説明

体幹サポート機構付き長下肢装具

【課題】装着者の下肢の振出し運動を動力補助機構の作動により円滑に行わせるようにする。
【解決手段】患者の下肢全体を支持する長下肢支持部材5、5’と、左右の長下肢支持部材5、5’を装着者の仮想股関節回転中心点を基点にして揺動運動可能なように支持する股関節モジュール1と、股関節モジュール1の前端部に取付けられて装着者の腹部周りを保持する体幹サポート機構8と、両長下肢支持部材5、5’の膝関節部周りに設けられるものであって、その上半部51、51’と下半部52、52’とを相対回転運動が可能なように連結する膝関節モジュール2、2’と、長下肢支持部材5、5’の下端部のところに設けられるものであって装着者の足の部分を保持する足載置体6、6’を長下肢支持部材5、5’に対して相対回転運動可能なように連結する足関節モジュール3、3’と、これら各関節モジュール1、2、3の作動を制御する制御手段4と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下肢麻痺患者の歩行を助けるために用いられる長下肢装具に関するものであり、特に、下肢(脚部)に装着される長下肢支持部材を、その上端部のところで連結するとともに、それぞれの長下肢支持部材が、装着者の仮想股関節回転中心点を支点にして揺動運動することができるようにし、更に、このような長下肢支持部材の膝関節部及び足関節部にもジョイント機構を設けるとともに、これら各ジョイント機構部における作動を電動モータの駆動力にて補助させるようにしたものである。そして更に、このような長下肢装具において、上記両長下肢支持部材の作動を支持する股関節モジュールのところに、当該股関節モジュールから上方へ伸びるように形成されるものであって装着者の腹部周りである体幹を保持するように形成された体幹サポート機構を設けるようにした。
【背景技術】
【0002】
従来の、下肢麻痺患者用の装具としては、例えば特開平11−369号公報に記載の如く、下肢(脚部)に装着される長下肢支持部材をその上端部のところで連結するとともに、それぞれの長下肢支持部材が、装着者の仮想股関節回転中心点を支点にして揺動運動をすることができるようになっているものが挙げられる。そして、上記揺動運動が別途設けられた電動モータの駆動力によって補助されるようにしたもの等が挙げられる(特開平11−226070号公報参照)。
【特許文献1】特開平11−369号公報
【特許文献2】特開平11−226070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のものは、股関節モジュールを形成するジョイント機構部が、その正面視において所定の開き角度を有した状態で設定されるようになっているものである。そして、このような補助装具を装着した者(装着者)は、一般に、仮想股関節回転中心点を支点とした一方の下肢(脚部)の振出し運動によって歩行運動が開始されるようになっているものである。そして更に、この一方の下肢の振出し運動が、別途設けられた電動モータの駆動力によって補助されるようになっているものである。従って、この従来のものにおいては、装着者の脚の振出し運動が、一方の脚を支点にして、もう一方の脚を上記開き角度を頂角とする円錐面上を振れ廻るように運動させることによって形成されることとなり、一般的な歩行運動とは異なるものである。そのため、装具装着者にとっては違和感を感ぜざるを得ないと言う問題点がある。このような問題点を解決するために、長下肢支持部材の股関節モジュール部における開き角度の値をゼロにするとともに、膝関節部周り及び足関節部周りにもジョイント機構を設けて、これら各ジョイント機構を電動モータにて動力補助(パワーアシスト)させるようにし、更に、上記両長下肢支持部材の上端部のところに設けられる股関節モジュールのところに、装着者の腹部周りである体幹を保持する体幹サポート機構を設けるようにした動力補助機構付き長下肢装具を提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明である第一の発明においては、下肢麻痺患者の歩行を助けるために用いられる長下肢装具に関して、装着者の下肢全体を保持するものであって装着者下肢の内側に沿うように設けられる長下肢支持部材と、当該長下肢支持部材の上端部のところに設けられるものであって、左右に設けられる本長下肢支持部材を、その正面視において開き角度ゼロの状態で平行なように保持するとともに、その側面視において上記左右の長下肢支持部材を所定の範囲内にて揺動運動可能なように支持し、更に、当該揺動運動の運動中心位置が上記装着者の仮想股関節回転中心点とほぼ合致するように形成された股関節モジュールと、当該股関節モジュールの上方部に設けられるものであって、装着者の腹部周りである体幹を保持する体幹保持部及び当該体幹保持部と上記股関節モジュールとの間を連結する支柱にて形成される体幹サポート機構と、本長下肢装具装着者の膝関節部周りであって上記長下肢支持部材の軸線上またはその延長線上に設けられるとともに上記長下肢支持部材の上半部と下半部とを相対回転運動が可能なように連結する膝関節モジュールと、上記長下肢支持部材の下端部のところであって本長下肢支持部材の軸線上またはその延長線上に設けられるとともに装着者の足の部分を保持する足載置体を上記長下肢支持部材に対して相対回転運動可能なように連結する足関節モジュールと、これら各関節モジュールのところに設けられるものであって当該各関節モジュールを形成する各機構を駆動する動力補助機構と、当該各動力補助機構の作動を制御するものであってマイクロプロセッサユニットを主に形成される制御手段と、からなるようにした構成を採ることとした。
