説明

体液流を制御する方法および装置

【課題】尿道などの宿主体の管または血管を通る体液流を制御する新規の埋込み可能な体液流制御装置によって、当業における上記欠点および不利な点を克服かつ軽減する。
【解決手段】宿主体内部の液流を制御する埋込み可能な装置および方法。閉位置にあるとき体管(V)内部の液流を減少させ、かつ開位置にあるとき液流を許容する締付け部材(112)が備わる。さらに、開位置と閉位置の間で、締付け部材(112)の移動を制御する制御機構が存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿道などの宿主体の管または血管を通る液流を制御する埋込み可能な医療装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
失禁は、人がその随意排尿機能に対するコントロールを喪失している症状である。このような症状は、様々な関連性のあるおよび関連性のない疾患、老化、および随意尿道括約筋の減退を含む多様な原因から生じる。このような症状に苦しむ人の費用および不便は大きい。従来技術で知られている幾つかの治療法が存在する。これらの中で最も一般的なものは、大小の外科的矯正、投薬、および排泄物を取り込む役目をする器具および襁褓式取込みシステムである。別の解決策は、望まぬ排泄を防止するために尿道口にパッチを施すものである。おそらく、今日で最も効果的な解決策は、人工尿道を使用するものであろう。この装置は外科的に取り付けられかつ油圧または空圧駆動され、バラストを膨張させて液流を抑圧することによって動作する。しかし、このような装置の制御は時に難しくかつしばしば不便である。利用可能な代替治療法の領域全体を通して、効率水準、有用寿命、付随する問題が大きく異なり、現在の代替治療法のどれをとっても、ことに重症の場合には、特に効果的ではない。したがって随意排尿機能失調を制御する改良装置に対する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、尿道などの宿主体の管または血管を通る体液流を制御する新規の埋込み可能な体液流制御装置によって、当業における上記欠点および不利な点を克服かつ軽減する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般的に言えば、また本発明の第1の態様によれば、宿主体内の液流を制御する埋込み可能な装置は、開位置にあるとき体管内部の液流を許容しかつ閉位置にあるとき体管内部の液流を減少させるための締付け部材と、前記開位置と閉位置の間で締付け部材を動作させる駆動部材と、前記駆動部材を動作させる制御手段を備える。
【0005】
締付け部材は、第1係合要素と、体管を取り囲むように第1係合要素に連結する第2係合要素を備えることが好ましい。第1係合要素と第2係合要素のうちの少なくとも一方が孔を有し、組織がそれを貫通して体管の表面からかつそれへと成長できることが好ましい。固定部材が、第1係合要素と第2係合要素を結合位置に固定するために備わっていることが好ましい。
【0006】
締付け部材はプランジャ部材を備えることが好ましく、そのプランジャ部材が、前記体管に対して圧力を加えて、前記体管を圧迫して前記閉位置にすることができるように移動可能である。駆動部材は、第1および第2端部を備えることが好ましい。コネクタの第1端部が、前記プランジャ部材に付着しており、かつ前記プランジャ部材を移動させるために前記制御手段によって軸方向に移動可能であることが好ましい。
【0007】
一実施形態では、本装置が、体管に対して締付け部材を付勢するための付勢部材と、作動するとき、体管内部の液流を増加させるために、締付け部材を閉位置から離れさせるように付勢部材が及ぼす力を相殺するための引張り部材と、引張り部材を作動するための駆動部材を含む。
【0008】
駆動部材は筐体を備え、コネクタの第2端部が、筐体中の開口部を滑動自在に貫通して、例えば、物理的にまたは磁場によって、筐体内に備わるアクチュエータに連結され、アクチュエータの動きによって、前記プランジャ部材が体管から離れるように移動して少なくとも幾らかの液流をそこに通すことができる。駆動部材はコネクタの第2端部に作用的に連結されているモータを備えることが好ましく、モータの作動によってコネクタの第2端部がモータの側に軸方向に引き寄せられることによって、前記プランジャ部材が体管から離れるように移動して少なくとも幾らかの体液流をそこに通すことができる。
【0009】
トリガ機構が、モータを作動させるために備わっていることが好ましい。このトリガ機構は、磁気式スイッチ、無線制御回路、患者の皮下に埋め込んだ手動ボタン、または他の任意適切なトリガ機構でよい。手動オーバライド・システムも含み得る。手動オーバライド・システムは、患者の体外で使用できる磁石を含むことができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、閉位置にあるとき体管内部の液流を制限しかつ開位置にあるとき体管内の液流を許容する締付け部材と、前記開位置と閉位置の間の締付け部材の動きを制御するための制御機構と、締付け部材および制御部材が宿主体の異なる部位に埋込み可能であるように、締付け部材および制御部材を連動させる連動部材を備える、宿主体内部の液流を制御するための埋込み可能な装置を提供する。
【0011】
この制御機構は前記連動部材から分離可能であり、宿主体から締付け部材または連動部材を取り出さずに、前記制御機構を交換することができる。
【0012】
連動部材は、体管内部の液流を変更するように、前記開位置と閉位置の間で前記締付け部材を移動するようになされていることが好ましい。さらに前記連動部材を駆動するために、駆動部材を備えることが好ましい。連動部材は、保護スリーブ内に設けられたケーブルか、または締付け部材と電気信号を伝達するワイヤ、ワイヤレス無線通信システムなどの制御部材との間の他の任意適切な連動部品でもよい。
【0013】
駆動部材および制御部材は、締付け部材とは別体の筐体中に備わっていることが好ましい。駆動部材はモータであることが好ましく、例えば、磁気式トリガ機構などの、モータすなわち磁気ユニットを患者の体外の位置から駆動するための遠隔操作式トリガ機構を備えるものが最も好ましい。
【0014】
モータすなわち磁気ユニットは、ウォーム・ギヤを介して作用することが好ましい。このウォーム・ギヤが軸を画定しかつ連動部材がケーシングに付着されていることが好ましく、前記ケーシングをウォーム・ギヤの軸に対して平行方向に移動させるために、ウォーム・ギヤが前記ケーシング内に設けたねじ山付き開口部と協働する。
【0015】
本発明の別の態様によれば、細長い連動部材に封止体が設けてあり、この連動部材が宿主体内に埋め込むための埋込み可能な装置と制御機構の間に延在する。連動部材は、筐体中の開口部を貫通する。この封止体は、2つの開口を有する環状部材を含み、筐体内に進入する体液を薄膜によって取り込むように、一方の開口が筐体に封止されかつ他方の開口が連動部材周りで連動部材に封止されている。この薄膜は、軸の動きを許容するように伸縮する。
【0016】
