説明

低粘度均一分枝化エチレン/α−オレフィンエクステンダーを含むポリマー組成物

(i)全組成物の1〜99重量パーセントの少なくとも1種の熱可塑性コポリマー、たとえば、スチレンブロックコポリマーと、(ii)全組成物の1〜99重量パーセントの少なくとも1種の均一分枝化エチレン/α-オレフィンインターポリマー、たとえば、エチレン/1-オクテンと、を含む、熱可塑性組成物を記載する。ここで、該インターポリマーは、0.899g/cc以下の密度および500cPよりも大きいブルックフィールド粘度(350°F)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物に関する。一態様において、本発明は、少なくとも1種のエクステンダーを含むポリマー組成物に関し、他の態様において、本発明は、エクステンダーがエチレン/α-オレフィンコポリマーであるポリマー組成物に関する。さらに他の態様において、本発明は、エクステンダーが均一分枝化エチレン/α-オレフィンインターポリマー、好ましくは実質的線状エチレン/α-オレフィンインターポリマーであるポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の熱可塑性エラストマー性組成物が周知である。また、これらの組成物としては、熱可塑性ウレタン類、熱可塑性ポリエステル類、ポリプロピレン類、塩素化ポリエチレン類、エチレン/プロピレンゴム類、架橋および非架橋EPDM(エチレン/プロピレン/ジエン)ゴム類、およびスチレンブロックコポリマー類が挙げられる。これらの組成物のいくつかは他の組成物よりも製造費が高いが、組成物の所要の性能を有意に低下させない1種以上の比較的安価な不活性エクステンダーと配合することができれば、多くの用途であらゆる価値が増大される。
【0003】
たとえば、スチレンブロックコポリマー類(スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、およびスチレン-エチレン-ブテン-スチレン(SEBS))は、多くの場合、熱可塑性樹脂およびエンジニアリング熱可塑性プラスチックの耐衝撃性を改良するためにまたはさまざまなタイプの樹脂の相溶性を高めるために、産業で広く使用されている非常に汎用性のある熱可塑性エラストマーである。スチレンブロックコポリマー類は、加硫を必要とせずしかも広範にわたる使用温度で優れた弾性を呈する強靭な可撓性高性能エラストマーであることが認められている。ユニークな分子構造および多用性に基づいて、スチレンブロックコポリマー類は、成形性物品、自動車内装用および外装用部品、ならびに医療用具のような広範にわたる最終用途で使用されている。他の用途における他の熱可塑性ポリマーについても、同様のことが言える。
【0004】
線状分子構造、ジブロック分子構造、トリブロック分子構造、および放射状分子構造を有するスチレンブロックコポリマー類が利用可能である。それぞれのポリマー分子は、硬質のスチレン系ブロックセグメントと、ゴムまたはエラストマーモノマーのブロックセグメントと、よりなる。ゴムセグメントは、飽和もしくは不飽和のモノマー単位、たとえば、エチレン/ブテン、エチレン/プロピレン、ブタジエン、またはイソプレンで構成されうる。硬質スチレンブロックと軟質エラストマーブロックとの比を変化させることにより、性質をさまざまに変化させることができる。エラストマーの範囲内で、化学架橋を必要とすることなく熱硬化性エラストマーの高い強度および破断点伸びを達成することが可能である。これは、ポリマーのスチレンセグメントの偏析(segregation)により形成された材料中の物理架橋に起因するものであり、偏析で生じた硬質ドメインが物理架橋を提供する。
【0005】
これらの材料の欠点の1つは、加工性である。硬質セグメントの偏析は、固体中に物理架橋を提供するが、溶融体中に存続して溶融粘度を増大させるとともに、溶融弾性を増大させて材料の加工を一層困難にする。加工性を改善するために、多くの場合、ポリマー(とくにSEBS)は低分子量のワックスまたは鉱油で希釈される。これらの希釈剤は両方とも、固有の制約を有する。
【0006】
ワックスは、低分子量の高結晶性材料である。これは、溶融粘度を低下させるが、それと同時に、最終固化配合物の剛性および硬性を増大させるので、弾性とくに破断点伸びが大幅に損なわれる可能性がある。一方、鉱油は、液体であり、軟性、可撓性、および伸長性を保持または改善するとともに加工性を改善する。残念ながら、油を添加すると、多くの場合、破断点強度が損なわれるかまたは弾性モジュラスが損なわれる。
【0007】
米国特許第5,093,422号明細書および同第5,260,126号明細書には、スチレンブロックコポリマーに対するプロセス助剤としてのポリエチレンの使用についての記載がある。選択されるポリエチレンは、商品名Petrothene(商標)NA 601としてEquistar Chemical Companyにより製造されている。このポリエチレンは、0.903g/ccの密度および2,000g/10分のメルトインデックス(MI)を有すると記載されている。米国特許第6,184,290号明細書、同第6,184,291号明細書、および同第6,218,470号明細書には、スチレンブロックコポリマー用の実質的不活性エクステンダーが記載されている。このエクステンダーは、0.855〜0.905g/ccの密度および0.1〜100g/10分のMIを有する均一分枝化(好ましくは実質的線状)エチレン/1-オクテンインターポリマーを含む。有効ではあるが、これらのエクステンダーは、とくに低伸長度において、エラストマーブレンドの剛性を増大させる傾向がある。その結果として、フィルムおよび繊維に利用されるブレンドの有用性が損なわれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、業界では、ベースポリマー(スチレンブロックコポリマー、ポリエステル、1種以上の他の熱可塑性ポリマーのいずれの場合にもあてはまる)の粘度を効率的なプロセス範囲に減少させるだけでなく加工された樹脂に所望の範囲の物理的および化学的性質(ソフトタッチ性など)をも付与するエクステンダーおよびプロセス助剤を見つけることに継続的関心が払われている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、得られる組成物が組成物中の熱可塑性ポリマー成分と本質的に同一の弾性および/または硬性を有する熱可塑性組成物になるように、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと少なくとも1種の実質的不活性エクステンダー(extender)とを互いにブレンディングする。好ましい実質的不活性エクステンダーは、0.899g/cc以下の密度および少なくとも500cPのブルックフィールド粘度(350°F)を有する均一分枝化エチレン/α-オレフィンインターポリマーである。
【0010】
本発明を実施する際、任意の熱可塑性ポリマーを使用することが可能であり、代表的なポリマーには、天然樹脂または合成樹脂が包含され、たとえば、限定されるものではないが、スチレンブロックコポリマー類、ゴム類、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン/ビニルアセテート(EVA)コポリマー、エチレン-カルボン酸コポリマー類(EAA)、エチレンアクリレートコポリマー類、ポリブチレン、ポリブタジエン、ナイロン類、ポリカーボネート類、ポリエステル類、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンインターポリマー類、具体的には、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム類、塩素化ポリエチレン、熱可塑性加硫物類(thermoplastic vulcanizates)、エチレンエチルアクリレートポリマー類(EEA)、エチレンスチレンインターポリマー類(ESI)、ポリウレタン類、およびグラフト修飾オレフィンポリマー類、ならびに2種以上のこれらのポリマーの組合せが挙げられる。
【0011】
本発明の一実施形態では、熱可塑性エラストマー性組成物は、(i)全組成物の1〜99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、(ii)全組成物の99〜1重量%の少なくとも1種の均一分枝化エチレン/α-オレフィンインターポリマーと、を含み、インターポリマーは、0.899g/cc未満の密度および少なくとも500cPのブルックフィールド粘度(350°F)を有する。
【0012】
本発明の他の実施形態では、熱可塑性エラストマー性組成物は、(i)全組成物の50〜99重量%の少なくとも1種のスチレンブロックコポリマーと、(ii)全組成物の1〜50重量%の少なくとも1種のエクステンダーと、を含み、エクステンダーは、実質的線状エチレン/α-オレフィンインターポリマーを含む。インターポリマーは、0.899g/cc以下の密度および少なくとも100g/10分のMIを有する。好ましいインターポリマーは、実質的線状エチレン/1-オクテンである。
【0013】
