えば、歯肉及び周辺組織から、デジタル処理によって「切り取られ」てもよい。既述のように、最新の歯の構成内244は、上顎、下顎、又は両方を同時に含んでもよい。任意により、スキャナー242は、咬合する歯の表面及び舌側の歯の表面を画像化するために、最初に開いた状態で顎を走査し、上顎と下顎の歯の位置を互いに関係付けるために閉じた位置で再度走査してもよい。TADもまた、最新の歯の構成内244に含まれてもよい。TADが含まれる場合、スキャナー242は、任意のTADの先端部を追加的に走査してもよく、それによって第2デジタル画像248はTADの位置を隣接する歯の位置と関連付ける。
【0048】
低い解像度の走査を使用して第2デジタル画像248を提供することには、他の利点が存在する。主な利点は、所定の歯の構成に関して、低解像度の走査は、同じ表面積の完全な、又は高解像度の走査よりも、早く達成され得ることである。この速度における利点は、医師及び従業員のより短い待ち時間、並びに患者のより高い快適性へと繋がる。より速い走査速度は、口内走査が、歯科矯正の予約によって定期的に行われている場合、一日の過程全体を通しての、待ち時間の累積的な削減によって、歯科矯正医院がより多くの患者を診察することが可能になるために、特に有益であり得る。次に、より低い解像度での走査は、メモリ、データ処理のためのシステムリソース、及び最終的には短時間で口内走査を達成するために必要なハードウェアにおける要求を緩和する。低解像度スキャナーはまた、多くの歯科矯正医院にとって、高解像度スキャナーよりも、費用効率が高い傾向にある。例えば、最初の走査は、院外において、高解像度スキャナーを使用して行われ、その後定期的な口内走査が、歯科矯正医院において、より安価な低解像度スキャナーを使用して行われてもよい。
【0049】
第3実施形態において、及び図6の工程260及び工程262に示されるように、部分的な口内走査が使用されて、低減画像を生成するために使用される3Dデータを生成してもよい。バイトプレート200と同様に、部分的な口内走査は、最新の歯の構成内244における歯の一部のみを補足するために、低減画像を提供する。しかしながら、部分的な口内走査は、歯の咬合表面に限定されない。部分走査は追加的に、歯の舌側若しくは顔側、又は、咬合、舌側、及び顔側表面の組み合わせ、又は一部組み合わせを含んでもよい。任意により、及び工程262に示されるように、部分的な口内走査は、部分的な舌側、顔側、及び咬合表面の組み合わせを含む、第2デジタル画像264を生成することができる。
【0050】
好ましくは、工程260における、走査される表面積は、最新の歯の構成内244の全体表面積と比較して小さい。口内走査の施術者は、最新の歯の構成内244における、各関心の各特徴部の重要な目印を補足することのみを必要とするため、走査に費やされる時間は著しく削減される。いくつかの実施形態では、部分的な走査は、位相的に別個である傾向にあり、手持ち式スキャナーによって便利にアクセス可能である、歯の咬合表面の走査のみによって行われる。好ましくは、走査データは、歯列弓の全ての歯の咬合表面を含み、各歯の要素の別個の位置合わせを可能にするために十分である(例えば、三次元空間において、少なくとも3つの点を含む)。既に示されたように、口内走査を実行するための時間を短縮すること、又は口内走査の実行における困難を緩和することは、効率を向上し、治療専門家と患者の双方に歓迎される。
【0051】
従来的な歯科矯正治療の間に、最新の歯の構成内244が、歯に接続された装具を含むことは一般的である。ブロック100の最初のデジタル画像がまたこれらの装具を含むと、工程240、260でのこれらの装具の走査は、位置合わせの目的のために非常に有利であり得る。これは、殆どの結合された装具、例えばブラケットが、非常にはっきりとした三次元構造又は形状を有するために、言える。そのため、これらの構造は、ブロック100の第1デジタル画像の要素を位置合わせするための目印を、治療において後に提供される画像の対応する要素に提供するために非常に適している。非常にはっきりとした形状を有する結合された装具の走査はまた、目印の画定及び位置合わせの自動化を補助することがある。完全に結合されている場合には、更に、歯の表面全てを走査するのではなく、単に装具を走査することが、位置合わせのために十分であり得ることが想到される。各装具の位置及び向きが、最新の歯の構成内244の各歯に対して固定されているために可能である。
【0052】
追加的な選択肢として、最新の歯の構成内244は、患者の顎骨に埋め込まれた、少なくとも1つのTADの、曝露された先端部を含み得る。口内走査240、260にTADを含めることは、次の箇所で考察される、更なる固有の利点を提供する。
【0053】
位置合わせ
それぞれ図1〜2に表される、治療モニタリング及び治療評価ワークフローでは、ブロック110において、位置合わせのプロセスが行われる。位置合わせは、多くの場合、一方のオブジェクトの特徴部が、他方のオブジェクトの対応する特徴部の上に位置する(又は一致する、若しくは整合する)ような、2つのオブジェクトの整合として記載される。物理的な位置合わせは、実際のオブジェクトの間で行うことができるが、本明細書において記載される実施例は、仮想的な位置合わせを記載しており、これはコンピュータデバイス上のデジタル画像の間で行われる。