薄膜は、この薄膜と軸との周りに延在する把持部材によって前記連動部材に封止されていることが好ましい。この把持部材はコイルを含むことができる。薄膜は、連動部材が筐体内部から離れるように軸方向に移動するとき内向きに折り畳まりかつ連動部材が筐体内へ軸方向に移動するとき伸展する蛇腹を備えることが好ましい。蛇腹は、その折り畳みを制御できるように補強リングを含むことができる。
【0017】
本発明のさらに別の態様によれば、体管内部の液流を制御するための締付け部材に動作機構を備える。締付け部材は、開位置と閉位置の間で動作可能である。動作機構は、締付け部材を動作させるために、締付け部材に作用的に連結されている軸方向に移動可能な連動部材を含む。動作手段が連動部材を軸方向に移動させるために備わっている。軸方向の動きを選択的に伝達するカップリングが、連動部材と動作手段の間に連結されている。
【0018】
このカップリングは、一方の方向では、動作手段と連動部材の間にポジティブ係合が存在し、もう一方の方向では、動作手段と連動部材の間に多少の遊びを許容するように作用する。カップリングは、連動部材に対して作用する動作手段の直接駆動によって体管の開放を実現するが、体管を閉じると、カップリングによって、動作手段が体管に直接圧力を加えることを防止し、したがって体管に対する損傷の蓋然性を減少するように使用することができる。
【0019】
カップリングは、磁石または圧縮性部材を含むことができる。磁石は、連動部材に付着することが可能であり、少なくとも1つの別の磁石を動作手段に付着することができる。磁石は、物理的に相互に向かってかつ離れるように移動可能であるか、あるいはそれらが、必要なときに動作させることができるように電磁石でもよい。圧縮性部材を移動可能なケーシング中に備えることができる。連動部材は、圧縮性部材に作用的に連結可能であり、モータがケーシングを移動させるように作用し、さらに圧縮性部材が連動部材を移動させるように作用する。代替的には、カップリングが、チェーン・リンクまたは連結された伸張性フレーム構造または体管に直接圧力が加わることを防止する他の手段を含み得る。
【0020】
磁石を備えるカップリングの場合では、手動オーバライド・システムを含むことができるが、その手動オーバライド・システムは患者の体外から操作可能な別の磁石を備える。手動オーバライド磁石は、動作手段に付着する磁石の磁力に対して、連動部材に付着する磁石を移動させるのに十分な強度でなければならない。
【0021】
本発明の別の態様が、宿主体内の液流を制御する手段を提供する。この方法は、体管周りに締付け部材を埋め込むことを含み、締付け部材が、閉位置にあるとき体管内の液流を減少させる。本方法は、宿主体内に制御機構を埋め込むことと、締付け部材と制御機構の間に連動部材を備えかつ埋め込むことによって、制御機構が締付け部材を制御可能にすることをさらに含む。制御機構は、締付け部材および連動部材を取り出さずに宿主体から取り出しかつ交換することが可能である。
【0022】
締付け部材は、その間の開口を画定する係合要素を含むことができるが、本方法は、体管が開口を貫通するように係合要素で体管を取り囲むことを含む。
【0023】
本方法は、係合要素を管に縫合することをさらに含む。また制御機構を体管から遠隔に埋め込むことができる。
【0024】
本発明のさらに別の態様が、埋込み可能な装置用の遠隔測定システムを含み、この遠隔測定システムが、埋込み可能な装置の動作を監視するために、宿主体内に埋め込んだ制御ユニットにおよびそこから信号を送受信できる信号機構を含み、さらにこの遠隔測定システムは埋込み可能な装置の動作設定を変更することができる。
【0025】
信号は電磁放射が好ましく、無線信号が最も好ましい。埋込み可能な装置は、この埋込み可能な装置の宿主体に対する動作を監視するためのセンサを含むことができ、さらにこの測定システムは、検知データにフィードバックを提供するためにセンサに応答指令信号を送信する機構を含む。これらのセンサは、埋込み可能な装置の可動部分が、宿主体の部位に対して及ぼす圧力を監視することが可能であり、検知データに対するフィードバックには、埋込み可能な装置の可動部分の移動範囲を変更するためのコマンドが含まれていることが好ましい。
【0026】
本発明の別の態様が、宿主体内の液流を制御するための埋込み可能な装置を含む。この埋込み可能な装置は、選択的に宿主体の管を締め付けるために、この管に選択的に圧力を加えるための往復動可能部材を含む締付け部材を備える。往復動可能部材によって管に対して加えられた圧力を検知するために、圧力センサを備える。前記管に対する損傷を防止するために、前記圧力センサによって検知した圧力に応答して前記往復動可能部材の動きを変更するように、フィードバック・システムも含まれる。
【0027】
本発明の埋込み可能な液流制御装置の目的および利点は、締め付けるべき管または血管を損傷せずに、埋込みおよび使用が可能なことである。しかも、管あるいは血管に対する外傷を最小にし、さらに本発明の装置は、比較的小型、軽量であり、かつ耐久性のあるプラスチック、チタニウムまたはステンレス鋼などの耐腐食性材から作製されているので、例えば、排尿、排便、射精、肥満コントロールのための栄養吸収など、数多くの制御対象の管を通る流体の流れを制御するために長期間にわたって使用するのに適切である。液流制御装置とその制御ボックスを分離することによっても重要な利点が提供される。液流制御装置を埋め込むための手術は手際を要しかつ複雑であるが、制御装置を埋め込むための手術の方は、制御ボックスを容易にアクセス可能な箇所、すなわち患者の皮膚の直ぐ下側に埋め込むので遙かに簡単である。したがって、制御ボックスのどのような部分が故障しても、液流制御装置を調節する必要もなく、制御ボックスを取り出しかつ新たな制御ボックスと交換することができる。したがって、制御ボックスの交換を専門の外科医が行う必要がなく、大多数の病院もしくは外科医院でさえ、局部麻酔下で実施することができる。よってこの手術は、患者にとって遙かに外傷が少なく、かつ専門の泌尿器外科手術を実施することができる病院よりも患者にとって都合のよい場所で行うことができる。
【0028】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴および利点は、添付の図面に例示目的のために選択しかつ示すその実施形態の以下の詳細な説明からさらに適切に了解かつ理解されよう。したがって、本発明を例示する具体的な実施形態は典型であり、本発明の限定と見なすべきものではないことを理解されたい。特に、例示する実施形態は尿道用の人工括約筋に関するが、本装置は、体液流の通るいずれの管もしくは血管であっても使用可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による体液流制御装置を示す正面分解組立図である。
【図2】図1の体液流制御装置を示す側面分解組立図である。
【図3】閉位置にある、図1の装置を示す部分側面図である。
【図4】閉位置にある、図1の装置を示す部分正面図である。
【図5】体液流制御装置で使用する制御ボックスおよび装置を示す側面分解組立図である。
【図6】図5の制御ボックスおよび装置を示す部分上面図である。
【図7】開位置にある、図1の装置で使用する電動式駆動部材を示す部分断面図である。
【図8】中間位置にある、図7の電動式作動部材を示す部分断面図である。