【0005】
次に、請求項2記載の発明である第二の発明について説明する。このものも、その基本的な点は上記請求項1記載の発明である第一の発明と同じである。すなわち、本発明は、請求項1記載の体幹サポート機構付き長下肢装具に関して、上記体幹サポート機構を、装着者の腹部周りである体幹を保持するように形成されるものであって所定の面積を有する曲面からなる体幹保持部及び当該体幹保持部の中央部から下方へ向って垂直状に形成される支柱からなるものであって、これら各部が所定の熱可塑性合成樹脂材にて一体的に成形される体幹サポート部と、当該体幹サポート部を形成する支柱の下方部のところに設けられるものであって本体幹サポート部を形成する支柱を0°〜20°の範囲内にて相対変位が可能なように支持するように形成されたヒンジ機構と、からなるようにした構成を採ることとした。
【0006】
次に、請求項3記載の発明である第三の発明について説明する。このものも、その基本的な点は上記請求項1記載の発明である第一の発明と同じである。すなわち、本発明は、請求項1または請求項2記載の体幹サポート機構付き長下肢装具に関して、上記股関節モジュールを、中央に設けられるメインブロックと、当該メインブロックの両側面部のところに設けられるものであって正面視において左右平行なように設けられる二つの円弧状レールと、これら円弧状レールの各々のところを摺動運動するスライダを内包するものであって長下肢支持部材の取付けられる基礎となるキャリアと、上記メインブロックの両側面部のところであって上記円弧状レールの下側のところに当該円弧状レールと同心円状に設けられるものであって側面部に歯部を有する円弧状ラックと、上記両キャリアのところに設けられるものであって上記円弧状ラックの側面部に設けられた歯部とそれぞれ噛合い係合するピニオンギアと、当該各ピニオンギアに連結されるものであってそれぞれのピニオンギアを駆動する電動モータを主に形成される股関節動力補助機構と、からなるようにした構成を採ることとした。
【0007】
次に、請求項4記載の発明である第四の発明について説明する。このものも、その基本的な点は上記請求項1記載の発明である第一の発明と同じである。すなわち、本発明は、請求項1または請求項2記載の体幹サポート機構付き長下肢装具に関して、上記膝関節モジュールを、上記長下肢支持部材を形成する上半部と下半部とを相対回転運動可能なように連結するジョイント機構からなるものであって、本長下肢装具装着者の膝関節部周りの内側に取付けられることを基本とするとともに、上記長下肢支持部材を形成する上半部または下半部のうちのいずれか一方側に設けられるホイール及び残りのもう一方側に設けられるウオームにて形成されるウオーム・ホイール機構からなるようにし、更に、当該膝関節モジュールを駆動する膝関節動力補助機構を、上記ウオーム・ホイール機構を形成する上記ウオームを回転駆動する電動モータを主に形成させるようにした構成を採ることとした。
【0008】
次に、請求項5記載の発明である第五の発明について説明する。このものも、その基本的な点は上記請求項1記載の発明である第一の発明と同じである。すなわち、本発明は、請求項1または請求項2記載の体幹サポート機構付き長下肢装具に関して、上記足関節モジュールを、上記長下肢支持部材を形成する下半部と上記足載置体とを相対回転運動可能なように連結するジョイント機構からなるものであって、本長下肢装具装着者の足関節部周りの内側に取付けられることを基本とするとともに、上記長下肢支持部材の下半部側に設けられるウオーム及び上記足載置体側に設けられるホイールにて形成されるウオーム・ホイール機構にて形成させ、当該足関節モジュールを駆動する足関節動力補助機構を、上記ウオーム・ホイール機構を形成する上記ウオームを回転駆動する電動モータを主に形成させるようにした構成を採ることとした。
【発明の効果】
【0009】
第一の発明によれば、本長下肢装具を装着した者(装着者)は、自分の脚を交互に振出すように意識することによって、上記動力補助機構の補助を受けて交互歩行を円滑に行うことができるようになる。特に、本発明のものにおいては、従来のものにおけるような股関節モジュール機構部において所定の開き角度が設けられるようになっているものとは異なり、開き角度が0(ゼロ)の値を有するように設定されていることより、従来のものの如く、一方の脚を基点にして他方の脚を所定の頂角を有する円錐面内にて振り廻すような運動をすることなく、左右の脚を交互に真っ直ぐ前方へと振出すことができるようになる。その結果、健常者と同じような脚の交互振出し運動を行うことができるようになる。また、本発明のものにおいては、各モジュールが本長下肢装具装着者の下肢の内側面に沿うように設けられた長下肢支持部材の、その長手方向軸線上に設けられるようになっていることより、各モジュールが左右に出張ったりするようなことが無くなり、全体的にスリムな形態またはコンパクトな形態にまとめ上げられるようになる。その結果、本長下肢装具装着者の車椅子への着座等が円滑に行なわれるようになる。更に、本発明のものにおいては、股関節モジュールの上方部に体幹サポート機構を設けるようにしたので、本長下肢装具装着者は、その腹部周りである体幹が上記体幹サポート機構によって支持されることとなる。これによって、本長下肢装具装着者の歩行運動等がより円滑に行なわれることとなる。
【0010】
また、第二の発明のものにおいても、上記第一の発明のものと基本的には同じ効果を得ることができるようになる。特に、本発明のものにおいては、体幹サポート機構を、所定の面積を有する曲面形態からなるものであって、C.F.R.Pを初めとした所定の熱可塑性合成樹脂材にて形成される体幹サポート部と、当該体幹サポート部を形成する支柱の下方部のところに0°〜20°の範囲内にて前方への傾動が可能なように形成されたヒンジ機構と、からなるようにしたので、本装具装着者は、歩行の際に、上記腹部周りである体幹が上記体幹サポート機構によって柔らかく支持されるようになり、歩行動作等を安定した状態で行なうことができるようになる。
