説明

低酸ポリブチレンテレフタレートの調製、および低酸ポリブチレンテレフタレートからの大環状ポリエステルオリゴマーの調製

本発明は、大環状ポリエステルオリゴマー(MPO)を製造するためのプロセスに関し、少なくとも5つの技術的進歩を特徴とする。第一に、低酸ポリアルキレンテレフタレート、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)を製造するための方法およびシステムを提供する。第二に、低酸ポリアルキレンテレフタレートからMPOを調製するための方法およびシステムを提供する。第三に、有機溶媒中でジオールとジアルキルエステルとを反応させて非単離、低酸ポリアルキレンテレフタレートを形成し、それを環化(解重合)に付してMPOを形成することによる、MPOを調製する方法およびシステムを提供する。第四に、解重合プロセスストリームから触媒残渣を除去するための方法およびシステムを提供する。第五に、MPOの製造の際に残留オリゴマー再循環物を使用するための方法およびシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2005年3月25日に出願された米国仮特許出願第60/665,648号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/665,648号は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、ポリエステルを調製するための方法に関する。より詳細には、一定の実施形態において、本発明は、低酸ポリブチレンテレフタレートを調製するための方法、ならびに低酸ポリブチレンテレフタレートから大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、加工して自動車、電機および工業用の部品を製造することができる、広く用いられている高性能エンジニアリングレジンである。PBTを製造するための工業プロセスは、典型的に、エステル交換反応および重縮合反応を行うための一連の反応装置を含む。
【0004】
PBTの製造におけるエステル交換段階は、一般に、触媒の存在下、高温(すなわち、190℃)で、ジメチルテレフタレート(DMT)を過剰な1,4−ブタンジオール(BDO)と反応させて、ビスヒドロキシブチルテレフタレート(BDOエステル)と他の化合物とを形成することを含み、例えば、次のように反応1に示すとおり:
【0005】
【化1】

反応1は、平衡反応であり、生成されたメタノールを除去することによって前に進ませる。
【0006】
PBTの製造における重縮合工程は、エステル交換反応生成物を重合させるために熱および真空の使用を含む。エステル交換生成物、例えば、反応1から形成されるBDOエステルは、例えば次のとおり反応2に示すように、触媒の存在下、高温(すなわち、240℃)で重合してPBTを形成する:
【0007】
【化2】

この重縮合反応は、平衡反応であり、生成されたBDOを除去することによって前に進ませる。
【0008】
望ましくない副反応が、PBTを製造するためのエステル交換/重縮合プロセスにおいて発生する。例えば、次のとおり、例としての反応3および4に示すように:
【0009】
【化3】

ある有意な副反応により、テトラヒドロフラン(THF)が形成される。THFの形成は、望ましくない。なぜなら、反応3からわかるように、BDOが反応してTHFを形成し、その結果、PBTに転化されるBDOの量が減少するからである。反応3は、BDOの濃度が高い場合には重合の初期段階で発生する。重合の後期段階の間に、高い処理温度が、末端にBDOを有するポリマー末端基からのTHFの生成を促進し、その結果、反応4からわかるように、末端に酸を有するPBT鎖末端の濃度がより高くなる。反応4は、THF形成と、生成されるPBTの末端に酸を有する鎖末端の濃度との関連も示している。末端に酸を有する鎖末端は、この経路によって形成されるTHFの各分子について生成されるからである。
【0010】
最終PBTポリマー中の酸基は、ポリマーの特性、例えば、加水分解および溶融安定性に悪影響を及ぼすことがあるため、望ましくない。高い酸含有率は、射出成形または他のポリマー加工の間にPBTが金属と接触する際、腐食問題ももたらす。大環状ポリエステルオリゴマーを形成するための高酸PBTの解重合に関してのさらなる短所は、本明細書において後で説明する。
【0011】
PBTを製造するための典型的な工業プロセスは、原料および製品を取り扱うための単位操作、ならびにエステル交換、予備重縮合、重縮合および固相重合を行うための一連の反応装置を含む。エステル交換は、一段反応装置で行われることもあり、多段反応装置で行われることもある。DMTおよびBDOは、それらを反応装置に供給するにつれて、混合および加熱される。反応混合物の気泡(boils)がメタノールおよびTHFとして生成される。そのメタノール蒸気は、コンデンサで凝縮され、回収される。
【0012】
典型的には、次に、高温および低圧(すなわち、真空)で操作する1つまたはそれ以上の反応装置を使用して予備重縮合工程が行われる。予備重合工程では、重合(すなわち、反応2)の間に生成されたBDOが、熱および真空を用いて除去される。BDOとメタノールの最終痕跡とが、コンデンサを使用して回収される。ポンプが溶融ポリマーをミキサーに進め、そこで安定剤および添加剤が導入され得る。
【0013】
重縮合は、溶融重合の最終段階である。重縮合は、重合を駆動させるBDOの除去を助長するために特別な反応装置、例えば、Vicker−Zimmer反応装置などの回転ディスク反応装置を必要とする。重縮合反応装置は、継続的に更新される大量の表面積を提供することによりBDOを除去するように設計される。典型的に、BDOは、PBT生成物の分子量を増やすために除去される。
【0014】
固相重合工程を溶融重合後に行って、PBTの分子量を増加させることができる。固相重合は、重縮合工程において生成されたポリマーをペレット化すること、およびそれらのペレットを結晶化が起こるまで固定層で加熱することを含む。その後、そのポリマーを高温(すなわち、200℃)で維持し、この間、その固定層に不活性ガス流を通して、重合の間に形成されたBDOを運び去る。この固相重合工程には、最大で18時間またはそれより長くかかることがある。
【0015】
PBTの工業製造プロセスは、費用がかかる。エステル交換、予備重縮合、重縮合および固相重合に必要とされる特別な反応装置のため、資本経費が高い。例えば、エステル交換反応装置は、反応体DMTの昇華を最小にするように設計しなければならず、予備重合反応装置は、高温および高真空(低圧)で動作するように設計しなければならず、ならびに重縮合反応装置は、重合の間にBDOを除去するために継続的に更新される表面積を提供するように設計しなければならない。反応装置の高温および低圧を維持する費用、必要な触媒の費用および例えばTHFとしてのBDOの損失に起因する反応体の不十分な転化をはじめとする様々な要因のため、加工費も高い。
【0016】
PBTを製造する際のTHF形成を減少させる方法が提案されている。例えば、Yuoらによる特許文献1およびYuoらによる特許文献2には、重縮合を加速させるための多成分触媒系の使用が記載されている。これらの特許には、テトラブチルチタネートまたはテトライソプロピルチタネートと一緒に共触媒としてアルキル金属リン酸塩を使用することが、DMTからPBTを調製する際に、THF形成を減少させることが示唆されている。THF形成を減少させるための別の方法が、非特許文献1に記載されている。この論文は、PBT製造時に形成されるTHFの量を低下させるためのカリウムおよびナトリウム塩の使用を提案している。この論文には、PBTを製造するためにBDOとテレフタル酸(TPA)との直接反応と共にこの技法を適用することが記載されている。TAPは昇華し、蒸留により容易に精製できないので、TPAとの直接エステル交換を伴う工業的応用には特別な装置が必要である。
【0017】
工業的改良にもかかわらず、典型的に、現在の工業PBT製造プロセスでは、反応体BDOの有意な割合(すなわち、3重量%)が、THFとして喪失される。
【0018】
さらに、商業用に製造されているPBTは、高い酸含有率を有する。PBTの酸濃度を減少させるための様々な方法が提案されている。例えば、ジエポキシドを使用して、PBTの酸含有率を44mmol/kgから10mmol/kgに減少させた。非特許文献2を参照。PBTの酸含有率を低下させるための別の方法が、Brauneによる米国特許第5,854,377号に記載されている。この特許には、PBT中の酸基の濃度を減少させるためのアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の使用が記載されている。PBT中の酸基を減少させる別の提案されている方法は、最終重縮合の直前にジオールを添加して、末端カルボン酸基と直接反応させる方法である。しかし、ジオールの添加は、重合反応速度を低下させることがあり、またはその反応を逆行させることさえあり、その結果、より低い分子量のポリマーを生じさせることがある。
【0019】
工業的改良にもかかわらず、商業用に製造されているPBTは、典型的に、約35ミリ当量/kgより高い酸濃度を有するが、一部の特製PBTは、7ミリ当量/kgほどの低さの酸含有率を有する。市販されている様々な高品位PBTとしては、マサチューセッツ州、ピッツフィールドのGE Plasticsにより製造されているValox(登録商標)315(38ミリ当量・酸/kg)、ミシガン州、ワイアンドットのBASF Corporationによって製造されているUltradur(登録商標)B6550(19ミリ当量・酸/kg)、およびノースカロライナ州、シェルビーのTicona Engineering Polymersによって製造されているCelanex(登録商標)2001(7ミリ当量/kg)が挙げられる。Valox(登録商標)315およびUltradur(登録商標)B6550は、溶融重合PBTであり、一方、Celanex(登録商標)2001は、固相重合PBTである。
【0020】
PBTを解重合して、例えば環状形態のポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(cPBT)をはじめとする大環状ポリエステルオリゴマー(MPO)を形成することができる。MPOは、エンジニアリングサーモプラスチック複合材用のマトリックス形成樹脂としてそれらを魅力あるものにしているユニークな特性を有する。MPOは、重合生成物に価値のある特性、例えば、高強度、高光沢および耐溶媒性を加える。さらに、あるMPOは、得られるポリマーの融点より十分に低い温度で溶融および重合するので、適切な触媒の存在下でMPOを溶融すると重合および結晶化が実質的に等温で発生し得る。重合後、先ず金型を冷却するのではなく、直ちに成形品の取り出しを行うことができるので、用具を熱的に循環させるために必要な時間および費用が好適に低減される。
【0021】
ポリエステルを解重合することによる様々なMPO調製方法が記載されている。例えば、Burnelleらによる共有の特許文献3、Brunelleらによる特許文献4、Brunelleらによる特許文献5、Brunelleらによる特許文献6、Falerによる特許文献7およびPhelpsらによる特許文献8を参照。これらの原文は、すべて、それらの全体が本明細書に参考として取り入れられている。
【0022】
cPBTへの市販PBTの解重合は、典型的に、高い触媒濃度を必要とする。例えば、上述のBrunelleらによる特許文献6には、ポリエステルモノマー単位の総モル数を基準にして約1.0から約5.0モルパーセントのチタン触媒を使用するPBTの解重合が記載されている。この解重合反応は、典型的に、比較的ゆっくりと進行し、ヒドロキシブチルエステル線状オリゴマーをはじめとする望ましくない副生成物を生じさせ、それらは生成物ストリームから分離される。典型的に、これらの副生成物は、本来ゲル様(gellular)であり、物理的に除去することが難しい。
【0023】
さらに、例えば、アルミナ充填カラムを使用する、費用の嵩む処理によって、典型的に、残留酸がcPBT生成物ストリームから除去される。存在する酸が多いほど、処理の費用が嵩む。最後に、cPBTへの解重合に適する市販PBTは、その製造に関係する費用に一部起因して、費用が嵩む。
【0024】
従って、cPBTの有効な製造には、費用の嵩まない出発原料が必要とされている。より低い酸末端基濃度を有するPBTも必要とされている。さらに、PBTをその環状形態に解重合するための、より速い、より効率的な、より費用の嵩まない方法が必要とされている。
【特許文献1】米国特許第5,516,879号明細書
【特許文献2】米国特許第5,519,108号明細書
【特許文献3】米国特許第5,039,783号明細書
【特許文献4】米国特許第5,231,161号明細書
【特許文献5】米国特許第5,407,984号明細書
【特許文献6】米国特許第5,668,186号明細書
【特許文献7】米国特許第6,525,164号明細書
【特許文献8】米国特許第6,787,632号明細書
【非特許文献1】ChangおよびTsai、「Effect of salts on the formation of THF in preparation of PBT by TPA process」、Appl.Polym.Sci.,45(2),pp.371−373(1992)
【非特許文献2】Gooijerら,「Carboxylic acid end group modification of poly(butylene terephthalate)in supercritical fluids」,Polymer,44(8),pp.2201−2211(2003)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0025】
1つの態様において、本発明は、低酸ポリアルキレンテレフタレート、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)を製造するための方法およびシステムに関する。有機溶媒中でのジオールとジアルキルエステルとの反応により、非常に低い酸濃度を有するポリマーを生成させる。
【0026】
本発明は、低酸ポリアルキレンテレフタレートから大環状ポリエステルオリゴマー(MPO)を調製するための方法およびシステムにも関する。低い酸濃度を有するポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって、高品質のMPOを効率的に製造することができる。低酸ポリアルキレンテレフタレートの解重合は、より酸濃度の高いポリアルキレンテレフタレートの解重合より、必要とされる触媒が少なく、速く平衡に進む。
【0027】
さらに、本発明は、有機溶媒中でジオールとジアルキルエステルとを反応させて、低酸ポリアルキレンテレフタレートを形成し、それを解重合/環化に付してMPOを形成することによる、MPOを調製するための方法およびシステムにも関する。この低酸ポリアルキレンテレフタレートは、MPOを形成するための解重合の前に単離する必要がなく、その結果、装置および加工費用を低減し、プロセス効率を上げる。
【0028】
最後に、本発明は、解重合プロセスストリームから触媒残渣を除去するための方法およびシステム、ならびにMPOを製造する際に残留オリゴマー再循環物を使用するための方法およびシステムに関する。
【0029】
低酸PBTは、触媒の存在下、有機溶媒−例えば、オルト−ジクロロベンゼン(oDCB)−中でブタンジオール(BDO)とジメチルテレフタレート(DMT)とを反応させることによって製造することができる。この反応は、高熱および真空の適用を必要とせず、ほぼ大気圧(または大気圧より高い圧力)で、かつ240℃未満、好ましくは約200℃未満および好ましくは溶媒のほぼ沸点の温度で行うことができる。本発明の1つの実施形態は、2ミリ当量/kgより低い酸濃度を有するPBT生成物を提供する。さらに、本発明の溶液重合法によって用いることができる有効触媒濃度の範囲は、より広い。1つの実施形態では、工業的溶融PBT生産において用いられている触媒のレベルとほぼ同じ触媒レベルを溶液重合において用いて低酸PBTを製造する。
【0030】
有機溶媒中、ほぼ大気圧(またはそれ以上)および240℃未満の温度でのBDOとDMTとの反応によるPBTの生成は、テトラヒドロフラン(THF)を生成させる副反応の抑制に少なくとも一部は起因して、BDO使用効率の大きな改善(PBTへのBDOの転化率改善)をもたらす。例えば、1つの実施形態によると、従来の工業法による3重量%に対し、THFとして喪失されるのは、0.3重量%未満である。
【0031】
本発明の実施形態は、低酸ポリアルキレンテレフタレートを製造するためのプロセスにおいて、エステル交換工程および重縮合工程のうちの一方もしくは両方、またはエステル交換/重縮合複合工程を行うために用いることができる。例えば、本発明のある実施形態は、oDCB中、触媒の存在下、大気圧および約200℃未満の温度でBDOとDMTとを反応させて、エステル交換によりビスヒドロキシブチルテレフタレート(BDOエステル)を生成させることならびに/または重縮合によりPBTを生成させることを含む。様々な実施形態が、次の工程のうちの1つまたはそれ以上を含む:溶液エステル交換工程の実施、溶液重縮合工程の実施、大気圧(もしくはそれ以上)での重縮合の実施、または240℃を超えない温度での重縮合の実施。別の実施形態において、本発明の方法は、より高い温度(すなわち、240℃より高温)および/または真空を利用する従来の予備重縮合工程、重縮合工程および/または固相重合工程によって補足される。エステル交換工程および/または重縮合工程は、一段またはそれ以上で行うことができ、それらは、いずれも、大気圧、大気圧より高圧、または大気圧より低圧で行うことができる。エステル交換工程および/または重縮合工程は、例えば、約100℃より高い、約120℃より高い、約140℃より高い、約160℃より高い、約180℃より高い、約200℃より高い、約220℃より高い、約240℃より高い、約260℃より高い、約280℃より高い、約300℃より低い、約280℃より低い、約260℃より低い、約240℃より低い、約220℃より低い、約200℃より低い、約180℃より低い、または約160℃より低い温度で行うことができる。温度の選択は、例えば、使用される特定の反応体、触媒(単数または複数)および溶媒(単数または複数)のタイプおよび量に依存するであろう。
【0032】
本発明の方法は、従来のPBT製造プロセスに付随する資本経費の有意な低減をもたらす。例えば、より低い温度で反応を行うため、反応体DMTの昇華を最小にするための特別な反応装置を必要としない。さらに、本発明の1つの実施形態によると、重縮合工程を少なくとも一部は大気圧で行うことができるため、低圧反応装置が不要であるか、あるいは既存のPBT製造プロセスにおける1つもしくはそれ以上の低圧反応装置を削除することができる。また、1つの実施形態では、PBT製造プロセスにおけるエステル交換および重縮合工程を、単一の反応容器を使用して行う。対照的に、一部の商業用PBT製造プロセスは、エステル交換および重縮合工程を行うために一連の5つまたはそれ以上の反応装置を使用する。さらに、より低い温度で反応を行うことができるので、本発明は、エネルギー必要量が低減されたシステムを提供する。
【0033】
本発明の方法によって製造される低酸PBTは、改善された特性を示すことができ、かつ、射出成形または他のプロセス用途に使用されるときの腐食問題を低減させる。本発明の溶液重合法によって製造される低酸PBTは、押出、成形または他のポリマー加工中の酸の発生を防止するために従来の方法を用いて安定化することができる。本発明のある実施形態は、他の方法によって達成することができない酸濃度を有するPBTを提供する。
【0034】
本発明によって生成される低酸PBTを解重合して、環状形態のPBT(cPBT)を作ることができる。本低酸PBTの解重合(環化)は、市販のPBTの解重合より、必要とされる触媒が少なく、速く平衡に達する(すなわち、cPBTへのPBTの初期転化速度が速い)。市販のPBTの酸含有率は、cPBTを形成するための解重合反応における触媒の活性に干渉し、その結果、より大量の触媒の使用が必要となると考えられる。低酸PBTの製造および使用に関する総合的特徴をcPBT調製方法に相乗的に活用し、この場合、BDOとDMTとを溶媒中で反応させて低酸、非単離PBTを作り、それを直接解重合してcPBTを形成する。
【0035】
別の態様おいて、本発明は、触媒残渣の除去の向上に関する。ここで、本発明は、水で失活(water quench)させずに解重合生成物ストリームから触媒残渣を選択的に除去するための方法およびシステム、ならびに残留線状オリゴマーのその後の回収のための方法およびシステムに関する。有利なことに、その後、その実質的に無金属かつ実質的に無水の残留オリゴマー副生成物は、MPOを調製するためのプロセスにおいて再循環物として使用することができる。例えば、この残留オリゴマー再循環物は、低酸ポリエステルの重合およびその後の解重合(環化)において反応体として使用して、MPOを形成することができる。
【0036】
金属含有触媒、例えば有機チタネート触媒は、十分な時間、十分な温度の熱に曝露すると、水での失活を必要とせずに、有機溶媒中で可溶性形態(均一触媒)から不溶性形態(不均一触媒)に移行する。有利なことに、MPOを形成するための溶媒中でのポリエステルの解重合にこれを適用することができる。例えば、オルト−ジクロロベンゼン溶媒(oDCB)に溶解したチタン触媒を含有する解重合反応混合物を、約245℃より高温で約15から30分間保持すると、結果として、不溶性加水分解チタン含有化合物の沈殿が生じる。その後、この沈殿したチタン含有材料は、任意の適切な分離技術(単数または複数)、例えば濾過、遠心分離および/またはデカンテーションによって除去することができ、それによって残留線状オリゴマーのその後の濃縮および再使用ならびに/またはMPO生成物の単離を促進することができる。沈殿した触媒化学種を除去した後、その混合物は、溶媒中の残留線状オリゴマーおよび/またはMPOを含有する。この混合物は、チタン触媒残渣を、それを除去したので、実質的に含有しない。従って、低酸ポリエステルを生成させ、解重合してMPOを形成するためのプロセスに、その残留線状オリゴマーを再循環させることができ、プロセスストリーム中の触媒材料を増加させない。あるいは、残留線状オリゴマーを解重合プロセスから除去し、後の使用のために、実質的に触媒残渣を含まない状態に保つことができる。
【0037】
解重合生成物ストリームから触媒残渣を選択的に、すなわち沈殿により、除去することが有益であり得る。しかし、以前の金属含有触媒沈殿方法は、水の添加を必要とする。しかし、一般には水の存在を最小にすることが望ましい。本発明の実施形態は、解重合反応混合物から触媒化合物を沈殿させるための水の添加の必要をうまく回避する。これは、別途の水添加工程を不要にさせるためばかりでなく、例えば再循環ストリームを利用する場合、後で除去する必要があり得る水と解重合反応混合物とが接触しないため有益である。
【0038】
上で参照した米国特許第5,668,186号には、実質的に酸素および水を含まない有機溶媒中で触媒にポリマーを曝露することによる、MPOを製造するためのポリエステルの解重合プロセスが記載されている。例えば、スパージングを行うことができ、この場合、窒素などの不活性ガスを有機溶媒中にバブリングして、存在し得る酸素および水を追い出し、それによって溶媒を実質的に乾燥させ、実質的に酸素不含にする。例えば、実質的に水および酸素を含まない溶媒は、約15ppmまたはそれ以下の水濃度および約10ppmまたはそれ以下の分子酸素濃度を有し得る。溶媒の使用前の水および酸素の除去により、重合を高温で行うことができる。より高い温度での解重合反応の遂行は、溶液から沈降する、末端にカルボン酸を有するオリゴマーおよびテトラヒドロフラン副生成物をはじめとする不溶性副生成物の形成増加を招き、その結果、実質的に純粋なMPOの製造および回収を向上する。
【0039】
ポリエステルの環化の際に副生成物として形成する残留線状オリゴマーは、MPOを製造するための重合および解重合/環化・複合プロセスに再循環させることができる。再循環ストリームは、金属含有触媒化合物を実質的に含まないのが好ましい。1つの実施形態において、再循環ストリームが実質的に水を含まないことも好ましい。本発明の実施形態は、水の添加を伴わずに再循環ストリームから触媒残渣を除去することができ、その結果、再循環ストリーム中の水を除去するための水除去工程および/または追加のスパージングを回避することができる。
【0040】
触媒の増加は、MPOを形成するための解重合反応では避けるべきである。実際、触媒の増加は、低酸ポリエステル中間体からMPOを形成するための重合および解重合/環化・複合プロセスの重合期と解重合期との両方において避けるべきである。
【0041】
こうした複合プロセスの重合期に関して、低酸ポリエステルは、有機溶媒−例えば、oDCB−中、触媒の存在下、約200℃、大気圧下で、ジオールとジアルキルテレフタレートとを反応させることによって製造することができる。必要とされる触媒の量は、有機溶媒を使用しない典型的な重合よりかなり少ない。重合の間に形成される残留酸のレベルを、例えば約90%以下減少させ、それによって精製費用を減少させる。さらに、低酸ポリエステルの解重合(環化)は、より酸濃度の高いポリマーの解重合より、必要とされる触媒が少なく、速く平衡に達する(すなわち、ポリエステルのその環状形態への初期転化速度が速い)ことを発見した。従って、本発明の実施形態は、低酸ポリエステルを形成するための重合の間も、低酸ポリエステルのその環状形態を生成するための解重合の間も、より低い触媒濃度を使用する能力をもたらす。
【0042】
より少ない触媒の使用は、費用節約ならびに他の利点をもたらす。重合工程と解重合(環化)工程とのいずれかまたは両方でのより低い触媒濃度の使用は、形成される残留オリゴマーの量を減少させ、その結果、分離および濾過処理費用を減少させる。さらに、例えばcPBTを形成するためのPBTの環化において、低い触媒濃度を用いるとき、残留オリゴマー濾液は、然程ゲル様ではなく、より容易に生成物ストリームから除去される。これは、MPO製造プロセスにおける工業用濾過装置に関連するサイズおよび維持費用を減少させる。加えて、より少ない触媒を使用するプロセスから形成されるMPOから製造されたポリマーは、別様に生成されたMPOから製造されたポリマーより、低い不純物レベルおよび改善された物理的特性を示し得る。
【0043】
従って、MPOを形成するための重合および解重合/環化・複合プロセスの重合期と解重合期との両方において触媒を増加させないようにすることが有益である。残留線状オリゴマーを再循環させる場合にそうでなければ発生するであろう触媒の増加が、本発明の方法により線状オリゴマーを含有するストリームを処理して金属含有化合物を除去することによって、防止または低減される。このように、本発明の方法は、線状オリゴマーの再循環を促進する。副生成物の線状オリゴマーを再循環できることにより、MPOを形成するための重合および解重合/環化・複合プロセスにおける反応体ジオール−例えば、ブタンジオール(BDO)−の使用効率を改善することができる。なぜなら、より多くのジオールが、ポリエステルに(およびその後、MPOに)転化され、残留オリゴマーとしての損失が、より少ないためである。残留オリゴマー再循環物の使用は、本明細書において他の箇所で説明する。
【0044】
本発明の実施形態は、十分に高い温度(すなわち、約225℃またはそれ以上)に十分な時間(すなわち、約10分間またはそれ以上)曝露することでチタン触媒が受ける可溶性形態(均一系)から不溶性形態(不均一系)への組成の変化を利用する。1つの実施形態において、ポリエステル−例えば、低酸PBT−の溶液解重合/環化は、少なくとも約200℃、好ましくは約245℃またはそれ以上の温度で、チタン触媒の存在下、および実質的に液体の形態で溶媒を維持するために十分な圧力下で行われる。例えば、前記圧力は、溶媒がoDCBである場合、約50psiから約100psiの範囲内、例えば約80psiであり得る。解重合反応の過程で、チタン触媒は、形態が変化し、不溶性になり、溶液から沈殿するが、cPBT生成物および残留線状体は、溶解したままである。沈殿した高チタン触媒残渣は、公知の技法、例えば濾過、遠心分離またはデカンテーションによって、その反応混合物から除去することができる。
【0045】
触媒残渣が、溶液から選択的に沈殿したら、例えば、上で参照した‘164特許に記載されているMPO単離技術の適用により、cPBTを残留線状体から分離することができる。例えば、溶解したMPOは、‘164特許に記載されているように、冷却によるおよび/または非溶媒(貧溶媒(anti−solvent))、例えばヘプタンの添加による沈殿によって回収することができる。上で参照した国際(PCT)特許公開番号WO03/002551には、上昇膜蒸発装置(rising film evaporators)において高温および/または減圧で溶媒を蒸発させることによる、貧溶媒の使用を伴わないMPOの単離が記載されている。
【0046】
別の態様において、本発明は、cPBT(または他のMPO)を調製するためのプロセスにおける残留オリゴマー再循環物の使用に関する。この態様において、本発明は、解重合生成物ストリームからのオリゴマー再循環物を使用するための方法およびシステムに関する。ポリエステル解重合反応のオリゴマー副生成物は、ポリエステルを形成する際に反応体として使用することができる。例えば、線状オリゴマー副生成物は、低酸ポリアルキレンテレフタレートを形成するための溶液重合において、反応体として使用することができる。その後、この低酸ポリアルキレンテレフタレートを、例えば、解重合してMPOを形成することができる。1つの実施形態において、解重合プロセスから残留オリゴマー再循環物を得、それを、低酸ポリエステルの重合およびその後の解重合(環化)において反応体として使用して、大環状ポリエステルオリゴマー(MPO)を形成する。
【0047】
一般に、残留オリゴマー、特に、ポリエステルの解重合/環化において副生成物として形成する酸キャップ型残留線状オリゴマーは、MPOを生成させるための重合および解重合/環化・複合プロセスに再循環させることができる。この重合および解重合/環化・複合プロセスにおいて触媒の増加を回避するために、再循環ストリームは、金属含有触媒を実質的に含まないことが好ましい。水での失活を用いずに解重合生成物ストリームから触媒残渣を除去するための方法およびシステムは、本明細書において他の箇所で説明する。1つの実施形態では、有利なことに、これらの方法を適用して、解重合生成物ストリームから触媒残渣を、それを再循環させる前に除去することができる。
【0048】
本明細書において説明するように、低酸ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、有機溶媒−例えば、オルト−ジクロロベンゼン(oDCB)−中、触媒の存在下でブタンジオール(BDO)とジメチルテレフタレート(DMT)とを反応させることによって生成させることができる。この反応は、高熱および真空の適用を必要とせず、ほぼ大気圧(または大気圧より高い圧力)で、かつ240℃未満、好ましくは約200℃未満、および好ましくは溶媒のほぼ沸点の温度で行うことができる。さらに、標準的な溶融重合および固相重合技術において典型的に使用されるものより、本発明の溶液重合法によって使用することができる有効触媒濃度範囲の方がはるかに広い。結果として、より低濃度の触媒を使用することができ、その結果、材料費および加工費を減少させる。
【0049】
低酸PBTの生成は、上の反応1に示したように、触媒の存在下でDMTとわずかにモル過剰のBDOとを反応させて、ビスヒドロキシブチルテレフタレート(BDOエステル)を形成することを含む。反応1は、平衡反応であり、生成されたメタノールの除去により前に進ませる。上の反応2に示したように、反応1から形成されるBDOエステルを触媒の存在下、高温(すなわち、240℃)で重合させてPBTを形成する。反応1のエステル交換についてそうであるように、反応2の重合は、平衡反応であり、生成されたBDOの除去により前に進ませる。
【0050】
本発明の方法によって生成した低酸PBTを解重合して、環状形態のPBT(cPBT)を作ることができる。本低酸PBTの解重合(環化)は、市販のPBTの解重合よりも必要とされる触媒が少なく、速く平衡に達する(すなわち、cPBTへのPBTの初期転化速度が速い)。低酸PBTの製造および使用に関する総合的発見は、cPBT調製方法に相乗的に活用され、この場合、BDOとDMTとを溶媒中で反応させて低酸、非単離PBTを作り、それを直接解重合(環化)してcPBTを形成する。
【0051】
従って、1つの態様において、本発明は、ポリエステルの生成においてポリエステルの解重合からの残留オリゴマーを反応体として使用するための方法に関する。例えば、1つの実施形態において、PBTの解重合/環化からの残留オリゴマーをPBTの重合において反応体として使用する。さらに、残留オリゴマーを反応体として使用して低酸PBTを製造することができ、同時に、より低い触媒濃度を使用する能力、より低い温度および大気圧で反応を行う能力、ならびに反応体中に存在する酸に対してわずかにモル過剰のBDOを使用する能力を依然として保持する。さらに、任意の比率の残留オリゴマーとモノマー(すなわち、BDOエステル)とを使用することができること、ならびに残留オリゴマーを、それが触媒残渣の除去のために濾過されているか否かによらず使用することができることを証明した。
【0052】
1つの実施形態において、残留オリゴマーを反応体として使用して製造されたポリマーは、純粋なモノマー(すなわち、BDOおよびDMT)から製造された低酸ポリマーと実質的に区別できない。有利なことに、残留オリゴマーの使用を、環状形態のポリブチレンテレフタレート(cPBT)を調製するためのプロセスに適用することができ、この場合、BDOおよび残留オリゴマー(および必要に応じてDMT)を溶媒中で反応させて低酸PBTを作り、その後、それを解重合してcPBTを形成する。反応体のより高い使用効率および/またはMPOへのモノマーのより高い転化率は、再循環される残留オリゴマーの使用に起因する。1つの実施形態において、低酸PBTを製造するために重合反応において解重合反応からの残留オリゴマーを再循環物として使用することにより、約98%を越えるcPBTへのモノマーの全転化率が可能となるが、典型的に、PBTからのcPBTのワンパスプロセス収率は、約70%から約85%の間である。
【0053】
低酸PBTの解重合からの残留オリゴマーは、末端にカルボン酸を有する線状オリゴマー種、例えば、下に示す種:
【0054】
【化4】