他の実施形態では、他の性質を改善するために、本発明の熱可塑性エラストマー性組成物を他の天然樹脂または合成樹脂と組み合わせることもできる。好適な天然樹脂または合成樹脂には、限定されるものではないが、ゴム、天然ワックス、または合成ワックスが包含され、たとえば、限定されるものではないが、ABS、パラフィン系(parrafinic)ワックスまたは他の天然ワックスもしくは合成ワックスおよび種々のいわゆる「フィッシャー・トロプシュ」ワックス、LLDPE、HDPE、LDPE、EVA、エチレン-カルボン酸コポリマー類、EAA、エチレンアクリレートコポリマー類、ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、PET、熱可塑性エポキシ、ナイロン類、ポリカーボネート類、ポリエステル類、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンインターポリマー類、具体的には、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、塩素化ポリエチレン、熱可塑性加硫物類、EEA、ESI、ポリウレタン類、およびグラフト修飾オレフィンポリマー類、ならびに2種以上のこれらのポリマーの組合せが挙げられる。
【0014】
本発明の他の実施形態では、熱可塑性ポリマーと低密度低メルトフローエラストマーとを含む既存の熱可塑性ポリオレフィン(「TPO」)をさらに改質するために、エクステンダーを使用する。この得られる新規なブレンドは、増大されたコンパウンドメルトフローおよび改良された耐衝撃性の両方を兼ね備え、しかも他の性能特性を保持する。
【0015】
他の実施形態では、本発明は、熱可塑性エラストマー性組成物から、好ましくはフィルム、繊維、または成形品の形態で、製造物品を作製する方法である。
【0016】
本発明の他の実施形態では、亀裂修復およびルーフィングのためのアスファルトの改質、ポリマーの加工性、耐衝撃性および表面改質、シーラントおよび接着剤の配合、油ゲル粘度の改質、ならびにゴムエクステンダー/バインダーのコンパウンディングを行うべく、エクステンダーをコンパウンディング成分または添加剤として使用する。
【0017】
さらに他の実施形態では、本発明は、好ましくはフィルム、繊維、または成形品の形態で、熱可塑性エラストマー性組成物から作製される製造物品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
「ポリマー」とは、同一であるかもしくは異なっているタイプのモノマーの重合により調製される高分子化合物を意味する。「ポリマー」には、ホモポリマー類、コポリマー類、ターポリマー類、インターポリマー類などが包含される。「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つのタイプのモノマーおよびコモノマーの重合により調製されるポリマーを意味する。それには限定されるものではないが、コポリマー類(通常、2種以上の異なるモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーをいう)、ターポリマー類(通常、3種の異なるタイプのモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーをいう)、またはテトラポリマー類(通常、4つの異なるタイプのモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーをいう)が包含される。「モノマー」または「コモノマー」という用語は、ポリマーを生成するために反応器に添加される重合性部分を有する任意の化合物をいう。
【0019】
「熱可塑性ポリマー」または「熱可塑性組成物」などの用語は、実質的に熱押出可能または熱変形可能であるが比較的攻撃的条件が必要となりうるポリマーまたはポリマー組成物を意味する。
【0020】
「エクステンダー(増量剤;extender)」、「不活性エクステンダー」、「実質的不活性エクステンダー」などの用語は、本明細書中では同義的に用いられ、指定の添加量で加工性および低温耐衝撃性を改善する熱可塑性ポリマー、好ましくは熱可塑性エラストマーを意味する。本発明の熱可塑性組成物の調製に使用するのに好適な実質的不活性熱弾性エクステンダーは、均一分枝化エチレンインターポリマー、より好ましくは実質的線状均一分枝化エチレンインターポリマーである。エチレンインターポリマーは、少なくとも1種のC3〜C20α-オレフィンを含む。
【0021】
「超低密度ポリエチレン」(ULDPE)、「極低密度ポリエチレン」(VLDPE)、および「線状極低密度ポリエチレン」(LVLDPE)という用語は、0.915g/cc以下の密度を有する線状低密度ポリエチレンのポリマーサブセットを指定すべくポリエチレン技術分野で同義的に使用されている。次に、「線状低密度ポリエチレン」(LLDPE)という用語は、0.915g/ccを超える密度を有する線状ポリエチレンに適用される。0.899g/cc以下のポリマー密度を有するエチレンインターポリマーだけが、本発明で使用されるエクステンダーを構成する。したがって、LLDPEとして知られる化合物類は、本発明の一部分を構成するとはみなされないが、他の機能強化を行うべくそのような化合物類を利用することも可能である。
【0022】
「不均一(heterogeneous)」および「不均一分枝化(heterogeneously branched)」という用語は、従来の意味で使用され、次の条件を満たす線状エチレンインターポリマーをいう。すなわち、(1)α-オレフィンコモノマーは、所与のポリマー分子内にランダムに分布しておらず、(2)ポリマー分子は、実質的にすべて、同一のエチレン対コモノマー比を有しておらず、かつ(3)インターポリマーは、典型的には、公知の分別方法、たとえば、温度の関数としてポリマーの分別溶出を含む方法などにより測定したときに、測定可能な高密度(結晶性)ポリマー画分を示す。
【0023】
不均一分枝化線状インターポリマーの市販の例としては、ATTANE*ULDPEポリマー(The Dow Chemical Companyの製品および商標)ならびにFLEXOMER(商標)VLDPEポリマー(The Dow Chemical Companyの子会社Union Carbide Corporationの製品および商標)が挙げられる。しかしながら、不均一分枝化エチレンインターポリマーを本発明の熱可塑性組成物の熱可塑性ポリマー成分として使用できるとはいえ、本発明の実質的不活性エクステンダー成分としては使用されない。
【0024】
「均一分枝化(homogeneously branched)」とは、エチレン/α-オレフィンインターポリマーにおいて、(1)α-オレフィンコモノマーが、所与のポリマー分子内にランダムに分布しており、(2)ポリマー分子が、実質的にすべて、同一のエチレン対コモノマー比を有し、かつ(3)インターポリマーが、公知の分別方法、たとえば、温度の関数としてポリマーの分別溶出を含む方法などにより測定したときに、測定可能な高密度(結晶性)ポリマー画分を本質的に欠失していることを意味する。
【0025】
熱可塑性ポリマーと混合して本発明の熱可塑性組成物を調製するのに有用な均一分枝化線状エチレンインターポリマーは、次の条件を満たすエチレンポリマーである。すなわち、このエチレンポリマーは、長鎖分枝度は有していないが、重合してインターポリマーを形成し同一のポリマー鎖内および異なるポリマー鎖間の両方に関して均一に分布するコモノマーに由来する短鎖分枝は有している。すなわち、均一分枝化線状エチレンインターポリマーには、たとえば、米国特許第3,645,992号明細書中にElstonにより記載された一様分枝分布重合法を使用して作製される線状低密度ポリエチレンポリマーまたは線状高密度ポリエチレンポリマーの場合とまったく同様に長鎖分枝度は存在しない。
【0026】
均一分枝化線状エチレンインターポリマーは、多くの長鎖分枝を有することが当業者に周知である高圧遊離基開始ポリエチレンではなく、伝統的な不均一分枝化線状低密度ポリエチレンでもない。
【0027】
均一分枝化線状エチレン/α-オレフィンインターポリマーの調製は、本発明の決定的に重要な態様ではない。均一分枝化線状エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、チーグラー型触媒、たとえば、ジルコニウムおよびバナジウム触媒系などを用いる従来の重合法ならびにメタロセン触媒系、たとえば、ハフニウムをベースにした触媒系などを用いる従来の重合法で調製可能である。Ewenらの米国特許第4,937,299号明細書およびTsutsuiらの米国特許第5,218,071号明細書は、例示的である。
【0028】
均一分枝化線状エチレン/α-オレフィンインターポリマーの市販の例としては、Mitsui Chemical Companyにより供給されるTAFMER(商標)ポリマーおよびExxon Chemical Companyにより供給されるEXACT(商標)ポリマーが挙げられる。
【0029】
本発明で使用される均一分枝化実質的線状エチレンインターポリマーについては、米国特許第5,272,236号明細書および同第5,278,272号明細書、同第6,054,544号明細書および同第6,335,410B1号明細書に記載されている。不活性増量熱可塑性ポリマーに有用である実質的線状エチレンインターポリマーは、コモノマーが所与のインターポリマー分子内にランダムに分布しかつインターポリマー分子が実質的にすべてそのインターポリマー内で同一のエチレン/コモノマー比を有するものである。
【0030】
本発明において使用される実質的線状エチレンインターポリマー(substantially linear ethylene interpolymers)は、均一分枝化エチレンポリマーのユニークなクラスを形成する。それらは、米国特許第3,645,992号明細書中でElstonにより記載された周知のクラスの従来の均一分枝化線状エチレンインターポリマーと実質的に異なり、さらに、それらは、従来の不均一チーグラー触媒重合線状エチレンポリマー類(たとえば、米国特許第4,076,698号明細書中でAndersonらにより開示された方法などを用いて作製されるULDPE、LLDPE、またはHDPE)と同一のクラスではなく、それらは、高圧遊離基開始高分枝化高圧ポリエチレン類、たとえば、LDPE、エチレン-アクリル酸(EAA)コポリマー類、およびEVAコポリマー類と同一のクラスでもない。