【0011】
また、第三の発明のものにおいても、上記第一の発明または第二の発明のものと基本的には同じような効果を得ることができるようになる。特に、本発明のものにおいては、股関節モジュールが、メインブロックを基礎にして、当該メインブロックの側面部に左右平行なように設けられる二つの円弧状レール、更には当該各円弧状レールと同心円状に設けられる左右の円弧状ラック等にて形成されるようになっているものである。そして、このような構成からなる上記各円弧状レール上をスライド移動するキャリア、更には上記各円弧状ラック上を移動するピニオンギアの作動によって本長下肢装具装着者の左右の脚の振出し運動が補助されるようになっているものである。従って、本長下肢装具装着者は健常者とほとんど変わらないような脚の振出し運動を行うことができるようになる。
【0012】
また、第四の発明のものにおいても、上記第一の発明または第二の発明のものと基本的には同じような効果を得ることができるようになる。すなわち、本発明のものにおいては、本長下肢装具を装着した者(装着者)は、左右の脚を真っ直ぐ前方へと交互に振出すことができるようになり、これによって健常者とほぼ同様の歩行運動を行うことができるようになる。そして、これらに加えて、本発明のものにおいては、膝関節部周りに設けられる膝関節モジュールが、膝関節動力補助機構によって補助(パワーアシスト)されるようになっていることより、装着者は上記股関節モジュールの作動と連動した状態で補助(パワーアシスト)を受けるようになる。また、これらのパワーアシスト作動は、股関節部、膝関節部の各部が、それぞれ同期した状態で連動制御されるようになっていることより、装着者の歩行運動は円滑に補助されることとなる。その結果、本装具装着者は健常者とほとんど変わらないような円滑な歩行運動を行うことができるようになる。
【0013】
また、第五の発明のものにおいても、上記第一の発明または第二の発明のものと基本的には同じような効果を得ることができるようになる。すなわち、本長下肢装具を装着した者(装着者)は、左右の脚を真っ直ぐ前方へと交互に振出すことができるようになり、これによって健常者とほぼ同様の歩行運動を行うことができるようになる。そして、これらに加えて、更に、本長下肢装具には、その足関節部周りに設けられる足関節モジュールにも動力補助機構が設けられるようになっていることより、装着者は、当該足関節動力補助機構の動力補助(パワーアシスト)を受けることとなる。従って、装着者は足首周りの作動が、上記脚の作動及び膝関節部の作動と連動した状態で補助(パワーアシスト)されるようになる。また、これらのパワーアシスト作動は、股関節部、膝関節部、足関節部の各部が、それぞれ同期した状態で連動制御されるようになっていることより、装着者の歩行運動は円滑に補助されることとなる。その結果、本装具装着者は健常者とほとんど変わらないような円滑な歩行運動を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態について、図1ないし図9を基に説明する。本実施の形態にかかるものは、図1ないし図3に示す如く、患者の下肢(脚部)全体を支持する長下肢支持部材5、5’と、これら左右の長下肢支持部材5、5’を、その上端部のところにて連結するとともに、上記両長下肢支持部材5、5’を、その正面視において開き角度ゼロの状態で平行なように保持するとともに、その側面視において上記左右の長下肢支持部材5、5’を所定の範囲内にて揺動運動可能なように支持する股関節モジュール1と、当該股関節モジュール1の前端部のところであって本股関節モジュール1から上方へ突出するように設けられる体幹サポート機構8と、からなることを基本とするものである。
【0015】
そして、このような股関節モジュール1を基礎とする両長下肢支持部材5、5’の揺動運動は、その運動中心位置が上記装着者の仮想股関節回転中心点とほぼ合致するように形成されるようになっているものである。そして更に、このような両長下肢支持部材5、5’の運動は、上記股関節モジュール1の前端部のところに設けられた体幹サポート機構8にて本装具装着者の腹部周りである体幹が保持(サポート)されることによって確保されるようになっているものである。このような両長下肢支持部材5、5’の中間部であって本長下肢装具装着者の膝関節部あたりに相当するところには、上記両長下肢支持部材5、5’の上半部51、51’と下半部52、52’とを相対回転運動が可能なように連結する膝関節モジュール2、2’が設けられるようになっている(図2,図3参照)。また、上記両長下肢支持部材5、5’を形成する下半部52、52’の下端部のところには装着者の足の部分を保持する足載置体6、6’が上記長下肢支持部材5、5’を形成する下半部52、52’の下端部に対して相対回転運動可能なように連結されるようになっている。そして、当該連結部のところには、足関節モジュール3、3’が設けられるようになっている。また、これら各関節モジュール1、1’、2、2’、3、3’のところには各モジュールを駆動する各動力補助機構15、15’、21、21’、31、31’(図3,図4,図8参照)が設けられるようになっており、当該各動力補助機構15、15’、21、21’、31、31’のところにはマイクロプロセッサユニット(MPU)を主に形成される制御手段4からの指令が入力されるようになっているものである(図1参照)。