【0054】
ブロック110によって示されるように、第1デジタル画像(ブロック100)の要素は、第2デジタル画像224、248、264(ブロック108)の対応する要素と位置合わせされる。位置合わせプロセスは、図4〜6それぞれにおいて、単一の歯の要素の、代表的な断面図において更に例示される。図4の工程226は、デジタル画像228を示し、これは、第2デジタル画像224と位置合わせするために、反時計回りに回転される、歯冠、歯根、及び周辺の歯肉の僅かな部分を含む。同様の方法で、図5の工程247は、第2デジタル画像224と位置合わせされる第1デジタル画像228を示し、図6の工程263は、第2デジタル画像264と位置合わせされる第1デジタル画像228を示す。これらの例において示されるように、変形された第1デジタル画像228と、第2デジタル画像224、248、264との間の正確な位置合わせを可能にするために、データの合計量の僅かな部分のみが必要とされる。デジタル画像228に提供される詳細の程度は変化し得る。例えば、デジタル画像228は、周辺の歯肉を含まずに、歯の要素自体のみ、又は別の方法として、歯の要素の一部、例えば歯冠のみを示してもよい。
【0055】
当然、第1デジタル画像228と、第2デジタル画像224、248、264との間の位置合わせは、単一の歯の要素に限定されない。位置合わせされる画像が、多数の歯及び/又は装具を表す、多数の要素を含む場合、対応する要素が対にされて、プロセスは、各対に関して全ての関心の歯の特徴部が、共通の座標系において位置合わせされるまで繰り返される。いくつかの場合においては、デジタル画像を提供するために異なる走査方法が使用されたために、画像228と画像224、248、264との間において寸法の不一致が存在する。寸法の不一致が存在する場合、一方、又は双方の画像を、これらが互いに適切に位置合わせされるように、事前にスケーリングすることが更に必要であり得る。
【0056】
図3の装具修正ワークフローは、治療モニタリング及び治療評価ワークフローと、2つの点において僅かに異なる。第1に、ブロック111において提供される位置合わせ工程は、ブロック104の望ましい位置の歯の画像(即ち、目標デジタル画像)と、第2デジタル画像224、248、264との間で行われる。望ましい歯の位置の画像(ブロック104)は、図4〜6において明確に提供されていないが、ブロック111の位置合わせプロセスは、第1デジタル画像228と、第2デジタル画像224、248、264との間の、先に示されたものと本質的に同じである。既述のように、望ましい位置の歯の画像(ブロック104)は、好ましくは、第2デジタル画像224、248、264と比較して、補足画像である。
【0057】
第2に、治療専門家は、歯が望ましい位置に既に到達している場合、ブロック111の位置合わせ工程を完全に迂回する選択肢を有する。ブロック112に示されるように、第2デジタル画像224、248、264に対応する歯の構成は、まず、ブロック104の目標の歯の構成と比較される。これらの2つのデジタル画像が、所定の許容誤差の範囲内で適合する場合、位置合わせ工程は必要ではなく、ワークフローはブロック114の治療の次の段階に進行する。一方で、デジタル画像が適合しない場合、プロセスは、ブロック111に続き、ここで望ましい位置にある歯の画像の要素は、既述のように、第2デジタル画像224、248、264における要素と位置合わせされる。
【0058】
ブロック110、111の位置合わせ工程は、目印の使用によって促進され得る。目印は共通の点、点の連続、又は容易に特定できる表面であり、デジタル画像を互いに位置合わせするために使用することができる。目印をつけることは、比較されるデジタルデータの量を低減させることによって、位置合わせのプロセスを単純化及び迅速化することができる。2つの三次元オブジェクトを位置合わせするために、空間内の少なくとも3つの共通の点が一般的に使用されるが、点の数及び点の間の間隔を増加させることで正確性を更に改善することができる。目印は、単一の歯の構成の内部で、又は治療の異なる段階で2つ以上の歯の構成の間で、デジタル画像を位置合わせするために使用され得る。いくつかの実施形態では、目印は、手動によって作製される。例えば、望ましい目印を画定するために、歯上の位置を選択するために、入力装置、例えばマウスなどを使用してもよい。
【0059】
また、既述のように、歯科矯正装具自体(又は歯に接続される他の物体)を、目印を画定するために使用してもよい。例えば、装具を結合された歯に口内走査が行われると、ユーザーはディスプレイでデジタル画像228、248、264を見ることができ、近心、遠心、咬合、及び歯肉ブラケット表面を、目印として使用するために選択することができる。この場合、ブラケット縁部、角部、又は表面を目印として使用することは、これらのブラケットの特徴部が多くの場合、鋭く、はっきりとした境界を有するために、有利であり得る。いくつかの実施形態では、このプロセスはまた、第2デジタル画像の目印を特定するために使用される。必要であれば、目印は、前のユーザー入力に基づくか、自動的若しくは半自動的に作製されてもよい。例えば、画像分析方法を使用するコンピュータデバイスが、各歯の咬合歯冠表面上の先端位置を使用して目印を画定してもよい。あるいは、装具が既知の形状を有する場合、コンピュータデバイスを使用して、画像248、264、228における装具を自動的に特定し、その上に目印を画定してもよい。公開された米国特許公開第2007/0141525号(Cinader et al.)に記載されているような、ユーザーが適用するマーカーによって得られるものなど、他の種類の目印が可能である。
