説明

作業時間の報知装置

【課題】産業機械による作業の進捗状況を作業者や管理者が知ることができるようにすること。
【解決手段】印刷機制御装置10は、作業時間計数部12eと、報知制御部12fと、警告灯5、印刷機照明6a、6b、6c、6d、スピーカ7等の報知機器とを備える。作業時間計数部12eは、印刷機1の作業に要した時間を計数する。報知制御部12fは、計数された印刷機1の所定の作業に要した時間が、当該所定の作業に対して許容される最大作業時間に到達するまでの時間を、報知機器を用いて報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械による作業の進捗状況を把握する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械の一種である印刷機では、故障や障害等のエラーが発生した場合には、エラー発生を作業者に通知する手法が採用されている。そして、印刷機に発生したエラーを作業者に速やかに伝えるため、各印刷ユニットの一側面に、動作状態を報知するための照明装置を取り付けるものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−175965号公報(0002、0005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、産業機械においては、作業の進捗に遅れがあるのか、標準的であるのかを作業者や管理者が知りたいという要請がある。特許文献1に開示された技術は、産業機械の故障や障害等を作業者や管理者に伝えることはできるが、作業の進捗に関する情報を作業者や管理者へ伝えることはできない。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、産業機械による作業の進捗状況を作業者や管理者が知ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る作業時間の報知装置は、産業機械の作業に要した時間を計数する作業時間計数手段と、当該作業時間計数手段が計数した前記産業機械の所定の作業に要した時間が、当該所定の作業に対して許容される最大作業時間に到達するまでの時間についての情報を報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
このような構成により、例えば、本作業の準備やある特定の作業で、通常よりも作業に時間を要しているかを、作業者や管理者の視覚、あるいは聴覚に訴えることができる。その結果、作業者や管理者は、作業の進捗状況を知ることができ、産業機械による作業の進捗に遅れがあるのか、標準的であるのかを作業者や管理者が判断できる。また、報知により、作業者は、作業速度の目安を知ることができるので、作業の段取りを再考する等、作業の効率化を図ることができる。
【0007】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記報知手段は、前記作業時間計数手段が計数した前記所定の作業に要した時間が、前記最大作業時間を超えたことについての作業超過情報を報知することが好ましい。これによって、これによって、作業者は、最大作業時間からどの程度作業が超過しているかを知ることができる。
【0008】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記報知手段による前記作業超過情報の報知を停止させる作業超過報知停止手段を備えることが好ましい。これによって、作業者が報知は不要と判断した場合には、報知を停止できる。
【0009】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記作業超過報知停止手段は、前記所定の作業とは異なる作業が開始した場合に、前記報知手段による前記作業超過情報の報知を停止させることが好ましい。これによって、新たな作業が開始された後は報知が停止されるので、新たな作業の邪魔になるおそれが低減される。
【0010】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記産業機械の作業に要した時間を作業の種類毎に集計する集計手段を備えることが好ましい。これによって、どの作業にどの程度の時間を要しているかを把握できるので、改善すべき作業や印刷環境等を抽出しやすくなる。
【0011】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記集計手段は、前記産業機械の作業に要した時間を積算して集計することが好ましい。これによって、それぞれの印刷機の作業に要した時間を利用して印刷準備全体に要した時間を得ることができるので、別個に印刷準備全体に要した時間を求める必要がなくなる。
【0012】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記報知手段は、照明、警告音、表示手段への表示のいずれかにより前記報知を実行することが好ましい。これによって、作業者は確実に作業の進捗状況を把握できる。
【0013】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記報知手段は、前記産業機械の作業者の属性を取得し、取得された前記属性に基づいて、前記最大作業時間を変更することが好ましい。これによって、作業者の熟練度等に応じて適切な最大作業時間を設定できるので、特に、熟練度の低い作業者にとっては、報知による無用な緊張を強いられるおそれが低減される。
【0014】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記産業機械の状態に関する少なくとも一つの電気信号に基づいて前記所定の作業を推定する作業推定手段を備えることが好ましい。これによって、産業機械の作業を特定しやすくなる。
【0015】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記作業推定手段は、前記電気信号に対応する前記産業機械の状態が一意に決定されない場合、複数の前記電気信号の組み合わせに基づいて、前記所定の作業を推定することが好ましい。これによって、作業者自身の記録や作業者によるマニュアル入力がない場合であっても印刷機の作業を特定できる。その結果、印刷機の作業を特定するにあたって、不明な作業を低減できる。
【0016】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記電気信号に対応する前記所定の作業が一意に決定されない場合、前記所定の作業の候補を複数提示する作業候補提示手段を備えることが好ましい。これによって、表示された候補から作業者自身が実行した作業を選択して印刷機の状態特定装置へ入力できるので、印刷機の作業を特定する際の精度が向上する。
【0017】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記作業推定手段は、複数提示された前記候補から選択された候補を、前記所定の作業とすることが好ましい。これによって、複数の電気信号を組み合わせることによっても印刷機の作業を特定できない場合が発生しても、作業者自身が実行した作業を選択して印刷機の状態特定装置へ入力することにより、不明な印刷機の作業をより確実に低減できる。
【0018】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、提示された前記候補の中から前記所定の作業が選択されない場合、前記作業推定手段は、複数の前記電気信号の組み合わせに基づいて推定された作業を、前記所定の作業とすることが好ましい。これによって、作業者が印刷機の作業の候補を選択しなかった場合でも、印刷機の作業を特定できので、不明な印刷機の作業が低減される。
【0019】
本発明の望ましい態様としては、前記作業時間の報知装置において、前記産業機械は、印刷機及び紙工機械であることが好ましい。印刷機や紙工機械は、作業者の熟練度によって作業時間が大きく変わるため、前記作業時間の報知装置を印刷機や紙工機械に用いることにより、作業者は、作業速度の目安から作業の段取りを再考する等、作業の効率化を図り、その結果、生産性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、産業機械による作業の進捗状況を作業者や管理者が知ることができるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記で説明した内容により本発明が限定されるものではない。また、下記で開示した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。以下においては、産業機械として印刷機を例に説明するが、産業機械は印刷機に限定されるものではない。なお、本発明を適用できる印刷機の種類は問わない。
【0022】
本実施形態は、印刷機械や紙工機械等の産業機械において、産業機械の所定の作業に要した時間が、予め設定された当該所定の作業に対して許容される最大作業時間に到達するまでの時間に応じて、現在進行中における作業に要した時間が最大作業時間に到達するまでの時間についての情報を報知する点に特徴がある。
【0023】
図1は、本実施形態に係る印刷機の状態特定装置を含む印刷システムを示す模式図である。印刷システム100は、印刷機1と、印刷機1を制御する印刷機制御装置10と、コントロールパネル14とで構成される。この印刷機1は、例えば、オフセット印刷機の枚葉印刷機であり、給紙部2と、印刷部3と、排紙部4とを有する。給紙部2は、セットされた紙(枚葉紙)を繰り出して複数の印刷ユニット3a、3b、3c、3dで構成される印刷部3に供給する。それぞれの印刷ユニット3a、3b、3c、3dは、版胴32と、ブランケット胴33と、圧胴34とを有し、供給された紙にオフセット印刷する。
【0024】
印刷部3は、例えばカラー印刷用の印刷機であればK、C、M、Yの各印刷色に対応した4つの印刷ユニット3a、3b、3c、3dが連結された構成となっており、紙は圧胴34及び中間胴30やチェーングリッパ等により給紙部2から印刷部3、排紙部4の順に搬送される。
