説明

低脂肪フレーバーコーティング及びその使用方法

選択されたフレーバーを提供するのに十分な量のフレーバー剤、例えばココア、約40℃未満の温度で流動性を抑制するのに十分な構造上の完全性を有するコーティングを提供するのに有効な量の、フレーバー剤を介して分散した糖結晶及び糖ガラスのマトリックス、及び脂肪に似ており、且つ唾液と接触したときに分散を開始して、チョコレートを消費する間のココアバターの溶融に似た滑らかな口あたりを提供する、フレーバー剤及び糖マトリックスを介して分散した乾燥親水コロイド成分を含む複数の微小球を含む低脂肪フレーバーコーティング。ここで、フレーバーコーティングは少なくとも実質的に無水であり、且つ約10重量パーセント未満の脂肪を有し、該脂肪は分散した微液滴として存在する。低脂肪フレーバーコーティングの使用方法、例えば菓子製品又は他の食物製品をコーティングする方法、並びに得られた食物製品も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーバー剤、糖結晶及び糖ガラスの糖マトリックス、並びに滑らかな口あたりを提供し、チョコレートを消費する間のココアバターの溶融に似せた乾燥親水コロイド成分を含む複数の微小球を含み、熱帯気候において消費するための菓子製品での使用に好適な低脂肪フレーバーコーティングの製造を対象とする。
【背景技術】
【0002】
従来の製造されたチョコレートは、ココアバターに由来する脂肪及び脂肪物質中に均一に分散した糖類、固形ココア及びタンパク質(通常ミルク由来)からなる。チョコレート類似物は他の植物脂肪を含む。しばしば連続脂肪相は乳脂肪も含む。チョコレートは典型的には30から38重量パーセントの総脂肪を含み、従来のミルクチョコレートにおいて、脂肪は約57重量パーセントのエネルギー(カロリー)からなる。
【0003】
脂肪成分はチョコレートの連続相であるため、貯蔵安定性及び温度特性は主に脂肪相の物理特性に依存する。ココアバターは多様型である。下記の表1に示されているように異なる溶融特性を有する、6個の結晶形態が記載されている(G.Talbot、脂肪の共融及び結晶化(Fat eutectics and crystallization)、食品加工の物理化学的側面において(In Physico−chemical aspects of food processing)(Beckett,S.T.、編集者))。Blackie Academic and Professional、London、1995、142〜166頁)。チョコレートの製造方法の一部としての焼戻し(tempering)は、ココアバターが最も高い融点を有する結晶形態V及びVIにおいて主に結晶化するのを確実にするためである。
【0004】
表1:ココアバター多様型の融点
【表1】

【0005】
それにもかかわらず、ココアバターは典型的には約28℃で軟化し始め、結果としてチョコレートの機械的強度が低下する。このことは、熱帯諸国でしばしば遭遇する高い外気温において、チョコレートが粘つき、又は流動化さえすることを意味する。包装紙に粘つく傾向があり、包装紙を取り除くときにばらばらになり、清潔を望む場合、しばしばスプーンでのみ食べることのできる半液体の塊りとなる。被覆されたチョコレート製品は、これらの条件下では典型的には構造上の完全性を損ない、しばしば内容物が漏出し、包装中で個々の単位が互いに癒着する。チョコレートはまた、冷涼条件で貯蔵され、食されるチョコレートの重要な(及び快い)質感上の特性である「ポキッと折れる」性質も損なわれる。ココアバターの低い融点に関連する他の問題は、チョコレート製品の表面の高温で溶けたココアバターを分離することにより起こり、その後の温度の低下による結晶化を伴うブルーミング(blooming)の問題である。これは製品に、流し型を連想させる好ましくない灰色の外観を与える。長時間の高温及び低温のサイクルを繰り返すと、特にブルーミングを助長するようである。
【0006】
親水コロイドの擬似脂肪に対する使用は当業者によく知られている(例えば、Deis,C.M.、低脂肪:最先端の戦略(Reducing fat:A cutting−edge strategy)、Food Product Design、March 1997を参照)。あいにく、これまで製造された製品は消費者が脂肪食品、特に菓子製品に魅力的と認めた特徴と完全に一致しておらず、市場において限定的な成功しか得られていない。以前に提案した戦略は直接適用できないか、又は擬似チョコレートとして十分に成功するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、低脂肪、低カロリー、又はこれらの両方であって、一方、好ましくは熱帯又は高温条件下で溶けにくく、且つ従来のフレーバーコーティングの種々の特徴をなお保持するか、又は近いフレーバーコーティングがさらに求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、選択されたフレーバー、例えばチョコレートフレーバーを提供するのに十分な量のフレーバー剤、例えばココア、約40℃未満の温度での流動性を抑制するのに十分な構造上の完全性を有するコーティングを提供するのに有効な量のフレーバー剤を介して分散した糖結晶及び糖ガラスのマトリックス、並びに脂肪に似ており、且つ唾液と接触したときに分散を開始して、チョコレートを消費する間のココアバターの溶融に似た滑らかな口あたりを提供するフレーバー剤及び糖マトリックスを介して分散した乾燥親水コロイド成分を含む複数の微小球を含む、低脂肪の、フレーバーコーティングを包含し、ここでフレーバーコーティングは少なくとも実質的に無水であり、且つ約10重量パーセント未満の脂肪を有し、該脂肪はコーティング中に分散した微液滴として存在する。
【0009】
一実施形態において、親水コロイド成分は少なくとも1つの単離されたタンパク質様物質、ガラクトマンナン、若しくは粒状デンプン、又はそれらの組合せを含む。好ましい実施形態において、親水コロイド成分は卵白アルブミン、乳漿タンパク質分離物、大豆タンパク質分離物、カゼイン、カゼインナトリウム、グアーガム、ローカストビーンガム、フェヌグリークガム、タラガム、アラビアゴム、コーンスターチ、ポテトスターチ、小麦デンプン、タピオカデンプン、又はそれらの組合せを含む。より好ましい実施形態において、親水コロイド成分はグアーガム、卵白アルブミン、及び少なくとも1種のデンプンを含む。別の実施形態において、親水コロイド成分は1種又は複数の非架橋性親水コロイドを含む。さらに別の実施形態において、親水コロイド成分は約36℃から38℃の唾液中に溶解する。一実施形態において、微小球が、消費者の口に触れて膨張し、親水コロイド成分の一部を放出し、それを崩壊させる、即ち、咀嚼することなしに崩壊させる。別の実施形態において、チョコレートが口どけするのに要する時間の約80から120パーセントの時間で分散した親水コロイド成分が口どけする。本発明のコーティングは、実質的にチョコレートと同様に典型的には光沢がある。
