説明

作業工具吊り下げ装置

【課題】スプリングバランサーなどの作業工具吊り下げ装置において、簡単な構成で、万が一付勢バネが折損した場合であっても、ドラムの回転を規制することによって作業工具が落下するのを防止可能とすること。
【解決手段】作業工具を吊り下げるワイヤーロープ40がドラム30から引き出されるなど、ぜんまいばね50による付勢力がねじりばね19eによる付勢力よりも優勢である場合には、ドラムストッパ18が許容位置へと移動してドラム30が引出方向に回転可能となる。一方、金属疲労等によってぜんまいばね50が折損するなど、ねじりばね19eによる付勢力がぜんまいばね50による付勢力よりも優勢になると、ドラムストッパ18が規制位置へと移動して、ドラム30が引出方向には回転できなくなり、作業工具を吊り下げるワイヤーロープ40がドラム30から引き出されなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業工具を吊り下げてその重量に合わせて付勢バネのトルクを調整可能に構成された作業工具吊り下げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、作業工具を吊り下げたロープを巻回したドラムに、ぜんまいばねなどの付勢バネでバランス用回転力を与え、作業工具を任意の位置に停止できるように構成されたスプリングバランサーが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようなスプリングバランサーは、作業工具の操作性を良くして、作業者の負担を少なくし、作業効率を向上させるために広く用いられている。
【0003】
また、このようなスプリングバランサーの中には、作業工具を吊り下げてその重量に合わせて付勢バネのトルクを調整可能に構成されたものがある。
【特許文献1】特公昭61−58399号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のようなスプリングバランサーにおいては、金属疲労などによって付勢バネが折損した場合に、付勢バネによるばね力から解放されたドラムが回転可能な状態となり、作業工具の重量によってドラムが回転し、回転するドラムからロープが引き出されて作業工具が落下するという問題があった。
【0005】
また、荷重を弱くするときに作業工具が落下しやすく、例えば付勢バネを係止するラチェットが外れたときに、作業者が手を滑らせたりして付勢バネの付勢力が急激に減少すると作業工具が落下することがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、スプリングバランサーなどの作業工具吊り下げ装置において、簡単な構成で、万が一付勢バネが折損した場合であっても、ドラムの回転を規制することによって作業工具が落下するのを防止可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る作業工具吊り下げ装置(1:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための最良の形態」欄で用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、作業工具を吊り下げるロープ(40)が巻回され、前記ロープを巻き取る巻取方向および前記ロープを引き出す引出方向に回転可能なドラム(30)と、前記ドラムと同軸上に配置され、軸周りに回転可能な回転軸(20)と、渦巻き状に形成され、内端部が前記回転軸側に接続され、外端部が前記ドラム側に接続され、前記ドラムを前記巻取方向へ付勢して、作業工具とバランスするばね力を有するぜんまいばね(50)と、前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸とともに回転可能なラチェットホイール(20c)と、前記ラチェットホイールを係止して前記ラチェットホイールおよび前記回転軸が前記引出方向と同一方向へ回転するのを規制する規制状態と前記ラチェットホイールを係止せずに前記引出方向と同一方向へ前記ラチェットホイールおよび前記回転軸が回転するのを許容する許容状態とで回動によって切り替え可能であり、前記規制状態および前記許容状態の何れの場合にも前記ラチェットホイールおよび前記回転軸が前記巻取方向と同一方向へ回転するのを許容するラチェットホイールストッパ(19)と、前記ラチェットホイールストッパを前記規制状態へ付勢するラチェットホイールストッパ付勢部材(19e)と、を備える作業工具吊り下げ装置であって、さらに、前記ラチェットホイールストッパを回動可能に支持し、前記ドラムが前記引出方向に回転するのを許容する許容位置と前記ドラムが前記引出方向に回転するのを規制する規制位置との間を前記ラチェットホイールストッパを伴って移動可能であり、前記規制状態にある前記ラチェットホイールストッパを介して伝達される前記ぜんまいばねによる前記引出方向と同一方向への付勢力によって前記許容位置へ付勢されるドラムストッパ(18)と、前記ぜんまいばねによる付勢力に抗して前記ドラムストッパを前記規制位置へ付勢するドラムストッパ付勢部材(19e)と、を備え、前記ぜんまいばねによる付勢力が前記ドラムストッパ付勢部材による付勢力よりも優勢である場合には前記ドラムストッパが前記許容位置へと移動して前記ドラムが前記引出方向に回転可能となり、一方、前記ドラムストッパ付勢部材による付勢力が前記ぜんまいばねによる付勢力よりも優勢である場合には前記ドラムストッパが前記規制位置へと移動して前記ドラムが前記引出方向には回転不能となることを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明の作業工具吊り下げ装置によれば、次のような作用効果を奏する。すなわち、ドラムストッパが、ラチェットホイールストッパを回動可能に支持し、許容位置と規制位置との間をラチェットホイールストッパを伴って移動可能である。なお、許容位置とはドラムが引出方向に回転するのを許容する位置であり、規制位置とはドラムが引出方向に回転するのを規制する位置である。