説明

作業機械

【課題】粉塵などの付着によるカウンタウェイト後方視界の悪化を防止する作業機械を提供する。
【解決手段】機械本体の前側に作業装置を設け、機械本体の後側にカウンタウェイト17を設ける。カウンタウェイト17は、ウェイト本体21内にカメラ設置穴22を設け、このカメラ設置穴22内に監視カメラ23を設置し、この監視カメラ23の前面にてカメラ設置穴22に透光性を有するカメラ保護部材24を設ける。このカメラ保護部材24に付着した粉塵を除去する粉塵除去機構41として、作業装置とカウンタウェイト17との間に配置されたエンジンルームから冷却ファンの風をカメラ保護部材24の外面に導くダクト42を設け、このダクト42中に洗浄水を供給する洗浄水供給手段43を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウンタウェイトを有する作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業機械の後方の安全を確認するために、機体本体の後方に位置するカウンタウェイト上に監視カメラを設置し、その映像をキャブ内の専用モニタ、あるいは既存のモニタを改造して映し出すものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
さらに、砕石現場のように上方から落下物があるような作業現場では、カウンタウェイト上に監視カメラを設置しても、作業中に落下物により監視カメラが破損するおそれもあるので、この落下物から監視カメラを保護するために監視カメラをカウンタウェイト内に設置したものもある(例えば、特許文献3、4参照)。
【特許文献1】特開2003−221844号公報(第4頁、図3)
【特許文献2】特開2003−336293号公報(第4頁、図1−2)
【特許文献3】特開平8−158407号公報(第3頁、図1)
【特許文献4】特開平10−140619号公報(第4頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、落下物からの直接的なダメージを防止し得るようにカウンタウェイト内に監視カメラを設置して、作業機械の後方の映像をモニタを通じて監視するものはあるが、解体現場のように粉塵の中はもちろんのこと、風雨にさらされる場所は、監視カメラのような精密機械にとって好ましくなく、監視カメラの破損、早期故障、監視カメラに接続された電線類の破損、早期摩耗、接触不良などのトラブルが生じやすいとともに、監視カメラのレンズに粉塵が付着することにより作業機械の後方視界が悪化する問題がある。
【0005】
さらに、監視カメラの前面を透光性を有するカメラ保護部材により覆い、監視カメラのレンズを粉塵などから保護した場合も、カメラ保護部材に粉塵などが付着して、その透光性が損なわれると、同様に作業機械の後方視界が悪化する問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、粉塵などの付着によるカウンタウェイト後方視界の悪化を防止する作業機械を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、機械本体と、機械本体の前側に設けられた作業装置と、機械本体の後側に設けられたカウンタウェイトとを備え、カウンタウェイトは、ウェイト本体と、このウェイト本体内に設けられたカメラ設置穴と、このカメラ設置穴内に設置されたカメラと、このカメラの前面にてカメラ設置穴に設けられた透光性を有するカメラ保護部材と、このカメラ保護部材に付着した粉塵を除去する粉塵除去機構とを具備した作業機械であり、そして、ウェイト本体内のカメラ設置穴内に設置されたカメラの前面を透光性を有するカメラ保護部材により覆うことで、カメラを粉塵などから保護するとともに、カメラ保護部材に粉塵などが付着しても、粉塵除去機構によりカメラ保護部材に付着した粉塵などを除去することで、このカメラ保護部材の透光性を維持し、粉塵などの付着によるカウンタウェイト後方視界の悪化を防止する。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の作業機械において、作業装置とカウンタウェイトとの間に配置されたエンジンルームと、このエンジンルーム内に設置された冷却ファンとを具備し、粉塵除去機構は、エンジンルームから冷却ファンの風をカメラ保護部材の外面に導くダクトを備えたものであり、そして、エンジンルームからの冷却ファンの風をダクトによりカメラ保護部材の外面に導くことで、冷却ファンの風を有効利用してカメラ保護部材に付着した粉塵などを除去する。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の作業機械における粉塵除去機構が、ダクト中に洗浄水を供給する洗浄水供給手段を備えたものであり、そして、洗浄水供給手段によりダクト中に供給された洗浄水を、エンジンルームからカメラ保護部材の外面に導かれる風によりカメラ保護部材の外面に吹付けることで、このカメラ保護部材の外面に付着した落ちにくい粉塵なども効果的に洗浄除去する。