【0031】
実質的線状エチレンインターポリマーは、長鎖分枝度を有する均一分枝化エチレンポリマーである。長鎖分枝は、ポリマー主鎖と同一のコモノマー分布を有し、ポリマー主鎖の長さとほぼ同一の長さを有しうる。「実質的線状(substantially linear)」とは、バルクポリマーが平均して長鎖分枝0.01個/全炭素(主鎖炭素および分枝炭素の両方を含む)1000個〜長鎖分枝3個/全炭素1000個で置換されていることを意味する。好ましいポリマーは、長鎖分枝0.01個/全炭素1000個〜長鎖分枝1個/全炭素1000個、より好ましくは長鎖分枝0.05個/全炭素1000個〜長鎖分枝1個/全炭素1000個、とくに長鎖分枝0.3個/全炭素1000個〜長鎖分枝1個/全炭素1000個で置換されている。
【0032】
「主鎖」は、個別の分子をいい、「ポリマー」または「バルクポリマー」は、従来の意味で、反応器中で形成されたままのポリマーをいう。ポリマーが「実質的線状」ポリマーであるために、ポリマーは、少なくとも、バルクポリマー中の平均長鎖分枝度が平均で少なくとも長鎖分枝0.01個/全炭素1000個であるように長鎖分枝度を有する十分な分子を有していなければならない。
【0033】
「バルク」ポリマーとは、重合プロセスから生じたポリマーを意味し、実質的線状ポリマーでは、長鎖分枝度が存在しない分子および長鎖分枝度を有する分子の両方が含まれる。したがって、「バルク」ポリマーには、重合時に形成されたすべての分子が含まれる。実質的線状ポリマーでは、すべての分子が長鎖分枝度を有するとはかぎらず、バルクポリマーの平均長鎖分枝含有率が溶融レオロジー(すなわち、メルトフラクチャー性)に明確に影響を及ぼすのに十分な量の分子が長鎖分枝度を有する。
【0034】
「長鎖分枝度(LCB)」は、当業界で公知の従来法により、たとえば、Randall (Rev. Macromol. Chem. Phys.、C29 (2 & 3)、p. 285-297)の方法などを用いて、13C核磁気共鳴(NMR)分光法により、決定することができる。他の2つの方法は、低角レーザー光散乱検出器と組み合わされたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC-LALLS)および示差粘度計検出器と組み合わされたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC-DV)である。長鎖分枝検出のためのこれらの方法の使用および根底をなす理論については、文献で詳細に報告されている。たとえば、Zimm, G. H.およびStockmayer, W. H.、J. Chem.Phys.、17、1301 (1949)およびRudin, A.、Modern Methods of Polymer Characterization、John Wiley & Sons、New York (1991) pp. 103-112を参照されたい。
【0035】
実質的線状エチレンインターポリマーでは、長鎖分枝は、ポリマー主鎖中へのα-オレフィンの組込みに起因する短鎖分枝よりも長い。本発明で使用される実質的線状エチレンインターポリマー中の長鎖分枝度の存在の経験的効果は、ガス押出レオメトリー(GER)の結果および/またはメルトフローI10/I2の増大により本明細書中で定量化および表現されるレオロジー性の向上として現れる。
【0036】
「均一分枝化実質的線状エチレンポリマー」とは対照的に、「均一分枝化線状エチレンポリマー」は、ポリマーが測定可能または実証可能な長鎖分枝を欠失していることを意味する。すなわち、ポリマーは、平均して長分枝0.01個未満/全炭素1000個で置換されている。
【0037】
エチレンと重合させて均一分枝化エチレンインターポリマーを調製するのに有用である好適な不飽和コモノマーは、エチレン性不飽和モノマーである。そのようなコモノマーは、C3〜C20α-オレフィン、たとえば、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンである。好ましいコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、および1-オクテンが挙げられ、後者がとくに好ましい。少なくとも1種のC3〜C20α-オレフィンに加えてエチレンと重合させることのできる他のモノマーとしては、スチレン、ハロ置換またはアルキル置換スチレン類、テトラフルオロエチレン類、ビニルベンゾシクロブタン類、ブタジエン類、イソプレン類、ペンタジエン類、ヘキサジエン類、オクタジエン類、およびシクロアルケン類、たとえば、シクロペンテン、シクロヘキセン、およびシクロオクテンが挙げられる。典型的には、均一分枝化エチレンインターポリマーは、エチレンを1種のC3〜C20α-オレフィンと共重合させたコポリマーである。最も好ましくは、均一分枝化エチレンインターポリマーは、エチレンと1-オクテンとのコポリマーである。
【0038】
本発明において実質的不活性エクステンダーとして使用されるエチレンインターポリマーの密度は、ASTM D-792に準拠して測定したときに、一般的には0.855〜0.899g/cc、好ましくは0.860〜0.885g/cc、より好ましくは0.865〜0.885g/ccの範囲である。0.899g/ccを超える密度(所要のMI範囲と組み合わされる)では、エチレンインターポリマーは、一般的には非エラストマー性である。
【0039】
本発明を実施する際、実質的不活性エクステンダーとして使用されるエチレンインターポリマーのブルックフィールド粘度は、500cPよりも大きいかまたはそれに等しく、典型的には500〜90,000、好ましくは3,000〜70,000、より好ましくは4,000〜50,000cP(350°F)である。本文書中で以下に例示されるように、粘度は従来の方法で測定される。
【0040】
本発明において実質的不活性エクステンダーとして使用されるエチレンインターポリマーの分子量分布は、示差屈折計および混合ポロシティーの3つのカラムを備えたWaters 150高温クロマトグラフ装置を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される。カラムは、Polymer Laboratoriesにより供給され、一般に103、104、105、および106Åの細孔サイズで充填される。溶剤は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、これから、インターポリマーサンプルの0.3重量パーセントの溶液が注入に供すべく調製される。流量は1.0ミリリットル/分であり、動作温度は140℃であり、注入量は100マイクロリットルである。
【0041】
ポリマー主鎖に対する分子量の決定は、それらの溶出体積と組み合わせて、狭い分子量分布のポリスチレン標準(Polymer Laboratories製)を用いて推定される。等価なポリエチレン分子量は、ポリエチレンおよびポリスチレンに対する適切なマーク・フウィンク(Mark-Houwink)係数(WilliamsおよびWardによりJournal of Polymer Science、Polymer Letters、6巻、p. 621、1968に記載されたように)を用いて以下の式を誘導することにより、決定される。
Mポリエチレン=a*(Mポリスチレンb
この式中、a=0.4316およびb=1.0である。
【0042】
ポリマーの数平均分子量Mnは、分子量に対するそれぞれの分子量範囲内の分子の数のプロットの一次モーメントとして表される。事実上、これは、すべての分子の合計分子量を分子の数で割ったものであり、次式に従って通常の方法で算出される。
Mn = Σ ni * Mi / Σ nI = Σ wi / Σ(wi/Mi
式中、
Ni = 分子量Miを有する分子の数
wi = 分子量Miを有する材料の重量分率
Σni = 分子の合計数
【0043】
重量平均分子量Mwは、次式:Mw = Σ wi * Miに従って通常の方法で算出される。式中、wiおよびMiは、それぞれ、GPCカラムから溶出するi番目の画分の重量分率および分子量である。
【0044】
これらの2つの平均の比、すなわち、分子量分布(MWDまたはMw/Mn)は、分子量分布の幅を定義すべく本明細書中で使用される。
【0045】
本発明において実質的不活性エクステンダーとして使用されるエチレンインターポリマー(すなわち、実質的線状エチレンインターポリマーおよび均一分枝化線状エチレンポリマー)では、Mw/Mnは、1.5〜3.0、好ましくは1.5〜2.5である。
【0046】
シングルサイト重合触媒、たとえば、米国特許第5,026,798号明細書中でCanichによりもしくは米国特許第5,055,438号明細書中でCanichにより記載されたまたは米国特許第5,064,802号明細書中でStevensらにより記載されたモノシクロペンタジエニル遷移金属オレフィン重合触媒を用いて、均一分枝化エチレンインターポリマーを調製することができる。ただし、触媒は、米国特許第5,272,236号明細書および米国特許第5,278,272号明細書に記載されている方法と整合性をもたせて使用されるものとする。そのような重合方法はまた、1992年10月15日出願のPCT/US92/08812号パンフレット中にも記載されている。しかしながら、均一分枝化実質的線状エチレンインターポリマーは、好ましくは、好適な拘束幾何触媒を用いて、とくに、1990年7月3日出願の米国特許出願第545,403号明細書および1991年9月12日出願の同第758,660号明細書ならびに米国特許第5,132,380号明細書に開示されているような拘束幾何触媒を用いて、作製される。