また、ドラムストッパが、規制状態にあるラチェットホイールストッパを介して伝達されるぜんまいばねによる引出方向と同一方向への付勢力によって許容位置へ付勢されると同時に、ドラムストッパ付勢部材によって規制位置へも付勢される。なお、規制状態とは、ラチェットホイールを係止してラチェットホイールおよび回転軸が引出方向と同一方向へ回転するのを規制する状態である。そして、作業工具を吊り下げるロープがドラムから引き出されるなど、ぜんまいばねによる付勢力がドラムストッパ付勢部材による付勢力よりも優勢である場合には、ドラムストッパが許容位置へと移動して、ドラムが引出方向に回転可能となり、作業工具を吊り下げるロープをドラムから引き出すことができる。一方、金属疲労等によってぜんまいばねが折損するなど、ドラムストッパ付勢部材による付勢力がぜんまいばねによる付勢力よりも優勢になると、ドラムストッパが規制位置へと移動して、ドラムが引出方向には回転できなくなり、作業工具を吊り下げるロープがドラムから引き出されなくなる。
【0009】
また、荷重を弱くするときに作業工具が落下しやすく、例えばぜんまいばねを係止するラチェットが外れたときに、作業者が手を滑らせたりしてぜんまいばねの付勢力が急激に減少すると作業工具が落下することがあるが、これに対して本発明の作業工具吊り下げ装置によれば、上述のようにドラムストッパおよびドラムストッパ付勢部材を備えることにより、ぜんまいばねを係止するラチェットが外れても、ドラムの回転を止めることができる。
【0010】
なお、このような本願発明特有の作用効果を実現するためには、上述のドラムストッパおよびドラムストッパ付勢部材を備えればよい。
したがって、簡単な構成で、万が一付勢バネが折損した場合であっても、ドラムの回転を規制することによって作業工具が落下するのを防止することができる。
【0011】
また、本発明の作業工具吊り下げ装置によれば、ドラムストッパが、ぜんまいばねの内端部に接続されるとともにぜんまいばねのトルクに応じて許容位置と規制位置との間で移動するよう構成される。このことにより、次のような作用効果を奏する。すなわち、仮にドラムストッパがぜんまいばねの外端部に接続されるとともにぜんまいばねのトルクに応じて許容位置と規制位置との間で移動するよう構成される場合には、ドラムストッパが規制位置へと移動する際に押すのは、質量が大きい折損したぜんまいばねの外端側部分であるために、ぜんまいばねの折損に対する反応がよくない。これに対して、本発明の作業工具吊り下げ装置によれば、ドラムストッパが、ぜんまいばねの内端部に接続されるとともにぜんまいばねのトルクに応じて許容位置と規制位置との間で移動するよう構成される。このことにより、ぜんまいばねが折損した場合には、ドラムストッパが、ドラムストッパ付勢部材による付勢力によって、折損したぜんまいばねの内端側部分、回転軸およびラチェットホイールを押しながら規制位置へと移動するが、この際、ドラムストッパが規制位置へと移動する際に押すのは、折損したぜんまいばねの内端側部分、回転軸およびラチェットホイールのみであるので、例えばドラムストッパがぜんまいばねの外端部に接続されるとともにぜんまいばねのトルクに応じて許容位置と規制位置との間で移動するよう構成される場合に比べて、ぜんまいばねの折損に対する反応がよい。
【0012】
この場合、上述のドラムストッパがドラムの被係止部を係止してドラムの回転を規制することが考えられる。具体的には、請求項2のように、ドラムには被係止部が形成され、ドラムストッパが、規制位置に移動した際に、被係止部を係止することでドラムが引出方向に回転するのを規制することが考えられる。このように構成すれば、ドラムストッパがドラムの被係止部を係止することで、ドラムの回転を確実に止めることができる。
【0013】
なお、上述のドラムの被係止部については複数存在することが考えられる。具体的には、請求項3のように、ドラムの被係止部は複数存在し、ドラムストッパが、規制位置に移動した際に、複数の被係止部の何れかを係止することでドラムが引出方向に回転するのを規制することが考えられる。このように構成すれば、ぜんまいばねによる引張力が解除されてからのドラムの回転量を少なくすることができ、したがって、迅速にドラムの回転を規制し、作業工具の落下を早く止めることができる。
【0014】
ところで、上述のようなドラムの回転を規制するための機構を単純な構成とするために、次のように構成することが考えられる。
(イ)請求項4のように、上述のラチェットホイールストッパ付勢部材およびドラムストッパ付勢部材については一体に構成することが考えられる。このように構成すれば、ラチェットホイールストッパ付勢部材とドラムストッパ付勢部材とが別々に構成される場合に比べて、ドラムの回転を規制するための機構を単純な構成とすることができる。
【0015】
(ロ)また、請求項5のように、ドラムストッパが許容位置にある場合に規制状態であるラチェットホイールストッパが当接可能な当接部材を備え、一体に構成されるラチェットホイールストッパ付勢部材およびドラムストッパ付勢部材が、ラチェットホイールストッパまたはドラムストッパに取り付けられるとともに、その端部が当接部材を当接しながら押圧することでラチェットホイールストッパを規制状態へ付勢するとともにドラムストッパを規制位置へ付勢することが考えられる。このように構成すれば、一体に構成されるラチェットホイールストッパ付勢部材およびドラムストッパ付勢部材が当接する部材を当接部材とは別に構成する場合に比べて、ドラムの回転を規制するための機構を単純な構成とすることができる。
【0016】
ところで、当該作業工具吊り下げ装置の筐体については、光透過性材料で構成するとよい。具体的には、請求項6のように、少なくともドラム、回転軸の一部およびぜんまいばねを内包するとともに、ドラムおよび前記回転軸を回転可能に支持する筐体を備え、筐体は、光透過性材料で構成されていることが考えられる。このように構成すれば、ドラムへのロープの巻き取り具合を視認することができる。また、ドラムストッパが規制位置または許容位置の何れにあるのかを視認することができる。また、規制位置にあるドラムストッパドラムの被係止部に係合しているか否かを視認することができる。
【0017】