【0025】
版胴32の外周部には刷版が装着されており、インキ供給部からインキが供給される。前記刷版には、インキによる印刷画像が形成される。前記印刷画像は、ブランケット胴33に転写された後、紙に転写される。圧胴34は、搬送された紙をブランケット胴33に押し当てることにより、紙に前記印刷画像が転写される。すべての印刷ユニット3a、3b、3c、3dで印刷された紙は、排紙部4に送られる。排紙部4は、印刷部3で印刷された紙を積層状態に積み上げる。
【0026】
印刷機制御装置10は、印刷機1の動作を制御するとともに、本実施形態に係る作業時間の報知方法を実行する。このように、印刷機制御装置10は、本実施形態に係る作業時間の報知装置としても機能する。印刷機制御装置10は、コンピュータであり、入出力部(I/O)11と、処理部12と、記憶部13とを備えて構成される。印刷機制御装置10は、いわゆるパーソナルコンピュータを利用して構成してもよいし、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを組み合わせて構成してもよい。
【0027】
処理部12は、入出力部11を介して印刷機1の制御対象に制御信号を送って印刷機1の動作を制御し、また、印刷機1のセンサ類から印刷機1の制御に用いる情報や印刷機1の状態に関する情報を受け取る。印刷機1の制御に用いる情報や印刷機1の状態に関する情報は、電気信号の形で印刷機制御装置10の処理部12へ送られる。処理部12は、CPUで構成されており、記憶部13上に存在するプログラム(コンピュータプログラム)と呼ぶ命令列を順に読み込み、解釈し、その結果に従ってデータを移動したり加工したりする。
【0028】
なお、処理部12は、専用のハードウェアによって実現されるものであってもよい。また、処理部12の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより本実施形態に係る状態特定方法の処理手順を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
【0029】
「コンピュータが読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROMなどの可搬媒体、あるいはコンピュータシステムに内蔵されるハードディスクのような記録装置のことをいう。さらに、「コンピュータが読み取り可能な記録媒体」とは、インターネットや電話回線等の通信回線を介してコンピュータプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にコンピュータプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間コンピュータプログラムを保持しているものを含むものとする。また、上記コンピュータプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0030】
なお、本実施形態に係る状態特定方法は、予め用意されたコンピュータプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現できる。このコンピュータプログラムは、インターネット等の通信回線を介して配布することができる。また、このコンピュータプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって前記記録媒体から読み出されることによって実行されるようにしてもよい。
【0031】
処理部12は、信号取得部12aと、制御条件判定部12bと、作業特定部12cと、作業時間計数部12eと、報知制御部12fと、印刷機作業候補提示部12gと、印刷機作業候補表示部12hと、印刷機動作制御部12iとを備える。これらのうち、信号取得部12a及び制御条件判定部12b及び作業特定部12c及び作業時間計数部12e及び報知制御部12fが、本実施形態に係る作業時間の報知装置を構成し、本実施形態に係る作業時間の報知方法を実現する。
【0032】
信号取得部12aは、入出力部11を介して、印刷機1の状態に関する電気信号を取得する。制御条件判定部12bは、本実施形態に係る作業時間の報知方法において、印刷機1の作業が発生したか否か、及び報知をする時間になったか否か等を判定する。また、制御条件判定部12bは、信号取得部12aが取得した前記電気信号に対応する印刷機1の状態が一意に決定されるか否かを判定する。作業特定部12cは、信号取得部12aが取得した前記電気信号に対応する印刷機1の状態が一意に決定されない場合には、複数の前記電気信号の組み合わせに基づいて印刷機1の状態を確定する。また、作業特定部12cは、信号取得部12aが取得した前記電気信号に対応する印刷機1の状態が一意に決定される場合には、その状態を印刷機1の状態であると推定する。
【0033】
印刷機作業候補提示部12gは、前記電気信号に対応する印刷機1の状態が一意に決定されない場合、印刷機1の状態の候補を単数又は複数提示する。そして、印刷機作業候補提示部12gは、入出力部11に接続される入出力手段であるコントロールパネル14の表示手段であるディスプレイ14Dに単数又は複数の前記候補を表示させる。
【0034】
作業時間計数部12eは、作業時間計数手段であり、印刷機1の作業に要した時間、すなわち、印刷機1の作業の開始から終了までに要した時間を計数する。印刷機1の作業には、作業者が印刷機1に対して実行する作業、例えば、ゴミ取りのための版手入れ、紙積み、湿しメンテナンス、色合わせ等の他、印刷機1自身の作業、例えば、自動版交換、自動ブランケット胴洗浄、自動インキ洗浄等が含まれる。なお、印刷機1自身の作業は、後述する作業特定部12cが推定した印刷機1の状態に含まれる。したがって、印刷機1自身の作業は、作業特定部12cにより推定され、特定される。
【0035】
報知制御部12fは、後述する警告灯5、印刷機照明6a、6b、6c、6d、スピーカ7等の報知機器とともに報知手段を構成する。報知制御部12fは、作業時間計数部12eが計数した印刷機1の所定の作業に要した時間が、この所定の作業に対して許容される最大作業時間に到達するまでの時間についての情報を、報知機器に報知させる。報知手段は、印刷機1の作業に要した時間が、その作業に許容される最大作業時間に到達するまでの時間についての情報を報知する。
【0036】
印刷機作業候補表示部12hは、作業特定部12cが推定した印刷機1の状態を、ディスプレイ14Dに表示された他の候補とは異なる態様で表示される。例えば、作業特定部12cが推定した印刷機1の状態を点滅させたり、他の候補とは異なる色で表示させたりする。印刷機動作制御部12iは、印刷機1の動作、例えば、メンテナンスに必要な動作や印刷作業に必要な動作を制御する。集計部12jは、集計手段であって、印刷機1の作業に要した時間を、作業の種類毎に集計する。より具体的には、集計部12jは、印刷の準備に要した時間や、最大作業時間を超えた作業等を集計して、作業時間報告を作成する。そして、作成された作業時間報告は、例えば、後述するプリンタ15によって出力される。
【0037】
コントロールパネル14には、印刷機1の動作を制御するための指令を入力する入力手段14Cが設けられる。本実施形態において、コントロールパネル14は、タッチパネル形式のディスプレイ14Dを備える。したがって、本実施形態においては、入力手段14Cの他にも、ディスプレイ14Dを用いてコントロールパネル14に対して入力できる。なお、ディスプレイ14Dは、タッチパネル式に限定されるものではない。
【0038】
記憶部13は、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリやROM(Read Only Memory)のような不揮発性のメモリ、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体、あるいはこれらを組み合わせて構成される。記憶部13には、本実施形態に係る状態特定方法を実現するためのコンピュータプログラムやデータ、あるいは印刷機1の制御を実現するための制御用コンピュータプログラムや制御データが格納されている。処理部12は、これらのコンピュータプログラムやデータを用いて、本実施形態に係る状態特定方法を実現したり、印刷機1の動作を制御したりする。
【0039】
入出力部11には、上述したコントロールパネル14の他、プリンタ15、警告灯5、印刷機照明6a、6b、6c、6d、スピーカ7、作業超過報知停止手段である報知停止スイッチ8が接続される。そして、これらと処理部12との間で、入出力部11を介して信号のやり取りが行われる。なお、入出力部11を通信回線に接続してもよい。このようにすると、印刷機制御装置10の処理部12は、入出力部11及び通信回線を介して、前記通信回線に接続される管理用コンピュータやサービスセンターのコンピュータと情報をやり取りできる。次に、本実施形態に係る作業時間の報知方法の手順を説明する。本実施形態に係る作業時間の報知方法は、図1に示す印刷機制御装置10、及び警告灯5やスピーカ7等の報知機器によって実現される。
【0040】
図2は、本実施形態に係る作業時間の報知方法の手順を示すフローチャートである。図3は、本実施形態に係る作業時間の報知方法に用いる最大作業時間や報知開始時間が記述されるデータテーブルの一例を示す模式図である。図4は、本実施形態に係る作業時間の報知方法の手順を示すフローチャートである。
【0041】
本実施形態に係る作業時間の報知方法は、印刷機1の稼働時間で問題になる準備時間について実行される。準備時間は、その日最初に印刷機の電源が投入された場合は、電源ONからジョブが開始され、本刷りに至るまでの時間、及び本刷りが終了した後、次のジョブがある場合には、次のジョブが開始されるまでの時間である。また、その日2回目以降のジョブである場合、準備期間は、ジョブが開始され、本刷りに至るまでの時間である。さらに、その日における最後のジョブの場合、準備期間は、本刷りが終了し、印刷機1の電源がOFFにされるまでの時間である。本実施形態に係る作業時間の報知方法は、印刷準備におけるそれぞれの印刷機1の作業に対する報知方法と、印刷準備期間全体に対する報知方法とがあるが、まず、前者について説明する。