【0016】
このような基本構成からなるものにおいて、上記左右の長下肢支持部材5、5’を連結する股関節モジュール1は、図4及び図5に示す如く、本股関節モジュール1の作動の基盤を成すメインブロック16と、当該メインブロック16の両側面部のところに左右平行なように設けられるものであって上記左右の両長下肢支持部材5、5’の運動の基礎をなす左右の円弧状スライドレール12、12’と、当該左右のスライドレール12、12’上をスライド移動するものであって装着者の仮想股関節回転中心点を基点にして上記両長下肢支持部材5、5’のスイング運動(揺動運動)を支持する左右のキャリア11、11’と、からなることを基本とするものである。なお、上記構成からなるものにおいて、上記円弧状のスライドレール12、12’上を移動するキャリア11、11’は、例えば図4ないし図6に示す如く、その内部にスライダ111、111’がアタッチメント112、112’を介して設けられるようになっている。そして、上記スライダ111、111’が上記スライドレール12、12’上をスライド移動することによって最終的にはキャリア11、11’が上記円弧状のスライドレール12、12’上を移動するようになっているものである。
【0017】
次に、このような股関節モジュール1の前端部のところに設けられる体幹サポート機構8の構成について説明する。このものは、図1ないし図3、更には図9に示す如く、装着者の腹部周りである体幹を保持するようになっているものであって所定の面積を有する滑らかな曲面形態からなる体幹保持部855及び当該体幹保持部855の中央部から下方へ向って垂直状に形成される支柱851からなるものであって、これら各部がC.F.R.P等を初めとした所定の熱可塑性合成樹脂材にて一体的に成形される体幹サポート部85と、当該体幹サポート部85を形成する支柱851の下方部付近に設けられるものであって本体幹サポート部85を形成する上記支柱851を所定の角度(α)の範囲内(図9参照)にて相対変位が可能なように支持する上方のヒンジ812並びに当該上方のヒンジ812の下方部に設けられる下方のヒンジ811からなるダブルヒンジ機構81と、からなるものである。なお、上記αの値としては、本実施の形態においては0°〜20°の値が採られるようになっており、このαの値は調整ネジ機構815にて上記範囲内にて適宜調整することができるようになっているものである。このような構成を採ることによって、本装具装着者は、その腹部周りである体幹が上記体幹サポート部85を形成する上方のヒンジ812の作動によって柔らかく支持されるようになり、歩行動作時における体幹保持が円滑に行なわれるようになる。更には立位状態の感知を正確に行なうことができるようになる。具体的には、自分の身体が歩行時において、前に倒れ過ぎていないか、あるいは後方に傾いてはいないか等が正確に感知されるようになる。また、本装具装着者の腹部へは、上記体幹サポート部85からの圧迫感等が入力(フィードバック)されるようになる。これによって、装着者が身体のバランスを崩した際における、その危険認知等が正確に行なわれるようになる。また、このような構成からなるものにおいて、上記ダブルヒンジ機構81を形成する下方のヒンジ811のところにはフック装置89が設けられるようになっている。このフック装置89を解放作動させることによって、体幹サポート部85を形成する支柱851を前方へと倒し、これによって、ダブルヒンジ機構81を形成する下方のヒンジ811を支点にして上記体幹サポート部85全体を前方へ90°傾動させることができるようになる。その結果、装着者の車椅子等への着座にあたっては、その着座動作等が円滑に行なえるようになる。
【0018】
次に、上記股関節モジュール1を形成する上記スライドレール12、12’の下方部のところには、例えば図6に示す如く、上記仮想股関節回転中心点(O)を基点にして上記左右のスライドレール12、12’と同心円状に形成される左右の円弧状ラック13、13’が設けられるようになっている。そして、このような左右の各円弧状ラック13、13’のところには、例えば図4ないし図6に示す如く、当該各円弧状ラック13、13’と、それぞれ係合するものであって股関節動力補助機構15、15’にて駆動されるピニオンギア14、14’が設けられるようになっている。そして更に、この各ピニオンギア14、14’は、それぞれが左右の各キャリア11、11’のところに支持されるとともに、同じく当該各キャリア11、11’のところに取付けられるものであって各股関節動力補助機構15、15’を形成する各電動モータ155、155’に連結されるようになっているものである(図4参照)。このような各股関節動力補助機構15、15’を形成する各電動モータ155、155’の作動によって上記各ピニオンギア14、14’が回転駆動され、最終的には、上記左右の円弧状ラック13、13’上を各ピニオンギア14、14’は往復移動することとなる(図4,図6参照)。なお、このようなピニオンギア14、14’を有する股関節動力補助機構15、15’の揺動運動は別途設けられたそれぞれのストッパ19、19’によって規制されるようになっている(図5,図6参照)。
【0019】
なお、このような電動モータ155、155’は、別途設けられた制御手段4からの指令に基づいて適宜駆動されるようになっているものである。このような制御手段4からの指令に基づいて上記各電動モータ155、155’が適宜作動し、これによって、各ピニオンギア14、14’が回転駆動され、当該ピニオンギア14、14’は、それぞれ上記左右の円弧状ラック13、13’上を移動することとなる。その結果、当該ピニオンギア14、14’を保持する各キャリア11、11’は、当該各キャリア11、11’内に設けられたスライダ111、111’を介して上記左右のスライドレール12、12’上をそれぞれ移動することとなる。このような各キャリア11、11’の移動(揺動運動)によって、上記両長下肢支持部材5、5’は、例えば図6に示すように装着者の仮想股関節回転中心点(O)を基点にして揺動運動をすることとなる。これによって、装着者の下肢の振出し運動が形成されることとなる。