【0060】
一度目印が定められると、変形された第1デジタル画像228と、第2デジタル画像224、248、264との間の対応する目印が一致するように、ブロック100の第1デジタル画像を、第2デジタル画像224、248、264に対して仮想的に一致させることによって、位置合わせが行われる。プロセスは、例えば、市販のソフトウェアパッケージGeomagic Qualify(Geomagic Inc.から入手可能)の、「比較する」又は「最適整合」機能を使用して実行することができる。位置合わせは、第1デジタル画像228の選択された表面を、第2デジタル画像224、248、264の表面に整合させることによって行われる。位置合わせは、コンピュータデバイスが、所定の許容誤差の範囲内の最適位置を決定する際に完成される。
【0061】
位置合わせは完全に自動化されているか、又はユーザー検証若しくは他の入力が要求され得るという意味で半自動化されていてもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータデバイスは、変形された第1デジタル画像228の表面データから、少なくとも1つの所定の目印を探し出してもよい(目印はブロック100における第1の歯の構成内の歯の表面又は装具上にあるように画定されている)。別の実施形態では、コンピュータデバイスは、第2デジタル画像224、248、264の表面データから、少なくとも1つの対応する所定の目印を探し出してもよい(目印は、最新の歯の構成内244における歯の表面又は装具上にあるように画定されている)。一度第1デジタル画像228が、第2デジタル画像224、248、264と位置合わせされると、コンピュータ装置は任意により、画像228の座標系と、画像224、248、264の座標系とを位置合わせするための数学的な変換を記録する。この情報は、治療中に生じる歯の移動の程度を表現するために使用され得る。
【0062】
歯牙構造及び結合される装具と共に、工程226、247、263の画像要素の位置合わせはまた、治療中に顎骨に対して移動しない構造体も含み得る。いくつかの実施形態では、これらの構造体は、口腔内構造物、例えば小帯(粘膜及びその下部組織のひだ)、皺(口蓋上に位置する不規則な隆起部)、又は埋め込まれた装置、例えばTADを含む。埋め込まれた装置では、口内走査によって提供される低減画像と、装置の埋め込まれた部分を含む情報を提供する補足画像とを組み合わせることが特に有益であり得る。例えば、TADの三次元先端構造の画像が、定期的に通院する患者を走査することによって提供され、その後TADの先端部及び埋め込まれた尾部の両方を示す、完全な三次元画像と位置合わせされてもよい。TADの先端部及び尾部の両方を示す完全な三次元画像は、事前に既知であり、かつTAD製造業者によって提供され、挿入の前に装置を走査するか、又は挿入後の任意の時点でX線写真、CT走査、MRI、若しくは超音波画像診断を使用して患者を走査してもよい。TADの先端形状は事前に既知であるため、これはまた、コンピュータデバイスに入力され、この装置と関連する目印を自動的に画定するために使用され得る。
【0063】
第1デジタル画像228におけるTADを含めることは、多数の要素を含む画像を位置合わせするために、特に有用である。TADは治療中に動かない(又は最小限で動く)ため、これらの装置は、顎骨に関連する固定された目印を提供することができる。これらの固定された目印は、ひいては、治療中に最初にとられる第1の歯の構成の画像を、治療中に2度目にとられる第2の歯の構成の画像と重ねることを促進する。更に、ブラケット及び他の歯科矯正装具と同様に、TADはこれらが、画像の互いの位置合わせ(ブロック110、111)を促進する、正確に画定された形状を有するという点において有益である。好ましい実施形態では、第1デジタル画像228が、歯の要素、加えてTAD要素の両方を含む。第2デジタル画像248、264が、スキャナーを使用して提供された後、これらの要素は、画像248、264における対応する要素と位置合わせされて、歯根に対する、1つ以上の埋め込まれたTADの位置を示す合成画像が生成される。
【0064】
アプリケーション
治療専門家の特定の必要性によって、位置合わせプロセスで提供される情報は、歯科矯正治療計画の異なる態様を可能にする場合がある。正確かつ客観的である方法で、歯の移動を数値化することにより、これらの方法は、治療専門家が、歯の移動をシミュレートし、治療計画を立て、及び更に装具を構成することを補助することができる。治療モニタリング、治療評価、及び装具修正ワークフローは、それぞれ、特定の用途及び利点を提供し、これらは以下でより詳細に説明される。
【0065】