【0042】
本実施形態に係る作業時間の報知方法を実行するにあたり、ステップS101において、印刷機制御装置10の制御条件判定部12bは、印刷機1の印刷準備中であるか否かを判定する。印刷準備中であるか否かは、その日の最初に印刷機1の電源をONにした場合は、印刷機1の電源がONになっており、かつ正紙印刷前までである場合に、印刷準備中であると判定される。また、その日の2回目以降のジョブである場合、そのジョブが開始された後、かつ正紙印刷までである場合に、印刷準備中であると判定される。印刷機1の電源ONがONであること、ジョブの最中であることは、印刷機1の電気信号から一意に決定されるので、信号取得部12aが取得した印刷機1の電気信号に基づき、制御条件判定部12bが印刷準備中であるか否かを判定する。
【0043】
印刷準備中でないと制御条件判定部12bが判定した場合(ステップS101:No)、本実施形態に係る作業時間の報知方法は終了する。印刷準備中であると制御条件判定部12bが判定した場合(ステップS101:Yes)、ステップS102へ進む。ステップS102において、制御条件判定部12bは、印刷機1の作業があったか否かを判定する。印刷機1の作業があったか否かは、例えば、印刷準備中において、信号取得部12aが、印刷機1から何らかの電気信号を取得したときに、制御条件判定部12bは印刷機1の作業があったと判定する。例えば、版のゴミ取り作業のために印刷機のカバーを開くと、これをカバー用リミットスイッチが検出して、カバー開の電気信号を発生させる。また、印刷機1自身の作業である自動ブランケット胴洗浄が実行される場合には、印刷機制御装置10の印刷機動作制御部12iが、自動ブランケット胴洗浄指令を発信する。印刷準備中にこれらの電気信号を信号取得部12aが取得した場合には、印刷機1に何らかの作業が発生したと判定できる。
【0044】
印刷機1の作業がないと制御条件判定部12bが判定した場合(ステップS102:No)、本実施形態に係る作業時間の報知方法は終了する。印刷機1の作業があると制御条件判定部12bが判定した場合(ステップS101:Yes)、ステップS103へ進む。ステップS103において、作業時間計数部12eは、作業のカウントダウンを開始する。すなわち、作業時間計数部12eは、ステップS102で印刷機1の作業があると判定されたときから、その作業に要した時間を計数する。
【0045】
次に、ステップS104へ進み、作業特定部12cは、印刷機1の作業を特定する。本実施形態における作業を特定する方法の詳細については後述するが、例えば、自動ブランケット胴洗浄のように、印刷機動作制御部12iが、自動ブランケット胴洗浄指令を発信する場合、この信号の発生により、印刷機1の作業は、印刷機1自身の作業であって、自動ブランケット胴洗浄であると一意に特定できる。
【0046】
印刷機1の作業が特定できたら、ステップS105へ進む。ステップS105において、制御条件判定部12bは、ステップS104で特定された印刷機1の作業は、作業カウントダウンが必要な作業であるか否かを判定する。これは、作業の種類によっては、作業カウントダウンが不要である場合もあるからである。例えば、印刷機1の空転については、作業カウントダウンは実行しない。
【0047】
作業カウントダウンが不要であると制御条件判定部12bが判定した場合(ステップS105:No)、ステップS113で作業時間計数部12eは作業カウントダウンを停止して、本実施形態に係る作業時間の報知方法は終了する。作業カウントダウンが必要であると制御条件判定部12bが判定した場合(ステップS105:Yes)、ステップS106へ進む。ステップS106において、制御条件判定部12bは、報知開始時間Tcまでに現在進行中の印刷機1の作業が終了したか否かを判定する。
【0048】
ここで、報知開始時間Tcは、印刷機1の作業に要した時間(所要時間)Tが、最大作業時間Tmaxに到達するまでの時間(以下、残り時間という)についての情報についての報知を開始するか否かを判定するための閾値である。また、最大作業時間Tmaxは、印刷機1の所定の作業(この例ではステップS104によって特定された現在進行中の作業)に対して許容される最大の時間である。すなわち、本実施形態では、印刷機1の作業が開始してから報知開始時間Tcが経過すると、報知機器による第1の報知が開始される。これによって、作業者は、最大作業時間Tmaxが迫っていることを知ることができる。残り時間についての情報は、残り時間が少なくなっていることや、残り時間がどの程度であるかということを含む。前者については、例えば、報知機器による報知(スピーカ7による警告音、警告灯5の点灯、印刷機照明6a、6b、6c、6dの点滅)があり、後者については、例えば、スピーカ7の音声による残り時間の読み上げ、ディスプレイ14Dへの残り時間の表示等がある。
【0049】
最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcは、印刷機1の作業毎に設定される。例えば、図3のデータテーブル60に示すように、作業Aに対してはTmax1、Tc1、作業Bに対してはTmax2、Tc2というように、それぞれの作業に対して個別に設定される。ここで、Tmax、Tcの後に付される数字や文字は、それぞれの作業に対するものであることを示す識別記号であって、説明の便宜上付したものである。
【0050】
最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcは、作業者の入力により変更できる。これは、作業の熟練度に応じて最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを変更することにより、より作業者の実情に沿った報知ができるようにするためである。また、印刷機1の作業者の属性により、最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを変更してもよい。すなわち、作業者が熟練者である場合、最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcは相対的に短くてもよいが、作業者が初心者である場合、熟練者の最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを用いると、報知が頻発し、作業者に無用な緊張を強いるおそれがある。このため、作業者の属性、例えば、作業者が熟練者か否かということに応じて、最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを変更する。これによって、作業者が初心者である場合には、無用な報知を抑制できるので、作業者に無用な緊張を強いるおそれを低減できる。
【0051】
最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを作業者の入力により変更するためには、報知制御部12fが作業者の属性を取得し、取得された属性に基づき、それぞれの属性に応じた最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを設定する。この場合、記憶部13に、作業者の属性と、最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcとを対応付けて格納しておき、これらを設定する際には、報知制御部12fは、取得した属性に対応する最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを取得して、データテーブル60の最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcに設定する。
【0052】
また、作業者の属性としては、例えば、それぞれの作業者を識別できるIDを用いてもよい。すなわち、印刷機1の作業者それぞれが、自分に適した最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを設定し、それぞれの作業者のIDと対応付けて記憶部13へ格納しておく。そして、コントロールパネル14から作業者のIDを印刷機制御装置10へ入力すると、報知制御部12fが入力されたIDを取得して、対応する最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを記憶部13から読み出し、データテーブル60に設定する。このようにすれば、作業者それぞれに対して最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを設定できるので、より適切に残り時間を報知できる。
【0053】
なお、最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcは、過去において印刷機1のそれぞれの作業に要した時間を用いて再設定してもよい。例えば、過去において印刷機1のそれぞれの作業に要した時間の平均値に所定の時間を加算した値を最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcとしてもよい。このようにすれば、印刷機制御装置10の処理部によって自動的に最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを設定できるので、好ましい。
【0054】
制御条件判定部12bが、報知開始時間Tcまでに現在進行中の印刷機1の作業が終了したと判定した場合(ステップS106:Yes)、ステップS113へ進む。ステップS113において、作業時間計数部12eが作業カウントダウンを停止した上で、本実施形態に係る作業時間の報知方法は終了する。制御条件判定部12bが、報知開始時間Tcまでに現在進行中の印刷機1の作業が終了していないと判定した場合(ステップS106:No)、ステップS107へ進む。
【0055】
