説明

作業機の表示システム及び作業車

【課題】複数の作業機を詳細に視認して不具合を確実に察知できる作業機の表示システムを提供する。
【解決手段】複数の作業機21,22と、作業機21,22のそれぞれを撮影する複数のカメラ31,32と、撮影された作業機21,22を表示する表示モニタ40と、を備える作業機の表示システムSである。
そして、作業機21,22を操作する操作手段51,52の操作者から見た配置に対応して表示モニタ40の画面を分割するとともに、分割された画面にそれぞれの作業機21,22を表示する表示処理手段61を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機の表示システム及び作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンなどの作業車には、運転室や操作室からオペレータが直接目視できない死角が存在しているため、死角を監視するためのカメラを設けることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の監視カメラの映像が選択的に表示されるように表示手段を制御する表示制御手段を備える建設機械のモニタ装置が開示されている。この構成によれば、機体に搭載された複数の監視カメラからの映像を効率的にモニタに映し出すことができる。
【0004】
ところで、クレーンなどの作業車には、複数の作業機が搭載されているが、近年ではこれらの作業機自体の状態を監視するためにカメラを設けることも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−128463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来は、複数の作業機をまとめて1台のカメラで撮影していたため、各作業機を詳細に撮影できず、作業機の不具合を察知できない可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、各作業機を詳細に視認して不具合を確実に察知できる作業機の表示システムと、この作業機の表示システムを備える作業車と、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の作業機の表示システムは、複数の作業機と、前記作業機のそれぞれを撮影する複数のカメラと、撮影された前記作業機を表示する表示モニタと、を備える作業機の表示システムであって、前記作業機を操作する操作手段の操作者から見た配置に対応して前記表示モニタの画面を分割するとともに、分割された前記画面にそれぞれの作業機を表示する表示処理手段を備えている。
【0009】
また、本発明の作業機の表示システムは、複数の作業機と、前記作業機のそれぞれを撮影する複数のカメラと、撮影された前記作業機を表示する表示モニタと、を備える作業機の表示システムであって、前記作業機の作業車内での配置に対応して前記表示モニタの画面を分割するとともに、分割された前記画面にそれぞれの作業機を表示する表示処理手段を備えている。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の作業機の表示システムは、複数の作業機と複数のカメラと表示モニタとを備える作業機の表示システムであって、作業機を操作する操作手段の操作者から見た配置に対応して表示モニタの画面を分割するとともに、分割された画面にそれぞれの作業機を表示する表示処理手段を備えている。
【0011】
このため、操作手段の配置に対応していることでいずれの作業機が表示されているか誤認しにくいうえ、複数の作業機を同時操作しても作業機の状態を一度に視認することができるため誤操作を防止できる。
【0012】
また、本発明の作業機の表示システムは、複数の作業機と複数のカメラと表示モニタとを備える作業機の表示システムであって、作業機の作業車内での配置に対応して表示モニタの画面を分割するとともに、分割された画面にそれぞれの作業機を表示する表示処理手段を備えている。
【0013】
このため、作業機の配置に対応していることでいずれの作業機が表示されているか誤認しにくいうえ、複数の作業機を同時操作しても作業機の状態を一度に視認することができるため誤操作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】作業機の表示システムの概略構成を説明する概念図である。
【図2】オールテレーンクレーンの全体図である。
【図3】ウインチの取付部付近の拡大図である。
【図4】操作室内の操作手段の配置を説明する斜視図である。(a)はオールテレーンクレーンの操作室であり,(b)はラフテレーンクレーンの操作室である。
【図5】作業機の表示システム全体の制御系のブロック図である。
【図6】表示モニタの画面を操作手段の操作室内での配置に対応して分割した例である。
