説明

体腔内診断システム用滅菌シート

【課題】滅菌シートに邪魔されることなく駆動部を円滑に操作でき、治療や診断の精度が低下するおそれがない、プルバックシステム用滅菌シートを提供する。
【解決手段】滅菌シート60において、挿通部62と、保持部40で保持される被保持部63との間の構成材料の少なくとも一部を伸縮性材料Sとしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内の画像を取得して治療や診断する体腔内診断システムで使用される滅菌シートに関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内診断システムは、心臓の冠動脈、胆管、尿道管、消化管等の体腔にカテーテルを挿入し、このカテーテル内に設けられた信号送受信部材を、治療や診断を行うターゲット部位に対応する位置にセットした後、移動乃至軸中心に回転し、体腔内を走査し、体腔の内面若しくは断面の画像を観察したり、血流測定等を行い、治療や診断に供するものである。この場合、信号送受信部材を、一旦前記ターゲット部位を越えて移動させた後に後退(プルバック)させて走査することからプルバックシステムとも称されている。
【0003】
このシステムでは、信号送受信部材と駆動シャフトとを含むカテーテル部分と、信号送受信部材を駆動シャフトを介して回転駆動させる駆動部及び駆動シャフトを軸方向に移動させる移動手段などの機器部分とを有し、移動手段により駆動部を基台上において前進−後退動作させて駆動シャフトを軸方向に移動したり、駆動シャフトを駆動部により軸中心に回転させている。そして、その使用の実際は、カテーテル部分は、いわゆるシングルユースされ、駆動部などの機器はリユースされることが多い。この場合、滅菌された新規なカテーテル部分は、非滅菌部分でリユースされる機器部分と脱着されるので、機器部分と接触すればカテーテル部分の基部が汚染されることになり、カテーテル部分の基部を術者が把持すると、術者の手なども汚染されるおそれがある。したがって、使用に当っては、リユースされる機器部分などを袋状の滅菌シートで包み、カテーテル部分の汚染を防止している。
【0004】
しかしながら、プルバック動作の前後で駆動部と基台の間に滅菌シートが入り込み巻き込まれるという事例が報告されている。この課題を解決するために、例えば、下記特許文献1では、基台上に駆動部を移動可能に設けると共に、基台の先端にカテーテルの基部を保持する保持部を設け、滅菌シートにより駆動部と保持部を覆い、滅菌シートに開設された通孔からカテーテルの基部を滅菌シート内に挿入するようにした体腔内診断システムが開示されている。
【0005】
この体腔内診断システムでは、滅菌シートにより保持部や駆動部を覆い、滅菌シートの一部を駆動部と保持部で保持しているが、制御部からの駆動信号により駆動部をプルバック動作させると、駆動部が滅菌シート内で後退移動し、滅菌シートが引っ張られることになる。これに対応させるため、駆動部と保持部と間の滅菌シートを、シートを折り返して形成した蛇腹構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/001956 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、滅菌シートに蛇腹状の折り目を設けるのは、手間が掛かり、かつ、プルバック動作に耐え得る適切な折り目を設けるのは容易ではない。また、蛇腹状の折り目を設けた場合、プルバック動作を終えて、再度プルバック動作を行うために、駆動部を所定位置に戻す際に滅菌シートを巻き込むおそれがある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、簡便な構造で駆動部を円滑に操作でき、治療や診断の精度が低下するおそれがない、体腔内診断システム用の滅菌シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の体腔内診断システム用の滅菌シートは、カテーテルの基端部を挿通する開口を有する挿通部と、保持部により保持される被保持部と、を有し、前記挿通部と前記被保持部との間の少なくとも一部を、移動手段による前記駆動部の軸方向移動に伴って伸張する伸縮性材料としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、挿通部と被保持部との間の滅菌シートの少なくとも一部を伸縮性材料により構成したので、駆動部をプルバック動作させる場合であっても、滅菌シートが自由に伸縮し、前記駆動部を円滑に動作させることができ、治療や診断の精度低下を防止できる。