ところで、当該作業工具吊り下げ装置を吊り下げるためのフックを、筐体に回動可能に取り付けるとよい。具体的には、少なくともドラム、回転軸の一部およびぜんまいばねを内包するとともに、ドラムおよび回転軸を回転可能に支持する筐体と、当該作業工具吊り下げ装置を吊り下げるためのフックとを備え、フックは、筐体に回転可能に取り付けられることが考えられる。このように構成すれば、当該作業工具吊り下げ装置を設置する壁面に凹凸があっても、フックが筐体に対して回動することで上記壁面の凹凸を回避しながら当該作業工具吊り下げ装置を吊り下げることができる。
【0018】
この場合、フックが鍛造加工によって成形されることが考えられる。具体的には、筐体には開口部が形成されており、一方、フックは、鍛造加工によって成形され、その中央部の径寸法が筐体の開口部の内径寸法よりも小さく、その後端部の径寸法が筐体の開口部の内径寸法よりも大きく形成されており、後端部を筐体の内部に位置させることで筐体に回転可能に取り付けられていることが考えられる。このように構成すれば、従来のようにフックの後端部に溝加工などの追加工を施したりフックの後端部に形成された挿入孔に別部材を段付きピンで固定したりする必要がなく、フックを筐体に回転可能に取り付ける構成を安価に実現することができる。
【0019】
なお、上述のぜんまいばねによる付勢力を調整する方法としては、スパナやレンチなどの工具を用いてぜんまいばねによる付勢力を調整する方法がある。しかし、このような調整方法では、例えば作業者が手を滑らせた場合に工具がぜんまいばねによる付勢力で飛ばされるおそれがある。また、工具が作業者の手元にない場合には、上述のような調整を行うことができない。
【0020】
そこで、ぜんまいばねによる付勢力を調整するためのハンドルを備えることが考えられる。このように構成すれば、工具が作業者の手元にない場合であっても上述のような調整を行うことができる。また、上述のような調整に工具を必要としないため、例えば作業者が手を滑らせた場合に工具がぜんまいばねによる付勢力で飛ばされるといったことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。なお、本発明は下記実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
[実施形態]
図1(a)は、作業工具吊り下げ装置1を正面から見た外観図である。また、図1(b)はワイヤーロープ40の端部に取り付けられる取付金具41および緩衝部材16を示す説明図である。また、図2は作業工具吊り下げ装置1を側方から見た外観図であり、図3は作業工具吊り下げ装置1を後方から見た外観図である。また、図4(a)は図1(a)におけるAA断面図であり、図4(b)は図3におけるBB断面図である。
【0022】
図1(a)に示す作業工具吊り下げ装置1は、作業工具を吊り下げたワイヤーロープを巻回したドラムにぜんまいばねでバランス用回転力を与え、作業工具を任意の位置に停止できるように構成されており、作業工具の操作性を良くして、作業者の負担を少なくし、作業効率を向上させるために広く用いられている。また、この作業工具吊り下げ装置1は、作業工具を吊り下げてその重量に合わせてぜんまいばねのトルクを調整可能とする機構を備えている。以下、作業工具吊り下げ装置1の具体的な構成を説明する。
【0023】
[1.作業工具吊り下げ装置1の構成の説明]
図1(a)に示すように、作業工具吊り下げ装置1は、ケース10と、回転軸20(図4(b)参照)と、ドラム30(図4(b)参照)と、ワイヤーロープ40と、ぜんまいばね50(図4(b)参照)と、を備えている。以下、順に説明する。
【0024】
図3に示すように、ケース10は、ケース本体11、蓋部12、フック14、緩衝部材16、ハンドル17、ドラムストッパ18などで構成される。このうちケース本体11は、その一部が開口する箱形状に形成されている(図2および図4(b)参照)。一方、蓋部12は、その一部が開口するとともにその内部に空間が形成された略円錐台形に形成され、ケース本体11の開口部11aを塞ぐことが可能である(図2および図4(b)参照)。また、ケース本体11にはビス13を挿通するための挿通孔11bが3つ形成され(図3参照)、これら3つの挿通孔11bをそれぞれ挿通された3本のビス13を蓋部12に形成された3つのビス孔(図示省略)にそれぞれ取り付けることで、蓋部12がケース本体11に固定されている。
【0025】
また、ケース10の上部には取付部10aが形成され、ケース10の取付部10aには、作業工具吊り下げ装置1を吊り下げるための鉤状のフック14が回動可能に取り付けられている。この取付部10aは、図4(a)に示すように、蓋部12がケース本体11に固定される際に、ケース本体11の上部に形成された本体側取付部11cと蓋部12の上部に形成された蓋部側取付部12aとが合わさり、本体側取付部11cに形成された溝部11dと蓋部側取付部12aに形成された溝部12bとが連通することで形成される。また、ケース本体11の本体側取付部11cにはビス15を挿通するための挿通孔11eが形成され(図3参照)、この挿通孔11eを挿通されたビス15を蓋部12の蓋部側取付部12aに形成されたビス孔(図示省略)に取り付けることで、蓋部12の蓋部側取付部12aがケース本体11の本体側取付部11cに固定されている。また、取付部10aは、円筒状に形成されており、その開口部10bの内径寸法が他の部分10cの内径寸法よりも小さくなっている。
【0026】
なお、本実施形態では、ケース本体11および蓋部12については、光透過性を有する樹脂材料で構成されている。
一方、フック14は、鍛造加工によって成形され、その中央部14aの径寸法がケース10の取付部10aの開口部10bの内径寸法よりも小さく、その後端部14bの径寸法がケース10の取付部10aの開口部10bの内径寸法よりも大きく形成されており、後端部14bをケース10の取付部10aの内部10cに位置させることでケース10の取付部10aに回転可能に取り付けられている。また、フック14は、その先端部14cが鉤状になっており、中央部14aの貫通孔14dにピン14eを用いて回動可能に取り付けられた回動板14fが付勢バネ14gによって付勢されて先端部14cに当接することでリング状となるようになっている。