【0010】
一実施形態において、糖マトリックスはスクロース、グルコース、フルクトース、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリトリトール、ラクチトール、ポリデキストロース、マルトデキストリン、又はそれらの組合せを含む。好ましい実施形態において、糖マトリックスはコーンシロップ及び粉末スクロースを含む。
【0011】
別の実施形態において、低脂肪のフレーバーコーティングはさらに約3重量パーセント未満の含水量を有するミルクを含む。一実施形態において、フレーバー剤はいちご、ココア、チョコレート−フレーバー成分、又はそれらの組合せを含む。さらに別の実施形態において、フレーバー剤がココア、一部がアルカリ化したココアを含む。
【0012】
本発明はまた低脂肪フレーバーコーティングから形成されるコーティングを包含する。一実施形態において、低脂肪フレーバーコーティングの水の活量は約0.45から0.55である。別の実施形態において、フレーバーコーティングは無水である。さらに別の実施形態において、フレーバーコーティングは冷蔵なしで少なくとも約3年の貯蔵寿命を有する。さらに別の実施形態において、フレーバーコーティングは周囲環境においてヒトの手の上に肉眼で検出可能な量のコーティングを残さない。別の実施形態において、フレーバーコーティングは実質的に粒度増大剤(grit−increasing agent)を有さない。
【0013】
本発明はまた低脂肪フレーバーコーティングを菓子製品の一部の上に配置し、コーティングを乾燥して少なくとも実質的に無水状態にする方法を包含する。
【0014】
本発明はさらに、選択されたフレーバーを提供するのに十分な量のフレーバー剤、複数の糖結晶及び糖ガラスを含む糖マトリックス、及び脂肪に似ており、且つ唾液と接触したときに分散を開始して、消費する間にココアバターの溶融に似た滑らかな口あたりを提供する乾燥親水コロイド成分を含む複数の微小球を合わせることと、フレーバー剤、糖マトリックス、及び微小球をミルクと合わせて、流動性の低脂肪コーティングを形成することと、少なくとも実質的に無水の形態に乾燥して、非流動性の質感を有するコーティングを提供することによる低脂肪フレーバーコーティングの製造方法を包含し、ここで該低脂肪フレーバーコーティングは、分散した微液滴として存在する約10重量パーセント未満の脂肪を有する。
【0015】
さらに、本発明の特徴及び利点を以下の図面と関連して詳細な説明により確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は低脂肪食用フレーバーコーティングのための配合物、典型的には菓子製品との組合せにおける使用のための配合物を有利に提供し、一実施形態において、チョコレート又はチョコレート類コーティング等の脂肪含有コーティングに外観及び口あたりが酷似する。本発明のコーティングは光沢のある外観を有し、及び従来のチョコレートの食特性、例えば、口あたりの潤滑性を含む官能特性に似せている。これらのコーティングは、非常に少ない脂肪含量、典型的には従来のチョコレート又は他のコーティングに比べ、かなり低いエネルギー(即ち、カロリー含量)を有するため、ファットブルーム(fat bloom)に悩まされることがなく、少なくとも実質的に、又は好ましくは完全に、熱帯気候において遭遇する高温、即ち、約40℃までの温度において、それらの形状及び質感を保持することができる。本発明のコーティングはまた熱帯気候においても溶けにくいのが好ましい。理論に拘束されることなく、本発明のコーティングのこの驚くべき予想外の利点は、擬似脂肪を使用することにより部分的に達成され、脂肪分の一定の不利益を最小限にし又は回避しながら脂肪の一定の利点を提供すると考えられる。
【0017】
本発明のフレーバーコーティング配合物は、チョコレート等の選択されたフレーバーを提供するのに十分な量のココア等のフレーバー剤、並びに約40℃未満の温度での流動性を抑制するのに十分な構造上の完全性を有するコーティングを提供するのに有効な量の、フレーバー剤を介して分散した糖結晶及び糖ガラスのマトリックス、及び脂肪に似ており、且つ唾液と接触したときに分散を開始して、チョコレートを消費する間のココアバターの溶融に似た滑らかな口あたりを提供するフレーバー剤及び糖マトリックスを介して分散した、乾燥親水コロイド成分を含む複数の微小球を含む。本発明のフレーバーコーティングは、好ましくは少なくとも実質的に無水であり、及び約15重量パーセント未満の脂肪を有し、該脂肪は主にコーティング中に分散した微液滴として存在する。得られた低脂肪フレーバーコーティングは、従来のコーティングによる場合より長く乾燥することができるので、コーティングを乾燥するのに必要な修正のみで、従来のチョコレートコーティング機(evrobers equipment)及び他の装置での使用に適している。このことは、当業者が機械にメッシュベルトを取り付け、除湿した空気の流れを冷却トンネルに供給することにより容易に達成することができる。得られたコーティングは擬似の、例えばミルク又はダークチョコレートを調製することができる。
【0018】
本発明は特にフレーバーコーティングに焦点を当てているが、単なるフレーバーコーティング又はチョコレートコーティングに比べより一般的な応用が可能な親水コロイド成分を用いる擬似脂肪への新規な提案を教示している。それは擬似脂肪を所望するどの食物製品にも使用することができる。脂肪の3つの明確な特性を、特にチョコレートに関するだけでなく、他の製品についても同様に同定し解決を図った。これらは、口内の潤滑性、咀嚼中に固体から液体脂肪へ状態を変化させることによる口あたりの制御を提供し、及びコーティング表面の光反射特性を決定する−即ち、光沢を決定する脂肪の役割を含む。本発明は驚くべきことに、脂肪含有食物に見られる典型的なこれら3つの望ましい特性のそれぞれを、同じ量の脂肪を用いることなく提供する。
【0019】