【図7】作業機の表示システムの作用図である。
【図8】作業機の表示システムの作用図である。
【図9】表示モニタの画面を作業機の作業車内での配置に対応して分割した例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、図2を用いて本発明の作業機の表示システムSを備える作業車としてのオールテレーンクレーン1の全体構成を説明する。なお、本発明における作業車には、ラフテレーンクレーン、トラッククレーン、カーゴクレーンなどの移動式クレーンや、高所作業車などが含まれる。
【0017】
本実施例の作業車としてのオールテレーンクレーン1は、図2に示すように、先端に運転室18が設けられており走行機能を有する車体10、車体10に相対的に水平方向に旋回可能に搭載される旋回台15、旋回台15に起伏自在に保持されるブーム11、ブーム11の先端側に取付けられるジブ12、油圧によって伸縮することでブーム11を起伏させる起伏シリンダ23、旋回台15のブーム11と反対側に配置されるカウンタウェイト16、ブーム11やジブ12などを操作する操作室17、などを備えている。
【0018】
このブーム11は、鋼製の箱によって入れ子状に形成されるもので、先端からは荷を掛けるための主フック13が取付けられた主ワイヤ25が吊下げられている。このため、第1ウインチ21による主ワイヤ25の巻上・巻下、起伏シリンダ23によるブーム11の起伏、伸縮シリンダ24によるブーム11の伸縮などによって、主フック13及び吊り荷が移動する。
【0019】
また、ジブ12は、ラチス状に形成されるもので、先端からは荷を掛けるための補フック14が取付けられた補ワイヤ26が吊下げられている。このため、第2ウインチ22による補ワイヤ26の巻上・巻下、起伏シリンダ23によるブーム11の起伏、伸縮シリンダ24によるブーム11の伸縮などによって、補フック14及び吊り荷が移動する。
【0020】
そして、旋回台15の後部のウインチ取付部151には、図1,2,3に示すように、複数の作業機としての第1ウインチ21と第2ウインチ22が配置されるとともに、第1ウインチ21と第2ウインチ22のそれぞれを撮影する複数のカメラとしての第1ウインチカメラ31と第2ウインチカメラ32とが配置されている。
【0021】
なお、本発明における作業機とは、油圧などによって動かされる作業のための機械をいう。具体的には、上記した第1ウインチ21、第2ウインチ22、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ24などのアクチュエータ類の他、油圧ポンプ、タンク、制御弁、電動機などの油圧機器を含むものである。
【0022】
この第1ウインチ21(主ウインチ)のドラムには、図1に示すように、主フック13の取付けられた主ワイヤ25が巻回されており、旋回台15の後方のウインチ取付部151の前側(ブーム11に近い側)に配置されている。
【0023】
同様に、第2ウインチ22(補ウインチ)のドラムには、補フック14の取付けられた補ワイヤ26が巻回されており、旋回台15の後方のウインチ取付部151の後側(ブーム11から遠い側)に配置されている。
【0024】
なお、これらの第1ウインチ21と第2ウインチ22は、略同一の外観を備えているため、それぞれを個別に見ただけではいずれのウインチであるか判別しにくいものとなっている。
【0025】
そして、この主ワイヤ25や補ワイヤ26は、ワイヤ溝が刻まれた円筒状のドラムに一方の鍔部から1巻きずつ整然と巻き回されており、ドラムの他方の鍔部まで到達すると次の層に移って引き続き巻き回される。一般的なクレーンのウインチの場合には、ワイヤは1層当り10〜20巻きで、5〜6層巻き回されている。
【0026】
また、第1ウインチカメラ31は、連続的に動画を撮影することのできるデジタルビデオカメラであり、図3に示すように、旋回台15のウインチ取付部151の上部に設けたブラケット152に取付けられている。
【0027】
したがって、この第1ウインチカメラ31によって第1ウインチ21の半分程度の領域が鮮明に撮影されており、撮影された映像データはケーブルを介してコントローラ60の入力ポート63に入力される(図5参照)。
【0028】
なお、第2ウインチカメラ32については、この第1ウインチカメラ31と略同様の構成を備えているため説明を省略する。
【0029】
さらに、本実施例の操作室17は、図4(a)に示すように、安全装置(AML)用のモニタ、スイッチ群、表示灯と、操作用のスイッチ群、表示灯などを有する操作盤と、操作用のペダルなどを備えている。
【0030】
そして、第1ウインチ21及び第2ウインチ22の映像を表示するための表示モニタ40が見やすい位置に配置され、操作手段としての第1ウインチ操作レバー51がオペレータから見て右側に配置され、操作手段としての第2ウインチ操作レバー52がオペレータから見て左側に配置されている。加えて、操作盤には、後述する単独表示と分割表示とを切換える切替スイッチ(不図示)が配置されている。