図1に示される治療モニタリングワークフローでは、変形された型の第1デジタル画像228が使用されて、治療専門家が見ることができる、デジタル画像(ブロック116)が得られる。これは、図4〜6それぞれの最終工程230によって更に詳細に例示されており、変形された第1デジタル画像228に基づく、第3デジタル画像232の生成を示す。第3デジタル画像232が使用されて、今度は、任意により、ユーザーによってディスプレイ上でスケーリングし、回転し、及び操作することができる、見ることのできるデジタル画像を生成する。示されるように、第3デジタル画像232は、X線写真、CTスキャン、MRI、又は超音波画像診断によって提供され得る、歯冠及び歯根部分、並びに周辺の歯肉の部分の断面図を含む。第3デジタル画像232は、したがって、各第2デジタル画像224、248、264と比較して、補足デジタル画像である。
【0066】
必要であれば、このプロセスは、治療全体を通じて一定の間隔で繰り返され、時間の経過に伴うこの歯の移動を図にする、一連の画像を提供してもよい。第3デジタル画像232は、有利なことに第1デジタル画像228によってのみ制限され、第2デジタル画像224、248、264によっては制限されない、完全性及び詳細の水準を有することは、特筆すべきである。第3デジタル画像232は、診断、治療計画、及び治療専門家によって適合するものとみなされる他の用途のために使用され得る。ここでは単一の歯についてのみ示されているが、(存在する場合は)TADを含む最新の歯の構成244における各歯牙構造が、治療中に歯牙構造が適度に均一の形状を維持する限りにおいて、同様に位置合わせ及び再構成されてよい。好ましい実施形態では、第3デジタル画像232は、最新の歯の構成244における各歯の要素を含み、単一の三次元モデルに一体化された、歯の見える歯冠部分、加えて歯根の隠れた表面の両方を表す。第3デジタル画像232は、次に、ディスプレイに表示されることができ、歯の相対的な位置を観察するために、スケーリング及び回転されてもよい。他の診断ツール、例えば、2点間測定、及び断面化がまた実行され得る。
【0067】
図2の治療評価ワークフローでは、治療専門家などのユーザーによる比較のために、実際の歯の位置が、望ましい歯の位置と並置される。例えば、ブロック118は、望ましい歯の位置を表すブロック104の画像と重ねられた、実際の歯の位置を表す第3デジタル画像232を示す。個別の要素を互いに位置合わせするために使用された同じ原理が、合成画像を互いに位置合わせするために同様に使用され得る。既述のように、第3デジタル画像232及びブロック104の画像を位置合わせするために、TADによって画定される目印、皺、又は治療中に動かない他の歯の特徴部が、好ましくは使用される。これらの三次元画像は次に、ディスプレイで、市販のソフトウェア、例えば、Geomagic Qualifyを使用して、重ねられ得る。画像を重ねることの代替として、ユーザーは代わりに、画像を左右に表示するか、歯の位置の画像をトグルスイッチで切り替えて、第1の歯の構成と第2の歯の構成との間の歯の移動を視覚化してもよい。
【0068】
この時点で、プロセスはブロック120へと続き、ここで2つの画像が互いに比較されて、許容可能な適合が存在するかを決定する。この工程は、治療専門家によって実行されてもよく、この場合、人が重ねられた三次元画像を回転及び操作し、ブロック104における望ましい歯の位置が達成されたかを主観的に決定し得る。他の実施形態では、治療専門家の適切な監視の下で、コンピュータデバイスが自動的にこの決定を行ってもよい。例えば、この決定は、望ましい歯の位置の周辺の、一定の絶対的な、又は相対的な許容可能な範囲内における、適合に基づき得る。許容可能な適合が達成されると、プロセスは、ブロック114による治療の次の段階へと続く。この時点において、治療専門家は能動的な治療を終了し、新しい治療目標を規定し、新しい一連の望ましい歯の位置を得ることによってブロック104からプロセスを再開するか、又は、全体的に、全く異なるワークフローを開始することを選択してもよい。許容可能な適合が達成されない場合は、プロセスはブロック121に進み、治療専門家は、歯の構成を、ブロック104の望ましい歯の位置に適合させるために、少なくとも1つの歯科矯正装具の調整を行う選択肢を有する。これらの調整が行われる場合、このときに、歯科矯正治療は、ブロック106に示されるように続行し、プロセスが再開する。
【0069】
歯科矯正治療がTAD又は他の埋め込まれた装具を含む場合、このワークフローは、追加的な利益を提供する。既述のように、埋め込まれた尾部を含む、TADの完全な三次元画像は、ブロック100で、例えば、CTスキャンを使用して、治療の始めに得られ、次に、治療過程の間に口内走査240、260によって提供される同じTADの低減画像と位置合わせされ得る。第3デジタル画像232は、したがって、TADの先端部のみではなく、また、歯根に沿ったTADの埋め込まれた尾部も示す、合成画像である。これは、治療の始めにおける最初の走査以外に、追加的なX線、又はCTスキャンが必要とされず、放射線への曝露が最小限にとどめられるために、患者にとって有益である。この方法はまた、これが時間の経過に伴う、TADに対する歯の移動を効率的に追跡するために、治療専門家にとって非常に有益である。治療全体を通じた定期的な歯の移動の追跡により、歯の移動をシミュレートし、TADと歯との間の衝突を、これらが実際に生じる前に予測することがまた可能である。