ステップS107において、報知制御部12fは、アラーム1を報知する(第1の報知)。アラーム1には、上述した通り、報知手段を構成する報知機器が用いられる。報知手段を構成する報知機器は、例えば、照明(警告灯5、印刷機照明6a、6b、6c、6d等)、警告音(スピーカ7)、表示手段への表示(ディスプレイ14Dへの表示)がある。照明により報知する場合、警告灯5や印刷機照明6a、6b、6c、6d等を点灯させたり点滅させたりすることにより、残り時間が少なくなっていることを報知する。この場合、残り時間に応じて照明の色を変更したり、点滅の周期を早くしたりしてもよい。これによって、残り時間がどの程度であるかを作業者は把握できる。なお、一般に産業機械は騒音が大きく、印刷機も例外ではない。このため、音声による報知では、作業者の認識が不十分になるおそれがある。したがって、報知機器としては、照明やディスプレイ14Dを用いて作業者の視覚に訴えることが好ましい。特に、照明を利用すると、作業者が認識しやすくなるので、より好ましい。
【0056】
警告音によって報知する場合、スピーカ7からカウントダウンの音声を流してもよい。例えば、残り時間を所定の時間間隔で読み上げる。これによって、残り時間がどの程度であるかを作業者は把握できる。なお、単にサイレンのような音をスピーカ7から流してもよい。表示手段への表示によって報知する場合、例えば、ディスプレイ14Dの背景色を赤系統の色に変更したり、ディスプレイ14Dに残り時間を表示させたりする。残り時間をディスプレイ14Dに表示することにより、作業者は、残り時間がどの程度であるかを把握できる。
【0057】
報知制御部12fがアラーム1を報知したら、ステップS108へ進む。ステップS108において、制御条件判定部12bは、最大作業時間Tmaxまでに現在進行中の印刷機1の作業が終了したか否かを判定する。制御条件判定部12bが、最大作業時間Tmaxまでに現在進行中の印刷機1の作業が終了したと判定した場合(ステップS108:Yes)、ステップS112へ進む。ステップS112において、報知制御部12fはアラーム1を停止させ、ステップS113において作業カウントダウンを停止させて、本実施形態に係る作業時間の報知方法は終了する。制御条件判定部12bが、最大作業時間Tmaxまでに現在進行中の印刷機1の作業が終了していないと判定した場合(ステップS108:No)、ステップS109へ進む。
【0058】
ステップS109において、報知制御部12fは、アラーム2を報知する(第2の報知)。アラーム2は、作業時間計数部12eが計数した、現在進行中における印刷機1の作業に要した時間が、最大作業時間Tmaxを超えたことについての作業超過情報である。このため、アラーム2は、アラーム1とは異なる態様で報知されることが好ましい。これによって、作業者は、現在進行中の作業が、最大作業時間Tmaxを超えたことを把握しやすくなるからである。
【0059】
例えば、アラーム1とアラーム2とで異なる報知機器を用いたり、アラーム1における報知の態様とアラーム2における報知の態様とを変更したりする。前者の例としては、例えば、アラーム1では、表示手段であるディスプレイ14Dに残り時間を表示し、アラーム2では、警告灯5を点灯させる手法が挙げられる。後者の例としては、例えば、アラーム1では、印刷機照明6a、6b、6c、6dを点灯させ、アラーム2では、印刷機照明6a、6b、6c、6dを点滅させる手法が挙げられる。このようにして、アラーム1とアラーム2とでは、異なる報知態様とすることが好ましい。
【0060】
アラーム2においては、作業超過情報として、現在進行中における印刷機1の作業が、最大準備時間maxを超過した時間(以下、作業超過時間という)を報知してもよい。具体的には、報知制御部12fが、作業超過時間をディスプレイ14Dに表示させたり、作業超過時間をスピーカ7から発音させたりする。これによって、作業者は、どの程度作業が超過しているかを知ることができる。
【0061】
アラーム2が報知されたら、ステップS110へ進む。ステップS110において、制御条件判定部12bは、現在進行中における印刷機1の作業が終了したか否かを判定する。制御条件判定部12bが、作業終了であると判定した場合(ステップS110:Yes)、ステップS111へ進む。ステップS111において、報知制御部12fはアラーム1を停止させ、ステップS113において作業カウントダウンを停止させて、本実施形態に係る作業時間の報知方法は終了する。
【0062】
制御条件判定部12bが、作業は終了していないと判定した場合(ステップS110:No)、ステップS114へ進む。ステップS114において、制御条件判定部12bは、アラーム2の報知が停止しているか否かを判定する。制御条件判定部12bが、アラーム2の報知は停止していると判定した場合(ステップS114:Yes)、現在進行中の作業が終了するまで、アラーム2の報知が停止した状態でステップS110、ステップS114が繰り返される。
【0063】
制御条件判定部12bが、アラーム2の報知は停止していないと判定した場合(ステップS114:No)、ステップS115に進む。ステップS115において、制御条件判定部12bは、アラーム2の報知を停止させるか否かを判定する。作業超過時間が発生した場合、アラーム2が報知されていると、それに気をとられて作業者に無用の緊張を強いる場合が考えられる。したがって、本実施形態では、報知停止スイッチ8を設け、これを作業者が操作することにより、アラーム2の報知を停止させるように印刷機制御装置10が構成される。これによって、作業者が不要と判断した場合には、アラーム2の報知を停止できるので、無用の緊張を抑制して、作業効率の低下が抑制される。なお、アラーム1の報知を停止できるようにしてもよい。
【0064】
なお、本実施形態では、現在進行中の印刷機1の作業とは異なる作業が開始した場合に、報知手段による作業超過情報、すなわちアラーム2の報知を停止させてもよい。これは、新たな作業が始まった後もアラーム2が報知されていると、作業の邪魔になるおそれがあるからである。現在進行中の印刷機1の作業とは異なる作業が開始した場合にアラーム2の報知を停止させることによって、新たな作業が開始された後はアラーム2の報知が停止されるので、新たな作業の邪魔になるおそれが低減される。ここで、信号取得部12aが、新たな作業についての電気信号を取得した場合に、現在進行中の印刷機1の作業とは異なる作業が開始したと判定される。
【0065】
制御条件判定部12bは、例えば、報知停止スイッチ8の操作があった場合、又は現在進行中の作業とは異なる作業が開始した場合には、アラーム2の報知を停止させると判断する(ステップS115:Yes)。この場合、ステップS116に進み、報知制御部12fは、アラーム2の報知を停止する。そして、ステップS110に戻り、現在進行中の作業が終了するまで、ステップS110、ステップS114が繰り返される。制御条件判定部12bは、例えば、報知停止スイッチ8の操作がない場合には、アラーム2の報知を停止させないと判断する(ステップS115:No)。この場合、報知制御部12fは、アラーム2の報知を継続させ、ステップS110、ステップS114、ステップS115が繰り返される。次に、図4を用いて、印刷準備全体に対する作業時間の報知方法を説明する。
【0066】
ステップS201において、印刷機制御装置10の制御条件判定部12bは、印刷機1の印刷準備に入ったか否かを判定する。印刷準備に入ったか否かは、その日の最初に印刷機1の電源をONにした場合は、印刷機1の電源が投入されたときに印刷準備に入ったと判定される。本刷りが終了した後、次のジョブがある場合には、次のジョブが開始されたときに印刷準備に入ったと判定される。また、その日の2回目以降のジョブである場合、そのジョブが開始されたときに印刷準備に入ったと判定される。さらに、その日における最後のジョブの場合、本刷りが終了したときに、印刷準備に入ったと判定される。印刷機1の電源ONがONであること、ジョブの最中であることは、印刷機1の電気信号から一意に決定されるので、信号取得部12aが取得した印刷機1の電気信号に基づき、制御条件判定部12bが印刷準備に入ったか否かを判定する。
【0067】
印刷準備に入っていないと制御条件判定部12bが判定した場合(ステップS201:No)、ステップS202へ進む。ステップS202では、上述した、印刷準備におけるそれぞれの印刷機1の作業に対する作業時間の報知へ移行する。印刷準備に入ったと制御条件判定部12bが判定した場合(ステップS201:Yes)、ステップS203へ進む。ステップS203において、作業時間計数部12eは、印刷準備カウントダウンを開始する。すなわち、作業時間計数部12eは、ステップS201で印刷準備に入ったと判定されたときからの経過時間を計数する。
【0068】
次に、ステップS204において、制御条件判定部12bは、印刷準備報知開始時間TcPまでに印刷準備が終了したか否かを判定する。すなわち、印刷準備において実行される印刷機1の作業が、すべて印刷準備報知開始時間TcPまでに終了したか否かが判定される。ここで、印刷準備報知開始時間TcPは、印刷機1の準備すべてに要した時間(印刷準備所要時間)Tpが、最大印刷準備時間TmaxPに到達するまでの時間(以下、印刷準備残り時間という)についての情報についての報知を開始するか否かを判定するための閾値である。また、最大印刷準備時間TmaxPは、印刷準備に要する時間、すなわち、印刷準備中に実行されるすべての印刷機1の作業に要する時間に対して許容される最大の時間である。すなわち、本実施形態では、印刷準備が開始してから印刷準備報知開始時間TcPが経過すると、報知機器による第3の報知が開始される。これによって、作業者は、最大印刷準備時間TmaxPが迫っていることを知ることができる。印刷準備残り時間についての情報は、印刷準備残り時間が少なくなっていることや、印刷準備残り時間がどの程度であるかということを含む。前者については、例えば、報知機器による報知(スピーカ7による警告音、警告灯5の点灯、印刷機照明6a、6b、6c、6dの点滅)があり、後者については、例えば、スピーカ7の音声による残り時間の読み上げ、ディスプレイ14Dへの残り時間の表示等がある。
