説明

体液吸収パッド

【課題】
従来の体液吸収パッドあるいは体液吸収パッド付き下着股部は、縫着を主な製造技術とし、針穴からの体液漏れや,糸による伝い漏れ、周縁部から外部への溢れ出し、浸み出しが問題であった。
【解決手段】
体液吸収パッドあるいは体液吸収パッド付き下着股部の浸透布と裏当て布の周縁を融着処理し、その内側端縁より間隔をおいて吸収保水層を配し、その略中央部両縁に内側に向けた切り欠き部を設け,この吸収保水層と裏当て布内側を、融着により固着した。これらにより、製造技術を融着加工のみで行う体液吸収パッド及び体液吸収パッド付き下着の提供が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、失禁時の尿、生理時の経血やおりものなどの体液が外部に漏れるのを防ぎ、繰り返し使用できる体液吸収パッド、及び、これを用いた下着に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の分野の技術として、下着に縫い付けられていず、着用者の股部に対応するように装着し、装着脱が容易なものとして体液吸収パッドが公知である。(例えば特許文献1参照)
また、体液吸収パッドが下着の股座に取り付けられた体液吸収下着もある。(例えば特許文献2参照)。これらの吸収パッド部分は、着用者の肌側から反対側に体液を浸透させる浸透布と防水加工が施された不透過性の裏当て布と、浸透布と裏当て布との間に配され、浸透布を透過する体液を吸収保水する吸収保水層を備えている。そして、これら積層体の周縁を撥水性布テープあるいは防水性布テープで下着本体に縫着した構造となっている。このような体液吸収パッドにおいて、吸収保水層を複数層にわたって立体的に配置し、これにより体液吸収パッドの吸収性能強化が図られているが、この技術では、縫着によるものとなっている。
【0003】
また吸収パッド周縁を、融着により処理しているものもある。(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。これらの例は、周縁部を融着処理することで、縫着時に使用の針穴からの浸み出しや、糸からの伝い漏れを解決するためや、生産工程の簡略化を意図としたものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−230064号公報
【0005】
【特許文献2】特許第2896633号公報
【0006】
【特許文献3】特開平11−137590号公報
【0007】
【特許文献4】特開2007−308827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の体液吸収パッドでは、吸収体が立体的に多層に配されているにも係らず縫着の針穴や糸からの、漏れや、浸み出し、など着用者に不快さを引き起こしていた。また、縫着箇所が多く縫着部が長いほどパッドの硬さが増し、柔らかさを失い易くもあった。また縫着による多層構造は製造工程の増加に直結し、生産性が低いなどの問題がある。
【0009】
また、従来のパッド式の繰り返し使用できる体液吸収パッドの装着は、歩行や動作によるずれ、トイレなどでの落下防止のために、側方に羽部を形成し、下着にハトメやマジックテープ(登録商標)で止める。あるいは、下着に落下防止のポケットを付けるなど工夫がなされていたが、着脱に手間どり、これら部材による着用の不快さも有った。また、ずれ、ねじれ、皺、折れなどが生じ易かった。
【0010】
また、体液吸収パッドの付いた下着は、着用者の股部に対応する部分に、吸収体等を多層に縫着することになるため、股部が厚くなったり、硬くなったり、あるいは、縫い目がごろつくなど、着用時に不快感、違和感が有り、また、厚みや硬さからの肌ずれの問題を生じることがあった。
【0011】
従来の体液吸収パッド及び体液吸収パッド付き肌着の股部分はその全てが縫着による生産工程、または周縁部処理のみ融着加工を取り入れてなされるも、吸収保水部は、縫着によるものが主であり、縫着の針穴や、糸からの、浸み出し、漏れ出しが有り、生産に於いては、下着股部吸収保水部に複雑な工程が集中し、生産効率が低いものと成っていた。
【0012】