を含み、式中、nは一般に1から約5の整数であるが、より高い分子量の種も可能である。低酸PBTの重合における末端にカルボン酸を有する線状オリゴマー種の反応体として使用は、次のとおり、反応5に図示するように:
【0055】
【化5】

酸とBDOとの縮合に起因して、水の形成をもたらす。線状オリゴマーを高分子量PBTに転化させるために必要なBDOの量は、その線状オリゴマーの酸レベルを測定することにより決定される。その線状体中に存在する酸に対してわずかにモル過剰(例えば、約10%から約50%)のBDOが、一般に、その線状体を残留酸が少ない高分子量ポリマーに転化させるために妥当であることが判明した。従って、その低酸ポリマーのその後の解重合に、より低い触媒濃度を用いることができる。
【0056】
解重合再循環物は、MPOとして使用することができない、無視できない量の大環状種−例えば、解重合反応混合物から沈殿する高分子量種−を含有し得る。再循環物中のこれらの種と、より低い分子量の線状オリゴマーとを必ずしも分離する必要はない。再循環物中の高分子量環状種は、溶液重合条件下では高分子量線状ポリマーに逆戻りするので、モノマーおよび線状オリゴマーの重合に悪影響を及ぼさない。
【0057】
本発明の実施形態は、cPBTを製造するための低酸PBTの解重合において、より低い触媒濃度を用いる能力をもたらす。より少ない触媒の使用は、費用節約ならびに他の利点をもたらす。解重合(環化)工程における、より低い触媒濃度の使用は、形成される残留オリゴマー(すなわち、非MPO、ヒドロキシルおよび/または酸キャップ型線状体)の量を低下させ、その結果、分離および濾過処理費用を減少させる。例えば、解重合(環化)工程における、より低い触媒レベルの使用により、解重合生成物ストリーム中の末端にジオールを有する線状オリゴマー(ジオール二量体、すなわちBDOエステル)のレベルが低くなる。これに起因して、MPO濾液ストリーム中の残留酸のレベルがより低くなる。例えば、より低い残留酸含有率を有する生成物ストリームの濾過用カラムは、アルミナまたはイオン交換樹脂を然程多く充填する必要がなく、および/またはカラム充填物が使い果たされ、交換または再循環を必要とする期間がより長い。さらに、残留オリゴマー濾液は、低い触媒濃度が、例えばcPBTを形成するための環化において用いられる場合、然程ゲル様ではなく、より容易に生成物ストリームから除去される。これは、cPBT製造プロセスにおける工業用濾過装置に関連する必要サイズおよび維持費用を減少させる。
【0058】
本発明の方法によって製造されるMPOは、より酸濃度の高いポリエステルの解重合(環化)によって製造された大環状オリゴマーに比べて、重合時、同じまたはそれ以上の性能を示す。例えば、本発明の解重合法によって製造されるMPOは、市販のポリエステルの解重合によって製造されたMPOと同じ分子量に重合することができる。また、本発明の方法によって製造されるMPOから製造したポリマーは、別様に製造されたMPOから製造したポリマーより低い不純物レベルおよび改善された物理的特性を示すことができる。
【0059】
本発明の実施形態は、ポリエステルからMPOを製造するためのシステムに関する資本経費を減少させることができる。なぜなら、ポリエステルの解重合(環化)を、そのポリエステルの製造にも使用される反応容器を使用して行うことができるからである。実際、1つの実施形態において、DMTおよびBDOがインプットであり、cPBTがアウトプットであるプロセスでは、ポリエステルは非単離中間体である。単一の反応容器を用いて重合反応と解重合/環化反応との両方を行うことさえできる。さらに、重縮合と解重合/環化との両方を大気圧で、および/または240℃より低い温度で(例えば、約200℃で)行うことができるので、高温および/または低圧を維持できる反応装置を必要としない。
【0060】
本発明の実施形態は、連続プロセス、半連続プロセスまたは回分プロセスの一部として行うことができる。反応装置は、一段であってもよいし、または多段であってもよい。本発明の方法を、当該技術分野において公知である反応装置、システムもしくはプロセスと併用することができ、またはこれらで補足することができる。
【0061】
テレフタル酸(PTA)をDMTに転化させるための方法は公知である。従って、DMTを利用する本発明の実施形態は、代替的にPTA(精製または非精製形態のもの)を利用することができ、例えば、この場合、PTAからDMTが形成される。これは、例えば、非単離または単離中間体としてDMTを生成させるためにPTAを使用する方がDMTの直接使用より安価である低酸PBTの製造では有益であり得る。さらに、低酸PBTを製造するために使用されるDMTは、残留メタノールおよび/または酸が後にその溶液重合プロセスにおいて転化され得るので、高度に精製されている必要はない。同様に、本明細書に記載する種の公知の化学的類似体および/または前駆体の使用は、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0062】
1つの態様において、本発明は、低酸ポリブチレンテレフタレート生成物を調製するための方法に関する。本方法は、連続プロセスであってよいし、回分プロセスであってよいし、またはこれらの組み合わせであってよい。本方法は、一般に、ブタンジオール、ジメチルテレフタレート、有機溶媒および触媒を少なくとも最初に含む混合物を、ほぼ大気圧以上の圧力で約240℃以下の温度に曝露する工程を含む。ある実施形態において、エステル交換および重縮合の少なくとも一方が、曝露工程の間に起こる。特定の実施形態では、重縮合が、曝露工程の間に起こる。一部の実施形態において、混合物は、曝露工程の間に約30重量%の高分子固体から約50重量%の高分子固体を含有してよい。
【0063】
曝露工程は、一般に、約240℃以下の温度で行う。例えば、曝露工程は、約40℃から約240℃、さらに好ましくは約110℃から約240℃、さらにいっそう好ましくは約170℃から約200℃の範囲内の温度で行うことができる。特定の実施形態において、曝露工程は、約230℃以下、好ましくは約220℃以下、およびさらに好ましくは約210℃以下の温度で行うことができる。他の実施形態において、曝露工程は、約200℃以下、およびさらに好ましくは約190℃以下の温度で行うことができる。特定の実施形態において、曝露工程は、有機溶媒のほぼ沸点で行うことができる。圧力に関して、曝露工程は、一般に、ほぼ大気圧以上の圧力で行う。例えば、曝露工程は、ほぼ大気圧で行うことができる。一定の実施形態において、曝露工程は、大気圧より高い圧力で行うことができ、この場合、メタノールを、混合物中の少なくとも2つの成分の反応によってそれが形成されるにつれて除去することが有利であろう。
【0064】
様々な有機溶媒を使用して本発明を実施することができる。一部の実施形態において、有機溶媒としては、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン、ビフェニル、トリフェニル、ジフェニルエーテル(またはそのハロゲン化誘導体)、アニソール、塩化メチレン、ジメトキシベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジクロロナフタレンおよび/または過フルオロカーボンから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。特定の実施形態において、有機溶媒しては、オルト−キシレンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒しては、オルト−ジクロロベンゼンを挙げることができる。一部の実施形態において、有機溶媒しては、アルカン、例えばテトラデカンおよびヘキサデカンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒しては、過フルオロ化合物、例えば過フルオロ(トリ−n−ブチルアミン)および過フルオロ(トリ−n−ペンチルアミン)を挙げることができる。使用される有機溶媒は、好ましくは、約110℃以上の沸点を有する。
【0065】
本発明を実施するために使用することができる適切な触媒としては、様々な有機チタネートおよび有機すず化合物が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、触媒としては、2−エチルヘキシルチタネート、テトラキス−(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、アルコキシチタネート、チタンメトキシド、チタンエトキシド、ジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)およびブタンジオールチタネートから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。特定の実施形態において、触媒としては、テトライソプロピルチタネートを挙げることができる。他の実施形態において、触媒としては、
n(Ti−(OR)+m(HO−R−OH)
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、ならびにmおよびnの各々は0より大きく、m/nは、2未満である。もう1つの適切な触媒としては、
x(Ti−(OR)+y(HO−R−OH)+z((HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH))
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、R、R、RおよびRの各々は、独立して、水素原子またはC〜Cアルキル基であり、Wは、酸素原子、硫黄原子、窒素含有基、リン含有基またはC〜Cアルキレン基であり、xおよびyの各々は、0より大きく、ならびにyはzより大きい。他の実施形態において、触媒としては、ジアルキルすず、酸化ジアルキルすず、ジアルキルすずアルコキシド、スタンノキサン、およびスピロすず化合物から成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。
【0066】
一部の実施形態において、触媒は、好ましくは、重縮合と解重合/環化との両方において使用することができるタイプのものである。触媒を、低酸PBTを生成させる(すなわち、重縮合による)反応において使用し、その後、解重合/環化には付さない1つの実施形態において、触媒は、任意の公知ポリエステル形成用触媒、例えば、金属酸化物、例えば酸化アンチモン;遷移金属塩、例えば酢酸亜鉛および/もしくは酢酸コバルト;Hg、Pb、Cd、Mn、Cr、MoもしくはWの塩;すず化合物および/もしくはチタネート化合物;またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0067】
一部の実施形態において、触媒は、混合物中に約10ppmから約100ppmの範囲内の濃度で存在し得る。他の実施形態において、触媒は、混合物中にモノマー繰り返し単位100mol当たりTi約0.01molからTi約0.03モルの範囲内の濃度で存在し得る。一部の実施形態において、触媒としては、SnまたはTiから成る群より選択される金属Qを挙げることができる。これらの実施形態において、触媒は、混合物中に、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約1.0mol未満、好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.5mol未満、およびさらに好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.1mol未満の濃度で存在し得る。特定の実施形態において、触媒は、混合物中に、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.05mol未満、およびさらに好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.01mol未満の濃度で存在し得る。
【0068】
上述の方法は、副反応を有意に減少させる助けとなる。例えば、曝露工程では、3重量%未満のブタンジオールが、テトラヒドロフランを形成するために反応し得る。好ましい実施形態では、曝露工程において、1重量%未満のブタンジオールが、テトラヒドロフランを形成するために反応し得る。最も好ましい実施形態では、曝露工程において、0.5重量%未満のブタンジオールが、テトラヒドロフランを形成するために反応し得る。
【0069】
一部の実施形態において、この方法は、曝露工程後に混合物の少なくとも一部を回転ディスク反応装置に移送する工程、および低酸ポリブチレンテレフタレート生成物の重縮合のためにその回転ディスク反応装置の内容物を少なくとも約200℃の温度に曝露する工程をさらに含むことができる。特定の実施形態において、この第二の曝露工程は、回転ディスク反応装置の内容物を少なくとも約240℃の温度に曝露することを含むことができる。一部の実施形態において、第二曝露工程は、大気圧未満の圧力で行うことができる。適切な回転ディスク反応装置としては、Vicker−Zimmer反応装置が挙げられるが、これに限定されない。
【0070】
本発明の上述の方法によってもたらされるポリブチレンテレフタレート生成物は、以前に得られたものと少なくとも同じ低さの酸濃度、一部の実施形態では、以前に得られたものよりずっと低い酸濃度を有する。一部の実施形態において、ポリブチレンテレフタレート生成物は、そのポリブチレンテレフタレート生成物を調製する特定の条件に依存して、約10ミリ当量/kg未満、約7ミリ当量/kg未満、約5ミリ当量/kg未満、約2ミリ当量/kg未満、約1.5ミリ当量/kg未満の酸濃度を有し得る。最も好ましい実施形態では、約1ミリ当量/kg未満の酸濃度を有するポリブチレンテレフタレート生成物を得ることができる。温度、混合物中の触媒の濃度、混合物中の高分子固体の濃度、およびブタンジオールとジメチルテレフタレートとの比率から成る群より選択される少なくとも1つの変数は、そのポリブチレンテレフタレート生成物が、約2ミリ当量/kg以下、さらに好ましくは約1.5ミリ当量/kg以下、および最も好ましくは約1.0ミリ当量/kg以下の酸濃度を有するように選択することができる。上述の方法によって形成されるポリマー生成物は、本発明の範囲内である。
【0071】
別の態様において、本発明は、大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法に関する。この方法は、連続プロセスであってもよいし、回分プロセスであってもよいし、またはこれらの併用であってもよい。この方法は、一般に、約10ミリ当量/kg以下の酸濃度を有するポリブチレンテレフタレートポリマーと有機溶媒と解重合触媒とを含む混合物を熱に曝露する工程を含む。
【0072】
典型的には、できる限り低い酸濃度を有するポリブチレンテレフタレートポリマーを混合物に含めるのが有利である。ポリブチレンテレフタレートポリマーは、例えば、約7ミリ当量/kg未満、約5ミリ当量/kg未満、約2ミリ当量/kg未満および最も好ましくは約1ミリ当量/kg未満の酸濃度を有し得る。一部の実施形態において、混合物は、約0.75重量%の高分子固体から約1.5重量%の高分子固体を含有し得る。特定の実施形態において、高分子固体は、ポリブチレンテレフタレートを含むことができる。
【0073】
様々な有機溶媒を混合物に含めることができる。一部の実施形態において、有機溶媒としては、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン、ビフェニル、トリフェニル、ジフェニルエーテル(もしくはそのハロゲン化誘導体)、アニソール、塩化メチレン、ジメトキシベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジクロロナフタレンおよび/または過フルオロカーボンから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。特定の実施形態において、有機溶媒としては、オルト−キシレンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒としては、オルト−ジクロロベンゼンを挙げることができる。一部の実施形態において、有機溶媒としては、アルカン、例えばテトラデカンおよびヘキサデカンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒としては、過フルオロ化合物、例えば過フルオロ(トリ−n−ブチルアミン)および過フルオロ(トリ−n−ペンチルアミン)を挙げることができる。
【0074】
本発明を実施するために使用することができる適切な解重合触媒としては、様々な有機チタネート化合物が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、解重合触媒としては、テトライソプロピルチタネートを挙げることができる。他の実施形態において、解重合触媒としては、チタンを挙げることができ、混合物中の解重合触媒の濃度は、モノマー繰り返し単位100mol当たりTi約2mol未満、モノマー繰り返し単位100mol当たりTi約1.5mol未満、モノマー繰り返し単位100mol当たりTi約0.75mol未満、約1.8mM未満、または約0.88mM未満であり得る。特定の実施形態において、混合物中の解重合触媒の濃度は、モノマー繰り返し単位100mol当たりTi約0.25molからTi約1.25molの範囲内、または約0.22mMから約0.88mMの範囲内であり得る。他の実施形態において、解重合触媒としては、SnまたはTiから成る群より選択される金属Qを挙げることができ、この場合、解重合触媒は、混合物中に、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約3mol未満の濃度で存在し得る。
【0075】
上述の方法の1つの利点は、ポリブチレンテレフタレートポリマーを大環状ポリエステルオリゴマーに転化させるために必要とされる少量の解重合触媒である。一部の実施形態において、使用される解重合触媒としては、チタンを挙げることができ、またモノマー繰り返し単位100mol当たりTi約2mol未満の触媒濃度を用いて、そのポリブチレンテレフタレートポリマーの少なくとも約70重量%を大環状ポリエステルオリゴマーに転化させることができる。典型的には、モノマー繰り返し単位100mol当たりTi約0.25molからTi約1.25molの範囲内の触媒濃度は、ポリブチレンテレフタレートポリマーの少なくとも約70重量%を大環状ポリエステルオリゴマーに転化させるために十分な濃度である。使用される少量の触媒にもかかわらず、解重合速度は有意には損なわれなかった。一部の実施形態において、解重合の初期速度は、13.5g/L/時より高くてよい。他の実施形態において、解重合の初期速度は、15g/L/時より高くてよい。上述の方法によって形成される大環状ポリエステルオリゴマーは、本発明の範囲内である。
【0076】
さらに別の態様において、本発明は、大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法に関する。方法は、一般に、(a)ジオール;酸、エステル、二酸、ジエステル、ジカルボン酸およびジアルキルエステルから成る群より選択される少なくとも1つのメンバー;有機溶媒;ならびに触媒を少なくとも最初に含む混合物を、ほぼ大気圧以上の圧力で約240℃以下の温度に曝露して、高分子固体を含む混合物を形成する工程;(b)混合物中の高分子固体の濃度を第一範囲内に維持する工程;(c)工程(b)後に高分子固体の濃度を低下させる工程;ならびに(d)熱の存在下で混合物中の高分子固体の濃度を第二範囲内に維持して、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させる工程を含む。
【0077】
一部の実施形態において、工程(a)、(b)、(c)および(d)は、共通の容器で行うことができる。工程(a)は、約230℃以下、さらに好ましくは約210℃以下、およびさらにいっそう好ましくは約190℃以下の温度で行うことができる。
【0078】
一部の実施形態において、工程(a)における混合物中に最初に存在するジオールとしては、ブタンジオール、例えば1,4−ブタンジオールを挙げることができる。特定の実施形態において、混合物は、ジメチルテレフタレートを含んでよい。有機溶媒としては、アルカン(テトラデカンおよびヘキサデカンを含むが、これらに限定されない);過フルオロ化合物[過フルオロ(トリ−n−ブチルアミン)および過フルオロ(トリ−n−ペンチルアミン)を含むが、これらに限定されない];キシレン(オルト−キシレンを含むが、これに限定されない);クロロベンゼン(ジクロロベンゼン、オルト−ジクロロベンゼン含むが、これらに限定されない);塩化メチレン;ナフタレン;トルエン;テトラメチルベンゼン;およびメチルナフタレンから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。
【0079】
本発明を実施するために使用することができる適切な触媒としては、様々な有機チタネートおよび有機すず化合物が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、触媒としては、2−エチルヘキシルチタネート、テトラキス−(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、アルコキシチタネート、チタンメトキシド、チタンエトキシド、ジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、およびブタンジオールチタネートから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。他の実施形態において、触媒としては、
n(Ti−(OR)+m(HO−R−OH)
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、ならびにmおよびnの各々は、0より大きく、m/nは2未満である。別の適切な触媒としては、
x(Ti−(OR)+y(HO−R−OH)+z((HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH))
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、R、R、RおよびRの各々は、独立して、水素原子またはC〜Cアルキル基であり、Wは、酸素原子、硫黄原子、窒素含有基、リン含有基またはC〜Cアルキレン基であり、xおよびyの各々は、0より大きく、ならびにyは、zより大きい。他の実施形態において、触媒としては、ジアルキルすず、酸化ジアルキルすず、ジアルキルすずアルコキシド、スタンノキサンおよびスピロすず化合物から成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。
【0080】
一部の実施形態において、触媒としては、SnおよびTiから成る群より選択される金属Qを挙げることができ、触媒は、工程(a)における混合物中に、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約1.0mol未満、好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.5mol未満、さらに好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.1mol未満、さらにいっそう好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.05mol未満、および最も好ましい実施形態では、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.01molからQ約0.03molの範囲内の濃度で存在し得る。他の実施形態において、触媒としては、チタンを挙げることができ、これは、工程(a)の混合物中にモノマー繰り返し単位100mol当たりTi約0.01molからTi約0.03molの範囲内の濃度で存在し得る。一部の実施形態において、工程(d)は、工程(a)からの触媒の存在下で行うことができる。触媒としては、SnおよびTiから成る群より選択される金属Qを挙げることができ、この場合、触媒は、工程(d)では、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約2.0mol未満、好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.2molからQ約0.7molの範囲内の濃度で存在し得る。
【0081】
工程(b)は、約10ミリ当量/kg以下、好ましくは約7ミリ当量/kg以下、さらに好ましくは約5ミリ当量/kg以下、さらにいっそう好ましくは約2ミリ当量/kg以下、および最も好ましい実施形態では約1ミリ当量/kg以下の酸濃度を有するポリエステルを生成させることができる。第一範囲は、約30重量%の高分子固体から約50重量%の高分子固体であり得る。工程(c)は、高分子固体の濃度を少なくとも約10倍低下させることを含むことができる。工程(d)において、第二範囲は、約0.75重量%の高分子固体から約1.5重量%の高分子固体であり得る。高分子固体は、ポリブチレンテレフタレートを含み得る。工程(d)後の混合物は、実質的にゲル様沈殿していない線状体を含むことがある。この方法は、大環状ポリエステルオリゴマーを単離する工程および必要に応じて大環状ポリエステルオリゴマーを精製する工程をさらに含むことがある。
【0082】
特定の実施形態において、工程(b)は、線状ポリブチレンテレフタレートを生成させることができる。使用される有機溶媒としては、オルト−ジクロロベンゼンを挙げることができ、使用される触媒としては、有機チタネートを挙げることができる。工程(a)は、有機溶媒のほぼ沸点で行うことができる。線状ポリブチレンテレフタレートの少なくとも一部を必要に応じて工程(d)の前に単離してもよいが、これは必須ではない。
【0083】
さらに別の形態において、本発明は、低酸ポリエステルを調製するための方法に関する。方法は、一般に、混合物をほぼ大気圧以上の圧力で熱に曝露して、低酸ポリエステル生成物を形成する工程を含む。混合物は、少なくとも最初に、ジオールと、アルキルエステルと、約240℃以下の沸点を有する有機溶媒と、触媒とを含む。
【0084】
一部の実施形態において、曝露工程は、約40℃から約240℃、さらに好ましくは約110℃から約240℃、およびさらにいっそう好ましくは約170℃から約200℃の範囲内の温度で行うことができる。特定の実施形態において、曝露工程は、約230℃以下、好ましくは約210℃以下、およびさらに好ましくは約190℃以下の温度で行うことができる。
【0085】
様々な有機溶媒を使用して、本発明を実施することができる。一部の実施形態において、有機溶媒としては、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン、ビフェニル、トリフェニル、ジフェニルエーテル(もしくはそのハロゲン化誘導体)、アニソール、塩化メチレン、ジメトキシベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジクロロナフタレンおよび/または過フルオロカーボンから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。特定の実施形態において、有機溶媒としては、オルト−キシレンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒としては、オルト−ジクロロベンゼンを挙げることができる。一部の実施形態において、有機溶媒としては、アルカン、例えばテトラデカンおよびヘキサデカンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒としては、過フルオロ化合物、例えば過フルオロ(トリ−n−ブチルアミン)および過フルオロ(トリ−n−ペンチルアミン)を挙げることができる。適切な触媒としては、テトライソプロピルチタネートをはじめとする様々な有機チタネート化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。有機チタネート触媒は、混合物中に約10ppmから約100ppmの範囲内の濃度で存在し得る。他の実施形態において、触媒としては、チタンを挙げることができ、これは、混合物中にモノマー繰り返し単位100mol当たりTi約0.01molからTi約0.03molの範囲内の濃度で存在し得る。一部の実施形態において、触媒としては、SnおよびTiから成る群より選択される金属Qを挙げることができ、触媒は、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約1.0mol未満、好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.5mol未満、さらに好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.1mol、さらにいっそう好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.05mol、および最も好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.01molからQ約0.03molの範囲内の濃度で存在し得る。
【0086】
本発明の上述の方法によってもたらされるポリブチレンテレフタレート生成物は、当該技術分野において公知であるものと少なくとも同じ低さの酸濃度、および一部の実施形態では当該技術分野において公知であるものよりかなり低い酸濃度を有する。一部の実施形態において、ポリブチレンテレフタレート生成物は、約10ミリ当量/kg未満、約7ミリ当量/kg未満、約5ミリ当量/kg未満、約2ミリ当量/kg未満、および好ましい実施形態では約1ミリ当量/kg未満の酸濃度を有し得る。
【0087】
さらに別の態様において、本発明は、大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための連続プロセスに関する。このプロセスは、一般に、アウトプットストリームを有する第一単位操作と、第一単位操作のアウトプットストリームの少なくとも一部を含むインプットストリームを有する第二単位操作とを含む。第一単位操作は、1,4−ブタンジオール、ジメチルテレフタレート、有機溶媒および触媒を含む混合物をほぼ大気圧以上の圧力で約240℃以下の温度に曝露して、高分子固体を形成することに適応しており、一方、第二操作は、インプットストリームを熱に曝露して大環状ポリエステルオリゴマーを生成させることに適応している。
【0088】
一部の実施形態において、混合物中の有機溶媒としては、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン、ビフェニル、トリフェニル、ジフェニルエーテル(もしくはそのハロゲン化誘導体)、アニソール、塩化メチレン、ジメトキシベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジクロロナフタレンおよび/または過フルオロカーボンから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。特定の実施形態において、有機溶媒としては、オルト−キシレンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒としては、オルト−ジクロロベンゼンを挙げることができる。一部の実施形態において、有機溶媒としては、アルカン、例えばテトラデカンおよびヘキサデカンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒としては、過フルオロ化合物、例えば過フルオロ(トリ−n−ブチルアミン)および過フルオロ(トリ−n−ペンチルアミン)を挙げることができる。ある実施形態において、触媒としては、有機チタネート、例えば、限定されないが、2−エチルヘキシルチタネート、テトラキス−(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、アルコキシチタネート、チタンメトキシド、チタンエトキシド、ジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)およびブタンジオールチタネートから成る群より選択されるメンバーを挙げることができる。他の実施形態において、触媒としては、
n(Ti−(OR)+m(HO−R−OH)
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、ならびにmおよびnの各々は、0より大きく、m/nは、2未満である。別の適切な触媒としては、
x(Ti−(OR)+y(HO−R−OH)+z((HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH))
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、R、R、RおよびRの各々は、独立して、水素原子またはC〜Cアルキル基であり、Wは、酸素原子、硫黄原子、窒素含有基、リン含有基またはC〜Cアルキレン基であり、xおよびyの各々は、0より大きく、ならびにyは、zより大きい。他の実施形態において、触媒としては、有機すず、例えば、限定されないが、ジアルキルすず、酸化ジアルキルすず、ジアルキルすずアルコキシド、スタンノキサンおよびスピロすず化合物から成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。
【0089】
一部の実施形態において、触媒としては、SnおよびTiから成る群より選択される金属Qを挙げることができ、触媒は、工程(a)における混合物中に、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約1.0mol未満、好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.5mol未満、さらに好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.1mol未満、さらにいっそう好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.05mol未満、および最も好ましい実施形態では、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.01molからQ約0.03molの範囲内の濃度で存在し得る。
【0090】
一定の実施形態において、第二単位操作は、第一単位操作から、触媒の存在下で行うことができる。特定の実施形態において、第二単位操作は、SnおよびTiから成る群より選択される金属Qをはじめとする触媒の存在下で行うことができる。触媒は、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約2.0mol未満の濃度、例えば、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.2molとQ約0.7molとの間の濃度で存在し得る。
【0091】
さらに別の態様において、本発明の実施形態は、7ミリ当量/kg未満の酸濃度を有するポリブチレンテレフタレートポリマーを提供する。好ましい実施形態において、ポリブチレンテレフタレートポリマーは、さらに低い酸濃度、例えば、5ミリ当量/kg未満、2ミリ当量/kg未満または1ミリ当量/kg未満の酸濃度を有し得る。
【0092】
さらに別の態様において、本発明は、低酸ポリブチレンテレフタレート生成物を調製するための方法に関する。この方法は、一般に、混合物を約240℃以下の温度に曝露する工程を含む。混合物は、一般に、ビスヒドロキシブチルテレフタレート、有機溶媒および触媒を含む。
【0093】
曝露工程は、一般に、約240℃以下の温度で行われる。例えば、曝露工程は、約230℃以下、好ましくは約220℃以下、およびさらに好ましくは約210℃以下の温度で行うことができる。他の実施形態において、曝露工程は、約200℃以下、およびさらに好ましくは約190℃以下の温度で行うことができる。圧力に関しては、曝露工程は、ほぼ大気圧以上の圧力で行う。特定の実施形態では、曝露工程の間に重縮合が起こる。