【0031】
なお、この第1ウインチ操作レバー51の上端には伸縮/ウインチ切換スイッチ51aが配置されており、第1ウインチ21の操作と伸縮シリンダ24の操作とを切換えることができる。同様に、第2ウインチ操作レバー52の上端には起伏/ウインチ切換スイッチ52aが配置されており、第2ウインチ22の操作と起伏シリンダ23の操作とを切換えることができる。
【0032】
したがって、オペレータ(操作者)は、第1ウインチ21によって巻上・巻下する際には右手で第1ウインチ操作レバー51を操作し、第2ウインチ22によって巻上・巻下する際には左手で第2ウインチ操作レバー52を操作することになる。
【0033】
なお、ラフテレーンクレーンなど運転室が操作室も兼ねる形式の作業車の場合には、図4(b)に示すように、第1ウインチ操作レバー51及び第2ウインチ操作レバー52の両方がオペレータから見て同じ側(図4(b)では右側)に配置されることもあるが、この場合でもオペレータから見て第1ウインチ操作レバー51が右側に配置され第2ウインチ操作レバー52が左側に配置されている。
【0034】
そして、本実施例の作業機の表示システムSは、図5に示すように、第1ウインチカメラ31、第2ウインチカメラ32、切替スイッチ(不図示)、表示モニタ40などを制御するコントローラ60を備えている。そして、このコントローラ60によって後述する表示処理手段61が実行される。
【0035】
このコントローラ60は、作業機や計測器などを制御するための制御装置であり、第1ウインチカメラ31、第2ウインチカメラ32及び切替スイッチ62が接続される入力ポート63と、表示モニタ40が接続される出力ポート66と、演算処理のためのCPU64及び記憶装置65と、によって構成されている。
【0036】
そして、このコントローラ60によって、表示モニタ40の画面を分割するとともにそれぞれの作業機を表示する表示処理手段61が構成されている。すなわち、表示処理手段61は、オペレータから見て右側に配置された第1ウインチ操作レバー51、オペレータから見て左側に配置された第2ウインチ操作レバー52のそれぞれの配置に対応して、表示モニタ40を左右に分割するとともに、表示モニタ40の右側に第1ウインチ21が表示し、左側に第2ウインチ22を表示する。
【0037】
また、表示モニタ40は、表示処理手段61によって制御されており、撮影された第1ウインチ21及び第2ウインチ22の映像を表示するもので、液晶ディスプレイ、ブラウン管、プラズマディスプレイなどを用いることができる。
【0038】
次に、本実施例の作業機の表示システムSの表示処理手段61の作用について説明する。なお、この表示処理手段61は、コントローラ60において演算・実行される。
【0039】
また、オペレータが切替スイッチ62によって単独表示モードを選択した場合は従来と同様であるため説明を省略し、以下では分割表示モードを選択した場合について説明する。
【0040】
まず、オペレータが第1ウインチ操作レバー51を手前側に倒すことで、第1ウインチ21が巻上方向に回転する。なお、第2ウインチ22は静止したままである。
【0041】
そうすると、巻上方向に回転している第1ウインチ21が第1ウインチカメラ31によって撮影され、この映像がコントローラ60に入力されるとともに、静止している第2ウインチ22が第2ウインチカメラ32によって撮影され、この映像もコントローラ60に入力される。
【0042】
そして、表示処理手段61は、図6に示すように、画面を左右に2分割したうえで、オペレータから見て第1ウインチ操作レバー51が配置される右側に第1ウインチ21の映像を表示し、オペレータから見て第2ウインチ操作レバー52が配置される左側に第2ウインチ22の映像を表示する。
【0043】
加えて、いずれのウインチであるか判別しやすいように、第1ウインチ21の映像が表示される右側の領域には、左上に数字の1が表示されて第1ウインチ21であることを示し、第2ウインチ22の映像が表示される左側の領域には、右上に数字の2が表示されて第2ウインチ22であることを示している。
【0044】
なお、第1ウインチカメラ31及び第2ウインチカメラ32によって撮影された映像は、実際には表示モニタ40の画面と相似形の領域として撮影されるため、横方向には約1/2に圧縮されて表示される。
【0045】
ここで、第1ウインチ21の幅と第2ウインチ22の幅とが異なる場合には、表示モニタ40の画面の左右の分割比をウインチの幅の比に合わせて表示することが好ましい。
【0046】