また、滅菌シート自体が伸縮性を有しているので、プルバック動作の前後で駆動部と基台の間に滅菌シートが入り込んで巻き込まれるおそれがない。しかも、構成材料を部分的に変更した滅菌シートを使用すればよいため、従来からある体腔内診断システムにも容易に適用でき、製造面においても容易で、コスト的に極めて有利となる。
【0011】
前記挿通部の開口に、前記カテーテルの基端部と駆動部とを連結するアダプタを設ければ、カテーテルと駆動部との連結がワンタッチで行うことができ、作業性が向上するのみでなく、挿通部の開口もアダプタにより確実に閉鎖されることになり、汚染のおそれがより低減する。
【0012】
前記滅菌シートの構成材料を光透過性材料により構成すれば、外部から駆動部の位置などが目視可能となり、操作性の点で一層有利となる。
【0013】
前記伸縮性材料をラテックス、ニトリルゴム、高分子エラストマー及びポリ塩化ビニルの内の少なくとも1つにより構成すれば、伸縮性の高い滅菌シートとなり、操作性の点で一層有利となる。
【0014】
前記挿通部と保持部との間の前記構成材料を、150mm以上伸張しても破断しないものとすれば、一般的に行われているプルバック動作に対処でき、実用的なものとなる。
【0015】
滅菌シートを袋状に形成すれば、前記保持部や駆動部を覆いやすく、作業性が向上すると共に、汚染のおそれがより低減する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る体腔内診断システムを示す全体図である。
【図2】カテーテルの先端部の拡大断面図である。
【図3】カテーテルの基部と駆動部を示す拡大断面図である。
【図4】プルバックの前後状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
本実施形態に係る体腔内診断システムは、図1に示すように、体腔内に挿入されるカテーテル1と、カテーテル1の基端部が取付けられたコネクタ部材10と、コネクタ部材10に連結管26を介して連結されたハブ部20と、ハブ部20及びコネクタ部材10内を挿通し、先端部がカテーテル1の先端部まで挿入された駆動シャフトDと、駆動シャフトDの先端部に設けられた信号送受信部30と、コネクタ部材10を保持する保持部40と、駆動シャフトDを回転駆動する駆動部70と、駆動部70を保持部40に対し基台74上で近接離間させ、信号送受信部30をカテーテル1内で軸方向に移動させる移動手段80と、保持部40、駆動部70及び移動装置80などを覆う袋状の滅菌シート60と、滅菌シート60の開口61に設けられ、駆動シャフトDと駆動部70とを連結するアダプタ50と、を有している。
【0019】
なお、本明細書では、体腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
【0020】
駆動部70は、図1に示すように、内部にモータ(不図示)等を有するドライブユニット71と、ドライブユニット71と電気的に接続されると共に、信号送受信部30(具体的には、超音波トランスデューサ)を制御する送受信回路72と、を有し、ドライブユニット71はスライダ部73を介して基台74の溝レール75に載置され、前後進可能とされている。
【0021】
移動手段80は、基台74上に設けられ、駆動部70を溝レール75に沿って前後進させる送り機構である。ただし、駆動部70を前後進させる手段としては、自動的に前後進させる送り機構のみでなく、術者が手動で行うようにしてもよい。なお、駆動部70及び移動手段80は、制御部Cにより制御されるようになっているが、これらは、公知に属するため、詳細な説明は省略する。
【0022】
さらに、各構成を詳述する。まず、カテーテル1は、きわめて細い管であり、図1に示すように、細径の先端部材2と比較的大径の本体部3から構成されている。先端部材2は、図2に示すように、上部にワイヤ挿通部4が設けられ、先端に栓体5が設けられている。ワイヤ挿通部4は、カテーテル1を体腔内に挿入するときのガイドとして使用するガイドワイヤ6が挿通される部分であり、このワイヤ挿通部4にガイドワイヤ6を挿通した状態で、ガイドワイヤ6のみを予め体腔内に挿入し、このガイドワイヤ6に沿ってカテーテル1を体腔のターゲット部位まで導くようにしている。