【0069】
最大印刷準備時間TmaxP及び印刷準備報知開始時間TcPは、印刷準備が印刷機1への電源投入から開始される場合(印刷準備1)と、ジョブの開始される場合(印刷準備2)とでそれぞれ設定される。例えば、図3のデータテーブル60に示すように、印刷準備1に対してはTmaxP1、TcP1、印刷準備2に対してはTmaxP2、TcP2というように、それぞれの作業に対して個別に設定される。ここで、TmaxP、TcPの後に付される数字は、それぞれの作業に対するものであることを示す識別記号であって、説明の便宜上付したものである。
【0070】
最大印刷準備時間TmaxP及び印刷準備報知開始時間TcPは、上述した最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcと同様に、作業者の入力により変更でき、また、印刷機1の作業者の属性により変更できる。この理由及び変更する方法及び作用、効果は、最大作業時間Tmax及び報知開始時間Tcを変更できるようにすることの理由及び方法及び作用、効果と同様なので、説明を省略する。制御条件判定部12bが、印刷準備報知開始時間TcPまでに印刷準備は終了したと判定した場合(ステップS204:Yes)、ステップS211において、作業時間計数部12eは印刷準備カウントダウンを停止した上で、本実施形態に係る作業時間の報知方法は終了する。制御条件判定部12bが、印刷準備報知開始時間TcPまでに印刷準備は終了していないと判定した場合(ステップS204:No)、ステップS205へ進む。
【0071】
ステップS205において、報知制御部12fは、アラーム3を報知する(第3の報知)。アラーム3には、上述した通り、報知手段を構成する報知機器が用いられる。これによって、作業者は、印刷準備残り時間が少なくなっていることを把握でき、また、印刷準備残り時間を読み上げたりディスプレイ14Dに表示させたりすれば、作業者は、印刷準備残り時間がどの程度であるかを作業者は把握できる。なお、報知の態様は上述した通りである。
【0072】
ここで、印刷準備における個々の作業に、最大作業時間Tmaxを超過するものがあったとしても、印刷準備全体として最大印刷準備時間TmaxPを超過しなければよい。このため、本実施形態では、最大印刷準備時間TmaxPを超過するおそれがある場合、すなわち、印刷準備に要した時間が印刷準備報知開始時間TcPを超えた場合には、これを優先して報知し、作業者に認識させる。したがって、本実施形態では、上述したアラーム1とアラーム3との競合、又は上述したアラーム2とアラーム3との競合が発生した場合、いずれもアラーム3を優先させる。これによって、作業者は、最大印刷準備時間TmaxPを超過するおそれを確実に認識できる。なお、アラーム3は、アラーム1及びアラーム2とは異なる態様で報知させることが好ましい。これによって、作業者は、最大印刷準備時間TmaxPを超過するおそれをより確実に認識できる。
【0073】
報知制御部12fがアラーム3を報知したら、ステップS206へ進む。ステップS206において、制御条件判定部12bは、最大印刷準備時間TmaxPまでに印刷準備が終了したか否かを判定する。制御条件判定部12bが、最大印刷準備時間TmaxPまでに印刷準備は終了したと判定した場合(ステップS206:Yes)、ステップS207へ進む。ステップS207において、報知制御部12fはアラーム3を停止させ、ステップS211において作業カウントダウンを停止させて、本実施形態に係る作業時間の報知方法は終了する。制御条件判定部12bが、最大印刷準備時間TmaxPまでに印刷準備は終了していないと判定した場合(ステップS206:No)、ステップS208へ進む。
【0074】
ステップS208において、報知制御部12fは、アラーム4を報知する(第4の報知)。アラーム4は、作業時間計数部12eが計数した、印刷準備に要した時間が、最大印刷準備時間TmaxPを超えたことについての印刷準備超過情報を報知するものである。このため、アラーム4は、アラーム3とは異なる態様で報知されることが好ましい。これによって、作業者は、印刷準備に要した時間が最大印刷準備時間TmaxPを超えたことを把握しやすくなるからである。例えば、アラーム3とアラーム4とを異なる態様で報知することについては、上述したアラーム1とアラーム2とを異なる態様で報知することと同様なので、説明を省略する。
【0075】
なお、アラーム4においては、印刷準備超過情報として、印刷準備が最大印刷準備時間TmaxPを超過した時間(以下、印刷準備超過時間という)を報知してもよい。具体的には、報知制御部12fが、印刷準備超過時間をディスプレイ14Dに表示させたり、印刷準備超過時間をスピーカ7から発音させたりする。これによって、作業者は、どの印刷準備が遅延しているかを知ることができる。
【0076】
アラーム4が報知されたら、ステップS209へ進む。ステップS209において、制御条件判定部12bは、印刷準備が完了したか否かを判定する。制御条件判定部12bが、印刷準備は完了したと判定した場合(ステップS209:Yes)、ステップS210へ進む。ステップS210において、報知制御部12fはアラーム4を停止させ、ステップS211において印刷準備カウントダウンを停止させて、本実施形態に係る作業時間の報知方法、より具体的には、印刷準備全体に対する作業時間の報知方法が終了する。
【0077】
制御条件判定部12bが、印刷準備は終了していないと判定した場合(ステップS209:No)、ステップS212へ進む。ステップS212において、制御条件判定部12bは、アラーム4の報知が停止しているか否かを判定する。制御条件判定部12bが、アラーム4の報知は停止していると判定した場合(ステップS212:Yes)、印刷準備が終了するまで、アラーム4の報知が停止した状態でステップS209、ステップS212が繰り返される。
【0078】
制御条件判定部12bが、アラーム4の報知は停止していないと判定した場合(ステップS212:No)、ステップS213に進む。ステップS213において、制御条件判定部12bは、アラーム4の報知を停止させるか否かを判定する。印刷準備超過時間が発生した場合、アラーム4が報知されていると、それに気をとられて作業者に無用の緊張を強いる場合が考えられる。したがって、本実施形態では、上述した報知停止スイッチ8を作業者が操作することにより、アラーム4の報知を停止させることができるようにしてある。これによって、作業者が不要と判断した場合には、アラーム4の報知を停止できるので、無用の緊張を抑制して、作業効率の低下が抑制される。
【0079】
なお、本実施形態では、在進行中の印刷機1の作業とは異なる作業、より具体的には正紙印刷が開始した場合に、報知手段による作業超過情報、すなわちアラーム4の報知を停止させてもよい。これは、正紙印刷が始まった後もアラーム4が報知されていると、作業の邪魔になるおそれがあるからである。信号取得部12aが、正紙印刷についての電気信号を取得した場合に、正紙印刷が開始したと判定される。なお、正紙印刷を示す信号は、正紙印刷と一対一に対応する。
【0080】
制御条件判定部12bは、例えば、報知停止スイッチ8の操作があった場合又は正紙印刷が開始した場合には、アラーム4の報知を停止させると判断する(ステップS213:Yes)。この場合、ステップS214に進み、報知制御部12fは、アラーム4の報知を停止する。そして、ステップS208に戻り、現在進行中の作業が終了するまで、ステップS208、ステップS212が繰り返される。制御条件判定部12bは、例えば、報知停止スイッチ8の操作がない場合には、アラーム4の報知を停止させないと判断する(ステップS213:No)。この場合、報知制御部12fは、アラーム2の報知を継続させ、ステップS208、ステップS212、ステップS213が繰り返される。
【0081】
なお、印刷準備全体に対する作業時間の報知方法においては、印刷準備におけるそれぞれの印刷機1の作業に対する報知方法において得られた、それぞれの作業に要した時間を積算して、印刷準備全体に要した時間を求めてもよい。この場合、作業時間計数部12eは、印刷準備における印刷機1の作業に要した時間を記憶部13に格納し、新たに取得した作業時間を、既に取得した作業時間を記憶部13から読み出して加算し、記憶部13に格納する。これによって、作業時間計数部12eは、印刷準備全体に要した時間を求める。なお、この手法を用いる場合、印刷機1の電源投入から最初の作業が発生するまでの時間や、ジョブの開始から最初の作業が発生するまでの時間も計数し、印刷準備の時間に加える。
【0082】
図5は、作業時間報告の一例を示す模式図である。本実施形態では、集計部12jは、印刷機1の作業に要した時間を、作業の種類毎に集計して、例えば、図5に示す作業時間報告61を作成する。作業時間計数部12eは、印刷準備における印刷機1のそれぞれの作業に要した時間(作業時間)や、印刷準備に要した時間(印刷準備時間)を計数するので、これらを用いて、例えば、図5に示すような作業時間報告61が作成できる。作業時間報告61を作成するにあたっては、作業時間計数部12eは、計数した作業時間及び印刷準備時間を、印刷準備におけるそれぞれの作業及び印刷準備と対応付けて、記憶部13に割り当てられた所定の保存領域に格納しておく。作業時間報告61を作成する場合には、集計部12jは、記憶部13から作業時間及び印刷準備時間を読み出す。そして、集計部12jは、印刷準備中に実行されるそれぞれの作業の種類及び印刷準備毎に割り当てられた作業時間報告61の所定の領域に、読み出した作業時間及び印刷準備期間を記述することで、作業時間報告61を作成する。
【0083】
図5に示すように、作業時間報告61には、例えば、印刷の日時、印刷準備におけるそれぞれの作業及び全印刷準備、それぞれの所要時間(それぞれの作業に要した時間及び全印刷準備に要した時間)、それぞれの最大値(最大作業時間Tmax及び最大印刷準備時間TmaxP)、判断が記述される。例えば、インキ替えの最大作業時間は10分であるところ、所要時間は20分16秒かかっているので、インキ替えについては作業超過、すなわちNGという判断がなされる。これは、集計部12jが、実際の所要時間Tと、最大作業時間Tmax又は最大印刷準備時間TmaxPとを比較して、T>Tmax又はT>TmaxPであればNGと判断する。なお、T≦Tmax又はT≦TmaxPであればOKと判断される。