低脂肪食用フレーバーコーティング、代表的にはチョコレートを十分な量のフレーバー剤を用いて調製し、消費者に感知できるフレーバー、例えばいちご、チョコレート等を提供する。チョコレートフレーバーが所望される場合、適当なココア又は入手可能なチョコレートフレーバー物質をフレーバー剤として用いることができる。ココアを用いる場合、好ましくはココアバター等の脂肪又はカロリー含有物質を実質的に用いない。一実施形態において、ココアはアルカリ化したココアであっても、アルカリ化した部分を含んでいてもよい。例示的なココアの1つは約8から15パーセントの脂肪を含んでいる。フレーバー剤は、典型的には低脂肪フレーバーコーティングに対し約0.001から30重量パーセント、好ましくは0.5から25重量パーセント又は1から20重量パーセント存在する。例えば、いちごフレーバーが所望される場合、約0.1から15重量パーセントのフレーバー剤はいちごフレーバーを提供する1種又は複数の成分を含むことができ、一方、チョコレートフレーバーが選択される場合、約2から20重量パーセントのココア又はチョコレートフレーバー成分を含むことができる。
【0020】
コーティングはまた、約40℃未満の温度でコーティングの流動性を抑制するのに十分な構造上の完全性を有するコーティングを提供するのに有効な量のフレーバー剤を介して分散した糖結晶及び糖ガラスのマトリックスを含む。時間とともに少量の液体脂肪成分又は他の成分が浸出するが、これらは本発明の低脂肪フレーバーコーティングを含む食物製品の典型的な貯蔵寿命の間、最小限にし、又は完全に回避される。フレーバーコーティングは、本明細書に教示する参照文献により短期間又は長期間であり得るが、典型的には冷蔵なしで少なくとも約3年の貯蔵寿命を有する。
【0021】
好ましくは糖類はサッカライドを含むが、マトリックスを形成するのに適当ないかなる糖又はその混合物も用いることができる。糖結晶及び糖ガラスは典型的には糖類又は糖アルコール、好ましくはスクロース、グルコース、フルクトース、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリトリトール、ラクチトール、ポリデキストロース、マルトデキストリン、イヌリン又はそれらの組合せを含む。好ましくは糖はコーンシロップ及び粉末スクロースを含む。糖は典型的には約50から98重量パーセント、好ましくは約60から90重量パーセント存在する。1つの実施例において、糖は約65から85重量パーセント存在する。好ましくは糖は約50から80重量パーセント存在する。例えば、スクロースが約55から72重量パーセント存在する一方、コーンシロップが約10から22重量パーセント存在してもよい。イヌリンは糖の一部と置き換えて用いることができ、本発明のコーティングの血糖インデックス及びエネルギー含量を有利なことにさらに低下させる。
【0022】
理論に拘束されることなく、「糖ガラス」若しくはガラス質の糖又はかかる糖と結晶質の糖との組合せは、結晶質の糖単独の場合より本発明のコーティングの驚くべき特性を提供すると考えられる。糖ガラスは消費する際に容易に破砕し、等価の結晶質の糖構造より速く溶解する。したがって、糖ガラス対結晶質の糖の比は消費される間、即ち、「口内」での溶解特性の制御を増大させる。この溶解効果は、消費中にコーティングの塊を小さな破片に壊す、ゴムの膨張に起因する崩壊作用とは異なる。最終的にガラス質の形態に比べエネルギー状態の低いにもかかわらず、結晶質の糖を形成するための糖の分子が組織化された、規則正しい配置をとることができなくなるほど粘度が十分に高くなるまで、本発明の塊を乾燥することによりガラス質の糖が形成する。したがって、糖ガラスの分子は、規則正しいというよりランダムであり、結晶質というよりガラス質である。糖ガラスの分子が規則正しい糖結晶分子に比べ低いエネルギーを有するため、糖ガラスの結合エネルギーはより低く、したがって、ガラス質の糖は糖結晶に比べより低い溶解エネルギーを必要とする。結果として、本発明のコーティングの迅速な溶解は糖結晶に比べ高比率の糖ガラスを使用していることに起因すると考えられる。
【0023】
親水コロイド成分は、当業者に入手可能な任意の適切な親水コロイド材料であることができる。典型的には、親水コロイド成分は少なくとも1つの単離されたタンパク質様物質、ガラクトマンナン、若しくは粒状デンプン、又はそれらの組合せを含む。好ましくは親水コロイド成分は、卵白アルブミン、乳漿タンパク質分離物、大豆タンパク質分離物、カゼイン、カゼインナトリウム、グアーガム、ローカストビーンガム、フェヌグリークガム、タラガム、アラビアゴム、コーンスターチ、ポテトスターチ、小麦デンプン、タピオカデンプン、又はそれらの組合せを含む。より好ましくは、フレーバーコーティングはグアーガム、卵白アルブミン、及び少なくとも1種のデンプンを含む親水コロイド成分を含む。親水コロイド成分は、典型的には十分な量の糖ガラスを形成するように乾燥の間にコーティングの粘度を増大させるのに十分な量存在する。乾燥の間、親水コロイド成分は糖の結晶化を阻害し、溶解した残りの糖が糖結晶よりむしろ糖ガラスを形成するように促進する。したがって、親水コロイド成分は低脂肪コーティングに対して好ましくは約0.1から8重量パーセント、好ましくは約2から5重量パーセント存在する。1つの好ましい実施例において、約3から4重量パーセントの親水コロイド成分が存在する。
【0024】
親水コロイド成分は1種又は複数の非架橋性親水コロイドを含むのが望ましい。親水コロイド成分は、約36℃から38℃の典型的な口の温度でより容易に溶解するように好ましくは非架橋性である。親水コロイド成分は、クリームの質感等の脂肪含有食材において典型的に見られる、熱帯温度又はそのような温度においても消費者の手に与える絹のような感触の、1種又は複数の驚くべき特性を有するコーティングを提供することができる。
【0025】
親水コロイド成分は、好ましくは複数の微小球、親水コロイドからなる滑らかな微小球として配置される。「ボールベアリング」として作用することにより、これらの微小球はチョコレート及びチョコレート類又はチョコレート形式の製品における脂肪と同様の口あたりを最終的なコーティングに提供することもできる。親水コロイド成分の微小球は、典型的には消費者の口又は唾液と接触して膨張し、親水コロイド成分の一部を放出し、咀嚼することなく崩壊させる。これは「融解消失(melt away)」とも呼ばれる。好ましくは少なくとも1つの親水コロイド成分の大部分が微小球からまとめて放出され、より好ましくは少なくとも約80重量パーセントの親水コロイド成分が放出される。好ましい実施形態において、少なくとも約90重量パーセント、より好ましくは少なくとも約98重量パーセントの親水コロイド成分が消費中に微小球から放出され、本発明の驚くべき、そして有益な擬似脂肪が提供される。低いパーセントの微小球が崩壊して親水コロイド成分を提供する実施形態においては、相対的に多量の微小球又は親水コロイド成分を含ませることができる。