【0070】
いくつかの実施形態では、治療評価ワークフローは、目標の歯の構成と、第2の歯の構成との間の、対応する歯の位置における差を測定して、治療の指針を提供することを更に含む。一度実際の歯の位置の画像が得られると(ブロック118)、この治療の指針は、実際の歯の位置の画像と、望ましい歯の位置の画像(ブロック104)との間の並進及び回転の偏位に基づいて決定され得る。より具体的には、治療の指針は、2つの画像の間の対応する歯の要素を対にし、各対における並進及び回転の偏位を測定することによって算出され得る。任意により、治療の指針はまた、各歯について提供されるか、又は全ての歯、若しくは全てよりも少ない歯にわたる平均として提供され得る。あるいは、治療の指針は、最初の位置から望ましい位置までの歯の移動の進行度合いを示すパーセンテージとして表現されてもよい。例として、実際の歯の位置(ブロック118)と望ましい歯の位置(ブロック104)との間の偏位が算出され、最初の歯の位置(ブロック100)と望ましい歯の位置(ブロック104)との間の偏倚で除してもよい。
【0071】
装具修正ワークフローでは、位置合わせプロセス(ブロック111)が同様に使用されて、仕様をブロック107で提示される歯科矯正装具へと修正する。ブロック122は、目標のデジタル画像(ブロック104)の要素を、第2デジタル画像(ブロック108)における対応する要素へと位置合わせするために使用される変換マトリックスを記録することによって修正を得ることを示す。ブロック122のプロセスが、次に、第2デジタル画像における対象の各要素に対して、典型的には最新の歯の構成244における各個別の歯に対して繰り返される。変換マトリックス、又は一連の変換マトリックスが次に、全体的に、又は部分的に使用されて、ブロック107の提示される仕様への修正が得られる。各変換マトリックスは、望ましい歯の位置と、実際の歯の位置との間の並進及び回転の偏位を完全に表現するため、このデータは、歯科矯正装具の仕様の連続的に並ぶ障害物の値、トルク値、及び角部分の値に対する正確な修正を生じる。
【0072】
いくつかの実施形態では、修正された仕様が使用されて、例えばOrametrix,Inc.(Dallas,TX)によって提供されるものなどの、新しい、要求に応じて曲がる歯科矯正アーチワイヤ(custom bent orthodontic archwire)、又はAlign Technology,Inc.(Santa Clara,CA)によって製造される、ポリマーアライナシェルなどの、新しい取り外し可能な装具を作製する。他の実施形態では、仕様が使用されて、他のカスタマイズされた、固定された又は取り外し可能な装具、例えば、歯科矯正ブラケット、バネ、矯正器具、又は機能的装具を作製する。更に別の実施形態では、仕様は代わりに、治療専門家が既製の装具、例えばブラケットを選択することを補助し得る。使用される装具の種類により、仕様が治療の他の態様を組み込むことがまた可能であり、例えば、トルク仕様が、歯科矯正ブラケットのアーチワイヤスロットのトルク損失を克服するために「過剰修正」の関数を含んでもよい。更に他の実施形態では、仕様が使用されて、歯科矯正装具の構造を修正するのではなく、歯に対する装具の位置を調節する。例えば、歯科矯正装具を修正する機能は、例えば、ボンディングトレー、又はジグなどの装置を構成することによって行われてもよく、これは、装具を、歯牙構造、例えば歯に対して位置付けて、提示される仕様を表現する。
【0073】
プロセスは、次に、ブロック124を続行し、ここで治療専門家は、提示される装具の修正を受容するかどうかを決定する。修正が受容されると、次にブロック126に示される修正が行われる。修正された装具の挿入に続き、ブロック106に示されるように、歯科矯正治療が次に再開する。逆に、治療専門家が装具の修正を受容しないことを決定する場合、歯科矯正治療はやはりブロック106に従って再開するが、ただし、最新の歯科矯正装具に変更は加えられない。
【0074】
これらのワークフローに記載される方法は、例としてのみ提示され、互いに相互排他的ではないことが理解されるべきである。治療モニタリングワークフローの態様は装具修正ワークフローに含まれてもよく、逆もまた同様である。同様に、治療評価ワークフローの態様は装具修正ワークフローに組み込まれてもよく、逆もまた同様である。例えば、装具修正ワークフローは、任意により、患者の最新歯列を示す第3デジタル画像を生じ、表示する工程(ブロック110及び116)を含むように応用され得るが、これらの工程は図3に明確に提供されていない。
【0075】
いずれかの従来の媒体に保存されるソフトウェアプログラムが、上記の方法のいずれかを実行するようにプログラミングされ得る。いくつかの実施形態では、ソフトウェアプログラムは、三次元デジタルデータにアクセスし、これをレンダリングして、上記の方法に記載される三次元画像を生成する、レンダリングエンジンを含む。ソフトウェアプログラムは更に、デジタル画像を互いに自動的に位置合わせする、位置合わせモジュールを含み得る。三次元デジタル画像を生成し、画像を互いに位置合わせすることにより、それぞれ、レンダリングエンジン及び位置合わせモジュールは、上記の治療モニタリング、治療評価、及び装具修正ワークフローのそれぞれを促進する。