さらに、不具合の発生する頻度が比較的高い巻き層の切換わり時や捨巻き検出時には、オペレータに注意を喚起するために、表示モニタ40内に警告文を表示することもできる。例えば、表示モニタ40の画面上に「巻き層が切り換わります」や「捨巻きになります」などの表示をする。
【0047】
なお、この巻き層の切り換わりを検出するためのワイヤ長さや回転の計測は回転数計などによっておこない、捨て巻きの検出は捨巻き検出器などによっておこなう。
【0048】
次に、本実施例の作業機の表示システムSの効果を説明する。
【0049】
(1)本実施例の作業機の表示システムSは、複数の作業機としての第1ウインチ21と第2ウインチ22と、複数のカメラとしての第1ウインチカメラ31と第2ウインチカメラ32と、表示モニタ40とを備える作業機の表示システムSである。
【0050】
このように作業機ごとにカメラを備えることで、それぞれの作業機にカメラの焦点を合わせて鮮明に撮影することができる。
【0051】
例えば、第1ウインチ21を回転させていき巻き層が遷移する際に、正しい位置から1巻分ずれて巻き始めたことを視認しやすくなる。さらに、位置合わせの際などに、第1ウインチ操作レバー51を微小量だけ操作して、第1ウインチ21を微少量だけ回転させようとした場合に、実際に回転しているかどうかを視認しやすくなる。
【0052】
そして、第1ウインチ21と第2ウインチ22を操作する操作手段としての第1ウインチ操作レバー51と第2ウインチ操作レバー52の操作者であるオペレータの操作中の位置から見た左右の配置に対応して表示モニタ40の画面を左右に分割するとともに、分割された画面にそれぞれの作業機を表示する表示処理手段61を備えている。
【0053】
このように、操作手段の配置に対応していることで、いずれの作業機が表示されているか誤認しにくいうえ、複数の作業機を同時操作しても作業機の状態を一度に視認することができるため誤操作を防止できる。
【0054】
つまり、従来、仮に作業機ごとに撮影したとしても、表示モニタ40には単独の作業機しか表示されないため、1つの作業機しか監視できなかった。さらに、いずれの作業機を表示しているかわかりにくいため、誤認識する可能性もあった。
【0055】
さらに、操作室17内には多数のスイッチ群、モニタ、表示灯、操作レバーなどが配置されているため、複数の表示モニタを配置するスペース上の余裕もほとんどない。
【0056】
そこで、1つの表示モニタ40の画面を分割して、複数の作業機を表示するように構成すれば、オペレータが複数の作業機の状態を一度に見ることができるようになる。
【0057】
例えば、クレーンに適用する場合、吊り荷を水平移動させる場合には伸縮と起伏を同時操作する必要があり、ブームを伸縮する場合には第1ウインチ21と第2ウインチ22を同時操作する必要がある。このような場合に、いずれか一方の作業機のみを表示したのでは他方の作業機に不具合が生じた場合に迅速に対応できなくなってしまう。
【0058】
そこで、表示モニタ40の画面を分割して複数の作業機を表示すれば、いずれの作業機に不具合が生じてもこれを認識できる。さらに、操作手段のオペレータから見た配置と画面内の配置を合わせておくことで、オペレータにわかりやすい表示となるため作業機を取り違えることはない。
【0059】
(2)また、表示処理手段61は、複数の作業機の大きさの比に応じて表示モニタ40の画面を分割するため、複数の作業機を略同等の解像度によって表示することができる。
【0060】
加えて、このように作業機の実際の寸法に合わせて画面分割することで、オペレータにとっては実際の作業機と同じ感覚で表示モニタ40に表示される作業機を見ることができるため、作業機を取り違えることも防止できる。
【0061】
(3)さらに、表示処理手段61は、表示モニタ40の画面を分割したうえでそれぞれの作業機を表示する分割表示モードと、表示モニタ40の画面に1つの作業機のみを表示する単独表示モードと、を切換可能な切替スイッチ62を備えていることで、必要に応じてより詳細に作業機の状態を視認できる。
【0062】
例えば、第2ウインチ22を使用せず、ブーム11を伸縮することもない場合には、操作される第1ウインチ21のみを単独表示することでより広い領域を使って第1ウインチ21を表示できる。
【0063】
(4)そして、表示処理手段61は、操作されている作業機を大きく表示し、操作されていない作業機を小さく表示することで、作業機の状態を詳細に視認しやすいうえ、誤認することもない。
【0064】
例えば、第1ウインチ操作レバー51のみを操作している場合には、図7に示すように、第1ウインチカメラ31の映像を大きく表示し、第2ウインチカメラ32の映像を小窓表示(スーパーインポーズ)することができる。
【0065】
加えて、図8に示すように、操作されていない状態では作業機を左右に分割表示しておき、操作手段の入力を受けると、操作されていない側を徐々に小さくしていって小窓表示にすることで、オペレータにとっていっそうわかりやすい表示となる。