【0094】
様々な有機溶媒を使用して本発明を実施することができる。一部の実施形態において、有機溶媒としては、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン、ビフェニル、トリフェニル、ジフェニルエーテル(もしくはそのハロゲン化誘導体)、アニソール、塩化メチレン、ジメトキシベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジクロロナフタレンおよび/または過フルオロカーボンから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。特定の実施形態において、有機溶媒としては、オルト−キシレンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒としては、オルト−ジクロロベンゼンを挙げることができる。一部の実施形態において、有機溶媒としては、アルカン、例えばテトラデカンおよびヘキサデカンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒としては、過フルオロ化合物、例えば過フルオロ(トリ−n−ブチルアミン)および過フルオロ(トリ−n−ペンチルアミン)を挙げることができる。使用される有機触媒は、好ましくは約210℃以下の沸点を有する。
【0095】
適切な触媒の例としては、本明細書において上で列挙したものがある。一部の実施形態において、例えば、触媒としては、SnおよびTiから成る群より選択される金属Qを挙げることができる。これらの実施形態において、触媒は、混合物中に、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約1.0mol未満、好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.5mol未満、およびさらに好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.1molの濃度で存在し得る。特定の実施形態において、触媒は、混合物中に、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.05mol未満、およびさらに好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.01mol未満の濃度で存在し得る。
【0096】
さらに別の態様において、本発明は、金属含有化合物を含む混合物からその金属含有化合物を、水の添加を伴わずに沈殿させるための方法に関する。混合物は、有機溶媒、線状オリゴマーおよび必要に応じて大環状ポリエステルオリゴマーを含むこともある。方法は、一般に、混合物を少なくとも約200℃の温度に少なくとも約5分間曝露する工程を含み、この場合、線状オリゴマーの少なくとも一部は、その曝露工程後、その有機溶媒に溶解したままである。
【0097】
曝露工程は、連続プロセスであってよく、半連続プロセスあってよく、または回分プロセスあってよい。一部の実施形態において、方法は、混合物を少なくとも約200℃の温度に、少なくとも約30分間、曝露することを含むことができる。他の実施形態において、曝露工程は、少なくとも225℃の温度で、少なくとも約20分間、行うことができる。別の実施形態において、曝露工程は、少なくとも245℃の温度で、約10分と約35分との間、行うことができる。例えば、曝露工程は、少なくとも約245℃の温度で、少なくとも約10分間、または少なくとも約15分間、行うことができる。さらに他の実施形態において、曝露工程は、少なくとも約260℃の温度で、少なくとも約5分間、行うことができる。一部の実施形態において、曝露段工程の継続時間は、滞留時間に対応し得る。詳細には、滞留時間は、平均滞留時間であり得る。
【0098】
一部の実施形態において、混合物は、解重合プロセスからのアウトプットストリームの少なくとも一部であり得る。ある実施形態において、混合物の成分は、曝露工程の少なくともの一部の間に解重合され得る。曝露工程は、有機溶媒が実質的に液体形態であるように選択される圧力で行うことができる。例えば、その圧力は、約50psiと約100psiとの間であり得る。
【0099】
混合物を曝露する温度、および/または混合物を熱に曝露する時間の長さは、金属含有化合物の実質的にすべてをその混合物から沈殿させるように選択され得る。選択される条件に依存して、曝露工程後の混合物は、溶解している金属含有化合物を実質的に含まないことがある。例えば、沈殿後の混合物中の溶解している金属含有化合物の濃度は、金属約200ppm未満、金属約100ppm未満、金属約25ppm未満または金属約5ppm未満であり得る。
【0100】
沈殿する金属含有化合物としては、チタン含有化合物を挙げることができる。一部の実施形態において、金属含有化合物は、解重合触媒を含むことができ、または解重合触媒から形成され得る。例示的な解重合触媒としては、様々な有機チタネートおよび有機すず化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、触媒としては、テトライソプロピルチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、テトラキス−(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラブチルチタネート、アルコキシチタネート、チタンアルコキシド、チタンメトキシド、チタンエトキシド、ジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)およびブタンジオールチタネートから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。他の実施形態において、触媒としては、ジアルキルすず、酸化ジアルキルすず、ジアルキルすずアルコキシド、スタンノキサンおよびスピロすず化合物から成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。
【0101】
さらに他の実施形態において、触媒としては、
n(Ti−(OR)+m(HO−R−OH)
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、ならびにmおよびnの各々は、0より大きく、m/nは、2未満である。別の適切な触媒としては、
x(Ti−(OR)+y(HO−R−OH)+z((HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH))
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、R、R、RおよびRの各々は、独立して、水素原子またはC〜Cアルキル基であり、Wは、酸素原子、硫黄原子、窒素含有基、リン含有基またはC〜Cアルキレン基であり、xおよびyの各々は、0より大きく、ならびにxおよびyの各々は、zより大きい。
【0102】
一部の実施形態において、混合物中の線状オリゴマーとしては、酸キャップ型種を挙げることができる。混合物は、大環状ポリエステルオリゴマーを含み得る。ある実施形態において、混合物中の有機溶媒としては、オルト−ジクロロベンゼン、オルト−キシレン、キシレン、塩化メチレン、クロロベンゼン、ナフタレン、トルエン、テトラメチルベンゼンおよびメチルナフタレンから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。一部の実施形態において、有機溶媒としては、アルカン、例えばテトラデカンおよびヘキサデカンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒としては、過フルオロ化合物、例えば過フルオロ(トリ−n−ブチルアミン)および過フルオロ(トリ−n−ペンチルアミン)、を挙げることができる。
【0103】
上述の方法は、ポリアルキレンテレフタレートを調製するプロセスにおいて反応体として使用するために線状オリゴマーの少なくとも一部を回収する工程をさらに含むことができる。ある実施形態において、方法は、大環状ポリエステルオリゴマーを形成するためのポリアルキレンテレフタレートの解重合工程を含むこともできる。特定の実施形態では、曝露工程の少なくとも一部と解重合工程の少なくとも一部とを同時に行うことができる。
【0104】
さらに別の態様において、本発明は、解重合プロセスストリームから触媒残渣を除去するための方法に関する。方法は、一般に、(a)混合物を熱に曝露して、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させる工程、および(b)工程(a)の混合物の少なくとも一部を少なくとも約200℃の温度に少なくとも約5分間、曝露して、残渣を沈殿させる工程を含む。混合物は、少なくとも最初に、約10ミリ当量/kg以下の酸濃度を有するポリアルキレンテレフタレート生成物と有機溶媒と解重合触媒とを含む。沈殿される残渣は、解重合触媒を含むことができ、または解重合触媒から形成され得る。
【0105】
混合物中に少なくとも最初に存在するポリアルキレンテレフタレート生成物としては、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、およびポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)とのコポリマーから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。典型的には、可能な限り低い酸濃度を有するポリブチレンテレフタレート生成物を混合物に含めることが有利である。ポリブチレンテレフタレート生成物は、例えば、約10ミリ当量/kg未満、約7ミリ当量/kg未満、約5ミリ当量/kg未満、約2ミリ当量/kg未満、および最も好ましくは約1ミリ当量/kg未満の酸濃度を有することができる。
【0106】
本発明を実施するために使用することができる適切な解重合触媒としては、様々な有機チタネートおよび有機すず化合物が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、触媒としては、テトライソプロピルチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、テトラキス−(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラブチルチタネート、アルコキシチタネート、チタンメトキシド、チタンエトキシド、ジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、およびブタンジオールチタネートから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。他の実施形態において、触媒としては、ジアルキルすず、酸化ジアルキルすず、ジアルキルすずアルコキシド、スタンノキサンおよびスピロすず化合物から成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。
【0107】
一部の実施形態において、触媒としては、
n(Ti−(OR)+m(HO−R−OH)
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、ならびにmおよびnの各々は、0より大きく、m/nは、2未満である。別の適切な触媒としては、
x(Ti−(OR)+y(HO−R−OH)+z((HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH))
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、R、R、RおよびRの各々は、独立して、水素原子またはC〜Cアルキル基であり、Wは、酸素原子、硫黄原子、窒素含有基、リン含有基またはC〜Cアルキレン基であり、xおよびyの各々は、0より大きく、ならびにyは、zより大きい。
【0108】
一部の実施形態において、工程(a)は、約200℃未満の温度で行うことができる。他の実施形態において、工程(a)は、その有機溶媒の沸点またはそれ以下の温度で行うことができる。適切な有機溶媒としては、オルト−ジクロロベンゼン、オルト−キシレン、キシレン、塩化メチレン、クロロベンゼン、ナフタレン、トルエン、テトラメチルベンゼン、メチルナフタレン、アルカンおよび過フルオロ化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
混合物を曝露する温度および/または混合物を熱に曝露する時間の長さは、沈殿させることができる残渣の量を最大にするように選択することができる。一部の実施形態において、例えば、工程(b)は、工程(a)の混合物の少なくとも一部を少なくとも約200℃の温度に少なくとも約30分間曝露することを含むことができる。他の実施形態において、工程(b)は、工程(a)の混合物の少なくとも一部を少なくとも約225℃の温度に少なくとも約20分間、曝露することを含むことができる。別の実施形態において、工程(b)は、工程(a)の混合物の少なくとも一部を、少なくとも約245℃の温度に、約10分と約35分との間、例えば、少なくとも約10分間または15分間、曝露することを含むことができる。他の実施形態において、工程(b)は、工程(a)の混合物の少なくとも一部を少なくとも約260℃の温度に少なくとも約5分間、曝露することを含むことができる。一部の実施形態において、混合物を工程(b)において熱に曝露する時間の長さは、滞留時間、詳細には平均滞留時間に対応し得る。
【0110】
一部の実施形態において、工程(a)の少なくとも一部と工程(b)の少なくとも一部とを同時に行うことができる。他の実施形態において、工程(b)における残渣を混合物から、その混合物に水を添加せずに、沈殿させることができる。工程(b)において熱に曝露される混合物の部分における溶解している金属含有触媒残渣の濃度は、工程(b)後に、金属約200ppm未満であり得る。他の実施形態において、工程(b)において熱に曝露される混合物の部分における溶解している金属含有触媒残渣の濃度は、工程(b)後に、金属約100ppm未満、金属約25ppm未満、または金属約5ppm未満であり得る。金属含有触媒は、チタン含有触媒であり得る。
【0111】
一部の実施形態において、方法は、工程(a)および工程(b)の少なくとも一方の後に混合物の少なくとも一部を処理して、工程(a)において形成された大環状ポリエステルオリゴマーの少なくとも一部を除去する(c)の工程をさらに含むことができる。工程(c)のプロセスは、工程(a)および工程(b)の少なくとも一方の後に混合物の少なくとも1つの一部を濾過して、工程(a)において生成された大環状ポリエステルオリゴマーの少なくとも1つの一部を、線状オリゴマーを含む不溶性濾液から分離することを含むことができる。線状オリゴマーを含む不溶性濾液は、実質的に非ゲル様であり得る。ある実施形態において、方法は、ポリアルキレンテレフタレート生成物を調製するためのプロセスにおいて線状オリゴマーの少なくとも1つの一部を反応体として使用する工程をさらに含むことができる。
【0112】
さらに別の態様において、本発明は、解重合プロセスストリームからの線状オリゴマーを含む濾液を単離するための方法を提供する。方法は、連続プロセスであってよく、半連続プロセスであってよく、または回分プロセスであってよい。方法は、一般に、(a)解重合プロセスストリームからの混合物を少なくとも約200℃の温度に少なくとも約5分間曝露して、金属含有残渣を沈殿させる工程、および(b)工程(a)後にその混合物の少なくとも一部を濾過して、線状オリゴマーを含む濾液を生じさせる工程を含む。
【0113】
一部の実施形態において、金属含有残渣としては、チタン含有化合物を挙げることができる。金属含有残渣は、解重合触媒を含むことができ、または解重合触媒から形成され得る。適切な解重合触媒としては、本明細書において上に列挙したものがある。
【0114】
混合物を曝露する温度、および/または混合物を熱に曝露する時間の長さは、その金属含有残渣の沈殿を最適化するように選択することができる。一部の実施形態において、例えば、工程(a)は、解重合プロセスストリームからの混合物を少なくとも約200℃の温度に少なくとも約30分間、曝露することを含むことができる。他の実施形態において、工程(a)は、解重合プロセスストリームからの混合物を少なくとも約225℃の温度に少なくとも約20分間、曝露することを含むことができる。別の実施形態において、工程(a)は、解重合プロセスストリームからの混合物を少なくとも約245℃の温度に、約10分と約35分との間、例えば少なくとも約10分間または15分間、曝露することを含むことができる。他の実施形態において、工程(a)は、解重合プロセスストリームからの混合物を少なくとも約260℃の温度に少なくとも約5分間、曝露することを含むことができる。一部の実施形態において、曝露時間は、滞留時間、詳細には平均滞留時間に対応し得る。
【0115】
一部の実施形態において、工程(b)は、工程(a)より低い温度で行うことができる。工程(b)は、圧力濾過器の使用を含むこともできる。工程(b)の濾液中の溶解している金属含有残渣の濃度は、金属約200ppm未満であり得る。一部の実施形態において、例えば、工程(b)の濾液中の溶解している金属含有残渣の濃度は、金属約100ppm未満、金属約25ppm未満、または金属約5ppm未満であり得る。一定の実施形態において、金属は、チタンである。
【0116】
一部の実施形態において、この方法は、工程(a)および工程(b)のうちの少なくともの一方の後に混合物の少なくとも一部を濾過して、大環状ポリエステルオリゴマーを含む濾液を生じさせる(c)の工程をさらに含むことがある。他の実施形態において、方法は、工程(b)からの線状オリゴマーを含む濾液の少なくとも一部を、ポリアルキレンテレフタレートを調製するための単位操作に向ける(c)の工程をさらに含むことができる。
【0117】
さらに別の形態において、本発明は、大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法に関する。方法は、一般に、(a)混合物を熱に曝露して、ポリアルキレンテレフタレート生成物を生成させる工程、および(b)工程(a)からのポリアルキレンテレフタレート生成物を解重合して、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させる工程を含む。混合物は、少なくとも最初に、ジオールと、ポリアルキレンテレフタレートの解重合からの再循環物と、有機溶媒と、触媒とを含む。混合物は、必要に応じて、ジアルキルエステルを含むことがある。
【0118】
一部の実施形態において、ジオールは、例えば、ブタンジオールであり得る。存在する場合、ジアルキルエステルは、ジメチルテレフタレートであり得る。これらの実施形態において、得られるポリアルキレンテレフタレート生成物としては、ポリブチレンテレフタレートを挙げることができる。典型的に、工程(a)において生成されるポリアルキレンテレフタレート生成物は、非常に低い酸濃度を有する。例えば、ポリアルキレンテレフタレート生成物は、約10ミリ当量/kg未満、約7ミリ当量/kg未満、約5ミリ当量/kg未満、約2ミリ当量/kg未満、または約1ミリ当量/kg未満の酸濃度を有し得る。
【0119】
様々な有機溶媒を使用することができる。一部の実施形態において、有機溶媒としては、オルト−ジクロロベンゼン、オルト−キシレン、キシレン、塩化メチレン、クロロベンゼン、ナフタレン、トルエン、テトラメチルベンゼンおよびメチルナフタレンから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒としては、アルカン、例えばテトラデカンおよびヘキサデカン、ならびに/または過フルオロ化合物、例えば過フルオロ(トリ−n−ブチルアミン)および過フルオロ(トリ−n−ペンチルアミン)を挙げることができる。
【0120】
本発明を実施するために使用することができる適切な触媒としては、様々な有機チタネートおよび有機すず化合物が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、触媒としては、2−エチルヘキシルチタネート、テトラキス−(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、アルコキシチタネート、チタンメトキシド、チタンエトキシド、ジイソプロポキシドビス(2,4−ペンタンジオエート)、およびブタンジオールチタネートから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。他の実施形態において、触媒としては、アルキルすず、酸化ジアルキルすず、ジアルキルすずアルコキシド、スタンノキサン、およびスピロすず化合物から成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。
【0121】
一部の実施形態において、触媒としては、
n(Ti−(OR)+m(HO−R−OH)
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、ならびにmおよびnの各々は、0より大きく、m/nは、2未満である。別の適切な触媒としては、
x(Ti−(OR)+y(HO−R−OH)+z((HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH))
の反応生成物の混合物を挙げることができ、式中、各Rは、独立して、C〜C10アルキル基であり、Rは、C〜Cアルキレン基であり、R、R、RおよびRの各々は、独立して、水素原子またはC〜Cアルキル基であり、Wは、酸素原子、硫黄原子、窒素含有基、リン含有基またはC〜Cアルキレン基であり、xおよびyの各々は、0より大きく、ならびにyは、zより大きい。
【0122】
ある実施形態において、触媒としては、SnまたはTiから成る群より選択される金属Qを挙げることができる。これらの実施形態において、触媒は、工程(a)の混合物中に、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約1.0mol未満、好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.5mol未満、およびさらに好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.1mol未満の濃度で存在し得る。特定の実施形態において、触媒は、混合物中にモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.05mol未満の濃度で、およびさらに好ましくはモノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.01molからQ約0.03molの範囲内の濃度で存在し得る。他の実施形態において、触媒としては、チタンを挙げることができ、これは、混合物中に、混合物中のモノマー繰り返し単位、再循環物および必要に応じてジアルキルエステル100mol当たりTi約0.01molからTi約0.03molの濃度で存在し得る。
【0123】
一部の実施形態において、再循環物は、線状オリゴマーおよび大環状ポリエステルオリゴマーのうちの少なくとも一方を含むことができる。線状オリゴマーは、例えば、酸キャップ型線状オリゴマーであり得る。他の実施形態において、再循環物は、高分子量大環状化合物を含むことができ、高分子量大環状化合物としては、大環状ポリエステルオリゴマーが挙げられるが、これに限定されない。
【0124】
一部の実施形態において、工程(a)における再循環物の少なくとも一部は、工程(b)における解重合からのものであり得る。ある実施形態では、再循環物の少なくとも一部を工程(a)の前に金属含有化合物の除去のために処理することができる。例えば、再循環物の少なくとも50重量%が処理され得る。好ましくは、再循環物の少なくとも80重量%が処理され得る。さらに好ましくは、再循環物の少なくとも90重量%が処理され得る。金属含有化合物は、チタン含有化合物であり得る。金属含有化合物は、触媒残渣を含むことができる。一部の実施形態において、再循環物の少なくとも一部は、未濾過であり得る。
【0125】
工程(a)の混合物中に少なくとも最初にある再循環モノマーの非再循環モノマーに対する重量比は、約1:99から約100:0の間であり得る。例えば、工程(a)の混合物中に少なくとも最初にある再循環モノマーの非再循環モノマーに対する重量比は、約5:95より大きくてよく、約10:90より大きくてよく、または約50:50より大きくてよい。一部の実施形態では、ジオールおよび再循環物からのモノマー単位の少なくとも約85重量パーセントを大環状ポリエステルオリゴマーに転化させることができる。好ましくは、ジオールおよび再循環物からのモノマー単位の少なくとも約98重量パーセントを大環状ポリエステルオリゴマーに転化させることができる。上述のように、工程(a)の混合物は、必要に応じてジアルキルエステルを含むことができる。大環状ポリエステルオリゴマーへのモノマーの全転化率は、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%およびさらに好ましくは少なくとも約98%であり得る。
【0126】
一部の実施形態において、ジオールは、再循環物中の酸に対して過剰なモルで混合物中に存在することができる。例えば、モル過剰は、約10%から約200%の間(約150%未満、約100%未満、約75%未満、約50%未満および約20%未満を含むが、これらに限定されない)であり得る。ある実施形態において、工程(a)の反応条件は、限られた量のジオールが、望ましくない副生成物テトラヒドロフランを形成するように反応し得るように、選択することができる。特定の実施形態では、工程(a)において、ジオールの約3重量%未満が、テトラヒドロフランを形成するために反応し得る。好ましい実施形態では、工程(a)において、ジオールの約1重量%未満、ジオールの約0.5重量%未満さえもが、テトラヒドロフランを形成するために反応し得る。
【0127】
一部の実施形態において、工程(a)における混合物には、水および/または酸素を実質的に含まないことがある。例えば、工程(a)における混合物は、50ppm以下の水濃度および/または20ppm以下の酸素濃度を有し得る。
【0128】
工程(a)および(b)は、様々な種類の反応装置を使用して行うことができる。例えば、一部の実施形態において、工程(a)および工程(b)の少なくとも一方は、少なくとも1つの連続または半連続反応装置を使用して行うことができる。別の実施形態において、工程(a)および工程(b)の少なくとも一方は、少なくとも1つの回分式反応装置を使用して行うことができる。他の実施形態において、工程(a)および工程(b)の少なくとも一方は、少なくとも1つの多段反応装置を使用して行うことができる。
【0129】
一部の実施形態において、工程(a)は、約240℃より低い、例えば、約230℃より低い、約210℃より低い、または約190℃より低い温度で行うことができる。一定の実施形態において、工程(a)は、約170℃から約210℃の範囲内の温度で行うことができる。特定の実施形態において、工程(a)は、さらに、ほぼ大気圧以上の圧力で行うことができる。
【0130】
一部の実施形態において、工程(b)は、工程(a)からの触媒の存在下で行うことができる。触媒としては、SiおよびTiから成る群より選択される金属Qを挙げることができ、この場合、触媒は、工程(b)に、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約2.0mol未満の濃度で存在し得る。好ましい実施形態において、触媒は、工程(b)に、モノマー繰り返し単位100mol当たりQ約0.2molからQ約0.7molの間の濃度で存在し得る。
【0131】
一部の実施形態において、工程(b)は、ポリアルキレンテレフタレート生成物をチタン触媒の存在下で熱に曝露することを含む場合がある。チタン触媒の濃度は、そのポリアルキレンテレフタレート生成物のモノマー単位100mol当たりTi約2mol未満であり得る。好ましい実施形態において、チタン触媒の濃度は、そのポリアルキレンテレフタレート生成物のモノマー単位100mol当たりTi約0.75molであり得る。工程(b)におけるチタン触媒は、工程(a)における触媒と同じであってもよい。
【0132】
一部の実施形態において、この方法は、工程(a)の前に再循環物からの金属含有化合物を沈殿させる工程をさらに含むことがある。この任意の沈殿工程は、水の添加を伴わずに行うことができ、また少なくとも約245℃の温度に少なくとも約10分間、再循環物を曝露することを含むことができる。沈殿後、その再循環物に溶解したままである金属含有化合物の濃度は、金属約200ppm未満、好ましくは金属約100ppm未満、さらに好ましくは金属約25ppm未満およびさらにいっそう好ましくは金属約5ppm未満である。金属は、チタンであり得る。
【0133】
さらに別の態様において、本発明は、大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法に関する。この方法は、一般に、混合物を熱に曝露して、ポリブチレンテレフタレート生成物を生成させる工程、および工程(a)からのポリアルキレンテレフタレート生成物を解重合して、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させる工程を含む。混合物は、少なくとも最初に、1,4−ブタンジオールと、ポリブチレンテレフタレートの解重合からの再循環物と、有機溶媒と、チタン触媒と、必要に応じてジメチルテレフタレートとを含むことができる。
【0134】
さらに別の態様において、本発明は、ポリアルキレンテレフタレート生成物を調製するための方法に関する。方法は、一般に、混合物を熱に曝露する工程を含む。混合物は、少なくとも最初に、ジオールと、ポリアルキレンテレフタレートの解重合からの再循環物と、有機溶媒と、触媒とを含む。
【0135】
さらに別の態様において、本発明は、大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法に関する。この方法は、一般に、(a)混合物を熱に曝露して、ポリアルキレンテレフタレート生成物を生成させる工程、および(b)工程(a)からのポリアルキレンテレフタレート生成物を解重合して、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させる工程を含む。混合物は、少なくとも最初に、ジオールと、線状オリゴマーと、有機溶媒と、触媒と、必要に応じてジアルキルエステルとを含む。一部の実施形態において、工程(a)において生成されるポリアルキレンテレフタレート生成物は、工程(b)の前に単離しなくてもよい。
【0136】
さらに別の態様において、本発明は、大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための連続または半連続プロセスに関する。プロセスは、一般に、アウトプットストリームを有する第一単位操作と、第一単位操作のアウトプットストリームの少なくとも一部を含むインプットストリームを有する第二単位操作とを含む。第一単位操作は、混合物を熱に曝露して、ポリアルキレンテレフタレート生成物を形成することに適応させることができ、一方、第二単位操作は、インプットストリームを熱に曝露して、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させることに適応させることができる。混合物は、少なくとも最初に、ジオールと、ポリアルキレンテレフタレートの解重合からの再循環物と、有機溶媒と、触媒と、必要に応じてジアルキルエステルとを含むことができる。
【0137】
さらに別の態様において、本発明は、大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法に関する。方法は、一般に、(a)混合物を熱に曝露して、ポリアルキレンテレフタレート生成物を生成させる工程、および(b)工程(a)からのポリアルキレンテレフタレート生成物を解重合して、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させる工程を含む。混合物は、少なくとも最初に、ジオールと、ポリアルキレンテレフタレートの解重合からの再循環物と、触媒と、必要に応じてジアルキルエステルとを含むことができる。一部の実施形態において、工程(a)の混合物は、さらに溶媒を含むことがある。一定の実施形態において、工程(a)からのポリアルキレンテレフタレート生成物は、約10ミリ当量/kg未満の酸濃度を有し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0138】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態は、有機溶媒中、触媒の存在下でジオールおよびジアルキルエステル(および/またはオリゴマー再循環物)を反応させて、非単離、低酸ポリアルキレンテレフタレートを形成することによる、低酸ポリアルキレンテレフタレート、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)を製造するための方法およびシステムを提供する。本発明は、有機溶媒中、触媒の存在下での低酸ポリアルキレンテレフタレート解重合から大環状ポリエステルオリゴマー(MPO)を調製するための方法およびシステムにも関する。これらの方法を併用することにより、本発明は、低酸ポリアルキレンテレフタレートの重合およびその後の解重合/環化によるMPOの調製方法を提供する。
【0139】
この併用法において、ポリアルキレンテレフタレートの解重合における副生成物として形成される残留オリゴマーの少なくとも一部を再循環させることにより、MPOへの反応体の全転化率を改善できることが判明した。従って、本発明は、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させるためのプロセスにおいて残留オリゴマー副生成物を再循環物として使用するための方法を提供する。残留オリゴマーは、ポリエステル、例えば低酸ポリアルキレンテレフタレートの解重合の副生成物である。有利なことに、解重合工程からのオリゴマー残渣を含有する再循環ストリームを重合工程における原料として使用して、低酸ポリアルキレンテレフタレートを形成し、それを、その後、解重合して、大環状ポリエステルオリゴマーを形成する。
【0140】
上で言及した再循環物の使用は、再循環ストリームから、それをポリアルキレンテレフタレートの重合に使用する前に、金属含有触媒残渣を除去することによって改善できることが判明した。従って、本発明は、低酸ポリアルキレンテレフタレートを解重合して、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させたプロセスストリームから触媒残渣を除去するための方法に関する。1つの実施形態において、本発明は、水を添加せずに混合物から金属含有化合物を沈殿させるための方法に関する。従って、本発明は、水を添加せず、かつ触媒残渣を増加させずに解重合プロセスストリームの濾過を可能ならしめることにより、解重合プロセスストリームからの残留オリゴマーの再循環を促進する。
【0141】
本明細書を通して、組成物、混合物、ブレンドおよび複合材が、特定の成分を有する包含するもしくは含むと記載されている場合、またはプロセスおよび方法が、特定の工程を有する、包含するまたは含むと記載されている場合、付加的に、列挙されている成分から本質的に成るまたはから成る本発明の組成物、混合物、ブレンドおよび複合材が存在し、ならびに列挙されている処理工程から本質的に成るまたはから成る本発明のプロセスおよび方法が存在すると考えられる。
【0142】
工程の順序およびある行為を行う順序は、本発明が作動可能なままである限り、重要ではないことは、理解されるはずである。さらに、2つまたはそれ以上の工程または行為が同時に行われることもある。
【0143】
本発明において利用することができる大環状ポリエステルオリゴマーとしては、式:
【0144】
【化6】