【図9】閉位置にある、図7の電動式作動部材を示す部分断面図である。
【図10】本発明による体液制御装置の一代替実施形態を示す第1部分側面分解組立図である。
【図11】図10の体液制御装置の第2部分側面分解組立図である。
【図12】手動式作動部材の一実施形態を示す上面図である。
【図13】図12の手動式作動部材を示す側面断面図である。
【図14】電動式作動部材の一代替実施形態を示す側面断面図である。
【図15】図14の電動式作動部材の上面図である。
【図16】ソレノイド作動部材を示す側面図である。
【図17】図16に示す作動部材の側面断面図である。
【図18】皮下に埋め込まれた本発明の装置で使用する手動スイッチの側面図であり、本発明の装置の使用者によって作動される。
【図19】図18の手動スイッチを示す側面断面図である。
【図20】本発明による体液流制御装置の一代替実施形態を示す側面断面図である。
【図21】本発明の別の代替実施形態を示す部分分解斜視図である。
【図22】開位置にある図21に示す一代替実施形態の部分斜視図である。
【図23】図21および22に示す代替実施形態の部分を示す拡大分解組立図である。
【図24】閉位置にある、本発明のさらに別の代替実施形態を示す部分側面図である。
【図25】図24に示す代替実施形態を示す部分斜視図である。
【図26】制御ボックスおよび装置の一代替実施形態を示す上面部分断面図である。
【図27】図26のケーブルと連動部材の間の結合を示す拡大断面図である。
【図28】電動式駆動部材の一代替実施形態を示す部分断面図である。
【図29】制御ボックスおよび装置を示すさらに別の代替実施形態を示す上面部分断面図である。
【図30】図29の制御装置を示す部分断面図である。
【図31】連動部材を体液流制御装置に連結する1つの代替手段を示す部分断面図である。
【図32】連動部材を体液流制御装置に連結する他の代替実施形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明およびその付随する利点を例示しかつさらに完全な理解を供するために、この新規の埋込み可能な体液制御装置およびその使用を以下に詳細に説明する。
【0031】
ここで図面をより詳細に参照すると、幾つかの図を通して同じ数字が同じ部分を示すが、図1〜4は、本発明による体液流制御装置を示す。この体液流制御装置は、第1係合要素102および第2係合要素104を備える。第1係合要素102を第2係合要素104に結合するとき、宿主体の管、すなわち、尿道などの人間または動物の体内の任意の管または血管Vの周りに嵌めるのに適切な内径を形成する。
【0032】
この体液流制御装置はまた、第1および第2係合要素102および104を結合ための固定機構106を備える。この固定機構106は任意適切な形態をとり得る。例示の実施形態では、固定機構106が、第1係合要素102に位置するロック・ピン108および第2係合要素104に位置するロック穴110の形態にある。例示の実施形態では、2つのロック穴110が係合要素104の両面に備わっている。それぞれのロック・ピン108をロック穴110のいずれにも取り付けることができる。したがって部分102および104の間に形成する内径は、様々な大きさの血管に使用するために調節可能である。この目的のために任意の他の均等の固定機構が使用可能であることを理解されたい。本発明が企図する代替固定機構には、限定ではないが、ベルトおよびスナップ・ピン、または第1および第2係合要素102および104上の相互連結用の成形部品の使用が含まれる。
【0033】
本発明の体液流制御装置が、第1および第2係合要素102および104を結合することによって形成する内径中に配置するピストン状部材またはプランジャ部材112をさらに備えるのが好ましく、このプランジャ部材112が尿道などの体管または血管に対して圧力を加える。図2および31から最も適切に分かるように、プランジャ部材112は、使用に際して、このプランジャ部材の外縁部のみが血管表面に接触するように湾曲した外形を有することができる。これによって、可能性として平坦なプランジャ部材を使用する場合よりも血管に加わる圧力の面積が小さくなるので、血管組織の壊死の蓋然性が減少する。プランジャ部材112の湾曲外形が取外し可能なプランジャ・ヘッドに設けてあるので、外科医が、血管の大きさに合わせて適切なサイズのプランジャを選択することができる。
【0034】
この体液流制御装置は例示したもの以外に他の形態もとり得ることを理解されたい。例えば、2つの係合部材に備わるプランジャ部材の代わりに、血管中の体液流を制限するためにそれに圧力を加えるように、これらの係合部材の一方を他方に対して移動可能にすることもできよう。あるいは、人工外部環状括約筋または他の血管に圧力を加える手段の形態にある体液流制御装置を血管に適用することもできる。
【0035】
孔113を第1係合要素102に備えることができる。これらの孔113によって、体液制御装置を血管に繋止するように、組織がそれを通り抜けて血管の表面からまた表面へと成長可能にする。他の孔(図示せず)を設けて、係合要素が組織の成長によって完全に定位置に繋止されるまで、血管に係合要素を一時的に固定するために溶解性の縫合糸を使用することもできる。あるいは、係合要素の材料に縫合糸を通すことも可能であるし、あるいは係合要素を別様に血管に付着することもできる。組織の成長は、この装置を宿主体に埋め込んでから数週間以内に実現することが判明しているので、血管に取り付ける形態にこだわらずにこの装置を埋め込むことが可能であり、したがって時間が経過するうちに組織の成長によってこの装置が血管に堅固に付着するのに任せておけばよい。
【0036】
この装置のすべての構成部品は、生物学的に不活性でかつ適合性のある材料である。例えば、この液流制御装置をポリプロピレン、シリコーン、チタニウム、ステンレス鋼および/またはテフロン(登録商標)から作製することができる。
【0037】
体液流制御装置が閉位置にあるとき、本発明の体液流制御装置によって駆動部材を使用して、体血管に対して圧力を加えるためにプランジャ部材112を付勢し、かつプランジャ部材112を血管から離れるように引いてこの装置を開放する。この駆動部材は、保護スリーブまたはシース116によって覆ったケーブル114を備えことができるが、このケーブル114には第1端部118および第2端部120がある。ケーブル114は、任意適切な材料の使用が可能であるが、編上げステンレス鋼製ケーブルが好ましい。保護スリーブ116は、その上で組織が成長しにくい非粘着性の生体適合材製であることが好ましい。適切な材料はテフロン(登録商標)である。ケーブル114はスリーブ116内部で滑動自在に移動可能であるか、あるいはケーブル114およびスリーブ116が一緒に滑動自在に移動することもできる。
【0038】
ケーブル114の第1端部118は、第2係合要素104中の開口(図示せず)を滑動自在に貫通してプランジャ部材112に付着されている。スリーブ116がケーブル114と一緒に移動するように設計されている場合は、第2係合要素104上および周囲に組織が成長して、スリーブ116がこの開口を通って移動するのを妨げないように、それが第2係合要素104の開口を通過する箇所で、スリーブ116の周りにカラー122が備えてある。ケーブル114がスリーブ116の内部で滑動自在に移動可能な場合は、カラー122によって、組織がスリーブ116の端部に進入するのを防止する。