【0023】
なお、ワイヤ挿通部4の先端部位、先端部材2及び本体部3には、X線造影マーカーMが設けられ、外部からカテーテル各部の位置を知ることができるようになっている。
【0024】
栓体5は、カテーテル1の先端を閉鎖するものであるが、ここには、プライミングルーメン6が形成され、カテーテル1内に後述のプライミングポート22から充填されたプライミング用の充填液(例えば、生理食塩水など)がプライミングルーメン6から流出すると、プライミングが完了したことが分かるようになっている。
【0025】
カテーテル1は、柔軟で所定の引張強度を有する、外径が0.5mm〜1.5mm程度の管体が使用される。構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂等の各種樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の各種ゴムが挙げられる。
【0026】
駆動シャフトDは、細くて長いカテーテル1内に設けられ、基端側のドライブユニット71や移動手段80による駆動力、つまり回転力と軸方向力を、先端部位に固定されている信号送受信部30に伝達し、これを作動するものである。したがって、駆動シャフトDは、撓まず、座屈せずかつ捩りに対し変形しにくいものであって、ドライブユニット71の駆動力を信号送受信部30に確実に伝達可能な特性を有する柔軟な線材が好ましい。例えば、駆動シャフトDとしては、金、銀またはこれらの合金、ステンレス鋼、その他鉄系合金、銅または銅合金等の各種金属材料からなる線材を用い、右左右と巻き方向を交互にしている3層コイルなどの多層コイル状の管体としたものが好ましい(図2参照)。このようにすれば、軸方向に進退移動させる場合に座屈などのおそれが少なく、回転力や軸方向力の伝達性に優れたものとなり、しかも、駆動シャフトDの内部に空間部が生じるので、ここに、ドライブユニット71と信号送受信部30とを接続する信号線33(図3参照)を通すことができる。
【0027】
ただし、駆動シャフトDは、長尺なものであるため、軸方向に進退あるいは軸中心に回転すると、周辺部材との間で摩擦抵抗が生じ、駆動力が確実に伝達されないおそれがある。このため、駆動シャフトDの外表面に摩擦抵抗の少ないフィルムをラミネートするかあるいは湿潤状態で潤滑性を有する親水性高分子物質よりなる層(潤滑層)を形成することが好ましい。
【0028】
なお、ラミネートフィルムとしては、PTFEなどのフッ素樹脂が例示できる。また、親水性高分子物質としては、天然高分子物質系のもの(例:デンプン系、セルロース系、タンニン・ニグニン系、多糖類系、タンパク質)と、合成高分子物質系のもの(PVA系、ポリエチレンオキサイド系、アクリル酸系、無水マレイン酸系、フタル酸系、水溶性ポリエステル、ケトンアルデヒド樹脂、(メタ)アクリルアミド系、ビニル異節環系、ポリアミン系、ポリ電解質、水溶性ナイロン系、アクリル酸グリシジルアクリレート系)とがある。これらのうちでも、特に、セルロース系高分子物質(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、ポリエチレンオキサイド系高分子物質(ポリエチレングリコール)、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリジメチルアクリルアミド)、水溶性ナイロンまたはそれらの誘導体は、低い摩擦係数が安定的に得られるので好ましい。
【0029】
信号送受信部30は、図2に示すように、駆動シャフトDの先端にハウジング31が固定され、ハウジング31内に超音波振動子32が設置されており、超音波振動子32は、駆動シャフトD内の空間部に挿通された信号線33を介して制御部Cと接続されている。
【0030】
したがって、信号送受信部30は、駆動シャフトDと共に回転あるいは軸方向移動し、超音波振動子32の発する超音波がターゲット部位に当って反射する反射波を受信し、この受信信号が信号線33(図3参照)を介して制御部Cに入力されるようになっている。なお、本実施形態では、信号送受信部30として超音波振動子を使用しているが、これのみに限定されるものではなく、光を用いるものであってもよい。