【0027】
このことにより、従来のようにフックの後端部に溝加工などの追加工を施したりフックの後端部に形成された挿入孔に別部材を段付きピンで固定したりする必要がなく、フック14をケース10に回転可能に取り付ける構成を安価に実現することができる。
【0028】
また、図1(a)に示すように、蓋部12の上部には、作業工具吊り下げ装置1を吊り下げるための取付孔12cが形成されている。
さらに、蓋部12の周面12dには、ワイヤーロープ40を挿通するための長孔状の開口部12eが下方に向けて形成されている。この開口部12eにはワイヤーロープ40が挿通される。
【0029】
また、図4(b)に示すように、ケース本体11の底部11fの中央部11gには、回転軸20が回転可能に取り付けられている。具体的には、回転軸20は、その先端部20aが蓋部12の円錐台形状の周面12dの頂部12fからケース10の外部に延出するとともに、その後端部20bがケース本体11の底部11fの中央部11gからケース10の外部に延出し、ケース本体11の底部11fに対して垂直な姿勢で回転可能に支持されている。
【0030】
また、回転軸20の後端部20bには、ラチェットホイール20cが一体に形成されている(図3参照)。
また、ケース10の内部では、回転軸20の中央部20dにドラム30が回転可能に支持されている。具体的には、ドラム30は略円錐台形状に形成され、蓋部12の円錐台形に形成された部分に沿うようにケース10の内部に収納され、回転軸20の中央部20dに回転可能に固定されている。したがって、回転軸20およびドラム30は同軸上に配置され、それぞれが独立して回転可能となっている。
【0031】
また、ドラム30の周面30aには螺旋状の溝30bが正面から見て(ケース10の蓋部12側から見て)右巻きに形成されている。この溝30bの外端部(図示省略)にはワイヤーロープ40の一方の端部に取り付けられたエンド(図示省略)が引っ掛けられ、溝30bにはワイヤーロープ40が巻回されている。そして、上述のように溝30bに巻回されるワイヤーロープ40の他方の端部(図示省略)は、ケース10の蓋部12の周面12dに形成された長孔状の開口部12eおよび緩衝部材16に挿通され、作業工具を吊り下げるための取付金具41が取り付けられている(図1(a)参照)。
【0032】
この緩衝部材16は、ワイヤーロープ40が開口部12eからケース10内部へ入りすぎないようにする役割を持っている。
また、取付金具41は、図1(a)に示すように、円環状のリング部材42と、鉤状のフック部材43とから構成される。このうちのリング部材42は円環状に形成された円環部42aに円筒状の延出部42bが接続する構成を有しており、延出部42bの内部にワイヤーロープ40の一方の端部が挿入された後にカシメ加工を行うことでワイヤーロープ40に取り付けられている。また、延出部42bは緩衝部材16の段付き孔16aに内径が大きい側から圧入されている(図1(b)参照)。そして、リング部材42にはフック部材43が通されている。このフック部材43は、棒材の両端部を円弧状の鉤形状に異なる曲率でそれぞれ曲げることで形成されており、他方に比べて小さい曲率で円弧状の鉤形状に形成された端部43aがリング部材42に通されている。また、このフック部材43は、端部43aに形成された貫通孔43bにピン43cを用いて回動可能に取り付けられた回動板43dが付勢バネ(図示省略)によって付勢されて他方の端部43eに当接することでリング状となるようになっている。
【0033】
また、ドラム30の内部には空間が形成されており、ドラム30の後側には円形の開口部30cが形成されている。そして、ドラム30の内部には、ぜんまいばね50が内装されている。このぜんまいばね50は、薄板状のばね材を渦巻き状に巻いた構成を有している。そして、ぜんまいばね50は、正面から見て左巻きとなる状態で、内端部50aが回転軸20の中央部20dに接続されるとともに外端部50bがドラム30に接続されており、ドラム30をワイヤーロープ40を巻き取る方向である巻取方向に付勢して、作業工具とバランスするばね力を有している。
【0034】
また、ドラム30の開口部30cには、ぜんまいばね50を内装した状態で、円盤状のカバー31が取り付けられている。なお、カバー31の中央部には挿通孔31aが形成されており、回転軸20の後端部20bが挿通されている。また、カバー31の外縁からは、4つの突起部31bがケース本体11へ向けて延出するよう形成されている。この4つの突起部31bは、カバー31の周方向を4等分するよう配置されている。
【0035】
また、ケース10の蓋部12からケース10の外部に延出する回転軸20の先端部20aには、作業者がぜんまいばね50のトルク(ばね力)を調整するためのハンドル17が取り付けられている。このハンドル17は略円錐台形状に形成され、その後側に形成された取付孔17aに回転軸20の先端部20aが挿入後に、周面17bの凹部17eの貫通孔17fから挿入されたビス(図示省略)でビス止めされており、ハンドル17を回転させるとその回転に伴って回転軸20も回転するようになっている。そして、図1(a)に示すように、ハンドル17の周面17bの頂部17cが平面状に形成されており、頂部17cには、ハンドル17の回転方向とぜんまいばね50のトルク(ばね力)の増減との対応関係が表示されている。なお、上述の対応関係とは、ハンドル17を(正面から見て)右回りに回転させるとぜんまいばね50のトルク(ばね力)が増加し、一方、ハンドル17を(正面から見て)左回りに回転させるとぜんまいばね50のトルク(ばね力)が減少する旨であり、ハンドル17の頂部17cには、上述の対応関係を示すように、矢印、記号「+」および記号「−」が表示されている。また、ハンドル17の周面17bには、4つの凹部17eが形成されており、作業者がハンドル17を把持して回転させやすいようになっている。なお、4つの凹部17eは、ハンドル17の周方向を4等分するよう配置されている。
【0036】