【0039】
図5〜9は、ケーブル114の端部120に連結する液流制御装置用の制御ボックスを例示する。この制御ボックスは、筐体202、ウォーム・ギヤ206を有するモータ204、ばね208、およびスリーブ116周りを封止する蛇腹210を備える。筐体202は、ポリプロピレンまたは他の任意適切な生物学的に不活性な材料製である。バッテリ212も備わっており、米国ニューヨーク州クラレンス市のWilson Greatbatch Ltd社製のバッテリなどの、好ましくは体内埋込みに適切なものでなければならない。動作機構(図示せず)を制御ボックス内に備えることが可能であり、あるいは宿主体内の容易にアクセス可能な場所に別個に埋め込むこともできる。
【0040】
制御ボックスおよびケーブル114の配置によって、制御ボックスを液流制御装置とは別個に体内に埋め込むことができる。例えば、制御ボックスを患者の腹部の皮膚近くに埋め込むことが可能であり、ケーブル114およびスリーブ116を、制御ボックス202から尿道または他の体血管周りに埋め込んである体液制御装置まで通す。
【0041】
ケーブル114は、端部120を筐体202内の滑動自在に移動可能なケーシング214の内部に位置するナット216に付着してある。ばね208もケーシング214内部に位置し、そのケーシングにはねじ穴218があり、ウォーム・ギヤ206をケーシング214の内部に通すことができる。
【0042】
モータ204からケーブル114へ、したがって体血管Vへ軸方向の動きを選択的に伝達するための結合部を設けるために、ばね208がモータ204とケーブル114の間に介在するが、その動作は図7〜9を参照して下で説明する。例示の実施形態では、モータ204がケーシング214に作用して、ナット216によってばね208およびケーブル114を移動させる。しかし、任意適切な圧縮性部材をケーシング214内で使用してモータの作用から血管を保護することができるが、例えば、弾性的に変形可能な材料を使用することも可能であり、あるいはケーシング214が適切に封止されていれば、ガスなどの圧縮性流体を使用することもできよう。代替的には、ばねまたは他の圧縮性部材を直接ケーブル114に連結したり、あるいはその中に挿入することもできる。このような構成には、モータが動作するとき、十分に剛性があって押込みおよび引出し運動をケーブル114に付与するものなら、そのような圧縮性部材を使用することが好ましかろう。
【0043】
滑動自在のケーシング214およびウォーム・ギヤ206によって、モータ204による軸方向の動きをケーブル114に付与することができるが、任意適切な軸方向の駆動作用を用いて、ケーブル114を移動させ得ることを理解されたい。例えば、モータ204が軸方向に移動可能なアクチュエータを備えたり、あるいは適切な歯車装置を備えて歯車ラックまたは他の軸移動可能な要素に作用してもよい。代替的には、筐体202内の軸周りに巻き付けることができる可撓性の端部をケーブルに備えることもできよう。
【0044】
ケーブル114を収容するスリーブ116は、体液が進入してモータおよび他の制御ボックスの構成部品を損傷するのを防止するために筐体202に封止されている必要がある。任意適切な封止体を使用できるが、スリーブ116が滑動自在に移動できるように設計されている場合は、プランジャ部材112に動きを付与するためにスリーブが軸方向に移動できる必要があるので、スリーブ116周りを緊密に封止することができないことに注意されたい。スリーブ116を筐体202に封止する1つの方法は、蛇腹機構を使用するものである。適切な蛇腹機構210が図7〜9に例示してある。蛇腹210は、スリーブ116が軸方向に移動するとき、蛇腹210が伸展またはそれ自体に折り重なって収縮して、スリーブ116周りの筐体202内にしみ込む体液を蛇腹210によって取り込み、かつ装置を閉位置に移動させるとき、それを筐体202から押し戻すことができるように設計されている。
【0045】
ねじ山付きボルト220およびナット222によって、スリーブ116を蛇腹210および筐体202に封止することができる。ボルト220は、その頭224を筐体202内部に残して筐体中の開口を貫通する。スリーブ116は、ボルト220内の中央穴226を貫通しかつそれに緊密に嵌め込まれている。蛇腹機構210は、概ね管状でありかつOリング封止体228によってボルト220の頭224の下側に封止されている。ナット222をボルト220に締め付けると、Oリング封止体228が圧縮されることによって、緊密な封止が生じて体液がボルト220内側周りの筐体202に進入するのを防止する。蛇腹210は、ボルト220の頭224周りに延在し、かつ緊密に巻き付けたばね230によって筐体202の内側でスリーブ116に封止されている。可能な限り最高に緊密な封止を得るために、スリーブ116を蛇腹210およびばね230に押し通す前に、ばね230を蛇腹210上に配置することができる。蛇腹210をスリーブ116に封止する他の方法には、ケーブル・クランプ、Cクリップ、粘着シールなどがある。補強リング234を蛇腹210の片面上に設けて、スリーブ116が軸方向に移動するとき、確実に蛇腹210が正確に折り畳めるようにする。この補強リング234は、蛇腹210の壁部中の厚くした部分でもよく、あるいは接着または他の任意適切な手段によって蛇腹に付着される別体のリングでもよい。この補強リング234の代わりにまたは追加して、体液流制御装置を閉位置に移動させたとき、確実に正確に折り畳めるように蛇腹に襞または折り目を付けることができる。
【0046】
筐体におよびスリーブ周りに封止が施されていれば、また蛇腹によってスリーブが筐体を出入り移動することができれば、蛇腹を任意適切な形状にすることができる。例えば、蛇腹210を単純な管形状にして、管の端部を筐体およびスリーブに封止することができる。代替的には、蛇腹210を円錐台形またはベル形などのより複雑な形状も可能であり、あるいは折り目または襞を付けることもできよう。筐体への封止体は、例示するように、筐体の内側または筐体の外側で、封止体が貫通する筐体中の開口に近接させることができよう。あるいは、ボルト220の周りまたは背後で、筐体の壁部に封止を施すこともできよう。
【0047】
蛇腹機構を使用せずにスリーブ116および筐体202を封止することが可能であるが、スリーブ116の移動によってシールに対して摩擦が発生するので、エネルギーの損失が生じることが判明している。このためにモータのバッテリ寿命が、1/3までの分だけ短くなる可能性がある。例えば、可撓性の環状リングをスリーブ116と筐体202の間に封止できるが、この環状リングはスリーブが軸方向に移動すると伸展する。あるいは、一連の封止体をスリーブ116に沿って備えることができるが、それぞれの封止体が幾らかの体液が筐体202内に進入するのを防ぐ。
【0048】