【0026】
親水コロイド成分は複数の微小球から分散する。分散した親水コロイド成分は、典型的にはチョコレートが口どけするのに要する時間の約80から120パーセントの時間で口どけし、それにより、通常のチョコレートの脂肪の口あたりと同様の口あたりを提供する。理論に拘束されることなく、この特性は、親水コロイド成分を膨張させ、口の中で崩壊させるためにコーティングの中に入る唾液又は水により提供される。従来のチョコレートと比較して大きな表面積及び高い糖含量が、ココアバター融解の動力学的速度と実質的に同様の速度で親水コロイド成分が溶解する原因となる。
【0027】
場合によって、本発明の低脂肪コーティングは、着色剤、乳白剤、加工助剤、カビ防止剤等、又はそれらの組合せを含む1種又は複数の他の成分を含むことができる。適切な着色剤は、ダークチョコレート又はミルクチョコレートの外観の提供を補助するのに十分な量を含ませることができる。含むことのできる1つの成分は二酸化チタンであり、使用する場合、約0.01から3重量パーセント、好ましくは0.5から1.5重量パーセントで含むことができる。例示的な量は0.6、0.8、1、1.2、1.4及び1.5重量パーセントの二酸化チタンを含む。
【0028】
本発明のコーティングは、糖結晶マトリックスの適切な形態を弱めるか又は妨げる傾向のあるいくつかの成分を実質的に含まないか、混入し得る痕跡量を除いて完全に含まない。コーティングは少なくとも実質的に無水であり、好ましくは無水である。実質的に無水の形態の完成したコーティング、即ち乾燥したコーティングは水性又は水に基づいた材料、例えば液体ミルク成分を含む集団から形成することができる。液体ミルク成分は、無脂肪又は全乳であってよく、場合によって部分的脱水した形態であってもよい。水性形態における液体、例えばミルク、典型的には約15重量パーセント以下の水含量を提供する量で全体に組み込まれる。ミルクはより少ない量又は粉末形態、例えば乳固形分で添加してもよい。次に十分な水をミルク成分から、典型的には乾燥又は蒸発工程により除き、コーティングを実質的に無水にする。
【0029】
乾燥工程は、典型的にはコーティングを配置する従来の又は新規なセンターの型又は大きさのそれぞれについて改良が必要であり、このような日常的な改良は容易に知られているか、又は当業者によって容易に決定することができる。例えば、コーティングの適切な乾燥を促進するため、少量の水分を特に乾燥センターに添加することができる。コーティングは、分散した固体の大部分が適切な容量のガラス質状態のマトリックス内に捕捉されるように乾燥すべきであり、これが適切に行われないと、時間とともに被覆表面又はその近辺が容易に見ることができない、糖ブルームとなる。例えば、完全な乾燥過程が典型的には約90分以内、好ましくは約60分以内に起こる。温度は好ましくは室温に近く、例えば約21から24℃であり、湿度は約5から55パーセントの範囲である。種々の被覆材料がその上に配置されるコーティングの光沢に与える効果を最小にするので、好ましくは、乾燥は例えば約15パーセント以下の低湿度の空気中で、より迅速に達成する。本発明のコーティングを高い湿度の空気により長時間乾燥することも可能であり、これらの変更は、同様に周囲の相対湿度及び被覆された材料組成にも依存する。
【0030】
フレーバーコーティングは、好ましくはチョコレート類のコーティングとして適用するのが好ましいが、本明細書に記載したコーティングが必要な任意の適切なタイプの食品にも適用することができる。本発明において一緒に用いる他の一般的なタイプの食品は、アイスクリーム、ケーキ、マフィン、パイ等を含む。好ましくは、約40℃までの熱帯温度又は高温に対する安定化のため、コーティングは周囲環境においてヒトの手の中で溶けない。結果として、接触後のヒトの手の上に、肉眼で検出するのに十分な量のコーティングは残らず、消費者の手の上に脂っぽい汚れを形成するのを抑制する。しかし、十分な水分が本発明のコーティングに接する表面に集まっている場合、コーティングは不安定になり始めるか溶け始める。コーティングはまた、好ましくは例えば貯蔵中又は消費中にひび割れしない。
【0031】
本発明の低脂肪フレーバーコーティングは、典型的には実質的に粒度増大剤又は塩化カルシウムを有さない。一般的な粒度増大剤は微結晶性セルロースを含む。また、本発明のコーティングを消費するとき、架橋剤が親水コロイド成分の適切に分散させる能力を限定する傾向があるので、本発明のコーティングは好ましくは少なくとも実質的に架橋剤を用いないか、より好ましくはまったく用いない。コーティングは精製、コンチング(conching)、焼戻し等、又はそれらの組合せを必要としないが、所望であれば1種又は複数のこれらの工程を採用してもよい。
【0032】
本発明のコーティングは、(チョコレート等の)掛けもの機、パンニング装置等の従来の処理装置において用いることができる。このように、フレーバーコーティングは菓子製品の一部を被覆することができ、且つ約40℃までの高温又は熱帯状態下で所望の安定性を有する。これは本発明のコーティングを実質的に無水の状態に乾燥することにより達成することができる。好ましくは、フレーバーコーティングは約20重量パーセント未満の脂肪、好ましくは約10重量パーセント未満の脂肪、より好ましくは約5重量パーセント未満の脂肪を有する。特に、約3重量パーセント未満の脂肪が望ましい。例示的なコーティングは約1から2重量パーセントの脂肪を含むだけである。脂肪は本明細書に記載された成分から別々に添加されるが、コーティングは、好ましくはフレーバー剤、糖マトリックス、及び親水コロイド成分を含む微小球中に既に存在する脂肪を超えて添加される脂肪を含まない。好ましい一実施形態において、フレーバー剤、糖成分、微小球及びコーティングの他の成分はかかる材料中に本質的に存在する脂肪含量を最小限に又は回避するために選択される。存在する脂肪の含量は、好ましくはコーティング内に分散した方式で例えば微液滴として存在する。これらの微液滴は、好ましくは約3μm未満、好ましくは約1から3μmの平均サイズを有する。