また、従来の体液吸収パッドのカラー展開は、股部においては、本体のカラー化に伴わず、白などで生産されることが多く、特に体液吸収パッド付き下着では、本体との、カラーバランスが取れず、商品価値や、イメージを損なっているものが多くあった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、従来の体液吸収パッドおよび体液吸収パッド付き下着での、吸収した体液の漏れや、染み出し、着装脱に関する問題、下着本体に縫着する際の問題を解決して、安心して使用でき、繰り返し使用可能な体液吸収パッドおよび体液吸収パッド付き下着を提供すること、生産の効率アップを計ることを目的とする。
【0014】
本発明の体液吸収パッドは、使用者の体液を透過させる透過性の浸透布と、浸透布の反対側に位置し、防水性を有した不透過性の裏当て布と、浸透布と裏当て布の周縁部を融着することにより、袋部を形成し、この袋部の内部において、浸透布の裏側で、浸透した体液を吸収して保水する吸収保水層を備え、吸収保水層を、裏当て布と融着により固定させたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明では、前記吸収保水層は体液を吸収拡散させる拡散布と拡散布からの体液を吸収保水する吸水保水布からなる。この吸水保水布は、二層からなり、これらを互いに融着し、且つ、裏当て布と融着により固定してもよい。
【0016】
本発明、体液吸収パッドは、前記吸収保水層の拡散布及び吸収保水布の端縁部と前記浸透布と裏当て布、周縁融着部との間に、間隔が設けられてなり、前記吸収保水層の略中央部の両周縁部には内側に向けた切り欠き部を形成した。
【0017】
また、本発明の体液吸収パッドは、前記裏当て布の下着に対応する外側に粘着剤を印捺加工できる。
【0018】
また、本発明の体液吸収パッドは、前記、周縁部の融着剤に着色することは基より、前記吸収保水層と、裏当て布との融着部融着剤、加えて、裏当て布外側の粘着部粘着剤にも、着色をすることも可能である。
【0019】
前記浸透布もしくは前記裏当て布の周縁部に縫い代部を設けることも選択できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、体液吸収パッド及び、体液吸収パッド付き下着に於ける股部を、縫製技術を一切使用せずに、融着技術のみ、若しくは、融着と印捺技術で生産が可能である。パッドの吸収層部分など、周縁部以外も融着により固着できたことと、パッド周縁内縁と間隔をおいた吸収保水層略中央両縁の、内側に向けた切り欠き部により、周縁の融着処理の特長を生かした、漏れない、浸み出さない体液吸収パッドが提供でき、装着脱が容易に出来る。これらは、体液吸収パッドと体液吸収パッド付き下着の生産性を大きく上げるものであり融着処理された下着に使用されることで縫製技術を全く用いない下着が提供できると共に、縫製処理された下着への融着による合体、あるいは縫製による一体化も選択出来る。これらの融着剤、粘着剤に着色することで、商品のカラー展開が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明、体液吸収パッドの一例を示す平面図である。
【図2】図1に示した体液吸収パッドの裏面図である。
【図3】図1に示した体液吸収パッドの断面図および融着例及び、粘着剤印捺例を示す断面図である。
【図4】本発明、体液吸収パッドの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る体液吸収パッドの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の体液吸収パッドを肌側から見た平面図である。また、図2はその裏面図であり、図3は体液吸収パッドの内部を示す断面図でありと融着部及び粘着部の形成例を示している。
図1〜図3に示すように体液吸収パッド1は浸透布2と裏当て布3と吸水保水層4と裏当て布3の下着側に粘着部5を備えている。
【0024】
図3に示すように浸透布2と防水性を有した裏当て布3とは周縁Qで融着され、袋部Pを形成している。この袋部P内部に吸収保水層4として拡散布4aと上部吸水保水布4bと下部吸水保水布4cの順で収容されている。周縁融着部Qの融着剤Q1及び、袋部P内部の吸収保水層4の拡散布4aと上部吸収保水布4b下部吸収保水布4cの数箇所の融着部Wの融着剤W1は、例えばポリアミド系樹脂が使用されている。
【0025】
