説明

作業機のキャブ昇降装置

【課題】上リンク及び下リンクを含む昇降動用平行リンク機構の全体の支持強度を増大させてキャブの揺れを抑止する。
【解決手段】上部旋回体24上に接続ブラケット41が前後動可能に支持されていると共に、該接続ブラケット41上に昇降動用平行リンク機構43及び昇降動用シリンダ55を介してキャブ32搭載用の架台50が昇降動可能に支持された作業機32のキャブ昇降装置において、昇降動用平行リンク機構43の上リンク44の中間部に補強ブラケット51の上端部を枢着連結すると共に、該補強ブラケット51の下端部を昇降動用平行リンク機構43の下リンク45の中間部に枢着連結する。更に、補強ブラケット51の中間部と接続ブラケット41との間に昇降動用シリンダ55を介設することにより、昇降動用平行リンク機構43全体の剛性が増大するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機のキャブ昇降装置に関するものであり、特に、平行リンク機構を介してキャブを昇降動可能に設けて成る作業機のキャブ昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設作業や港湾荷役作業等に使用される此種作業機は、下部走行体上に上部旋回体が旋回可能に搭載されていると共に、該上部旋回体の前部に前後動用平行リンク機構及び前後動用シリンダを介して接続ブラケットが前後方向に移動可能に設けられている。そして、図4に示すように、接続ブラケット1上には昇降動用平行リンク機構2を介してキャブ3搭載用の架台4が昇降動可能に設けられていると共に、昇降動用平行リンク機構2と接続ブラケット1との間に昇降動用シリンダ5が介設されている。
【0003】
而して、昇降動用シリンダ5及び前後動用シリンダを伸縮動作させると、昇降動用平行リンク機構2及び前後動用平行リンク機構(図示せず)を介してキャブ3が上下方向及び前後方向に移動する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−260952公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のキャブ昇降装置において、昇降動用平行リンク機構2は互いに対向する上リンク6及び下リンク11を備え、上リンク6の中間部に昇降動用シリンダ5の上端部がピン7を介して枢着連結され、且つ、昇降動用シリンダ5の下端部はピン8を介して接続ブラケット1に枢着連結されている。
【0005】
このため、昇降動用シリンダ5の上下両端側のピン7,8及び上リンク6の下端側ピン9の3点を結ぶことにより三角形が形成され、該三角形の構成部分は全体として高い剛性を有する。従って、キャブ3を支持する上リンク6の上端側ピン10の支持強度が増大するので、上端側ピン10によるキャブ3の支持力は十分確保される。
【0006】
一方、昇降動用平行リンク機構2の下リンク11には昇降動用シリンダ5の上端部が枢着連結されていないので、下リンク11の上端側ピン12の支持強度は増大しない。その結果、該上端側ピン12によるキャブ3の支持力は十分ではないので、キャブ3の昇降動作時に、キャブ3の支持安定性が低下して揺れ易いという問題があった。
【0007】
そこで、上リンク及び下リンクを含む昇降動用平行リンク機構の全体の支持強度を増大させてキャブの揺れを抑止するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、上部旋回体上に接続ブラケットが前後動可能に支持されていると共に、該接続ブラケット上に昇降動用平行リンク機構及び昇降動用シリンダを介してキャブ搭載用の架台が昇降動可能に支持された作業機のキャブ昇降装置において、前記昇降動用平行リンク機構の上リンクの中間部に補強ブラケットの上端部を枢着連結すると共に、該補強ブラケットの下端部を前記昇降動用平行リンク機構の下リンクの中間部に枢着連結し、更に、前記補強ブラケットの中間部と前記接続ブラケットとの間に前記昇降動用シリンダを介設することにより、前記昇降動用平行リンク機構の剛性が増大するように構成したことを特徴とする作業機
のキャブ昇降装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、昇降動用平行リンク機構の上リンクの中間部と下リンクの中間部とは補強ブラケットを介して枢着連結され、且つ、該補強ブラケットの中間部は昇降動用シリンダにより支持される。依って、上リンクの上端側枢着支点と下リンクの上端側枢着支点と補強ブラケットの上下両端側枢着支点との4点を結ぶことにより4角形が形成される。