チョコレート様式のコーティングとして本発明は実質的に脂肪を含まず、表面の硬さ及び張力が固形脂肪の限定された硬さ及び張力によらないコーティングを例示する。したがって、現在、同じ(又はより優れた)機械強度を維持しながら、チョコレートを用いる実施可能なコーティングより薄いコーティングを使用することができる。例えば、コーティングの厚さは、従来のチョコレートコーティングの厚さの約95パーセント未満、好ましくは約90パーセント未満にすることができる。好ましくは本発明のコーティングの厚さは、従来のチョコレートコーティングの厚さの約10から50パーセント又は20から40パーセントにすることができる。例えば、コーティングは好ましくは約2mm未満の厚さ、好ましくは約1mm未満の厚さにし、糖ガラスの溶解、微小球の崩壊、及び所望であればコーティングの咀嚼を促進することができる。約0.1mmから0.8mm、好ましくは約0.1から0.5mmの厚さは同様に容易に達成できる。この薄いコーティングを提供する能力は、同様のチョコレート又はチョコレート類コーティングの利益を提供しながらコーティングの脂肪及びエネルギー含量を低減する、追加された利点を提供することができる。
【0033】
本発明のコーティングは、等重量の製品を基準に、典型的なミルクチョコレートに比べ、約10パーセント、好ましくは約20パーセント、及びより好ましくは約25パーセント低いエネルギーを供給する。一実施形態において、本発明のフレーバーコーティングはミルクチョコレートに比べ28パーセントのエネルギー削減、即ち、より低いカロリーを達成することができる。例えば、本発明のコーティングは、約450カロリー未満/100gミルクチョコレートコーティング、好ましくは約400カロリー未満/100g本発明のミルクチョコレートコーティングを有することができる。さらにエネルギーの削減は、スクロースを低エネルギーサッカライド又は糖アルコールで部分的に又は完全に置換することにより可能である。よく知られている高カロリー仕様のために、従来のチョコレート又はチョコレート類のコーティングにより以前には適切に被覆することができなかった、これまで被覆されていない健康食品又は低脂肪製品を含む従来の製品は、本発明のコーティングを用いて被覆することができる。驚くべきことに、得られた本発明のコーティングは、脂肪含量が約1から20パーセント、好ましくは約2から10パーセントのエネルギーのみを与えるコーティングを提供することができる。
【0034】
有利には、本発明の低脂肪フレーバーコーティングは、従来のチョコレートに比べ実質的に薄片がない。理論に拘束されることなく、破砕性(fracturability)は結晶化した脂肪に見られる滑り面により強調されていないと考えられる。このことは剥離の可能性を低下させる。また、本発明のコーティングは、典型的には約40℃までの熱帯気候の上昇した室温により軟化しない。それは口内の唾液又は他の水分との相互作用によってのみ、好ましくは唾液によってのみ軟化する。結果的に本発明のコーティングは、熱帯条件下でその望ましい摂食特性を保持し、指や衣服を汚すことがない。
【0035】
低脂肪フレーバーコーティングの製造方法も含まれる。代表的な方法は単に、選択されたフレーバーを提供するのに十分な量のフレーバー剤、複数の糖結晶及び糖ガラスを含む糖マトリックス、及び脂肪に似ており、且つ唾液と接触したときに分散を開始して、消費する間にココアバターの溶融に似た滑らかな口あたりを提供する乾燥親水コロイド成分を含む複数の微小球を合わせることと、フレーバー剤、糖マトリックス、及び微小球をミルクと合わせて、流動性の低脂肪フレーバーコーティングを形成することと、少なくとも実質的に無水の状態に乾燥して、非流動性の質感を有するコーティングを提供することを含み、ここで、低脂肪フレーバーコーティングは、分散した微液滴として存在する約10重量パーセント未満の脂肪を有する。該方法は、メッシュベルトを取り付けることにより改良した掛けもの機(enrober)を使用して複数の棒状菓子(candy bar)の中心を被覆し、除湿した空気が供給される冷却トンネルを用いることを含む。フレーバー剤は好ましくはココアである。フレーバー剤、糖マトリックス、複数の微小球、及び他の任意の成分とを混合し、完全なコーティングにより十分な分散を提供するのが好ましい。
【0036】
本発明の例示的な低脂肪チョコレート類フレーバーコーティングは、糖、コーンシロップ、ココア固形物及びチョコレートフレーバーと、デンプン、グアーガム及び卵白アルブミンを含む親水コロイド成分との混合物を含むことができる。これらの成分を適切な量の水又は全乳と混合し、コーティングは、その外観及び流れ特性において融解したチョコレートに似せることができる。乾燥工程を含むことにより、コーティングは通常チョコレートを掛ける菓子製品の被覆に用いることができる。得られた被覆された製品は、粘着性のないタンパク質、ガラス状糖粒子と個々の糖結晶との間に形成された滑らかな結晶糖鎖の乾燥したマトリックスを有する。脂肪は集団中に微液滴として微細に分割されている。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明に関する代表的な可能性を説明するものである。
【0038】
(実施例1)
本発明による潤滑性
アルギン酸塩ゲルの微小球は、高グルロン酸アルギン酸ナトリウム(guluronic acid sodium alginate)(0.6重量%)水溶液を塩化カルシウム(5重量%)の水溶液の浴中にスプレーすることにより調製した(ノズル参照番号1/4J8Cを有するSSスプレーシステムを使用した。)。ビーズの大きさは圧力を調整することにより制御することができ、塩化カルシウム浴にレシチン(0.2重量%)を添加し、ゲル微小球を形成する間表面張力の作用を最小にするのが有利であることを見出した。ビーズの大きさはMalvern粒子サイズ分析機を用いて測定した。1ミクロン及び5ミクロン微小球のほぼ同じ割合での混合物を調製するのが最適であることを見出した。
【0039】
擬似脂肪として量を減らしたココアバター及びアルギン酸塩微小球を用い、チョコレートチップを調製した。これらのチョコレートチップは焼いてクッキーにした。チョコレートチップの脂肪を5%のみに減らし、且つ微小球を19%添加することにより、外観及び感覚的魅力が最適となった。対照のチョコレートチップは24%のココアバターを有した。特に、本発明の親水コロイド成分及び微小球は油性特性、粘液性特性、又はその両方を与える。