【0084】
図5に示す作業時間報告61では、それぞれの印刷機1の作業について、インキ替えがNG、版交換及び見当合わせがOKである。そして、作業時間報告61に示す例では、全印刷準備に要した所要時間は、最大印刷準備時間TmaxPよりも小さいので、個別の作業にNGはあるものの、印刷準備全体としてはOKという判断になる。このように、集計部12jによって作業時間報告61が作成されるので、どの作業にどの程度の時間を要しているかが把握でき、改善すべき作業や印刷環境等を抽出しやすくなる。
【0085】
なお、印刷準備中に実行させるそれぞれの作業の種類及び印刷準備毎に、所要時間を記述できる領域を有する作業時間報告61を予め作成して記憶部13の所定の保存格納しておく。そして、印刷準備中に印刷機1の作業が実行されると、作業時間計数部12eは、前記作業に要した時間を計数するので、前記作業が終了したら、前記作業に要した時間が分かる。したがって、前記作業が終了したら、作業時間計数部12eは、計数した時間を、記憶部13に格納されている作業時間報告61の前記作業に対応する領域に記述する。このようにしても、作業時間報告61を作成できる。なお、この場合には、作業時間計数部12eが集計手段となる。また、上述したように、印刷準備におけるそれぞれの印刷機1の作業に対する報知方法において得られた、それぞれの作業に要した時間を積算して、印刷準備全体に要した時間(全印刷準備の所要時間)を求めてもよい。これによって、それぞれの印刷機1の作業に要した時間を利用して印刷準備全体に要した時間を得ることができるので、別個に印刷準備全体に要した時間を求める必要がなくなる。次に、ステップS104において、印刷機1の作業を特定する方法を説明する。
【0086】
図6は、本実施形態に係る作業特定方法の手順を示すフローチャートである。図7は、本実施形態に係る作業特定方法において、一意に決定できる印刷機の作業と一意に決定できない印刷機の作業とを示す図表である。図8は、本実施形態に係る作業特定方法のタイミングチャートの一例を示す説明図である。図9は、本実施形態に係る作業特定方法において、印刷機の作業の候補をディスプレイに表示させる作業を示す模式図である。
【0087】
本実施形態に係る作業特定方法を実行するにあたり、ステップS301において、図1に示す印刷機制御装置10の処理部12が備える信号取得部12aは、印刷機1のセンサ類や印刷機1の制御対象に対する制御信号等から、印刷機1の作業に関する電気信号(以下印刷機状態電気信号という)を取得する。印刷機状態電気信号は、印刷機制御装置10が生成する印刷機1に対する制御信号や、印刷機1のセンサ類(例えば、ドアの開閉センサや可動部の動作を制限するリミットセンサ等)が検出する信号等である。
【0088】
ステップS302において、図1に示す印刷機制御装置10の処理部12が備える制御条件判定部12bは、ステップS301において取得された印刷機状態電気信号に対応する印刷機1の作業が一意に決定されるか否かを判定する。一意に決定されるとは、取得された印刷機状態電気信号と、これに対応する印刷機1の作業とは一対一に対応していることをいい、印刷機状態電気信号に対応する印刷機1の作業が一意に、すなわち単一に決定されると、他の作業はすべて排除される。
【0089】
したがって、一意に決定されないとは、取得された印刷機状態電気信号と、これに対応する印刷機1の作業とが一対一に対応していない、すなわち、取得された印刷機状態電気信号に対応する印刷機1の作業は複数存在することをいう。この場合、印刷機状態電気信号に対応する印刷機1の作業は一意に、すなわち単一に決定されないので、一つの印刷機状態電気信号に対して存在する印刷機1の作業の候補が複数存在することになる。
【0090】
図7に示すように、例えば、印刷機1で実行される作業が正紙印刷の本刷り、版交換(半自動版交換及び全自動版交換)、洗浄(自動ブランケット洗浄、自動インキ洗浄)、万力による見当合わせである場合、印刷機状態電気信号に対応する印刷機1の作業は、これらの作業のうちいずれかに特定される。例えば、印刷機1が備える正紙カウンタの出力がONである場合、印刷機1で実行される作業は正紙印刷であると一意に特定される。また、版交換中を示す信号がONである場合、印刷機1で実行される作業は版交換であると一意に特定される。また、ブランケット洗浄中を示す信号がONである場合、又はインキ洗浄(インキの経路の洗浄)を示す信号がONである場合、印刷機1で実行される作業はブランケット洗浄、又はインキ洗浄であると一意に特定される。
【0091】
また、図8に示すタイミングチャートでは、始業準備J、見当・色合わせ作業及び印刷E、正紙印刷A及び万力による見当合わせFが、それぞれ、印刷機1の電源ONを示す印刷機状態電気信号ES_aのON信号、印刷中を示す印刷機状態電気信号ES_eのON信号、正紙カウンタのONを示す印刷機状態電気信号ES_fのON信号及び万力見当合わせを示す印刷機状態電気信号ES_iのON信号と一対一で対応する印刷機1の作業である。例えば、ステップS301において信号取得部12aが正紙カウンタのONを示す印刷機状態電気信号ES_fのON信号を取得した場合、制御条件判定部12bは、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業は、正紙印刷Aであると特定する。また、ステップS301において信号取得部12aが万力見当合わせを示す印刷機状態電気信号ES_iのON信号を取得した場合、制御条件判定部12bは、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業は、万力による見当合わせFであると特定する。
【0092】
ステップS302でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部12bが、印刷機状態電気信号に対応する印刷機1の作業は一意に決定されると判定した場合、ステップS303へ進む。すなわち、取得された印刷機状態電気信号に対応する印刷機1の作業は一種類のみであると制御条件判定部12bが判定した場合、ステップS303へ進む。ステップS303において、図1に示す印刷機制御装置10の処理部12が備える作業特定部12cは、ステップS301で取得した印刷機状態電気信号に対応する印刷機1の作業を、印刷機状態電気信号を取得したときにおける印刷機1の作業であると特定する。例えば、ステップS301で取得された印刷機状態電気信号が、正紙カウンタのON信号である場合、作業特定部12cは、正紙カウンタのON信号が取得されたときに印刷機1で実行された作業は正紙印刷であると一意に特定する。なお、特定された印刷機1の作業は、必要に応じて印刷機制御装置10の記憶部13へ格納される(以下同様)。次に、ステップS302でNoと判定された場合について説明する。
【0093】
ステップS302でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部12bが、印刷機状態電気信号に対応する印刷機1の作業は一意に決定されないと判定した場合、ステップS304へ進む。すなわち、取得された印刷機状態電気信号に対応する印刷機1の作業は、複数存在すると制御条件判定部12bが判定した場合、ステップS304へ進む。この時点では、作業特定部12cは、印刷機1の作業を一意に決定できないので、ステップS304において、作業特定部12cは、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときの印刷機1の作業を、「その他」に分類して、記憶部13へ一時的に格納する。
【0094】
次に、ステップS305に進み、印刷機制御装置10の処理部12が備える印刷機作業候補提示部12gは、ステップS301で印刷機状態電気信号を取得したときにおける印刷機1の作業の候補(以下作業候補という)を提示し、コントロールパネル14のディスプレイ14Dに複数表示する。本実施形態では、すべての作業候補がディスプレイ14Dに表示される。なお、ディスプレイ14Dに表示させる作業候補は単数であってもよい。
【0095】
この場合、図9に示すように、ディスプレイ14Dの表示領域DA1には、印刷の準備に分類される作業項目が作業候補SB1〜SB4として表示され、表示領域DA2には、印刷機1のメンテナンスに分類される作業項目が作業候補SB5〜SB11として表示される。ディスプレイ14Dの表示領域DA3には、本実施形態に係る作業特定方法によって作業特定部12cが推定可能な作業項目が作業候補SB15〜SB28として表示される。ディスプレイ14Dの表示領域DA4には、印刷の準備、メンテナンス、推定可能な作業項目(すなわち作業候補)のいずれにも分類されない作業項目が作業候補SB12〜SB14、SB0として表示される。なお、表示領域DA4に表示される作業候補SB0は、「その他」であり、作業候補SB1〜SB28のいずれにも分類されない印刷機1の作業である。
【0096】
作業候補がディスプレイ14Dに表示されたら、ステップS306において、制御条件判定部12bは、作業者の入力、すなわち、作業者がディスプレイ14Dに表示された複数の作業候補の中から印刷機1の作業として一つを選択したか否かを判定する。ステップS306でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部12bが作業者の入力があったと判定した場合、ステップS307へ進む。
【0097】
ステップS307において、作業特定部12cは、入力された作業候補を、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業として特定する。次に、ステップS306でNoと判定された場合を説明する。ステップS306でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部12bが作業者の入力はないと判定した場合、ステップS308に進む。ステップS308において、信号取得部12aは、印刷機1のセンサ類や印刷機1の制御対象に対する制御信号等から、印刷機状態電気信号を取得する。そして、作業特定部12cは、ステップS301及びステップS308で取得した印刷機状態電気信号に基づいて、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業を推定する。これは、例えば、次のようにして推定する。