また、図4(b)に示すように、ケース10の内部には、ドラム30の回転を規制するためのドラムストッパ18が取り付けられている。具体的には、ドラムストッパ18は、図5に示すように、細長い板状に形成されており、ケース本体11の底部11fから内側に向けて突出するように形成された二つの案内用のボス11hに長孔状のガイド溝18dが案内されてケース本体11の底部11fの内部側の面に沿って移動可能であり、その先端部18aが、ドラム30の回転時にカバー31の突起部31bが通過する軌跡上に位置することが可能となっている(図6参照)。また、ドラムストッパ18の先端部18aは、鉤状に形成されており、ドラム30が引出方向に回転する際にカバー31の突起部31bを係止するとともにカバー31の突起部31bに引っ掛かるようにもなっている(図6参照)。
【0037】
また、図3に示すように、ドラムストッパ18には、ラチェットホイール20cを係止可能なラチェットホイールストッパ19が取り付けられている。具体的には、ラチェットホイールストッパ19はその先端部19aが爪状に形成され、その中央部19bが段付き軸21を挟んでドラムストッパ18に回動可能に支持されており(図4(b)参照)、ラチェットホイール20cを係止可能である。具体的には、ラチェットホイールストッパ19は、その中央部19bには貫通孔19cが形成され、貫通孔19cおよびねじりばね19eに挿通された状態の段付き軸21の挿通孔21aを挿通されたビス19dがドラムストッパ18の中央部18bに形成されたビス孔18cに取り付けられている。そして、ねじりばね19eの一端がラチェットホイールストッパ19の中央部19bの後端側の部分に引っ掛けられ、他端がケース本体11の底部11fから外部へ向けて突出するように形成された安全用凸部11iに引っ掛けられている。さらに、ラチェットホイールストッパ19の後端部19fの先端19gが鉤状に形成されている。
【0038】
そして、ねじりばね19eは、ラチェットホイールストッパ19の先端部19aがラチェットホイール20cと係合するように付勢するとともに、ドラムストッパ18の先端部18aがカバー31の突起部31bの軌跡上に位置するように付勢する。
【0039】
また、安全用凸部11iは、ドラムストッパ18の先端部18aがドラム30の回転時にカバー31の突起部31bとは当接しない位置へと移動している場合において、ラチェットホイールストッパ19の先端部19aがラチェットホイール20cと係合するときに、ラチェットホイールストッパ19の後端部19fの先端19g近傍に配置されており、ラチェットホイールストッパ19の先端部19aがラチェットホイール20cから離間する状態へと回動するのを阻止するようになっている。なお、ドラムストッパ18の先端部18aがドラム30の回転時にカバー31の突起部31bと当接する位置へと移動している場合には、ラチェットホイールストッパ19は安全用凸部11iに当接せず、したがって、ラチェットホイールストッパ19は回動可能である。
【0040】
なお、ねじりばね19eは、ラチェットホイールストッパ付勢部材およびドラムストッパ付勢部材に該当する。また、安全用凸部11iは当接部材に該当する。
[2.作業工具吊り下げ装置1の動作の説明]
次に、作業工具吊り下げ装置1の動作について図5および図6を参照して説明する。なお、図5は、ドラムストッパ18がドラム30の引出方向への回転を許容する状態を示す説明図であり、図6は、ドラムストッパ18がドラム30の引出方向への回転を阻止する状態を示す説明図である。
【0041】
(1)図5に示す作業工具吊り下げ装置1を使用するには、作業工具吊り下げ装置1をフック14と取付孔12cを用いて天井や壁、作業台などに吊り下げる。
ぜんまいばね50に充分なイニシャルトルク(ばね力)が付加されていない場合、回転軸20およびラチェットホイール20cがぜんまいばね50により付勢されないため、ドラムストッパ18の先端部18aが、ねじりばね19eによる付勢力により、ドラム30の回転時にカバー31の突起部31bと当接する位置へと移動しており(規制位置、図6参照)、ドラム30の引出方向への回転が阻止される。
【0042】
なお、ぜんまいばね50にイニシャルトルクを付加するには、ハンドル17を正面から見て右回りに回転させる(図1(a)参照)。すると、ラチェットホイール20cの爪部20eがラチェットホイールストッパ19の先端部19aを順に押し上げながら、回転軸20がハンドル17と同一方向に回転し、ぜんまいばね50に回転軸20の回転量に応じたイニシャルトルクが付加される。なお、ぜんまいばね50に充分なイニシャルトルクが付加されたらハンドル17から手を離す。すると、ぜんまいばね50の付勢力によって回転軸20が反対方向に回転し、ラチェットホイール20cの爪部20eとラチェットホイールストッパ19の先端部19aとが係合し(規制状態、図6参照)、さらに、ラチェットホイール20cの爪部20eがラチェットホイールストッパ19の先端部19aを押し下げることでドラムストッパ18がカバー31の突起部31bとは当接しない位置(許容位置、図5参照)へと移動する。
【0043】
(2)続いて、作業工具吊り下げ装置1に作業工具を吊り下げる。具体的には、取付金具41に図示しない作業工具を取り付けて吊り下げると、作業工具の自重によってワイヤーロープ40が引かれ、ワイヤーロープ40が引き出される引出方向へドラム30が回転する。すると、ドラム30が引出方向に回転するに従ってぜんまいばね50が巻き締まっていく。そして、作業工具の自重によるドラム30の引出方向への回転力と、ぜんまいばね50のばね力とがバランスすると、ドラム30の引出方向への回転が停止する。
【0044】
(3)吊り下げられた作業工具の巻き取り荷重を調節するには次のように操作する。
(3−1)吊り下げられた作業工具の巻き取り荷重を上げる場合
吊り下げられた作業工具の巻き取り荷重を上げる場合には、ハンドル17を正面から見て右回りに回転させる(図1(a)参照)。すると、ラチェットホイール20cの爪部20eによってラチェットホイールストッパ19の先端部19aを順に押し上げながら、回転軸20がハンドル17と同一方向に回転する。吊り下げられた作業工具の自重とバランスしたら、ハンドル17から手を離す。すると、ぜんまいばね50によって回転軸20が反対方向に回転し、ラチェットホイール20cの爪部20eとラチェットホイールストッパ19の先端部19aとが係合する(図5参照)。
【0045】