【0040】
改良されたクッキーの官能特性及び口あたりは普通のクッキーと実質的に同じであり、本発明の親水コロイドマイクロビーズがチョコレート様式被覆製品における脂肪口あたりを与えることができることを確認した。
【0041】
(実施例2)
本発明による光沢
光沢のない外観はマイナスの品質として見られるので、光沢のある外観は従来のチョコレートの重要且つ望ましい特性である。光沢のある外観は、チョコレートの脂肪含量によって与えられる別の側面である。
【0042】
「光沢」は表面の凹凸の作用である。光沢のない又は光沢のある表面を有する種々の材料の表面の凹凸は、Dimension 3000 Scanning Probe Microscope (SPM)を用いてタッピングモードで調べた。SPMイメージは、典型的には高光沢表面が高粗度指数(high roughness index)を有するが、同時に図1に示すように、入射光に対し反射体として作用する多くの放物型凹部又は凹面を有することを明らかにした(この作用は「スパンコール現象(sequin phenomenon)と呼ばれる」。これに対し、SPMイメージは、光沢のない表面に対し、典型的には低粗度指数であるが、入射光に対しランダムに散乱させる多くの凸状の突起を明らかにした(図2及び3)。
【0043】
この観察に対する説明は塗料産業から得られる。光沢塗料は艶消し仕上げ塗料として同じ粒子サイズの分布を有することができる。しかし、主な違いは表面張力である。光沢塗料においてポリマーは表面張力を最大にするために用いられ、溶媒は設定した比率を制御するために特異的に選択される。当業者にとって、本明細書における教示に基づいて、ほとんどいずれの所望の程度の光沢度又は艶消度を生成する作用を制御することはかなり実際的なことである。
【0044】
(実施例3)
本発明による口あたりの制御
従来のチョコレートの魅力的な質感は、脂肪が口内で溶ける事実に依存する。ココアバターの6つの多形体(表1)のすべてが体温(37℃)以下で融解する。この固体から液体への状態の変化は咀嚼中において非常に望ましい。制御されたフレーバーの放出させるのに役立つ。また、口あたりの形成及び容易に嚥下するための塊の液化にも役立つ。
【0045】
口あたりの3つの段階が官能パネルにより同定され、測定された。
1)固体の感覚の喪失
2)ベルベットの感覚の発現
3)舌を被覆する感覚の消失
【0046】
1秒あたり1回歯を閉じる標準化した咀嚼方法を用い、及び5グラム重量の立方体片を用い、これらの3段階のそれぞれについて試料を評価した。標準誤差は標準物質を用い、被検体あたり30タイミングを基準に決定した。
【表2】

【0047】
口あたりの第3段階に対する親水コロイドの効果を説明するために、このようなタイミングに基づいて、チョコレート様式コーティングについて図4に示す範囲で変更した。
【0048】
チョコレート様式コーティングのシミュレートされた「融解」の間の口あたりは、成分が膨張及び融解の間の形状を変化させる様式を調整することにより制御可能であった。融解消失は、実際の脂肪の融解よりむしろ親水コロイドの溶液特性により影響された。特定の親水コロイド(球形の膨張剤、ホット、分離浸漬及び湿式粉砕タイプのゴム等を含む)を種々の質感上の要求を満たすために評価した。他のものが本発明における使用に完全に適していても、最適化はグアー、アルブミン、デンプン及びグルコースポリマー群からの選択によって得られた。例えば、唾液との接触により非常に速く膨張する親水コロイド粒子をコーティングの破壊を補助するために用いた。脂肪の油性の口あたりは糊状及び粘液性の組合せを創成することにより真似た。球状の膨張した親水コロイド構造をボールベアリング効果を創出するために用いた。
【0049】
(実施例4及び5)
本発明のダーク及びミルクチョコレート類コーティング
脆さを含む、チョコレートのフレーバー及び質感に非常に似たコーティングを与えることが見出された配合物の1つのセットを得た。「ダークチョコレート」及び「ライトチョコレート」タイプのコーティングの種類を表2に示す。
【0050】
表2.チョコレート様式コーティングの「ダークチョコレート」及び「ミルクチョコレート」バージョンの処方
【表3】

【0051】
(実施例6)
微生物の安定性
いくつかの本発明の乾燥コーティングの微生物学的分析により48時間後に以下の結果を得た。
【表4】

【0052】
これらの結果は微生物増殖の証拠がないことを示す。さらに乾燥コーティング(異なるセンターに適用する)の水の活量(a)が典型的には約0.45から0.55(乾燥状態による)−病原菌の増殖については最小値aのはるかに下であった。
【0053】
(実施例7)
コーティングの栄養学上の利点−低エネルギー、低脂肪
エネルギー(カロリー)の評価は、本発明のチョコレート類コーティング、ダーク又はライトと、ダークチョコレート及びミルクチョコレートとの比較により表3に示す。本発明のチョコレートコーティングはミルクチョコレートに比べ約28パーセントエネルギーが少ない。また、栄養学的観点から顕著なことは、従来のミルクチョコレートのおよそ57パーセントが脂肪由来であるのと比較し、コーティングからのエネルギーの約4パーセントのみが脂肪由来である。
【0054】
表2の処方に用いられているスクロースに対する低エネルギーサッカライド又は糖アルコールの一部又は完全な置換により、さらにエネルギーの低減が可能である。いくつかの例を表4に示す。
【0055】
表3.チョコレート様式コーティングと従来のチョコレートのエネルギー比較
【表5】

【0056】
表4.スクロースに対する糖アルコールの100パーセントの置換により調製されたチョコレート様式コーティングのエネルギー比較
【表6】

【0057】
(実施例8)
本発明の低脂肪ミルクチョコレートコーディング
成分(グラム)を以下に示す:
スクロース 700
コーンシロップ(42DE、80%TSS) 180
全液体乳 (約)150
ココア 50
コーンスターチ 20
フレーバー 17
アルブミン 8.3
グアーガム 5
【0058】
1.乾燥成分を完全に混合する。コーンシロップ、フレーバー及び約4分の1のミルクをプラネタリーミキサー中に入れ、混合する。乾燥成分を適正な粘度が得られるまで段階的に加え、徐々により多くのミルクと混合する。