(式中、Aは、アルキレンまたはシクロアルキレンまたはモノもしくはポリオキシアルキレン基であり;およびBは、二価芳香族または脂環式の基である)
の構造繰り返し単位を有する大環状ポリ(アルキレンジカルボキシレート)オリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
好ましい大環状ポリエステルオリゴマーとしては、大環状ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(cPBT)、大環状ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート)(cPPT)、大環状ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(cPCT)、大環状ポリ(エチレンテレフタレート)(cPET)および大環状ポリ(1,2−エチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(cPEN)オリゴマー、ならびに2つまたはそれ以上の上記モノマー繰り返し単位を含むコポリエステルオリゴマーが挙げられる。
【0146】
本発明の方法を用いて、大環状ホモ−およびコ−ポリエステルオリゴマーを生成させることができる。1つの実施形態において、本発明の方法によって生成される大環状ホモ−およびコ−ポリエステルオリゴマーとしては、式:
【0147】
【化7】

(式中、A’は、アルキレンまたはシクロアルキレンまたはモノもしくはポリオキシアルキレン基であり;およびA’は、置換されていることがあり、非置換であることがあり、枝分かれしていることがあり、および/または線状であることがある)
の一般構造繰り返し単位を有するオリゴマーが挙げられる。このタイプのMPOの例としては、ブチロラクトンおよびカプロラクトン(この場合、重合度は1である)、ならびに2,5−ジオキソ−1,4−ジオキサン、およびラクチド(この場合、重合度は2である)が挙げられる。重合度は、3、4、5またはそれ以上である場合もある。2,5−ジオキソ−1,4−ジオキサンおよびラクチドの分子構造は、それぞれ、下記のようである:
【0148】
【化8】

一般に、本発明の方法によって生成される大環状ポリエステルオリゴマー(MPO)は、異なる重合度の種を含む。ここで、MPOに関しての重合度(DP)は、そのオリゴマー骨格中の同定可能な構造繰り返し単位の数を意味する。構造繰り返し単位は、同じ分子構造を有することもあり、または異なる分子構造を有することもある。例えば、MPOは、二量体、三量体、四量体、五量体および/または他の種を包含し得る。
【0149】
本発明の別の実施形態は、ポリ(ブチレンイソフタレート)をはじめとする低酸ポリ(アルキレンイソフタレート)を調製および/または解重合/環化するための方法を含むと考えられる。本発明のある実施形態は、低酸ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(アルキレンテレフタレート)、ポリ(プロピレンテレフタレート)および/またはこれらのコポリマーを調製するための方法を含む。さらに、本発明の別の実施形態は、ポリ(アルキレンテレフタレート)以外の低酸ポリ(アルキレンジカルボキシレート)を調製および/または解重合/環化するための方法を含むと考えられる。別の実施形態は、2つまたはそれ以上の種の混合物を調製および/または解重合/環化するための方法を含むと考えられ、この場合、前記2つまたはそれ以上の種は、次のカテゴリー:ポリ(アルキレンイソフタレート)、ポリ(アルキレンテレフタレート)および他のポリ(アルキレンジカルボキシレート)のうちの1つまたはそれ以上の任意の組み合わせから選択することができる。
【0150】
本発明の方法が、DMTなどのジアルキルテレフタレートの使用に関連している場合、それらの方法は、ジアルキルテレフタレートの少なくとも一部の代わりにテレフタル酸を使用する本方法の変形を包含することも考えられる。例えば、ジアルキルテレフタレートおよびジオールを使用してエステル交換を行う本発明の方法は、ジアルキルテレフタレートの代わりにテレフタル酸を使用し、エステル交換の代わりに直接エステル化を行う適応を含むと考えられる。
【0151】
特許請求の範囲に記載する本発明の方法、システムおよびプロセスは、本明細書に記載する実施形態からの情報を用いて開発される、規模拡大、変形および適応を包含すると考えられる。例えば、本発明は、本明細書に記載する実験室規模の実験によってその実行可能性が証明される、試験工場および工場規模の製造プロセスを含む。本明細書に記載する化学反応は、限定ではないが、例えば、回分式反応装置、プラグフロー型反応装置、連続攪拌タンク式反応装置、充填層反応装置、スラリー反応装置および流動層反応装置を含む、ポリマー製造および加工分野の通常の技術者に公知である反応装置を使用して行うことができる。本明細書に記載する化学反応は、回分操作、半連続操作および/または連続操作で行うことができる。
【0152】
ポリマー製造および加工分野の通常の技術者は、実験室規模から工場規模へのシステムの規模拡大を行うことができる。例えば、この分野の通常の技術者は、反応装置のタイプを選択することができ、反応速度データを得るための実験を設計することができ、反応装置設計のためのモデルを開発および適用することができ、経済的に最適な反応装置設計を開発することができ、ならびに/または実験工場および/もしくは現寸の反応装置での実験により反応装置設計を有効にすることができる。製品を製造するための反応装置および反応装置システムの設計に関する一般的な情報は、例えば、The Engineering Handbook,Section X,Richard C.Dorf(編集長),CRC Press Inc.,ISBN 0−8493−8344−7,pp.785−829(1995)の「Kinetics and Reaction Engineering」,John L.Falconer(編集者)において見出すことができる。
【0153】
材料の分離、単離および精製のための任意の適する技法、例えば、蒸留、抽出、反応性抽出、吸着、吸収、ストリッピング、結晶化、蒸発、昇華、核酸分離、気胞分離、膜分離および/または流体−粒子分離のための技法を、本発明の様々な実施形態に包含される製造プロセスでの適用に適応させることができる。分離プロセスおよびそれらの設計に関する一般的な情報は、例えば、The Engineering Handbook,Section VIII,Richard C.Dorf(編集長),CRC Press Inc.,ISBN 0−8493−8344−7,pp.579−657(1995)の「Separation Process」,Klaus Timmerhaus(編集者)において見出すことができる。
【0154】
特許請求の範囲に記載する本発明の方法、システムおよびプロセスは、ポリマー製造および加工分野の通常の技術者に公知である、ポンプ、熱交換器ならびに気相、液相および/または固相材料処理装置を含み得ることも考えられる。
【0155】
本発明の実施形態は、連続、半連続または回分プロセスの一部として行うことができる。反応装置は、一段であってよいし、また、多段であってよい。本発明の方法を当該技術分野において公知である反応装置、システムまたはプロセスと併用することができる、または本発明の方法に当該技術分野において公知である反応装置、システムまたはプロセスを補足することができると考えられる。
【0156】
本願における、例えば背景セクションにおける、任意の出版物への言及は、その出版物が、本願において提示する請求項のいずれかについての先行技術としての役を果たすという言及ではない。背景セクションは、明瞭にするために提示するものであり、いずれかの請求項についての先行技術の説明という意味は持たない。
【0157】
以下の一般定義は、本明細書において用いられる様々な用語および表現を理解する助けになり得る。
【0158】
定義
本明細書で用いる場合、「大環状」は、その分子構造内に少なくとも1つの環を有する環状分子であって、共有結合により連結してその環を形成する5個またはそれ以上の原子を含有する環状分子を意味すると解釈する。
【0159】
本明細書で用いる場合、「オリゴマー」は、同じまたは異なる式の1つまたはそれ以上の同定可能な構造繰り返し単位を含有する分子を意味すると解釈する。
【0160】
本明細書で用いる場合、「大環状ポリエステルオリゴマー(MPO)」は、エステル官能性を有する構造繰り返し単位を含有する大環状オリゴマーを意味すると解釈する。大環状ポリエステルオリゴマーは、典型的に、1つの特定の繰り返し単位の式から成る多数の分子を指す。しかし、大環状ポリエステルオリゴマーは、様々な数の同じまたは異なる構造繰り返し単位を有する、異なるまたは混合型の式から成る多数の分子も包含し得る。従って、用語「大環状ポリエステルオリゴマー」(単数形)と「大環状ポリエステルオリゴマー」(複数形)とは同義で用いることができる。また、本明細書では用語「大環状ポリエステルオリゴマー」と「大環状オリゴマー」とを同義で用いる。大環状ポリエステルオリゴマーは、コポリエステルまたは多成分ポリエステルオリゴマー、すなわち1つの環状分子内にエステル官能性を有する2つまたはそれ以上の異なる構造繰り返し単位を有するオリゴマーであり得る。
【0161】
本明細書で用いる場合、「実質的ホモ−またはコ−ポリエステルオリゴマー」は、構造繰り返し単位が、実質的に同じであるか、2つまたはそれ以上の異なる構造繰り返し単位から実質的に成る、ポリエステルオリゴマーを意味すると解釈する。別様に述べていなければ、本明細書に記載するポリエステルオリゴマーは、実質的ホモポリエステルオリゴマーならびに実質的コポリエステルオリゴマーである。
【0162】
本明細書で用いる場合、「アルキレン基」は、−C2n−(式中、n≧2)を意味すると解釈する。
【0163】
本明細書で用いる場合、「シクロアルキレン基」は、環状アルキレン基、−C2n−x−(式中、xは、環化(単数または複数)により置換されるHの数を表す)を意味すると解釈する。
【0164】
本明細書で用いる場合、「モノ−またはポリオキシアルキレン基」は、[−(CH−O−]−(CH−(式中、mは、1より大きい整数であり、ならびにnは、0より大きい整数である)を意味すると解釈する。
【0165】
本明細書で用いる場合、「二価芳香族基」は、その大環状分子の他の部分に結合する芳香族基を意味する。例えば、二価芳香族基としては、メタまたはパラに結合している単環式芳香族基(例えば、ベンゼン)を挙げることができる。
【0166】
本明細書で用いる場合、「脂環式の基」は、中に環状構造を含有している非芳香族炭化水素基を意味すると解釈する。
【0167】
本明細書で用いる場合、「C1〜4第一アルキル基」は、第一級炭素原子により連結された1から4個の炭素原子を有するアルキル基を意味すると解釈する。
【0168】
本明細書で用いる場合、「C1〜10アルキル基」は、直鎖ラジカルまたは分枝ラジカルを含む、1から10個の炭素原子を有するアルキル基を意味すると解釈する。
【0169】
本明細書で用いる場合、「メチレン基」は、−CH−を意味すると解釈する。
【0170】
本明細書で用いる場合、「エチレン基」は、−CH−CH−を意味すると解釈する。
【0171】
本明細書で用いる場合、「C2〜3アルキレン基」は、−C2n−(式中、nは、2または3である)を意味すると解釈する。
【0172】
本明細書で用いる場合、「C2〜6アルキレン基」は、−C2n−(式中、nは、2〜6である)を意味すると解釈する。
【0173】
本明細書で用いる場合、「置換フェニル基」は、1つまたはそれ以上の置換基を有するフェニル基を意味すると解釈する。置換フェニル基は、当該技術分野において認識されている置換パターンを有することができる。例えば、単一の置換基がオルト位にあってよく、メタ位にあってよく、またはパラ位にあってよい。多数の置換基についての典型的な置換パターンとしては、例えば、2,6−、2,4,6−および3,5−置換パターンが挙げられる。
【0174】
本明細書で用いる場合、「充填剤」は、大環状ポリエステルオリゴマーを含むブレンド材料に含めることができる、大環状ポリエステルオリゴマーまたは重合触媒以外の材料を意味する。1つまたはそれ以上の充填剤を、本明細書に記載のプロセスの前、間または後の任意の時点で導入することができる。充填剤は、所望の目的または特性を達成するために使用することができ、ならびに結果として生じるポリエステルポリマー中に存在することがあり、またはそれらの中の既知および/もしくは未知の物質に変換されることがある。例えば、充填剤の目的は、安定性、例えば化学、熱もしくは光安定性をブレンド材料もしくはポリマー組成物にもたらすこと;ポリマー組成物/生成物の強度を増大させること;ならびに/またはブレンド材料および/もしくはポリマー組成物の導電性および/もしくは熱伝導性を増大させることであり得る。充填剤は、色を生じさせるもしくは低減することもでき、特定の密度を達成するために重量もしくは嵩をもたらすこともでき、ガス透過性および透湿性を低減させることもでき、難燃性もしくは耐発煙性をもたらす(すなわち、残炎防止剤である)こともでき、より高価な材料の代用品になることもでき、加工を助長することもでき、ならびに/または他の望ましい特性をもたらすこともできる。充填剤の例は、数ある中でも、グラファイト、膨張黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素繊維、バックミンスターフラーレン、ダイヤモンド、無水ケイ酸マグネシウム(無水タルク)、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、チョップトファイバー、フライアッシュ、ガラス、ガラス繊維、ミルドガラスファイバー、ガラス微小球、微小中空球、砕石、ナノクレイ、線状ポリマー、モノマー、分枝ポリマー、エンジニアリングレジン、耐衝撃性改良剤、有機化クレイおよび顔料である。例えば特性のバランスを達成するために、MPOブレンドに多数の繊維を含めることができる。例えば、膨張黒鉛を含有するMPOブレンドに耐衝撃性改良剤を添加して、結果として生じるブレンドおよび/またはポリマー組成物が、高い耐衝撃性ならびに高い導電性を示すようにすることができる。
【0175】
様々な有機溶媒を使用して、本発明を実施することができる。一部の実施形態において、有機溶媒としては、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン、ビフェニル、トリフェニル、ジフェニルエーテル(またはそのハロゲン化誘導体)、アニソール、塩化メチレン、ジメトキシベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ジクロロナフタレンおよび/または過フルオロカーボンから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを挙げることができる。特定の実施形態において、有機溶媒しては、オルト−キシレンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒しては、オルト−ジクロロベンゼンを挙げることができる。一部の実施形態において、有機溶媒しては、アルカン、例えばテトラデカンおよびヘキサデカンを挙げることができる。他の実施形態において、有機溶媒しては、過フルオロ化合物、例えば過フルオロ(トリ−n−ブチルアミン)および過フルオロ(トリ−n−ペンチルアミン)を挙げることができる。
【0176】
図1は、本発明の1つの実施形態に従って、低酸ポリアルキレンテレフタレートを製造するためのプロセスを示すフロー図100である。図1に示されている例では、ジメチルテレフタレート(DMT)とブタンジオール(BDO)とを反応させて、低酸ポリブチレンテレフタレート(PBT)を生成させる。1つまたはそれ以上のインプットストリーム102が、DMT、BDOおよび必要に応じてPBTの解重合104からの残留オリゴマー副生成物をはじめとする反応体を供給する。1つまたはそれ以上のインプットストリーム102は、溶媒(すなわち、オルト−ジクロロベンゼン、oDCB)およびチタン触媒も供給する。プロセスは、低酸ポリアルキレンテレフタレートを生成させるための1つまたはそれ以上の単位操作106を含み、この単位操作においてエステル交換および重縮合反応が起こる。反応の間にガス108として発生するメタノールおよび水を捕捉し、液体形態に凝縮させることができる。以下は、エステル交換および重縮合の間に起こると考えられる反応の例である:
【0177】
【化9】