(3−2)吊り下げられた作業工具の巻き取り荷重を下げる場合
一方、吊り下げられた作業工具の巻き取り荷重を下げる場合には、まず、吊り下げられた作業工具の巻き取り荷重を上げる場合と同様に、ハンドル17を正面から見て右回りに少し回転させる。すると、回転軸20がハンドル17と同一方向に回転し、ラチェットホイール20cの爪部20eがラチェットホイールストッパ19の先端部19aから離間する方向へ少し移動する。続いて、ラチェットホイールストッパ19の後端部19fを指などで押さえて安全用凸部11iへ向けて回動させ、ラチェットホイールストッパ19の先端部19aをラチェットホイール20cの爪部20eから離間させる。さらに、ハンドル17を反対方向に回転させる。すると、回転軸20がハンドル17と同一方向に回転し、ぜんまいばね50のばね力が回転軸20の回転量に応じて減少する。
【0046】
吊り下げられた作業工具の自重とバランスしたら、ハンドル17の回転を止めて、ラチェットホイールストッパ19から指などを離す。すると、ラチェットホイールストッパ19の先端部19aが、ねじりばね19eによる付勢力によってラチェットホイール20cに向けて移動し、ラチェットホイール20cに当接してラチェットホイール20cの爪部20eと係合可能な状態となる。そして、ハンドル17から手を離すと、ぜんまいばね50によって回転軸20が反対方向に回転し、ラチェットホイール20cの爪部20eとラチェットホイールストッパ19の先端部19aとが係合する(図5参照)。
【0047】
(4)作業工具を使用するときには、吊り下げられた作業工具を下方へ引き下げる。すると、ワイヤーロープ40が引かれ、ワイヤーロープ40が引き出される引出方向へドラム30が回転する。すると、ドラム30が引出方向に回転するに従ってぜんまいばね50が巻き締まっていく。
【0048】
(5)一方、作業工具の使用が終了し、作業工具を下方へ引き下げる力を弱めると、ぜんまいばね50による付勢力によってドラム30が巻取方向へ回転し、作業工具の自重とバランスするまでワイヤーロープ40がドラム30に巻き取られる。
【0049】
(6)なお、ぜんまいばね50が万が一折損した場合には、ぜんまいばね50による付勢力が消滅するためにドラム30が引出方向に回転可能となり、作業工具の自重によってワイヤーロープ40が引かれ、ワイヤーロープ40が引き出される引出方向へドラム30が回転する。
【0050】
一方、ぜんまいばね50による付勢力が消滅するために回転軸20がドラム30の巻取方向と同一方向に回転可能となり、ドラムストッパ18がねじりばね19eによって付勢され、ドラムストッパ18の先端部18aがドラム30の回転時にカバー31の突起部31bと当接する位置(規制位置)まで、ラチェットホイール20cの爪部20eを押し上げながら、ラチェットホイールストッパ19を伴って移動する(図6参照)。
【0051】
したがって、ドラム30が引出方向に回転しても、ドラムストッパ18の先端部18aにカバー31の突起部31bが当接してそれ以上はドラム30が引出方向へ回転できなくなり、ワイヤーロープ40がドラム30から引き出されず、作業工具の落下を防止することができる。
【0052】
[3.実施形態の効果]
(1)このように本実施形態の作業工具吊り下げ装置1によれば、次のような作用効果を奏する。すなわち、ドラムストッパ18が、ラチェットホイール20cの爪部20eを係合可能なラチェットホイールストッパ19を回動可能に支持し、その先端部18aがドラム30の回転時にカバー31の突起部31bと当接する位置(規制位置、図6参照)と、その先端部18aがドラム30の回転時にカバー31の突起部31bと当接しない位置(許容位置、図5参照)との間をラチェットホイールストッパ19を伴って移動可能である。また、ドラムストッパ18は、ラチェットホイール20cの爪部20eと係合する状態のラチェットホイールストッパ19を介して伝達されるぜんまいばね50による引出方向と同一方向への付勢力によって許容位置へ付勢されると同時に、ねじりばね19eによって規制位置へも付勢される。そして、作業工具を吊り下げるワイヤーロープ40がドラム30から引き出されるなど、ぜんまいばね50による付勢力がねじりばね19eによる付勢力よりも優勢である場合には、ドラムストッパ18が許容位置へと移動してドラム30が引出方向に回転可能となり、作業工具を吊り下げるワイヤーロープ40をドラム30から引き出すことができる。一方、金属疲労等によってぜんまいばね50が折損するなど、ねじりばね19eによる付勢力がぜんまいばね50による付勢力よりも優勢になると、ドラムストッパ18が規制位置へと移動して、ドラム30が引出方向には回転できなくなり、作業工具を吊り下げるワイヤーロープ40がドラム30から引き出されなくなる。
【0053】
また、荷重を弱くするときに作業工具が落下しやすく、例えばぜんまいばね50を係止するラチェットホイール20cの爪部20eからラチェットホイールストッパ19が外れたときに、作業者が手を滑らせたりしてぜんまいばね50の付勢力が急激に減少すると作業工具が落下することがあるが、これに対して本発明の作業工具吊り下げ装置1によれば、上述のようにドラムストッパ18およびねじりばね19eを備えることにより、ぜんまいばね50を係止するラチェットホイールストッパ19がラチェットホイール20cの爪部20eから外れても、ドラム30の回転を止めることができる。
【0054】
なお、このような本願発明特有の作用効果を実現するためには、ドラムストッパ18およびねじりばね19eを備えればよい。
したがって、簡単な構成で、万が一ぜんまいばね50が折損した場合であっても、ドラムストッパ18がドラム30の回転を規制することによって作業工具が落下するのを防止することができる。
【0055】
また、本実施形態の作業工具吊り下げ装置1によれば、ドラムストッパ18が、ぜんまいばね50の内端部50aに接続されるとともにぜんまいばね50のトルクに応じて許容位置と規制位置との間で移動するよう構成される。このことにより、ぜんまいばね50が折損した場合には、ドラムストッパ18が、ねじりばね19eによる付勢力によって、折損したぜんまいばね50の内端側部分、回転軸20およびラチェットホイール20cの爪部20eを押しながら規制位置へと移動するが、この際、ドラムストッパ18が規制位置へと移動する際に押すのは、折損したぜんまいばね50の内端側部分、回転軸20およびラチェットホイール20cの爪部20eのみであるので、例えばドラムストッパ18がぜんまいばね50の外端側50bに接続されるとともにぜんまいばね50のトルクに応じて許容位置と規制位置との間で移動するよう構成される場合に比べて、ぜんまいばね50の折損に対する反応がよい。