制御回路(図7〜9に図示せず)を備え、動作機構からの信号を受信するとモータを動作させる。よく知られている幾つかの制御装置のいずれかを使用して、本発明の目的を妨げない限り、本発明の体液流制御装置の動作を使用者が制御することができる。適切な動作機構には、無線制御装置または制御回路によって検知可能な磁気装置がある。磁気装置では、使用者が携帯可能な別体の磁石を使用者に持たせ、かつ使用者がこの装置を動作させたいとき、使用者が埋込みスイッチ上方の皮膚に近接してそれを位置決めする。この磁石は任意適切な形状でよく、また例えば、他の人には直ちにその用途が分からないように、ペンまたはクレジット・カードのような形状にすることができる。この磁石は、磁石をポケットに入れて携帯する場合、この装置が誤作動するのを防止するように、この装置を動作させるためには、それをスイッチに近接して位置決めする必要があるので弱い磁場を有するべきである。代替的には、接触センサ、赤外線、音声作動式が使用可能であり、あるいは手動スイッチを患者の皮下に埋め込むこともできる。
【0049】
この装置は、時に手動で動作するトリガに見られるように、皮膚に刺激を与えることをせずに、動作させることができるので、遠隔操作による動作機構が好ましい。好適な実施形態では、遠隔操作によるトリガ機構に加えて、手動オーバライド・スイッチを備えることができる。手動オーバライド・スイッチは、制御ボックスが故障し、かつ使用者が、制御ボックスを交換してもらうには、外科医の医院または病院から遠すぎる場合、一時的に使用するように設計されている。手動オーバライド・スイッチは、制御ボックス内に装備可能であり、またこのスイッチを最初に作動するまで、例えば、薄膜シールによって制御ボックスの内側から封止することができる。このような手動オーバライド・スイッチの使用は、最終的には体液を制御ボックスへ進入させ、次いで交換せざるを得なくなる。あるいは、手動オーバライド・スイッチを備えぬ場合もあるが、それは制御ボックスを交換するまで、使用者が失禁用パッドを使用する必要を意味しよう。
【0050】
制御回路はモータの動作を制御し、さらに、例えば、ケーシングの位置によって、またはモータが受ける抵抗によってプランジャ部材の位置を検知することができる。制御回路もバッテリの充電レベルを監視することが好ましい。低バッテリまたはモータ不良などの問題を検知すれば、この装置を開位置にしておくことができるように、制御回路を使用して体液流制御装置を開くように、またはそれが閉じないように付勢する。例えば、この装置が一旦開くと、当接部(図示せず)がケーシング214に接触するようにして、それがさらに移動するのを防止することができる。モータを停止させることも可能である。ケーシング214内部で、ばね208を圧縮しかつ伸展させて、ケーブル114によって装置を開閉できるので、この装置は依然として手動オーバライドによって動作可能である。
【0051】
制御ボックス202はまた、ボックス自体にアクセスせずに、外科医が遠隔測定システムによって制御回路に応答指令信号を送信できる素子を内蔵することができる。このような素子を、無線波または遠隔測定システムよって送受信する他の双方向信号、または他の任意適切な機構によって応答指令信号を送信かつ/または制御することができる。これによって、外科医は、バッテリの充電、内部センサの点検、ケーブル114の張力の変更、および他の適切な調節が可能になる。圧力センサをプランジャ上112に備えて、プランジャ112が閉位置のとき、プランジャ112と血管Vの間の圧力をモニタすることもできる。遠隔測定システムによって圧力センサに応答指令信号を送り、次いで制御装置の設定を変更することもできる。例えば、個々の患者が誰でも、血管Vに加わる過剰な圧力をいずれも軽減するように、ケーブル114の、したがってプランジャの正確な移動距離を設定するために、装置の動作ごとに、モータ204によってウォーム・ギヤ206が回転する回転数を変更することができる。さらに、通常の動作手段に対するオーバライド・システムとして、または現場で装置を点検するために、通常の動作手段に追加して、遠隔測定システムには、モータに体液流制御装置を開閉させるための制御コマンドが含まれ得る。
【0052】
装置に故障が発生したりまたは問題を検知して、制御ボックスによって開位置のままになれば、それは患者がこの装置の埋込み以前に置かれていた状態、つまり失禁状態に戻ることを意味するだけである。もし装置が閉位置で故障したら、患者にカテーテルを挿入する必要があろう。しかし手動オーバライド・システムによって、患者は、かなり長時間の間、すなわち医療救助を受けるまで、このシステムを手動で動作させることができよう。
【0053】
この装置の動作を図7〜9を参照して説明する。図7に示す開位置では、モータ204がウォーム・ギヤ206を動作させてケーシング214をモータ204に側に引き寄せた。これによってナット216をケーシング214と一緒に引っ張り、したがってケーブル114に作用してプランジャ部材112を血管Vから離れるように引っ張る。蛇腹210もその完全な伸展位置にある。体液制御装置を閉じるためには、モータ204を作動して、この装置を開くために使用した方向とは逆の方向にウォーム・ギヤ206を回転させる。ウォーム・ギヤ206が動作すると、ケーシング214がモータ204から離れて行き、図8に示すように、ばね208がナットを押し上げ、血管Vに対してプランジャ112を付勢する。モータ204をさらに動作させるとき、血管Vが既に閉じられている場合、血管Vによってプランジャ112の動きが妨げられ、血管Vに対してケーブル114を移動させるのに要する力が増加することによって、ケーブル114の、したがってナット216の移動が妨げられる。ナット216がばね208を押し付けて、図9に示すように、ばね208を圧縮させる。したがって、モータ204によってウォーム・ギヤ206がそれ以上移動しても血管Vに圧力を加えかつ損傷することにはならずに、ばね208をさらに圧縮することになるのが分かる。このようにして、ケーシング214の軸方向の動きを選択的にケーブル114に伝達することができる。これによって、血管Vとばね208の間の相互作用により血管Vにこれ以上圧力を加えないので、モータ204の連続回転による装置故障から血管Vを保護する。
【0054】
図10および11に、体液流制御装置の一代替実施形態を示す。図1〜9の機能と同じ機能は同じ参照符号を有するので、さらに説明はしない。この体液流制御装置が閉位置にあるとき、図10および11の体液流制御装置が付勢部材を使用して、プランジャ部材112を押し付けて体管に対して正常に圧力を加える。1つの実施形態では、この付勢部材が、プランジャ部材112と第2係合要素104の間に位置する少なくとも1つのばね300を備える。代替付勢部材は、通常の位置にあるとき、プランジャ部材112を第2係合要素104から離れさせかつ体管に向かわせるが、下で説明するように、それを引張り部材によって相殺できる任意の構造的な支持体の使用を含む。
【0055】
本発明の体液流制御装置が作動するとき、引張り部材を使用して付勢部材の力を相殺する。この引張り部材は、保護スリーブ116でカバーしたケーブル114を備える。ケーブル114の第1端部118は、滑動自在に第2係合要素104を貫通してプランジャ部材112に付着されている。
【0056】