反応1は、平衡反応であり、生成されたメタノールを除去することによって前に進ませる。
【0178】
【化10】

反応2に図示した重縮合反応は、平衡反応であり、生成されたBDOを除去することによって前に進ませる。
【0179】
これらの反応は、必須ではないが、高熱を適用して、および/もしくは真空を適用して行うことができ、ならびに/またはほぼ大気圧(または大気圧より高い圧)および溶媒のほぼ沸点温度で行うことができる。非常に低い触媒濃度を用いることができ、例えば、Ti約0.03mol%未満(モノマー繰り返し単位100mol当たり、Ti0.03mol)を用いることができる。1つまたはそれ以上の単位操作106は、エステル交換および重縮合反応を行うための1つまたはそれ以上の反応装置を含む。反応装置(単数または複数)は、一段であってよいし、または多段であってよく、ならびにプロセス100は、連続プロセスであってよいし、半連続プロセスであってよいし、または回分プロセスであってよい。標準的なPBT製造方法より低い温度で反応を行うことができるので、反応体DMTの昇華を最小にするための特別な反応装置は、必要ないはずである。さらに、エステル交換を行うのと同じ反応容器で、重縮合反応を少なくとも一部は行うことができるので、必要とされる反応装置の数を減少させることができる。
【0180】
例えば、次のとおり、具体例としての反応3および4に示すように、
【0181】
【化11】

エステル交換および/または重縮合工程において、テトラヒドロフラン(THF)を形成する副反応が起こり得る。低温および低触媒濃度をエステル交換工程および/または重縮合工程において用いる実施では、これらの副反応を減少させることができることが判明した。
【0182】
図1に示されているプロセス100は、低酸PBTの製造の際に残留オリゴマーを反応体として供給するインプットストリーム104を必要に応じて含むことができる。例えば、プロセスストリーム104は、PBTの解重合からの残留線状オリゴマー、例えば、下に示す末端にカルボン酸を有する線状オリゴマー種:
【0183】
【化12】

を含むことができ、式中、nは、一般に1から約5の整数であるが、より高い分子量の種も可能である。低酸PBTの重合における末端にカルボン酸を有する線状オリゴマー種の反応体としての使用は、例えば、次のとおり、反応5に図示するように、
【0184】
【化13】

酸とBDOとの縮合に起因して、水の形成をもたらす。線状オリゴマーを高分子量PBTに転化させるために必要なBDOの量は、反応体として使用される線状オリゴマーの酸レベルを測定することにより決定することができる。その線状体に存在する酸を基準にしてわずかにモル過剰(例えば、約10%から約50%)のBDOが、結果として生じるPBT中の残留酸が少ない高分子量ポリマーにその線状体を転化させるために妥当であることが判明した。
【0185】
その後、その重合のアプトプットストリーム110を非PBT種の除去のために濾過し、そして酸種が形成しないように安定化させることができる。結果として生じるPBT生成物114が、輸送に適便な形態になるように、その低酸PBTをペレット化、成形または別様に加工することができる112。
【0186】
より少ない触媒をcPBTの製造に使用できることは、より少ない触媒の使用からの費用節約に加えて利益をもたらす。例えば、使用する触媒が少ないほど、希薄解重合反応において末端にジオールを有する線状体のレベルが低くなり、その結果としてcPBT濾液ストリームにおける残留酸のレベルが低下する。また、より少ない酸およびより少ないチタン触媒の存在は、線状副生成物の濾過性を向上させ、その結果、付随する処理および資本設備経費が減少する。
【0187】
ある実施形態において、低酸PBTを製造するための溶液重合プロセスは、従来の溶融または固相プロセスに勝る改善をもたらす。例えば、低酸PBTを製造するための溶液重合プロセスは、大気圧で重合を行うことができるため、またさらに、ある実施形態では、溶液重合プロセスは、PBTを単離するための別途の工程を必要としないため、より酸濃度の高いPBTの従来の製造プロセスに比べて必要とする資本設備が少ない。
【0188】
図2は、低酸ポリアルキレンテレフタレートを重合し、その後、解重合/環化することによって、大環状ポリエステルオリゴマーを製造するためのプロセスを示すフロー図200である。図2に示されている例では、DMTとBDOとを反応させて、低酸PBT110を生成させ、それを解重合(環化)してcPBTを形成する。重合工程106のアウトプットストリーム110は、低酸PBTを含有し、解重合(環化)工程202におけるインプットとして使用される。重合工程において使用される1つまたはそれ以上の反応容器を使用して解重合を行うことができるので、容器から容器へと重合アウトプット110を移す必要はないはずである。1つの実施形態では、単一の単位操作204が、重合工程と解重合工程との両方を含む。ある実施形態において、低酸PBTは、本質的に、cPBTの生成における中間体である。こうして生成された低酸PBTを決められた分子量に増やして、改善された全cPBT生成速度および/または特性をもたらすことができる。例えば、ある実施形態では、中間体低酸PBTの平均分子量を、約1000Daより大きく、約5000Daより大きく、約10,000Daより大きく、約15,000Daより大きく、約25,000Daより大きく、約40,000Daより大きく、約60,000Daより大きく、約75,000Daより大きく、約100,000より大きく、または約125,000Daより大きく増やすことができる。ある実施形態では、中間体低酸PBTの平均分子量をあまり大きく増やさないようにすることができ、例えば、中間体低酸PBTの平均分子量を、約125,000Daより低く、約100,000Daより低く、約75,000Daより低く、約60,000Daより低く、約40,000Daより低く、約25,000Daより低く、約15,000Daより低く、約10,000Daより低く、または約5000Daより低く保つことができる。ある実施形態では、中間体低酸PBTの平均分子量を、例えば、約1000Daから約125,000Da、約5,000Daから約75,000Da、約15,000から約60,000、約25,000から約40,000Da、または約40,000Daから約100,000Daの範囲内に保つことができる。
【0189】
これらの図に示されている単位操作は、示されているもののほかにインプットおよびアウトプットストリームを含み得る。例えば、図2において、溶媒を添加して、重合工程106の生成物を、解重合工程202に必要なレベルに希釈することができる。示されているプロセスストリームが、挙げたもの以外の成分を含有し得る。便宜上、プロセスストリームの代表的な内容を提供する。
【0190】
図2のプロセスにおいて、解重合反応のアウトプットストリーム206は、oDCB溶媒中のcPBT生成物ばかりでなく、例えば残留オリゴマー、触媒残渣、THF複合体、非MPO大環状物質および他の化合物をはじめとする副生成物も含有し得る。解重合アウトプットストリーム206を濾過および/または他の分離処理に付して、cPBT生成物212および/または残留オリゴマー210を抽出することができる。cPBT生成物212は、容易に輸送できる形態に変換するために、ペレット化および/または成形214に付すことができる。この工程で用いることができるペレット化および成形方法は、例えば、Thompsonらによる「Isolation,Formulation,and Shaping of Macrocyclic Oligoesters」と題する共有米国特許出願公開番号US2004/0254281に記載されており、この原本は、その全体が本明細書に参考として取り入れられている。
【0191】
例えば、上で言及した末端にカルボン酸を有する線状オリゴマー種を含む残留オリゴマーが豊富な再循環物ストリーム210を、解重合アウトプットストリーム206から分離することができる。その後、その残留オリゴマーが豊富なストリーム210を重合工程(106または204)においてインプットとして使用することができ、それによってモノマーのcPBTへの全転化率が増大する。
【0192】
重合工程(図1および2の106または204)においてオリゴマー副生成物を再循環物として使用する前に触媒残渣を除去することは、所望の低酸ポリエステルを生じさせると同時に、十分に高い分子量に増やすための反応に必要なBDOが少ないため、必須ではないが、一般には好ましい。チタン不含オリゴマーまたは粗製残留オリゴマーを使用して、またモノマー(すなわち、BDOおよびDMT)と化合する残留オリゴマーと共に使用して、cPBTを生成させる際の使用に適するPBTへの残留オリゴマーの再重合を証明する。
【0193】
触媒、例えばoDCB溶媒を含有する希釈PBT−解重合反応混合物に添加されるチタン触媒は、十分な時間、十分高い温度に曝露されると、可溶性で均一な形態から不溶性の形態へと転移するであろう。沈殿した触媒残渣を、適切な分離技術、例えば濾過、遠心分離またはデカンテーション技術により、解重合反応生成物−例えば、cPBTおよび末端に酸を有する低分子量の線状オリゴマー−から分離することができる。水での失活工程を伴わずに解重合反応の生成物および副生成物からチタンを除去できることにより、この一貫プロセス全体のチタンのqを増加させずに、残留オリゴマーを再循環させてPBTを、そしてその後cPBTを形成することができる。
【0194】
図3は、本発明の1つの実施形態に従って、解重合プロセスストリームから触媒残渣を除去するためのプロセスの実施形態における単位操作を示すプロセスフロー図である。一部の実施形態において、触媒残渣の除去は、その中の均一なTi含有触媒材料が不均一になり、溶液から沈殿するために、十分に長い時間、十分に高い温度で解重合生成物ストリームを加熱することを含む。例えば、oDCBなどの溶媒に溶解したPBT(例えば、図2のストリーム110によって供給されるものだが、他の手段によって供給されることもある)をTi含有触媒の存在下で解重合/環化306に付して、cPBT、溶解した触媒残渣、残留オリゴマーおよび他の副生成物を含有するアウトプットストリーム310を生じさせる。1つの実施形態において、解重合および環化は、より低い温度、例えば180℃で起こる。ある実施形態において、例えば、解重合/環化は、約245℃より低い温度、約225℃より低い温度、約200℃より低い温度、および約190℃より低い温度で起こる。従って、図3における解重合工程306は、図2の解重合工程202に類似したものであり得る。図3の工程308では、解重合反応生成物310を少なくとも約200℃、好ましくは少なくとも約225℃、およびさらに好ましくは少なくとも約245℃の温度に加熱する。溶媒の蒸発を回避するために、加熱工程308を圧力下で−例えば、約50psiから約100psi、および好ましくは約80psiで(この場合、温度は、約245℃である)−行うことができる。十分な時間−例えば、約10分から約30分間(この場合、温度は、約245℃である)−の後、Ti触媒は、可溶性から不溶性の形態に転移し、溶液から沈殿する。その後、加熱工程308からのアウトプットストリーム312中の触媒を単純に濾過または別様に除去314して、触媒残渣が豊富な固体フィルターケーキ316、ならびに溶解したcPBTおよび残留オリゴマーを含有する濾液ストリーム318を生じさせることができる。濾液318は、1つまたはそれ以上の追加の分離/濾過工程320でさらに処理して、生成物cPBTを単離すること、および残留オリゴマー324(これは、重合において反応体として使用することができ、例えば、図2における単位操作106において使用されている210に類似している)を単離することができる。
【0195】
解重合/環化工程306および残留触媒を除去するための加熱工程308は、同じ容器で行うことができ、または同じ単位操作304の一部として行うことができる。1つの実施形態において、解重合および触媒残渣の沈殿は、部分的に重なるか、同時に起こる。例えば、図4は、図3におけるプロセス300の変形を示すプロセスフロー図400であり、この場合、解重合/環化402は、重合の間に金属含有触媒残渣を転化させて溶液から沈殿させるために十分な高さの温度で(および十分な長さの滞留時間にわたって)行われる。例えば、ある実施形態において、解重合/環化402は、少なくとも約245℃で少なくとも約10分の滞留時間にわたって;少なくとも約200℃で少なくとも約30分の滞留時間にわたって;少なくとも約225℃で少なくとも約20分の滞留時間にわたって;少なくとも約245℃で少なくとも約15分の滞留時間にわたって;少なくとも約245℃で少なくとも約20分の滞留時間にわたって;および少なくとも約260℃で少なくとも約5分の滞留時間にわたって行われる。図4のプロセス400では、触媒残渣を除去するための別途の加熱工程は必要でなく、むしろ、環化からのアウトプットストリーム312を、図3の工程314におけるような濾過、デカンテーション、遠心分離および/または他の分離314に付して、触媒残渣316およびcPBT残留オリゴマー318を生じさせる。
【0196】
本発明の方法において使用することができる重合触媒および解重合/環化触媒としては、公知の有機すずおよび有機チタネート化合物が挙げられるが、他の触媒を使用してよい。重合を行ってポリエステルを形成し、その後、それを解重合してMPOを形成する本発明の実施形態では、重合工程および解重合工程に同じ触媒を使用することができ、または異なる触媒を使用することができる。
【0197】
重合および/または解重合/環化触媒として使用することができる、例示的な有機すず化合物としては、1,1,6,6−テトラ−n−ブチル−1,6−ジスタンナ−2,5,7,10−テトラオキサシクロデカン;塩化n−ブチルすず(IV)・二水酸化物;酸化ジアルキルすず(IV)オキシド、例えば、酸化ジ−n−ブチルすず(IV)および酸化ジ−n−オクチルすず、ならびに非環式および環式モノアルキルすず(IV)誘導体、例えば、n−ブチルすずトリ−n−ブトキシド;ジアルキルすず(IV)ジアルコキシド、例えば、ジ−n−ブチルすず(IV)ジ−n−ブトキシドおよび2,2−ジ−n−ブチル−2−スタンナ−1,3−ジオキサシクロヘプタン;ならびにトリアルキルすずアルコキシド、例えば、トリブチルすずエトキシドが挙げられる。例えば、Pearceらの米国特許第5,348,985号を参照のこと。
【0198】
また、下に示す一般式(I)を有するトリススタンノキサンを重合および/または解重合/環化触媒として使用することができる:
【0199】
【化14】

(式中、Rは、C1〜4第一アルキル基であり、Rは、C1〜10アルキル基である)。
【0200】
加えて、下に示す一般式(II)を有する有機すず化合物を重合および/または解重合/環化触媒として使用することができる:
【0201】
【化15】

(式中、Rは、上で定義したとおりである)。
【0202】
重合および/または解重合/環化触媒として使用することができる、例示的なチタネート化合物としては、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、および次のように示される一般式(III)を有するチタネート化合物:
【0203】
【化16】

(式中、各Rは、独立してアルキル基であり、または2個のR基が一緒になって、二価脂肪族炭化水素基を形成し;Rは、C2〜10二価または三価脂肪族炭化水素基であり;Rは、メチレンまたはエチレン基であり;ならびにnは、0または1である)
が挙げられる。
【0204】
上記一般式を有するチタネート化合物の例を表1に示す。
【0205】
【化17】

次の一般式の部分を少なくとも1つ有するチタン酸エステルを触媒として使用することもできる:
【0206】
【化18】

または
【0207】
【化19】

(式中、各Rは、独立してC2〜3アルキレン基であり;Rは、C1〜6アルキル基または非置換もしくは置換フェニル基であり;Zは、OまたはNであり(但し、Zが、Oであるとき、m=n=0であり、Zが、Nであるとき、m=0または1であり、およびm+n=1であることを条件とする);各Rは、独立してC2〜6アルキレン基であり;ならびにqは、0または1である)。
【0208】
こうしたチタネート化合物の例を式(VI)および式(VII)として下に示す:
【0209】
【化20】