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の作業機械における洗浄水供給手段が、ウェイト本体内に設けられ洗浄水を貯留するウォータタンクと、ウェイト本体内に設けられウォータタンクから洗浄水を汲み出すとともにダクト内に洗浄水を供給するウォータポンプと、ウェイト本体内に設けられウォータポンプを駆動するモータとを具備したものであり、そして、ウェイト本体内にウォータタンク、ウォータポンプおよびモータを設けたので、これらの設置スペースを拡大する必要がなく、コンパクトにまとまる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、ウェイト本体内のカメラ設置穴内に設置されたカメラの前面を透光性を有するカメラ保護部材により覆うことで、カメラを粉塵などから保護できるとともに、カメラ保護部材に粉塵などが付着しても、粉塵除去機構によりカメラ保護部材に付着した粉塵などを除去することで、このカメラ保護部材の透光性を維持でき、粉塵などの付着によるカウンタウェイト後方視界の悪化を防止できる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、エンジンルームからの冷却ファンの風をダクトによりカメラ保護部材の外面に導くことで、冷却ファンの風を有効利用してカメラ保護部材に付着した粉塵などを除去できる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、洗浄水供給手段によりダクト中に供給された洗浄水を、エンジンルームからカメラ保護部材の外面に導かれる風によりカメラ保護部材の外面に吹付けることで、このカメラ保護部材の外面に付着した落ちにくい粉塵なども効果的に洗浄除去できる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、ウェイト本体内にウォータタンク、ウォータポンプおよびモータを設けたので、これらの設置スペースの拡大を防止でき、コンパクトにまとめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、図1乃至図5に示された一実施の形態を参照しながら説明する。
【0016】
図5に示されるように、作業機械としての油圧ショベルは、下部走行体11に旋回軸受部を介して上部旋回体12が旋回可能に設けられた機械本体13を有し、その上部旋回体12の前側に運転席を内蔵したキャブ14と、作業装置としてのフロント作業装置15とが設けられ、これらの後方に、エンジンが内蔵されたエンジンルーム16が設置され、さらに、上部旋回体12の後側にカウンタウェイト17が設けられている。
【0017】
図1に示されるように、カウンタウェイト17は、ウェイト本体21の内部にカメラ設置穴22が設けられ、このカメラ設置穴22内にカメラとしての監視カメラ23がチルト動作可能およびパン動作可能に設置され、この監視カメラ23の前面にてカメラ設置穴22に、透光性を有するカメラ保護部材24が、必要に応じて開閉自在に設けられている。
【0018】
監視カメラ23は、光軸上に、被写体側より結合光学系、光学フィルタ、チャージ・カップルド・デバイス(以下、CCDという)などの撮像デバイスが配置されたものであり、また、カメラ保護部材24は、強化ガラス板、ポリカーボネート樹脂板などの耐衝撃性に優れた透明板を用い、カメラ設置穴22内にヒンジ(図示せず)によって開閉自在に、かつシール部材24aを介して気密に設けられている。
【0019】
カメラ設置穴22の開口部は、監視カメラ23の視界を広角に保つことができるようにウェイト本体21内にて外向きに拡開形成され、特に、カメラ保護部材24より外側の下面を下降傾斜させた傾斜面25を有する。
【0020】
図2に示されるように、キャブ14およびフロント作業装置15とカウンタウェイト17との間にはエンジンルーム16が配置されているが、このエンジンルーム16内には、クーリングユニットの冷却ファン26が設置されている。
【0021】
この冷却ファン26は、エンジン27により直接回転駆動しても良いが、エンジン27により駆動される油圧ポンプ・モータ系により回転駆動しても良い。
【0022】
図3に示されるように、監視カメラ23は、ウェイト本体21の中央部の比較的下側に配置されている。
【0023】
図4に示されるように、エンジンルーム16のラジエータ側には、外気吸込口31が設けられ、この外気吸込口31の内側に、エンジン冷却水を冷却するラジエータ、油圧回路の作動油を冷却するオイルクーラなどのクーリングユニット32が配置され、さらに、このクーリングユニット32のエンジン本体側に冷却ファン26が配置されている。エンジン本体33には、吸気配管34を介してエアフィルタ35が接続され、排気配管36を介して排気マフラ37が接続されている。エンジンルーム16の他側には、冷却空気の排気口38が設けられている。
【0024】
図1および図2に示されるように、前記カメラ保護部材24に対して、このカメラ保護部材24に付着した粉塵を除去する粉塵除去機構41が設けられている。
【0025】
この粉塵除去機構41は、エンジンルーム16から冷却ファン26の風をカメラ保護部材24の外面に導くダクト42を備えている。このダクト42の吹出口42aは、カメラ保護部材24の上部に位置する傾斜面に開口され、一方、カメラ保護部材24の下部に位置する傾斜面25には、ダクト42の吹出口42aと対向する排出孔42bが設けられ、この排出孔42bはカウンタウェイト17の下面に開口されている。
【0026】
さらに、図1に示されるように、この粉塵除去機構41は、ダクト42中に洗浄水を供給する洗浄水供給手段43を備えている。
【0027】
この洗浄水供給手段43は、ウェイト本体21内に、洗浄水を貯留するウォータタンク44が設けられ、また、ウェイト本体21内に凹部45が設けられ、この凹部45内に、ウォータタンク44から洗浄水を汲み出すとともにダクト42内にこの洗浄水を供給するウォータポンプ46が設けられ、さらに、この凹部45内に、ウォータポンプ46を駆動するモータ47が設けられている。このモータ47は、電動モータまたは油圧モータを用いる。ウォータタンク44には、洗浄水補充用の通路48が設けられている。