2.混合は低速度で約3分間撹拌することにより行った。完全な混合(塊及び筋を最小限にするか回避する)を確実にするために注意を要する。空気の混入は有害であり、且つ事前結晶化(pre−crystallization)の原因となり得るため、過剰な混合速度を回避しなければならない。低脂肪ミルクチョコレートコーティングの調製を得る。
3.低脂肪ミルクチョコレートコーティングの調製は、菓子製品の上から掛けるか、たたき、次いで空気流中で、理想的には低湿度で乾燥する。
【0059】
(実施例9)
本発明の低脂肪ダークチョコレートコーティング
成分(グラム)を以下に示す:
スクロース 650
コーンシロップ(42DE、80%TSS) 180
全液体乳 (約)150
ココア 100
コーンスターチ 20
フレーバー 17
アルブミン 8.3
グアーガム 5
【0060】
本発明による低脂肪ダークチョコレートコーティングを提供するために先に記載したように乾燥及び湿潤成分を混合し、使用する。
【0061】
(実施例10)
本発明の低脂肪チョコレートコーティング
以下の成分(先の実施例と同一の仕様)を乾燥混合する:
スクロース 16kg
ココア 2.5kg
スターチ 500g
アルブミン 200g
グアー 125g
【0062】
以下の成分(同様に先の実施例と同一の仕様)をプラネタリーミキサー中に入れる。
コーンシロップ 4.5kg
フレーバー 200g
【0063】
混合は3.75リットルの液体全乳を用いて調製する。約4分の1のミルクをコーンシロップ及びフレーバーとプラネタリーミキサー中で混合する。乾燥成分及び残りのミルクを段階的に加え、確実に完全に混合する。水(500ml)を加え、掛けるのに適当と判断される粘度にする。
【0064】
混合物をデンマークFurnumのAE Nielsen/Maskinfabrickから商業的に入手できるニールセンエンローバー、Babyflexモデルに移し、PayDay(登録商標)バーに掛けるのに用いた。それは通常の液体チョコレートと同じ方法によりこの目的のために機能させた。
【0065】
(実施例11)
本発明の無脂肪チョコレートコーティング
以下の成分を乾燥混合した。
【表7】

【0066】
混合した乾燥成分はさらに本発明に従って調製した。
【0067】
(実施例12)
ソルビトールを有する本発明の低脂肪ダークチョコレートコーティング
成分(グラム)を以下に示す。
ソルビトール 650
コーンシロップ(42DE、80%TSS) 180
全液体乳 150
ココア 100
コーンスターチ 20
フレーバー 17
アルブミン 8.3
グアーガム 5
【0068】
本発明による低脂肪ダークチョコレートコーティングを提供するために先に記載したように乾燥及び湿潤成分を混合する。
【0069】
(実施例13及び14)
実施例4(ダーク外観)及び実施例5(ミルク外観)の低脂肪調製物を(乾燥せずに)用いた。これらの調製物を浸漬タンク内に載置した。通常アイスクリーム製品(棒状物)を液体窒素中に1秒間浸漬することにより表面温度が−15Cになるように凍らせた。これらの棒状物を低脂肪調製物中に挿入した。棒状物をコーティング中に没入させて2秒間保持してから引き出した。(単位操作間の短時間の移送の間の低脂肪コーティングの望ましくない流動を防止するため)被覆された棒状物を液体窒素中に2秒間浸漬した。次に棒状物を(遠隔凝縮装置を備えた)送風冷凍庫中、乾燥空気循環に30分間に曝し、−32Cで操作した。これにより硬化工程を完了した。
【0070】
(実施例15及び16)
実施例4(ダーク外観)及び実施例5(ミルク外観)の低脂肪調製物を(乾燥せずに)用いた。通常のアイスクリームの型を塩水浴中で内部表面温度−40Cに事前冷却した。低脂肪調製物をこれらの型の中に充填率95%になるまで注いだ。調製物は低脂肪調製物の凍結した外皮の裏張りが型の内面に形成されるまで型の中に保持した。種々の厚さの外皮は保持時間を変えることにより得ることができる。残存する低脂肪流体調製物を実質的に吸引除去するために真空ラインを用いた。通常のアイスクリームを型の中に導入し、アイスクリームの堅さにより判断した適当な時間に棒を挿入した。
【0071】
次に、型を+27Cの温水浴に約15秒間挿入した。(型の内側表面に接した)棒状物の表面が解凍し始めたときに棒を引っ張り上げることにより生成物(棒状物)を型から外した。棒状物は(遠隔凝縮装置を備えた)送風冷凍庫中、乾燥空気循環に30分間に曝し、−32Cで操作した。これにより硬化工程を完了した。
【0072】
用語「約」は、本明細書において使用するとき、一般に数値範囲における両方の数字を示すと理解すべきである。さらに、本明細書におけるすべての数値範囲は範囲内のすべての整数のそれぞれを含むと解すべきである。
【0073】
用語「乾燥」は、本明細書において使用するとき、親水コロイド成分に用いられる非水の親水コロイドに水が添加されないことを意味すると解すべきである。したがって、コーティング中のどこかに水が存在する可能性があるとしても、微小球には水が添加されていない。コーティング中の親水コロイドは好ましくは約5重量パーセント未満、より好ましくは約0.5重量パーセント未満の水含量を有する。
【0074】
用語「実質的に無水」は、本明細書において使用するとき、典型的には約15重量パーセント未満の水、好ましくは約3重量パーセント未満、及びより好ましくは約2重量パーセント未満の水が本発明の最終コーティング中に含まれていることを意味する。この用語は完全に無水、大気中からの痕跡量の存在を除いて水のない、即ち、成分が添加された水を有さないことを含む。
【0075】
用語「低脂肪」は、本明細書において使用するとき、(a)従来のコーティング及び特にチョコレートコーティング又はそれらの類似物と比較し、脂肪、カロリー、又は両方が低減されている、及び(b)添加された脂肪を含まないことを意味する。
【0076】
本発明の好ましい実施形態が上記の説明に記載されているとはいえ、本発明は本明細書に開示された特定の実施形態に限定されないが、当業者によって多くの改良が可能であると解する。本発明によって開示され、教示された方法及び組成物から離れることなく、使用される材料及び化学的な詳細は本明細書の記載とわずかに異なるか又は改良することが可能であると解する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明のコーティングにより提供される、高光沢を有する、異なる光沢レベルを示す図である。
【図2】光沢のない及び光沢のあるコーティング表面の凹凸の同一の倍率での原子間力顕微鏡イメージを示す図である。