浸透布2の表側は、着用者の股部にあてがわれる部分であり、例えばポリプロピレンを主体とした、体液を透過させるメッシュ状生地で、着用者の肌触り、ドライ感に優れた素材でなっている。
【0026】
吸収保水層4は吸収量や吸収保水材の性能により積層枚数を変えても良い。吸収保水層4裏当て布3の固着は、吸収保水層4と裏当て布3の上面側と数箇所で、例えば図3の(a)〜(e)
に示す様な要領で融着され固着してもよい。以下図3の、(a)〜(e)に沿って説明する。
(a)は吸収保水層4が吸収布4b一層構造からなり、内部融着部W融着剤W、1の平融着例である。
(b)は吸収保水層4が上部吸収保水布4b下部吸収保水布4cの二層からなり、内部融着部W、融着剤W1の乗り融着、平融着の組み合わせ例である。
(c)は吸収保水層4が拡散布4a、上部吸収保水布4b下部吸収保水布4cの三層からなり、内部融着部W、融着剤W1の、割り融着、平融着の組み合わせ例である。
(d)は吸収保水層4が拡散布4a、上部吸収保水布4b下部吸収保水布4cの三層からなり、内部融着部W、融着剤W1の、乗り融着例である。
(e) は吸収保水層4が拡散布4a、上部吸収保水布4b下部吸収保水布4cの三層からなり、内部融着部W、融着剤W1の、平融着例である
【0027】
浸透布2は着用者の股部に対応する長さ寸法及び幅寸法を有している。浸透布2の周縁部のうち恥骨側に当てられる前縁部2aは、凸状に湾曲して形成され、臀部側に当てられる後縁部2bは前縁部2aよりも大きな径で凸状に湾曲して形成されている。また、側縁部2c、2c,それぞれ凹状に湾曲して形成されている。
【0028】
裏当て布3は、例えば、ポリエステルからなる布地により形成され、浸透布2と略同型の形状を有している。裏当て布3の上面側は袋部Pの内側下面を構成している。この裏当て布3には、例えば、ポリウレタンフィルムがラミネートされ防水性が付与されている。このラミネート加工により、防水性と同時に通気性が確保されており、着用者のムレ防止が図られている。
【0029】
また、吸収保水層4の拡散布4aは、例えばポリエステルを主体とした、吸水性のトリコットで、浸透布2からの体液を素早く吸収拡散する性質を有している。この拡散布4aは周縁部Q内縁より間隔R1をおいた形状であり、その中央部両縁に内側に切り欠き部T1を設けた形状が、望ましい。
【0030】
一方、上部吸収保水布4b下部吸収保水布4cは、例えば、ナイロン26,5%アクリル26,5%キュプラ47,0%からなる生地によって上部吸水保水層4bと下部吸水保水層4cの二層で形成されている。上部吸収保水布4bも、周縁部Q内縁より間隔R2をおいた形状であり、その中央部両縁に内側に図2のき切り欠き部T2を設けることが望ましい。図3に示すように、例えば、拡散布4a側から、上部吸収保水布4b、下部吸収保水布4cの二層などに積層して構成されている。
周縁部Q,拡散布4a、上部吸収保水布4b、下部吸収保水布4cは、図3(a)〜(e)に示すような要領で互いに、例えば、ポリアミド系樹脂で裏当て布3の上面側と数箇所で融着され固着されている。
【0031】
周縁融着部Q内縁より間隔R1、R2をおいてなる吸収保水層4の、拡散布4aと上部吸収保水布4bは略同形で、裏当て布3に数箇所に点在する融着部Wで固着されていることが好ましい。
吸収保水層4の、拡散布4a、上部吸収保水布4b下部吸収保水布4cと裏当て布3との融着部W融着剤W1の塗布形状は、図2に一例を示している。融着剤W1及び融着形状は、拡散布4a,上部吸収保水布4b下部吸収保水布4cを裏当て布3に固着する接着力を有し、吸収保水性能を良好に保持でき、繰り返しの洗濯使用に耐えうる事ができる。
【0032】
この体液吸収パッドの周縁融着部Q、融着剤Q1、及び、吸収保水層4の、拡散布4a、上部吸収保水布4b下部吸収保水布4cと裏当て布3との融着部W、融着剤W1を着色することにより、従来のカラー展開が、パッド全面ではなくこれら周縁融着部Q、袋部内部融着部Wの部分のみの着色によりカラーイメージを出すことが出来、之により、生地の染色を、省くことが可能となり、同時に多色のカラー化が容易である。染色が不要なため、多くのカラーバリエイションに富んだ商品展開が容易になる。
【0033】