【0076】
ソフトウェアプログラムは、DVD、フラッシュメモリ、歯科矯正医院における、バックオフィスサーバー、若しくはワークステーションのハードドライブ、製造設備のサーバー、又はこれらの組み合わせにインストールされてもよい。必要であれば、ソフトウェアは、インターネットによって遠隔地からアクセスしてもよい。更に、ソフトウェアはまた、X線写真、レーザースキャン、CTスキャン、MRI、又は超音波画像診断が行われる、設備でインストールされてもよい。ソフトウェアは、関連する専門性の医院、例えば、歯周医院、関連歯科医院、及び口腔外科医院にあってもよく、それによって治療計画及び治療モニタリングの態様が、多数のユーザー間で共有され得ることがまた想到される。例えば、口腔外科医は、患者の治療の過程の間にソフトウェアを使用し、歯科インプラント又はTADの挿入の前に、歯根の位置を確かめてもよい。実証されるように、咬合印象材220、低解像度走査240、又は部分走査260の使用は、所定の医院が、患者が来院した際に、他の歯科専門医と共有することのできる、包括的な三次元歯科モデルを迅速かつ効率的に生成することができるために、有利である。
【実施例】
【0077】
上記の方法の態様は、以下の実施例によって更に実証される。歯科矯正用の石膏から作製される、上顎及び下顎の物理的な歯科モデルが、現地の歯科矯正医院によって提供された。代表的な目的として、この歯科モデルは、所与の歯の構成内の、患者の歯牙構造をシミュレートするために使用された。第1デジタル画像を調整するために、ポリビニルシロキサン印象材が、3M ESPE(St.Paul,MN)から入手可能なPOSITION PENTAQUICK(登録商標)印象材を使用して最初にとられた。歯科印象材を90秒間硬化させた後、これは歯科モデルから取り除かれて、United Resin Corporation(Royal Oak,MI)からのF82−302エポキシ樹脂からの複製の凸型モデルをキャスティングするために使用された。エポキシ樹脂に不透明度を付与するために、これはMagnaflux(Genview,IL)からの、SPOTCHECK(登録商標)SKD−S2 Developer白色タルク粉末の微細な層でコーティングされた。コーティングされたモデルは次に、Laser Design,Inc.(Bloomington,MN)からの、SURVEYOR(登録商標)OM−3R狭スペクトル可視光線レーザースキャナーを使用して走査された。スキャナーによって提供される未加工のポイントクラウドデータが、次にGeomagic Studioを使用して表面化され、周辺の歯肉と共に、歯の三次元表面を生成した。やはりGeomagic,Inc.によって提供されるGeomagic Dental Moduleが最後に使用されて、歯の表面と歯肉の表面を仮想的に互いから分離して、個別の、可動の歯の要素を生成した。これらの三次元の歯の要素は、位置合わせプロセスで使用される補足画像を表す。
【0078】
低減画像を調整するために、3M ESPE(St.Paul,MN)からの、EXPRESS BITE(登録商標)ポリビニルシロキサンから作製されるバイトプレートが、新しい石膏の歯科モデルの上顎と下顎との間に配置された。次に顎を互いに強く押し付け、バイトプレートの上顎及び下顎の咬合表面の歯科印象をとった。バイトプレートは次に、OM−3R狭スペクトル可視光線レーザースキャナーを使用して走査され、物理的バイトプレートと同一の表面へと上記のように加工されたデジタル画像データを生成した。図7は、下歯列弓の歯の咬合表面を表す、仮想バイトプレートを例示する。バイトプレート画像、及び別個の三次元の歯の画像が次に、Geomagic Qualifyにインポートされた。
【0079】
図8は、位置合わせプロセスを実証するスクリーンショットを示す。仮想バイトプレート画像は、固定参照画像として選択され、ウィンドウパネル300に示される。この実施例では、上左側の第2小臼歯と対応するデジタル画像が、浮動画像として画定され、ウィンドウパネル302に示される。Geomagic Qualifyの3−2−1整合機能を使用して、デジタル歯画像が次に、最適アルゴリズムを使用してバイトプレート印象画像と位置合わせされ、それによって、これらの対応する咬合表面が、互いに正確に重ねられた。2つの画像の最終位置が、ウィンドウパネル304に示された。ここでは示されないが、他の歯が同様の方法で位置合わせされてもよい。この実施例は、バイトプレート印象材のみを使用して、下左側第2小臼歯の歯冠全体を示す画像の位置合わせを実証している。ウィンドウパネル304に示される咬合表面に基づく歯の構成内の残部を再構築するため、このプロセスの連続的な繰り返しが次に行われ得る。
【0080】