【0020】
なお、このような構成からなる股関節モジュール1を形成する各部材、特に、上記円弧状ラック13、13’及び当該円弧状ラック13、13’と噛合い係合する各ピニオンギア14、14’並びに当該ピニオンギア14、14’を保持する両キャリア11、11’等は、本装置の正面視において、例えば図2及び図4に示す如く、左右の各部材が上下方向において平行なように配置されるようになっているものである。その結果、左右の両長下肢支持部材5、5’も、その正面視において平行なように配置されるようになる。すなわち、本実施の形態にかかるものは、従来のものにおいて左右の両長下肢支持部材5、5’が、正面視において、ある一定の頂角をもった状態で配置されるようになっているものとは、この点において大きく異なるものである。このような平行配置をすることによって、本実施の形態にかかる長下肢装具を装着した者は、左右の脚を、ほぼ健常者と同じように前方へと振出すことができるようになる。
【0021】
次に、このような構成からなる各キャリア11、11’のところには、図4及び図5に示す如く、電動モータ155、155’を主に形成される股関節動力補助機構15、15’が設けられるようになっている。そして、上記各電動モータ155、155’のところには当該電動モータ155、155’からの動力が減速機構等を介して伝達されるように上記ピニオンギア14、14’がそれぞれ連結されるようになっている。そして更に、このようなピニオンギア14、14’は、それぞれが上記円弧状ラック13、13’の歯部と噛合い係合して、当該円弧状ラック13、13’上を移動するようになっているものである。なお、上記電動モータ155、155’は、一般に、その取付位置が長下肢支持部材5、5’の軸線上またはその延長線上にくるようになっているものである。そして、当該電動モータ155、155’からの動力が上記ピニオンギア14、14’へと適宜伝達されるようになっているものである。なお、このように電動モータ155、155’からの動力にて上記円弧状ラック13、13’上を移動するピニオンギア14、14’の移動範囲並びに当該ピニオンギア14、14’と一体となって上記円弧状スライドレール12、12’上を移動するキャリア11、11’の揺動運動範囲、すなわち、図6及び図7に示す揺動運動角度(θ)の値は、本長下肢装具を装着した者(患者)の仮想股関節回転中心点(O)を基点にして約20°〜45°の範囲内に設定されるようになっているものである。
【0022】
次に、このような構成からなる左右の長下肢支持部材5、5’は、基本的には図1に示す如く、本長下肢装具装着者の下肢の内側面に沿うように設けられるようになっているものである。すなわち、内側系の長下肢装具が形成されるようになっているものである。そして、このような構成からなるものにおいて、本長下肢支持部材5、5’のところに設けられる上記各膝関節モジュール2、2’及び各足関節モジュール3、3’は、すべて、長下肢支持部材5、5’の軸線上または当該軸線の延長線上に設けられるようになっているものである。そして、また、上記左右の長下肢支持部材5、5’は、例えば図1ないし図3に示す如く、上半部51、51’と下半部52、52’とに二分割されるとともに、これら上半部51、51’と下半部52、52’との間には、これら二つの部材間を回転自在なように連結するものであってヒンジ機構を主に形成される膝関節モジュール2、2’が設けられるようになっている。そして、この膝関節モジュール2、2’は、図1ないし図3に示す如く、ジョイント機構55、55’を基礎に形成されるものであって、当該ジョイント機構55、55’を中心にして膝関節動力補助機構21、21’の動力補助(パワーアシスト)を受けて上記長下肢支持部材5、5’の上半部51、51’と下半部52、52’との間を相対的に回転運動させるようになっているものである(図8参照)。
【0023】
これらジョイント機構55、55’を基礎に形成される膝関節モジュール2、2’の構成について、図8を基に説明する。このものは、まず、長下肢支持部材5、5’を形成する上半部51、51’と下半部52、52’とが、例えば図1ないし図3に示す如く、ジョイント機構55、55’を介して相対回転運動が可能なように連結されるとともに、その上半部51、51’にはカフ59が設けられ、当該カフ59を介して装着者の大腿部のところに上記上半部51、51’が装着されるようになっているものである。また、下半部52、52’にもカフ59が設けられ、当該カフ59を介して下半部52、52’が装着者の脛のところに装着されるようになっているものである。従って、このような長下肢支持部材5、5’を装着した者は、例えば図3に示す如く、上記ジョイント機構55、55’のところを支点にして、下肢の内側に設けられた長下肢支持部材5、5’の上半部51、51’または下半部52、52’の支えを受けた状態で膝関節部の屈曲運動をすることができるようになる。
【0024】