【0047】
好適な共触媒としては、たとえば、高分子またはオリゴマーのアルミノキサン、とくに、たとえば、米国特許第5,041,584号明細書、同第4,544,762号明細書、同第5,015,749号明細書、および/または同第5,041,585号明細書に記載されているように作製されるメチルアルミノキサンまたは修飾メチルアルミノキサン、ならびに不活性相溶性非配位性イオン形成性化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい共触媒は、不活性非配位性ホウ素化合物である。
【0048】
本発明で使用される均一分枝化線状および実質的線状エチレンインターポリマーを製造するための重合条件は、好ましくは、溶液重合法に有用な条件であるが、適切な触媒および重合条件が利用されるのであれば、スラリー重合法および気相重合法もまた、好適な均一分枝化インターポリマーを調製するのに有用である。一般的には、オレフィン重合温度は、大気圧、大気圧未満、または大気圧超の圧力において、0〜200℃の範囲である。
【0049】
スラリー重合法または溶液重合法では、大気圧未満または大気圧超の圧力および40〜250℃の範囲の温度を利用しうる。有用な液相重合反応系については、米国特許第3,324,095号明細書に記載されている。液相反応系は、一般的には、オレフィンモノマーおよび触媒組成物が添加され、かつポリマー生成物を溶解または懸濁させるための液体反応媒質を含有する反応器容器を備える。液体反応媒質は、バルク液体モノマーよりなるかまたは利用される重合条件下で非反応性である不活性液体炭化水素よりなりうる。そのような不活性液体炭化水素は触媒組成物またはプロセスにより得られるポリマーの溶媒として機能する必要はないが、通常、重合に利用されるモノマーの溶媒の役割を果たす。この目的に好適な不活性液体炭化水素類に包含されるのは、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、またはトルエンである。一定した攪拌または振盪を行うことにより、オレフィンモノマーと触媒組成物との反応性接触を保持しなければならない。オレフィンポリマー生成物および未反応オレフィンモノマーを含有する反応媒質は、反応器から連続的に引き抜かれる。オレフィンポリマー生成物は分離され、未反応オレフィンモノマーおよび液体反応媒質は反応器に再循環される。好ましくは、実質的線状エチレンインターポリマーの場合、重合は連続溶液重合法で行われる。
【0050】
気相重合は、1〜1000psi、好ましくは50〜400psi、最も好ましくは100〜300psiの範囲の大気圧超の圧力および30〜130℃、好ましくは65〜110℃の範囲の温度で、一般に利用される。攪拌床または流動床気相反応系は、とくに有用である。一般的には、従来の気相流動床法は、反応条件下かつ触媒組成物の存在下において固体粒子床を懸濁状態に保持するのに十分な速度で1種以上のオレフィンモノマーを含有するストリームを流動床反応器に連続的に通すことにより行われる。米国特許第4,528,790号明細書および同第5,462,999号明細書に開示されているように、未反応モノマーを含有するストリームは、反応系から連続的に引き抜かれ、圧縮され、冷却され、場合により完全にまたは部分的に凝縮され、次に、反応器に再循環される。生成物は反応器から引き抜かれ、補充モノマーは再循環ストリームに添加される。所望により、系の温度制御のために、触媒組成物および反応物に対して不活性である任意のガスをガスストリーム中に存在させてもよい。さらに、米国特許第4,994,534号明細書に開示されているように、カーボンブラック、シリカ、クレー、またはタルクのような流動化助剤を使用してもよい。
【0051】
米国特許第3,914,342号明細書に記載されているように、本発明の均一分枝化エチレンインターポリマーを作製するために、多連反応器重合法を使用することもできる。多連反応器は、直列もしくは並列にまたはそれらの組合せでかつ/または異なる反応器中で異なる触媒を利用して、運転することができる。
【0052】
組成物の熱可塑性ポリマー成分がブロックコポリマーである本発明の実施形態に関して、「ブロックコポリマー」とは、硬質ポリマー単位の少なくとも1つのブロックセグメントとゴムモノマー単位の少なくとも1つのブロックセグメントとを有するポリマーを意味する。しかしながら、この用語は、ランダムポリマーに一般に包含される弾性熱可塑性エチレンインターポリマーを包含するものではない。好ましいブロックコポリマーは、飽和もしくは不飽和のゴムモノマーセグメントと組み合わせてスチレン系ポリマーの硬質セグメントを含有する。熱可塑性ポリマー成分として有用なブロックコポリマーの構造は、本発明において決定的に重要であるわけではなく、線状もしくは放射状、ジブロックもしくはトリブロック、またはそれらの任意の組合せであってよい。好ましくは、主要な構造は、トリブロック構造であり、より好ましくは線状トリブロック構造である。
【0053】
本発明に有用なブロックコポリマーの調製は、本発明の課題ではない。そのようなブロックコポリマーの調製法は、当技術分野で公知である。不飽和ゴムモノマー単位を有する有用なブロックコポリマーを調製するのに好適な触媒としては、リチウム系触媒、とくにアルキルリチウムが挙げられる。米国特許第3,595,942号明細書には、不飽和ゴムモノマー単位を有するブロックコポリマーを、飽和ゴムモノマー単位を有するブロックコポリマーに水素化する好適な方法が記載されている。ポリマーの構造は、その重合方法によって決まる。たとえば、線状ポリマーは、アルキルリチウムもしくはジリチオスチルベンのような開始剤を使用する場合、反応容器に所望のゴムモノマーを逐次導入することにより、または二官能性カップリング剤で2つのセグメントブロックコポリマーを結合することにより、得られる。一方、分枝化構造は、不飽和ゴムモノマー単位を有するブロックコポリマーに対して3以上の官能価を有する好適なカップリング剤を用いて取得可能である。カップリングは、多官能性カップリング剤、たとえば、ジハロアルカン類またはアルケン類およびジビニルベンゼンならびに特定の極性化合物、たとえば、ハロゲン化ケイ素類、シロキサン類、または一価アルコールとカルボン酸とのエステル類を用いて、行いうる。ポリマー中になんらかのカップリング残基が存在したとしても、本発明の組成物の一部分を形成するブロックコポリマーの適切な説明を行うべく無視することもある。
【0054】
不飽和ゴムモノマー単位を有する好適なブロックコポリマーとしては、スチレン-ブタジエン(SB)、スチレン-イソプレン(SI)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、α-メチルスチレン-ブタジエン-α-メチルスチレン、およびα-メチルスチレン-イソプレン-α-メチルスチレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
ブロックコポリマーのスチレン系部分は、好ましくは、スチレンならびにその類似体および同族体、たとえば、α-メチルスチレンおよび環置換型スチレン、とくに環メチル化スチレン、のポリマーまたはインターポリマーである。好ましいスチレン化合物はスチレンおよびα-メチルスチレンであり、スチレンがとくに好ましい。
【0056】
不飽和ゴムモノマー単位を有するブロックコポリマーは、ブタジエンまたはイソプレンのホモポリマーおよびこれらの2種のジエンの一方または両方と副次量のスチレン系モノマーとのコポリマーを含みうる。利用されるモノマーがブタジエンである場合、好ましくは、ブタジエンポリマーブロック中の凝縮ブタジエン単位の35〜55モルパーセントは、1,2配置を有する。したがって、そのようなブロックを水素化した場合、得られる生成物は、エチレンと1-ブテンとの通常のコポリマーブロック(EB)であるかまたはそれに類似する。利用される共役ジエンがイソプレンである場合、得られる水素化生成物は、エチレンとプロピレンとの通常のコポリマーブロック(EP)であるかまたはそれに類似する。飽和ゴムモノマー単位を有する好ましいブロックコポリマーは、スチレン系単位の少なくとも1つのセグメントと、エチレン-ブテンコポリマーまたはエチレン-プロピレンコポリマーの少なくとも1つのセグメントと、を含む。飽和ゴムモノマー単位を有するそのようなブロックコポリマーの好ましい例としては、スチレン/エチレン-ブテンコポリマー、スチレン/エチレン-プロピレンコポリマー、スチレン/エチレン-ブテン/スチレン(SEBS)コポリマー、およびスチレン/エチレン-プロピレン/スチレン(SEPS)コポリマーが挙げられる。
【0057】
不飽和ゴムモノマー単位を有するブロックコポリマーの水素化は、好ましくは、脂肪族二重結合の少なくとも約80パーセントを実質的に完全に水素化すると同時にスチレン性芳香族二重結合の25パーセント以下を水素化するような条件下で、アルキルアルミニウム化合物とニッケルまたはコバルトのカルボキシレートまたはアルコキシドとの反応生成物を含む触媒を用いて行われる。好ましいブロックコポリマーは、脂肪族二重結合の少なくとも99パーセントが水素化されると同時に芳香族二重結合の5パーセント未満が水素化されたものである。
【0058】
スチレン系ブロックの割合は、一般的には、ブロックコポリマーの全重量の8〜65重量パーセントである。好ましくは、ブロックコポリマーは、ブロックコポリマーの全重量を基準にして10〜35重量パーセントのスチレン系ブロックセグメントと90〜65重量パーセントのゴムモノマーブロックセグメントとを含有する。
【0059】