【0098】
まず、複数の印刷機状態電気信号の組み合わせと、この組み合わせに対応する印刷機1の作業との対応関係を予め作業推定用データテーブルに記述して記憶部13へ格納しておく。そして、作業特定部12cが前記作業推定用データテーブルを参照して、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業を推定する。すなわち、作業特定部12cは、前記作業推定用データテーブルから、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける、複数の印刷機状態電気信号の組み合わせに対応する印刷機1の作業を取得し、これを推定された印刷機1の作業とする。
【0099】
作業特定部12cが前記作業を推定できる場合、作業特定部12cは、作業推定可能フラグを0から1にするとともに、推定した印刷機1の作業を、記憶部13へ一時的に格納しておく。作業特定部12cが前記作業を推定できない場合、作業特定部12cは、作業推定可能フラグを0にするとともに、印刷機1の作業を、「その他」とする。
【0100】
例えば、図7の「一意に決定不可」の項目に示すように、印刷機停止を示す印刷機状態電気信号、及び版交換開始の印刷機状態電気信号がこの順序で取得された場合には、印刷機1の作業(印刷機作業)が版待ちであると推定される。同様に、印刷中を示す印刷機状態電気信号、及び印刷機停止を示す印刷機状態電気信号、及びある印刷ユニットが安全モードを示す印刷機状態電気信号、及び版ブランケットカバー開を示す印刷機状態電気信号、及び寸胴・逆寸を示す印刷機状態電気信号、及び版ブランケットカバー閉を示す印刷機状態電気信号、及び運転モードに復帰を示す印刷機状態電気信号がこの順序で取得された場合には、印刷機1の作業は版手入れ(ゴミ取り)であると推定される。図7に示す手動圧胴洗浄、休憩、湿しメンテナンス、ブランケット洗浄装置メンテナンス、給油についても同様である。
【0101】
図8に示すタイミングチャートでは、ステップS301において信号取得部12aがジョブ中を示す印刷機状態電気信号ES_bのON信号を取得した場合、印刷機1の作業は一意に決定できない。したがって、この場合には、作業特定部12cは、印刷機1の作業として、その他Mを記憶部13に格納する。そして、ステップS308で信号取得部12aが、版交換を示す印刷機状態電気信号ES_cのON信号を取得した場合、作業特定部12cは、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業は、版待ちGであると推定する(図8の(A))。
【0102】
また、ステップS301において信号取得部12aが印刷の終了を示す印刷機状態電気信号ES_eのOFF信号を取得した場合、印刷機1の作業は一意に決定できない。この場合には、作業特定部12cは、印刷機1の作業として、その他Mを記憶部13に格納する。そして、ステップS308で信号取得部12aが、印刷中を示す印刷機状態電気信号ES_eのON信号を取得した場合、作業特定部12cは、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業は、見当・色合わせ作業Eであると推定する(図8の(B))。
【0103】
次に、ステップS309において、制御条件判定部12bは、取得した複数の印刷機状態電気信号の組み合わせから、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業が推定できるか否かを判定する。例えば、制御条件判定部12bは、上述した作業推定可能フラグが1であった場合に、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業を推定できると判定し、作業推定可能フラグが0である場合には、印刷機1の作業は推定できないと判定する。
【0104】
ステップS309においてYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部12bが、取得された複数の印刷機状態電気信号の組み合わせから、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業が推定できると判定した場合、ステップS310へ進む。ステップS310において、印刷機作業候補提示部12gは、ステップS301で印刷機状態電気信号を取得したときにおける作業候補を、コントロールパネル14のディスプレイ14Dに複数表示する。本実施形態では、すべての作業候補がディスプレイ14Dに表示される。
【0105】
このとき、印刷機作業候補表示部12hは、複数の印刷機状態電気信号の組み合わせに基づいて作業特定部12cが推定した、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業を、他の候補とは異なる態様でディスプレイ14Dに表示させる。ステップS310において、他の候補とは異なる態様で表示されるものは、例えば、図7の「作業者の選択によるもの」における印刷機作業のうち、版待ち、版手入れ、手動圧胴洗浄、休憩、湿しメンテナンス、ブランケット洗浄装置メンテナンス、給油のうち、複数の印刷機状態電気信号の組み合わせに基づいて作業特定部12cが推定したものである。
【0106】
複数の印刷機状態電気信号の組み合わせに基づいて推定された印刷機の作業を、他の候補とは異なる態様で表示させる場合、例えば、状態候補SB15が作業特定部12cによって推定されたものである場合、印刷機作業候補表示部12hは、作業候補SB15を他の作業候補SB0〜SB14、SB16〜SB28とは異なる色で表示したり、作業候補SB15のみを点滅させたりする。これによって、作業者が選択しやすいように誘導できる。
【0107】
作業候補がディスプレイ14Dに表示されたら、ステップS311において、制御条件判定部12bは、作業者の入力、すなわち、作業者がディスプレイ14Dに表示された複数の作業候補の中から印刷機1の作業として一つを選択したか否かを判定する。ステップS311でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部12bが作業者の入力があったと判定した場合、ステップS307へ進む。ステップS307以後の手順は上述した通りなので、説明を省略する。
【0108】
ステップS311でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部12bが作業者の入力はないと判定した場合、ステップS312へ進む。ステップS312において、作業特定部12cは、ステップS308で推定した印刷機1の作業を、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業とする。ステップS308で推定された印刷機1の作業は、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業として確実なものであるので、作業者の入力がない場合には、ステップS308で推定された印刷機1の作業を、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業とするのが妥当だからである。
【0109】
次に、ステップS309でNoと判定された場合を説明する。ステップS309においてNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部12bが、取得された複数の印刷機状態電気信号の組み合わせから、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業が推定できないと判定した場合、ステップS313へ進む。
【0110】
ステップS313において、制御条件判定部12bは、印刷機1の現在のジョブが終了したか否かを判定する。ステップS313でYesと判定された場合、すなわち制御条件判定部12bが印刷機1の現在のジョブが終了したと判定した場合、ステップS314へ進む。例えば、上記ステップS309で信号取得部12aがジョブの終了を示す印刷機状態電気信号ES_bのOFF信号を取得した場合、制御条件判定部12bは、印刷機1の現在のジョブが終了したと判定する。この場合、ステップS301で印刷機状態電気信号を取得したときにおける印刷機1の作業は一意に決定できない。このため、ステップS314へ進み、印刷機作業候補提示部12gは、ステップS301で印刷機状態電気信号を取得したときにおける作業候補を、コントロールパネル14のディスプレイ14Dに複数表示する。次に、ステップS315へ進み、制御条件判定部12bは、作業者の入力、すなわち、作業者がディスプレイ14Dに表示された複数の作業候補の中から印刷機1の作業として一つを選択したか否かを判定する。
【0111】
ステップS315でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部12bが作業者の入力があったと判定した場合、ステップS316へ進む。ステップS316において、作業特定部12cは、入力された作業候補を、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業として特定する。
【0112】
図8に示すタイミングチャートでは、信号取得部12aがジョブの終了を示す印刷機状態電気信号ES_bのOFF信号を取得した場合、作業特定部12cは、印刷機1の作業として、その他Mを記憶部13に格納する。ステップS316で、信号取得部12aが作業者の入力Lを取得した場合、作業特定部12cは、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業は、作業者がディスプレイ14Dに表示された作業候補から選択し、かつ入力した作業候補を、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業として特定する(図8の(C))。