そして、このようなジョイント機構55、55’のところには、ウオーム・ホイール機構を形成するウオームを駆動するものであって電動モータを主に形成される膝関節動力補助機構21、21’が設けられるようになっている(図8参照)。このものは、図8に示す如く、上記ジョイント機構55、55’の回転中心(ヒンジ中心)と同一軸心上に設けられるものであって上記長下肢支持部材5、5’を形成する上半部51、51’または下半部52、52’のうちのいずれか一方側の部材に固定的に取付けられるホイール71と、残りのもう一方側の部材に取付けられるものであって上記ホイール71と噛合い係合するように設けられるウオーム72と、からなるものである。そして、このような構成からなる上記ウオーム72のところには、当該ウオーム72を回転駆動する電動モータ75が設けられるようになっている。このような構成を採ることにより、上記電動モータ75の作動が開始されると、ウオーム72が回転運動を開始するとともに、当該ウオーム72は上記ホイール71を回転駆動することとなる。
【0025】
ところで、本実施の形態のものにおいては、上記ホイール71は、上記長下肢支持部材5、5’を形成する上半部51、51’側に固定的に取付けられるようになっているので、上記ウオーム72はホイール71の周りを相対回転運動をするようになる。また、上記ホイール71の中心は上記ジョイント機構55、55’の回転中心(ヒンジ中心)と一致するようになっているものである。これらのことから、上記電動モータ75及びウオーム72の作動に伴って、長下肢支持部材5、5’を形成する上半部51、51’と下半部52、52’とは、ジョイント機構55、55’を中心にして相対屈曲運動をするようになる。これによって、装着者は、上記電動モータ75を主に形成される動力補助機構21、21’の補助を受けて膝関節部において屈曲運動を行うことができるようになる。なお、このような構成からなるジョイント機構55、55’まわりには、図8に示す如く、上記ホイール71とウオーム72との間の相対回転角度を検出するためのエンコーダ77が、上記ウオーム72と直列に設けられる電動モータ75の端末部のところに設けられるようになっている。そして、このエンコーダ77にて検出されたデータ(信号)は、図1に示す制御手段4のところにフィードバックされるようになっているものである。
【0026】
次に、このような構成からなる左右の長下肢支持部材5、5’の最下端部には、図1ないし図3に示す如く、装着者のフット部が載せられる足載置体6、6’が設けられるようになっている。そして、このものも、上記膝関節部におけると同様、長下肢支持部材5、5’の下半部52、52’の最下端部のところと、足載置体6、6’の上端部66のところとが回転中心点(O)を介して回転自在なように連結されるとともに、ここのところには上記足載置体6、6’を自由に回転運動させる足関節モジュール3、3’が設けられるようになっている。この足関節モジュール3、3’も、上記膝関節モジュール2、2’と同様、いずれか一方側、本実施の形態においては主に足載置体6側に設けられるものであって回転中心点(O)を中心にして取付けられるホイール71と、当該ホイール71と噛合うように設けられるものであって上記長下肢支持部材5、5’の下半部52、52’の最下端部のところに取付けられるウオーム72と、からなることを基本とするものである。このような構成からなるものにおいて、上記ウオーム72のところには当該ウオーム72を駆動するものであって制御手段4からの指令に基づき作動する電動モータ75を主に形成される足関節動力補助機構31、31’が設けられるようになっている。なお、このような構成からなる足関節モジュール3、3’は、例えば図1及び図2に示す如く、長下肢支持部材5、5’の下半部52、52’の軸線上またはその延長線上に設けられるようになっているものである。
【0027】
次に、このような構成からなる各動力補助機構15、15’、21、21’、31、31’の作動制御等を行う制御手段4について説明する。このものは、図1に示す如く、マイクロプロセッサユニット(MPU)を主に形成されるものであって、股関節モジュール1の作動を補助する股関節動力補助機構15、15’の作動制御、及び上記股関節モジュール1の作動に続いて行われるものであって上記長下肢支持部材5、5’の上半部51、51’と下半部52、52’との間の相対屈曲運動を補助する膝関節動力補助機構21、21’の作動制御(図8参照)、更には足関節モジュール3、3’の作動を補助する足関節動力補助機構31、31’の作動制御(図3参照)を行うようになっているものである。そして、これら一連の制御は、予めROM部に入力されたデータ及びプログラムに基づいて行われるようになっているものである。なお、これらの制御作用を行う本制御手段4は、一体的にまとめられた状態で、例えば装着者の腰部等に取付けられるようになっているものである。
【0028】
次に、このような構成からなる本実施の形態のものについての作動態様等について説明する。まず、図4及び図5において、股関節モジュール1のところに設けられた一方の股関節動力補助機構15を形成する電動モータ155が作動を開始する、すなわち、回転運動を開始すると、これに伴なって、当該電動モータ155に連結される一方のピニオンギア14が回転駆動され、当該ピニオンギア14は、一方の円弧状ラック13上を転動運動することとなる。その結果、上記ピニオンギア14を一体的に有する上記一方のキャリア11は、例えば図7に示す如く、スライドレール12上をスライダ111を介して移動することとなる。このキャリア11の移動によって、一方の長下肢支持部材5は所定の距離だけ、すなわち、仮想股関節中心点(O)を中心にしてθの値の角度だけ移動することとなる。
【0029】