【0056】
(2)また、本実施形態の作業工具吊り下げ装置1によれば、ドラム30の開口部30cに取り付けられた円盤状のカバー31の外縁からは突起部31bがケース本体11へ向けて延出するよう形成されており、ねじりばね19eによる付勢力がぜんまいばね50による付勢力よりも優勢になると、ドラムストッパ18の先端部18aがドラム30の回転時にカバー31の突起部31bと当接する位置まで移動する。このことにより、ドラム30が引出方向に回転しても、ドラムストッパ18の先端部18aにカバー31の突起部31bが当接してそれ以上はドラム30が引出方向へ回転できなくなる。したがって、ドラム30の回転を確実に止めることができ、ワイヤーロープ40がドラム30から引き出されず、作業工具の落下を防止することができる。
【0057】
(3)また、本実施形態の作業工具吊り下げ装置1によれば、ドラム30の開口部30cに取り付けられた円盤状のカバー31の外縁からは4つの突起部31bがケース本体11へ向けて延出するよう形成されている。このように複数の突起部31bが存在することにより、ねじりばね19eによる付勢力がぜんまいばね50による付勢力よりも優勢になってからのドラム30の回転量を少なくすることができ、したがって、迅速にドラム30の回転を規制し、作業工具の落下を早く止めることができる。
【0058】
(4)また、本実施形態の作業工具吊り下げ装置1によれば、ねじりばね19eが、ラチェットホイールストッパ19の先端部19aがラチェットホイール20cと係合するように付勢するとともに、ドラムストッパ18の先端部18aがカバー31の突起部31bの軌跡上に位置するように付勢する。このことにより、ドラムストッパ18を付勢するための構成とラチェットホイールストッパ19を付勢するための構成とが別々に構成される場合に比べて、ドラム30の回転を規制するための機構を単純な構成とすることができる。
【0059】
(5)また、本実施形態の作業工具吊り下げ装置1によれば、ドラムストッパ18が許容位置にある場合に規制状態であるラチェットホイールストッパ19の後端部19fが当接可能な安全用凸部11iを備え、ねじりばね19eが、ラチェットホイールストッパ19またはドラムストッパ18に取り付けられるとともに、その端部が安全用凸部11iを当接しながら押圧することでラチェットホイールストッパ19を規制状態へ付勢するとともにドラムストッパ18を規制位置へ付勢する。このことにより、ドラムストッパ18およびラチェットホイールストッパ19の双方を付勢するねじりばね19eが当接する部材を安全用凸部11iとは別に構成する場合に比べて、ドラム30の回転を規制するための機構を単純な構成とすることができる。
【0060】
(6)また、本実施形態の作業工具吊り下げ装置1によれば、ケース10を構成するケース本体11および蓋部12を光透過性を有する樹脂材料で構成されている。このようにすれば、次のような作用効果を奏する。すなわち、樹脂化により軽量化することができる。また、ケース内部を視認することができる。一例を挙げると、ドラム30へのワイヤーロープ40の巻き取り具合を視認することや、ドラムストッパ18が規制位置または許容位置の何れにあるのかを視認すること、規制位置にあるドラムストッパ18の先端部18aがドラム30のカバー31の突起部31bに係合しているか否かを視認することなどが可能である。
【0061】
(7)また、本実施形態の作業工具吊り下げ装置1によれば、ケース10の上部には取付部10aが形成され、ケース10の取付部10aには、作業工具吊り下げ装置1を吊り下げるための鉤状のフック14が回動可能に取り付けられている。このことにより、当該作業工具吊り下げ装置1を設置する壁面に凹凸があっても、フック14が筐体としてのケース10に対して回動することで上記壁面の凹凸を回避しながら当該作業工具吊り下げ装置1を吊り下げることができる。
【0062】
(8)また、本実施形態の作業工具吊り下げ装置1によれば、ケース10の蓋部12からケース10の外部に延出する回転軸20の先端部20aには、作業者がぜんまいばね50のトルク(ばね力)を調整するためのハンドル17が取り付けられている。このことにより、工具が作業者の手元にない場合であってもぜんまいばね50による付勢力の調整を行うことができる。また、ぜんまいばね50による付勢力の調整に工具を必要としないため、例えば作業者が手を滑らせた場合に工具がぜんまいばね50による付勢力で飛ばされるといったことがない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(a)は作業工具吊り下げ装置1を正面から見た外観図であり、(b)は取付金具41および緩衝部材16を示す説明図である。
【図2】作業工具吊り下げ装置1を側方から見た外観図である。
【図3】作業工具吊り下げ装置1を後方から見た外観図である。
【図4】(a)は図1(a)におけるAA断面図であり、(b)は図3におけるBB断面図である。
【図5】ドラムストッパ18がドラム30の引出方向への回転を許容する状態を示す説明図である。