図12および13は、筐体302、シリコーン薄膜304、および体液流制御装置の作動時に、中に位置するケーブル114の伸張部を納めるのに役立つカップ306を例示する。ケーブル114の第2端部120は、筐体302の一側を滑動自在に貫通して筐体302の対向する側に付着されている。作動部材は、筐体302の2つの側の間に延びるケーブル114部分に対して実質的に垂直の圧力によって、プランジャ部材112が体管から離れるように移動することになり、少なくとも幾らかの体液流をそこに通すことができる。筐体内に収容したケーブルに対して実質的に垂直の圧力を加えることによって、ケーブル114の第1端部118が移動して、プランジャ部材112に対して付勢部材300が及ぼす力を相殺する。
【0057】
図14および15は、本発明が企図する一代替作動部材を例示する。この代替作動部材は、筐体402、ステップ・モータ404、ケーブル装着ブロック406、およびステップ・モータに取り付けたねじ付き軸406を備える。ケーブル120の第2端部は、筐体402の第1側を滑動自在に貫通してケーブル装着ブロック404に固着されている。ステップ・モータ404は、筐体402の対向する側に取り付けてある。ブロック406は、モータ404を作動すると軸408を回転させてブロック404を軸方向にモータ側に引き寄せるようにねじ付き軸408に取り付ける。作動部材は、ブロック406の動きによって、プランジャ部材112を体管から離れるように移動して少なくとも幾らかの体液流をそこに通すことができるように配置されている。ブロック406の動きによって、ケーブル114の第1端部118が移動して、付勢部材300がプランジャ部材112に対して及ぼす力を相殺する。
【0058】
図16および17は、本発明が企図するさらに別の作動部材を例示する。この作動部材は、筐体502、およびワイヤ505を介して手動スイッチに接続するためのラチェット穴506を有するピストン状ソレノイド機構504を備える。ケーブル114の第2端部120は、筐体502の一側を滑動自在に貫通して筐体502の対向する側に固着されている。ソレノイド504によって、ピストン510が、筐体502の2つの側の間に延びるケーブル114部分に対して下向きに移動する。作動部材は、筐体内に収容したケーブルに対して、このように実質的に垂直の圧力を加えることによって、ケーブル114の第1端部が移動して、付勢部材300がプランジャ部材112に対して及ぼす力を相殺するように配置されている。これによってプランジャ112が体管から離れるように移動して少なくとも幾らかの体液流をそこに通すことができる。
【0059】
本発明の体液流制御装置は、図18および19に示すような接触センサ、赤外線、音声作動式など複数のトリガ機構の選択肢を使用することができる。本発明の目的を妨げない限り、幾つかのよく知られている制御装置のいずれかを使用して、使用者が本発明の体液流制御装置の動作を制御することができる。
【0060】
上で論じたように、本発明の体液流制御装置は、人間または他の動物の宿主内に外科的に埋め込まれる。本発明の体液流制御装置を埋め込むことに加えて、宿主には、宿主の外側から宿主が動作させることができる制御機構が必要である。図18および19に示す1つのシンプルな例は、宿主がスイッチ上方の皮膚を指514で押すことによってそれを作動できるように、宿主の皮膚512の直ぐ下側に埋め込んだスイッチ510である。耐腐食性材製であれば、幾つかのよく知られている圧迫作動スイッチのいずれでもよい。別の制御機構には、宿主体内の制御装置を制御する電磁信号を生成するためのコイルまたは他の部材を有するスマート・カードがあろう。
【0061】
図20は、本発明の別の代替実施形態を例示する。この体液流制御装置600は、第1係合要素602、第2係合要素604、第1および第2係合要素602および604を結合する固定機構(図示せず)、第1および第2係合要素602および604の結合によって形成する内径中に位置するプランジャ部材612、およびこの装置が閉位置にあるとき、プランジャ部材612を押し上げて体管に正常に圧力を加えるための付勢部材614を備える。
【0062】
体液流制御装置が作動すると、引張り部材を使用してこの付勢部材の力を相殺する。この引張り部材は、3つの角を有する枢動部材616を備え、そこでは斜辺に対向する第1角が固定枢支点618を有し、かつ第2角がプランジャ部材612に連結する浮動枢支点620を有する。体液流制御装置は、ステップ・モータ622、ねじ山付き軸624、およびベアリング・ホイール組立体626をさらに備える。このベアリング・ホイール組立体626は、モータ622の作動によって軸624が回転し、さらにベアリング・ホイール626がモータ622から離れかつ三角形の枢動部材616に対接して移動するようにねじ山付き軸に取り付けてある。三角形の枢動部材616に対接するベアリング・ホイール626が及ぼす力が、枢動部材616を押してその固定枢支点618に沿って移動させる。枢動部材616がその固定枢支点618に沿って移動することによって、浮動枢支点620を、プランジャ部材712に対接する付勢部材614が及ぼす力を相殺する下向きの動きで移動させる。これによってプランジャ部材712が体管から離れるように移動して少なくとも幾らかの体液流をそこに通すことができる。
【0063】
図21〜23は、本発明の別の実施形態を例示する。この体液流制御装置700は、第1係合要素702、第2係合要素704、第1および第2係合要素702および704を結合するための可撓性の固定機構706、付勢部材714、および第1端部718および第2端部720を有する保護スリーブ716内部のケーブル715を備える。第1係合要素702および第2係合要素704は、固定枢支点722上で互いに蝶着されている。付勢部材714は、それが第1係合要素702および第2係合要素704を閉位置にさせるように枢支点722の背後に位置する。係合要素702および704が閉じることによって、それらの間に位置する体管を締め付ける。ばねなどの可撓性のある固定機構706を使用して係合要素702および704を正常に閉位置に維持する。ケーブル715の第1端部718は、第2係合要素704を滑動自在に貫通し、付勢部材714と平行に延びて第1係合要素704に固定されている。
【0064】
図12〜19を参照して説明した作動部材は、本発明のこの実施形態に等しく応用可能である。プランジャ部材の位置調整に作用するものとは異なり、この実施形態における体液流制御装置の作動は、付勢部材714が及ぼす力に対抗してケーブル715の第1端部718が移動することによって、第1係合要素702を枢止点722に沿って移動させ、したがって体液流制御装置の内径を開けて少なくとも幾らかの体液流をそこに通すことができる。
【0065】
図24および25は、可撓性の固定機構が備わっていないこと以外、図21〜13を参照して説明した実施形態と同じく、本発明が企図するさらに別の実施形態を例示する。先の実施形態と同様に、この実施形態は、第1係合要素802、第2係合要素804、付勢部材814、第1端部818および第2端部820を有する保護スリーブ816で覆われたケーブル815、および枢支点822を備える。この実施形態は、図21〜23を参照して先の実施形態に関して既に説明したものと同じ態様で動作する。
【0066】