本発明の実施形態において使用することができる他の触媒としては、例えば、共有米国特許第6,906,147号(この本文は、その全体が本明細書に参考として取り入れられている)に記載されているアリールチタネートが挙げられる。また、ポリマー含有有機金属触媒を本発明の方法において使用することができる。これらとしては、Wangによる共有米国特許第6,831,138号(この本文は、その全体が本明細書に参考として取り入れられている)に記載されているポリマー含有触媒が挙げられる。
【0210】
一部の実施形態において、触媒は、好ましくは、重縮合と解重合/環化との両方において使用することができるタイプのものである。1つの実施形態において、触媒が、低酸PBTを生成させるための(すなわち、重縮合による)反応において使用され、その後、解重合/環化に付されない場合、触媒は、任意の公知ポリエステル形成用触媒、例えば、金属酸化物、例えば酸化アンチモン;遷移金属塩、例えば酢酸亜鉛および/もしくは酢酸コバルト;Hg、Pb、Cd、Mn、Cr、MoもしくはWの塩;すず化合物および/もしくはチタネート化合物;またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0211】
2つまたはそれ以上の異なる触媒を利用することは、様々な実施形態の範囲内である。例えば、2つまたはそれ以上の触媒を使用して、重合および/または解重合/環化の速度を変えることができる。また、ほとんどまたはまったく活性がない触媒を助触媒と併用することもできる。その(それらの)触媒の存在下で反応体の混合物に助触媒を添加することによって、反応を、要求により開始および/または加速することができる。様々な触媒/助触媒系が、例えば、2006年1月10日出願の共有米国特許出願第11/329,454号(この本文は、その全体が本明細書に参考として取り入れられている)に記載されている。
【0212】
ある触媒は、それら自体、反応生成物であり得、それらは、その後、重合および/または解重合/環化反応を触媒するために使用される。例えば、Phelpsらによる米国特許第6,787,632号(‘632特許)(この本文は、その全体が本明細書に参考として取り入れられている)には、
x(Ti−(OR)+y(HO−R−OH)+z((HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH))
の反応生成物の混合物が記載されている。この反応生成物の混合物は、好ましくは、HO−R−OH以外の二官能性ジオールを実質的に含まない。すなわち、混合物は、好ましくは、(HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH)を実質的に含まない。この文脈における「実質的に含まない」とは、その反応生成物の混合物が、HO−R−OH以外のすべての二官能性ジオールの少なくとも90%、好ましくは95%がないことを意味し、これは、本来存在するジオールの量によって決まる。
【0213】
上の式を参照して、各Rは、独立してC〜C10アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基である。Rは、C〜Cアルキレン基、例えば、エチレン基、プロピレン基、またはブチレン基である。R、R、RおよびRの各々は、独立して、水素原子またはC〜Cアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基である。しかし、RおよびRの少なくとも一方、ならびにRおよびRの少なくとも一方は、C〜Cアルキル基である。従って、(HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH)は、第二または第三アルコールである。Wは、酸素原子、硫黄原子、窒素含有基[例えば、−N(R)−基(この場合、Rは、水素原子またはC〜Cアルキル基である)]、リン含有基[例えば、−P(R)−基(この場合、Rは、水素原子またはC〜Cアルキル基である)]、または好ましくは、C〜Cアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基もしくはブチレン基である。xおよびyの各々は、0より大きく、yは、zより大きい。従って、(HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH)よりHO−R−OHの方が大きい。
【0214】
チタネートとジオール(単数または複数)との反応は、有機溶媒中で行ってよく、また、ニートで行ってもよい。有機溶媒は、それが所望の反応に、および反応生成物の混合物の特性に干渉しない限り、使用することができる。使用することができる例示的な有機溶媒としては、クロロ炭化水素、例えば、クロロ芳香族炭化水素(例えば、o−ジクロロベンゼン)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、プロトン供与性化合物、例えば水または酸は、この反応の間に存在しない。
【0215】
反応生成物の混合物は、複分解反応によって調製することができる。反応は、それが反応生成物の所望の混合物を生じさせる限り、いずれの温度および圧力でも行うことができる。例えば、チタネートとジオール(単数または複数)との反応は、約25℃から約190℃、約120℃から約180℃、または約140℃から約170℃の範囲内の温度で行うことができる。反応は、不活性環境、例えば窒素環境で行うことができるが、こうした条件は、必須ではない。反応は、いずれの特定の装置および特定の処理工程にも限定されない。反応は、攪拌/かきまぜ、加熱および蒸留/還流能力を有する反応容器において行うことができる。
【0216】
反応生成物の混合物は、本発明の様々な実施形態において重合および/または解重合/環化触媒として使用することができる。反応生成物の混合物は、その形成後に添加される溶媒を有することがあり、または混合物は、その混合物を形成するための反応の間に存在した溶媒を含有し得る。加えて、反応生成物は、冷却するか、貧溶媒を添加して溶液から沈殿させ、その後、濾過することによって、回収することができる。加えて、溶媒を含み得る揮発成分は、加熱しながら、または加熱せずに、真空下で除去することができる。
【0217】
一例では、x、yおよびzの各々が、零より大きく、y=2x−zである。この例において、出発ジオール、HO−R−OHおよび(HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH)のモルの合計は、チタネート、Ti−(ORのモル量の2倍である。
【0218】
別の例において、zは、零であり、yのxに対する比(すなわち、HO−R−OHのTi−(ORに対するモル比)は、2より大きく、そのために、反応出発原料中の過剰のジオールを規定する。この例では、(HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH)は存在しない。他の例において、yのxに対する比は、3より大きく、4より大きく、または5より大きい。
【0219】
ある例において、Wは、C〜Cアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基である。他の例において、Rは、イソプロピル基であり;Rは、ブチレン基であり;R、RおよびRの各々は、メチル基であり;ならびにRは、水素原子である。この例において、チタネートは、テトライソプロピルチタネートであり、ジオールは、1,4−ブタンジオールおよび2−メチル−2,4−ペンタンジオールである。
【0220】
前記‘632特許には、
n(Ti−(OR)+(2n−m)(HO−R−OH)+m((HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH))
の反応生成物の混合物も記載されている。この反応生成物の混合物は、本発明の様々な実施形態において重合および/または解重合/環化触媒として使用することができる。反応生成物の混合物には、二官能性ジオール、例えば、HO−R−OH)および(HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH)を実質的に含まない。各Rは、独立して、C〜C10アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基である。Rは、C〜Cアルキレン基、例えばメチレン基、プロピレン基、またはブチレン基である。R、R、RおよびRの各々は、独立して、水素原子またはC〜Cアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基であるが、但し、RおよびRの少なくとも一方、ならびにRおよびRの少なくとも一方は、C〜Cアルキル基である。Wは、酸素原子、硫黄原子、窒素含有基[例えば、−N(R)−基(この場合、Rは、水素原子またはC〜Cアルキル基である)]、リン含有基[例えば、−P(R)−基(この場合、Rは、水素原子またはC〜Cアルキル基である)]、またはC〜Cアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基もしくはブチレン基)である。mおよびnの各々は、0より大きい。
【0221】
ジオール、HO−R−OHおよび(HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH)のモルの合計は、チタネート、Ti−(ORのモル量の2倍である。ある例において、Wは、C〜Cアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基である。ある例において、Rは、イソプロピレン基であり、従って、チタネートは、テトライソプロピルチタネートである。他の例において、Rは、ブチレン基であり、従って、ジオールは、1,4−ブタンジオールである。
【0222】
別の例において、Rは、イソプロピル基であり;Rは、ブチレン基であり;R、RおよびRの各々は、メチル基であり;ならびにRは、水素原子である。この例において、酸化チタンは、テトライソプロピルチタネートであり、ジオールは、1,4−ブタンジオールおよび2−メチル−2,4−ペンタンジオールである。
【0223】
ある例において、出発ジオール(HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH)のすべての出発ジオール(HO−R−OHおよび(HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH))に対するモル比である、mの2nに対する比は、約0.1から約0.5、約0.15から約0.45、約0.15から約0.35、または約0.15から約0.25の範囲内である。
【0224】
反応生成物の混合物は、反応後に添加され得る有機溶媒をさらに含み得る。ある例において、そのチタネートとジオールとの反応は、有機溶媒中で行われる。反応生成物の混合物の所望の特性に干渉しない限り、いずれの有機溶媒を使用してもよい。使用することができる例示的な有機溶媒としては、クロロ炭化水素、例えばクロロ芳香族炭化水素(例えば、o−ジクロロベンゼン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0225】
従って、反応生成物の混合物は、予め決められた量のTi−(OR、HO−R−OH、(HO)−C(R)(R)−W−C(R)(R)−(OH)の各々、および使用する場合には溶媒を反応容器に添加し、予め選択された温度および圧力でこれらの試薬を混合することによって調製することができる。蒸留を行ってR−OHを除去する。反応の後に、その量のR−OH(例えば、イソプロピルアルコール)がその反応から遊離され得る。従って、反応をR−OHの沸点に加熱して、蒸去され得るR−OHがもうなくなったら、反応は完了である。あるいは、その反応から定期的に取ったサンプルにおいて、NMRを用いて反応をモニターしてよい。出発チタネート、出発ジオール、ジオールの比およびそれらのチタネートに対する比、何の溶媒を用いるか、ならびに反応温度および圧力をはじめとする因子に依存して、反応生成物の混合物は、異なる形態をとり、例えば、溶液として、固体(すなわち、溶液からの沈殿)として、または液体として得ることができる。
【0226】
‘632特許には、
n(Ti−(OR)+m(HO−R−OH)
の反応生成物の混合物も記載されている。反応生成物のこの混合物は、本発明の様々な実施形態において重合および/または解重合/環化触媒として使用することができる。各Rは、独立して、C〜C10アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基である。Rは、C〜Cアルキレン基、例えばエチレン基、プロピレン基またはブチレン基である。mおよびnの各々は、0より大きい。mのnに対する比(すなわち、(HO−R−OH)のTi−(ORに対するモル比)は、2より大きい。
【0227】
一例において、Rは、イソプロピル基であり、従って、チタネートは、テトライソプロピルチタネートである。別の例において、Rは、ブチレン基であり、従って、ジオールは、1,4−ブタンジオールである。さらに別の詳細な例において、Rは、イソプロピル基であり、Rは、ブチレン基である。
【0228】
ある例において、Ti−(ORのHO−R−OHに対するモル比である、mのnに対する比は、約2から約6の範囲内である。他の例において、この比は、約2.5から約5.5、約3から約5、または約3.5から約4.5の範囲内である。
【0229】
過剰なHO−R−OHは、反応後に回収され得、残留HO−R−OHの実質的にすべてを、その反応生成物の混合物の残分から分離する。除去は、従来の技術、例えば沈殿、濾過、蒸留および/または真空蒸発によって行うことができる。
【0230】
チタネート(すなわち、Ti−(OR)とジオール(すなわち、HO−R−OH)との間の反応は、溶媒なしで、すなわちニートで行うことができ、従って、その反応生成物の混合物は、溶媒を一切含まない。しかし、反応生成物の混合物に溶媒を添加することができる。
【0231】
一例において、反応生成物の混合物は、予め決められた量のTi−(ORおよびHO−R−OHの各々を反応容器に添加し、予め選択された温度および圧力でこれらの試薬を混合することによって調製することができる。蒸留を行ってR−OHを除去する。反応後に、R−OH(例えば、イソプロピルアルコール)は、その反応から遊離され得る。従って、その反応をR−OHの沸点に加熱して、蒸去され得るR−OHがもうなくなったら、反応は完了である。あるいは、その反応から定期的に取ったサンプルにおいて、NMRを用いて反応をモニターしてもよい。出発チタネート、出発ジオール、ジオールのチタネートに対する比、ならびに用いる反応温度および圧力をはじめとする因子に依存して、反応生成物の混合物は、異なる形態をとり、例えば、固体または液体として得られる。
【0232】
‘632特許は、重合および/または解重合/環化のための触媒として使用することができる反応生成物を生成させるための方法の具体的な例を提供しており、それらは次のように記載されている。
【0233】
Ti−(ブタンジオール:ジエチレングリコール)
磁気攪拌棒を装備し、セプタムを取り付けた100mLフラスコを真空下で火炎乾燥させ、その後、不活性ガスを充填する。テトライソプロピルチタネート(15mmol)を添加し、その後、ジオールの混合物(合計30mmol)、そして乾燥o−ジクロロベンゼン(25mL)を添加する。すべての試薬を添加した後、フラスコにショートパス蒸留ヘッドを取り付け、油浴中で1時間、140℃に加熱する。テトライソプロピルチタネートとジオールとの反応から遊離したイソプロピルアルコールを回収し、その後、すべてのイソプロピルアルコールが除去されたことを保証するために、溶液を200℃の油中で加熱して、15mLのo−ジクロロベンゼンを取り除く。冷却の際、得られた溶液は、チタンが約1Mであった。上述のジオール混合物がテトライソプロピルチタネートのモル部当たり、3モル部のブタンジオールおよび1モル部のジエチレングリコールを含有する場合、触媒を、本明細書では、略記により「Ti(BD:DEG)(3:1)」と呼ぶ。上述のジオール混合物がテトライソプロピルチタネートのモル部当たり1モル部のブタンジオールおよび1モル部のジエチレングリコールを含有する場合、触媒を、本明細書では、略記により「Ti(BD:DEG)(1:1)」と呼ぶ。
【0234】
Ti−(ブタンジオール:2−メチル−2,4−ペンタンジオール)
磁気攪拌棒を装備し、セプタムを取り付けた100mLフラスコを真空下で火炎乾燥させ、その後、不活性ガスを充填する。テトライソプロピルチタネート(15mmol)を添加し、その後、ジオールの混合物(合計30mmol)、そして乾燥o−ジクロロベンゼン(25mL)を添加する。すべての試薬を添加した後、フラスコにショートパス蒸留ヘッドを取り付け、油浴中で1時間、140℃に加熱する。テトライソプロピルチタネートとジオールとの反応から遊離したイソプロピルアルコールを回収し、その後、すべてのイソプロピルアルコールが除去されたことを保証するために、溶液を200℃の油中で加熱して、15mLのo−ジクロロベンゼンを取り除く。冷却の際、得られた溶液は、チタンが約1Mであった。上述のジオール混合物がテトライソプロピルチタネートのモル部当たり、4モル部のブタンジオールおよび1モル部の2−メチル−2,4−ペンタンジオールを含有する場合、触媒を、本明細書では、略記により「Ti(BD:HG)(4:1)」と呼ぶ。
【実施例】
【0235】
実験例
低酸PBTの溶液重合およびcPBTを形成するためのその後の解重合/環化を実証する実験を行った。より詳細には、実施例1は、有機溶媒中での重合(「溶液重合」)によって低酸PBTを製造する方法を例示し;実施例2は、低酸PBTの解重合によりcPBTを形成する方法を例示し;および実施例3は、低酸PBTから製造されるcPBTを調製、精製、単離および重合するための方法を例示する。
【0236】
PBT解重合後の反応混合物からチタン触媒残渣の除去を実証する実験も行った。実施例4は、単離されたフィルターケーキの溶液からチタン残渣を除去する方法を例示し;実施例5は、解重合反応混合物からチタン残渣を除去する方法を例示し;および実施例6は、解重合反応混合物中のチタン沈殿および沈降挙動を特性付けするための方法を例示する。
【0237】
最後の組みの実験は、cPBTを製造するためのPBTの解重合/環化において形成される残留オリゴマー副生成物の再循環を例示する。実施例7は、線状オリゴマー副生成物を再循環させてPBTを製造する方法を例示し;実施例8は、残留線状オリゴマーとモノマーとを併用する、およびモノマーを使用するが残留オリゴマーを使用しない、PBTを形成するための重合を実証し;実施例9は、ガラス器具内での重合残留線状オリゴマーの解重合を例示し;ならびに実施例10は、高温および加圧下でのプラグフローコイルにおける重合残留線状オリゴマーの解重合を例示する。
【0238】
これらの実験は、英国、モーカム(Morecambe)のAvocado Research Chemicals,Ltd.からの1,4−ブタンジオール(「BDO」)の使用を用いた。BDOは、モレキュラーシーブで乾燥させ、そのため、使用前にわずか約50ppmしか水を含有していなかった。テトライソプロピルチタネート触媒(「TPT」)は、ペンシルバニア州、モリスビル(Morrisville)のGelest,Inc.から入手した。そのTPTを蒸留により精製し、その後、窒素下で保管した。ジメチルテレフタレート(「DMT」)(99+%)は、ミズーリ州、セントルイスのAldrich Chemical Co.から入手し、さらに精製せずに使用した。無水オルト−ジクロロベンゼン溶媒(「oDCB」)は、ニュージャージー州、ギブスタウンのEM Scienceから入手し、これもさらに精製せずに使用した。HPLCグレードのアセトニトリル、試薬グレードのテトラヒドロフラン(「THF」)および純粋なフェナントレンは、Aldrichから入手し、すべて、受け取ったまま使用した。テキサス州、ヒューストンのPorocel CorporationのChlorosel801を塩基性アルミナとして使用した。実施例5においてTi(BD:HG)(4:1)と示すチタン触媒は、テトライソプロピルチタネート、1,4−ブタンジオールおよび2−メチル−2,4−ペンタンジオールの反応生成物の混合物であり、これは、本明細書において上で説明した手順を用いて得た。これらの実験において使用した、市場供給源のポリブチレンテレフタレート(PBT)としては、マサチューセッツ州、ピッツフィールドのGE Plasticsにより製造されているValox(登録商標)、ミシガン州、ワイアンドットのBASF Corporationによって製造されたUltradur(登録商標)B6550およびB2550、ならびにノーカロライナ州、シェルビーのTicona Enginieering Polymersによって製造されたCelanex(登録商標)2001が挙げられる。Valox(登録商標)315およびUltradur(登録商標)B6550は、溶融重合PBTであり、一方、Celanex(登録商標)2001は、固相重合PBTである。
【0239】
実施例7のチタン不含線状オリゴマーは、ニューヨーク州、スケネクタディのCyclics Corporationから得た粗製フィルターケーキを使用して調製した。このフィルターケーキは、ノースカロライナ州、リーランドのPressure Chemical Corp.におけるcPBTの委託生産(toll production)から得た。解重合からの平衡混合物中に存在する四量体、六量体および七量体のほとんどが、濾過前に溶液から沈殿するように10℃でそれらの線状オリゴマーを濾過によって単離し、フィルターケーキとともに回収した。その後、そのフィルターケーキを同量のoDCBに溶解し、5μmフィルターパッドにより180℃で濾過して、不溶性チタン錯体を除去した。その後、それらの線状オリゴマーを、50℃での冷却によりその濾液から沈殿させ、ブフナー漏斗により回収し、乾燥させた。その粗製フィルターケーキを乾燥させることにより、粗製線状オリゴマーを調製した。
【0240】
(実施例1)
溶液重合による低酸PBT
BDO(約0.250mmol)、DMT(BDOの約0.98から1.02モル当量)および無水oDCB(約30%反応体固形分を含有する溶液を生じさせるために十分なもの)を充填して、10の実験を行った。メカニカルスターラー、ショートパス蒸留ヘッドとレシーバーフラスコおよび不活性ガス導入口を装備した250mL三つ口丸底フラスコに各充填材料を添加した。10の実験についての充填材料の重量を表2に列挙する。
【0241】
【化21】

その後、反応体を温度制御油浴で加熱した。初期温度は、160℃に設定した。重合を通して、フラスコの頭上空間に乾燥窒素流を約50から100mL/分の流量で掃引した。頭上空間に窒素ガスを約15分間掃引した後、約10〜150mgのTPTをその溶液表面下にマイクロシリンジによって添加した。重合を通してレシーバーフラスコを−40℃のメタノール浴で冷却して、頭上の揮発性物質を捕捉した。重合を通して反応フラスコ内の溶液をサンプリングして、ゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)(付録A参照)によりポリマーの分子量をモニターした。留出物を同様にサンプリングして、ガスクロマトグラフィー(「GC」)および電位差滴定(それぞれ、付録BおよびCを参照)を用いてその組成を決定した。溶液および留出物の分析の結果を下の表3にまとめる。表3は、最終反応時の最終分子量、重合によって生成されたTHFの量、およびポリマー中に存在する残留酸を含む。
【0242】
【化22】

(実施例2)
低酸PBTの解重合からの環状ポリ(ブチレンテレフタレート)(「cPBT」)の形成
メカニカルスターラー、ショートパス蒸留ヘッドおよびコンデンサならびに不活性ガス導入口(その充填量は、下の表4に列挙する)を装着した火炎乾燥済み三つ口250mL丸底フラスコに、約7mmolのPBTおよび無水oDCBから成る充填材料を添加した。その後、そのフラスコを220℃の油浴に沈めた。PBTが溶解し、(反応物を確実に乾燥させるために)数ミリリットルの溶媒が頭上に留出した後、0.220mmol/gの濃度での、oDCB中の新たに調製したTi(BD:HG)(4:1)の有機チタネート触媒溶液を、注射器を用いてフラスコに添加した。その後、乾燥窒素の正圧下で反応を維持し、溶液を定期的にサンプリングして、付録Dに記載する高圧液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を用いてcPBT形成度を判定した。反応についてのcPBT形成速度を下の表4に列挙する。反応は、大気圧でのoDCBのほぼ沸点(182℃)で行った。
【0243】
表5は、上で説明したとおり行った追加の解重合実験の結果をまとめたものである。表5は、4時間の解重合後のcPBTの濃度に関する情報を含む。
【0244】
【化23】

【0245】
【化24】

(実施例3)
実施例1の反応10において生成されたPBTから調製されるcPBTの、調製、生成/単離および再重合
この実験では、実施例の反応1における重合により生成されたPBTの溶液を用いた。得られた0.065MのPBTを、その後、oDCB中の新たに調製したTi(BD:HG)(4:1)の0.73mol%有機チタネート触媒溶液と反応させた。溶液を約20時間還流させて、その20時間の時点で、すべてのビスヒドロキシブチルエステルは、酸に分解し、cPBTの濃度は、付録Dで記載するHPLC法によって判定したところ、10.6g/Lの完全平衡値に達していた。溶液を95℃に冷却し、0.15mLの水で処理して触媒を失活させ、再び加熱して還流させ、その後、ストリッピングして30g/LのcPBTの濃度にした。その後、溶液を30分間放置して50℃に冷却し、2cmブフナー漏斗により濾過した。
【0246】
色素滴定試験を用いて、酸含有率の決定のために、濾液のサンプルを滴定した。濾液は、0.09mMの酸濃度を有することが判明した。その後、濾液を約0.5gの塩基性アルミナでスラリー化した。その後、アルミナを濾過し、oDCB溶媒を蒸発させることによって、cPBTを単離した。
【0247】
単離したcPBTを6% XB3触媒と1:19の比で混合し、190℃で30時間重合させた。得られたポリマーは、付録Aに記載する方法によって判定したところ、約178,000ダルトンの分子量を有した。
【0248】
(実施例4)
単離フィルターケーキの溶液の濾過によるチタン触媒残渣の除去
cPBT、残留線状オリゴマーおよびチタン触媒残渣を含有するフィルターケーキを、先ず、解重合反応混合物の濾液から回収した。同じ部のフィルターケーキとoDCBとを混合し、180℃に加熱した。フィルターケーキのほとんどが溶解して溶液になったが、不溶性材料の懸濁物が残った。得られたスラリーを、ニューヨーク、キングストンのErtelAlsopによって製造されたErtelAlsop model 4−T 250 cc加圧フィルターを使用して濾過した。フィルターに5マイクロメートルフィルターパッド(ErtelAlsop micro−media M40 cellulose/perilite)を装着して、チタンを実質的に含まない濾液と、チタンが豊富なフィルターケーキとを生じさせた。濾液を70℃に冷却して、残留線状オリゴマーを沈殿させた。
【0249】
チタン固体が豊富なフィルターケーキをoDCBと混合して、残留cPBTまたは線状オリゴマーを溶解した。その後、スラリーを100℃、真空下で乾燥させて、oDCB、溶解しているcPBT、および線状オリゴマーを除去した。得られたチタン固体を熱重量分析によって特性付けした。酸素中でチタン固体を425℃より上に加熱すると、26.46重量%の二酸化チタンが残ると判定された。これは、チタン固体が約18重量%のチタンを含有したことを示している。
【0250】
また、そのチタン固体を、4%水を含有するTHFに70℃で1時間溶解し、その後、付録Dに記載する方法を用いてHPLCによって分析した。カリフォルニア州、パロアルトのHewlett Packardによって製造されたHewlett Packard 1050 series HPLC systemを使用したが、この実施例では、それにAquaSep Column C8、5.0u、150x4.6mmを装着した。次の勾配を用いて、サンプルを注入した:10分にわたって、水中20%(0.08%)HPO/80% MeCNから100% MeCN。図5は、溶液からのテレフタル酸、安息香酸、モノメチルテレフタレートおよびジメチルテレフタレートの分離を示すクロマトグラム500である。
【0251】
また、チタン固体を、約2%水を含有するTFAに70℃で1時間溶解し、その後、再びHPLCにより分析した。図6は、溶液からの、テレフタル酸、安息香酸およびA2B1種(図6において分子構造を参照のこと)をはじめとする様々な酸性種の分離を示すクロマトグラム600である。
【0252】
(実施例5)
解重合反応混合物の濾過によるチタン除去
約165gのPBTを、180℃で13.8kgの乾燥oDCBに溶解して、PBTの0.07M溶液を生じさせた。その溶液を放置して20℃に冷却した。その後、溶液を、oDCB中のTi(BD:HG)(4:1)の1M溶液の形態の3mol%チタンで処理した。得られたスラリーを225℃の温度で、1時間当たり4反応器容量の速度でポンピングして20’炭素鋼プラグフローコイル型反応装置に通した。cPBTを含有する、得られた14kgの解重合反応混合物を、その後、70℃で濾過した。チタンは可溶性のままであった。このことは、それが、解重合反応条件への曝露後、均一触媒として存在し続けることを示している。
【0253】
その後、この解重合反応混合物を2kgずつ2L Parr反応装置に添加し、15分間、245℃に加熱し、180℃に冷却し、その後、実施例4に記載した加圧フィルターにより濾過した。
【0254】
過酸化物試験を用いて、回収した濾液を分析した。約1gの濾液をメタノール中1Mの硫酸で、および0.1mLの30%過酸化水素で処理した。その後、得られた混合物を加熱して、最上部メタノール層中の黄色の色彩の存在を目視分析した(1ppmの低さのチタンの検出が可能である)。目視分析は、溶液には実質的にチタンを含まない(Ti約1ppm未満)ことを示した。チタン固体をTGAおよびHPLCによっても分析した。HPLCの結果は、実施例4のものと本質的に同一であった。TGAの結果を図8に示す。表6は、実施例4および5のTGAの結果(それぞれ、図7および8)をまとめている。
【0255】
【化25】

(実施例6)
反応混合物中でのチタン沈殿および沈降挙動
180℃で約10mLのPBT解重合反応混合物(3mol%のTi触媒を含有する、oDCB中0.07MのPBT)を20mLガラス圧力管に添加した。管を250℃の塩浴で加熱し、経時的に観察した。25分の加熱後、透明な溶液中に細かい沈殿が形成した。30分後、沈殿がより大きな粒子へと凝結し始め、その後、管の底へと沈降し始めた。35分後、沈殿のすべてが溶液から沈降した。管を180℃に冷却し、実施例5に記載した過酸化物試験を用いてその上清を分析した。上清中でチタンは検出されなかった。このことは、250℃で30〜35分間加熱した後、そのほとんどが均一な可溶性形態から不均一な不溶性形態に変形したことを示している。
【0256】
(実施例7)
PBTの解重合において生成された残留線状オリゴマーの溶液重合
メカニカルスターラーとショートパス蒸留ヘッドおよびレシーバーを取り付けた15x1cmの充填カラムとを有する250mL三つ口フラスコに、約40gの線状オリゴマーおよび50mLのoDCBを充填した(本実施例において使用した線状オリゴマーは、表7に記載する)。フラスコを215℃の油浴で加熱して溶媒をカラムへと還流させて、より低沸点の材料、例えば水およびTHFを頭上に放出し、より高沸点の材料、例えばoDCBをフラスコに戻した。その後、0.5から2gのBDOおよび約0.015mLのTPTをそのフラスコに添加した。
【0257】
溶液を経時的にサンプリングし、付録Aに記載する実施例において同様に行われているように、GPCによって分析してポリマーの分子量をモニターした。また、付録Cに記載する方法を用いてサンプルを滴定して、溶液中の残留酸の量を決定した。実験の線状オリゴマーの構成、添加したBDOの量、重合反応時間および残留酸レベルを下の表8にまとめる。反応LP1からLP8についての反応時間の関数としてのポリマーの分子量を、図14A〜14Dのプロットに示す。
【0258】
最終ポリマー溶液を放置して冷却し、凝固させ、その後、解重合評価のために真空下で乾燥させて粉末にした。
【0259】
【化26】

【0260】
【化27】

(実施例8)
線状オリゴマーとモノマーとの混合物の溶液重合と、モノマーのみの混合物の溶液重合との比較
モノマーのみの混合物の重合を実証するために、メカニカルスターラー、ショートパス蒸留ヘッドとレシーバーフラスコおよび不活性ガス導入口を装備した250mL三つ口丸底フラスコに、約253.55mmolのBDO、約240.08mmolのDMTおよび(約30%反応体固形分を含有する溶液を生じさせるために十分な)無水oDCBから成る充填材料を添加した。その後、反応体を温度制御油浴で加熱した。初期温度は、160℃に設定した。重合を通して、フラスコの頭上空間に乾燥窒素流を約50から100mL/分の流量で掃引した。空間に窒素を15分間掃引した後、約0.04mmolのTPTを溶液の表面下にマイクロシリンジによって添加した。重合を通して反応フラスコ内の溶液をサンプリングして、ゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)(付録A参照)によりポリマーの分子量をモニターした。GPC分析の結果を下の表9および図9にまとめる。
【0261】
【化28】