【0066】
この場合でも、第1ウインチ21を操作している際には第2ウインチ22を操作手段の配置に合わせて左側に小窓表示し、第2ウインチ22を操作している際には第1ウインチ21を操作手段の配置に合わせて右側に小窓表示する。
【0067】
このように、表示処理手段61が操作手段による入力を受けて、操作されている作業機を表示モニタ40内で自動的に拡大表示することで、作業機を取り違えることがなくなる。加えて、操作されている作業機が拡大表示されれば、この作業機を見やすくなる。
【0068】
(5)また、作業機として第1ウインチ21(第2ウインチ22)を有しており、表示処理手段61は、第1ウインチ21(第2ウインチ22)の巻き層の切換りの際又は捨巻きに達した際に、表示モニタ40の画面に警告文を表示することで、オペレータに注意を促して慎重に操作させることで不具合を未然に防止できる。
【0069】
つまり、ウインチの場合には、巻き層の切換り時に不具合が生じることが多く、捨巻き(余巻き)検出時には摩擦力が不足するおそれがある。そこで、回転数計や捨巻き検出器などの計測手段によって、これらのタイミングを察知して警告することで、オペレータに注意を喚起して不具合の発生を抑制できる。
【0070】
(6)さらに、本実施例の作業車としてのオールテレーンクレーン1は、上記した作業機の表示システムSを備えることで、作業機の状態を視認しやすく、作業機を誤認しにくい安全なオールテレーンクレーン1となる。
【実施例2】
【0071】
以下、図9を用いて、前記実施例とは別の作業機の表示システムS1について説明する(図1参照)。なお、前記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0072】
本実施例の作業機の表示システムS1は、前記実施例1と異なり、作業機としての第1ウインチ21と第2ウインチ22のオールテレーンクレーン1内での配置に対応して表示モニタ40の画面を分割するとともに、分割された画面にそれぞれの映像を表示する表示処理手段61を備えている。この他の構成については、前記実施例1の作業機の表示システムSと略同様であるから説明を省略する。
【0073】
次に、本実施例の作業機の表示システムS1の表示処理手段61の作用について説明すると、表示処理手段61は、図9に示すように、画面を上下に2分割したうえで、オールテレーンクレーン1内で第1ウインチ21が配置される前側に対応して上側に第1ウインチ21の映像を表示し、第2ウインチ22が配置される後側に対応して下側に第2ウインチ22の映像を表示する。
【0074】
つまり、一般にモニタ内に作業車を表示する際には、車両前方を上側として表示し、車両後方を下側として表示するため、これに合わせて前側の第1ウインチ21を上側に、後側の第2ウインチ22を下側に配置している。
【0075】
なお、第1ウインチカメラ31及び第2ウインチカメラ32によって撮影された映像は、実際には表示モニタ40の画面と相似形の領域として撮影されるため、縦方向には約1/2に圧縮されて表示されることになる。
【0076】
次に、本実施例の作業機の表示システムS1の効果を説明する。
【0077】
(1)本実施例の作業機の表示システムS1は、複数の作業機としての第1ウインチ21と第2ウインチ22と、複数のカメラとしての第1ウインチカメラ31と第2ウインチカメラ32と、表示モニタ40とを備える作業機の表示システムS1である。
【0078】
そして、第1ウインチ21と第2ウインチ22のオールテレーンクレーン1内での配置に対応して表示モニタ40の画面を上下に分割するとともに、分割された画面に第1ウインチ21と第2ウインチ22を上下に表示する表示処理手段61を備えている。
【0079】
このため、作業機の配置に対応していることでいずれの作業機が表示されているか誤認しにくいうえ、複数の作業機を同時操作しても作業機の状態を一度に視認することができるため誤操作を防止できる。
【0080】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【0081】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0082】
例えば、前記実施例では、ウインチとして2軸2ドラムを用いた例について説明したが、これに限定されるものではなく、1軸2ドラムのウインチにも適用できる。
【0083】
また、前記実施例では、作業機として複数のウインチを備え、それぞれを撮影するカメラを備える場合について説明したが、これに限定されるものではなく、複数のアクチュエータとカメラ映像を、操作レバー配置又はアクチュエータ搭載位置に応じて分割表示する場合であれば本発明を適用できる。
【0084】