【0031】
コネクタ部材10は、図1、図3に示すように、内部にカテーテル1の基端が取付けられている筒状の本体11と、本体11の基端側に連結されたスリーブ12と、本体11の先端側に連結され、先端側に向って外径が次第に小さくなるようにテーパ状に形成された、耐キンクプロテクタとして機能するカバー部材13と、からなり、スリーブ12に形成された環状溝部14が、後述の保持部40により位置固定的に保持されるようになっている。なお、本体11とスリーブ12との間には、Oリングなどにより構成されたシール部材15が設けられ、内部を挿通する後述の連結管26との間をシールしている。
【0032】
ハブ部20は、図3に示すように、ハブ本体21と、ハブ本体21の中央部分に設けられ、プライミング用の充填液(例えば、生理食塩水など)が供給されるプライミングポート22と、耐キンクプロテクタ23と、を有している。
【0033】
ハブ本体21と耐キンクプロテクタ23とは、いわゆるワンタッチ式に連結される凹凸嵌合部24で連結されているが、ハブ部20内には通路25が形成され、ここに駆動シャフトDが挿通され、また、プライミング用の液が流通される。
【0034】
ハブ本体21内には、連結管26の基端部が取付けられている。連結管26は、コネクタ部材10とハブ部20とを連結するもので、その先端側は、コネクタ部材10に取り付けられているカテーテル1内に挿入されている。したがって、プルバック動作などによりハブ部20が軸方向に進退すると、これに伴って連結管26もカテーテル1内で進退することになり、駆動シャフトDが外部に露出することはない。
【0035】
連結管26内には、駆動シャフトDが挿通されているが、駆動シャフトDは、ハブ本体21内において、接続パイプ29の先端部に設けられた接続部29aと脱着可能に連結されている。接続パイプ29は、後述のアダプタ50から突設されており、駆動シャフトDと接続されると、機械的及び電気的に接続されるようになっている。
【0036】
なお、ハブ本体21の基端側には、通路25内に挿通された接続パイプ29との間をシールするOリングなどのシール材28を有する封止部材27が設けられている。
【0037】
カテーテル1の内部には、駆動シャフトDの座屈を防止するための保護チューブ16が設けられている。保護チューブ16は、極力駆動シャフトDを全長に渡り存在していることが好ましいが、カテーテル1の内径を考慮し、比較的大径の本体部3内に位置するように設けられている。
【0038】
保護チューブ16の設置により、駆動シャフトDの撓みや座屈などが防止できるので、前述したラミネートフィルムや潤滑層は、必ずしも設けなくてもよいが、さらに確実に撓みや座屈などを防止することが好ましい場合には、両者併用してもよい。
【0039】
加えて、保護チューブ16は、多数の通孔が開設されたものあるいはコイル状の構成することが好ましい。このようにすれば、生理食塩液が保護チューブ16の内外を自由に通りぬけることができ、プライミングを速やかに行うことができる。特に、保護チューブ16を軸方向に伸縮可能なコイル状の構造とすれば、駆動シャフトDの撓み変形に追従して保護チューブ16も変形し、駆動シャフトDの座屈をより確実に防止することができる。
【0040】
なお、保護チューブ16は、図3ではスペースの都合で「線」のみで示している。また、保護チューブ16の取付けは、例えば、機械的なものや熱融着など、どのような手段であってもよいが、本実施形態では、その基部側をカテーテル1の基端部と共にコネクタ部材10に接合している。
【0041】
保持部40は、一対の支持部材41を有しているが、支持部材41は、基台74の先端側に直接立設してもよく、図3に示すように、基台74に取付けた支持台42上で二股状に分岐してもよい。また、基台74自体をフラットなものではなく、基端側を迫り上げるように変形し、基台74自体に支持部材41を形成してもよい。いずれにしてもコネクタ部材10、ハブ部20及びアダプタ50が同一軸線上に配置されるようにすることが好ましい。
【0042】