上記の発明は、明瞭さ及び理解を目的として図及び実施例によってある程度詳細に述べたものである。しかしながら、様々な代替例、改変例、及び均等物の使用が可能であり、上記の説明は発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。また、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって定義されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の歯の構成の画像を得る方法であって、
第1の歯の構成を表す第1デジタル画像を提供する工程と、
第2の歯の構成を表す第2デジタル画像を提供する工程であって、前記第2デジタル画像は、前記第1デジタル画像と比較した際に低減画像であり、前記第2の歯の構成における少なくとも1つの歯が、前記第1の歯の構成における対応する歯とは異なる位置にある、工程と、
前記第1デジタル画像の少なくとも1つの要素を、前記第2デジタル画像の少なくとも1つの対応する要素と位置合わせすることによって、前記第2の歯の構成を表す第3デジタル画像を得る工程であって、前記第3デジタル画像は、前記第2デジタル画像と比較した際に補足画像である、工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1デジタル画像の前記少なくとも1つの要素が、1つの歯を表す1つの要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1デジタル画像の前記少なくとも1つの要素が、少なくとも3つの対応する歯を表す少なくとも3つの要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1デジタル画像の前記少なくとも1つの要素が、装具を表す要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記装具が結合された装具である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記装具が一時固定装置である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1デジタル画像が、前記第1の歯の構成を第1解像度で口内走査することよって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2デジタル画像が、前記第2の歯の構成を第2解像度で口内走査することによって提供され、前記第2解像度が前記第1解像度よりも低い、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の歯の構成が、前記上歯列弓と下歯列弓の両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2デジタル画像が、部分口内走査を使用して提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
治療の前に凹型の歯科印象を提供する工程を更に含み、前記第1デジタル画像は前記凹型の歯科印象の走査によって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の歯の構成の物理的歯科モデルを提供する工程を更に含み、前記第1デジタル画像が、前記物理的歯科モデルを画像化することによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の歯の構成の少なくとも一部の三次元表示を有するバイトプレートを提供する工程を更に含み、前記第2デジタル画像が、前記バイトプレートを走査することによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1デジタル画像を提供する工程が、前記歯科矯正装具の適用の前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第2デジタル画像が、前記治療の過程の間に提供される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1デジタル画像が、光走査、接触プロービング、能動波面サンプリング、X線写真、磁気共鳴影像法、超音波画像診断、及びコンピュータ断層撮影からなる群から選択される手順を使用して提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の歯の構成の前記画像が、前記歯根の少なくとも一部を含む、三次元画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
患者の歯の構成を比較する方法であって、
第1の歯の構成を表す第1デジタル画像を提供する工程と、
目標の歯の構成を表す目標デジタル画像を得る工程と、
第2の歯の構成を表す第2デジタル画像を提供する工程であって、前記第2デジタル画像は、前記第1デジタル画像と比較した際に低減画像であり、前記第2の歯の構成における少なくとも1つの歯が、前記第1の歯の構成における対応する歯とは異なる位置にある、工程と、
前記第1デジタル画像の少なくとも1つの要素を、前記第2デジタル画像の少なくとも1つの対応する要素と位置合わせすることによって、前記第2の歯の構成を表す第3デジタル画像を得る工程であって、前記第3デジタル画像は、前記第2デジタル画像と比較した際に補足画像である、工程と、を含む、方法。