次に、上記股関節モジュール1を駆動する一方の股関節動力補助機構15の作動に連動して、一方の長下肢支持部材5のジョイント機構55周りに設けられた膝関節モジュール2を形成する膝関節動力補助機構21が、制御手段4からの指令(信号)に基づいて作動をする。その結果、上記一方の長下肢支持部材5の振出し運動に連動した状態でジョイント機構55を中心にした長下肢支持部材5の上半部51及び下半部52間の相対屈曲運動が開始されることとなる。これら一連の作動によって、装着者は膝関節部の屈曲運動を伴った脚部の振出し運動を行うことができるようになる。
【0030】
このようにして装着者の左右の脚部(下肢)のうち、いずれか一方の脚部(下肢)が前方に振り出され、そして、この前方に振り出されたいずれか一方の下肢の、その足の部分(足載置体)6の部分が着地するようになると(図3参照)、これに連動して、次に、上記制御手段4からの信号に基づき、上記足関節モジュール3を形成する足関節動力補助機構31中の電動モータ75(図8参照)が作動する。これによって、一方の足載置体6は、その上端部66に形成された長下肢支持部材5の下半部52の下端部との連結点(O)を中心にして適宜回転運動をし、足載置体6は、まず、そのかかと部61の部分が着地するようになる。そして、このような運動に続いて、つま先部65も地面に接触するようになる。このようにして、上記振出された装着者のフット部は足載置体6を介して全体が着地するようになる。なお、このような一連の作動において、本実施の形態のものにおいては、股関節モジュール1の前端部に設けられた体幹サポート機構8が装着者の腹部周りである体幹を柔かく保持(サポート)するようになる。これによって、装着者は、自分自身が正常に立った状態にあることを認知(感知)した状態で足の振出し運動等を円滑に行なうことができるようになる。
【0031】
次に、このような状態から上記股関節モジュール1に設けられたもう一方(他方)の股関節動力補助機構15’が作動、具体的には当該他方の股関節動力補助機構15’を形成する電動モータ155’が制御手段4からの新たな指令に基づいて作動を開始する。これによって、上記の場合と同様の行程を経て、もう一方(他方)のキャリア11’が振出し運動を開始することとなる。すなわち、上記他方の電動モータ155’の作動によって他方のピニオンギア14’が回転駆動され、当該他方のピニオンギア14’は上記他方の円弧状ラック13’上を転動運動することとなる。その結果、上記ピニオンギア14’を一体的に保持するもう一方(他方)のキャリア11’は上記他方のスライドレール12’上をスライダ111’を介して所定の角度(θ)だけ移動をする。このような他方のキャリア11’の移動に基づいて、他方の長下肢支持部材5’の振出し運動が開始されることとなる。
【0032】
そして、このような、他方の股関節動力補助機構15’の作動に連動して、当該他方の長下肢支持部材5’に設けられた膝関節モジュール2’、更には足関節モジュール3’が次々に連動して作動し、これによって、当該他方の長下肢支持部材5’の振出し運動が進められることとなる。このような股関節モジュール1を基点にした両長下肢支持部材5、5’の交互振出し運動が、上記制御手段4に予め組込まれたプログラム等に従って進められることによって、更には、股関節モジュール1の前端部に設けられた体幹サポート機構8の作動によって、健常者とほとんど変わらないような状態で進められることとなる。その結果、本長下肢装具装着者は円滑な歩行運動を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の全体構成を示す立体正面図である。
【図2】本発明の主要部を成す長下肢支持部材、各関節モジュール、及び体幹サポート機構の全体構成を示す正面図である。
【図3】本発明の主要部を成す長下肢支持部材、各関節モジュール、及び体幹サポート機構を示す側面図である。
【図4】本発明にかかる股関節モジュールの全体構成を示す正面図及びその一部断面図である。
【図5】本発明にかかる股関節モジュール及び体幹サポート機構の全体構成を示す展開斜視図である。
【図6】本発明にかかる股関節モジュールの作動状態を示す作動説明図である。
【図7】本発明にかかる股関節モジュールを形成するスライドレールとスライダとの関係を示す作動説明図である。
【図8】本発明にかかる膝関節モジュール及び足関節モジュールに用いられる動力補助機構の全体構成を示す一部断面図である。
【図9】本発明にかかる体幹サポート機構の全体構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 股関節モジュール
11 キャリア
11’ キャリア
111 スライダ
111’ スライダ
112 アタッチメント
112’ アタッチメント
12 スライドレール
12’ スライドレール
13 円弧状ラック
13’ 円弧状ラック
14 ピニオンギア
14’ ピニオンギア
15 股関節動力補助機構
15’ 股関節動力補助機構
155 電動モータ
155’ 電動モータ
16 メインブロック
19 ストッパ
19’ ストッパ
2 膝関節モジュール
2’ 膝関節モジュール
21 膝関節動力補助機構
21’ 膝関節動力補助機構
3 足関節モジュール
3’ 足関節モジュール
31 足関節動力補助機構
31’ 足関節動力補助機構
4 制御手段
5 長下肢支持部材
5’ 長下肢支持部材
51 上半部
51’ 上半部
52 下半部
52’ 下半部
55 ジョイント機構
55’ ジョイント機構
59 カフ
6 足載置体
6’ 足載置体
61 かかと部
65 つま先部
66 上端部
66’ 上端部
7 コイルスプリング
71 ホイール
72 ウオーム
75 電動モータ
77 エンコーダ
8 体幹サポート機構
81 ダブルヒンジ機構
811 下方のヒンジ
812 上方のヒンジ
815 調整ネジ機構
85 体幹サポート部
851 支柱
855 体幹保持部