個々のブロックの平均分子量は、特定の限度内でさまざまな値をとりうる。ほとんどの場合、スチレン系ブロックセグメントは、5,000〜125,000、好ましくは7,000〜60,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有するであろう。一方、ゴムモノマーブロックセグメントは、10,000〜300,000、好ましくは30,000〜150,000の範囲の数平均分子量を有するであろう。ブロックコポリマーの全数平均分子量は、典型的には25,000〜250,000、好ましくは35,000〜200,000の範囲である。これらの分子量は、トリチウムカウント法または浸透圧測定により、最も正確に決定される。
【0060】
さらに、本発明で使用するのに好適な種々のブロックコポリマーは、当技術分野で周知の方法のいずれかにより、副次量の官能基、たとえば無水マレイン酸をグラフト導入することにより改質可能である。
【0061】
本発明に有用なブロックコポリマーは、市販品として入手可能であり、たとえば、Shell Chemical CompanyによりKRATON(商標)という名称で供給されており、さらにはDexco PolymersによりVECTOR(商標)という名称で供給されている。
【0062】
本発明を実施する際、他の熱可塑性ポリマーを使用することが可能であり、代表的なポリマーとしては、天然樹脂または合成樹脂、たとえば、スチレンブロックコポリマー類、ゴム類、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン/ビニルアセテート(EVA)コポリマー、エチレン-カルボン酸コポリマー類(EAA)、エチレンアクリレートコポリマー類、ポリブチレン、ポリブタジエン、ナイロン類、ポリカーボネート類、ポリエステル類、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンインターポリマー類、具体的には、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム類、塩素化ポリエチレン、熱可塑性加硫物類、エチレンエチルアクリレートポリマー類(EEA)、エチレンスチレンインターポリマー類(ESI)、ポリウレタン類、およびグラフト修飾オレフィンポリマー類、ならびに2種以上のこれらのポリマーの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
一般的には、本発明の熱可塑性高分子組成物は、(a)全組成物の1〜99重量パーセントの少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、(b)全組成物の99〜1重量パーセントの少なくとも1種の均一分枝化線状または実質的線状エチレンインターポリマーと、を含む。好ましくは、本発明の組成物は、(a)全組成物の50〜95、より好ましくは60〜90、最も好ましくは70〜85重量パーセントの少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、(b)全組成物の5〜50、より好ましくは10〜40、最も好ましくは15〜30重量パーセントの少なくとも1種のエチレンインターポリマーと、を含む。
【0064】
本発明の他の実施形態では、性能強化のために、本発明で使用されるエクステンダーが熱可塑性ポリオレフィン(TPO)のエラストマー性成分に添加される。TPOは、典型的には、2つの成分、すなわち、高モジュラスポリマー、たとえば、ポリプロピレンまたは高密度ポリエチレン(HDPE)、のマトリックスと、エラストマーと、から構成され、その選択は所要の性能属性により異なる。しかしながら、TPOの性能パラメーターの特定の1つを強化すると、多くの場合、それに伴って他の性質が損なわれる。TPO化合物は、多くの場合、コンパウンドメルトフロー、曲げモジュラス、低温耐衝撃性、およびコンパウンドコストの間で相殺的バランスを呈する。このトレードオフは、コンパウンド粘度と耐衝撃性能とのバランスをとる際に顕在化する。低メルトフローかつ低密度のエラストマーを添加すれば耐衝撃性能は高くなるであろうが、コンパウンド粘度が増大して、多くの場合、TPOの流動性を高くするという要求に反する。
【0065】
経済性が常に主要な関心事であるが、より低い粘度を達成すると、多くの場合、射出成形効率が増大し、より小さいトン数の射出成形ユニットが使用され、部品を薄肉化することができるようになるので、全体的にシステムコストが低下することになる。
【0066】
エラストマーがポリプロピレンマトリックス中に分散される所与のTPOモルホロジーでは、より高分子量のエラストマーが、低分子量のエラストマーよりも優れた耐衝撃性能を提供する。高分子量でエラストマーの機能が改良されることと、最適なモルホロジーを達成するために低分子量および低粘度が必要であることとの間のこのバランスは、TPO配合物における根本的なトレードオフである。より低粘度のTPO配合物の必要性が増大するにつれて、このバランスは、ますます重要になってきている。
【0067】
本発明者らは、このたび、従来の低密度低メルトフローエラストマーと組み合わせて超高メルトフロー低密度エクステンダーを添加することにより、増大されたコンパウンドメルトフローとより低いコンパウンド粘度とを兼ね備えているにもかかわらず改良された耐衝撃性を有すると同時に他の性能特性を保持する新規なブレンドが得られることを見いだした。
【0068】
したがって、これらの熱可塑性ブレンド組成物は、A)75〜99、好ましくは80〜98、より好ましくは85〜97重量パーセント(熱可塑性ブレンド組成物の全重量を基準にして)の熱可塑性ポリオレフィン組成物であって、(a)50〜100重量パーセントのポリプロピレンもしくはHDPEまたはそれらの混合物と;0〜50重量パーセントの0.9130g/cm3以下の密度を有するエチレン/α-オレフィンインターポリマーと;を含む熱可塑性ポリオレフィン組成物と;B)1〜25、好ましくは2〜20、より好ましくは3〜15重量パーセント(熱可塑性ブレンド組成物の全重量を基準にして)のエクステンダーであって、成分A)中のエチレン/α-オレフィンインターポリマー以外のエチレン/α-オレフィンインターポリマーを含み、0.8990g/cm3未満、好ましくは0.8900g/cm3未満、より好ましくは0.8800g/cm3未満の密度および少なくとも500cP、好ましくは少なくとも500cPかつ70,000cP未満、より好ましくは少なくとも500cPかつ40,000cP未満の350°Fブルックフィールド粘度を有するエクステンダーと;を含む。
【0069】
そのような熱可塑性ブレンド組成物のメルトインデックスは、該エクステンダーを含まない類似の熱可塑性ポリオレフィン組成物のメルトインデックスに対して、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%増大される。
【0070】
TPOを含有する熱可塑性組成物以外の熱可塑性組成物に対して本明細書中に記載の用途のうちの多くで有用であることに加えて、TPOエクステンダーブレンドは、その主な有益用途のうちの1つとして、自動車用途、たとえば、限定されるものではないが、バンパーおよび内装トリム用途に使用される。
【0071】
本発明の組成物のいくつかは、多量の充填剤(たとえば、タルク、カーボンブラック、シリカ、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、アルミニウム三水和物など)ならびに/または他の添加剤、たとえば、酸化防止剤(たとえば、Irganox 1010、ヒンダードフェノール系化合物、Irgafos 168、ホスフィットなど)、クリング添加剤(たとえばポリイソブチレン)、ブロッキング防止添加剤、着色剤、顔料、ワックス、核剤、エクステンダー油、難燃剤、および粘着付与剤(tackifers)を保有するそれらの能力により特性付けられる。これらの組成物が保有することのできる充填剤および/または他の添加剤の量は、少なくとも部分的には、熱可塑性ポリマーおよび不活性エクステンダーの性質に依存するが、一般的には、存在するエクステンダーが多くなるほど、組成物は多くの充填剤および/または他の添加剤を保有できるようになる。本発明のいくつかの組成物では、たとえば、重量比が50:50またはそれ以上、たとえば40:60であるスチレンブロックコポリマー/均一分枝化実質的線状エチレン/1-オクテンコポリマーでは、組成物に組み込みうる充填剤の量は、充填剤含有組成物の加工性によってのみ制限され、かつ/または充填剤が組成物の実質的不活性または他の機能強化を妨害しない程度に制限され、たとえば、組成物および充填剤の合計重量を基準にして70重量%、80重量%、もしくはそれ以上の固体分レベルである。本発明の組成物のこの高い充填能力は、マスターバッチ用途に、たとえば、比較的少量の組成物を用いて1種以上の充填剤および/または添加剤を導入することによりさらに多量の組成物を形成するのに、とくに有用である。
【0072】
本発明の組成物は、任意の便利な方法により、たとえば、それぞれの成分をドライブレンディングし、続いて、完成物品の作製に使用される押出機中で直接に溶融混合することにより、または個別の押出機もしくは混合機中で、たとえば、HaakeユニットもしくはBanburyミキサー中で、前溶融混合することにより、コンパウンディングされる。
【0073】