【0010】
そして、前記4角形の構成部分には、キャブの自重による下方向の力が作用するが、該下方向の力は昇降動用シリンダにより受け止められるために、上リンク及び下リンクを含む昇降動用平行リンク機構全体の剛性が高くなる。その結果、キャブを支持する上リンク及び下リンク双方の上端側枢着支点の支持強度が増大する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、上リンクの上端側枢着支点のみならず下リンクの上端側枢着支点の支持強度も増大するので、上リンク及び下リンクによるキャブの支持力を十分確保できる。斯くして、キャブの昇降動作時における支持安定性が向上するため、従来例の如きキャブの揺れを確実に抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、上リンク及び下リンクを含む昇降動用平行リンク機構の全体の支持強度を増大させてキャブの揺れを抑止するという目的を達成するため、上部旋回体上に接続ブラケットが前後動可能に支持されていると共に、該接続ブラケット上に昇降動用平行リンク機構及び昇降動用シリンダを介してキャブ搭載用の架台が昇降動可能に支持された作業機のキャブ昇降装置において、前記昇降動用平行リンク機構の上リンクの中間部に補強ブラケットの上端部を枢着連結すると共に、該補強ブラケットの下端部を前記昇降動用平行リンク機構の下リンクの中間部に枢着連結し、更に、前記補強ブラケットの中間部と前記接続ブラケットとの間に前記昇降動用シリンダを介設することにより、前記昇降動用平行リンク機構の剛性が増大するように構成したことにより実現した。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図3に基づいて説明する。図1は本実施例に係る作業機としての油圧ショベル21を示す。同図に示すように、下部走行体22上には旋回機構23を介して上部旋回体24が旋回可能に搭載され、該上部旋回体24の前部一側部にブーム25が上下回動可能に連結されている。又、該ブーム25の先端部にア−ム26が上下回動可能に枢着されている。
【0014】
更に、ア−ム26の先端部にエンドアタッチメント(リフティングマグネット又はバケット)27が揺動可能に取り付けられている。尚、図中における符号28,29及び30は夫々ブーム25,ア−ム26及びエンドアタッチメント27を駆動するためのシリンダである。
【0015】
上部旋回体24の前部他側部にはキャブ32が平行リンク機構及びシリンダを介して前後方向及び上下方向に移動動可能に設けられている。次に、本実施例に係るキャブ昇降装置について詳述する。
【0016】
上部旋回体24の前部には支持ブラケット33が固設され、該支持ブラケット33上には第1平行リンク機構(前後動用平行リンク機構)34が上下回動可能に取り付けられている。第1平行リンク機構34は前後一対の前リンク35及び後リンク36を有し、前リンク35及び後リンク36は前後方向(図1における左右方向)に互いに平行に離間対向
している。
【0017】
前リンク35及び後リンク36の下端部は夫々下側のピン37及びピン38を介して支持ブラケット33に枢着されている。又、前リンク35及び後リンク36の上端部は夫々、上側のピン39及びピン40を介して前記接続ブラケット41に枢着されている。
【0018】
更に、接続ブラケット41と支持ブラケット33との間には第1シリンダ(前後動用シリンダ)42が介装されている。依って、第1シリンダ42が伸縮駆動すると、接続ブラケット41は第1平行リンク機構34を介して前後方向に回動する。
【0019】
更に、接続ブラケット41上には第2平行リンク機構(昇降動用平行リンク機構)43が上下回動可能に取り付けられている。第2平行リンク機構43は上下一対の上リンク44及び下リンク45を有し、上リンク44及び下リンク45は上下方向に互いに平行に離間対向している。
【0020】
上リンク44及び下リンク45の下端部は夫々下側のピン46及びピン47を介して接続ブラケット41に枢着されている。又、上リンク44及び下リンク45の上端部は夫々、上側のピン48及びピン49を介してキャブ32搭載用の架台50の後端部(上方屈曲端部)に枢着されている。
【0021】