線状オリゴマーとモノマーとの混合物を生じさせるために、メカニカルスターラーと、ショートパス蒸留ヘッドおよびレシーバーを取り付けた15x1cm充填カラムとを有する250mL三つ口フラスコに、約50gのホットフィルターケーキ、約187.53mmolのBDOおよび約183.04mmolのDMT、ならびにoDCBを充填した。フラスコを215℃の油浴で加熱して溶媒をカラムへと還流させて、より低沸点の材料、例えば水およびTHFを頭上に放出し、より高沸点の材料、例えばoDCBをフラスコに戻した。その後、0.052mmolのTPTをフラスコに添加した。
【0262】
溶液を経時的にサンプリングし、付録Aに記載する実施例において同様に行われているように、GPCによって分析してポリマーの分子量をモニターした。GPC分析の結果を下の表10および図9にまとめる。
【0263】
【化29】

(実施例9)
180℃でのガラス器具における重合線状オリゴマーの解重合
メカニカルスターラーとショートパス蒸留ヘッドとレシーバーとを取り付けた、乾燥させた不活性250mL三つ口フラスコに、約1.54gの7mmol PBTおよび105mLのoDCBを充填した。フラスコを215℃の油浴で加熱して、ポリマーを溶解し、且つ、5mLの留出物を頭上に押しやって乾燥環境を確保した。その後、油浴の温度を200℃に低下させ、oDCB中の新たに調製したTi(BD:HG)(4:1)の1M有機チタネート触媒約0.070mLをフラスコに添加した。溶液を、触媒添加の直前、ならびに触媒添加の5、10および15分後にサンプリングして、付録Dに記載するのとおりHPLCによりcPBT濃度を決定した。最終サンプルをとった後、追加の0.21mLの触媒溶液を添加し、フラスコをさらに3時間、還流させながら加熱した後、最終サンプルを得た。
【0264】
cPBT形成の初期速度は、反応時間に対してg/LでのcPBTの濃度をプロットすることにより規定される直線の傾きを測定することによって計算した。初期速度および3時間の解重合の後のcPBTの濃度を表11にまとめる。
【0265】
同様の実験を行って、約16.29g/L/時および14.85g/L/時のcPBT形成の初期速度を有する混合物を形成した。解重合の過程全体にわたっての混合物中のcPBTの濃度を下の表12および13ならびに図10にまとめる。図11は、本発明の例示的な実施形態に従って、触媒濃度の関数としてプロットした、180℃で5分の解重合の後の解重合反応混合物中のジオール二量体、例えばビスヒドロキシブチルテレフタレート(BDOエステル)の濃度のグラフを示す。
【0266】
【化30】

(実施例10)
プラグフローコイルにおける高温での重合線状オリゴマーの解重合
PBTを180℃でoDCBに溶解して、0.07M溶液を生じさせ、約20mLの4Lポリマー溶液を留出物として除去して系を乾燥させた。その後、溶液を20℃に冷却させ、oDCB中の新たに調製したTi(BD:HG)(4:1)の有機チタネート触媒溶液を添加した。得られたスラリーをポンピングして、245℃の油浴に沈めた3/8”x20’コイルに通した。80psiに保持された圧力缶にコイルを接続して、リアクターコイル内でoDCBが蒸発しないようにシステム内の適切な背圧を維持した。コイルを通るスラリーの流量を制御して、各20’コイル内での平均停留時間を約10から12分にした。各リアクターコイルの排出口から1時間間隔でサンプルをとって、連続反応システムにおけるcPBT収率を決定した(これは、付録Dに記載するものに類似したHPLC法を用いて決定した)。実施例7の実験LP#1、3、9、11および13からのポリマー(表8)を組み合わせて、チタン不含線状オリゴマーから形成されたポリマーを評価し、実施例7の実験LP#6,7、10、12および14からのポリマー(表8)を組み合わせて、チタン不含線状オリゴマーと混合した10%粗製線状オリゴマーを有することの効果を評価した。分析の結果は、各ポリマーが、これらの反応条件下で9.3g/LのcPBTの平均収率をもたらすことを示した。
【0267】
実験結果のさらなる考察
パートI:溶液重合による低酸PBT。触媒として微量(10〜100ppm)のテトライソプロピルチタネート(TPT)を用い、oDCB溶媒中、oDCBの大気圧での沸点(182℃)以下の温度で、丸底フラスコにおいてBDOとDMTとの重合反応を行う。室温で配合後に存在するBDO、DMTおよびoDCBのスラリーは、約100℃に加熱すると溶液になり、DMTは、溶液から昇華せず、それが処理を容易にする。多くの場合、DMTの昇華は、ポリエステル樹脂の溶融重合反応では問題となりにくく、埋め合わせるために特別な条件および反応装置設計が必要となる。頭上へと放散される任意の他の揮発成分と共に、モノマーの縮合の際に遊離されるメタノールを冷却レシーバーにおいて凝縮し、回収された留出物の組成を、ガスクロマトグラフィーを用いてモニターする。反応を、6時間と12時間との間、約30〜50%PBT固形分(濃度が高くなると不溶性になる)で維持し、ポリマー分子量をサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)により経時的にモニターする。モノマー量を(分析天秤の使用により)注意深くフラスコに配合し、反応完了後、蒸留されてレシーバーに入るモノマーの量およびTHFに転化されるBDOの量について配合する量を補正することにより、BDOのDMTに対する比を調整する。このように形成されたポリマーは、170℃より下に冷却すると結晶化し、ならびにさらなる分析(酸滴定および解重合評価)のために粉末ウェットケーキにすることができる。溶液重合、cPBTを作るための解重合、こうして調製されたcPBTの単離および精製ならびにこうして単離されたcPBTの溶融重合についての技術を説明する詳細な実施例および実験手順、ならびにこれらの工程の生成物および中間体を特性付けするために使用される手順は、本明細書中で提示している。
【0268】
実験セクションにおいて記載した手順を用いて行った一連の10の溶液解重合反応からの結果を表および図に示す。表2は、各反応において用いた配合変数(BDO、DMT、oDCB、およびTPT触媒)量を提示する。表3は、最終反応時(示されているとおり)のポリマーの最終分子量、各反応から遊離されるTHFの総量、および電位差滴定によって判定したときの各ポリマー中に存在する残留酸のレベルを提示する。下の表14により、溶液重合におけるチタン触媒濃度と、生成されたTHFの量および残留酸レベルの両方との間の関係が証明される。
【0269】
【化31】

表15は、実施例1で作った溶液ポリマー中の酸レベル(表3)と比較するために、幾つかの市販のPBTポリマーの酸含有率を示す。
【0270】
【化32】

図12は、異なる触媒レベルでの実施例1の重合においてTHFがどのように遊離するかを経時的に示すものである。THFは、ヒドロキシルブチルエステルからのその放出および対応する酸形成によって遊離されるので、THF遊離速度は、系における酸形成速度にほぼ比例的に対応する。残留酸レベルがTHF形成速度増加に伴って増加するという事実は、こうして形成される酸のエステル化に対して与える影響は、THF形成より触媒濃度の上昇のほうが少ないことを示唆している。これにより、溶液PBT中の残留酸レベルが触媒濃度に伴ってどのように変わるかも予測できる。これらの反応条件下で低酸PBTを生じさせるチタン触媒レベルの範囲を決定することができる。
【0271】
図13A、BおよびCは、ブランク(A)、市販ポリマー(GE Valox315)(B)、および実施例1の方法(反応10)によって製造した低酸ポリマー(C)の酸分析から作成した滴定曲線を示す。ブランクが電位差終点(−60mV)に達するために必要な滴定容量は約0.17mLであるため、および本低酸ポリマーの滴定容量はすべて0.5mLより下であるため、実際の酸レベルは、報告される未補正レベルより少なくとも約30%低くなる。従って、TPTとして0.015〜0.03mol%チタン(13〜26ppm wt/wtのTi)を用いて、182℃で、oDCB中40%固形分で作られた溶液PBT中の酸レベルは、一貫して1ミリ当量/kgまたはそれ以下であり、これは、市販されている最低酸レベルのPBTと比較して85%より大きい酸の低減を表す。
【0272】
結果は、THF形成およびポリマー中の残留酸レベルが触媒による影響を強く受けること、ならびに13〜26ppm範囲のチタンが、非常に低い酸レベルのポリマーの調製に有用であるばかりでなく、生成されるTHFレベル(配合されるBDOのmol%として表される)が、一貫して0.3%より下であることを示す。従って、溶液重合中にTHFとして失われるBDOは、一貫して0.3から0.1%の範囲内であり、これは、標準的な溶融重合プロセスと比較して97から90%のBDO使用効率の増加を表す。
【0273】
パートII:超低酸PBTの解重合からのcPBT形成。
【0274】
PBTの希薄溶液からcPBTを形成するための解重合反応を、溶液重合と同じ装置で、但し、30〜50%の代わりに0.75から1.5%の範囲のポリマー濃度で行う。ポリマーは、再び、oDCB溶媒中、有機チタネート触媒の存在下で環−鎖平衡になる。比較のケースについては、すべての反応をoDCBの大気圧での沸点(182℃)で行った。手順(上の実施例2において詳述したもの)は、設定濃度でのポリマーの溶解、加熱して還流、乾燥を確保するための、少量の溶媒の頭上への除去、その後、oDCB中の溶液としての触媒の添加、および較正HPLC法によるcPBT形成の経時的追跡を含む。平衡は、一般に相当速いが、但し、有効レベルの触媒が存在することを条件とし、反応は、180℃で1から1.5時間で完了に近づく(予備データは、速度が12〜15℃ごとにほぼ倍になることを示しているので、温度が高いほど速い)。触媒添加後、最初の10〜15分以内に反応物をサンプリングすると、時間に対するcPBT濃度のプロットは、ほぼ直線であり、その直線の傾きが、g/L/時でのcPBT形成の初期速度の測定値である。触媒レベルの有効範囲内では、触媒レベルに対するcPBT形成の初期速度のプロットもほぼ直線であり、そのため、cPBT形成速度を触媒レベルの関数として実験的に確認することができる。実施例2の表4よび5に示した結果は、異なるPBTにより示される、cPBT形成の初期速度とそれらの酸含有率の関数としての有効触媒範囲との両方に関する劇的な違いを実証している。加えて、データは、触媒レベルが低下するにつれて、反応におけるヒドロキシルブチルエステル線状オリゴマーのレベルもほぼ比例して低下することを示している。これらの種が、cPBTプロセスにおける主不純物であるので、およびそれらは転化されて酸に戻るはずであり、そのため精製工程においてcPBTから除去することができるので、触媒濃度を低下させることができるということは、cPBTの製造において不純物を減少させる利点がある。
【0275】
幾つかの市販PBTおよび溶液重合によって調製した幾つかのPBTについての解重合反応からの結果は、実施例2の表4および5に出ている。表4および5には、様々な触媒レベルについての、ならびに種々の市販PBT(溶融および固体状態ポリマー)および本明細書に記載するとおり溶媒中での重合によって調製された低酸PBTについての、cPBT形成の初期速度が列挙されている。表5には、様々なレベルの残留酸を含有する種々のポリマーについての種々の触媒レベルでの初期速度が提示されている。図11は、残留ビスヒドロキシブチルエステル種が、cPBTを調製するために使用される触媒の一次関数としてどのように変化するかを示す。
【0276】
これらの実験が示すように、本明細書に記載する溶液重合プロセスによってcPBTを調製するために、原料として非常に低い酸濃度のPBT(本明細書に記載する溶液重合法によって調製されたもの)を使用するのが有利である。溶融PBTの低酸バージョン、例えばBASF6550グレード樹脂と比較したとき、(有効触媒濃度が、約0.85mMであるとき)平衡に達するために有効なレベル(溶液PBTについては、約0.15mM)を維持しながら触媒レベルの80%低減が可能であり、より高い初期速度(16.3対13.5g/L/時)が、約二分の一の触媒濃度(0.47mM対0.85mM)を用いて得られる。非常に低い酸濃度の市販ポリマー、TiconaのCelanex2001グレード固体状態樹脂と比較したとき、初期速度は、Celenexについての有効触媒濃度の下端(0.47mM)で2倍高い(16.3対8.0)が、溶液PBTについての有効触媒範囲は、約0.15mMまたは3倍の低減に及ぶ。その非常に低い酸含有率のおかげで、本明細書に記載する溶液重合プロセスによって調製されるPBTは、先行法によって調製された当該技術分野のポリマーの市販の状態と比較して、cPBT形成速度向上に関して2から4倍の向上、または60〜80%の触媒低減をもたらす。
【0277】
cPBTを調製するために少ない触媒を使用する別の利点を図11に示す。解重合反応におけるビスヒドロキシブチルエステル(ジオール二量体)のレベルは、反応に利用される触媒のレベルにほぼ正比例する。より低い触媒レベルを用いることができることは、より低い不純物レベルでcPBTを製造するという利点を付加し、そしてまた、それが、より費用効率のよいプロセスにつながる。
【0278】
パートIII:モノマー=>ポリマー=>cPBT=>ポリマーの改善されたプロセスの例。
【0279】
実施例1において記載した溶液重合反応#10は、実施例2における解重合(表4の最後の記録を参照のこと)に、そしてその後、cPBTの単離および精製(実施例3参照)へと辿り着く。その後、単離されたcPBTを溶融重合して、市販のPBTの解重合によって調製されたcPBTの溶融重合から製造されたPBTポリマーのものに類似した、高分子量を有するPBTポリマーに戻した(実施例3参照)。この実験は、出発原料(BDO、DMTおよびTPT)での開始、出発原料の溶液重合による低酸PBTの製造、PBTのcPBTへの転化、およびPBTポリマーへのcPBTの重合というサイクルを実証する。本明細書に記載する溶液重合によって製造されるcPBTは、市販のPBTから調製されたcPBTに十分匹敵する。そうしたcPBTの溶融重合は、同様に高い分子量(実施例3に示すように、178,000ダルトン)を有するPBTを生じさせるからである。これは、基本のcPBTプロセスへの有意な改善も実証し、そのプロセスの一部は、解重合原料として利用できる非常に低い酸濃度のPBTがなければ可能ではない。
【0280】
cPBTを調製するために現在使用されている基本プロセスは、典型的に、特殊有機チタネート触媒を用いる高温(>240℃)での解重合を必要とする。これは、cPBTと共に、多少の量の、末端に酸を有する線状体を生じさせ、線状体は、純粋なcPBTを生じさせるために濾液ストリームから「ポリッシング」しなければならない。このプロセスに伴う幾つかの問題点としては、1)必要とされる比較的高い触媒レベル(1〜3mol%のPBTまたは約$0.05〜$0.15/ポンドのcPBT);2)触媒からの高いヒドロキシルブチルエステルレベル、および従って、濾液中の高い酸レベル(このプロセスからの濾液中には一般に0.5〜1.5mol%の酸);3)高い酸レベルが、大量の塩基性アルミナ(処理されるcPBTの10〜30ポンドに対して約1ポンドのアルミナ、または約$0.02〜$0.06/(cPBTのポンド)のコスト)または別の酸吸着法(イオン交換)の使用を必要とすること;ならびに4)高い酸濃度、高い温度および高いチタン濃度の組み合わせがゲル様固体を招くので、このプロセスからの線状沈殿物の濾過は非常に難しいことが挙げられる。
【0281】
ヒドロキシブチルエステルは、182℃でゆっくりと反応してTHFおよびカルボン酸を形成し、冷却の際に解重合反応溶液から沈殿する線状体は、本質的にゲル様ではない。従って、濾過操作は、現行の高温/高酸/高触媒プロセスと比較すると、劇的に改善される。改善されたプロセスからの濾液中の残留酸のレベルは、80〜90%低減され、そしてまた、それによって、おおよそ正比例して精製費用が切り詰められる。
【0282】
PBTへのモノマーの転化、そしてまたPBTのcPBTへの転化は、PBT製造段階における必要資本設備および材料使用量を減少させる。さらに、そうして製造されたPBTの固有の組成(すなわち、低酸)のおかげで、cPBT製造段階における資本設備および材料使用量も減少させる。
【0283】
下の表16は、標準的な解重合プロセスによる市販PBTの加工による結果と、本明細書に記載のプロセス(実施例1、反応10の重合、続いて、実施例2における解重合)による溶液PBT(反応#14)の加工による結果の比較である。
【0284】
【化33】

本明細書におけるある実施例は、本質的にはcPBT製造プロセスにおける中間体としての、溶液中のPBTの合成および使用に関する。これらの実施例は、PBTが、従来の手段によって製造された任意の他のPBTと比較して、有意に低減された残留酸レベル、および良好な加工挙動を有することを示した。低酸PBTを溶液中で調製したら、単離し、エンジニアリングサーモレジンとして使用することができる。何らかの方法で安定させなくても、押出および成形操作は、公知の解重合経路によって酸のインサイチュー生成に至ることができるが、これらの操作の間に用いられる一般的な安定化法を用いると、いずれの他の方法でも達成することができない酸レベルを有する、単離されたPBTを生じさせることができる。対応して、酸レベルによる影響を受けることが知られているポリマーの特性、例えば加水分解および熱安定性を改善することができる。
【0285】
パートIV:線状体の再循環可能性の証明。ポリマーに戻る線状体の回収に適する条件の範囲を証明するために、チタン不含線状体と粗製線状体との0〜100%の範囲での組み合わせを用いる実施例7の実験を設計した。必要な反応時間を調査するために、重合時間を4〜14時間変化させ、(i)100%Ti不含線状体を使用して、および(ii)10%粗製線状体を含有する線状体を使用して実験を行った。合計で14の線状体重合を、実施例7の手順に従って行った。反応変数(反応時間、線状体の組成および添加するBDOの量)は、表8に含まれている。図14A〜14Dは、反応LP1からLP8についてのポリマーの分子量の時間の関数としてのプロットを示すものである。図14Aは、両方ともTi不含線状体と、しかし異なる量のBDOを使用する、2つの反応を比較し;図14Bは、両方とも100%粗製線状体と、しかし異なる量のBDOを使用する、2つの反応を比較し;図14Cは、各々、1.0gのBDOと、しかし異なる比率の粗製線状体/Ti不含線状体を使用する、4つの反応を比較し;ならびに図14Dは、各々、0.5gのBDOと、しかし異なる比率の粗製線状体/Ti不含線状体を使用する、3つの反応を比較する。使用した線状体の組成(酸含有率、MwおよびcPBT%)は、表7に含まれている。滴定分析により、237mmol/kgの酸を含有したTi不含線状体について、40gに対して必要とされるジオールの当量は、4.74mmolまたは0427gとなる。従って、0.5g(5.55mmol)のBDOの使用は、酸に対するジオールの18%過剰を表し、ならびに1gのBDO(11.1mmol)の使用は、ジオールの134%過剰を表す。40g(モノマー繰り返し単位を基準にして181.8mmol)のポリマーを製造することを考えると、ポリマーに対するBDOの過剰は、0.5gのBDOで0.45%であり、1gのBDOを使用する場合は3.5%である。これは、実施例1の実験の反応において示したような純粋なモノマー(線状オリゴマーを伴わないもの)からの溶液重合において効果的であることが証明された過剰BDOレベルの範囲と、非常に類似した範囲を表す。
【0286】
100%粗製線状体を使用した表8における反応では、重合反応におけるチタンのレベルが、Ti不含線状体を使用する場合と比較して非常に高い。3mol%のチタンが解重合反応において使用された(これは、濾過して、70%のcPBT収率をもたらす)と考え、かつ、すべてのチタンが、30%の線状体画分と共に残っていると考えると、粗製線状体中のチタンの量は、約9mol%である。これは、Ti不含オリゴマーとの反応におけるチタンの量−−わずか0.015%(15mgのTPTからのTi)−−よりはるかに多い。粗製線状体での高いTiレベルは、BDOの量に影響を及ぼし、BDOは、重合の間にTHFに分解する。例えば、粗製線状オリゴマーのみを使用した、表8の反応LP2において、1gの添加BDOは、すべての酸と完全に反応するには不十分である(ポリマーへの線状体の転化率わずか71%)。しかし、Ti不含線状体のみを使用した、表8の反応LP1では、BDOがほとんど分解しなかったので、1gのBDOが、低MwのPBT(18K)という期待された結果をもたらした。2.3gのBDOを粗製線状体に添加した、表8の反応LP4では、線状体の完全転化が達成されたが、残留酸は、ポリマー中22.7mmol/kgで高かった。表8の反応L3において使用したTi不含線状体を用いると、0.5gのBDOによって、ポリマーを高Mw(73K)に増すことができ、その最終ポリマーは、1.2mmol/kgで酸濃度が低かった。従って、少なくとも1つの実施形態では、Ti不含線状体を再重合するほうが好ましい。これらは、あまりBDOを必要とせず、より酸濃度の低いポリマーをもたらすからである。しかし、粗製線状体の再重合を遂行して、cPBTの製造での使用に適するポリマーを生じさせることができる。
【0287】
より低レベル(5〜20%)の粗製線状体の影響は、然程苛酷ではない。反応体が5〜20%の粗製線状オリゴマーを含んでいたすべてのケース(反応LP7からLP14)において、0.5gのBDOは、高いMwの低酸ポリマーを製造するために十分であった。実際、図14Cおよび14Dにおいて見られるとおり、Ti不含線状体との反応と比較してこれらの反応についての時間に伴うMw構成速度を検査することによって明らかにわかるように、より高いレベルのTiが粗製線状体からの系にあると縮重合は加速される。反応L9(Ti不含線状体、0.5gのBDO4時間)では、ポリマー中の残留酸が、16.3mmol/Kgであり、一方、10%粗製線状体を使用した反応LP10では、4時間での残留酸がかなり低かった−−3.8mmol/kgであったことに留意されたい。このデータは、一般に、7時間の反応時間が、Ti不含線状体を使用する場合、低酸PBTを製造するために妥当であることを示している。一般に、0〜20%の粗製線状体を含有する線状体は、約0.5g/(40gのBDO)/(線状オリゴマー再循環物)を再重合に使用すると、低酸PBTを製造するために4〜7時間必要である。
【0288】
実施例9(表11、12および13)に記載した実験は、線状体を高分子量ポリマーに重合することによって調製したポリマーを、cPBTを調製するために使用することができることを示している。cPBTの収率は、すべての実験において非常に類似していた−3%Ti触媒で解重合を行った場合、その収率は、一般に、9から10g/Lにわたった。市販PBT(例えば、BASF6550)は、まったく同じ解重合条件下で、一般に、9.6〜10g/Lを生じさせる。
【0289】
図9は、実施例8に記載した実験の結果を示すものである。この場合、溶液重合は、(i)純粋なモノマー(線状オリゴマー再循環物を伴わないモノマー)を使用して、および(ii)モノマーと25重量%のTi不含線状オリゴマー再循環物とを使用して行った。これらの実施例は、線状体の回収を別プロセス(実験LP1〜LP14)またはモノマー重合と組み合わせたプロセスのいずれかで行うことができる。解重合原料として使用するために有効な低酸PBTを製造することができる条件の有効範囲は、本質的には、Ti不含線状体または粗製線状体のあらゆる組成および線状体とモノマーとのあらゆる比率を包含する。
【0290】
最後に、実施例10は、工業プロセスの操作条件を模倣するために高温で行った解重合反応を説明するものである。これらの実験は、Ti不含線状体から調製したポリマーおよび10%粗製線状体からのポリマーを用いて行った。解重合化学に伴う問題点には気づかなかった。従って、再循環線状体からのポリマーは、実際的な解重合条件の全範囲にわたってcPBTを調製するために使用することができる。線状体の再重合から製造したポリマーと、本明細書に記載する溶液重合法でモノマーから調製したポリマーとは実質的に見分けが付かない。
【0291】
付録
付録A:PBTポリマーの分子量を決定するためのGPC法
実施例1からの溶液を冷却させて粉末ウェットケーキにした。その後、そのウェットケーキのおおよそ20から50mgのサンプルを、小型磁気攪拌棒が入っている5mLバイアルに充填した。約1mLの25/75 v/v ヘキサフルオロイソプロパノール(「HFIP」)−塩化メチレン溶液をそのバイアルに添加した。ウェットケーキが完全に溶解するまで、わずかに温めながらサンプルを攪拌した。その後、約4mLのクロロホルムをバイアルに添加し、得られた溶液を0.45μmシリンジフィルターによってオートサンプラーバイアルへと濾過した。
【0292】
カリフォルニア州、パロアルトのAgilent Technologies,Inc.によって製造されたAgilent1100HPLCシステムを分析に使用し、これは、次の構成要素を備えていた:溶媒ガス抜き装置、ポンプ、オートサンプラー、カラムオーブン、ChemStationソフトウェア、分子量計算を行うためのGPCアドオンモジュール、クロロホルム再循環システム、およびPhenomenex Phenogel5μmリニアカラム(直列に2本;300x7.8mm(長さx直径)、P/N00H−3259−KO)。システムは、1mL/分のカラムを通るクロロホルム流量、約20から30barのポンプ圧、1μLのサンプル注入サイズ、40℃のカラムオーブン温度、および254nmの波長に設定した。分子量がわかっているポリスチレン標準物質を使用して、システムを較正した。
【0293】
GPCソフトウェアは、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、およびピーク分子量(Mp)をはじめとする幾つかの値を計算する。
【0294】
付録B:留出物のGC分析
oDCB中のn−ドデカン(「DoD」)の溶液約1g(6.383mgのDoD/(oDCBのg))を、実施例1のレシーバーフラスコに回収された留出物のサンプルに添加した。その後、得られたサンプルを、Chem.Station分析ソフトウェアパッケージを装備した、カリフォルニア州、パロアルトのAgilent Technologies,Inc.によって製造されたAgilent Technologies 6890N Network ガスクロマトグラフシステムに注入した。GCで使用したカラムは、0.32mmの内径および0.25mmの膜厚を有するAgilent HP−5 30Mカラムであった。注入容量は、0.2mLであり、100:1のスプリット比および206mL/分のスプリットフローであった。オーブン温度を2分間、60℃で保持し、10℃/分の速度で90℃に上昇させ、その後、40℃/分の速度で240℃に上昇させた。較正標準を合成作成して、対象となるすべての化合物の保持時間および応答因子を決定した(表A参照)。応答因子は、(mg/面積)化合物/(mg/面積)DoDと定義した。
【0295】
【化34】