【図6】ドラムストッパ18がドラム30の引出方向への回転を阻止する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1…作業工具吊り下げ装置、10…ケース、10a…取付部、10b…開口部、10c…ケースの内部、11…ケース本体、11a…開口部、11b…挿通孔、11c…本体側取付部、11d…溝部、11e…挿通孔、11f…ケース本体の底部、11g…ケース本体の底部の中央部、11h…案内用ボス、11i…安全用凸部、12…蓋部、12a…蓋部側取付部、12b…溝部、12c…取付孔、12d…蓋部の周面、12e…開口部、12f…蓋部の周面の頂部、13…ビス、14…フック、14a…フックの中央部、14b…フックの後端部、14c…フックの先端部、14d…貫通孔、14e…ピン、14f…回動板、14g…付勢バネ、15…ビス、16…緩衝部材、16a…段付き孔、17…ハンドル、17a…取付孔、17b…ハンドルの周面、17c…ハンドルの周面の頂部、17e…ハンドルの周面の凹部、17f…貫通孔、18…ドラムストッパ、18a…ドラムストッパの先端部、18b…ドラムストッパの中央部、18c…ビス孔、18d…ガイド溝、19…ラチェットホイールストッパ、19a…ラチェットホイールストッパの先端部、19b…ラチェットホイールストッパの中央部、19c…貫通孔、19d…ビス、19f…ラチェットホイールストッパの後端部、19g…ラチェットホイールストッパの後端部の先端、20…回転軸、20a…回転軸の先端部、20b…回転軸の後端部、20c…ラチェットホイール、20d…回転軸の中央部、20e…ラチェットホイールの爪部、21…段付き軸、21a…挿通孔、30…ドラム、30a…ドラムの周面、30b…ドラムの周面の溝、30c…開口部、31…カバー、31a…挿通孔、31b…突起部、40…ワイヤーロープ、41…取付金具、42…リング部材、42a…円環部、42b…延出部、43…フック部材、43a…フック部材の端部、43b…貫通孔、43c…ピン、43d…回動板、43e…フック部材の端部、50…ぜんまいばね、50a…ぜんまいばねの内端部、50b…ぜんまいばねの外端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業工具を吊り下げるロープが巻回され、前記ロープを巻き取る巻取方向および前記ロープを引き出す引出方向に回転可能なドラムと、
前記ドラムと同軸上に配置され、軸周りに回転可能な回転軸と、
渦巻き状に形成され、内端部が前記回転軸側に接続され、外端部が前記ドラム側に接続され、前記ドラムを前記巻取方向へ付勢して、作業工具とバランスするばね力を有するぜんまいばねと、
前記回転軸に取り付けられ、前記回転軸とともに回転可能なラチェットホイールと、
前記ラチェットホイールを係止して前記ラチェットホイールおよび前記回転軸が前記引出方向と同一方向へ回転するのを規制する規制状態と前記ラチェットホイールを係止せずに前記引出方向と同一方向へ前記ラチェットホイールおよび前記回転軸が回転するのを許容する許容状態とで回動によって切り替え可能であり、前記規制状態および前記許容状態の何れの場合にも前記ラチェットホイールおよび前記回転軸が前記巻取方向と同一方向へ回転するのを許容するラチェットホイールストッパと、
前記ラチェットホイールストッパを前記規制状態へ付勢するラチェットホイールストッパ付勢部材と、
を備える作業工具吊り下げ装置であって、
さらに、
前記ラチェットホイールストッパを回動可能に支持し、前記ドラムが前記引出方向に回転するのを許容する許容位置と前記ドラムが前記引出方向に回転するのを規制する規制位置との間を前記ラチェットホイールストッパを伴って移動可能であり、前記規制状態にある前記ラチェットホイールストッパを介して伝達される前記ぜんまいばねによる前記引出方向と同一方向への付勢力によって前記許容位置へ付勢されるドラムストッパと、
前記ぜんまいばねによる付勢力に抗して前記ドラムストッパを前記規制位置へ付勢するドラムストッパ付勢部材と、を備え、
前記ぜんまいばねによる付勢力が前記ドラムストッパ付勢部材による付勢力よりも優勢である場合には前記ドラムストッパが前記許容位置へと移動して前記ドラムが前記引出方向に回転可能となり、一方、前記ドラムストッパ付勢部材による付勢力が前記ぜんまいばねによる付勢力よりも優勢である場合には前記ドラムストッパが前記規制位置へと移動して前記ドラムが前記引出方向には回転不能となることを特徴とする作業工具吊り下げ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業工具吊り下げ装置において、
前記ドラムには被係止部が形成され、
前記ドラムストッパは、前記規制位置に移動した際に、前記被係止部を係止することで前記ドラムが前記引出方向に回転するのを規制すること
を特徴とする作業工具吊り下げ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の作業工具吊り下げ装置において、
前記被係止部は複数存在し、
前記ドラムストッパは、前記規制位置に移動した際に、前記複数の被係止部の何れかを係止することで前記ドラムが前記引出方向に回転するのを規制すること
を特徴とする作業工具吊り下げ装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の作業工具吊り下げ装置において、
前記ラチェットホイールストッパ付勢部材および前記ドラムストッパ付勢部材が一体に構成されていることを特徴とする作業工具吊り下げ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の作業工具吊り下げ装置において、
前記ドラムストッパが前記許容位置にある場合に前記規制状態である前記ラチェットホイールストッパが当接可能な当接部材を備え、
前記一体に構成される前記ラチェットホイールストッパ付勢部材および前記ドラムストッパ付勢部材は、前記ラチェットホイールストッパまたは前記ドラムストッパに取り付けられるとともに、その端部が前記当接部材を当接しながら押圧することで前記ラチェットホイールストッパを前記規制状態へ付勢するとともに前記ドラムストッパを前記規制位置へ付勢すること
を特徴とする作業工具吊り下げ装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載の作業工具吊り下げ装置において、
少なくとも前記ドラム、前記回転軸の一部および前記ぜんまいばねを内包するとともに、前記ドラムおよび前記回転軸を回転可能に支持する筐体を備え、
前記筐体は、光透過性材料で構成されていること
を特徴とする作業工具吊り下げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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