一対の支持部材41間には、スリーブ12と共に、滅菌シート60の一部(被保持部63)が保持されている。駆動部70、保持部40及び基台74などは、汚染可能性が高く、術者などが直接触れやすい部分であるため、これらを保護カバーである滅菌シート60により覆うこととしている。
【0043】
特に、本実施形態に係る滅菌シート60は、図3、図4に示すように、カテーテル1の基端部が挿通される開口61を有する挿通部62が形成され、ここに、後述のアダプタ50が設けられている。しかも、保持部40で保持される被保持部63と挿通部62との間の滅菌シート60の構成材料は、駆動部70のプルバック動作に伴って伸張する伸縮性材料Sとしている。
【0044】
一般にプルバック量(L)は、150mm程度であるので、本実施形態では、挿通部62と被保持部63との間の滅菌シート60は、150mm以上伸張しても破断しない伸縮性材料Sとしている。このような伸縮性材料Sとしては、例えば、熱可塑性エラストマー(オレフィン系、塩化ビニル系、スチレン系)及び熱硬化性エラストマー(ウレタン系、シリコーン系、ニトリル系)などを挙げることができ、より具体的には、ラテックス、ニトリルゴム、高分子エラストマー及びポリ塩化ビニルなどが好ましい。
【0045】
このようにすれば、駆動部70を前進あるいはプルバック動作する場合に、駆動部70の移動に伴って挿通部62と被保持部63との間の滅菌シート60が伸縮することになり、前述した蛇腹状のものに比し滅菌シート60が邪魔にならず、駆動部70が極めて円滑に動作することになる。
【0046】
なお、滅菌シート60は、袋状のものにより形成してもよい。袋状のものにより形成する場合は、駆動部70を挿入するための開口部を設け、ここに開口部を密封シール可能なチャックなどを設け、挿入時にはこれを開き、挿入後には閉じるようにしてもよい。
【0047】
挿通部62と被保持部63との間以外の滅菌シート60の構成材料としては、薄肉で引張り強度を有するものであれば、どのようなものであってもよいが、例えば、ポリエチレンなどを使用することができる。また、より好ましくは、外部から内部が目視できる光透過性材料であることが好ましい。このようにすれば、外部から駆動部70の位置やカテーテル1の位置が目視でき、操作性の点で一層有利となる。
【0048】
本実施形態では、滅菌シート60の挿通部62にアダプタ50の頭部51が、密着して設けられている。アダプタ50を滅菌シート60に設けると、滅菌されたカテーテル1と、汚染されている駆動部70との連結を滅菌シート60の外部からワンタッチででき、作業性が向上し、しかも、カテーテル1が挿通される挿通部62もアダプタ50により確実に封止されるので、汚染のおそれが大幅に低減する。
【0049】
アダプタ50の頭部51と滅菌シート60の挿通部62との連結は、開口61の口縁部がアダプタ50の基端側端面51aに密着することにより行っているが、この連結方法は、どのような方法であってもよい。例えば、機械的に凹凸嵌合による挟持や、熱融着あるいは接着剤などによる接合方法が使用できる。
【0050】
アダプタ50としては、駆動部70からの駆動力を駆動シャフトDに速やかに伝達することができ、ドライブユニット71にワンタッチで連結できるものであれば、どのようなものであってもよい。一例を示せば、アダプタ50は、図3に示すように、中央開口部52を有し、滅菌シート60の挿通部62に密着して取付けられる頭部51と、頭部51に一体的に設けられた胴部53と、胴部53に対し軸受54を介して回転可能に設けられた脚部55と、を有するものにより構成することができる。
【0051】
頭部51は、ハブ本体21と連結されるが、この連結を容易にするため、頭部51の中央開口部52には、凹溝が形成され、ハブ本体21の基端部に設けられたボール部材56がバネにより弾発されて嵌合し、ワンタッチで連結できるようになっている。また、胴部53の基端部にも、駆動部70とワンタッチで嵌合されるバネ弾発のボール部材57が設けられている。
【0052】
脚部55の先端側には、前記接続パイプ29の基端部が連結され、脚部55の基端側は、ドライブユニット71の中央通路に挿通され、内部にロータ部58と、ドライブユニット71側の雌コネクタ(不図示)と連結される雄コネクタ59と、が設けられている。
【0053】