【0113】
ステップS315でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部12bが作業者の入力はないと判定した場合、ステップS317へ進む。ステップS317において、作業特定部12cは、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業をその他に特定し、記憶部13へ格納する。取得された複数の印刷機状態電気信号の組み合わせからは、ステップS301で印刷機状態電気信号が取得されたときにおける印刷機1の作業が推定できず(ステップS309:No)、かつ複数の作業候補の中から印刷機1の作業が選択されず(ステップS315:No)、かつジョブが終了した場合、このジョブ中においては印刷機1の作業を特定できないからである。次に、ステップS313でNoと判定された場合を説明する。ステップS313でNoと判定された場合、すなわち制御条件判定部12bが印刷機1の現在のジョブが終了したと判定した場合、ステップS308〜ステップS317を繰り返す。本実施形態では、上述した手順により、印刷機1の作業が特定される。
【0114】
このように、本実施形態では、印刷機状態電気信号や作業者によっては、印刷機の状態が一意に決定されない場合には、複数の印刷機状態電気信号の組み合わせに基づいて、印刷機の作業を推定する。これによって、不明な印刷機の状態を低減できるので、所定の作業に対して適切な報知が実現できる。また、印刷機の作業は、コンピュータによって自動的に推定されるので、推定に要する手間を低減できる。
【0115】
以上、本実施形態では、印刷機械や紙工機械等の産業機械において、産業機械の所定の作業に要した時間が、予め設定された当該所定の作業に対して許容される最大作業時間に到達するまでの時間に応じて、現在進行中における作業に要した時間が最大作業時間に到達するまでの時間についての情報を報知する。これによって、例えば、産業機械が印刷機である場合には、作業者や管理者は、作業の進捗状況を知ることができる。そして、本実施形態によれば、印刷準備(正紙印刷に入る前)やある特定の作業で、通常よりも作業に時間を要しているかを、作業者や管理者の視覚、あるいは聴覚に訴えることができる。その結果、作業者や管理者は、作業の進捗状況を把握しやすくなる。このように、本実施形態では、産業機械による作業の進捗に遅れがあるのか、標準的であるのかを作業者や管理者が知ることができる。また、報知により、作業者は、作業速度の目安を知ることができるので、作業の段取りを再考する等、作業の効率化を図ることができる。
【0116】
また、本実施形態では、作業時間報告が作成されるので、管理者は、時間を要した作業を把握できる。その結果、作業の段取りや作業に必要な物の配置等を再考して、作業の効率化を図ることができる。
【0117】
本実施形態に係る作業時間の報知装置及び方法は、産業機械全般に対して適用できるが、特に、印刷機や紙工機械のように、本作業(印刷機では正紙印刷、紙工機械ではフレキソフォルダグルアやフレキソロータリーダイカッター等における製函作業やコルゲートマシンにおける段ボールシートの製造作業)の前に比較的長い準備を要する産業機械に好ましい。このような産業機械に本実施形態に係る作業時間の報知装置及び方法を適用すれば、準備に要する期間の見直しを図ることができ、作業の効率化という効果が得られる。
【0118】
また、本実施形態に係る作業時間の報知装置及び方法は、特に、作業者の熟練度によって作業時間が変わるような産業機械、例えば、印刷機械や紙工機械に対して好ましい。このような産業機械に対して本実施形態に係る作業時間の報知装置及び方法を適用すれば、作業者は、作業速度の目安から作業の段取りを再考する等、作業の効率化を図り、その結果、生産性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
以上のように、本発明に係る作業時間の報知装置は、産業機械による作業の進捗状況を把握することに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本実施形態に係る印刷機の状態特定装置を含む印刷システムを示す模式図である。
【図2】本実施形態に係る作業時間の報知方法の手順を湿すフローチャートである。
【図3】本実施形態に係る作業時間の報知方法に用いる最大作業時間や報知開始時間が記述されるデータテーブルの一例を示す模式図である。
【図4】本実施形態に係る作業時間の報知方法の手順を示すフローチャートである。
【図5】作業時間報告の一例を示す模式図である。
【図6】本実施形態に係る作業特定方法の手順を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態に係る作業特定方法において、一意に決定できる印刷機の作業と一意に決定できない印刷機の作業とを示す図表である。
【図8】本実施形態に係る作業特定方法のタイミングチャートの一例を示す説明図である。
【図9】本実施形態に係る作業特定方法において、印刷機の作業の候補をディスプレイに表示させる作業を示す模式図である。
【符号の説明】
【0121】
1 印刷機
2 給紙部
3 印刷部
3a 印刷ユニット
4 排紙部
5 警告灯
6a 印刷機照明
7 スピーカ
8 報知停止スイッチ
10 印刷機制御装置
11 入出力部
12 処理部
12a 信号取得部
12b 制御条件判定部
12c 作業特定部
12e 作業時間計数部
12f 報知制御部
12g 印刷機作業候補提示部
12h 印刷機作業候補表示部
12i 印刷機動作制御部
12j 集計部
13 記憶部
14 コントロールパネル
14C 入力手段
14D ディスプレイ
15 プリンタ
60 データテーブル
61 作業時間報告
100 印刷システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械の作業に要した時間を計数する作業時間計数手段と、
当該作業時間計数手段が計数した前記産業機械の所定の作業に要した時間が、当該所定の作業に対して許容される最大作業時間に到達するまでの時間についての情報を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする作業時間の報知装置。
【請求項2】
前記報知手段は、
前記作業時間計数手段が計数した前記所定の作業に要した時間が、前記最大作業時間を超えたことについての作業超過情報を報知することを特徴とする請求項1に記載の作業時間の報知装置。
【請求項3】
前記報知手段による前記作業超過情報の報知を停止させる作業超過報知停止手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の作業時間の報知装置。
【請求項4】
前記作業超過報知停止手段は、
前記所定の作業とは異なる作業が開始した場合に、前記報知手段による前記作業超過情報の報知を停止させることを特徴とする請求項3に記載の作業時間の報知装置。
【請求項5】
前記産業機械の作業に要した時間を作業の種類毎に集計する集計手段を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の作業時間の報知装置。
【請求項6】
前記集計手段は、
前記産業機械の作業に要した時間を積算して集計することを特徴とする請求項5に記載の作業時間の報知装置。
【請求項7】
前記報知手段は、照明、警告音、表示手段への表示のいずれかにより前記報知を実行することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の作業時間の報知装置。
【請求項8】
前記報知手段は、前記産業機械の作業者の属性を取得し、取得された前記属性に基づいて、前記最大作業時間を変更することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の作業時間の報知装置。
【請求項9】
前記産業機械の状態に関する少なくとも一つの電気信号に基づいて前記所定の作業を推定する作業推定手段を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の作業時間の報知装置。
【請求項10】
前記作業推定手段は、
前記電気信号に対応する前記産業機械の状態が一意に決定されない場合、複数の前記電気信号の組み合わせに基づいて、前記所定の作業を推定することを特徴とする請求項9に記載の作業時間の報知装置。
【請求項11】
前記電気信号に対応する前記所定の作業が一意に決定されない場合、前記所定の作業の候補を複数提示する作業候補提示手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の作業時間の報知装置。
【請求項12】
前記作業推定手段は、
複数提示された前記候補から選択された候補を、前記所定の作業とすることを特徴とする請求項11に記載の作業時間の報知装置。
【請求項13】
提示された前記候補の中から前記所定の作業が選択されない場合、前記作業推定手段は、複数の前記電気信号の組み合わせに基づいて推定された作業を、前記所定の作業とすることを特徴とする請求項12に記載の作業時間の報知装置。
【請求項14】
前記産業機械は、印刷機や紙工機械であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の作業時間の報知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−120273(P2010−120273A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296151(P2008−296151)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】