図1〜9の実施形態で使用する制御ボックスの1つの代替実施形態を図26および27に例示する。この制御ボックスは、筐体902、ウォーム・ギヤ906を有するモータ904、ばね908および蛇腹910を備える。バッテリ912も制御回路(図示せず)と一緒に備わっている。ばね908は、滑動自在のばねケーシング914内に位置する。動作機構(図示せず)をこの制御ボックス内に備えることが可能であり、あるいは宿主体内の容易にアクセス可能な場所に別個に埋込むこともできる。ばね、ウォーム・ギヤおよびモータの配置は図5〜9に関して説明した通りであり、これ以上説明はしない。
【0067】
筐体902は、2つの部分、すなわち、主本体916および端部蓋918で形成されているのが好ましい。端部蓋918は、主本体916の端部922の内側に嵌め込む蓋920を含む。溝924が、Oリング926を受けるために蓋920周りに設けてある。必要なときに適切な工具で蓋918を容易に取り外すことができるように、溝928を主本体916の端部922の外側に設ける。モータ904、ウォーム・ギヤ206、滑動自在なケーシング914、蛇腹910および他の可動部分をバッテリから分離するために、内部筐体930が、筐体902の長さに沿って、その一側まで延長する。この内部筐体930は、主本体916の端部922から遠隔の端部934に突縁932を有し、Oリング溝936が突縁932中に設けてある。モータ904を固定するために、押しねじ938も内部筐体930中に備わっている。電気接点940が、端部蓋918からモータ904まで延びる。内側にねじ山を有する内向きのカラー942が、内部筐体902内部で突縁932周りに延在し、さらに内部筐体930が、突縁932を定位置に保持するために定位置まで螺入してある外側にねじ山付きのナット944によって筐体902内部に固定されている。ナット944は、それを締め付けできるピン・ホール946を有することができる。内側にねじ山を有する外向きカラー948が、ケーブル114を内部筐体930中に通すことができるように、筐体902中に設けてある。
【0068】
スリーブ116は、第1端部954および第2端部956を有する中空コネクタ952に取り付けた端部950を有する。端部954で、コネクタ952は、端部950に隣接するスリーブ116の内側に取り付き、かつスリーブ116の抜落ち防止の役目をする後ろ向きの歯958をその外周に有する。コネクタ952の第2端部956は、外側のねじ山960およびOリング964を適切に受ける溝962を有する。ねじ山960は、筐体902のカラー948内部に設けた内側のねじ山に螺入されている。ケーブル114は、コネクタ952を貫通して筐体902内に延長し、さらにその端部120が、ケーシング914内に延びかつナット216で終端する連動部材966に付着されている。ケーブル114と連動部材966の間の連結部を図27に拡大して示す。ケーブル端部120は、テーパ付き端部970および封止リング受け溝972を有する連結部品968に嵌め込んである。連動部材966は、連結部品968を受け入れる開口部974を有し、開口部974は内側肩部976を有する。金属製Oリング978を、肩部976によって受けかつリング保持具980によって定位置に保持する。金属製Oリング978が溝972中に着座するまで連結部品968を開口部974に押し込んで、連結部品968と連動部材966の間に封止体を形成する。
【0069】
蛇腹910が、内向きカラー942に螺入したナット944によって筐体902に取り付けてある。蛇腹910は、内部筐体930の突縁932に隣接して延在する端部突縁982と、蛇腹910が内部筐体930によって筐体902に緊密に封止するように突縁932のOリング溝936中に封止するための一体型Oリング984を有する。蛇腹910はまた、ケーブル連結部品986によってケーブル連動部材966に付着され、さらに圧縮時に容易に折り畳みできるように突縁982上方に襞付き円錐形状を有する。図26の実施形態では、スリーブ116が軸方向に移動可能ではないので、蛇腹910はスリーブ116には付着されていないことに注意されたい。その代わりにケーブル114がスリーブ116内部で軸方向に移動可能である。この実施形態では、適切な封止がコネクタ952と制御ボックス902の間に施されているので、蛇腹910は必ずしも必要でない場合がある。しかし、例えば蛇腹910を使用して追加的な封止体を設け、体液が制御ボックス902に進入するのを防止するためには有利である。
【0070】
図26の制御ボックスの動作は図5〜9の制御ボックスと同じであり、したがってこれ以上説明はしない。
【0071】
スリーブ用の封止体およびケーブル用のアクチュエータの別の代替実施形態を図28に示す。例示の実施形態では、制御ボックス1200は、体液がボックス内に一切進入しないように完全に封止されている。一端1204が封止されている中空円筒内腔1202が制御ボックス1200中に形成されている。内腔1202には、制御ボックス1200の外表面に隣接して雌ねじ山1206が設けてある。
【0072】
スリーブ116の一端が中空コネクタ1208に付着され、このコネクタ1208は端部1210および端部1212を有する。コネクタ1208の端部1210は、スリーブ116の端部中を通るような寸法にしてあり、コネクタ1208は、その端部1210に外向きかつ後ろ向きの歯1214を備えてスリーブ116の内側に係合し、それによってコネクタ1208をスリーブ116に固着する。コネクタ1208の端部1212は、直径の寸法がスリーブ116よりもわずかに大きく、さらに外側ねじ山1216を有する。コネクタ1208を、ねじ山1216および1206によって制御ボックス1200の内腔1202中に螺入することができる。
【0073】
ケーブル114の端部120は内腔1202内に位置し、さらにカラー1218が備えてある。環状磁石1220が、カラー1218によってケーブル114の端部120周りに支持されている。ケーブル114はスリーブ116内部で軸方向に移動可能であり、したがって蛇腹封止体はスリーブ116周りには必要ない。さらに、スリーブ116は移動可能ではないので、スリーブ周りの組織成長が、この装置の動作に影響を及ぼすことはあり得ない。
【0074】
モータ1222が、ケーシング1226の底部中に位置するねじ穴1228を貫通してケーシングと螺合するねじ山付きウォーム・ギヤ1224を有する。ケーシング1226が内腔1202周りに延在し、環状磁石1230をケーシング1226の上縁周りに支持する。磁石1230は、ケーブル114の一端120上に位置する磁石1220に位置合わせされている。
【0075】
ケーブル114を駆動して液流制御装置を開閉するために、モータ1222がウォーム・ギヤ1224を動作させ、それがケーシング1226を内腔1202の外側沿いに移動させる。磁石1230は、内腔1202を構成するプラスチック材を介して作用し、その動きを磁石1220に追尾させる。これによってケーブル114が次に軸方向に移動して液流制御装置を動作させる。体の血管が既に閉じているとき、モータ1222が動作を続けてウォーム・ギヤ1224をケーブル114に向かわせても、血管壁からの抵抗により、磁石1230に対する磁石1220の吸引力はケーブル114をさらに移動させる程には十分ではなく、よって血管に対する損傷の潜在的な可能性を打ち消す。したがって、ケーシング1226の軸方向の移動が選択的にケーブル114に伝達される。さらにはケーシング1226が内腔1202、すなわち制御ボックス1200の内部表面に対接して休止することになり、磁石の位置関係が大きくずれ過ぎないようにする。