付録C:PBT中の残留酸を決定するための電位差滴定法
約1gの留出物を、小型磁気攪拌棒が入っている125mLエルレンマイヤーフラスコに充填した。その後、25mLのo−クレゾール溶液(塩化メチレン(CHCl)中75容量%のo−クレゾール)をフラスコに添加し、得られた溶液を温め、留出物が完全に溶解するまで攪拌した。溶液を室温まで冷却させ、その後、自動滴定用の100mLプラスチックビーカーに移した。
【0296】
オハイオ州、コロンバスのMettler Toledoによって製造されたMettler Toledo DL50自動滴定システムを使用して留出物を分析した。システムは、Mettler Toledo DG113−SC ガラス電極(エタノール溶液中1MのLiClの中に保存)および滴定器遠隔操作用のコンピュータ実行LabXソフトウェアを備えていた。水酸化テトラブチルアンモニウム(「TBAOH」)を滴定剤として使用した(水中の1.0N TBAOH溶液2.50mLをトリフルオロエタノール(「TFE」)で250mLに希釈した)。そのTBAOH滴定剤の規定度を、5.0mgのヒドロキシテレフタル酸モノメチル(「MHT」)(0.050±0.001g(0.278mmol)のMHTを100mLのメスフラスコに入れ、MeOHで100mLに希釈した)を使用して標準化した。
【0297】
付録D:解重合反応におけるcPBT濃度を決定するためのHPLC法
oDCB中のn−ドデカン(「DoD」)の溶液約1g(6.383mgのDoD/(oDCBのg))を、実施例5において回収されたサンプルに添加した。その後、得られたサンプルを、HPLC逆相カラム(Zorbax Eclipse XDB−C8 4.6mmx15cm)を装備した、カリフォルニア州、パロアルトのHewlett Packardによって製造されたHewlett Packard 1050シリーズHPLCシステムに注入した。システムは、THF中のフェナントレンの溶液に溶解した純粋なcPBT二量体を使用して較正する。約10から20mgのcPBTを含有するサンプルをバイアルに充填した。5mLメスピペットを使用して、THF中のフェナントレンの約15.8mg/L溶液5.00mLをバイアルに添加して、cPBTを溶解した。その後、サンプルを0.2μmフィルターに通してHPLCバイアルへと濾過した。18分かけて50:50から100:0へと立ち上がり、その後、100%MeCNで4分間保持した後、それから2分かけて初期条件に戻る、アセトニトリル:水の勾配を用いて、3から5μLのサンプルを注入した。
【0298】
等価物
特定の好ましい実施形態を参照しながら本発明を詳細に示し、説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義されるとおりの本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に形態および詳細に関する様々な変更を行うことができることは、当業者には理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0299】
本発明の目的および特徴は、下に記載する図面を参照して、より良く理解することができる。これらの図面は、必ずしも定尺ではなく、それよりむしろ、一般に、本発明の原理を例証することに重点を置いている。これらに図面では、様々な図を通して同様の番号を用いて同様の部分を示している。
【図1】本発明の例示的な実施形態に従って、低酸ポリアルキレンテレフタレートを製造するためのプロセスにおける単位操作を示すプロセスフロー図である。
【図2】本発明の例示的な実施形態に従って、低酸ポリアルキレンテレフタレートを重合し、その後、解重合/環化することによって大環状ポリエステルオリゴマーを製造するためのプロセスにおける単位操作を示すプロセスフロー図である。
【図3】本発明の例証となる実施形態に従って、解重合プロセスストリームから触媒残渣を除去し、再循環物として使用するために副生成物残留オリゴマーを分離するためのプロセスにおける単位操作を示すプロセスフロー図であり、この場合、触媒残渣除去工程は、解重合生成物ストリームを加熱して、その中の均一触媒材料が不均一になり、溶液から沈殿するようにする工程を含む。
【図4】本発明の例示的な実施形態に従って、解重合の間に溶液から金属含有触媒残渣を沈殿させるために十分な高さの温度で解重合/環化を行い、それによって図3の別途の加熱単位操作の必要をなくす、図3のプロセスフロー図の変型である。
【図5】本発明の例示的な実施形態に従って、解重合プロセスストリームからの触媒残渣の除去を証明する実験における溶液のHPLC分析からのクロマトグラムを示す図である。
【図6】本発明の例示的な実施形態に従って、解重合プロセスストリームからの触媒残渣の除去を証明する実験における溶液のHPLC分析からのクロマトグラムを示す図である。
【図7】本発明の例示的な実施形態に従って、解重合プロセスストリームからの触媒残渣の除去を証明する実験における溶液の熱重量分析(TGA)からのデータのグラフを示す図である。
【図8】本発明の例示的な実施形態に従って、解重合プロセスストリームからの触媒残渣の除去を証明する実験における溶液の熱重量分析(TGA)からのデータのグラフを示す図である。
【図9】本発明の例示的な実施形態に従って、時間の関数としてのPBTの分子量(ゲル透過クロマトグラフィーによって得られたもの)のグラフを示し、それによって、純粋なモノマーと線状オリゴマー再循環物との組み合わせを使用する重合に対する純粋なモノマーを反応体として使用する重合の比較を示す図である。
【図10】本発明の例示的な実施形態に従って、解重合反応混合物中のcPBT濃度の変化(HPLC分析によって得られたもの)のグラフを示し、それによって、純粋なモノマーと線状オリゴマー再循環物との組み合わせから生成された低酸PBTを使用する解重合に対する純粋なモノマーから生成された低酸PBTを使用する解重合の比較を示す図である。
【図11】本発明の例示的な実施形態に従って、触媒濃度の関数としてプロットした、180℃での5分の解重合後の解重合反応混合物中のジオール二量体、例えばビスヒドロキシブチルテレフタレート(BDOエステル)の濃度のグラフを示す図である。
【図12】本発明の例示的な実施形態に従って、3つの異なる触媒レベルを用いて溶液重合の過程で生成されたテトラヒドロフラン(THF)を示すグラフである。
【図13】本発明の例示的な実施形態に従って、ブランク(A)、市販のPBT(Valox315)(B)、および本明細書において説明する方法によって生成された低酸PBTについての3つの酸滴定曲線を示す図である。
【図14】本発明の例示的な実施形態に従って、様々な比率のTi不含線状オリゴマーと粗製線状オリゴマーとを反応体として使用する重合反応についての反応時間の関数としてのポリマーの分子量のプロットを示す図であり、それによってcPBTを形成するためのPBTの解重合において生成される線状オリゴマーの再循環可能性を証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低酸ポリブチレンテレフタレート生成物を調製するための方法であって、ほぼ大気圧以上の圧力で約240℃以下の温度に混合物を曝露する工程を含み、該混合物が、少なくとも最初に、
(a)ブタンジオール;
(b)ジメチルテレフタレート;
(c)有機溶媒;および
(d)触媒
を含む、方法。
【請求項2】
エステル交換および重縮合のうちの少なくとも一方が、前記曝露工程の間に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重縮合が、前記曝露工程の間に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
エステル交換と重縮合との両方が、前記曝露工程の間に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が、オルト−ジクロロベンゼンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記曝露工程が、約210℃以下の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記曝露工程が、約190℃以下の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記曝露工程が、ほぼ大気圧で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、有機チタネートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が、モノマー繰り返し単位100mol当たりTi約0.01molからTi約0.03molの範囲内の濃度で前記混合物中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリブチレンテレフタレート生成物が、約7ミリ当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリブチレンテレフタレート生成物が、約5ミリ当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリブチレンテレフタレート生成物が、約2ミリ当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記曝露工程において1重量%未満の前記ブタンジオールが反応してテトラヒドロフランを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって形成される、ポリマー生成物。
【請求項16】
大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法であって、混合物を熱に曝露する工程を含み、該混合物が、
約10ミリ当量/kg以下の酸濃度を有するポリブチレンテレフタレートポリマー;
有機溶媒;および
解重合触媒;
を含む、方法。
【請求項17】
前記有機溶媒が、オルト−ジクロロベンゼンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記解重合触媒がチタンを含み、該解重合触媒の濃度が、モノマー繰り返し単位100mol当たりTi約2mol未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記混合物中の前記解重合触媒の濃度が、繰り返し単位100mol当たりTi約0.25molからTi約1.25molの範囲内である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリブチレンテレフタレートポリマーが、約7ミリ当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリブチレンテレフタレートポリマーが、約5ミリ当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリブチレンテレフタレートポリマーが、約2ミリ当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法であって、
(a)ほぼ大気圧以上の圧力で約240℃以下の温度に混合物を曝露し、それによって高分子固体を形成する工程であって、該混合物が、少なくとも最初に、
(i)ジオール;
(ii)酸、エステル、二酸、ジエステル、ジカルボン酸およびジアルキルエステルから成る群より選択される少なくとも1つのメンバー;
(iii)有機溶媒;および
(iv)触媒
を含む工程;
(b)該混合物中の高分子固体の濃度を第一範囲内に維持する工程;
(c)工程(b)後に高分子固体の濃度を低下させる工程;および
(d)該混合物中の高分子固体の濃度を熱の存在下で第二範囲内に維持し、それによって大環状ポリエステルオリゴマーを生成させる工程
を含む、方法。
【請求項24】
工程(b)が、約7ミリ当量/kg以下の酸濃度を有するポリエステルを生成させる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(b)が、約2ミリ当量/kg以下の酸濃度を有するポリエステルを生成させる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
工程(a)が、約210℃以下の温度で行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記大環状ポリエステルオリゴマーを精製する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
工程(d)後の前記混合物が、実質的にゲル様沈殿していない線状体を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記有機溶媒が、オルト−ジクロロベンゼンを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための連続プロセスであって、
アウトプットストリームを有する第一単位操作であって、混合物をほぼ大気圧以上で約240℃以下の温度に曝露し、それによって高分子固体を形成することに適応しており、該混合物は、1,4−ブタンジオール、ジメチルテレフタレート、有機溶媒および触媒を含む、第一単位操作;および
該第一単位操作の該アウトプットストリームの少なくとも一部を含むインプットストリームを有する第二単位操作であって、該インプットストリームを熱に曝露し、それによって大環状ポリエステルオリゴマーを生成させることに適応している、第二単位操作
を含む、プロセス。
【請求項31】
低酸ポリブチレンテレフタレートを調製するための方法であって、ほぼ大気圧以上の圧力で約240℃以下の温度に混合物を曝露する工程を含み、該混合物が、少なくとも最初に、
(a)(i)ブタンジオール;
(ii)ジメチルテレフタレート;
(iii)テレフタル酸;および
(iv)(i)、(ii)および(iii)のうちの2つまたはそれ以上の反応生成物;
のうちの1つまたはこれらの組み合わせ;
(b)溶媒;および
(c)触媒
を含む、方法。
【請求項32】
大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法であって、
(a)ほぼ大気圧以上の圧力で約240℃以下の温度に混合物を曝露し、それによって高分子固体を含む混合物を形成する工程であって、該混合物が、少なくとも最初に、
(i)(A)ジオール
(B)酸、エステル、二酸、ジエステル、ジカルボン酸およびジアルキルエステルから成る群より選択される少なくとも1つのメンバー;
(C)(A)と(B)との反応生成物;
のうちの1つまたはこれらの組み合わせ;
(ii)有機溶媒;および
(iii)触媒
を含む、工程;
(b)該混合物中の高分子固体の濃度を第一範囲内に維持する工程;
(c)工程(b)後に高分子固体の濃度を低下させる工程;および
(d)該混合物中の高分子固体の濃度を熱の存在下で第二範囲内に維持し、それによって大環状ポリエステルオリゴマーを生成させる工程
を含む、方法。
【請求項33】
水の添加を伴わずに混合物から金属含有化合物を沈殿させる方法であって、少なくとも約200℃の温度に少なくとも約5分間、混合物を曝露する工程を含み、該混合物が、
(a)金属含有化合物;
(b)有機溶媒;
(c)線状オリゴマー;および必要に応じて、
(d)大環状ポリエステルオリゴマー
を含み、
該線状オリゴマーの少なくとも一部が、該曝露工程後に有機溶媒に溶解したままである方法。
【請求項34】
前記混合物が、解重合プロセスからのアウトプットスリームの少なくとも一部である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記混合物の一成分が、前記曝露工程の少なくともの一部の間に解重合される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記曝露工程が、有機溶媒が実質的に液体形態であるように選択される圧力で行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
ポリアルキレンテレフタレートを調製するためのプロセスにおいて反応体として使用するために前記線状オリゴマーの少なくとも一部を回収する工程をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリアルキレンテレフタレートを解重合して大環状ポリエステルオリゴマーを形成する工程をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記曝露工程の少なくとも一部および前記解重合工程の少なくとも一部が、同時に行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記曝露工程後の前記混合物が、溶解している金属含有化合物を実質的に含まない、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記混合物を、少なくとも約245℃の温度に少なくとも約10分間曝露することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
(i)混合物を曝露する温度;および
(ii)混合物を熱に曝露する時間の長さ
のうちの少なくとも一方が、金属含有化合物の実質的にすべてを混合物から沈殿させるように選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記有機溶媒が、オルト−ジクロロベンゼンを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記金属含有化合物が、チタン含有化合物を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記線状オリゴマーが、酸キャップ型種を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記混合物が、大環状ポリエステルオリゴマーを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項47】
沈殿後の前記混合物中の溶解している金属含有化合物の濃度が、金属約200ppm未満である、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記金属が、Tiである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
解重合プロセスストリームから触媒残渣を除去するための方法であって、
(a)(i)約10ミリ当量/kg以下の酸濃度を有するポリアルキレンテレフタレート生成物;
(ii)有機溶媒;および
(iii)解重合触媒
を少なくとも最初に含む混合物を熱に曝露して、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させる工程;ならびに
(b)工程(a)の該混合物の少なくとも一部を少なくとも約200℃の温度に少なくとも約5分間曝露して、解重合触媒を含むかまたは解重合触媒から形成される残渣を沈殿させる工程
を含む、方法。
【請求項50】
工程(a)の少なくとも一部および工程(b)の少なくとも一部が、同時に行われる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
(c)工程(a)および工程(b)のうちの少なくとも一方の後に混合物の少なくとも一部を処理して、工程(a)において形成された大環状ポリエステルオリゴマーの少なくとも一部を除去する工程をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
工程(c)の処理が、工程(a)および工程(b)のうちの少なくとも一方の後に混合物の少なくとも一部を濾過して、工程(a)において生成された大環状ポリエステルオリゴマーの少なくとも一部を、線状オリゴマーを含む不溶性濾液から分離することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記線状オリゴマーを含む不溶性濾液が、実質的に非ゲル様である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
ポリアルキレンテレフタレート生成物を調製するためのプロセスにおいて反応体として前記線状オリゴマーの少なくとも一部を使用する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記ポリアルキレンテレフタレート生成物が、約7ミリ当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記ポリアルキレンテレフタレート生成物が、約5ミリ当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記ポリアルキレンテレフタレート生成物が、約2ミリ当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記ポリアルキレンテレフタレート生成物が、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、およびポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)とのコポリエステルから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項59】
前記解重合触媒が、有機チタネートを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項60】
工程(b)の前記残渣が、前記混合物への水の添加を伴わずに該混合物から沈殿される、請求項49に記載の方法。
【請求項61】
工程(a)が、約200℃未満の温度で行われる、請求項49に記載の方法。
【請求項62】
工程(a)が、有機溶媒の沸点またはそれ以下の温度で行われる、請求項49に記載の方法。
【請求項63】
前記方法は連続プロセスであり、工程(b)において少なくとも5分が平均滞留時間である、請求項49に記載の方法。
【請求項64】
工程(b)において熱に曝露される前記混合物の部分における溶解している金属含有触媒残渣の濃度が、工程(b)後、金属約25ppm未満である、請求項49に記載の方法。
【請求項65】
工程(b)において熱に曝露される前記混合物の部分における溶解している金属含有触媒残渣の濃度が、工程(b)後、金属約5ppm未満である、請求項49に記載の方法。
【請求項66】
解重合プロセスストリームから線状オリゴマーを含む濾液を単離するための方法であって、
(a)解重合プロセスストリームからの混合物を少なくとも約200℃の温度に少なくとも約5分間曝露して、金属含有残渣を沈殿させる工程;および
(b)工程(a)後に該混合物の少なくとも一部を濾過して、線状オリゴマーを含む濾液を生じさせる工程
を含む、方法。
【請求項67】
(c)工程(a)および工程(b)のうちの少なくとも一方の後に前記混合物の少なくとも一部を濾過して、大環状ポリエステルオリゴマーを含む濾液を生じさせる工程
をさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
(c)工程(b)からの前記線状オリゴマーを含む前記濾液の少なくとも一部を、ポリアルキレンテレフタレートを調製するための単位操作に向ける工程
をさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
工程(a)が、前記解重合プロセスストリームからの前記混合物を少なくとも約245℃の温度に少なくとも約10分間曝露することを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
連続プロセス、半連続プロセスまたは回分プロセスである、請求項66に記載の方法。
【請求項71】
前記金属含有残渣が、解重合触媒を含むかまたは解重合触媒から形成される、請求項66に記載の方法。
【請求項72】
前記解重合触媒が、有機チタネートを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
工程(b)の前記濾液中の溶解している金属含有残渣の濃度が、金属約25ppm未満である、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
工程(b)の前記濾液中の溶解している金属含有残渣の濃度が、金属約5ppm未満である、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法であって、
(a)(i)ジオール;
(ii)ポリアルキレンテレフタレートの解重合からの再循環物;
(iii)有機溶媒;および
(iv)触媒
を少なくとも最初に含む混合物を、熱に曝露して、ポリアルキレンテレフタレート生成物を生成させる工程;および
(b)工程(a)からの該ポリアルキレンテレフタレート生成物を解重合して、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させる工程
を含む、方法。
【請求項76】
工程(a)の前記混合物中に少なくとも最初にある再循環物の非再循環物モノマーに対する重量比が、約10:90より大きい、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
工程(a)の前記混合物中に少なくとも最初にある再循環物の非再循環物モノマーに対する重量比が、約25:75より大きい、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
工程(a)の前記混合物中に少なくとも最初にある再循環物の非再循環物モノマーに対する重量比が、約50:50より大きい、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
工程(a)の前記混合物が、ジアルキルエステルをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記ジオールが、ブタンジオールであり、ジアルキルエステルが、ジメチルテレフタレートであり、前記ポリアルキレンテレフタレートが、ポリブチレンテレフタレートである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記再循環物が、線状オリゴマーおよび大環状ポリエステルオリゴマーのうちの少なくとも一方を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
前記再循環物が、酸キャップ型線状オリゴマーを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項83】
工程(a)における前記再循環物の少なくとも一部が、工程(b)における解重合からのものである、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
前記再循環物の少なくとも一部が、工程(a)の前に金属含有化合物の除去のために処理される、請求項75に記載の方法。
【請求項85】
前記再循環物の少なくとも80重量%が処理される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記金属含有化合物がTi含有化合物である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記金属含有化合物が触媒残渣を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
工程(a)の前に前記再循環物から金属含有化合物を沈殿させる工程をさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項89】
前記再循環物から前記金属含有化合物を沈殿させる工程が、水の添加を伴わずに行われる、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記再循環物から前記金属含有化合物を沈殿させる工程が、該再循環物を少なくとも約245℃の温度に少なくとも約10分間曝露することを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記ジオールおよび前記再循環物からのモノマー単位の少なくとも約85重量%が、大環状ポリエステルオリゴマーに転化される、請求項75に記載の方法。
【請求項92】
前記ジオールおよび前記再循環物からのモノマー単位の少なくとも約98重量%が、大環状ポリエステルオリゴマーに転化される、請求項75に記載の方法。
【請求項93】
大環状ポリエステルオリゴマーへのモノマーの全転化率が、少なくとも約98%である、請求項75に記載の方法。
【請求項94】
前記有機溶媒が、オルト−ジクロロベンゼンを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項95】
前記触媒がチタンを含み、そして前記混合物中に、該混合物中のモノマー単位、前記再循環物および必要に応じてジアルキルエステル100mol当たりTi約0.01molからTi約0.03molの範囲内の濃度で存在する、請求項75に記載の方法。
【請求項96】
工程(a)が、約170℃から約210℃の範囲内の温度で行われる、請求項75に記載の方法。
【請求項97】
工程(a)が、約170℃から約210℃の範囲内の温度およびほぼ大気圧以上の圧力で行われる、請求項75に記載の方法。
【請求項98】
前記ポリアルキレンテレフタレート生成物が、約7当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項75に記載の方法。
【請求項99】
前記ポリアルキレンテレフタレート生成物が、約5当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項75に記載の方法。
【請求項100】
前記ポリアルキレンテレフタレート生成物が、約2当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項75に記載の方法。
【請求項101】
工程(a)および工程(b)の少なくとも一方が、少なくとも1つの連続または半連続反応装置を使用して行われる、請求項75に記載の方法。
【請求項102】
工程(a)および工程(b)の少なくとも一方が、少なくとも1つの多段反応装置を使用して行われる、請求項75に記載の方法。
【請求項103】
工程(a)における前記混合物が、50ppm以下の水濃度を有する、請求項75に記載の方法。
【請求項104】
工程(a)における前記混合物が、20ppm以下の酸素濃度を有する、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための連続または半連続プロセスであって、
アウトプットストリームを有する第一単位操作であって、混合物を熱に曝露し、それによってポリアルキレンテレフタレート生成物を形成することに適応しており、該混合物が、ジオールとポリアルキレンテレフタレートの解重合からの再循環物と有機溶媒と触媒と必要に応じてジアルキルエステルとを少なくとも最初に含む、第一単位操作;および
該第一単位操作の該アウトプットストリームの少なくとも一部を含むインプットストリームを有する第二単位操作であって、該インプットストリームを熱に曝露し、それによって大環状ポリエステルオリゴマーを生成させることに適応している第二単位操作
を含む、プロセス。
【請求項106】
大環状ポリエステルオリゴマーを調製するための方法であって、
(a)(i)ジオール;
(ii)ポリアルキレンテレフタレートの解重合からの再循環物;
(iii)触媒;および必要に応じて
(iv)ジアルキルエステル
を少なくとも最初に含む混合物を熱に曝露して、ポリアルキレンテレフタレート生成物を生成させる工程;および
(b)工程(a)からの該ポリアルキレンテレフタレート生成物を解重合して、大環状ポリエステルオリゴマーを生成させる工程
を含む、方法。
【請求項107】
工程(a)の前記混合物がさらに溶媒を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
工程(a)からの前記ポリアルキレンテレフタレート生成物が、約10ミリ当量/kg未満の酸濃度を有する、請求項106に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−534715(P2008−534715A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503177(P2008−503177)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/010541
【国際公開番号】WO2006/104821
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(500004173)サイクリクス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】