89 フック装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の下肢全体を保持するものであって装着者下肢の内側に沿うように設けられる長下肢支持部材と、当該長下肢支持部材の上端部のところに設けられるものであって、左右に設けられる本長下肢支持部材を、その正面視において開き角度ゼロの状態で平行なように保持するとともに、その側面視において上記左右の長下肢支持部材を所定の範囲内にて揺動運動可能なように支持し、更に、当該揺動運動の運動中心位置が上記装着者の仮想股関節回転中心点とほぼ合致するように形成された股関節モジュールと、当該股関節モジュールの上方部に設けられるものであって、装着者の腹部周りである体幹を保持する体幹保持部及び当該体幹保持部と上記股関節モジュールとの間を連結する支柱にて形成される体幹サポート機構と、本長下肢装具装着者の膝関節部周りであって上記長下肢支持部材の軸線上またはその延長線上に設けられるとともに上記長下肢支持部材の上半部と下半部とを相対回転運動が可能なように連結する膝関節モジュールと、上記長下肢支持部材の下端部のところであって本長下肢支持部材の軸線上またはその延長線上に設けられるとともに装着者の足の部分を保持する足載置体を上記長下肢支持部材に対して相対回転運動可能なように連結する足関節モジュールと、これら各関節モジュールのところに設けられるものであって当該各関節モジュールを形成する各機構を駆動する動力補助機構と、当該各動力補助機構の作動を制御するものであってマイクロプロセッサユニットを主に形成される制御手段と、からなることを特徴とする体幹サポート機構付き長下肢装具。
【請求項2】
請求項1記載の体幹サポート機構付き長下肢装具において、上記体幹サポート機構を、装着者の腹部周りである体幹を保持するように形成されるものであって所定の面積を有する曲面からなる体幹保持部及び当該体幹保持部の中央部から下方へ向って垂直状に形成される支柱からなるものであって、これら各部が所定の熱可塑性合成樹脂材にて一体的に成形される体幹サポート部と、当該体幹サポート部を形成する支柱の下方部のところに設けられるものであって本体幹サポート部を形成する支柱を0°〜20°の範囲内にて相対変位が可能なように支持するように形成されたヒンジ機構と、からなるようにしたことを特徴とする体幹サポート機構付き長下肢装具。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の体幹サポート機構付き長下肢装具において、上記股関節モジュールを、中央に設けられるメインブロックと、当該メインブロックの両側面部のところに設けられるものであって正面視において左右平行なように設けられる二つの円弧状レールと、これら円弧状レールの各々のところを摺動運動するスライダを内包するものであって長下肢支持部材の取付けられる基礎となるキャリアと、上記メインブロックの両側面部のところであって上記円弧状レールの下側のところに当該円弧状レールと同心円状に設けられるものであって側面部に歯部を有する円弧状ラックと、上記両キャリアのところに設けられるものであって上記円弧状ラックの側面部に設けられた歯部とそれぞれ噛合い係合するピニオンギアと、当該各ピニオンギアに連結されるものであってそれぞれのピニオンギアを駆動する電動モータを主に形成される股関節動力補助機構と、からなるようにしたことを特徴とする体幹サポート機構付き長下肢装具。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の体幹サポート機構付き長下肢装具において、上記膝関節モジュールを、上記長下肢支持部材を形成する上半部と下半部とを相対回転運動可能なように連結するジョイント機構からなるものであって、本長下肢装具装着者の膝関節部周りの内側に取付けられることを基本とするとともに、上記長下肢支持部材を形成する上半部または下半部のうちのいずれか一方側に設けられるホイール及び残りのもう一方側に設けられるウオームにて形成されるウオーム・ホイール機構からなるようにし、更に、当該膝関節モジュールを駆動する膝関節動力補助機構を、上記ウオーム・ホイール機構を形成する上記ウオームを回転駆動する電動モータを主に形成させるようにしたことを特徴とする体幹サポート機構付き長下肢装具。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載の体幹サポート機構付き長下肢装具において、上記足関節モジュールを、上記長下肢支持部材を形成する下半部と上記足載置体とを相対回転運動可能なように連結するジョイント機構からなるものであって、本長下肢装具装着者の足関節部周りの内側に取付けられることを基本とするとともに、上記長下肢支持部材の下半部側に設けられるウオーム及び上記足載置体側に設けられるホイールにて形成されるウオーム・ホイール機構にて形成させ、当該足関節モジュールを駆動する足関節動力補助機構を、上記ウオーム・ホイール機構を形成する上記ウオームを回転駆動する電動モータを主に形成させるようにした構成からなることを特徴とする体幹サポート機構付き長下肢装具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−195291(P2009−195291A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37312(P2008−37312)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(593222805)アスカ株式会社 (11)
【出願人】(390011545)株式会社ティムス (5)