【0076】
モータとケーブルの間における磁石の連動は図28の例示したもの以外に数多くの方式で実現可能であることを理解されたい。例えば、磁石が環状である必要はなく、ケーブルの一方の側に配置することもできよう。さらには、磁石が相互の吸引力によって動作する必要はなく、相互の反発力によって動作して血管を閉ざし、一旦モータ駆動磁石をモータ側に引き戻したら、ばね駆動または他の手段が動作して血管を開くこともできよう。反発作用では、磁石をケーブルの端部上と軸方向に移動可能なモータ駆動アクチュエータ上に直接配置することができよう。
【0077】
選択的に軸方向の動きをケーブルに伝達する磁石カップリングの一代替実施形態を図29および30に例示する。これらの図は完全に封止されている制御ボックス1300を例示する。盲端部1304を有する内腔1302が、ケーブル114の端部120を受け入れるために制御ボックス1300中に設けてある。コネクタ1306を使用してスリーブ116を内腔1302に連結する。コネクタ1306は、後ろ向きの歯1310を備える第1端部1308、中央肩部1312、および外側ねじ山1316を備える第2端部1314を有する。コネクタ1306の端部1308をスリーブ116の端部内に押し込んであり、歯1310がスリーブの内部表面に作用する。コネクタ1306の端部1314は、Oリング封止体1318およびねじ山1316上に螺設してあるナット1320によって制御ボックス1300に連結されている。ナット1320を制御ボックス1300に1322の箇所で溶接して緊密な封止体を形成する。
【0078】
ケーブル114が内腔1302中に延在する。円筒形磁石1324が、この磁石1324およびケーブル端部120上に変形させて緊密に装着されているカラー1326によってケーブル114の端部120に付着してある。この制御ボックス1300は、図26の実施形態に関する説明と同様に、モータ1328、ウォーム・ギヤ1330およびバッテリ1332を含む。環状磁石構成1336を有するケーシング1334がウォーム・ギヤ1330に螺設してあり、図26の実施形態と同じ態様で動作し、よってさらに説明はしない。集積回路1338を含む制御回路および抵抗器およびコンデンサを含む他の標準的な素子1340も示されている。
【0079】
図31は、ケーブル114の第1端部118を体液流制御装置に連結するコネクタの一実施形態を例示する。コネクタ1500は、スリーブ116の内面中に噛み込む外向き歯1504を備える第1端部1502を有する。コネクタ1500の第2端部1506は、体液流制御装置に装着したカラー1512上の外向きねじ山1510上に螺設した内向きねじ山1508を備えるカラーを有する。Oリング1514がカラー1512に対して緊密な封止体を形成する。
【0080】
図31はまた、プランジャ112を詳細に例示する。プランジャ112は、金属カラー1518に付着した穴あき金属ブラケット1516を含む。プランジャ112の主本体は、穴あきブラケット1516上に成形してあるシリコーンから形成され、シリコーンがブラケット中の穴を貫通してプランジャ112とブラケット1516とカラー1518の間を緊密に密着させる。金属カラー1518は、ケーブル118の端部118上に圧着するだけでよい。
【0081】
図32は、ケーブル114およびスリーブ116を体液流制御装置に連結する別の代替実施形態を例示する。図32の実施形態では、体液流制御装置が内側ねじ山1602を備えるカラー1600を有する。コネクタ1604を使用してスリーブ116をカラー1600に連結する。コネクタ1604は、外側ねじ山1606、中央カラー1608および外向き歯1610を有する。コネクタ1604が、図29に例示したコネクタ1306と同じでもよいことに注意されたい。これによって、1種類のコネクタをスリーブ116の両端に備えるだけで済むために、製造上経済的であり得る。金属カラー1612を使用してプランジャ(図32では図示せず)をケーブル114の端部118に連結する。Oリング1614によってカラー1612とコネクタ1604の間を封止することができる。
【0082】
本発明の様々な実施形態を例として開示してきたが、当業者なら、添付の特許請求の範囲および趣旨から逸脱することなく他の変形形態および変更形態を思い浮かべ得ることが理解されよう。したがって、ここに説明した本発明は、当業者には明白なそのような変形形態および変更形態を含み、かつ本明細書および添付図の特徴の組合せおよび副次的な組合せをも含むものである。本発明の好ましい実施形態を添付図に例示しかつ以上の詳細な説明において記載してきたが、本発明が、開示の実施形態に限定されることはなく、数多くの再構成、変形および代用が、以下の特許請求の範囲によって記載かつ定義されている本発明の趣旨から逸脱することなく可能であることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開位置にあるとき体管内部の液流を許容しかつ閉位置にあるとき体管内部の液流を減少させる締付け部材であって、蝶着された第1係合要素および第2係合要素を備え、第2係合要素が開位置から閉位置まで移動可能であり、それによって第2係合要素が閉位置に移動して体管を締め付け、したがって体管内部の液流を減少させる締付け部材と、
前記第2係合要素の枢支点近傍に外向きの力を及ぼして、前記締付け部材が体管を締め付けるように前記締付け部材を正常に閉じた位置にする付勢部材と、
少なくとも第1および第2端部を有するケーブルを備える、前記第2係合要素に対して作用する引張り部材と、
前記開位置と閉位置の間で締付け部材を動作させる駆動部材であって、ケーブルの第2端部に結合されたステップ・モータを備え、ステップ・モータの作動によってケーブルの第2端部が軸方向にステップ・モータ側に引き寄せられることによって、前記プランジャ部材が体管から離れるように移動して少なくとも幾らかの体液流をそこに通すことができる駆動部材と、
前記駆動部材を動作させる制御手段と、
引っ張りばね(706)であり、当該引っ張りばね(706)の両端は、前記枢支点に対して前記締付け部材の対角線方向の反対側において、前記第1係合要素と前記第2係合要素とにそれぞれ接続されて、前記第2係合要素を前記対角線方向の反対側において前記閉位置に向けて付勢する、引っ張りばね(706)と、を備える、宿主体内部の液流を制御する埋込み可能な装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2013−99564(P2013−99564A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−8530(P2013−8530)
【出願日】平成25年1月21日(2013.1.21)
【分割の表示】特願2009−268958(P2009−268958)の分割
【原出願日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願人】(503116291)プリシジョン メディカル デバイスズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】