本発明の熱可塑性組成物が有用である特定用途としては、温室フィルム、シュリンクフィルム、透明性シュリンクフィルム、ラミネーションフィルム、押出コーティング、ライナー、透明性ライナー、オーバーラップフィルム、農業用フィルム、高強度フォーム、軟質フォーム、硬質フォーム、架橋フォーム、クッション用途の高強度フォーム、防音フォーム、ブロー成形ボトル、ワイヤーおよびケーブル外被(たとえば、中圧および高圧、ケーブル外被)、ワイヤーおよびケーブル絶縁材(とくに、低圧、中圧、および高圧ケーブル絶縁材)、通信ケーブル外被、光ファイバー外被、パイプ、および冷凍食品パッケージが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の用途としては、射出成形品(たとえば、自動車用、消費者用、および工業用のソフトタッチ成形品、スラッシュキャスト成形品など)、押出熱成形用途(たとえば、トラックベッドライナー、農業用トレーなど)、化粧品用の異形押出チューブおよび造形品、ならびにコーキング、さらには充填剤、顔料、および他の添加剤のマスターバッチ濃厚物用担体としての作用材が挙げられる。さらに他の用途としては、滑剤(たとえば、ポリビニルクロリド樹脂用の滑剤)、プロセス助剤(たとえば、ゴムコンパウンディング用のプロセス助剤)、離型剤、分散助剤、カップリング剤、キャンドル、インベストメントキャスト品、ケーブル充填材、板紙コーティング、カーテンコーティング、インク、パーソナルケア用および化粧用製品、シーラント、着色材および添加剤濃厚物、およびカーペットテープ接着剤が挙げられる。これらの用途のうちのいくつかは、米国特許第6,325,956号明細書にさらに記載されている。このほか、本発明の組成物は、米国特許第6,270,856号明細書、同第5,674,613号明細書、同第5,462,807号明細書、同第5,246,783号明細書、および同第4,508,771号明細書に記載されている組成物および構造体で使用される1種以上のポリマーの代わりになりうる。当業者であれば、これらの新規な組成物の他の用途もわかるであろう。
【0074】
本発明の組成物を用いて、熱可塑性組成物に適した当技術分野で公知の方法のいずれかにより、繊維、フィルム、コーティング、および成形品のような物品を作製することができる。これらの組成物は、成形操作により製造物品を作製するのにとくに好適である。本発明の組成物から有用な製造物品または部品を形成するのに好適な成形操作としては、種々の射出成形法(たとえば、Modern Plastics Encyclopedia/89、1988年10月中旬発行、65巻、11号のpp. 264-268、「Introduction to Injection Molding」およびpp. 270-271、「Injection Molding Thermoplastics」に記載されているもの)、ブロー成形法(たとえば、Modern Plastics Encyclopedia/89、1988年10月中旬発行、65巻、11号のpp. 217-218、「Extrusion-Blow Molding」に記載されているもの)、カレンダー処理、および異形押出が挙げられる。
【0075】
製造物品としては、一例として、スポーツ用品、たとえば、ウェットスーツおよびゴルフグリップ、容器、たとえば、食品用容器、または他の家庭用品;履物の踵部、上部、および底部;自動車物品、たとえば、計器板、トリム、およびサイドモールディング;医療用品、たとえば、手袋、チューブ、TVバッグ、および義肢;工業用品、たとえば、ガスケットおよびツールグリップ;パーソナルケアアイテム、たとえば、おむつ用の弾性フィルムおよび繊維;布、たとえば、不織布;電子用品、たとえば、キーパッドおよびケーブル外被;ならびに建築用品、たとえば、ルーフィング材料および伸縮継手材料が挙げられる。
【0076】
本発明の組成物は、亀裂修復およびルーフィング(roofing)のためのアスファルトの改質、ポリマーの加工性、耐衝撃性および表面改質、シーラントおよび接着剤の配合、油ゲル粘度の改質、ならびにゴムエクステンダー/バインダーのコンパウンディングなどで使用するためのコンパウンディング成分または添加剤としても有用である。
【0077】
本発明の組成物はまた、他の性質を改善するために他の天然樹脂または合成樹脂と組み合わせることもできる。好適な天然樹脂または合成樹脂としては、ゴム、LLDPE、HDPE、LDPE、EVA、エチレン-カルボン酸コポリマー類、EAA、エチレンアクリレートコポリマー類、ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、PET、熱可塑性エポキシ、ナイロン類、ポリカーボネート類、ポリエステル類、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンインターポリマー類、具体的には、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、塩素化ポリエチレン、熱可塑性加硫ゴム(thermoplastic vulcanate)、EEA、ESI、ポリウレタン類、およびグラフト修飾オレフィンポリマー類、ならびに2種以上のこれらのポリマーの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
以下の実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、別段の記載がないかぎり、部およびパーセントはすべて重量基準である。
【実施例】
【0079】
不活性エクステンダー:
以下の均一分枝化実質的線状エチレン/1-オクテンコポリマーを実施例1〜7でエクステンダーとして使用した。
【0080】
エクステンダー1は、ASTM D792により測定したときに0.870±0.0025の密度および以下に記載のブルックフィールド粘度法により測定したときに177℃(350°F)において17,000cP±17%の粘度を有した。
【0081】
エクステンダー2は、ASTM D792により測定したときに0.870±0.0025の密度および以下に記載のブルックフィールド粘度法により測定したときに177℃(350°F)において8,200cP±17%の粘度を有した。
【0082】
エクステンダー3は、ASTM D792により測定したときに0.870±0.0025の密度および以下に記載のブルックフィールド粘度法により測定したときに177℃(350°F)において49,000cP±17%の粘度を有した。
【0083】
エクステンダー4は、ASTM D792により測定したときに0.870±0.0025の密度および以下に記載のブルックフィールド粘度法により測定したときに177℃(350°F)において17,000cP±17%の粘度を有した。
【0084】
エクステンダー5は、ASTM D792により測定したときに0.870±0.0025の密度および以下に記載のブルックフィールド粘度法により測定したときに177℃(350°F)において8,200cP±17%の粘度を有した。
【0085】
エクステンダー6は、ASTM D792により測定したときに0.870±0.0025の密度および以下に記載のブルックフィールド粘度法により測定したときに177℃(350°F)において49,000cP±17%の粘度を有した。
【0086】
エクステンダー1〜6のブルックフィールド粘度の測定に使用した方法:
操作パラメーター
パラメーター 説明
計測器 ブルックフィールドDVII+粘度計
スピンドル SC-31
サンプルチャンバー HT-2DB-100アルミニウム
温度 177℃(350°F)
トルク 50〜70%
ヒートコントローラー付きサーモセル
剪断速度(rpm) 50〜70%の間のトルク値を与える剪断速度
サンプルの量 スピンドルを沈める前にチャンバーの上端から
1〜1.5インチ下の位置まで溶融体でサンプルチ
ャンバーを満たすのに十分な量。
計測器が安定な読取り値を示すようになった後で粘度の読取りを行う。
【0087】
計測器の校正後、ポリマー(すなわちエクステンダー)片をサンプルチャンバーに充填する。サンプルの融解時、チャンバーの上端から1〜1.5インチ下の位置までチャンバーを満たすのに十分な量を添加する。ポリマーのレベルのすぐ上までチャンバー中にスピンドルを下降させ、設定温度に到達した後、その位置に5〜7分間保持する。銀のガイドがサンプルチャンバーの上端と同じ高さになるまでポリマー溶融体中にスピンドルを穏やかに下降させ、次に、粘度計およびサーモセルが両方とも水平になっていること確認する。スピンドル速度を最低速度(0.3)に設定し、次に、トルク値が50〜70%の間になるまで、1回に2増分以下で徐々に速度を上げる。計測器が安定な粘度読取り値を示すようになるまで待つ。
【0088】
他の試験方法
ASTM D638、速度2インチ/分を用いて、極限引張強度および破断点エネルギーの値を射出成形バーから取得した。エンド充填(end filled)された射出成形サンプルバーから作製したノッチ付きアイゾットサンプルバーを用いて特定の温度でASTM試験D-256を行うことにより、アイゾット衝撃値を得た。
【0089】
ASTM D-2240に準拠して、硬度ショアー「A」または「D」を測定した。
【0090】
25mmパラレルプレートを備えたRheometrics ARESを用いて、0.1〜100 rad/s、230℃で、動的機械的分光測定(DMS、溶融体)を行った。同一の計測器を用いて、-100〜200℃、1 rad/s、ステップサイズ5℃のトーションモードで、固体状態DMS測定を行った。
【0091】
Goettfert Rheograph 2003を用いて、230℃、100〜6,000 s-1で、キャピラリーレオロジーデータを測定した。
【0092】
TA Instruments Q1000を用いて、230℃に加熱して3分間保持し、10℃/分で-40℃に冷却して3分間保持し、次に、10℃/分で230℃に加熱することにより、差走査熱量測定(DSC)を行った(2回目の熱を報告した)。
【0093】
ASTM D-790に準拠して、曲げモジュラスを測定した。
【0094】
実施例1:
この実施例では、エクステンダー1をEAAコポリマーとブレンディングすることから強化された耐衝撃性が得られることを明らかにする。