図2に例示するように、上リンク44の中間部には補強ブラケット51の上端部がピン52を介して枢着されていると共に、補強ブラケット51の下端部はピン53を介して下リンク45の中間部に枢着されている。
【0022】
更に、補強ブラケット51の中間部にはピン54を介して第2シリンダ(昇降動用シリンダ)55の上端部が枢着され、第2シリンダ55の下端部はピン56を介して接続ブラケット41に枢着されている。依って、第2シリンダ55を伸縮駆動すると、架台50は第2平行リンク機構43を介して上下方向に回動する。
【0023】
上記の構成からなるキャブ昇降装置は、第2平行リンク機構43の上リンク44の中間部と下リンク45の中間部とは補強ブラケット51を介して枢着連結されている。又、補強ブラケット51の中間部と接続ブラケット41とは第2シリンダ55を介して枢着連結されている。
【0024】
依って、上リンク44の上端側ピン48と、下リンク45の上端側ピン及び補強ブラケット51の上下両端側ピン52,53の4つの点とを結ぶことにより、図3中の2点鎖線で例示するように4角形ABCD、より詳しくは、相互に対峙する一対の横辺及び一対の縦辺を有する平行4辺形が形成される。
【0025】
そして、前記平行4辺形ABCDの構成部分には、キャブ32の自重により下方向の力が接続ブラケット41に作用する。この場合、接続ブラケット41に作用する下方向の力は、接続ブラケット41を支持する第2シリンダ55により受け止められる。このため、平行4辺形ABCDを構成する上リンク44、下リンク45並びに補強ブラケット51には相互の連結力を強化する突っ張り力が発生する。
【0026】
従って、上リンク44及び下リンク45を含む第2平行リンク機構43全体の剛性が高くなり、その結果、上リンク44の上端側ピン48及び下リンク45の上端側ピン49の支持強度が著しく増大する。
【0027】
以上の如く本発明によると、上リンク44の上端側ピン48のみならず下リンク45の
上端側ピン49の支持強度も増大することにより、上リンク44及び下リンク45によるキャブ32の支持力が十分確保される。
【0028】
斯くして、前後一対の上端側ピン48,49によるキャブ32に対する支持安定性が向上するため、該キャブ32の昇降動作時における揺れを確実に抑止することができる。
【0029】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例を示し、キャブ昇降装置を搭載した作業機の側面図。
【図2】本発明に係るキャブ昇降装置の要部を示す拡大図。
【図3】図3のキャブ昇降装置の第2平行リンク機構の四角形部分の構造を例示する拡大説明図。
【図4】従来例に係るキャブ昇降装置の要部を示す側面図。
【符号の説明】
【0031】
21 油圧ショベル(作業機)
24 上部旋回体
32 キャブ
34 第1平行リンク機構(前後動用平行リンク機構)
41 接続ブラケット
42 第1シリンダ(前後動用シリンダ)
43 第2平行リンク機構(昇降動用平行リンク機構)
44 上リンク
45 下リンク
46〜49 ピン
50 架台
51 補強ブラケット
52〜54 ピン
55 第2シリンダ(昇降動用シリンダ)
56 ピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体上に接続ブラケットが前後動可能に支持されていると共に、該接続ブラケット上に昇降動用平行リンク機構及び昇降動用シリンダを介してキャブ搭載用の架台が昇降動可能に支持された作業機のキャブ昇降装置において、
前記昇降動用平行リンク機構の上リンクの中間部に補強ブラケットの上端部を枢着連結すると共に、該補強ブラケットの下端部を前記昇降動用平行リンク機構の下リンクの中間部に枢着連結し、更に、前記補強ブラケットの中間部と前記接続ブラケットとの間に前記昇降動用シリンダを介設することにより、前記昇降動用平行リンク機構の剛性が増大するように構成したことを特徴とする作業機のキャブ昇降装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−116690(P2010−116690A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289220(P2008−289220)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】