【0028】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0029】
図4に示されるように、冷却ファン26の吸込作用により、外気吸込口31からエンジンルーム16の内部に吸込まれた外気は、クーリングユニット32のラジエータ、オイルクーラなどでの熱交換を促がし、エンジン冷却水および作動油を冷却する。さらに、冷却ファン26から吐出された風の大部分は、エンジン本体33および排気マフラ37を冷却して反対側の排気口38から排気される。
【0030】
一方、冷却ファン26から吐出された風の一部は、図1に示されるように粉塵除去機構41のダクト42に送り込まれ、吹出口42aよりカメラ保護部材24の外面に噴出して、カメラ保護部材24の外面に付着した粉塵などと共に排出孔42bより外部に排出される。
【0031】
このとき、粉塵除去機構41の洗浄水供給手段43を構成するモータ47を始動してウォータポンプ46を駆動すると、ウォータタンク44内の洗浄水が、ウォータポンプ46よりダクト42中に供給され、この洗浄水は、ダクト42中の風に乗って移動し、吹出口42aよりカメラ保護部材24の外面に吹付けられ、このカメラ保護部材24の外面に付着した粉塵や汚れなどを洗い落し、排出孔42bより外部に排出される。
【0032】
このように、ウェイト本体21内のカメラ設置穴22内に設置された監視カメラ23の前面を透光性を有するカメラ保護部材24により覆うことで、監視カメラ23を粉塵などから保護できるとともに、カメラ保護部材24に粉塵などが付着しても、粉塵除去機構41によりカメラ保護部材24に付着した粉塵などを除去することで、このカメラ保護部材24の透光性を維持でき、粉塵などの付着によるカウンタウェイト後方視界の悪化を防止できる。
【0033】
特に、エンジンルーム16からの冷却ファン26の風をダクト42によりカメラ保護部材24の外面に導くことで、冷却ファン26の風を有効利用してカメラ保護部材24に付着した粉塵などを除去できる。
【0034】
また、洗浄水供給手段43によりダクト42中に供給された洗浄水を、エンジンルーム16からカメラ保護部材24の外面に導かれる風によりカメラ保護部材24の外面に吹付けることで、このカメラ保護部材24の外面に付着した落ちにくい粉塵なども効果的に洗浄除去することができる。
【0035】
さらに、ウェイト本体21内にウォータタンク44、ウォータポンプ46およびモータ47を内蔵したので、これらの設置スペースの拡大を防止でき、コンパクトにまとめることができる。
【0036】
なお、本発明は、油圧ショベルに限定されるものではなく、クレーン作業車にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の作業機械に装着されたカウンタウェイトの一実施の形態を示す断面図である。
【図2】同上カウンタウェイトとエンジンルームとの関係を示す概略図である。
【図3】同上カウンタウェイトの正面図である。
【図4】同上カウンタウェイトとエンジンルームとの関係を示す平面図である。
【図5】同上作業機械の側面図である。
【符号の説明】
【0038】
13 機械本体
15 作業装置としてのフロント作業装置
16 エンジンルーム
17 カウンタウェイト
21 ウェイト本体
22 カメラ設置穴
23 カメラとしての監視カメラ
24 カメラ保護部材
26 冷却ファン
41 粉塵除去機構
42 ダクト
43 洗浄水供給手段
44 ウォータタンク
46 ウォータポンプ
47 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械本体と、
機械本体の前側に設けられた作業装置と、
機械本体の後側に設けられたカウンタウェイトとを備え、
カウンタウェイトは、
ウェイト本体と、
このウェイト本体内に設けられたカメラ設置穴と、
このカメラ設置穴内に設置されたカメラと、
このカメラの前面にてカメラ設置穴に設けられた透光性を有するカメラ保護部材と、
このカメラ保護部材に付着した粉塵を除去する粉塵除去機構と
を具備したことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
作業装置とカウンタウェイトとの間に配置されたエンジンルームと、
このエンジンルーム内に設置された冷却ファンとを具備し、
粉塵除去機構は、
エンジンルームから冷却ファンの風をカメラ保護部材の外面に導くダクトを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
粉塵除去機構は、
ダクト中に洗浄水を供給する洗浄水供給手段を備えた
ことを特徴とする請求項2記載の作業機械。
【請求項4】
洗浄水供給手段は、
ウェイト本体内に設けられ洗浄水を貯留するウォータタンクと、
ウェイト本体内に設けられウォータタンクから洗浄水を汲み出すとともにダクト内に洗浄水を供給するウォータポンプと、
ウェイト本体内に設けられウォータポンプを駆動するモータと
を具備したことを特徴とする請求項3記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−37606(P2006−37606A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221624(P2004−221624)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】