【請求項19】
前記目標デジタル画像に重ねられる前記第3デジタル画像を表示する工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記目標デジタル画像を得る前記工程が、前記第1の歯の構成内の歯を望ましい位置に仮想的に移動する工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第1デジタル画像の前記少なくとも1つの要素が、1つの歯を表す1つの要素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記第1デジタル画像の前記少なくとも1つの要素が、一時固定装置を表す要素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記目標の歯の構成と、前記第2の歯の構成との間の対応する歯の位置における差を測定して、治療指針を提供する工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
歯科矯正装具を指定する方法であって、
歯科矯正装具の提示された仕様を提供する工程と、
前記歯科矯正装具と関連する第1の歯の構成を表す第1デジタル画像を提供する工程と、
前記第1の歯の構成内の歯を、望ましい位置に仮想的に移動することによって、目標の歯の構成を表す目標デジタル画像を得る工程と、
第2の歯の構成を表す第2デジタル画像を提供する工程であって、前記第2デジタル画像は、前記第1デジタル画像と比較した際に低減画像であり、前記第2の歯の構成における少なくとも1つの歯が、前記第1の歯の構成における対応する歯とは異なる位置にある、工程と、
前記目標デジタル画像の少なくとも1つの要素を、前記第2デジタル画像の少なくとも1つの対応する要素と位置合わせし、変換マトリックスを得る工程と、
前記歯科矯正装具の前記提示される仕様を、部分的に前記変換マトリックスに基づいて修正する工程と、を含む、方法。
【請求項25】
前記歯科矯正装具が、アーチワイヤである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記歯科矯正装具が、取り外し可能な装具である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記歯科矯正装具が、固定装具である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記歯科矯正装具を修正する前記工程が、前記装具を歯牙構造に対して位置付ける装置を構成することによって実行される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
患者の歯の構成の画像を得る方法を実行するソフトウェアプログラムであって、
第1の歯の構成を表す第1デジタル画像を提供する工程と、
第2の歯の構成を表す第2デジタル画像を提供する工程であって、前記第2デジタル画像は、前記第1デジタル画像と比較した際に低減画像であり、前記第2の歯の構成における少なくとも1つの歯が、前記第1の歯の構成における対応する歯とは異なる位置にある、工程と、
前記第1デジタル画像の少なくとも1つの要素を、前記第2デジタル画像の少なくとも1つの対応する要素と位置合わせすることによって、前記第2の歯の構成を表す第3デジタル画像を得る工程であって、前記第3デジタル画像は、前記第2デジタル画像と比較した際に補足画像である、工程と、を含む、方法を実行するソフトウェアプログラム。
【請求項30】
システムであって、
コンピュータデバイス、及び
前記コンピュータデバイスで実行するソフトウェアプログラムを含むシステムであって、前記ソフトウェアプログラムが、
第1の歯の構成を表す第1デジタル画像を生成し、第2の歯の構成を現す第2デジタル画像を生成するレンダリングエンジンであって、前記第2デジタル画像は、前記第1デジタル画像と比較した際に低減画像であり、前記第2の歯の構成における少なくとも1つの歯が、前記第1の歯の構成における対応する歯とは異なる位置にある、レンダリングエンジンと、
前記第1デジタル画像の少なくとも1つの要素を、前記第2デジタル画像の少なくとも1つの対応する要素と位置合わせして前記第2の歯の構成を表す第3デジタル画像を得る位置合わせモジュールであって、前記第3デジタル画像は前記第2デジタル画像と比較した際に補足画像である、位置合わせモジュールと、
を含む、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−507613(P2011−507613A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539704(P2010−539704)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/086985
【国際公開番号】WO2009/085752
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】