【0095】
表1には、種々の重量濃度でエクステンダー1および3とブレンディングしたときに、Primacor* 5990I(エチレン/アクリル酸コポリマー、20重量%のアクリル酸、1300g/10分のI2(190C))および/またはPrimacor* 5980I(エチレン/アクリル酸コポリマー、20重量%のアクリル酸、300g/10分のI2(190C))の低温耐衝撃性が改善されることが報告されている。これらのコポリマーはいずれも、The Dow Chemical Companyの登録商標をもち、The Dow Chemical Companyにより製造されている。ブレンドをプラックに圧縮成形し、プラックからサンプルを切り出し、サンプルを25Cおよび-20Cの温度のアイゾット衝撃試験に付した。表1には、Primacor樹脂を漸増量のエクステンダー1と併用したときにアイゾット耐衝撃性が改善されることが報告されている(エクステンダー1を20重量%添加すると17.1J/mから45.0J/mに改善される)。これらの改善はいずれも、メルトフローレートをほとんど変化させることなく行われる(実施例1で用いられる「メルトフローレート」という用語は、ASTM D-1238、条件125℃/2.16kgを用いて測定されるg/10分単位のメルトインデックスI2を意味する)。
【0096】
【表1】


Comp Ex=比較例、Ex=実施例、Extender=エクステンダー
【0097】
実施例2:
この実施例では、エチレンポリマー/低粘度不活性エクステンダーブレンドを、目的物のソフトな感触が必要とされる射出成形用途に、たとえば、ガスケットおよびオーバー成形用途に、用いる利点を明らかにする(実施例2で用いられる「I2」という用語は、ASTM D-1238、条件190℃/2.16kgを用いて測定されるg/10分単位のメルトインデックスI2を意味し、実施例2で用いられる用語「I21」という用語は、ASTM D-1238、条件190℃/21.6kgを用いて測定されるg/10分単位のメルトインデックスI21を意味する)。
【0098】
エクステンダー1および2を、FLEXOMER(商標) DFDB-9042(0.903g/ccの密度および4.6g/10分のI2を有するエチレンコポリマー、The Dow Chemical Companyの子会社Union Carbide Corporationの製品および商標)およびFLEXOMER(商標)DFDB-1085(0.884g/ccの密度および0.8g/10分のI2を有するエチレンコポリマー、The Dow Chemical Companyの子会社Union Carbide Corporationの製品および商標)とブレンディングした。
【0099】
溶融コンパウンディング
BrabenderバッチミキサーまたはBerstoff二軸スクリュー押出機のいずれかを用いて、エチレンポリマーとエクステンダーの溶融コンパウンディングを行った。いずれのブレンドを用いた場合にも、不十分な混合およびゲルの問題は観測されなかった。
【0100】
ブレンドの相溶性:
DFDB 9042/エクステンダー1、DFDB 9042/エクステンダー2、およびDFDB 1085/エクステンダー2ブレンドに対して、示差走査熱量測定(DSC)を行った。ブレンドの2回目の熱プロファイルをそれぞれのブレンド成分の2回目の熱プロファイルと比較して、ブレンドは、さらなる融解ピーク/相をなんら示さない。エチレンポリマーおよび低粘度エクステンダーは、互いに非常に相溶性がある。
【0101】
物理的性質:
ブレンドから作製されたプラックの特定の物理的性質を表2-1〜2-3に報告する。予想どおり、引張特性(強度および伸び)は、エクステンダー含有率が増大するにつれて減少する。ブレンド内のエクステンダーレベルを増大させても、硬度(ショアーAおよびショアーD)は、劇的な減少を示さない。
【0102】
キャピラリーレオロジー:
ブレンドのキャピラリーレオロジーデータを図1〜3に示す。エクステンダー成分の存在により剪断粘度が減少するので、加工性が改善される。
【0103】
【表2】

Comp Ex=比較例、Ex=実施例(以下同様)
【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
実施例3:
最初に2種の樹脂をブレンディングし、続いてHaakeブレンダーを用いて試験試料の形態に押し出すことにより、ポリヒドロキシアミノエーテルエポキシ樹脂BLOX*(The Dow Chemical Companyの製品および商標)(PHAE-)とエクステンダー3(0.880g/ccの密度、1000g/10分のメルトインデックス(I2)、および8200cPの350°Fブルックフィールド粘度の低粘度均一分枝化実質的線状エチレン/1-オクテンコポリマー)との4つのブレンドを調製した。これらのブレンドを応力-歪みおよびアイゾット衝撃試験に付した。ブレンドの組成および結果を表3に報告する。実施例3で用いられる「I2」という用語は、ASTM D-1238、条件190℃/2.16kgを用いて測定されるg/10分単位のメルトインデックスI2を意味する
【0107】
【表5】

【0108】
エクステンダーレベルを0重量%から20重量%まで増大させるにつれて、ピーク応力および破断点歪みは低下した。より詳細には、破断点歪みは、エクステンダーの最初の5重量%添加で最も劇的に減少するが、破断応力は、さらにゆっくりと減少する。エクステンダーレベルを0重量%から20重量%まで増大させても、複素粘性率は、ごくわずかな変動を示すにすぎないが、ただし、複素粘性率値は、5重量%レベルおよび10重量%レベルで少し減少し、20重量%のエクステンダーレベルで再び増大する。破断応力の場合と同様に、曲げモジュラスは、エクステンダーレベルを増大させるにつれて徐々に低下する。アイゾット衝撃データは、室温(25C)および低温(-20C)のいずれにおいても5重量%のエクステンダーレベルでアイゾット衝撃がエクステンダーに対してピークに達するという予想外の改善を示す。
【0109】
TMA対温度データを図4に示す。針入開始温度が5〜10C増大することにより示されるように、5、10、および20重量%のエクステンダーの添加により熱可塑性エポキシの熱安定性および硬度が増大される。
【0110】
最後に、図5(PHAE/エクステンダー3の90/10ブレンドの光学顕微鏡写真)は、エクステンダードメインが十分に分散されていることを示す。この顕微鏡写真中のドメインは伸長され配向されているが、分散性はブレンドにより異なるであろう。エクステンダードメインのサイズは、さまざまな値をとり、図5では、サイズは、1ミクロンの何分の一かの値から15ミクロンまで範囲である。
【0111】
実施例4:
高分子量スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロックコポリマー(「SEBS」)であるKraton(商標)1651(Shell Chemical Companyの製品および登録商標)を、エクステンダー1(0.87g/ccの密度、500g/10分のI2、および17,000cPの350Fブルックフィールド粘度の低粘度均一分枝化実質的線状エチレン/1-オクテンコポリマー)と、85:15の相対重量%比でブレンディングし、ブレンドを種々の試験にかけた。実施例4で用いられる「I2」という用語は、ASTM D-1238、条件190℃/2.16kgを用いて測定されるg/10分単位のメルトインデックスI2を意味する。
【0112】
表4には、ブレンディングされていないKraton(商標)1651と対比してブレンドの種々の物理的性質が報告されている。ブレンドは、ニートなKraton(商標)1651よりも増大された伸び、引張強度、および可撓性を呈する。また、図6は、強化された可撓性およびブレンドの2つの成分の相溶性/混和性を示している。図7は、エクステンダーの比較的少量の添加により引張強度が著しく増大されることを示している。最後に、図8は、エクステンダーをKraton(商標)1651に添加することによりブロックコポリマーの溶融粘度が低下し、結果として、その加工性が向上すること、すなわち、より低い押出温度、より高いスループット、およびメルトフラクチャーの除去のうちの1つ以上が達成されることを示している。
【0113】
【表6】

【0114】
実施例5:
動的機械的分光学的データ(図9)は、エクステンダー2を33重量パーセントの濃度でKraton(商標)1652(Shell Chemical Companyの製品および登録商標)中にブレンディングしたときに(図9で「G' 870/1k」と記されたラインを参照されたい)、同一濃度のPetrothene(商標)NA 601(Equistar Chemical Companyの登録商標および製品)と比較して(図9で「G' 601」と記されたラインを参照されたい)、G'値が約1/2桁減少することを示している。また、エクステンダー2ブレンドのG'値は、33重量パーセントの油と67重量パーセントのKraton(商標)1652とのブレンドのG'値(図9で「G' 油」と記されているラインを参照されたい)に、より近接している。G'が小さくなるほど、エラストマーはよりソフトな感触になる。低密度低粘度エクステンダーを用いると、Petrothene(商標)NA 601よりもソフトで加工適性がありしかも油充填Kraton(商標)ブレンドと対比して引張強度およびモジュラスの保持性が改良されているエラストマーが得られる。引張特性を表5にまとめる。
【0115】
【表7】

【0116】
実施例6