【図3】光沢のない及び光沢のあるコーティング表面の凹凸の同一の倍率での原子間力顕微鏡イメージを示す図である。
【図4】本発明による口あたりの3つの段階における親水コロイドの効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低脂肪フレーバーコーティングであって、
選択されたフレーバーを提供するのに十分な量のフレーバー剤、
約40℃未満の温度で流動性を抑制するのに十分な構造上の完全性を有する前記コーティングを提供するのに有効な量の糖結晶及び糖ガラスの糖マトリックス、並びに
脂肪に似ており、且つ唾液と接触したときに分散を開始して、チョコレートを消費する間のココアバターの溶融に似た滑らかな口あたりを提供する、フレーバー剤及び糖マトリックスを介して分散した乾燥親水コロイド成分を含む複数の微小球
を含み、前記フレーバーコーティングは少なくとも実質的に無水であり、且つ約10重量パーセント未満の脂肪を有し、前記脂肪は前記コーティング中に分散した微液滴として存在する、低脂肪フレーバーコーティング。
【請求項2】
前記親水コロイド成分が、少なくとも1つの単離されたタンパク質様物質、ガラクトマンナン、若しくは粒状デンプン、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項3】
前記親水コロイド成分が、卵白アルブミン、乳漿タンパク質分離物、大豆タンパク質分離物、カゼイン、カゼインナトリウム、グアーガム、ローカストビーンガム、フェヌグリークガム、タラガム、アラビアゴム、コーンスターチ、ポテトスターチ、小麦デンプン、タピオカデンプン、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項4】
前記親水コロイド成分が、グアーガム、卵白アルブミン、及び少なくとも1種のデンプンを含む、請求項3に記載のフレーバーコーティング。
【請求項5】
前記親水コロイド成分が、1種又は複数の非架橋性親水コロイドを含む、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項6】
前記親水コロイド成分が、約36℃から38℃で唾液に溶解する、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項7】
前記微小球が、消費者の口に触れて膨張し、前記親水コロイド成分の一部を放出して、それを崩壊させる、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項8】
前記コーティングが光沢を有し、チョコレートが口どけするのに要する時間の約80から120パーセントの時間で前記分散した親水コロイド成分が口どけする、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項9】
前記糖マトリックスが、スクロース、グルコース、フルクトース、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリトリトール、ラクチトール、ポリデキストロース、マルトデキストリン、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項10】
前記糖マトリックスが、コーンシロップ及び粉末スクロースを含む、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項11】
約3重量パーセント未満の含水量を有するミルク成分をさらに含む、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項12】
前記フレーバー剤がココアを含む、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項13】
前記ココアの一部がアルカリ化したココアである、請求項12に記載のフレーバーコーティング。
【請求項14】
水の活量が約0.45から0.55である、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項15】
前記コーティングが無水である、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項16】
前記コーティングが、冷蔵なしで少なくとも約3年の貯蔵寿命を有する、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項17】
前記コーティングが、周囲環境においてヒトの手の上に肉眼で検出可能な量のコーティングを残さない、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項18】
前記コーティングが粒度増大剤を実質的に有さない、請求項1に記載のフレーバーコーティング。
【請求項19】
請求項1に記載の低脂肪フレーバーコーティングを菓子製品の一部の上に配置すること、及び前記フレーバーコーティングを乾燥して少なくとも実質的に無水の状態にすることを含む、菓子製品をコーティングする方法。
【請求項20】
低脂肪フレーバーコーティングの製造方法であって、
選択されたフレーバーを提供するのに十分な量のフレーバー剤、複数の糖結晶及び糖ガラスから形成された糖マトリックス、並びに脂肪に似ており、且つ唾液と接触したときに分散を開始して、消費する間にココアバターの溶融に似た滑らかな口あたりを提供する、乾燥親水コロイド成分を含む複数の微小球を合わせることと、
前記フレーバー剤、糖マトリックス、及び微小球をミルクと合わせて、流動性の低脂肪フレーバーコーティングを形成することと、
少なくとも実質的に無水の形態に乾燥して、非流動性の質感を有する前記コーティングを提供すること
を含み、前記低脂肪フレーバーコーティングは、分散した微液滴として存在する約10重量パーセント未満の脂肪を有する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−512822(P2007−512822A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541862(P2006−541862)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013567
【国際公開番号】WO2005/053418
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】