このようにアダプタ50とハブ本体21とは、接続パイプ29を介して連結されるので、アダプタ50側とカテーテル1側とは別体に取り扱うことができ、アダプタ50を予め滅菌シート60に取り付けていても、ハブ本体21をアダプタ50にワンタッチ式に嵌合するのみで、駆動シャフトDをドライブユニット71に機械的にも電気的にも連結乃至接続することができる。
【0054】
つまり、アダプタ50とドライブユニット71とを連結すれば、モータの回転と共に、移動手段80の動作により、駆動シャフトDを回転させ軸方向移動させることができ、制御部Cからの制御信号により送受信回路72を介して信号送受信部30(超音波振動子)へ送信した超音波を、同超音波振動子で受信し、取得した情報を制御部Cで画像化し、モニターなどに表示させることができ、ターゲット部位などの診断あるいは治療に供することができることになる。
【0055】
なお、本実施形態の接続パイプ29は、アダプタ50から比較的長く突出しているが、これを短くし、アダプタ50の近傍で駆動シャフトDと連結する構成にしてもよい。このようにすれば、アダプタ50の先端側で駆動シャフトDと接続パイプ29との連結ができ、連結操作が容易になる。
【0056】
次に、前記実施形態の作用を説明する。
【0057】
まず、駆動部70及び移動手段80を、アダプタ50が取り付けられている滅菌シート60内に設置する。当初、駆動部70は、基台74上において基端側に後退させておき、アダプタ50を駆動部70に差し込み、ドライブユニット71と連結する。この連結により雄コネクタ58とドライブユニット71側の雌コネクタが連結された状態になる。
【0058】
一方、カテーテル1は、内部に駆動シャフトDの先端側を挿入し、駆動シャフトDの基端側は、ハブ部20より突出させた状態とする。
【0059】
そして、ハブ部20の基端側をアダプタ50に嵌合すると共に、接続パイプ29と駆動シャフトDの基端側を連結すれば、カテーテル1は、ドライブユニット71と連結された状態になる。つまり、カテーテル1が汚染されている駆動部70と連結されることになっても、この連結はアダプタ50を介して行われ、しかもアダプタの大部分は袋状の滅菌シート60内にあるため、カテーテル1側が汚染されることはない。
【0060】
次に、ハブ部20を滅菌シート60と共に保持部40の支持部材41間に嵌合すると、連結は完了する。この結果、駆動部70、基台74及び移動手段80が滅菌シート60により覆われる。したがって、滅菌シート60の外部に存在しているものは、カテーテル1、ハブ部20及びアダプタ50の頭部51のみである。
【0061】
そして、カテーテル1を体腔内に挿入する前に、プライミングを行い、カテーテル1内の空気を除去し、血管などの体腔内に空気が入り込むことを防止する。
【0062】
プライミングは、駆動部70が最も基端側、つまり後退位置にある状態で、ハブ本体21のプライミングポート22から生理食塩液を注入する。この生理食塩液は、ハブ部20からカテーテル1の先端に向って流れ、内部が完全に満たされると、カテーテル1の先端に形成されたプライミングルーメン6から流出することになるので、プライミングの完了を確認することができる。
【0063】
次に、駆動シャフトDをカテーテル1内で前進させて、信号送受信部30をカテーテル1の先端付近に位置させた後、カテーテル1を体腔内に挿入し、カテーテル1の先端が所定のターゲット部位を越えると挿入を停止すると共に、カテーテル1を固定する。
【0064】
この状態で、移動手段80を作動させるかあるいは手動で駆動部70を基端側に引き戻しつつ、駆動部70のモータを回転させると、カテーテル1は、元に位置のままであるため、駆動シャフトDは、基端側に引き戻されつつ回転することになる。
【0065】
したがって、信号送受信部30は、カテーテル1内で軸方向に後退しつつ回転し、体腔の所定位置にあるターゲット部位の軸方向前後に渡る形状の3次元画像データを制御部Cに送ることができる。
【0066】
一度基端側に後退させた駆動部70を、再度前進してターゲット部位を観察する場合、駆動シャフトDは、狭いカテーテル1に入っていくことになる。このとき、摩擦抵抗により駆動シャフトDの基端側で撓みや座屈が生じるおそれがあるが、この領域には保護チューブ16が設けられているので、この基端側での撓みや座屈の発生は防止される。なお、駆動シャフトDに撓みが発生したとしても、保護チューブ16が疎巻きコイル状などの場合には、保護チューブ16自体も穏やかに撓むので、駆動シャフトDの座屈は防止される。したがって、駆動シャフトDのスムーズな前進操作が可能になる。