実施例6では、0.89g/cm3の密度および230℃で35グラム/10分のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンホモポリマーから調製されたTPO配合物にエクステンダー1〜6を添加した。ポリプロピレンホモポリマーに対して、さまざまな量のエラストマーEL1(これは、0.870 cm3の密度および190℃で5.0グラム/10分の公称メルトインデックスを有するエチレン/1-オクテンコポリマーであった。ENGAGE(商標)8200としてDu Pont Dow Elastomersから市販されている)およびエクステンダー1〜6を添加した。別段の記載がないかぎり、実施例6で用いられる「I2」という用語は、ASTM D-1238、条件190℃/2.16kgを用いて測定されるg/10分単位のメルトインデックスI2を意味する。
【0117】
ブレンドの組成を表6にまとめ、評価の結果を表7に示す。
【0118】
【表8】

【0119】
【表9】

【0120】
表6および7のデータの分析から、熱可塑性ポリオレフィンのエラストマー成分にエクステンダーを添加することにより耐衝撃性が改良されると同時にコンパウンドの粘度が減少することが実証される。
【0121】
実施例7
エンジニアリング熱可塑性樹脂、たとえば、PET、ナイロン-6,6、およびポリカーボネートと、エクステンダー2と、の一連のブレンドを、69ml容量のHaakeボウルミキサーRheomix 600により作製した。PETは、The Dow Chemical Companyから入手可能なC88等級のものであり、ポリカーボネートは、CALIBRE(商標)200-3(The Dow Chemical Companyの製品および登録商標)であった。270℃に前加熱されたボウルを用いて50rpmのローター速度でブレンドを作製した。使用前、140℃の真空オーブン中にエンジニアリング熱可塑性プラスチックを2日間入れて湿分を含む樹脂を乾燥させた。湿分除去を支援するために、わずかな窒素掃引を用いた。最初に、前加熱された回転ボウルにエンジニアリング熱可塑性プラスチックを添加し、その直後、エクステンダーを添加することにより、ブレンドを作製した。次に、ラムを下降させてボウルを密封し、溶融ブレンディングを開始し、最初の樹脂添加から8分間にわたりブレンディングを継続させた。温度、ローター速度、および溶融トルクを、グラフ表示によりモニタリングした。初期溶融後、ブレンドはすべてゼロトルクを呈した。8分間混合した後、ローターを停止し、ボウルを取り外し、ポリマーブレンドを取り出してフラットにした。ナイロンブレンドは、より急速に硬質化し、フラットにするのが困難であった。3種のブレンドの組成を表8に示し、対応するブレンドの性質を表9に示す。
【0122】
【表10】

【0123】
【表11】

【0124】
実施例により本発明についてかなり詳細に説明してきたが、この詳細は、例示を目的としたものである。添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変更および修正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の第1の熱可塑性組成物の剪断粘度対剪断速度を報告するグラフである。
【図2】本発明の第2の熱可塑性組成物の剪断粘度対剪断速度を報告するグラフである。
【図3】本発明の第3の熱可塑性組成物の剪断粘度対剪断速度を報告するグラフである。
【図4】本発明の熱可塑性組成物から作製されたサンプルプラック(sample plaque)のプローブ針入度対温度を報告するグラフである。
【図5】本発明の熱可塑性組成物の光学顕微鏡写真である。
【図6】スチレンブロックコポリマーおよび本発明の不活性エクステンダーと組み合わされた該コポリマーのモジュラス対温度を報告するグラフである。
【図7】スチレンブロックコポリマーおよび本発明の不活性エクステンダーと組み合わされた該コポリマーの応力対歪み挙動を報告するグラフである。
【図8】スチレンブロックコポリマーおよび本発明の不活性エクステンダーと組み合わされた該コポリマーのメルトフロー性を報告するグラフである。
【図9】種々のエクステンダーと組み合わされたスチレンブロックコポリマーのG'値の減少を報告する動的機械的分光学的グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)全組成物の1〜99重量パーセントの少なくとも熱可塑性ポリマーと、(b)全組成物の1〜99重量パーセントの少なくとも1種の0.855g/cc〜0.899g/ccの密度を有する低粘度均一分枝化エチレンポリマーと、を含む、熱可塑性組成物。
【請求項2】
前記エチレンポリマーの粘度が、350°Fで少なくとも500cPのブルックフィールド粘度である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エチレンポリマーが、実質的線状エチレン/α-オレフィンコポリマーである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーが、合成ゴム、LLDPE、HDPE、LDPE、EVAコポリマー、エチレン-カルボン酸コポリマー、エチレンアクリレートコポリマー、ポリブチレン、ポリブタジエン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンインターポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、塩素化ポリエチレン、熱可塑性加硫ゴム(thermoplastic vulcanate)、EAA、ESI、ポリウレタン、もしくはグラフト修飾オレフィンポリマー、および2種以上のこれらのポリマーの組合せよりなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、少なくとも50重量%の前記熱可塑性ポリマーを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記実質的線状エチレンインターポリマーが、0.860〜0.880g/ccの範囲の密度を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記スチレンブロックコポリマーが、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレン、スチレン/エチレン-ブテン/スチレン、およびスチレン/エチレンプロピレン/スチレンよりなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
請求項2に記載の組成物を含む、フィルム、繊維、コーティング、または成形品。
【請求項9】
A)75〜99重量パーセント(熱可塑性ブレンド組成物の全重量を基準にして)の熱可塑性ポリオレフィン組成物であって、
(a)50〜100重量パーセントのポリプロピレンもしくはHDPEまたはそれらの混合物と;
(b)0〜50重量パーセントの0.9130g/cm3以下の密度を有するエチレン/α-オレフィンインターポリマーと;
を含む熱可塑性ポリオレフィン組成物と;
B)1〜25重量パーセント(熱可塑性ブレンド組成物の全重量を基準にして)のエクステンダーであって、成分A)(b)以外のエチレン/α-オレフィンインターポリマーを含み、かつ
(a)0.8990g/cm3未満の密度と;
(b)少なくとも500cPの350°Fブルックフィールド粘度と;
を有するエクステンダーと;
を含む、熱可塑性ブレンド組成物において、
該熱可塑性ブレンド組成物のメルトインデックスが、該熱可塑性ポリオレフィン組成物のメルトインデックスに対して少なくとも5%増大されている、熱可塑性ブレンド組成物。
【請求項10】
A)前記熱可塑性ポリオレフィン組成物が、80〜98重量パーセント(熱可塑性ブレンド組成物の全重量を基準にして)の量で存在し;しかも
B)成分A)(b)以外のエチレン/α-オレフィンインターポリマーを含む前記エクステンダーが、2〜20重量パーセント(熱可塑性ブレンド組成物の全重量を基準にして)の量で存在し、かつ
(a)0.8900g/cm3未満の密度と;
(b)少なくとも500cPかつ70,000cP未満の350°Fブルックフィールド粘度と;
を有し;
さらに前記熱可塑性ブレンド組成物のメルトインデックスが、前記熱可塑性ポリオレフィン組成物のメルトインデックスに対して少なくとも10%増大されている、請求項9に記載の熱可塑性ブレンド組成物。
【請求項11】
A)前記熱可塑性ポリオレフィン組成物が、85〜97重量パーセント(熱可塑性ブレンド組成物の全重量を基準にして)の量で存在し;しかも
B)成分A)(b)以外のエチレン/α-オレフィンインターポリマーを含む前記エクステンダーが、3〜15重量パーセント(熱可塑性ブレンド組成物の全重量を基準にして)の量で存在し、かつ
(a)0.8800g/cm3未満の密度と;
(b)少なくとも500cPかつ40,000cP未満の350°Fブルックフィールド粘度と;
を有し;
さらに前記熱可塑性ブレンド組成物のメルトインデックスが、前記熱可塑性ポリオレフィン組成物のメルトインデックスに対して少なくとも15%増大されている、請求項9に記載の熱可塑性ブレンド組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−501354(P2006−501354A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541759(P2004−541759)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/030434
【国際公開番号】WO2004/031292
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】