例えば、作業機として起伏シリンダ23と伸縮シリンダ24のそれぞれを撮影するカメラを設ける作業機の表示システムであれば、表示処理手段61は、操作手段としての起伏操作レバー53(図4(b)参照、図4(a)の第1ウインチ操作レバー51も同じ)と操作手段としての伸縮操作レバー54(図4(b)参照、図4(a)の第2ウインチ操作レバー52も同じ)のオペレータから見た配置に合わせて、表示モニタ40の画面を左右に2分割し、分割された画面の右側に起伏シリンダ23を表示するとともに左側に伸縮シリンダ24を表示することができる。
【0085】
そして、表示モニタ40を大型化した場合には、クレーンを上方から見たアクチュエータ搭載位置(俯瞰位置)や、クレーンを側方からみたアクチュエータ搭載位置に合わせた分割表示を行うことが好ましい。
【0086】
例えば、アウトリガを表示する場合には、前後左右のアウトリガの搭載位置(操作手段の配置も同じ)に応じて分割することができる。すなわち、表示処理手段61は、表示モニタ40を上部右側と上部左側と下部右側と下部左側とに4分割し、前方右側のアウトリガを上部右側に、前方左側のアウトリガを上部左側に、後方右側のアウトリガを下部右側に、後方左側のアウトリガを下部左側に表示する。
【0087】
また、前記実施例1,2では、操作室17内でのオペレータの座席から見た操作手段の配置に対応して画面を分割して作業機を表示する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、操作室17を設けずに操作手段が露出している場合でも、オペレータが操作する位置から見た操作手段の配置に対応して画面を分割して作業機を表示することができる。
【符号の説明】
【0088】
S,S1 作業機の表示システム
1 オールテレーンクレーン(作業車)
17 操作室
18 運転室
21 第1ウインチ(作業機)
22 第2ウインチ(作業機)
25 主ワイヤ
26 補ワイヤ
31 第1ウインチカメラ(カメラ)
32 第2ウインチカメラ(カメラ)
40 表示モニタ
51 第1ウインチ操作レバー(操作手段)
52 第2ウインチ操作レバー(操作手段)
61 表示処理手段
62 切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業機と、前記作業機のそれぞれを撮影する複数のカメラと、撮影された前記作業機を表示する表示モニタと、を備える作業機の表示システムであって、
前記作業機を操作する操作手段の操作者から見た配置に対応して前記表示モニタの画面を分割するとともに、分割された前記画面にそれぞれの作業機を表示する表示処理手段を備えることを特徴とする作業機の表示システム。
【請求項2】
複数の作業機と、前記作業機のそれぞれを撮影する複数のカメラと、撮影された前記作業機を表示する表示モニタと、を備える作業機の表示システムであって、
前記作業機の作業車内での配置に対応して前記表示モニタの画面を分割するとともに、分割された前記画面にそれぞれの作業機を表示する表示処理手段を備えることを特徴とする作業機の表示システム。
【請求項3】
前記表示処理手段は、複数の前記作業機の大きさの比に応じて前記表示モニタの画面を分割することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作業機の表示システム。
【請求項4】
前記表示処理手段は、前記表示モニタの画面を分割してそれぞれの作業機を表示する分割表示モードと、前記表示モニタの画面に1つの作業機を表示する単独表示モードと、を切換可能に構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の作業機の表示システム。
【請求項5】
前記表示処理手段は、操作されている作業機を大きく表示し、操作されていない作業機を小さく表示することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の作業機の表示システム。
【請求項6】
前記作業機としてウインチを有しており、
前記表示処理手段は、前記ウインチの巻き層の切換りの際又は捨巻きに達した際に、前記表示モニタの前記画面に警告文を表示することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の作業機の表示システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の作業機の表示システムを備えることを特徴とする作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−1163(P2011−1163A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145103(P2009−145103)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)