周縁部Q内縁と吸収保水層4との間隔Rは、吸水保水層4を形成する材料の端縁が融着部Q内縁に、常に接触し、吸水保水された体液が、融着部Qに、漏れ出したり、浸み出したりすることを防ぐ為のものであり、また、吸水保水量や、構造、使用素材によりその間隔が変更されることが望ましい。また内側に向けた切り欠き部Tは、体液吸収パッドにおいて最も体液が集溜する体液吸収パッド略中央部に於いて、その両縁の拡散バランスを長手方向に変え吸収保水層略中央部両端縁からの溢れ出しや、浸み出しを防ぎ、吸収保水層4全面での拡散、保水を安定的に行う効果がある。また、その形状や大きさを、吸水保水量や、構造、使用素材により変化させることが望ましい。尚、中央部両縁のみならず数箇所に切り欠き部を備えることで、体液が吸収保水層4全体にむら無く、且つ、早く、拡散できる。
【0034】
裏当て布3の下着側に施された粘着部5の粘着剤5xは、例えば、アクリル系粘着剤を印捺したもので、着用時のずれ、ねじれ、皺、落下などの問題が解決でき、繰り返しの洗濯が可能であり、洗濯後も粘着性は保持できる。印捺加工により、あらゆる図柄への変更、カラー化が容易になった。粘着部5は図3に示すように、パッド全面、若しくは、粘着させたい部分に限っても良い。
【0035】
図4は裏当て布3の周縁を幅広に形成し、縫い代Uを設けた例である。 図4に示すように周縁融着部Qより外側に、裏当て布3より連続した縫い代Uを設けることで、本体下着への縫い付けや、下着股部周縁や裾始末が、容易に出来、且つ縫い代U部に融着剤を塗布しないことで、縫製時に、縫い代部が厚くならずに縫着させることができる。周縁融着部Qの幅を広くして縫い代とすることも可能である。図1〜4に於ける説明では、下着に使用される例を取り上げているが、下着だけでなく、タイツ、ストッキング、ガードル、スポーツウエアーボトム、ズボンなど多くのものに応用することも可能である。
【0036】
これら縫い代は、全周縁のみならず、2a、2b及びパッド両縁2cの必要な箇所に必要に応じ設けることが出来、その組み合わせも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1、 6 体液吸収パッド 2 浸透布 3 裏当て布 4 吸収保水層 4a 拡散布 4b 上部吸収保水布 4c下部吸収保水層 5粘着部 5x粘着部粘着剤 Q 周縁融着部 Q1 融着部融着剤 R 、R1、R2 間隔 T 、T1、 T2 切り欠き部 U 縫い代 W 袋部内部融着部 W1 融着部融着剤 2a 前縁部 2b 後縁部 2c 側縁部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の体液を透過させる透過性の浸透布と浸透布の反対側に位置し、防水性を有した不透過性の裏当て布と、浸透布と裏当て布の周縁部を融着することにより袋部が形成され、この袋部の内部において、浸透布の裏側で、浸透した体液を吸収して保水する吸収保水層を備え、この吸収保水層が、裏当て布と袋部内部で融着により固定されていることを特徴とした体液吸収パッド。
【請求項2】
前記吸収保水層に体液を吸収拡散させる拡散布と体液を吸収保水する吸収保水布とを配置し、この拡散布と吸収保水布とが融着されてなることを特徴とする請求項1記載の体液吸パッド。
【請求項3】
前記吸収保水層の前記拡散布と前記吸収保水布の端縁部が前記浸透布と裏当て布周縁の融着部との間に、間隔が設けられてなり、前記拡散布と前記吸収保水布の略中央部の両周縁部には内側に向けた切り欠き部が形成されてなることを特徴とする請求項1、2記載の体液吸収パッド。
【請求項4】
前記裏当て布下着側に対応する外側に粘着剤を印捺処理したことを特徴とする請求項1、〜3いずれか記載の体液吸収パッド。
【請求項5】
前記周縁融着部、吸収保水層と裏当て布との融着部の融着剤及び、裏当て布外側の粘着剤を着色してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の体液吸収パッド。
【請求項6】
前記浸透布もしくは前記裏当て布の周縁部に縫い代部が設けられてなることを特徴とする請求項1〜3記載の体液吸収パッド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−135998(P2011−135998A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297217(P2009−297217)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(709007179)
【Fターム(参考)】