【0067】
特に、本実施形態では、挿通部62と被保持部63との間の滅菌シート60を伸縮性材料Sとしているので、駆動部70を基端側に後退させるプルバック動作を行う場合には、滅菌シート60は、図4に示すように、アダプタ50の前進位置Zから後退位置Eまでの距離L(150mm)程度では、保持部40とアダプタ50との間で自由に伸張し、円滑に駆動部70を後退させることができ、プルバック動作の前後で駆動部70と基台74の間に滅菌シート60が入り込んで巻き込まれるおそれもない。
【0068】
したがって、信号送受信部30をターゲット部位に対応する位置の確実にセットすることができ、治療や診断の精度低下を防止できる。
【0069】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。上述した実施形態では、挿通部62と被保持部63との間の滅菌シート60を伸縮性材料Sにより構成しているが、本発明は、これに限定されるものではなく、両者間にある滅菌シート60の一部を伸縮性材料Sにより構成してもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、滅菌シート60は袋状をしているが、このようなもののみでなく、単に駆動部70を上方から覆うシートであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、生体組織の体腔に存在するターゲット部位の画像を取得して治療や診断に使用する体腔内診断システム用滅菌シートにとして利用できる。
【符号の説明】
【0072】
1…カテーテル、
30…信号送受信部、
40…保持部、
50…アダプタ、
60…滅菌シート、
61…開口、
62…挿通部、
63…被保持部、
70…駆動部、
74…基台、
80…移動手段、
D…駆動シャフト、
S…伸縮性材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に、カテーテルの一部を位置固定的に保持する保持部と、前記カテーテル内に挿入され、先端に信号送受信部材が設けられた駆動シャフトを回転駆動する駆動部と、前記駆動部を前記保持部に対し前記基台上で近接離間させ前記駆動シャフトを軸方向に移動させる移動手段と、を設け、前記駆動シャフトを前記駆動部及び移動手段により回転しつつ軸方向に移動し前記信号送受信部材との間で信号を送受信し体腔内の情報を取得する体腔内診断システムで使用される、前記保持部と前記駆動部及び前記移動手段を覆う滅菌シートであって、
当該滅菌シートは、前記カテーテルの基端部を挿通する開口を有する挿通部と、前記保持部により保持される被保持部と、を有し、前記挿通部と前記被保持部との間の少なくとも一部を、前記移動手段による前記駆動部の軸方向移動に伴って伸張する伸縮性材料としたことを特徴とする滅菌シート。
【請求項2】
前記挿通部は、前記開口に、前記駆動シャフトと前記駆動部とを連結するアダプタを設けたことを特徴とする請求項1記載の滅菌シート。
【請求項3】
前記滅菌シートの構成材料は、光透過性材料としたことを特徴とする請求項1に記載の滅菌シート。
【請求項4】
前記伸縮性材料は、ラテックス、ニトリルゴム、高分子エラストマー及びポリ塩化ビニルの内の少なくとも1つにより構成したことを特徴とする請求項1又は3に記載の滅菌シート。
【請求項5】
前記挿通部と前記保持部との間の前記構成材料は、少なくとも150mmの長さに伸張されても破断しないことを特徴とする請求項1、3、4のいずれかに記載の滅菌シート。
【請求項6】
前記滅菌シートは、袋状に形成したことを特徴とする請求項1、3〜5のいずれかに記載の滅菌シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−62316(P2011−62316A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214996(P2009−214996)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】